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Main Story | Prologue · Chapter 1 · Chapter 2 · Chapter 3 · Chapter 4 · Chapter 5 |
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Character Stories (Unused Content) |
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序節 彷徨える魂/
Summary | |
---|---|
ふと目覚めた鉄道列車の中、夢現に遭遇した
テンジョウと名乗る人物。そして亡霊が 迫る危機をイザヨイという女性に救われる。 |
ラーベ
……おい。 |
Raabe |
ラーベ
おい。起きろ。 |
Raabe |
ラーベ
<size=130%>起きろ、レイ!</size> |
Raabe |
ラーベ
……目が覚めたか? |
Raabe |
ラーベ
だから寝るなって! |
Raabe |
1: わあ、びっくりした! ふわぁ、なんだか眠くって…… | |
シエル
心拍数の上昇を確認。 瞬間的にではありますが、脳波も覚せい状態にあるようです。 |
Ciel |
シエル
瞬間的にでも、眠気は収まったのではないでしょうか。 |
Ciel |
シエル
あくびは脳に酸素を行き渡らせるための、重要な運動です。 血流を促すためにも、体も動かしてください。 |
Ciel |
シエル
……どうでしょうか。 少しでも眠気が収まるといいのですが。 |
Ciel |
ラーベ
まったく。 |
Raabe |
シエル
……その他のバイタル情報も正常です。 |
Ciel |
シエル
ですが、低周波を含む振動を検知しています。 この揺れが睡眠を誘うのだと思います。 |
Ciel |
ラーベ
……確かに揺れてるな。どこだ、ここ? |
Raabe |
シエル
閉鎖的な屋内、設置された座席の様子と天井高、 それに振動と物音からして……。 |
Ciel |
シエル
鉄道列車の車両内と推測されます。 |
Ciel |
ラーベ
やっぱりそう思う? そうだよねぇ。 これ列車の中だよねぇ。 |
Raabe |
ラーベ
こういうことも……あるのか……? 珍しいパターンだな。 |
Raabe |
シエル
なにが珍しいのですか? |
Ciel |
ラーベ
|
Raabe |
ラーベ
移動中の乗り物の中っていうのも、危険な場所だ。
座標情報と |
Raabe |
ラーベ
列車の慣性を引きずったまま、 外に放り出される可能性だってある。 |
Raabe |
ラーベ
……なのに、こんな場所に出た。 考えられる理由はとりあえずふたつだ。 |
Raabe |
ラーベ
ひとつ。 フガク及びタカマガハラシステムの設定に異常が生じた。 |
Raabe |
ラーベ
もうひとつは、このファントムフィールドにおいて 安定していると判断される場所が、ここだった。 |
Raabe |
シエル
列車の中が安定している……とは、どういうことでしょう。 非常に不安定な場所です。 |
Ciel |
シエル
列車以外の場所が極端に不安定な場所、 ということでしょうか。 |
Ciel |
ラーベ
かもね。 |
Raabe |
ラーベ
さてさて。ここが列車であるのなら、だ。 行き先や目的があるはずだ。 |
Raabe |
ラーベ
どんな列車なのか、どんなやつが乗ってるのか。 そのあたりを把握したいところだな。 |
Raabe |
シエル
この車両は無人のようです。 |
Ciel |
シエル
列車についての情報を得るのなら、 別の車両へ移動したほうがいいかもしれません。 |
Ciel |
ラーベ
そうだな。友好的な人物と接触できるといいんだが。 |
Raabe |
ラーベ
とりあえずざっと、この車両の中を見ておこう。 なにか情報源になるようなものはないか、チェックだ。 |
Raabe |
???
…………。 |
??? |
ラーベ
おーい、レイ。 ぼさっとしてないで、お前も手伝え。 |
Raabe |
ラーベ
揺れが気持ちいいからって、また寝るんじゃないぞ〜。 |
Raabe |
ラーベ
ふーむ、特になにもないか……。 そっちはどうだ、シエル。 |
Raabe |
シエル
特に情報が得られそうなものは、ありません。 |
Ciel |
シエル
誰かがいた痕跡も見られませんでした。 |
Ciel |
1: そこにいる人は? もしかして見えてない? | |
ラーベ
人? どこに人がいるって? おいおい、まだ寝ぼけてるんじゃないだろうな? |
Raabe |
ラーベ
見えてないって、なにがだ? おいおい、まだ寝ぼけてるんじゃないだろうな? |
Raabe |
???
…………。 |
??? |
???
其方……余のことが……。 |
??? |
???
これは……この景色は……。 |
??? |
???
……もし、そこの。 其方。そう、其方だ。 |
??? |
???
ああ、よかった。余の声が聞こえるのだな。 では余の姿はどうだ? 見えているか? |
??? |
???
おお……なんということ。 よもや誰かと話ができるとは。 |
??? |
???
ああ、では……景色はどうだろうか。 余が見ているこの光景が見えるか? |
??? |
???
列車の中とは違う…… どこか寂れた、朽ちかけたような光景が。 |
??? |
???
そうか、わかるか。 |
??? |
???
まさかこのようなことが起こるとは。 このような巡り合わせがあるとは。 |
??? |
???
……ああ、余がひとりで喜んでいるばかりでは、 其方にはなにがなにやらわからぬな。すまない。 |
??? |
???
余の名は、テンジョウ。 |
??? |
テンジョウ
ここは……おそらく、余の意識の中だ。 理屈はわからぬが、どうやら其方を引きこんでしまったらしい。 |
Tenjo |
テンジョウ
……だが、余に説明できるのはここまでだ。 これ以上は余にも、なにがどうなっているのかわからぬのだ。 |
Tenjo |
テンジョウ
そもそも、余が誰なのか、何者なのか…… 自分で自分がわからぬ。 |
Tenjo |
テンジョウ
わかるのは、テンジョウという名の響きが、 余にとってひどくしっくりくるということくらい。 |
Tenjo |
テンジョウ
それも、つい先ほどそう感じたばかりなのだ。 |
Tenjo |
テンジョウ
それまでは、このような意識の中らしき光景と…… あの列車の中とを、ぼんやりとした影となって彷徨うばかり。 |
Tenjo |
テンジョウ
ところが、其方と目が合った瞬間に、 己がどのような姿なのかわかるようになった。 |
Tenjo |
テンジョウ
意識もはっきりとして、こうして其方と言葉を交わしている。 |
Tenjo |
テンジョウ
不思議であろう? 余はとても不思議だ。 だが嬉しい。誰かに余の存在を見つけてもらえて……。 |
Tenjo |
テンジョウ
…………む? |
Tenjo |
テンジョウ
……何か来る。よくないものだ。 |
Tenjo |
亡霊
オオオオォォォォ……。 |
Ghost |
テンジョウ
!! |
Tenjo |
テンジョウ
な、なんだ、こやつは……!? どうしてこのようなものが、余の意識の中に……。 |
Tenjo |
1: 逃げましょう! 下がってください、危ない | |
テンジョウ
あ、ああ……だが、これはいささかまずいぞ。 後ろからも現れた……! |
Tenjo |
テンジョウ
其方こそ、前へ出るでない。危ないぞ……! それに、後ろからも現れておる……。 |
Tenjo |
亡霊A
ウオオォォ……。 |
Ghost A |
亡霊B
アア、アァ……。 |
Ghost B |
テンジョウ
逃げ道がない……。 せめて、其方だけでも逃がさねば……。 |
Tenjo |
???
待ちなさい! |
??? |
???
自我を失い悪しきに染まった亡者よ。 今すぐその方たちから離れなさい。 |
??? |
テンジョウ
其方は……? |
Tenjo |
???
話は後です。下がっていてください。 |
??? |
亡霊A
ウオオォォッ!! |
Ghost A |
???
理性など残されてはいないのですね……憐れな。 |
??? |
???
であればこそ、 ここにいる方々を傷付けさせるわけにはいきません。 |
??? |
イザヨイ
我が名はイザヨイ。 悪を裁き秩序と正義を守る者。 |
Izayoi |
イザヨイ
……断罪、執行! |
Izayoi |
序節② 生ける魂/
Summary | |
---|---|
再び目を覚まし、シエルたち、テンジョウ、
イザヨイと再会。一同は死者の魂を終着駅の 『死』へと運ぶ、『冥界列車』の中にいた。 |
シエル
レイさん……レイさん。 しっかりしてください。 |
Ciel |
シエル
……あ……気がつかれました。 意識はありますか? 私がわかりますか? |
Ciel |
ラーベ
よかった、目を開けたか。 シエル、質問の前にバイタルをチェックしてくれ。 |
Raabe |
シエル
はっ、そ、そうでした。すぐに行います。 |
Ciel |
シエル
……スキャン終了。 レイさんのバイタル、正常です。 |
Ciel |
ラーベ
ならばよし。けど、どうしたっていうんだ一体。 気が付いたら倒れてたから、目茶苦茶驚いたじゃないか。 |
Raabe |
ラーベ
とりあえず、具合が悪いとかではないみたいだな。 でも油断せず、不調が出たらすぐに教えてくれ。 |
Raabe |
ラーベ
……んで……結局、お前は何者なんだ? |
Raabe |
???
…………。 |
??? |
1: あ! あなたはさっきの! あれ、どこかで見たような……? | |
シエル
この方を、ご存知なのですか? |
Ciel |
ラーベ
だとしたら、ますます気になるな。 |
Raabe |
シエル
レイさんが倒れられたすぐあとに、 この方が声をかけてくださったのです。 |
Ciel |
ラーベ
勘ぐるようで悪いが、説明してもらえないか? |
Raabe |
ラーベ
お前は突然現れて、倒れたレイを見るなり 『これはいけない』と言い残して姿を消した。 |
Raabe |
ラーベ
……かと思えば、レイが目を覚ましたとたんに また現れた。 |
Raabe |
ラーベ
レイが目を覚ましたのと、なにか関係があると 考えていいんだろうか? |
Raabe |
イザヨイ
……名乗るのが遅れました。 私の名は、イザヨイ。 |
Izayoi |
イザヨイ
レイさん、とおっしゃるのですね。 あなたが私と会ったのは『誰かの意識の中』です。 |
Izayoi |
イザヨイ
意図的にかはわかりませんが…… 他者の意識に引きずり込まれたのでしょう。 |
Izayoi |
イザヨイ
あのままでいれば、意識の主の認識に呑み込まれ、 こちらへ戻ってくることができなくなる恐れもありました。 |
Izayoi |
イザヨイ
連れ戻せてよかった。 ご無事でなによりです。 |
Izayoi |
シエル
では、レイさんを助けてくださったのですね。 ……ありがとうございます。 |
Ciel |
シエル
我々では状況がわからないままでした。 助かりました。 |
Ciel |
1: ありがとうございました! そんな危ない状態だったのか…… | |
ラーベ
そういうことなら、私からも礼を言わないとな。 助かった。 |
Raabe |
ラーベ
ただそうなると……レイは一体誰の意識に 引きずり込まれたんだ? |
Raabe |
ラーベ
あのときこの場には、 我々以外誰もいなかったはずだが……。 |
Raabe |
イザヨイ
おそらく、彼女の意識かと。 |
Izayoi |
ラーベ
彼女? |
Raabe |
テンジョウ
…………!? |
Tenjo |
ラーベ
うわっ!? び、び、びっくりした……! |
Raabe |
ラーベ
え、い、いつからいた? |
Raabe |
シエル
わ、わかりません。たった今……だと思います。 音も反応もなく、突然現れたように感じています。 |
Ciel |
テンジョウ
……驚かせたようだな、すまない。 余は……テンジョウという。 |
Tenjo |
テンジョウ
実はずっとここにいたのだ。 ただ誰も、余に気付かなかった。 |
Tenjo |
テンジョウ
今は見えているのだな。よかった。 |
Tenjo |
シエル
はい……目視できています。 気付かなかったとは、どういうことでしょう。不思議です。 |
Ciel |
ラーベ
存在が誰にも認識されていなかった、ってことかな。 |
Raabe |
ラーベ
……ん。ってことは、意識の中に引きずり込まれた レイが、その意識の主を認識したことで、 |
Raabe |
ラーベ
我々にも見えるようになった。 ……って流れか。 |
Raabe |
ラーベ
なるほど。理屈は納得できる。 |
Raabe |
テンジョウ
迷惑をかけてしまったようだな……すまない。 だが釈明させてほしい。 |
Tenjo |
テンジョウ
レイと申したか。其方を余の意識に 取り込んでしまったのは、偶然だ。 |
Tenjo |
テンジョウ
其方をどうこうするつもりはなかった。 |
Tenjo |
テンジョウ
……さっき意識の中でも申したが、余は自分のことすら よくわかっていない。 |
Tenjo |
テンジョウ
なぜここにいるのかも……わからないのだ。 |
Tenjo |
ラーベ
……姿の認識が確立されても、 自己の認識はまだ確立しきれていないようだな。 |
Raabe |
ラーベ
もっとも、今の言葉が全て事実なら、だが。 |
Raabe |
テンジョウ
すぐに信じてもらえるとは、思っていない。 だが其方らに危害を加えるつもりはない。 |
Tenjo |
テンジョウ
どうかそれだけは、信じてほしい。 |
Tenjo |
イザヨイ
その点に関しては、当面信用できるかと思います。 彼女の気配からは、邪悪なものを感じません。 |
Izayoi |
イザヨイ
始めからレイさんに危害を加えるつもりなら、 もっと危機的な状況になっていたでしょうし。 |
Izayoi |
イザヨイ
……ところで。今度は私から質問させてください。 あなたがたは、どうやってこの列車に乗られたのですか? |
Izayoi |
シエル
はい。我々は次元境界潜航船フガクに搭載された、 タカマガハラシステ……。 |
Ciel |
ラーベ
<size=130%>わーーーーーたしたちのことか!</size> 私の名はアストロラーベ。ラーベちゃんでいいぞ。 |
Raabe |
ラーベ
こっちはシエルで、 レイのことは……もうわかっているか。 |
Raabe |
ラーベ
私たちは、まあ、その。常に行動を共にしている。 で、列車に乗っている理由だが……よくわからなくてな。 |
Raabe |
ラーベ
気が付いたら、全員ここにいた。 |
Raabe |
イザヨイ
気が付いたら……ですか。 |
Izayoi |
イザヨイ
あなたがたは、生きている存在……ですよね? |
Izayoi |
1: 生きてると思います 死んだ覚えはないですね…… | |
