Story:BBDW Event In the Name of White Justice ~White Justice~

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序章/ Prologue

Summary
その人物は、一つの目的をもって異なる世界

を渡り歩く。悪を探し出して滅する、彼女は 自らをホワイトジャスティスと名乗った。

――――これで幾つ目になるのか、もう思い出せない。

数えきれないほどそうしてきたように、境界を斬り、 降り立ったその場所は……

見たこともない、けれどどこかで見たことがあるような、 美しい時計の前だった。

見回してみても、歩いてみても、人の姿は見られない。 『あるべき』存在が『いない』世界だ。

おそらく維持し続けていられなかったのだろう。 それだけの数、この世界は『繰り返し』た。

そして度重なる『繰り返し』の果てに、生み出した。

――悪を。

――『黒』を。

この世界は、すでに『終わった』ことのある世界だ。

気配を辿って、足を向ける。

目指すのは、この世界を生んだ根源。 この世界が悪を生むに至った礎。

――今はその役割から解き放たれた、けれど存在はいまだ残された、 『観測者』だったもの。

緑の髪の男

うわっ!

Green-haired Man
緑の髪の男

な、な……なんなんですか、あなた!? 一体どこから……?

Green-haired Man

予想してなかった声に足を止めた。 この世界にもまだ人がいた。

もうなにもかも消えてしまった、 なにも残すことのできなかったはずの.

世界に、最後まで存在していたのだろうか。

『それ』の因子は、悪につながっていた。

緑の髪の男

――っ!?

Green-haired Man

悪はひとつ残らず、滅さなければならない。

白金色の髪の女

きゃぁぁっ!

Platinum Blonde Woman
白金色の髪の女

しっかり、しっかりしてください……!

Platinum Blonde Woman
白金色の髪の女

どうしてこんな……あ、あなたは一体、誰なのですか!? なぜ……!?

Platinum Blonde Woman

――其は悪へと至る可能性。

白金色の髪の女

あ……。

Platinum Blonde Woman
赤い髪の白面

我が名はホワイトジャスティス。

ホワイトジャスティス

……滅せよ。

White Justice

……妄執が、残滓のようにこびりついている。 それもやがて消えるだろう。

ここにもう用はない。

次の『場』へ、向かわなければ。

第1節 『トキワ=カメリア①』/ 1. Tokiwa Camellia - 1

Summary
シエル、ラーベと共に訪れたのは、濃い魔素

が漂う生命のない世界。そこで一行は、白き 鎧を纏って魔物と戦う女性に遭遇する。

ラーベ

よしよし。《浸入》ダイブ成功だな。

Raabe
ラーベ

全員、揃ってるな。問題もないな? よーし。

Raabe

1: 魔素が濃いって聞いてたけど
2: 誰もいないね

1:
2:

ラーベ

ああ、そうだな。しかも想定以上の濃さだ……。

Raabe
シエル

そうですね。周囲に生体反応はありません。 人間だけでなく、小動物も確認できないようです。

Ciel
ラーベ

事前に伝えていた通り、 今回のファントムフィールドの規模はかなり小さい。

Raabe
ラーベ

シエルが確認してくれたように、 生体反応はほとんど確認できなかった。

Raabe
ラーベ

まあ、この魔素の濃さじゃ無理もないだろうな……。 フガクでも確認できていた状況だが、まさかここまでとは。

Raabe
シエル

確か事前調査では、 動体反応はいくつか確認されていましたよね。

Ciel
ラーベ

ああ。ただこの感じだと、 おそらく魔物の反応だったんだろうな

Raabe
ラーベ

だから場合によっては戦闘訓練に使えるかもと 思ってたんだけど……これはちょっと不穏すぎるな。

Raabe
シエル

不穏……予想よりも魔物が多数存在しそう、 ということでしょうか。

Ciel
ラーベ

そうそう。危険な場所だからこそ、 戦闘訓練に相応しいという考え方もできるけど……。

Raabe
ラーベ

訓練で大ケガしたら元も子もないし、 無理はすべきじゃないだろう。

Raabe
シエル

同意します。私の力が足りず、 レイが負傷しては大変です。

Ciel
ラーベ

というわけで、訓練場所としての確保はなしだ。

Raabe
ラーベ

通常通り、観測者の発見、 ファントムフィールドの解放を最優先でよろしく。

Raabe
ラーベ

この世界がループを繰り返して、 最終的に消滅したりする危険性を排除しておくとしよう。

Raabe
シエル

了解しました。

Ciel
シエル

ループ……。

Ciel
シエル

観測者が命を落としたり、ある特定の事柄が起こると 世界にリセットがかかり、ループが行われるのでしたよね。

Ciel
ラーベ

そうだ。ループするたびに、 ファントムフィールドは世界としての『可能性』を失っていく。

Raabe
ラーベ

そして最後にはあらゆる可能性を失い、 消滅するしかなくなるってわけだ。

Raabe
シエル

ループも、観測者による観測の範囲内なのでしょうか?

Ciel
ラーベ

おそらくね。もっとも、意識的にループを起こしている 観測者なんてのは、まあまず存在しないだろうが。

Raabe

1: こんな世界にも観測者がいるのかな?
2: 観測者はどこにいるんだろう……

1:
2:

ラーベ

たとえどんな状態でも、ここがファントムフィールドで ある限り、観測者は存在するはずだ。

Raabe
シエル

この魔素濃度ですからね。 探索する間も注意が必要そうです。

Ciel
ラーベ

いずれにせよ、周囲を見て回ってみるしかないね。

Raabe
シエル

はい。移動を開始します。 レイさん、ラーベさん、追従してください。

Ciel
シエル

……止まってください。

Ciel
ラーベ

なにかあったか?

Raabe
シエル

戦闘らしき物音と、生体反応を確認しました。 前方10時の方向です。どうしますか?

Ciel
ラーベ

ほーう。魔物同士で戦闘しているとは考えにくい。 行ってみよう。なにかの手がかりがあるかもしれない。

Raabe
シエル

わかりました。先導します。

Ciel
シエル

発見しました! やはり戦闘音だったようです。

Ciel
???

……はぁぁっ!

???
???

……あらかたは片付いたでしょうか。 あとはその一群のみ。

???
???

魔素に乱された生き物…… ひとつ残らず――斬る!!

???
ラーベ

いかん、シエル、レイ、 ちょっと離れろ!

Raabe
ラーベ

向こうはこっちに気付いていない。 下手に飛び込むと巻き込まれる!

Raabe
シエル

わかりました! レイさん、こちらへ!

Ciel
???

参る!!

???

第1節 『トキワ=カメリア②』/ 1. Tokiwa Camellia - 2

Summary
鎧の人物はトキワと名乗った。境界を渡り

「悪」を滅するために戦っている彼女に、 ラーベ達は同行を申し出る。

???

……ふう。

???
???

……あら? あなたたちは……?

???
シエル

……対象の戦闘レベルの低下を確認。 戦闘用の形態なのでしょうか……。

Ciel
ラーベ

どうも、初めまして。 どうか敵意がないことを信じてもらいたい。

Raabe
ラーベ

私はラーベ。こっちの子はシエルで、 こっちはレイだ。

Raabe
???

そうですか。敵意がないことは信用します。 あったとしても、対処しますし。

???
トキワ

私は……トキワ=カメリア。 はじめまして。

Tokiwa
トキワ

このような場所に人がいるとは、驚きました。 一体どこから現れたのですか?

Tokiwa
シエル

それは……。

Ciel
ラーベ

あー、我々はとある研究機関に所属していてな。 この辺りの空間に異常が感知されたので、調査に来たんだ。

Raabe
トキワ

まあ、それは。

Tokiwa
トキワ

嘘ですね。

Tokiwa
ラーベ

ほう。

Raabe
トキワ

調査というのは、嘘ではないかもしれませんが……。 あなたたちはこの世界の『外側』から来た。

Tokiwa
トキワ

そしてまだ到着したばかりで、この世界については 何も知らない状態……ですね?