シエル
同意見です。レイさんも私も バイタル情報は正常ですし、ラーベさんの機能も正常です。 |
Ciel |
シエル
同意見です。死に至るほどの異常が発生していたのなら、 なんらかの痕跡が記録されているはず。 |
Ciel |
イザヨイ
……そうですよね。 私にも、あなたがたが生きているように思えます。 |
Izayoi |
イザヨイ
ですが……だとすれば、 ここにいるのはよろしくないですね。 |
Izayoi |
ラーベ
よろしくない? それはどういうことだ? |
Raabe |
イザヨイ
この列車は『冥界列車』。死者の魂を乗客とし、 終着駅である『死』へと運ぶもの。 |
Izayoi |
テンジョウ
死者の魂を死へ運ぶ列車……。 これがそうだというのか? |
Tenjo |
イザヨイ
はい。 |
Izayoi |
ラーベ
終着駅は『死』と言ったな。 このまま乗り続けてるとどうなる? |
Raabe |
イザヨイ
『死』へ到達するのですから、死ぬことになります。 |
Izayoi |
シエル
我々はまだ死んでいませんが……それでも死ぬのですか? |
Ciel |
イザヨイ
試したことがあるわけではありませんから、 どのような現象が起こるのかはわかりませんが……。 |
Izayoi |
イザヨイ
『そういうもの』だと理解しておいたほうがいいでしょう。 |
Izayoi |
ラーベ
となると、乗り続けているのはあまりにまずい。 どうにかして列車から降りられないか? |
Raabe |
イザヨイ
降りるにはまず、列車を止めなければなりません。 私もそのために、この最前車両まできたのです。 |
Izayoi |
イザヨイ
列車である以上、動かしている機関やそれを管理する車掌が いるはずですから……なんとか掛け合えないかと思って。 |
Izayoi |
ラーベ
そしたら、私たちを見つけたわけだな。 |
Raabe |
ラーベ
ここ、一番前だったのか。 |
Raabe |
イザヨイ
はい。おそらく……。 |
Izayoi |
イザヨイ
この列車は、車両によって様子がずいぶんと違うので、 間違いないとまでは断言できませんけれど……。 |
Izayoi |
テンジョウ
であれば、ここのさらに前に、機関室があるのではないか? 車掌とやらもそこにいるだろう。 |
Tenjo |
テンジョウ
さっそく、掛け合ってみようではないか。 |
Tenjo |
イザヨイ
ええ、そうしましょう。 では、ちょっと失礼。 |
Izayoi |
イザヨイ
……あら? |
Izayoi |
イザヨイ
すみません、どなたかいらっしゃいませんか? 車掌さん、おられませんか? |
Izayoi |
シエル
どうしましたか? |
Ciel |
イザヨイ
扉が開かないのです。 すみません! どなたかいらっしゃいませんか!? |
Izayoi |
ラーベ
シエル、ちょっと、扉の向こう。 |
Raabe |
シエル
はい。索敵します。 |
Ciel |
シエル
…………生体反応、動体反応、共にありません。 |
Ciel |
テンジョウ
車掌はいないのか。 機関室にいなければ……どこにいるのだ? |
Tenjo |
ラーベ
さあなぁ……車内を巡回中とか? |
Raabe |
シエル
扉を破壊して侵入しますか? |
Ciel |
ラーベ
やめとけ、列車にどんな影響が出るかわからん! |
Raabe |
ラーベ
この先は機関室なんだぞ。 なにで動いてるかもわからない。爆発でもしたらどうする。 |
Raabe |
シエル
……確かに、そうです。 破壊は最終手段にします。 |
Ciel |
イザヨイ
仕方ありません……戻って車掌を探しましょう。 |
Izayoi |
ラーベ
ちなみに、ここに来る前には見かけなかったんだよな? |
Raabe |
イザヨイ
はい。ですが……先程も申しましたが、 この列車は車両によってずいぶんと様子が違います。 |
Izayoi |
イザヨイ
どこかで入れ違いになった可能性はあります。 |
Izayoi |
ラーベ
おー、それは厄介、厄介……。 |
Raabe |
イザヨイ
皆さんも、よろしければ一緒に探しにいきましょう。 |
Izayoi |
イザヨイ
ここに留まっていては、また誰かが誰かの意識に 呑まれることも、あるかもしれませんから。 |
Izayoi |
テンジョウ
ぜひ、余も連れていってくれ。 ひとりきりでいるのは……心細い。 |
Tenjo |
ラーベ
こちらは問題ない。 |
Raabe |
ラーベ
この列車がどんな場所なのか、 実際に見て把握しておきたくもあるしな。 |
Raabe |
イザヨイ
では、参りましょう。 列車内は広いです。迷わないよう、はぐれずに。 |
Izayoi |
シエル
はい、了解しました。 |
Ciel |
2号車 夢見る魂/
Summary | |
---|---|
列車の停止を試みるも、機関室への扉は開か
ず、中からの生体反応もない。皆は協力し て、列車を管理する車掌の捜索を開始する。 |
ラーベ
おお、どっからどう見ても、公園だな。 空間の認識が乱れてるのか。列車の中だってことを忘れそうだ。 |
Raabe |
テンジョウ
おや。あそこに人がいるようだぞ。 |
Tenjo |
人影
…………。 |
Shadow |
人影
…………。 |
Shadow |
イザヨイ
……あれは、この列車の乗客ですね。 |
Izayoi |
シエル
この列車や車掌について、 なにか情報が得られるかもしれません。 |
Ciel |
シエル
交渉してきます。 |
Ciel |
ラーベ
いやどうかな……あの様子だと、難しそうじゃないか? |
Raabe |
シエル
なぜですか? |
Ciel |
ラーベ
情報を引き出せるほど、 まともな意識がある状態には見えない。 |
Raabe |
イザヨイ
はい。冥界列車の乗客ですから、彼らは死者の魂です。 |
Izayoi |
イザヨイ
彼らはああして列車に乗りながら、生前の記憶を夢に見ます。 そうしながら少しずつ、自我を失い……。 |
Izayoi |
イザヨイ
最終的に終着駅へと到達して、完全なる死を迎える。 ……と、言われています。 |
Izayoi |
テンジョウ
記憶を、夢に……そうか。 その夢が安らかなものであればよいな。 |
Tenjo |
テンジョウ
穏やかな夢を見ながら……安らかに死を迎えてくれれば。 |
Tenjo |
ラーベ
そう誰も彼も穏やかな記憶ばかりではないだろうがな……。 |
Raabe |
シエル
まだ自我が多く残っている方を探して、 情報を聞き出すというわけにはいかないでしょうか。 |
Ciel |
テンジョウ
……夢を見ている者を、起こすのか? |
Tenjo |
シエル
はい。車掌捜索の手がかりが得られるかもしれません。 |
Ciel |
ラーベ
気が進まないって気持ちは、わからんでもないがな。 死者の眠りを妨げてでも、私たちは死を回避したい。 |
Raabe |
ラーベ
お前もそうじゃないのか? |
Raabe |
テンジョウ
余は……わからぬ。 死にたいと願うつもりはないが……。 |
Tenjo |
テンジョウ
……いや。其方たちを死なせるわけにはいかぬな。 すまぬ、余の気後れは忘れてくれ。 |
Tenjo |
テンジョウ
どうしてか、つい彼らに強く心惹かれるのだ。 彼らがどのような人であったのか、知りようもないが……。 |
Tenjo |
テンジョウ
死してなお苦しむようなことがなければいいと、 切に願ってしまう。 |
Tenjo |
1: 優しい人なんですね 僕もそう思います | |
テンジョウ
…………。 |
Tenjo |
テンジョウ
よせ、くすぐったい。 それにそんなことはない。 |
Tenjo |
テンジョウ
そんなことはない……はずだ。 |
Tenjo |
テンジョウ
……そうか。 其方がそういう心の持ち主で、嬉しく思う。 |
Tenjo |
テンジョウ
だがいけないな。余のこの気持ちは、優しさではない。 甘さだ。 |
Tenjo |
1: 優しい人なんですね 私もそう思います | |
テンジョウ
…………。 |
Tenjo |
テンジョウ
よせ、くすぐったい。 それにそんなことはない。 |
Tenjo |
テンジョウ
そんなことはない……はずだ。 |
Tenjo |
テンジョウ
……そうか。 其方がそういう心の持ち主で、嬉しく思う。 |
Tenjo |
テンジョウ
だがいけないな。余のこの気持ちは、優しさではない。 甘さだ。 |
Tenjo |
テンジョウ
いかんいかん。己がはっきりしないせいか、 思い悩むようなことばかり頭に浮かぶ。 |
Tenjo |
テンジョウ
今は車掌を探すことだけを、考えていなければ。 |
Tenjo |
シエル
……対象、接近。 周囲の人々がこちらに集まってきています。警戒してください。 |
Ciel |
乗客
オオォォォ……。 |
Passenger |
テンジョウ
か、彼らも夢を見ているのか? それとも、自我がまだ残っている状態なのだろうか……? |
Tenjo |
ラーベ
どちらにしても、友好的には見えないな。 |
Raabe |
乗客
オオ……ォォァア……ッ。 |
Passenger |
イザヨイ
! |
Izayoi |
イザヨイ
下がってください。危険です。 |
Izayoi |
シエル
敵性反応を感知。 戦闘態勢に移行します。 |
Ciel |
テンジョウ
待ってくれ、彼らはすでに死した魂なのだろう? それを害するのか……!? |
Tenjo |
ラーベ
そんなこと言ってる場合じゃないだろ! こっちが害されるわ! |
Raabe |
イザヨイ
このままでは囲まれます。前方へ突破しましょう。 先陣は私が。 |
Izayoi |
シエル
レイさん及びテンジョウさんの護衛を担当します。 |
Ciel |
ラーベ
ここが列車の中だってことを忘れるな。 周囲に被害を出し過ぎないようにしてくれよ! |
Raabe |
シエル
了解! 対象の排除を開始します。 |
Ciel |
ーーー/
Summary | |
---|---|
乗客である死者の魂が行く手に群がり、立ち
ふさがる。生に焦がれ押し寄せる彼らを退け ながら、一行はさらに先へと進む。 |
シエル
戦闘終了。周辺の敵性反応、排除完了しました。 ですがこの車両内にはまだ乗客が残っています。 |
Ciel |
シエル
引き続き、警戒にあたります。 |
Ciel |
テンジョウ
レイ……。 今のは、余の意識の中で現れた者たちと同じなのだろうか。 |
Tenjo |
ラーベ
テンジョウの意識の中でも襲われたのか。 同様の存在だとして……何故こちらを襲う? |
Raabe |
イザヨイ
私たちが『生きている』からかと。 |
Izayoi |
イザヨイ
魂は死を忌避し、生に焦がれるものです。 乗客の中には、ひどく望まない形で死を迎えた者もいるでしょう。 |
Izayoi |
イザヨイ
彼らからすれば、私たちは闇夜を照らす一筋の光に 見えるのかもしれません。 |
Izayoi |
ラーベ
その光に引き寄せられていると。 なるほどねぇ。 |
Raabe |
シエル
新たな敵性反応です。後方から接近中。 |
Ciel |
ラーベ
車掌らしき姿はない。 一応捜索しつつ、別の車両へ向かおう。 |
Raabe |
シエル
了解です。 |
Ciel |
イザヨイ
先に行ってください。後方は私が引き受けます。 |
Izayoi |
テンジョウ
…………。 |
Tenjo |
テンジョウ
死してなお、生に焦がれるか……。 |
Tenjo |
テンジョウ
……すまない。なんでもない。行こう。 |
Tenjo |
3号車 悪しき魂/
Summary | |
---|---|
シエル、イザヨイの勇と美を、テンジョウは
讃える。イザヨイは戦うだけが力ではない、 と口にしつつも、嬉しさに頬を染めた。 |
ラーベ
扉ひとつ開けるだけでこうも見た目が変わるとはな。 すごい違和感。 |
Raabe |
テンジョウ
ずいぶん静かな場所だ。それにいささか、不気味だな。 |
Tenjo |
ラーベ
人の姿はないか……。 まー、車掌が人の姿をしているかどうかもわからないんだけど。 |
Raabe |
シエル
この車両にはいないのでしょうか。 |
Ciel |
ラーベ
そう判断するのはまだ早いかな。 一通り探してはみよう。 |
Raabe |
ラーベ
いないと断定した車両に実はいましたーなんてことになったら、 時間の無駄もはなはだしい。 |
Raabe |
イザヨイ
障害物が多くて、見通しが悪いですね。 私が先行します。皆さんは後からついてきてください。 |
Izayoi |
シエル
索敵でしたら、私が行います。 |
Ciel |
イザヨイ
索敵自体はお願いします。ですがシエルさんは、 レイさんたちの側で護衛にあたってください。 |
Izayoi |
イザヨイ
私のことはどうぞ、ご心配なさらず。 |
Izayoi |
シエル
レイさんの護衛は、私の最優先事項です。 了解しました。 |
Ciel |
テンジョウ
……其方らは勇ましいな。それに美しい。 |
Tenjo |
イザヨイ
<size=130%>へっ……!?</size> な、な、なにを……なにを突然おっしゃるのですか。 |
Izayoi |
イザヨイ
美しいだなんて、そんな……。 |
Izayoi |
テンジョウ
照れずともよいではないか。 感じたままの言葉だ。 |
Tenjo |
テンジョウ
イザヨイもシエルも、とても強く、輝かしい。 誰かを守り戦おうという姿が眩しいくらいだ。 |
Tenjo |
テンジョウ
余にもそのような力があれば、今とて皆を守って戦うことが できたであろうに。歯痒いものよ。 |
Tenjo |
イザヨイ
…………。 |
Izayoi |
イザヨイ
戦うだけが、人の力ではありません。 |
Izayoi |
イザヨイ
武器を携えることなく、誰かの盾になることもなく、 それでも振るえる力はあります。 |
Izayoi |
イザヨイ
むしろそういう力こそ、本当の……! |
Izayoi |
イザヨイ
あ……いえ。これは私の勝手な、憧れのようなものです。 気にしないでください。 |
Izayoi |
イザヨイ
それより、車掌を探しましょう。 なにが潜んでいるかわかりませんから、皆さん、気を付けて。 |
Izayoi |
ラーベ
なんだ。照れてるのか? |
Raabe |
イザヨイ
ち、違います。 私のことはいいですから、皆さんも車掌を探してください! |
Izayoi |
シエル
なぜ照れるのですか? とても意義のあるお話だったと思います。 |
Ciel |
シエル
できればもう少し、詳細にうかがいたいです。 |
Ciel |
イザヨイ
も、もう。本当にいいですから……。 |
Izayoi |
テンジョウ
ふふふっ。イザヨイ。 其方、かわいらしいな。 |
Tenjo |
イザヨイ
ん、な……っ!? |
Izayoi |
イザヨイ
な、なななな、なにを、おっしゃっているのか……! |
Izayoi |
テンジョウ
かわいらしいと言ったのだ。 |
Tenjo |
テンジョウ
凛々しく武器を構える姿もよいが、そうして憧れを口にしたり、 頬を染めたりしている姿は実によい。 |
Tenjo |
テンジョウ
愛らしくて、微笑ましい。 レイもそうは思わぬか? |
Tenjo |
1: かわいいと思います! シエルだってかわいいです | |
イザヨイ
レイさんまで……こ、こんなときに。 そんな、そんなこと。も、もう! |
Izayoi |
ラーベ
こういう取り乱して狼狽える姿を、可愛らしいと評する 感性もあるんだ。勉強になったろ、シエル。 |
Raabe |
シエル
冷静で頼もしいイザヨイさんの、 これまでのイメージと違う一面への評価ですね。 |
Ciel |
シエル
イザヨイさんはかわいい。覚えました。 |
Ciel |
イザヨイ
そ、そそそ、そうですよ! シエルさんのほうがかわいらしいです! |
Izayoi |
テンジョウ
シエルがかわいらしくないとは言っていない。 シエルも其方も、それぞれに愛らしいぞ。 |
Tenjo |
シエル
ご評価いただき、ありがとうございます。 |
Ciel |
シエル
……褒められたのですよね。 なぜイザヨイさんはそうも謙遜されているのですか? |
Ciel |
ラーベ
そういうところも、またかわいいと言われるゆえんだな。 |
Raabe |
イザヨイ
や、やめてくださいってば! かわ、かっ……かわいいとか、今の状況に必要ないですよね!? |
Izayoi |
イザヨイ
テンジョウさんも! もうこの話はおしまいです! 真面目に捜索してください! |
Izayoi |
テンジョウ
すまぬ、すまぬ。そう怒るな。 なにもからかうつもりはなかったのだ。 |
Tenjo |
テンジョウ
其方の外見もさることながら、人柄が実に好ましい。 その偽りない余の本心を、言葉にせずにおれなんだ。 |
Tenjo |
テンジョウ
許せ。 |
Tenjo |
イザヨイ
う……は、はい……。 別にそんな、怒っているわけでは……。 |
Izayoi |
シエル
複数の敵性反応の接近を確認。 |
Ciel |
ラーベ
おっと。本当にそんな場合ではなくなったな。 |
Raabe |
亡霊
オオォォオォ……。 |
Ghost |
イザヨイ
列車の乗客である、死者の魂ですね。 亡霊のような存在です……。 |
Izayoi |
イザヨイ
悪しき気配を感じます。 生前より、よからぬことに手を染めて生きてきた魂でしょう。 |
Izayoi |
テンジョウ
死してなお、人を害するか……。 |
Tenjo |
シエル
戦闘態勢に移行します。 |
Ciel |
イザヨイ
ええ。ここで立ち止まるわけにはいきません。 倒して、先へ進みましょう! |
Izayoi |
シエル
対象を確認。 排除を開始します! |
Ciel |
ーーー/
Summary | |
---|---|
敵を退ける手際を褒めるテンジョウ。しかし
イザヨイは、道半ばの身に余る言葉は受け取 れない、と謙虚な姿勢を貫くのだった。 |
テンジョウ
見事なものだな。本当に勇ましい。 |
Tenjo |
イザヨイ
……お褒めいただけるのは嬉しいのですが、 もうそれはやめにしてください。 |
Izayoi |
イザヨイ
私はまだ途上の身。 精神的にも肉体的にも、力不足にあえぐばかりです。 |
Izayoi |
イザヨイ
そんな身に余る言葉を素直に受け取れません。 |
Izayoi |
テンジョウ
そのような……ああ、いや。 気持ちがわからぬわけでもない。 |
Tenjo |
テンジョウ
わかった。 褒めちぎりたい気持ちは少し抑えるとしよう。 |
Tenjo |
イザヨイ
お願いします。 |
Izayoi |
ラーベ
……車掌の姿はないなぁ。 |
Raabe |
ラーベ
もうちょい探して、それでも見つからなかったら、 別の車両へ行こう。 |
Raabe |
シエル
はい、わかりました。 |
Ciel |
4号車 使命ある魂/
Summary | |
---|---|
車掌を探す道中、イザヨイは生者の身で列車
にいる理由を語った。そこで耳にしたある言 葉から、シエルたちは彼女の正体に気づく。 |
シエル
これは……廊下、ですね。 |
Ciel |
ラーベ
かなり長い廊下に見えるが、 実際は列車の中を移動しているにすぎないわけだ。 |
Raabe |
シエル
……さきほどまでと同じ駆動音を感知しています。 本当に同じ列車の中なのですね。 |
Ciel |
イザヨイ
ええ。車両ごとに、中の様子はまるで別の場所で あるかのように違います。 |
Izayoi |
イザヨイ
自分がどこにいるのか、どこへ向かっているのか…… すぐにでもわからなくなってしまいそう。 |
Izayoi |
テンジョウ
もしもここが、生前に見た景色に近いのなら。 |
Tenjo |
テンジョウ
運ばれる死した者たちはなおのこと、 己がどこにいるのかわからなくなってしまうだろうな。 |
Tenjo |
ラーベ
死んだ者たちに思いをはせるのは結構だが、 あまり入れ込まないでくれよ。 |
Raabe |
ラーベ
こっちはなにも慰霊を目的にしているわけじゃない。 |
Raabe |
テンジョウ
そうであった。車掌探しだな。 とはいえ……この廊下は静かだ。車掌らしき姿もないな。 |
Tenjo |
1: 手分けして探す? 先の方、見てこようか | |
シエル
あちこちに部屋もあるようですし、 そのほうが効率がいいでしょうか。 |
Ciel |
ラーベ
いや、それはちょっとリスクがある。 固まって動いたほうがいい。 |
Raabe |
シエル
危険です。賛成できません。 それなら私が行きます。 |
Ciel |
ラーベ
いや、なるべく固まって動こう。 シエルの言う通り、危険だ。 |
Raabe |
ラーベ
空間そのものに認識の歪みが生じている以上、 どこでどんな断裂が生まれるかわからない。 |
Raabe |
ラーベ
死んだものを運ぶ列車、なんて場所なんだ。 危険な存在がうろついている可能性も高い。 |
Raabe |
ラーベ
なにより、連絡手段がない状況で手分けなんかしたら、 合流するときどうするんだ。はぐれたらそこで終わりだぞ。 |
Raabe |
シエル
……そう言われてみれば、そうですね。 |
Ciel |
ラーベ
というわけで、効率は悪いがまとまって動く。 テンジョウとイザヨイもそうしてくれ。 |
Raabe |
テンジョウ
わかった。ふらふらと彷徨って、また姿が 見えなくなってしまっては困るものな。 |
Tenjo |
イザヨイ
私は始めからそのつもりです。 ここは危険な場所ですから。 |
Izayoi |
テンジョウ
ふうむ……見当たらないな。 |
Tenjo |
シエル
はい。 車掌らしき人物を視認できていません。 |
Ciel |
ラーベ
そもそもどんな姿をしてるんだろうなぁ。車掌って。 |
Raabe |
イザヨイ
すみません、私にもわかりません。 |
Izayoi |
イザヨイ
時折見かける、ぼんやりと虚空を見つめる乗客たちとは、 明らかに雰囲気が違うだろうとは……思っているのですが。 |
Izayoi |
テンジョウ
まだ探し始めたばかりだ。列車は動き続けているのだし、 知らぬ間に降りてしまったなどということはあるまい。 |
Tenjo |
テンジョウ
そのうち見つかるとも。 |
Tenjo |
シエル
はい。捜索を続けます。 |
Ciel |
ラーベ
そういえば……イザヨイ。 お前も、別に死んだ魂ってわけじゃないんだろう? |
Raabe |
イザヨイ
ええ。違います。 あなたがたと同じく、まだ生きている者です。 |
Izayoi |
ラーベ
だったらどうしてこの列車に乗ってるんだ? |
Raabe |
イザヨイ
それは……。 |
Izayoi |
イザヨイ
……人を、探していて。 |
Izayoi |
テンジョウ
人? |
Tenjo |
イザヨイ
はい。ある方が、なにかを追いかけるようにして この列車に乗るのを見たのです。 |
Izayoi |
イザヨイ
その人も死んだわけでないのに……。 だから、見つけて連れ戻さなければと……思って。 |
Izayoi |
ラーベ
それでお前まで乗り込んだっていうのか? 乗り続けてると死ぬ列車に? |
Raabe |
ラーベ
命知らずとはこのことだな。 |
Raabe |
シエル
大切な人なんですね。 |
Ciel |
イザヨイ
え? |
Izayoi |
シエル
違うのですか? 大切だからこそ、その人を追って列車に乗ったのでは。 |
Ciel |
イザヨイ
…………いえ。 大切……そうですね、大切な人です。 |
Izayoi |
イザヨイ
とても強くて、憧れている人なのです。 名前は、ジン=キサラギ。 |
Izayoi |
イザヨイ
もしもこの先、みなさんが私と離れ離れになり、 その後にジン=キサラギと名乗る人と会うことがありましたら。 |
Izayoi |
イザヨイ
すぐに列車を降りて欲しいと、伝えてください。 |
Izayoi |
ラーベ
……うん? ジン=キサラギ? |
Raabe |
シエル
以前に別のファントムフィールドで、 その名前を聞いたことがあります。 |
Ciel |
イザヨイ
!? ジン兄様を知っているのですか!? |
Izayoi |
シエル
はい。 ですが、私の聞いた人物と同一かは不明です。 |
Ciel |
シエル
統制機構のとても強い人で、ひとりで戦争を終わらせた人物。 その人の名がジン=キサラギであると、記憶しています。 |
Ciel |
イザヨイ
それ、ジン兄様のことです。 間違いありません。 |
Izayoi |
テンジョウ
なんと。其方の兄は大変な英傑なのだな。 |
Tenjo |
テンジョウ
人によっては、その偉大さは重圧にもなろう。 それにしても凄まじい。ひとりで戦争を……そうか。 |
Tenjo |
1: 同じような話を聞いたような…… もしかして、ツバキさん? | |
シエル
はい。以前にツバキ=ヤヨイさんから聞きました。 |
Ciel |
ラーベ
やっぱり、そう思うか、レイ。 ……実は私もちょっと気になってた。 |
Raabe |
イザヨイ
……驚きました。 どうして私の名を? |
Izayoi |
ラーベ
いや、その。ちょっと縁があってな。 お前は私たちを知らないだろうが、私たちはお前を知ってるんだ。 |
Raabe |
ラーベ
正確には『ツバキ=ヤヨイ』を知っている。 と言った方がいいのかな。 |
Raabe |
イザヨイ
……なるほど。奇妙なあなた方のことです。 私の知らない縁を多くお持ちなのでしょうね。 |
Izayoi |
イザヨイ
その名を名乗ることが、今の私に相応しいとは思えませんが…… 確かに、私はツバキ=ヤヨイです |
Izayoi |
テンジョウ
ツバキ、か。良い名前だな。 だがなぜ、イザヨイと名乗る? |
Tenjo |
イザヨイ
私が装備している、この武具全て……これらは、 私の生家に伝わる『封印兵装・十六夜』というものです。 |
Izayoi |
イザヨイ
長く兵装を身に着け、戦い続けた私は……友の支えもあって、 この兵装の本来の力。真の姿を得ることができました。 |
Izayoi |
イザヨイ
その誇りの証と、この武具を受け継ぐ者としての戒めのために、 名を『イザヨイ』としたのです。 |
Izayoi |
イザヨイ
この身は、この兵装そのものでもあるのだと。 |
Izayoi |
テンジョウ
……良い友も、いるのだな。其方には。 |
Tenjo |
イザヨイ
……はい。 |
Izayoi |
ラーベ
ここにも車掌はいないかねぇ。 |
Raabe |
テンジョウ
仕方ない。別の車両を探してみよう。 |
Tenjo |
シエル
っ、待ってください。 |
Ciel |
テンジョウ
……この列車の乗客か? |
Tenjo |
イザヨイ
そのようです。彼らもまたすでに死した存在。 |
Izayoi |
イザヨイ
ですが、その制服は……。 |
Izayoi |
衛士
アア……ァァア…… |
Soldier |
シエル
敵性反応を感知。 警戒してください。こちらへの攻撃意思があります。 |
Ciel |
テンジョウ
なぜ、攻撃を? |
Tenjo |
イザヨイ
生前の強い意識か、もしくは私たちの存在に引かれてか……。 どちらにせよ、ここを通るためには倒さねばなりません。 |
Izayoi |
テンジョウ
倒す……。 |
Tenjo |
イザヨイ
彼らは、かつて使命を帯びた者。 その矜持に報いるためにも、お相手します。 |
Izayoi |
シエル
了解、戦闘態勢に移行。 対象の排除を開始します。 |
Ciel |
5号車 熱き魂/
Summary | |
---|---|
行く手に戦闘の音を聞き、駆けつけた一行は
イカルガの忍・バングを発見。苦戦する彼に 代わって、車両を彷徨う亡霊に立ち向かう。 |
ラーベ
……この車両は下水道か。 水まで流れてる。ご丁寧なことだな。 |
Raabe |
シエル
屋内、野外、地下……空間の形式は様々ですね。 |
Ciel |
テンジョウ
本当に不思議な列車だ。 見た目だけでなく……臭いまで、しっかり感じられる。 |
Tenjo |
イザヨイ
……できれば、 なるべく早くに抜け出したい場所ですね。 |
Izayoi |
イザヨイ
もしもここに車掌がいるのなら、 すぐにでも見つけたいです。 |
Izayoi |
テンジョウ
同感だ。 だがかなり入り組んでいるようだぞ。探すのは一苦労……。 |
Tenjo |
ラーベ
……ん? 静かに。 なにか聞こえたぞ。シエル、どうだ? |
Raabe |
シエル
確認しました。 人間の声です。性別は男性。 |
Ciel |
イザヨイ
亡霊でしょうか? |
Izayoi |
シエル
……生体反応を感知しています。 |
Ciel |
テンジョウ
では、生きている者か? |
Tenjo |
シエル
状態は不明ですが、感知できる物音からして…… 交戦中のようです。 |
Ciel |
1: 行ってみよう! それはどこから? | |
テンジョウ
うむ。もしも生者であるのなら、 亡霊に襲われているかもしれん。 |
Tenjo |
シエル
この車両の中です。正確な位置を特定します。 |
Ciel |
イザヨイ
シエルさん、案内をお願いできますか? |
Izayoi |
シエル
はい。音の発生源を特定。 こちらです! |
Ciel |
???
<size=120%>ぬおおお!! くぬぅぅ、なんというしぶとさ!</size> <size=120%>まだ倒れぬとは!!</size> |
??? |
???
<size=120%>だがしかぁし!</size> 拙者とて退けぬ理由があるのでござる! |
??? |
???
ゆえに貴様にここで負けるわけには…… <size=120%>いかぁぁぁぬ!!</size> |
??? |
テンジョウ
男の声だ。余にも聞こえてきたぞ。 確かに誰かが戦っているようだ、急ごう。 |
Tenjo |
ラーベ
ああ。 しかしこの声、どっかで聞いた覚えがあるような……。 |
Raabe |
???
ぐぬぅぅ……! こ、これしきの怪我で……! |
??? |
???
まだまだでござる! 拙者はまだ膝をついてもおらぬ! |
??? |
???