Tokiwa
シエル

……なぜ、そう思われたのですか?

Ciel
トキワ

この世界には、あなたたちの言うような研究機関など 存在しないからですよ。

Tokiwa
トキワ

それどころか、人間も存在しません。

Tokiwa
トキワ

ここに在るのは、ただ溢れるだけの魔素。

Tokiwa
トキワ

魔物や、人の姿になれなかった魔素の塊だけが、 現れては消える世界です。

Tokiwa
ラーベ

……なるほどな。 じゃあ、なんでトキワは『ここ』にいるんだ?

Raabe
トキワ

私も、この世界の外から境界を渡ってやってきましたから。

Tokiwa
シエル

私たちと同じように、外部からファントムフィールドに 干渉している存在……『未確定存在』なのですね……。 ストレンジャー

Ciel
トキワ

ご事情は知りませんが、もし興味本位で来られたのなら、 早々に立ち去ることをおすすめしますよ。

Tokiwa
ラーベ

忠告には感謝する。だけど、そう簡単には帰れなくてね。

Raabe
ラーベ

ここから出ていくためには、 出口になる場所を探さないといけない。

Raabe

1: 調査をしないわけにはいかないし
2: 強制帰還できるんじゃ……?

1:
2:

ラーベ

そうそう、そうなんだ。 上司からの命令でね。

Raabe
ラーベ

<size=130%>しーっ!</size> ……帰れって言われてすんなり帰れるか。

Raabe
ラーベ

それに、相手の正体も目的もわかってないのに、 ご忠告を素直に受け取れないだろ……。

Raabe
ラーベ

ところで、そういうトキワはなんの目的で この世界にやってきたんだ?

Raabe
ラーベ

あてもなく放浪していたってわけじゃないんだろう?

Raabe
トキワ

そうですね……お話して、理解が得られるかわかりませんが……。

Tokiwa
トキワ

私はあちこちの世界を渡り、 『悪』を滅するために戦っています。

Tokiwa
シエル

『悪』……ですか。

Ciel
トキワ

『悪』です。

Tokiwa
トキワ

この世界にも、倒すべき『悪』が存在しています。 その気配を追ってこの世界にやってきました。

Tokiwa
ラーベ

ふーむ、その『悪』とやらの存在に興味が湧いてきたな。

Raabe
ラーベ

トキワ。よければその旅路に、同行させてもらえないか?

Raabe
ラーベ

我々の調査のためにも、ここからの出口探しのためにも、 この世界について我々より詳しいお前の力を借りたい。

Raabe
ラーベ

……人がいない世界でようやく会えたドライブ能力者だ。

Raabe
ラーベ

世界の外から来たという話の真偽も確かめたいし、 彼女を取っ掛かりに情報を得ていこう。

Raabe
シエル

……了解です。

Ciel
トキワ

そう……ですね。

Tokiwa
トキワ

ついてこられるのは構いませんが、当然、危険ですよ。

Tokiwa
トキワ

私には私の目的がありますし、 あなた方を護衛するつもりはありません。

Tokiwa
トキワ

それでもいいのであれば、ご自由にどうぞ。

Tokiwa
ラーベ

あぁ、もちろん。 自分たちの身くらいは守るよ。

Raabe
トキワ

わかりました。

Tokiwa
トキワ

ああ、それから……。

Tokiwa
トキワ

もしあなたがたが、私が屠るべき『悪』であるなら、 そのときは遠慮なく斬らせていただきます。

Tokiwa
ラーベ

…………。

Raabe
ラーベ

わかった。それでいい。

Raabe
トキワ

よかった。ご一緒できて嬉しいですね。

Tokiwa
トキワ

一般的に、仲間が増える……のは喜ばしいことなのでしょうから。 では、行きましょう。

Tokiwa
ラーベ

……彼女、ちょっと違和感があるな。

Raabe
シエル

違和感、といいますと……どのような違和感でしょうか。 丁寧な方だと思いますが。

Ciel
ラーベ

言葉や態度だの大部分は、そうだけども…… なんかチグハグというか……。

Raabe
ラーベ

ただ、私たちを斬るっていう言葉には 少しの迷いもなかっただろ。

Raabe
ラーベ

さっきの『一般的には』って言い方も引っかかる。

Raabe
ラーベ

あれってつまり、『みんな』がそう思いそうだから そう振る舞ってるってことだろう?