このシシガミ=バング、 ここで倒れるわけにはいかんのでござる!! |
??? |
ラーベ
あれは……! |
Raabe |
シエル
バングさんです! |
Ciel |
イザヨイ
知り合いですか? |
Izayoi |
ラーベ
まあ、ちょっとな。 我々がジン=キサラギを知っているのと同じような経緯だ。 |
Raabe |
テンジョウ
あの者、負傷しておるようだ。 だというのに、無茶を……。 |
Tenjo |
1: 助けましょう! 行こう、シエル! | |
イザヨイ
ええ。生ある者の魂を、亡霊たちに 引き渡すわけにはいきません。 |
Izayoi |
イザヨイ
助太刀に入ります! |
Izayoi |
シエル
了解! レイさんは私の後ろにいてください。 要救助者もレイさんも、お守りします。 |
Ciel |
バング
<size=120%>ぐおぉぉ!?</size> |
Bang |
バング
うぐぐ……やるではないか、お主……。 さぞ名のある武人と見える……。 |
Bang |
亡霊
…………。 |
Ghost |
バング
だが相手が悪かったでござるな……。 拙者はシシガミ=バング……イカルガの誇りを受け継ぎし忍……! |
Bang |
バング
拙者にはやらねばならぬことがある! それを果たすまでは、 どのような武人が相手であろうと決して、決して退かぬぞ!! |
Bang |
ラーベ
それだけ声が上げられるなら、 まだ死にそうにないな! |
Raabe |
バング
ややっ!? 喋るボールが……何やつ!? |
Bang |
シエル
助太刀に来ました。ご無事ですか? |
Ciel |
イザヨイ
ここはひとまず、私たちが引き受けます。 あなたは下がってください! |
Izayoi |
バング
おお、それはありがたい。 だがこれは男同士の戦い、手助けは……! |
Bang |
テンジョウ
やらねばならぬことがあるのであろう。 誇りも良いが、命は粗末にするものではない。 |
Tenjo |
バング
しかし……! あ……んん? お主、は……。 |
Bang |
シエル
警戒してください。来ます! |
Ciel |
ーーー/
Summary | |
---|---|
敵を退け、冥界列車についてバングと話す。
列車は乗客の命だけでなく、記憶をも奪う可 能性が浮上し、一行は共に解決へと急ぐ。 |
シエル
対象の排除を完了しました。 周囲に敵性反応はありません。戦闘行動を終了します。 |
Ciel |
ラーベ
よし。お疲れ。 |
Raabe |
バング
倒した……で、ござるか……。 いやはや、見事。助かったでござる。 |
Bang |
イザヨイ
間に合ってよかったです。 今の敵は、自我を失い戦うことしかできなくなった亡霊……。 |
Izayoi |
イザヨイ
倒され、取り込まれれば、 たとえ命ある者であったとしてもどうなるか……。 |
Izayoi |
バング
亡霊? 幽霊ということでござるか? |
Bang |
バング
……いかに打撃を重ねようと ほとんど手ごたえがなかったのは、そのせいか。 |
Bang |
バング
ううむ、幽霊といい、この不快な場といい、 ここはおかしなところでござる。 |
Bang |
バング
拙者は確かに、 列車に乗り込んだはずであったのだが……。 |
Bang |
ラーベ
列車とわかって、自ら乗り込んだパターンか、お前も。 だがこれがどんな列車なのかは、わかっているのか? |
Raabe |
バング
……いや。 いかにしてここへ辿り着いたのかもわからぬ。 |
Bang |
バング
ただ……拙者には、お仕えしていた主がいるでござる。 |
Bang |
バング
その主が、この列車にひとり、入っていかれたのを お見かけしてな。お声掛けせねばと追いかけたのだ。 |
Bang |
バング
だが乗り込んでみれば乗客は皆、 顔色は悪いし話しかけても無反応。 |
Bang |
バング
主は見つからず、車両を移動すればわけのわからぬ 空間に出るばかり。さらに駅にも止まらない。 |
Bang |
バング
一体なんなのでござるか、この列車は。 |
Bang |
イザヨイ
これは……冥界列車。 死した魂を『死』へと運ぶ列車です。 |
Izayoi |
バング
死した魂? となると……では、乗っている乗客たちは……。 |
Bang |
ラーベ
すでに死んだ者の魂ってことだ。 |
Raabe |
バング
死んだ……そんな、そんなはずは……。 |
Bang |
シエル
このまま列車に乗り続けていれば、 バングさんも死んでしまう可能性があります。 |
Ciel |
シエル
バングさんは、まだ死んだ人ではないですよね? |
Ciel |
バング
お、おお、その通り、拙者はまだ死んでおらぬ! 死んでたまるものか! |
Bang |
バング
いや、拙者よりも! 拙者の主でござる。 |
Bang |
バング
その方もまたこの列車に乗り込んでおる…… このままでは、本当に死んでしまうやもしれぬのではないか!? |
Bang |
イザヨイ
そうですね……そうなります。 |
Izayoi |
バング
それはいかん!! お助けせねば!! |
Bang |
バング
待っていてくだされ、今すぐこのシシガミ=バングが 駆け付けて……! |
Bang |
バング
いっ……いだだだだだだ……。 |
Bang |
テンジョウ
これ、そう急に動くでない。 致命傷ではないようだが、浅くはない傷を負っている。 |
Tenjo |
テンジョウ
主を助けようとする忠義は立派なことだが、 使命があるならばこそ、その身を案じ、労われ。 |
Tenjo |
バング
…………。 |
Bang |
テンジョウ
どうした? 余の顔になにかついておるか? |
Tenjo |
バング
い、いえ、滅相もない! ……お心遣い感謝するでござる。 |
Bang |
テンジョウ
無鉄砲な男だ。 手当てをしよう。シエル、手伝ってくれぬか。 |
Tenjo |
シエル
はい。 |
Ciel |
バング
……かたじけないでござる。 |
Bang |
ラーベ
落ち着いたようだな。よしよし。 |
Raabe |
イザヨイ
私たちは列車を止めるために、車掌を探しています。 |
Izayoi |
イザヨイ
その道中で、バングさんの探している方を 見つけられるかもしれません。 |
Izayoi |
イザヨイ
どのような方なのですか? |
Izayoi |
バング
それが……。 |
Bang |
バング
実は、しかとこの目で見て、確かにそのお姿を追いかけたの だが……どうしてか先程から、そのお姿が思い出せぬのだ。 |
Bang |
バング
お呼びしていた名もあったはずなのだが…… 喉の、このへんまで出てきているのに、思い出せぬ……。 |
Bang |
シエル
なぜでしょう。……列車に乗った魂が、徐々に自我を 失う現象と関係があるでしょうか。 |
Ciel |
イザヨイ
すみません、私にもわかりません。 |
Izayoi |
イザヨイ
もしかしたら、乗客の生死にかかわらず…… 列車は徐々に自我や記憶を失わせるのかもしれません。 |
Izayoi |
テンジョウ
余が己のことをなにも思い出せぬのも、 そのせいだろうか。 |
Tenjo |
ラーベ
可能性は十分ありそうだな。 |
Raabe |
ラーベ
であれば、ますます列車を早々に止めなければ。 レイの記憶を持っていかれるとかなりまずい。 |
Raabe |
バング
……お主たち。拙者も同行させてもらえぬか。 |
Bang |
テンジョウ
なにを申す。其方、深手を負っているのだぞ。 |
Tenjo |
バング
足を引っ張る真似はせぬ。拙者同様、主が己を失っていくやも しれぬというときに、じっと座ってはおれぬのだ。 |
Bang |
バング
だがおっしゃる通り、情けないが、 この傷で十分動けるとも思えぬ。 |
Bang |
バング
このバング、手負いの身なれど、粉骨砕身の思いで お主らの手足をとなると約束する。 |
Bang |
バング
だから……どうか、 拙者の主をお助けするのを手伝ってもらえまいか! |
Bang |
1: もちろん、一緒に行きましょう むしろ放っておけない | |
イザヨイ
その体で列車内を移動するのは、 少々危険だとは思いますが……。 |
Izayoi |
イザヨイ
かといって、ひとり置いていっては、いつ亡霊に見つかるかも わかりません。賢明なご判断かと思います。 |
Izayoi |
テンジョウ
確かに、この傷の彼をここへ置いていくのは 気が引けるな。 |
Tenjo |
テンジョウ
またいつ先程のような亡霊が現れて、 襲ってくるかもわからぬのだから。 |
Tenjo |
バング
では、同行を許してくださるか! 皆の衆……かたじけない! |
Bang |
ラーベ
そうと決まれば早速、車掌捜索再開だ。 列車はいつか終着駅に到着する。 |
Raabe |
ラーベ
それまでに見つけないと、全員それこそ冥界行きだ。 |
Raabe |
テンジョウ
手を貸そう。ゆくぞ、バング。 |
Tenjo |
バング
すまぬ。助かるでござる。 |
Bang |
6号車 交わる魂/
Summary | |
---|---|
テンジョウ、イザヨイと共に、誰かの記憶を
垣間見る。その後、一同のもとを訪れたジン に対し、バングは「主の仇」と拳を向けた。 |
シエル
この場所は……以前見た階層都市でしょうか? |
Ciel |
ラーベ
あるいは、階層都市によく似た場所かだね。 それにしても広いな。改めて列車の中とは信じられん。 |
Raabe |
バング
おお、ここはカグツチではないか! |
Bang |
ラーベ
ん、バングはこの都市を知っているのか? |
Raabe |
バング
うむ! 確かあれは……んん? いつであったかは忘れたが……。 |
Bang |
バング
だが拙者はこの都市に長く滞在していたことがあるのだ。 カグツチのことならばよく知っておる。 |
Bang |
バング
それで、ここからどうする? 手分けして車掌を探すのでござるか? |
Bang |
ラーベ
んー、手分けできれば早いかもしれないけど、 生者の気配に寄ってくる奴らがいるからなぁ。 |
Raabe |
ラーベ
やっぱり、戦力を分散するのはリスクが大きい。 ひとりのところを襲われても逆に時間がかかるだけだし。 |
Raabe |
バング
成程。で、あるならば、皆で行くしかないでござるな。 |
Bang |
バング
な〜に、この辺は拙者の庭も同然でござる。 案内ならば拙者に任せるでござるよ! |
Bang |
バング
確かすぐそこの角に、美味い『けばぶ』があるから 皆、腹ごなしでも……ん? |
Bang |
バング
なんと! 店がなくなっているでござる! おかしいでござるな、確かそこに建物が……。 |
Bang |
バング
いや、そもそもあんな建物でござったか? 拙者の記憶では、 いや、ぐぬぬ……これはどうなっているでござる。 |
Bang |
ラーベ
この景色を生み出した者と、バングの記憶にあるイメージに ズレがあるということだよ。 |
Raabe |
ラーベ
時代が異なるのか、そもそも別の場所なのか、それとも 元々の『認識がズレ』ているのかはわからんが……。 |
Raabe |
ラーベ
なんにせよ、手探り状態で進んでいくしか……ん? レイ? おい? |
Raabe |
シエル
レイさん!? |
Ciel |
テンジョウ
レイ、大事ないか? |
Tenjo |
イザヨイ
……見たところ怪我はなさそうですね。 気を失っていただけのようです。 |
Izayoi |
テンジョウ
其方らだけか。他の者はどこへ行ったのだ? |
Tenjo |
テンジョウ
それにこの場所は……先ほどまでとは様相が異なる。 我らはいつの間にか、別の車両に移動したのであろうか。 |
Tenjo |
イザヨイ
いえ……この感覚……。 おそらくここは、何者かの意識の中ですね。 |
Izayoi |
テンジョウ
成程。ならばその者がどこかに―― |
Tenjo |
イザヨイ
待ってください、誰かいます! |
Izayoi |
???
御館様、ご報告に参りました。 |
??? |
???
入れ。 |
??? |
間者
失礼致します。 |
Agent |
仮面の人物
どうであった? |
Masked Person |
間者
先方は、御館様の申し出に応える気はまるでありませぬ。 |
Agent |
間者
使いの者を捕らえ、まるで申し出そのものをなかったかのような 振る舞い。戦火はなおも拡大し、今や全土に……。 |
Agent |
仮面の人物
……守備隊はどうか。 |
Masked Person |
間者
徹底抗戦により戦線はかろうじて維持できておりますが……。 |
Agent |
仮面の人物
……よい。申せ。 |
Masked Person |
間者
……主力部隊はすでに壊滅の憂き目にございます。 残りの部隊も奮闘なれど、そう長くは……。 |
Agent |
間者
また、焼け出された民の多くは城を目指しております。 このままでは城内が避難民で溢れることになりましょう。 |
Agent |
仮面の人物
左様か……。大義であった。もうよい、下がれ。 |
Masked Person |
間者
……ハッ、では。 |
Agent |
仮面の人物
…………。 |
Masked Person |
仮面の人物
民は全て受け入れよ。ひとり残らず、全てだ。 |
Masked Person |
間者
……仰せのままに。 |
Agent |
仮面の人物
苦しみを被るのは民ばかりか……。 |
Masked Person |
???