Raabe
ラーベ

もしも『みんな』とやらが仲間が増えることを喜ばないなら ……はたして、彼女は喜んでいたかな。

Raabe
トキワ

みなさん。早速ですが、気を付けてください。 魔素が集まってきていますよ。

Tokiwa
シエル

……魔物の出現を確認しました! 魔素から突然現れたように見えます。

Ciel
トキワ

はい。高濃度の魔素が集まり、形を成し、魔物となります。

Tokiwa
トキワ

この世界はずっとそう。どこへ行っても魔物が溢れ、 どこへ行っても戦いしかない……。

Tokiwa
トキワ

我が前に現れる『悪』…… その全てを滅する!

Tokiwa
シエル

戦闘態勢に移行! レイさん、囲まれていますので、気を付けてください!

Ciel

第2節 無人の世界の観測者①/

Summary
道中トキワは自ら持つ兵装と目的を語る。

『悪』を滅ぼすこと──今の彼女は、 その使命を果たすためだけに生きていた。

ラーベ

殲滅完了だな。 みんなお疲れさん。

Raabe
トキワ

シエルさん、あなたは優れた戦闘能力をお持ちなのですね。

Tokiwa
シエル

ありがとうございます。 トキワさんも、とてもお強いです。

Ciel
トキワ

どうも。

Tokiwa
トキワ

ところで、レイさん…… あなたはかなり特殊な力を使うのですね。

Tokiwa
トキワ

……それは『観測の力』ですね?

Tokiwa
ラーベ

境界を渡り歩いている、なんて言うくらいだ。 さすがにそれくらいは見抜いてくるか。

Raabe
トキワ

一応、聞かせてください。

Tokiwa
トキワ

あなたはその力を、どんな目的のために使っているのですか?

Tokiwa

1: 世界のため
2: 自分のため

1:
2:

トキワ

…………そうですか。

Tokiwa
トキワ

混とんとしたファントムフィールドの乱立状態を解消するため、 皆さんは旅をしているのですね。

Tokiwa
トキワ

世界の均衡を崩さないために、その力はある ということですか。

Tokiwa
トキワ

…………なるほど。

Tokiwa
トキワ

いくつものファントムフィールドを渡って、 あちこちで異変の調査を行っているのですか。

Tokiwa
トキワ

危険な任務にあたって、ご自分の身を守るために観測の力を……。

Tokiwa
トキワ

わかりました。

Tokiwa
トキワ

世界に混乱をもたらすためでないとわかり、安心しました。

Tokiwa
トキワ

……ですがそれは、非常に不安定で危険な力です。 誤った使い方をすれば、全てを破壊しかねません。

Tokiwa
トキワ

……あなたがそういう人間でないといいのですが。

Tokiwa
シエル

レイさん、なにか気になることがあるのですか? 先程から……不思議そうにされています。

Ciel
ラーベ

うん? ……なに。トキワに違和感があるって?

Raabe
ラーベ

それはさっき私が言っただろ。 そうじゃない? 姿がぼんやりしているような感じ……?

Raabe
トキワ

それはおそらく、私の兵装のせいでしょう。

Tokiwa
シエル

兵装というと、あの白い鎧のことですか?

Ciel
トキワ

鎧も剣も、今私が着ている衣類も全部そうです。 名を封印兵装・十六夜といいます。

Tokiwa
ラーベ

十六夜……待て、十六夜だと!?