レイさん…… レイさん! |
??? |
ラーベ
意識が戻ったか。様子はどうだ? |
Raabe |
シエル
体のどこにも異常は認められません。 |
Ciel |
ラーベ
テンジョウとイザヨイも目を覚ましたか。 そちらも大丈夫そうだな。 |
Raabe |
イザヨイ
私たちが意識を失ってから、 どのくらいの時間が経ちましたか? |
Izayoi |
シエル
約320秒です。 |
Ciel |
ラーベ
やはり『レイの時』と同じ現象か? |
Raabe |
イザヨイ
おそらくは。 |
Izayoi |
ラーベ
うーん……とりあえず、話を聞かせてくれるか。 |
Raabe |
ラーベ
成程……戦時下らしき世界か。 |
Raabe |
ラーベ
その人物の素性が掴めれば、 もう少しこの列車のヒントも得られるかもしれないが……。 |
Raabe |
イザヨイ
……戦争……。 |
Izayoi |
イザヨイ
戦争は、好きではありません。 |
Izayoi |
イザヨイ
いかに大義を掲げようと、人同士が争い、 何の関係もない人々を大勢巻き込むなど、決して許されません。 |
Izayoi |
イザヨイ
少なくともあの人物は……自分から戦争を始める類の 人物とは思えませんでした。 |
Izayoi |
ラーベ
ふむ……だがまあ、現時点では情報が少なすぎる。 |
Raabe |
ラーベ
確かに3人がその人物の意識に 介入を受けたことは気になるが……。 |
Raabe |
ラーベ
答えの出ない推理に時間を使うよりは 車掌を探した方が早そうだな。 |
Raabe |
バング
確かに、猶予がいつまであるか わからぬこの状況でござるからな。 |
Bang |
バング
ささっと探して、車掌がいないのであれば 別の車両にいくでござるよ。 |
Bang |
シエル
生体反応を検知。近いです。 |
Ciel |
ラーベ
生体反応と来たか。車掌であればいいが…… 警戒は緩めるんじゃないぞ。 |
Raabe |
ジン
む、貴様たちは…… 死者、ではないな。 |
Jin |
イザヨイ
ジン兄様! ご無事だったのですね! |
Izayoi |
ジン
ツバキ? どうしてここに。 |
Jin |
イザヨイ
決まっているでしょう、ジン兄様が心配だからです! |
Izayoi |
ジン
僕を追ってきたのか……無茶をするな。 |
Jin |
ジン
だけど、僕にはここでやるべきことがあるんだ。 お前は先に、自分のいるべき世界に戻っていてくれ。 |
Jin |
イザヨイ
ですが、ジン兄様……。 |
Izayoi |
バング
…………っ! |
Bang |
テンジョウ
バング? どうかしたのか? |
Tenjo |
バング
ジン=キサラギ……ここで会ったが100年目ッ!! 我が主の仇は取らせてもらうでござる!! |
Bang |
ラーベ
おいおい!? なにしてる!? |
Raabe |
ジン
……何者だ。何故僕を狙った? |
Jin |
バング
拙者はシシガミ=バング! 我が主の仇であるお主に、ここで会えるとは……! |
Bang |
バング
お主の命は、拙者が討たせてもらうでござる! |
Bang |
ジン
……僕には関係のない話だ。 |
Jin |
バング
なにおう!? |
Bang |
ジン
僕は殺すべき相手を追ってここに来た。 くだらない復讐などに付き合うつもりはない。 |
Jin |
バング
お主になくとも、拙者にはある。いざ、尋常に!! |
Bang |
イザヨイ
な、なぜお二人が……!? やめてください、バングさん! |
Izayoi |
1: 二人を止めよう! 殺し合いなんてダメだ! | |
イザヨイ
ええ、そうですね……私も加勢します。 なんとか二人を止めましょう! |
Izayoi |
ーーー/
Summary | |
---|---|
テンジョウの言葉にバングは拳を収め、ジン
は立ち去った。イザヨイはジンのためにも列 車を止める、と決意を新たにする。 |
バング
ぐ……うぅ……。 |
Bang |
イザヨイ
ジン兄様! そこまでです、刀を納めてください! |
Izayoi |
ジン
……降りかかる火の粉を払っただけだ。 殺すつもりはない。 |
Jin |
バング
おのれ、ジン=キサラギ……あやつだけは必ず拙者の手で…… 殿の仇は、拙者が取らねばならぬのだ……。 |
Bang |
テンジョウ
もうよせ、バング。 |
Tenjo |
バング
テ、テンジョウ殿。いや、拙者は止まることなどできぬ……。 |
Bang |
テンジョウ
無理をするでない。其方は人を探しているのであろう? 本来の目的を忘れるな。 |
Tenjo |
テンジョウ
其方にとって一番大切なことはなにか。それを思い出せ。 |
Tenjo |
バング
…………そう、でござるな。 確かに、テンジョウ殿の言う通りでござる。かたじけない。 |
Bang |
イザヨイ
ジン兄様。兄様はこの列車で誰を探しているのですか? |
Izayoi |
ジン
……お前には関係のないことだ。 |
Jin |
イザヨイ
いいえ……この列車は、魂を死へと運ぶ存在。 そのような場所に兄様をひとりでは行かせられません。 |
Izayoi |
イザヨイ
どうか私と共に、お戻りください……! |
Izayoi |
ジン
……それはできない。 |
Jin |
ジン
すまない、ツバキ。 だが僕は『あれ』を見つけなければ……。 |
Jin |
イザヨイ
ジン兄様……! |
Izayoi |
ラーベ
……いいのか、一緒に行かなくて。 |
Raabe |
イザヨイ
一緒に行ったとしても、私にはあの方を 止めることはできません……昔から、そうでした。 |
Izayoi |
イザヨイ
ならば私は、この列車を止めます。 |
Izayoi |
イザヨイ
それがジン兄様を引き留めるための、最良と判断しました。 |
Izayoi |
ラーベ
そうか……冷静かつ合理的な判断ってやつだな。 |
Raabe |
ラーベ
まあ我々としても、一緒に来てくれた方が助かる。 まだこの列車は、わからないことの方が多いからな。 |
Raabe |
イザヨイ
……ええ。先を急ぎましょう。 |
Izayoi |
7号車 名も知らぬ魂/
Summary | |
---|---|
霧に包まれる車両で仮面の人物の夢を見る。
そして乗客の記憶が目の前に現れた。立って いたのは、セリカ、ナインの姉妹だった。 |
ラーベ
む……。 |
Raabe |
バング
霧が出てきたでござるな。 これはまた……難儀でござる。 |
Bang |
シエル
視界が制限されています。 |
Ciel |
シエル
敵性反応は今のところありませんが、 乗客に接触する可能性があります。周囲に気を付けてください。 |
Ciel |
テンジョウ
はぐれてしまうと、合流するのが大変そうだ。 |
Tenjo |
イザヨイ
ここまで視界が悪いと、手をつないだ方が安全な気もしますが、 そうすると亡霊に対して対処が遅れかねませんね。 |
Izayoi |
ラーベ
そこまでしなくとも気をつけていれば…… あれ? レイは? |
Raabe |
赤ん坊
ほぎゃぁ、ほぎゃぁ! |
Baby |
???
おお、どうした。 |
??? |
???
お腹が空いた……はまだであろう? おしめも先ほど替えたばかり……。 |
??? |
???
ああ、落ち着くがよい。 |
??? |
赤ん坊
ほやぁ……。 |
Baby |
仮面の人物
なるほど……其方、抱き上げて欲しかったのだな。 |
Masked Person |
仮面の人物
それにしても、其方は調子がいいな。 抱き上げた途端に泣き止むとは。 |
Masked Person |
仮面の人物
それほど、母が恋しかったのか? ふふ……。 |
Masked Person |
仮面の人物
今日は天気がよい。 太陽がイカルガの地を明るく照らしている。 |
Masked Person |
仮面の人物
……いずれ其方は、余の歩んできた道を引き継ぎ、 歩むことになるだろう。 |
Masked Person |
仮面の人物
賢しく育った其方が、 民を幸せに導くことを願ってやまない。 |
Masked Person |
仮面の人物
其方がその目で見る世の中が、平穏であるよう…… 出来る限りのことを……。 |
Masked Person |
仮面の人物
だからどうか。どうか、強く。そして叶うなら、幸せに。 ホムラ―― |
Masked Person |
テンジョウ
…………。 |
Tenjo |
イザヨイ
……おふたりのその顔。もしかしてですが…… どなたかの記憶、もしくは意識の中に入られましたか? |
Izayoi |
1: 入ってました イザヨイさんも? | |
イザヨイ
やっぱり……そうでしたか。私もです。 |
Izayoi |
イザヨイ
ということは、あなたもなのですね。 |
Izayoi |
テンジョウ
余も見ていた。ひとりの女性が、 赤子を抱き上げているところであった。 |
Tenjo |
テンジョウ
……ふたりも同じものを見たか? |
Tenjo |
イザヨイ
はい。 女性が赤ちゃんをあやしてる光景でした。 |
Izayoi |
テンジョウ
3人とも同じものを見たというのか……。 今のは一体何であろうか。 |
Tenjo |
イザヨイ
わかりません。ですがあの女性の……赤ん坊への 深い愛情は強く感じられました。 |
Izayoi |
テンジョウ
うむ……あの慈しむような声色。とても優しそうであった。 |
Tenjo |
テンジョウ
余にも子供が出来たら、あのように接することが できるであろうか。 |
Tenjo |
イザヨイ
自分の子供ならば、できるのではないでしょうか。 ……想像でしかありませんけれど。 |
Izayoi |
ラーベ
あ、いたいた。いきなり立ち止まらないでくれ。 危うくはぐれるところだ。 |
Raabe |
イザヨイ
すみません。 |
Izayoi |
バング
ラーベ殿、いたでござるか? |
Bang |
ラーベ
ああ、こっちだ。 |
Raabe |
ラーベ
まったく、急に3人そろって立ち止まるんじゃない。 びっくりしただろ。一体どうしたんだ? |
Raabe |
テンジョウ
実は、3人一緒に誰かの意識か夢の中に入ったようでな。 |
Tenjo |
ラーベ
……記憶? それは……。 |
Raabe |
シエル
っ、お話中にすみません。 前方に反応があります。なにか……誰か、います。 |
Ciel |
男
…………。 |
Man |
バング
あれは乗客……で、ござるか? |
Bang |
イザヨイ
座ったまま動きませんね。声も上げず身じろぎもしないのは、 少し気味が悪いです。 |
Izayoi |
???
ただいまーっと。 |
??? |
セリカ
さ〜て、今日は気合い入れてご飯作るよ〜。 何品くらい作れるかな……んー。 |
Celica |
セリカ
いつもより人数多いんだし、 いっぱいあったほうがいいだろうし。 |
Celica |
セリカ
ま、いっか。作れるだけ作っちゃお! 久し振りの家族団らんだもん、ご馳走、ご馳走。 |
Celica |
テンジョウ
……これは……なんだ? |
Tenjo |
イザヨイ
乗客の生前の記憶……でしょうか? |
Izayoi |
イザヨイ
しかし異質です。これまで接触してきた亡霊たちは、 ただ眠るように夢を見ているだけだったのに。 |
Izayoi |
イザヨイ
自発的に動き、話しているなんて……。 |
Izayoi |
シエル
……生体反応はありません。 ですが……亡霊とも違うもののような……。 |
Ciel |
???
ただいま。 |
??? |
セリカ
あ、おかりなさい、ナインお姉ちゃん。 今日は早かったね! |
Celica |
ナイン
早く帰れって言ったのセリカじゃない。 ……あなたとの約束は守るわ。 |
Nine |
セリカ
ありがと。じゃあ早速取り掛かるね! 今日はご馳走。色々作るよ、楽しみにしてて。 |
Celica |
ナイン
いつも楽しみにしてるわよ、セリカの作ってくれる食事は。 |
Nine |
ナイン
……ただ、一緒に食べることになる相手に不満はあるけど。 せっかくのセリカの手料理がまずくなるわ……。 |
Nine |
ナイン
そもそも、あいつに味なんてわかるわけないじゃない。 セリカのご飯なんて、あの男にはもったいないわ。 |
Nine |
ナイン
水と雑草でも平気な顔して食べるわよ、きっと。 |
Nine |
セリカ
もう、お姉ちゃん。そんなこと言わないの。 今日はすっごく久し振りにみんなでご飯食べられるんだから。 |
Celica |
ナイン
…………わかってるわよ。 |
Nine |
バング
……なにやら複雑な家庭の事情があるようでござるな。 |
Bang |
ラーベ
そうだねぇ。……めちゃくちゃプライベートを のぞき見している感じになってるな、これ。 |
Raabe |
ナイン
ところで、セリカ気づいてる? |
Nine |
セリカ
うん。知ってる。 そこになにかよくないものが溜まってるね……。 |
Celica |
ナイン
悪霊の類いかしら。 いずれせによ、私の家に来るなんていい度胸だわ。 |
Nine |
ナイン
己がいかに無価値か、思い知らせてあげないと。 |
Nine |
シエル
敵性反応を確認! |
Ciel |
バング
な、なにやらこちらを見てるでござるよ! 違うでござる! 拙者たちは悪霊ではござらん! |
Bang |
イザヨイ
あなた方に敵対するつもりはありません! |
Izayoi |
ナイン
へえ。私たちが気づかないとでも思ってたみたいね。 無様に慌てふためているけど、もう遅いわ。 |
Nine |
セリカ
早く追い払っちゃおう! |
Celica |
セリカ
それで、お姉ちゃんと父さんに食べてもらう晩ご飯、 作らなくちゃ。 |
Celica |
ラーベ
レイ、テンジョウ下がれ! |
Raabe |
シエル
来ます! 対象を補足、戦闘態勢に移行します! |
Ciel |
ーーー/
Summary | |
---|---|
一行を敵と見なし迫る二人に応戦すると、や
がて影のように消えてしまう。霧の中残され た男はひとり、ただじっと座り込んでいた。 |
シエル
……敵性反応の消滅を確認。 |
Ciel |
イザヨイ
消滅……? 消えたのですか。 |
Izayoi |
ラーベ
らしい。ひとまず危機は去ったようだ。 |
Raabe |
バング
ふぅ……しかし、今のは何でござったのか。 |
Bang |
シエル
セリカさんと、お姉さんのナインさん……でしたね。 |
Ciel |
イザヨイ
お知り合いでしたか? |
Izayoi |
ラーベ
ああ、まあな。といっても向こうは、こっちのことは わからなかったみたいだが。 |
Raabe |
ラーベ
今のも……亡霊か? |
Raabe |
イザヨイ
いえ……違うと思います。 恐らく、誰かの記憶が強く形を成したものでしょう。 |
Izayoi |
イザヨイ
……誰かの見ている夢が、具現化したもの……というと、 近いでしょうか。 |
Izayoi |
テンジョウ
誰かの……夢? 誰の夢だ? 今しがた目にした少女らしい亡霊は、どこにもいないようだぞ。 |
Tenjo |
ラーベ
となると、該当者はそこの『彼』じゃないか? |
Raabe |
テンジョウ
そうか。この男の夢が、形になって現れたか。 |
Tenjo |
テンジョウ
少女たちの話に出てきた、父親であろうか。 安らかな眠りであればよいのだが……。 |
Tenjo |
ラーベ
かもしれないね。証拠はないけど。 かといってわざわざ確かめる必要もないだろ。 |
Raabe |
ラーベ
それより、今は車掌だ。先へ進もう。 |
Raabe |
シエル
はい、わかりました。 |
Ciel |
8号車 旅立つ魂/
Summary | |
---|---|
人気のない車両に、ふらふらと男が現れた。
言葉を交わすと、男は徐々にリッパーとして の記憶を取り戻し、一行に牙をむく。 |
イザヨイ
……静かですね。 |
Izayoi |
バング
この列車においてはおかしな言い方かもしれぬが、 人の気配がしないでござるな。 |
Bang |
テンジョウ
そうだな。この車両には誰もいないのだろうか。 |
Tenjo |
ラーベ
空なら空ってどこかに書いておいてほしいな……。 探す手間が省けるのに。 |
Raabe |
シエル
現在、近辺に生体反応や動体反応、 不審な物音などは感知されません。 |
Ciel |
シエル
もう少し先に進んで……レイさん? |
Ciel |
シエル
レイさん!? |
Ciel |
ラーベ
おい、どうしたレイ!? |
Raabe |
シエル
原因不明です。レイさん! しっかりしてくださ―― |
Ciel |
仮面の人物
ふむ……。 |
Masked Person |
仮面の人物
これは裁可してもよかろう。 |
Masked Person |
仮面の人物
これは……ううむ。難しいものよな。 誰も彼もの望みは叶えてやれぬものな……。 |
Masked Person |
仮面の人物
ふぅ……。 |
Masked Person |
仮面の人物
こんな小さな書面で、多くの人の暮らしが左右されていく。 それが、余がなさねばならぬこととはいえ……。 |
Masked Person |
仮面の人物
む? これは……書類ではないな。 ……手紙? |
Masked Person |
仮面の人物
……一体誰から……あ。 |
Masked Person |
仮面の人物
あやつからの手紙、か。 |
Masked Person |
仮面の人物
まったく、こんなところに忍び込ませるなんて。 誰かに見つかったらどうするつもりなのか。 |
Masked Person |
仮面の人物
……いや、あやつのことだ。 そんな下手は踏まぬか。 |
Masked Person |
仮面の人物
…………。 |
Masked Person |
仮面の人物
ふふ。こちらの心配ばかりだな。 今はあちらの方がよほど厳しい状況だろうに……。 |
Masked Person |
仮面の人物
……余は、其方のほうが心配だ。 |
Masked Person |
テンジョウ
ここは……あの者の記憶の中、か……。 |
Tenjo |
イザヨイ
どうやらそのようですね。 |
Izayoi |
テンジョウ
であるならば、今あの者が手にしている手紙は、 よほど大切な記憶なのだろうな。 |
Tenjo |
テンジョウ
面で表情は見えぬが、 声色のなんと柔らかくて、愛おし気なことか。 |
Tenjo |
イザヨイ
恋文……でしょうか。 |
Izayoi |
テンジョウ
そうかもしれぬな。 そうであってほしい。 |
Tenjo |
テンジョウ
そうであったら嬉しいと、不思議と思ってしまうのだ。 |
Tenjo |
???
レイさん……レイさん! |
??? |
シエル
はっ……大丈夫ですか? |
Ciel |
シエル
ラーベさん、レイさんの意識が戻りました。 バイタルは正常のままです。 |
Ciel |
バング
おお、気が付いたか。それはよかった。 |
Bang |
ラーベ
テンジョウとイザヨイも、 つい今意識を取り戻したところだ。 |
Raabe |
ラーベ
なんなんだ、お前たち。 3人同時に倒れるとか、びっくりするから勘弁してくれ。 |
Raabe |
テンジョウ
倒れた……余たちがか。 |
Tenjo |
ラーベ
そうだ。ふらふら〜っとな。 |
Raabe |
イザヨイ
そうでしたか……ご心配をおかけしてすみません。 私は、もう大丈夫です。 |
Izayoi |
ラーベ
そんならいいが。なにがあったんだ? 何者かに襲撃でもされたか? |
Raabe |
イザヨイ
いいえ、そうではありません。 ……簡単に説明しますね。 |
Izayoi |
ラーベ
……なるほどな。 誰かの記憶に引きずり込まれたと。 |
Raabe |
バング
それで、3人とも同じ記憶を見たのでござるか。 |
Bang |
テンジョウ
ああ。おそらく女性だろう仮面の者が、 恋文らしきものを目にして喜んでいた。 |
Tenjo |
テンジョウ
恐ろしい記憶や、悪い記憶などではなかった。 危ない目に遭ったわけではない、安心してくれ。 |
Tenjo |
ラーベ
ふーむ……そうか。 |
Raabe |
シエル
何者かの害意ある襲撃というわけでないようですね。 |
Ciel |
ラーベ
今のところはな。だが油断はしてくれるなよ。 それと、なにか問題が生じたらすぐに言ってくれ。 |
Raabe |
イザヨイ
ええ、わかりました。 レイさんの様子にも、気を配っておきます。 |
Izayoi |
ラーベ
そいつは助かる。 |
Raabe |
ラーベ
さて、じゃあ動けるようなら車掌探しの続きといくか。 問題ないか? |
Raabe |
イザヨイ
はい。動けます。 |
Izayoi |
バング
では、捜索再開でござるな! ……うん? |
Bang |
男
……………………。 |
Man |
シエル
あれは……。 |
Ciel |
テンジョウ
なにやら、他の亡者とは様子が少し違うな。 じっとこちらを見つめているようだぞ。 |
Tenjo |
1: なにがご用ですか? 車掌さんを見かけませんでしたか? | |
男
……………………。 |
Man |
男
…………ご用? |
Man |
男
……………………。 |
Man |
男
…………車掌? |
Man |
男
……おい、オマエ……オレが……見えてんのか。 |
Man |
男
オレが。本当に。ミえてるって? マジで? マジマジのマジに? |
Man |
男
……ッハ。 |
Man |
男
ッハハ、ヒッヒヒ、ヒャッハハハハ!! |
Man |
イザヨイ
下がってください、様子がおかしいです。 |
Izayoi |
シエル
あなたは何者ですか? |
Ciel |
男
何者? さぁ……何者だったんだろ。 オレはダレで、ココはドコ? |
Man |
男
あ〜アァ、あァ、わっかんねぇ……なんもわかんねぇ。 でも……オレは……。 |
Man |
ラーベ
あ、お前……! |
Raabe |
1: リッパー! リッパー? | |
リッパー
……リッパー。うん。うんうん。 へぇ、そっか、オレ『リッパー』っていうのか。 |
Ripper |
リッパー
りっぱー? リッパー。あー……言われてみれば確かに。 そんな名前だった気がしてきたぁ……。 |
Ripper |
リッパー
やぁっぱり。なんとなくだけど、オレのこと知ってるような 気がしたんだよねぇ〜。そんなニオイがしてさぁ。 |
Ripper |
リッパー
ッヒッヒ、あ〜よかったぁ。そうそう、オレはリッパー。 オマエらがダレだか知らねーけど、よろしくね。 |
Ripper |
バング
なんだ、こやつ。妙な男であるな……。 |
Bang |
バング
やい、お主。一体どういうつもりで声をかけてきた? なにかよからぬ企みがあるのではなかろうな!? |
Bang |
リッパー
えー、たくらみ? んー、どうだろなぁ。 ただオレは……オレのことを教えてほしかっただけだよ。 |
Ripper |
リッパー
んで、オマエはそれを教えてくれた。 ありがとなぁ〜。 |
Ripper |
リッパー
おかげで……大事なものを思い出した。 だから……。 |
Ripper |
リッパー
<size=120%>お礼に、殺してやんよぉ!!!!</size> |
Ripper |
シエル
っ! レイさん……! 大丈夫ですか? |
Ciel |
シエル
敵性反応を感知。戦闘態勢に移行します! |
Ciel |
バング
突然切りかかるとはなんたる卑怯! 漢の風上にも置けぬでござる!! |
Bang |
リッパー
ククッ……ヒャッハハハハハ! オマエも、オマエも、オマエもオレを見てる……。 |
Ripper |
リッパー
いい感じだぁ〜〜〜! |
Ripper |
リッパー
さぁて……どいつから切り刻んでやろうかなぁ! |
Ripper |
イザヨイ
なんて危険人物なの……自我を保っているうえで、 見境なく攻撃することしか考えていないかのよう。 |
Izayoi |
イザヨイ
放置しておけません。我が手にて、断罪します! |
Izayoi |
リッパー
あぁ……こいよぉ……全員まとめてかかってこいやぁ!!! |
Ripper |
ーーー/
Summary | |
---|---|
リッパーを下すと、彼は満足したように敗北
を認める。「ここに車掌はいない」という言 葉を残し、再びふらふらと立ち去った。 |
リッパー
っ、ククク……いってぇ……メチャクチャしやがるじゃん。 あー、いてぇ。 |
Ripper |
シエル
……対象の敵性反応、低下していきます。 |
Ciel |
テンジョウ
負けを認めたか……? |
Tenjo |
リッパー
おーおー、認めた認めた。オレの負け〜〜〜。 あちこちボロボロ、こんなに痛いんじゃもうどうしようもねぇ。 |
Ripper |
リッパー
ヒッヒッヒッ……マジでいてぇ。 ああ、すげぇな。本当にいてぇ……。最高の気分だ。 |
Ripper |
バング
気味の悪い男でござるな。 |
Bang |
リッパー
そう嫌うなよ。安心しな。もう気がすんだ。 どっか狭くて暗い所で、大人しくしてることにするよ。 |
Ripper |
イザヨイ
……戦意がないというのなら、 これ以上は罪を問わずにおきます。 |
Izayoi |
リッパー
へっへ、アリガトさん。 そんじゃまー……バイバイ〜〜〜イ。 |
Ripper |
リッパー
あ。そーだ。 |
Ripper |
リッパー
オマエら、車掌探してるんだろ? |
Ripper |
シエル
は、はい。 |
Ciel |
リッパー
だったらよそに行くんだな。 ここには今にも消えそうな、亡霊しかいねぇよ。 |
Ripper |
テンジョウ
……行ってしまったな。 結局あの男は、何者だったのだろうか。 |
Tenjo |
ラーベ
今回の件に深く関わっているわけではなさそうだ。 だったら、あまり関係を持たないほうがいい。 |
Raabe |
ラーベ
彼が絡むと、どうしても物騒な展開になる。 |
Raabe |
イザヨイ
私も、そう感じてなりません。 |
Izayoi |
イザヨイ
行きましょう。 私たちは車掌を探して、列車を止めなければなりません。 |
Izayoi |
リッパー
……へぇ。車掌を探して、コイツを止めるのか。 そしたらオレもさっさと降りちまお〜。 |
Ripper |
リッパー
そんで……そうだなぁ。 どこ行こっかな〜……。 |
Ripper |
リッパー
どっかにチョロくて扱いやすい、 住処がねぇもんかなぁ〜っと。 |
Ripper |
9号車 忠義の魂/
Summary | |
---|---|
またも夢へと入り込み、バングのような人物
と『殿』との会話を耳にする。その後夢から 覚めると、列車では敵の襲撃を受けていた。 |
テンジョウ
ここの景色は興味深いな…… このようなもの、見たこともない。 |
Tenjo |
ラーベ
あー、ちょっとちょっと。なにが起きるかわからないから、 あまりその辺を触らないように。 |
Raabe |
シエル
スキャン完了。周囲に敵性反応はありません。 |
Ciel |
ラーベ
よし、では進むとしよう。早く車掌を探さないとね。 |
Raabe |
バング
むぅ……殿は一体いずこにおられるのか……。 殿〜!? どこでござるか、殿〜!! |
Bang |
ラーベ
こらこら! こんなところで大声を出すんじゃない!? またよからぬ霊やらが寄ってきたらどうする!? |
Raabe |
バング
ぬぅぅ、め、面目ない……。 |
Bang |
テンジョウ
ふふ……しかしシシガミよ。 其方がそこまで想う主君とは、どのような人物なのだ? |
Tenjo |
テンジョウ
やはり其方のように、真っ直ぐな者なのであろうか。 |
Tenjo |
バング
我が殿、でござるか? |
Bang |
テンジョウ
よければ聞かせてくれまいか。 其方もその方が、気が紛れよう。 |
Tenjo |
バング
そうでござるな……。 我が主は……素晴らしい人物でござった。 |
Bang |
バング
誰にでも公平で、誰よりも平和を愛し、 人々を慈しむ心に溢れているお方だ。 |
Bang |
バング
人の上に立つべき者は、ああいう方のことを指すのでござろう。 仕えることができた拙者はまこと誉れでござるよ。 |
Bang |
テンジョウ
そうか……善き主君であったのだな。 |
Tenjo |
バング
だが、拙者はその人を守れなかった。 |
Bang |
バング
絶対に守らねばならぬ此処一番の時に拙者は敗れ、 気がついたときには全てが終わっていた。 |
Bang |
バング
……なんとも情けない話でござるよ。 |
Bang |
イザヨイ
…………。 |
Izayoi |
バング
拙者、殿のお側にいることが出来ず、死に際も逸した 不甲斐ない身。だが、自害することを殿は許さぬ。 |
Bang |
バング
故に、拙者は決めたのだ。 |
Bang |
バング
もう一度あの方を、今度こそ助けられるなら…… 自分はなんでもすると。 |
Bang |
テンジョウ
其方の決意、よくわかった。 語ってくれた其方に感謝を申そう。 |
Tenjo |
テンジョウ
しかし、ふふ……そう気負うなとも言いたいのだが、 気負っている方が其方らしいと思えて仕方ないな。 |
Tenjo |
バング
テンジョウ殿……お気遣い、まことに痛み入る。 |
Bang |
バング
さて、しんみりする時間は終わりでござる! なんとしても殿を見つけねば! |
Bang |
ラーベ
ふーむ……しかし、車掌はどこにいるのやら。 |
Raabe |
ラーベ
これだけ探しても見つからないとなると そろそろ存在も疑わざるを得なくなって……。 |
Raabe |
ラーベ
なっ――お、おい、レイ!? |
Raabe |
???
なんと、そのようなことが。それはまことか? |
??? |
バング?
はい、お恥ずかしながら、まことにございます。 |
Bang? |
仮面の人物
では、其方の体調はもう万全なのだな? |
Masked Person |
バング?
は、おかげさまでなんの問題なく、元気にございます。 |
Bang? |
仮面の人物
しかし、川魚で腹を下し寝込むとは…… ある意味其方らしい。 |
Masked Person |
バング?
いや、殿! この三日間、拙者が厠から離れられなくなったのは、 朝食係を任せた部下の……。 |
Bang? |
バング?
いや、部下のせいにするのはよくないでござりまするな。 拙者も食中毒になどならぬよう、もっと胃袋を鍛えなければ! |
Bang? |
仮面の人物
しかし、その魚、よほど美味かったのだな。 余も是非一度、食してみたいものだ。 |
Masked Person |
バング?
な、な、なりませぬ! |
Bang? |
バング?
殿に万が一のことがあっては拙者……! |
Bang? |
仮面の人物
ふふふ、其方は心配性であるな。 |
Masked Person |
???