Raabe
トキワ

十六夜をご存じなのですね。

Tokiwa
トキワ

この兵装は特殊で、十六夜そのものが 常に私を観測しています。

Tokiwa
トキワ

そのため、私は他の観測による影響は受けません。

Tokiwa
ラーべ

なるほど……それで境界が渡れるのか。

Raabe
ラーべ

常に自己観測し続けていれば、境界の中であろうと 観測が乱れることもない……。

Raabe
トキワ

レイさんは、無意識レベルで常に観測を 行っているのでしょう。

Tokiwa
トキワ

だから、十六夜を纏った私が、 普段とは違ったように見えているのかもしれません。

Tokiwa
シエル

つまり、レイさんは すごいということですね。

Ciel
トキワ

……それは、冗談?

Tokiwa
トキワ

ふふ。 ……笑うのが遅かったかしら。。

Tokiwa
シエル

いえ。冗談ではありません。

Ciel
トキワ

そう……ごめんなさい。

Tokiwa
魔物

ギィィッ!

Monster
シエル

こうして歩いているだけでも、魔物が次々に現れますね。

Ciel
ラーベ

トキワはなんでもないように切り倒していくな。 剣には詳しくはないけど、見事な太刀筋だよ。

Raabe
ラーベ

相当長く戦い続けていないとその域には達しないと思うけど、 どうしてそれほど熱を入れて『悪』を倒し続けるんだ?

Raabe
トキワ

『悪』は不要なものです。 それを倒すことに、理由なんていりません。

Tokiwa
ラーベ

『一般的』にはそうかもしれないね。

Raabe
ラーベ

でも、それを始めた理由やきっかけは、あるんだろう?

Raabe
トキワ

……あまりに昔のことです。 忘れてしまいましたね。

Tokiwa
ラーベ

思い出したくないのか? それとも、思い出せない?

Raabe
トキワ

…………。

Tokiwa
トキワ

初めは、親しい人を守るため、だったと思います。

Tokiwa
トキワ

ですがそれも力及ばず、失いました。だから次は世界のために 戦いました。……でも、それも実を結びませんでした。

Tokiwa
トキワ

その結果、私が見た絶望を繰り返さないためには、『悪』と それに至る可能性の全てを滅してしまうのが一番だと考えました。

Tokiwa
トキワ

だから、『悪』を滅ぼすために戦っています。

Tokiwa
トキワ

お聞きになりたいのは、こういうことで合っていましたか?

Tokiwa
ラーベ

ああ、ありがとう。 トキワのことが少しは知れた気がするよ。

Raabe
トキワ

それはよかった。

Tokiwa
トキワ

……この世界も、戦いの跡地のように見えます。

Tokiwa
トキワ

私のよく知る景色に、どことなく似ているようにも思えます。

Tokiwa
トキワ

斬るべき『悪』が絶えないところも、似ていますね。

Tokiwa
ラーベ

悪は即、滅する……か。徹底しているね。

Raabe
シエル

レイさん、私たちも加勢しましょう。

Ciel

第2節 無人の世界の観測者②/

Summary
観測者の望みについて推測する一行。その願

望が世界の形を変えると知ったトキワは、観 測者の解放に自分も協力すると表明する。

ラーベ

戦っているうちに、ずいぶんと遠くへ来てしまったな。

Raabe
シエル

建物の形式から察するに、この付近は市街地でしょうか。

Ciel
トキワ

正しくは、市街地だった場所、でしょうね。

Tokiwa
シエル

そうですね。人の気配も、人が住んでいる形跡もないです。

Ciel
ラーベ

トキワの言う通り、この世界は本当に人間がいないんだな。

Raabe
シエル

それは、観測者さんがこの形を望んでいる……ということに なるんですよね?