レイさん…… しっかりしてくださいレイさん! |
??? |
バング
気が付かれたか!? よかったでござるよ! |
Bang |
イザヨイ
こ、これは!? |
Izayoi |
バング
お主たちが倒れた直後に敵が現れたのでござる! 今しばらく持ちこたえるゆえ、準備を! |
Bang |
イザヨイ
はい! テンジョウさんこちらに! |
Izayoi |
テンジョウ
うむ、すまない。 |
Tenjo |
バング
では、切り抜けるでござるよッ! |
Bang |
ーーー/
Summary | |
---|---|
敵を退け、一同に夢の内容を語る。バングの
探す『殿』が夢の主であり、観測者である可 能性が高まった。一行は捜索を続ける。 |
ラーベ
……ふむ、成程。なかなか興味深い話だ。 |
Raabe |
バング
その者は、本当に拙者だったのでござるか? |
Bang |
バング
しかし拙者にはそのような出来事の記憶はござらんが……。 |
Bang |
イザヨイ
あの人が本当にバングさんだったのかはわかりません。 あくまで、よく似ていたという感覚です。 |
Izayoi |
バング
もしそれが本当に拙者だったとすれば…… もしやその、拙者が話していた相手とは……。 |
Bang |
テンジョウ
其方の主君である可能性が、高いな。 |
Tenjo |
ラーベ
ふむ……そうなると……バングの『殿』が このフィールドの観測者という可能性も……。 |
Raabe |
イザヨイ
何のお話ですか? |
Izayoi |
ラーベ
……いや、こちらの話だ。 |
Raabe |
ラーベ
とにかく、この列車にバングの『殿』がいる可能性は 結構高くなったと思うよ。 |
Raabe |
バング
そ、そうでござるか!? ならば急ごう、早く殿を探さねば! |
Bang |
ラーベ
あ、おい待て! ひとりで行動するんじゃない、こら!! |
Raabe |
テンジョウ
ふふ、本当に真っ直ぐな男であるな。 |
Tenjo |
終節① 冷たき魂/
Summary | |
---|---|
最後尾に着くも、車掌は未だ見つからない。
突如響いた剣戟の音を辿り先頭車両に戻る と、ジンが無数の亡霊に取り囲まれていた。 |
ラーベ
……これで、一通り車両は確認したんじゃないか? |
Raabe |
シエル
そうですね。 先頭車両から最後尾の車両まで、全て確認しました。 |
Ciel |
シエル
ですが……車掌らしき存在は確認できていません。 |
Ciel |
バング
どうなっておるのだ? どこかの車両で見逃したのでござろうか。 |
Bang |
テンジョウ
車両ひとつひとつはかなり広い。 入れ違いになったのかもしれぬ。 |
Tenjo |
イザヨイ
そもそも、私たちが想定しているような 姿ではないのかもしれません。 |
Izayoi |
イザヨイ
車掌という言葉に引きずられて、 人型のものだとばかり思っていましたが……。 |
Izayoi |
ラーベ
それを言い出すと、車掌の存在そのものが 本当にあるのかどうかから疑う必要も出てくるぞ。 |
Raabe |
バング
だが車掌がいなければ、どうやって列車を止めるのだ! 拙者は列車の操作などわからぬぞ。 |
Bang |
シエル
車両を破壊しますか? |
Ciel |
テンジョウ
それは……なんとかならないだろうか。 乗客のことを考えると、心が痛む。 |
Tenjo |
ラーベ
こちらとしても、どこにどんな影響が出るかわからないことは したくない。だが、降りなければ我々は死ぬ。 |
Raabe |
イザヨイ
連結部を破壊すれば、最後尾の車両だけ切り離すことも できるのではないでしょうか。 |
Izayoi |
ラーベ
これまで移動してきて、車両のつなぎ目なんてあったか? 扉を開けたら即別空間、って感じだっただろう。 |
Raabe |
テンジョウ
それに、今いる車両を切り離しても、逃れられるのは我等だけ。 イザヨイやバングが探している『大切な人』は救えぬぞ。 |
Tenjo |
イザヨイ
それは……。 |
Izayoi |
バング
ぐ、ぬう……。 |
Bang |
ラーベ
!? |
Raabe |
バング
この音は!? |
Bang |
シエル
先頭車両の方からです。剣戟……交戦中の物音です。 向かいますか? |
Ciel |
1: また誰かが襲われてるのかも! 車掌がいるかもしれない | |
テンジョウ
それはいけない。できるならば、助けてやらねば。 |
Tenjo |
バング
その御心に胸打たれましたぞ、テンジョウ殿。 |
Bang |
バング
拙者も追い詰められているところを助けられた身。 |
Bang |
バング
同じように苦難に立たされている者があるのならば、 助太刀いたしたい! |
Bang |
イザヨイ
確かに……そうですね。 先頭車両ということは、機関室も近いはず。 |
Izayoi |
イザヨイ
今その場にいなくとも、 異常を察して現れるかもしれません。 |
Izayoi |
バング
おお、なるほど! さすがはレイ殿、 冷静であるな。急いで向かおうぞ! |
Bang |
イザヨイ
先導します。着いてきてください! |
Izayoi |
シエル
了解しました! |
Ciel |
テンジョウ
なんと、これは……。 |
Tenjo |
イザヨイ
亡霊が……これほどたくさん集まっているなんて! |
Izayoi |
バング
戦っている者は無事でござるか!? |
Bang |
ジン
……亡霊たちの動きが乱れたと思ったら、お前たちか。 |
Jin |
イザヨイ
ジン兄様! これは一体……。 |
Izayoi |
ジン
話している暇はない。下がっていろ! 次から次へと現れる……亡霊どもめ、忌々しい。 |
Jin |
亡霊
オォォォォ……。 |
Ghost |
亡霊
オォオ……オォォォ……。 |
Ghost |
ジン
ちっ……また続々と出てきたか。 さっさと離れろ。邪魔だ。 |
Jin |
イザヨイ
そんな! いくらジン兄様でも無茶です! これだけの数をおひとりでなんて……! |
Izayoi |
イザヨイ
私も戦います! |
Izayoi |
ジン
……ふん。好きにしろ。 |
Jin |
ラーベ
レイ、シエル、こちらも戦闘準備だ。 捌き切らないと、そのうちこっちへも押し寄せてくるぞ! |
Raabe |
シエル
了解。戦闘態勢に移行。 |
Ciel |
シエル
レイさん、そばにいてください。 テンジョウさんは、もう少し後方へ下がってください。 |
Ciel |
テンジョウ
わかった。だが余に構うな。 自分の身の安全くらいは守ろう。 |
Tenjo |
バング
……っ。 |
Bang |
テンジョウ
バング……。 |
Tenjo |
バング
……心配めされるな。拙者、愛と正義のために戦う男。 |
Bang |
バング
敵とは言え、目の前の窮している者を見捨てられぬでござる。 シシガミ=バング、全力で助太刀いたす! |
Bang |
終節② 先逝く魂/
Summary | |
---|---|
開いた機関室に座していたのは、夢に現れた
仮面の人物……車掌である、テンジョウの肉 体だった。一行は彼女に最後の戦いを挑む。 |
亡霊
アァァアァァァァ……。 |
Ghost |
シエル
……敵性反応の消失を確認。 対象の排除を完了しました。 |
Ciel |
イザヨイ
はぁ、はぁ……。 これで全部ですか? |
Izayoi |
バング
の、ようでござるな……。 |
Bang |
ラーベ
なんとか乗り切ったか。 |
Raabe |
ジン
…………。 |
Jin |
イザヨイ
ジン兄様、これは一体……。 |
Izayoi |
イザヨイ
そうだ、やるべきこととおっしゃっていたのは、 どうなったのです? |
Izayoi |
ジン
……全ての車両を探して回った。 |
Jin |
ジン
だがどの車両にも、煩わしい亡霊がうろついているばかり。 僕が探しているものは見つからなかった。 |
Jin |
ジン
ツバキ……いや、イザヨイ。 貴様たちが探している車掌とやらもな。 |
Jin |
シエル
探していてくださったのですね。 |
Ciel |
ジン
見なかったという事実があるだけだ。 |
Jin |
ジン
僕の探しているものがないのなら、こんな列車に用はない。 すぐさま止めようと、ここまで来た。 |
Jin |
ジン
……見ろ。 |
Jin |
テンジョウ
……あ。なんと、気付かなんだ。 |
Tenjo |
シエル
機関室の扉が、少し開いています。 |
Ciel |
ラーベ
最初に開けようとしたときは、 確かに固く閉ざされていたはずだ。びくともしなかった。 |
Raabe |
ラーベ
なのに今はなぜ開いている……? |
Raabe |
ジン
さあな。理由など知る必要もない。 |
Jin |
ジン
僕はただこの列車を止めたいだけだ。 ここを管理している者がいるとすれば、ここ以外にはない。 |
Jin |
ジン
だから押し入ろうとしたんだが、それを阻むかのように 先程の亡霊たちが押し寄せてきたんだ。 |
Jin |
イザヨイ
中に、入られては困るものがあるのでしょうか? |
Izayoi |
ジン
知らない。だからそれを確かめに行く。 |
Jin |
1: 僕たちも行きます なにがあるのか気になるね | |
ジン
僕は貴様らがなにをどうしようと構わない。 好きにしろ。……僕も自分のやりたいようにやる。 |
Jin |
ジン
調査したいと言うのなら止めはしない。 貴様らがなにをしようと、僕には関係ないことだ。 |
Jin |
1: 私たちも行きます なにがあるのか気になるね | |
ジン
僕は貴様らがなにをどうしようと構わない。 好きにしろ。……僕も自分のやりたいようにやる。 |
Jin |
ジン
調査したいと言うのなら止めはしない。 貴様らがなにをしようと、僕には関係ないことだ。 |
Jin |
イザヨイ
あ、待ってください、ジン兄様! 私たちも行きましょう。 |
Izayoi |
バング
あいわかった。 鬼が出るか蛇が出るか。どこまでもお供するでござるよ。 |
Bang |
シエル
気を付けてください、レイさん。 私が先行します。 |
Ciel |
テンジョウ
これが……機関室? |
Tenjo |
ラーベ
とてもそうは見えないな。 どちらかというと、これは……。 |
Raabe |
シエル
誰かが座り込んでいます。 |
Ciel |
仮面の人物
…………。 |
Masked Person |
バング
あ……あ……。 |
Bang |
バング
<size=130%>あなた様は!!</size> おお、このようなところにおられたのですね!? |
Bang |
ラーベ
バング、どうした? |
Raabe |
バング
ラーベ殿、あの方が拙者の探し人でござる! 拙者の主でござる!! |
Bang |
バング
よもやまさかこのようなところにいらっしゃるとは…… 道理で見つからないわけでござる。 |
Bang |
バング
だがよかった、見つけられて本当によかったでござる! |
Bang |
バング
ええと……ああ、お姿を目の前にしてなお、 なんとお呼びすればよいかわからぬとは、不甲斐ない! |
Bang |
バング
ですがどうぞご安心くだされ、このシシガミ=バングが、 必ずやこの列車からお助けいたしますぞ! |
Bang |
ジン
……うかつに近付くな。妙だ。 |
Jin |
バング
妙? なんと無礼な! あの方は……うぬぬ、あの方は! まだはっきりと想い出せぬが……! |
Bang |
バング
とにかくとても高貴にして尊いお方でござるぞ!! |
Bang |
バング
さあ、主。どうぞこちらへ。……どうなされた? 拙者の声が聞こえぬでござるか? |
Bang |
仮面の人物
…………。 |
Masked Person |
イザヨイ
レイさん。 ……お気づきですよね? |
Izayoi |
1: 夢で見た人ですね 何度も会った人だ | |
イザヨイ
ええ。引きこまれた夢の中で……誰かの意識の中で、 何度も見ましたね。 |
Izayoi |
イザヨイ
ええ。繰り返し引き込まれた意識の中で、 あの人の姿を見てきました。 |
Izayoi |
イザヨイ
私たちを取り込んだ意識の主は、 おそらくあの方なのでしょう。 |
Izayoi |
ラーベ
あれが、レイたちが見てきた人物……? バングの主の記憶を見ていたのか。 |
Raabe |
テンジョウ
…………。 |
Tenjo |
シエル
テンジョウさん? どうしましたか? |
Ciel |
テンジョウ
ああ、そうか……。 |
Tenjo |
テンジョウ
あれは、余だ。余そのものだ。 |
Tenjo |
ラーベ
……なに? |
Raabe |
イザヨイ
それはどういうことですか? |
Izayoi |
テンジョウ
不思議な心地だ。初めてレイに、 見つけてもらえたときを思い出す。 |
Tenjo |
テンジョウ
己が鮮明に、描き出されていくかのような感覚。 |
Tenjo |
テンジョウ
『あれ』を目にしたことで、余は全て思い出したぞ。 ああ、何故忘れていたのであろうか……。 |
Tenjo |
テンジョウ
冥界列車の車掌は、余だ。 |
Tenjo |
シエル
え……? |
Ciel |
テンジョウ
いつからそのような役目にあったのかは、定かではないが…… 死の運び手として、余は死した者たちの魂を運んでいた。 |
Tenjo |
テンジョウ
だがいつの間にか、あそこにいる肉体から切り離され、 魂だけが列車の中を彷徨っていた……。 |
Tenjo |
テンジョウ
数多の乗客たちと同じように、自身の記憶に浸りながら…… 緩やかに消えゆく運命であった。 |
Tenjo |
テンジョウ
だがそこに……其方たちが現れた。 其方が余を見てくれた。 |
Tenjo |
ラーベ
……テンジョウの意識に引きずり込まれた レイがテンジョウを認識したことで、 |
Raabe |
ラーベ
魂が明確な姿形を得たわけだ。 |
Raabe |
ラーベ
それも『死せる魂』ではなく『ひとりの人』として。 |
Raabe |
バング
……なんと。 |
Bang |
バング
では、テンジョウ殿も拙者の主だというのでござるか……? |
Bang |
バング
テンジョウ……そうだ、テンジョウ様。 な、なぜ拙者は忘れていたのか。 |
Bang |
バング
『テンジョウ』こそ、 拙者のお仕えする唯一の主の名ではござらぬか! |
Bang |
テンジョウ
シシガミよ。其方もまた、思い出してくれたか。 |
Tenjo |
バング
も、申し訳ございませぬ!! |
Bang |
バング
これほど近くにおりながら、 主であることすら思い出せずにいたとは……! |
Bang |
テンジョウ
よい、許す。 |
Tenjo |
テンジョウ
余こそ、其方のことをまるで思い出せなかった。 余自身の記憶の中でお主の姿を見たというのにだ……。 |
Tenjo |
テンジョウ
なんとも情けない。薄情なことよ……。 |
Tenjo |
バング
とんでもない! 拙者のほうこそ! |
Bang |
テンジョウ
よい、よい。 そもそも、其方が余のことをわかるはずがないではないか。 |
Tenjo |
テンジョウ
記憶がないだけではない。 其方とは、面を外さずに言葉を交わしたことがないのだから。 |
Tenjo |
テンジョウ
ああ、だが、そうか……其方は余を追いかけて、 この列車に乗り込んできてくれたのだな。 |
Tenjo |
テンジョウ
心配をかけたのだな……。ありがとう、シシガミ。 |
Tenjo |
バング
も……もったいないお言葉でございます。 テンジョウ様。 |
Bang |
バング
拙者は…… テンジョウ様をお救いできれば……。 |
Bang |
バング
いや……今しがた、肉体から切り離された魂だと おっしゃいましたか? |
Bang |
テンジョウ
うむ。申した。 |
Tenjo |
バング
であれば…… このままでは、テンジョウ様の魂が危険でござる。 |
Bang |
バング
他の亡霊のように自我をなくしてしまう前に、 どうか速やかにお体にお戻りください! |
Bang |
バング
そちらにおわす、動かぬ仮面のテンジョウ様こそが、 御身のお体でございましょう! |
Bang |
テンジョウ
うむ……それができぬのだ。 |
Tenjo |
イザヨイ
できないとは、どうしてですか? |
Izayoi |
テンジョウ
それは……。 |
Tenjo |
仮面のテンジョウ
……其方らは……乗客だな。 |
Masked Tenjo |
ジン
……っ! |
Jin |
ラーベ
仮面をしたほうのテンジョウが……立ち上がった。 なぜ突然動き出した? |
Raabe |
仮面のテンジョウ