Ciel
ラーベ

意識的にかはともかく、そうなるね。

Raabe
シエル

いったい、どういう望みなのでしょうか。 誰にも会わず、ひとりでいたいのでしょうか……。

Ciel
ラーベ

いやぁ……それなら魔素は不要はなずだ。 ひとりがいいなら、魔物だっていらないだろう。

Raabe
ラーベ

異物を排除するための、防衛機構としての魔物、 って感じもしないし……。

Raabe
ラーベ

そうなると、魔物自体に存在価値を見出している? ……でも、それもまた理由がわからないね。うーん。

Raabe
ラーベ

ただこの状況そのものは、観測者の願望と繋がっているはずだ。 手掛かりにはなるだろう。

Raabe
トキワ

観測者とは、ファントムフィールドを発生させ、 この世界を具現化している存在のことですよね。

Tokiwa
トキワ

その現象と、観測者の願望に、なにか関わりがあるのですか?

Tokiwa
ラーベ

……なるほど。トキワはこの世界が観測者の望みによって 形を変えていることまでは知らないわけか。

Raabe
シエル

ファントムフィールドがどのような世界になるかは、 観測者が無意識に抱えている願望によるのだそうです。

Ciel
トキワ

……ではファントムフィールドは、 観測者の望みひとつで性質を変えるのですか。

Tokiwa
シエル

そうです。

Ciel
トキワ

……誰かの意思が、世界を歪めるだなんて。 あってはならないことだわ。

Tokiwa
ラーベ

ずいぶんと厳しい顔だな。 そこまで思う理由を聞いてもいいか?

Raabe
トキワ

……ずっと昔、私の近くに そういう宿命を与えられた人がいたのです。

Tokiwa
トキワ

その子はとても、宿命に苦しんでいたわ。 彼女だけじゃない。彼女の周りにいる人も……多く苦しんだ。

Tokiwa
ラーベ

……ここの観測者も、同じように苦しんでいるかもしれないな。

Raabe
ラーベ

誰もが望んで観測者に選ばれるわけじゃない。

Raabe
ラーベ

ここの世界のどこかに、望んだわけでもないのに 大層な役目を背負わされた誰かがいるはずだ。

Raabe
ラーベ

私たちの本当の目的は、その誰かの解放なんだ。 誰かが、この世界からそいつを解放してやらないといけない。

Raabe
トキワ

役目からの解放……そうですか。 そういう理念をお持ちなのですね。

Tokiwa
トキワ

であれば、私もあなたがたの目的に協力しましょう。

Tokiwa
トキワ

観測者の願望が世界を歪めるのであれば、その願望が 新たな『悪』を生み出すかもしれません。

Tokiwa
トキワ

……そしてその願望の果てに、 世界はあれを生み出すのですね、きっと。

Tokiwa
ラーベ

あれ、とはなんだ?

Raabe
トキワ

――『災厄』と呼ばれるモノ。

Tokiwa
トキワ

世界を終わらせるシステムです。

Tokiwa
シエル

…………。

Ciel
ラーベ

……お前の言う不安定な世界、ファントムフィールドは 最終的に世界として終わるために、災厄を生み出す。

Raabe
ラーベ

そういうものだという認識は、我々も持っている。

Raabe
トキワ

ファントムフィールドは最終的に、世界として終わるために システムを起動させます。つまり『災厄』を呼び出すのです。

Tokiwa
トキワ

私はそれを許すわけにはいかない。

Tokiwa
トキワ

もしも世界が『災厄』を呼び出したのなら、世界に災厄を 記録させた観測者もまた、残しておくわけにはいきません。

Tokiwa
トキワ

『災厄』こそ『悪』。 『悪』に繋がるものは、全て滅する。それが私の役目です。

Tokiwa
トキワ

話が長くなってしまいましたね。 さぁ、行きましょう。

Tokiwa

1: ……決意は固そうだね
2: ちょっと危うい感じがする

1:
2:

ラーベ

その目的のために、境界を渡り歩いているのだろうな。

Raabe
ラーベ

よほど、『悪』とやらに特別な思い入れがあるらしい。

Raabe
シエル

レイさんがそうおっしゃるのなら、 警戒します。

Ciel
ラーベ

悪い奴ではないんだろうけどな……。

Raabe
ラーベ

観測者に出くわした途端、いきなり斬りかかる可能性も ありそうだから、注意しておこう。

Raabe
トキワ

……っ!