このような場所にまでやってきては……いけない。 列車の運行に……支障がでる……席へ戻るがよい。 |
Masked Tenjo |
仮面のテンジョウ
そして列車が終わりへ到達するまで…… 安らかに、過ごすといい……。 |
Masked Tenjo |
バング
テンジョウ様、なにをおっしゃっているのです! そのようなことできませぬ!! |
Bang |
バング
拙者はテンジョウ様を連れ戻すために ここへやってきたのでござる。 |
Bang |
バング
あなた様は我が主! 天ノ矛坂テンジョウ! 祖国イカルガを治める領主様にあらせられます! |
Bang |
バング
断じて、冥界列車の車掌などではございませぬ! |
Bang |
仮面のテンジョウ
……車内では……車掌である余の指示に……従いなさい。 でなければ……危険、であろう。 |
Masked Tenjo |
バング
<size=130%>テンジョウ様!</size> |
Bang |
テンジョウ
落ち着け、シシガミ。……我が肉体ながら残念なことだが…… あれは己を『車掌』と定めておる。 |
Tenjo |
テンジョウ
其方の言葉は理解できまい……。 |
Tenjo |
バング
そんな……なぜ……。 |
Bang |
ラーベ
そう観測されているからだろうな。 |
Raabe |
イザヨイ
観測……ですか。 |
Izayoi |
ラーベ
自分を、魂を運ぶ列車の主だと定め続けているのは、 それがあの仮面のテンジョウにとって紛れもなく『事実』だからだ。 |
Raabe |
ラーベ
この空間にこの列車が存在するように、 あのテンジョウを車掌と定めた者がいる。観測者だ。 |
Raabe |
イザヨイ
この世界を観ている者……。 |
Izayoi |
イザヨイ
では、それを否定するためには、 観測者による観測を断ち切らねばなりませんね。 |
Izayoi |
ラーベ
ほう、理屈に詳しいじゃないか。話が早い。 |
Raabe |
イザヨイ
私の封印兵装・十六夜は、本来そういった 他者の観測に対抗することができる武具ですから。 |
Izayoi |
ラーベ
なるほど、そいつは興味津々だ。 |
Raabe |
バング
ええい、そのようなことより、 結論を早く言ってほしいでござる! |
Bang |
バング
どうすればテンジョウ様を お助けすることができるでござるか!? |
Bang |
ジン
……他者の認識によって自己認識が歪められているのなら、 それを修正するほかない。 |
Jin |
バング
であるからして、具体的にはどうすればよいのだ! |
Bang |
ラーベ
現状の観測を塗り替えるためには、 より上位の観測者に観測させなければならない。 |
Raabe |
ラーベ
つまりこの場合は……レイ。 |
Raabe |
ラーベ
お前がテンジョウを車掌ではなく 『テンジョウ』として認識する必要がある。 |
Raabe |
1: いつもやってるやつですね 任せてください! | |
ラーベ
そうだ。もう慣れたもんだろう。 |
Raabe |
ラーベ
よーし、いい返事だ! |
Raabe |
テンジョウ
レイ、其方が観測を? そのようなことができるのか。 |
Tenjo |
テンジョウ
……ああ。其方のその不思議な力が、そうか。 だからこそ、其方は余の存在をも繋ぎ止めることができたのだな。 |
Tenjo |
ジン
それで? 僕たちはどうすればいい? |
Jin |
シエル
戦います。 |
Ciel |
バング
戦う!? テンジョウ様とか!? そのようなこと、できるはずがなかろう! |
Bang |
ラーベ
交戦することで相互に強く認識を持つことができる。 |
Raabe |
ラーベ
テンジョウは観測者としての レイを強く認識し、 |
Raabe |
ラーベ
レイはより鮮明に テンジョウを認識できるようになる。 |
Raabe |
ラーベ
まどろっこしい理屈なんか説明しても時間の無駄か。 とにかく、そうするのが一番手っ取り早いんだ! |
Raabe |
イザヨイ
バングさんのためらわれるお気持ちはわかります。 |
Izayoi |
イザヨイ
ですが忠義ある者ならば、 主君のために己の矜持をも捧げてください。 |
Izayoi |
バング
己の矜持……。 |
Bang |
イザヨイ
あなたはそれができる人物のはず。 |
Izayoi |
バング
イザヨイ殿……。 |
Bang |
テンジョウ
余からも、頼む。シシガミよ。 |
Tenjo |
テンジョウ
余の肉体に、余の魂を受け入れるよう説得してくれ。 言葉では通じぬから、その自慢の拳で。 |
Tenjo |
バング
そ、そのような……。 |
Bang |
バング
……いえ。承知いたしました。 |
Bang |
バング
このシシガミ=バング、 主への忠義ゆえに、主自身と戦いまする! |
Bang |
ジン
足手まといになるなよ。 |
Jin |
バング
お主こそ! 遅れを取るでないぞ! |
Bang |
ジン
ふん……。 |
Jin |
シエル
テンジョウさんの体から敵性反応を確認しました。 反応、増大しています。 |
Ciel |
仮面のテンジョウ
……席に、戻るがよい。 我が……憐れなる乗客たちよ……。 |
Masked Tenjo |
イザヨイ
来ます! |
Izayoi |
バング
うおぉぉぉぉ! 参る!! |
Bang |
エピローグ/
Summary | |
---|---|
肉体と魂は一つとなり、列車は停止。皆は残
された時間を、テンジョウと共に過ごす。 もうしばし、このひと時に幕が下りるまで。 |
仮面のテンジョウ
席、に……戻れ……。 死せる……べき……者たち……よ。 |
Masked Tenjo |
イザヨイ
まだ、完全には認識を塗り替えられていない……? よほど強い観測のもとにいるのですね。 |
Izayoi |
シエル
テンジョウさん。あなたは冥界列車の車掌ではありません。 ご自分の事をどうか思い出してください。 |
Ciel |
仮面のテンジョウ
…………。 |
Masked Tenjo |
仮面のテンジョウ
余、は……。 |
Masked Tenjo |
1: あなたはイカルガという国の領主だ あなたはバングが仕えた主だ あなたは心優しい母親だ あなたは誰かに愛された人だ | |
仮面のテンジョウ
……イカルガ……。 |
Masked Tenjo |
仮面のテンジョウ
余の……ああ……余の、愛した……祖国……。 |
Masked Tenjo |
仮面のテンジョウ
バング……。 |
Masked Tenjo |
仮面のテンジョウ
シシガミ=バング……。 ああ……懐かしや。懐かしい名……。 |
Masked Tenjo |
仮面のテンジョウ
母……親……? |
Masked Tenjo |
仮面のテンジョウ
余は……ああ、抱いた……この腕に…… 愛しい子を……。 |
Masked Tenjo |
仮面のテンジョウ
……愛、され……て……。 |
Masked Tenjo |
仮面のテンジョウ
……そう。かつて、ひととき……ほんのひととき…… 確かにあの人は……余の側に……。 |
Masked Tenjo |
テンジョウ
……………………。 |
Tenjo |
テンジョウ
……また其方に礼を言わねばならぬな。 |
Tenjo |
テンジョウ
ありがとう、レイ。 其方のおかげで……余はようやく、己を取り戻せた。 |
Tenjo |
シエル
テンジョウさんと、テンジョウさんが…… ひとつになったように、見えました。 |
Ciel |
シエル
魂が肉体に戻った、と解釈してよろしいですか? |
Ciel |
テンジョウ
うむ。どうやらそのようだ。 |
Tenjo |
テンジョウ
余の名は天ノ矛坂テンジョウ。 |
Tenjo |
テンジョウ
かつてひとつの国を総べ、頼もしき臣に恵まれ、 己を受け継ぐ子を成し、淡くも愛を教わった。 |
Tenjo |
テンジョウ
そして……。 |
Tenjo |
シエル
!? |
Ciel |
シエル
窯の出現を確認しました。 すぐ、そこです。 |
Ciel |
ジン
窯だと? |
Jin |
イザヨイ
これは……こんなところに窯が……!? |
Izayoi |
ラーベ
やはり車掌が……テンジョウが観測者だったか。 この窯こそが、列車の駆動力になっていたんだ。 |
Raabe |
ラーベ
そして観測者であるテンジョウは、 自らに『死の運び手』の役目を与えた。 |
Raabe |
バング
なにがなにやら、わからぬ……。 |
Bang |
バング
結局、テンジョウ様は列車を降りれるのか? 降りれないのか!? |
Bang |
テンジョウ
案ずるな、シシガミ。それに其方はもう知っていよう。 |
Tenjo |
テンジョウ
余は列車を降りられぬ。 なぜなら余は、もう死んでいるのだから。 |
Tenjo |
イザヨイ
えっ……!? |
Izayoi |
バング
そ、それは……。 |
Bang |
ラーベ
なんだ。本当に知っていたのか。 |
Raabe |
シエル
テンジョウさんが、すでに死んでいる……。 |
Ciel |
シエル
……確かに、 テンジョウさんからは生体反応がありません。 |
Ciel |
イザヨイ
そんな……。 |
Izayoi |
ラーベ
一番最初に 機関室に生体反応がなかったのを覚えているか? |
Raabe |
ラーベ
確証はないが、あのときからテンジョウの肉体は ここにあったんだろう。 |
Raabe |
ラーベ
だがすでに死んだ肉体だった。 だからシエルの索敵に引っかからなかった。 |
Raabe |
バング
では……では、テンジョウ様はどうなるのだ!? |
Bang |
テンジョウ
簡単なことだ。 このまま列車や魂たちと共に『死』へ向かう。 |
Tenjo |
バング
テンジョウ様……。 |
Bang |
テンジョウ
シシガミよ。死した余を、なおも追いかけてきてくれたこと、 助けようとしてくれたこと、嬉しく思う。 |
Tenjo |
バング
その、ような……もったいないお言葉……っ! |
Bang |
バング
拙者は……拙者はあなた様を、主君を守れなかった! |
Bang |
バング
あなた様が命を落とすとわかっていて、 お側でお守りできなかった家臣でござる! |
Bang |
バング
お救い出来なかった……今も、かつても。 申し訳ありませぬ……!! |
Bang |
テンジョウ
なにを謝ることがある。 |
Tenjo |
テンジョウ
……お主が、余の知っているシシガミと 同一の存在であるのか、余にはわからぬが……。 |
Tenjo |
テンジョウ
それでも其方がシシガミ=バングであるのなら。 |
Tenjo |
テンジョウ
其方が余の側にいなかったのは、 きっと余自身の指示であろう。 |
Tenjo |
テンジョウ
だから悲しむことはない。誇ってくれ。 其方は余のために、立派に働いたのだろうから。 |
Tenjo |
バング
テンジョウ様……。 |
Bang |
テンジョウ
であるならば、其方に責はない。 頭を下げるのは筋が違うというもの。 |
Tenjo |
テンジョウ
むしろ、余こそ其方に詫びねばなるまいな。 |
Tenjo |
バング
……滅相もない! |
Bang |
テンジョウ
…………さて、もうよいだろう。 ラーベ、この電車はどうすれば止まるのだ? |
Tenjo |
テンジョウ
車掌となったが、余には止め方がわからぬ。 |
Tenjo |
ラーベ
窯が冥府列車の動力なので、 窯を破壊すれば自然と止まるはず。 |
Raabe |
テンジョウ
そうか。ならば、止めてほしい。 いつまでもこのままではよくないであろう? |
Tenjo |
ラーベ
ああ。おそらくだが、ここは死と列車しかない世界の、 ものすごく小さなファントムフィールドだ。 |
Raabe |
ラーベ
このままにしておいても、終着駅に着けば消えてなくなるだけ。 その前に窯を破壊して停車させなければならないだろう。 |
Raabe |
ラーベ
もっとも、破壊前に世界としての情報は保全するけどな。 |
Raabe |
テンジョウ
余に難しいことはわからぬゆえ、その辺りは任せる。 ただ……列車に乗っている死者の魂はどうなるのであろうか。 |
Tenjo |
ラーベ
どうともならん。世界は停滞状態となる。 |
Raabe |
ラーベ
魂たちは列車の中で今まで通り、 緩やかに死への支度をするだろうさ。 |
Raabe |
テンジョウ
そうか……。ならばよい、窯は破壊してくれ。 |
Tenjo |
シエル
わかりました。 |
Ciel |
シエル
……第666拘束機関解放。次元干渉虚数法陣展開。 |
Ciel |
シエル
|
Ciel |
シエル
……反応の消失を確認。『窯』の破壊を完了しました。 |
Ciel |
ジン
……止まったか。 |
Jin |
ラーベ
私たちの任務は終了だな。いつでも帰還できるわけだが…… お前たちはどうする? |
Raabe |
テンジョウ
この世界は、停滞状態となるのだったな? |
Tenjo |
ラーベ
ああ。今はなにも変わってないが、窯がなくなった以上、 この世界をお前の観測通りに保つ力も働いていない。 |
Raabe |
ラーベ
世界を構築する全ての情報は、 いずれゆっくりとあるべき形に戻っていく。 |
Raabe |
テンジョウ
ならば、消えるまでの間、余はここに留まろうと思う。 |
Tenjo |
テンジョウ
死者である余に行くべきところはない。 乗客である多くの魂を慰めて過ごすつもりだ。 |
Tenjo |
バング
でしたら、今しばらくの間、拙者もお供いたします。 |
Bang |
テンジョウ
……余と共に死ぬ、などという戯れ言は聞かぬぞ? |
Tenjo |
バング
いいえ! 拙者はただ、この世界に留まれるのであれば その限界まで、テンジョウ様のお力になりたいのです! |
Bang |
テンジョウ
ふふ、そうか。それは頼もしいことよ。 |
Tenjo |
イザヨイ
それでしたら、私も付き合いましょう。 |
Izayoi |
イザヨイ
死者の魂はとても不安定です。 嘆きや悲しみを吸って、荒れ狂うこともあります |
Izayoi |
イザヨイ
そういった者を祓う役も必要になるでしょうから。 |
Izayoi |
イザヨイ
ジン兄様は……いかがされますか? |
Izayoi |
ジン
……しばらくは、この場に留まらねばならないようだからな。 勝手にさせてもらおう。 |
Jin |
ジン
まだ僕は、ここに僕の探しているものが…… その残滓だけでもありはしないかと思っている。 |
Jin |
ジン
……そのついでに、亡霊と剣を交えることがあれば、 対処するまでだ。 |
Jin |
1: 僕たちも手伝いたいです もう少しみんなといたいな | |
テンジョウ
其方らも? それは……本当に頼もしい。 ではひとつ、付き合ってもらおうか。 |
Tenjo |
テンジョウ
ただし無理はするでないぞ。 そのようなこと、余は望んでいない。 |
Tenjo |
テンジョウ
もう少し、残された時間を共に過ごせることが嬉しいのだ。 |
Tenjo |
テンジョウ
ほう、それは嬉しい申し出だな。 其方らがいてくれたら、場もより明るくなろう。 |
Tenjo |
テンジョウ
ただし無理はしてくれるな。 其方らに必要な時がきたら、遠慮せずこの世界から引き上げよ。 |
Tenjo |
テンジョウ
残された時間をしばし、共にすごせたら…… 余には十分な喜びだ。 |
Tenjo |
1: 私たちも手伝いたいです もう少しみんなといたいな | |
テンジョウ
其方らも? それは……本当に頼もしい。 ではひとつ、付き合ってもらおうか。 |
Tenjo |
テンジョウ
ただし無理はするでないぞ。 そのようなこと、余は望んでいない。 |
Tenjo |
テンジョウ
もう少し、残された時間を共に過ごせることが嬉しいのだ。 |
Tenjo |
テンジョウ
ほう、それは嬉しい申し出だな。 其方らがいてくれたら、場もより明るくなろう。 |
Tenjo |
テンジョウ
ただし無理はしてくれるな。 其方らに必要な時がきたら、遠慮せずこの世界から引き上げよ。 |
Tenjo |
テンジョウ
残された時間をしばし、共にすごせたら…… 余には十分な喜びだ。 |
Tenjo |
シエル
ではもう少し、よろしくお願いします。 |
Ciel |
ラーベ
おいこら、なにを勝手に話をまとめてるんだ。 |
Raabe |
ラーベ
……と言いたいところだが、まあいいか。 時間切れで死ぬことはなくなったんだしな。 |
Raabe |
テンジョウ
……ありがとう。 ああ、本当に……余は果報者だな。 |
Tenjo |
テンジョウ
ではしばし……このひと時に幕が下りるまで。 皆との時間を楽しませてもらうとしょう。 |
Tenjo |