Tokiwa
トキワ

また、魔素が集まってきました。

Tokiwa
シエル

集まった魔素が、魔物だけではなく 人のような形を模していきます。

Ciel
ラーベ

ふうむ、観測者の持ちえない情報は世界に反映されない という前提で話すなら、

Raabe
ラーベ

この魔素が形作る姿もまた、 観測者の持つ情報から選ばれているのかもしれない。

Raabe
シエル

これは……。

Ciel
トキワ

どのような姿を取ろうと、本質は魔素の塊にすぎません。 全て斬り伏せるのみ。

Tokiwa
トキワ

我が名はホワイトジャスティス。 参る!!

Tokiwa

第3節 『白い影①』/

Summary
暫し休息を取り、トキワの過去について語る

一行の前を白い人影がよぎる。彼女はその姿 に見覚えがあると言い、追跡を開始した。

トキワ

この先からも『悪』の気配を感じます。 行きましょう。

Tokiwa
ラーベ

あ、おい! ふぅ……行ってしまったか。

Raabe
ラーベ

ずっと連戦続きだというのに、疲れというものを 知らないのか、あいつは。

Raabe
ラーベ

十六夜にそんな性能があるなんて、聞いたことがないぞ。

Raabe
シエル

驚異的な体力です。あれだけ剣を振るだけでも、普通なら 疲弊するはず……ですが彼女は汗ひとつかいていません。

Ciel
シエル

そういえば、 レイさんは大丈夫ですか?

Ciel
シエル

少し、顔色が優れないような……。

Ciel
シエル

レイさんっ!?

Ciel
シエル

……怪我はありませんか?

Ciel
ラーベ

相当、足に来てしまっているな……。 トキワ、すまない。少し休憩させてくれ。

Raabe
トキワ

すみません。普通の人間である レイさんの体力は有限でしたね。

Tokiwa
トキワ

体力が戻るまで、ここで少し休みましょう。

Tokiwa
シエル

ありがとうございます。 レイさん、座ってください。

Ciel
ラーベ

……もしかして、トキワは人間ではないのか?

Raabe
トキワ

どうでしょうか。人間であって、人間ではないとも言えます。

Tokiwa
トキワ

肉体の一部はまだ人間のものですが、 ほとんどは作り物で補っていますから。

Tokiwa
ラーベ

なるほどね……だからその体力か。

Raabe
シエル

質問してもよろしいでしょうか。 トキワさんは、自ら望んでそうなったのですか?

Ciel
トキワ

最初からこうなりたいと思っていたわけではありませんよ。

Tokiwa
トキワ

戦いにより肉体の限界がくるたび、知り合いの科学者に改造を お願いしていました。結果的にこうなっただけです。

Tokiwa

1: 厳しい戦いだったんだね
2: 後悔はないの?

1:
2:

トキワ

戦いに厳しいも楽もありません。 そこにあるのは事実と結果だけです。

Tokiwa
トキワ

私が剣を振るう理由は悪を滅すること。 それはこれから先も、変わることはありません。

Tokiwa
トキワ

後悔……ですか?

Tokiwa
トキワ

そうですね……昔の私は、後悔していたかもしれません。 ですが今は、目的のためにただ剣を振るうのみ。

Tokiwa
トキワ

ここには、その事実と結果が残っているだけです。

Tokiwa
トキワ

それにこの体でなければ境界を越えることはできません。 だから私は、この体であり続けなければならないのです。

Tokiwa
ラーベ

確かに、境界に入るには最善の体だろうね。 それも十六夜があって成立するものではあるけど。

Raabe
トキワ

ですから私の体は疲れを知りませんし、 栄養を口から補給する必要も、ほとんどありません。

Tokiwa
トキワ

僅かな食事から、十六夜の観測によって 体を維持することができますから。

Tokiwa
ラーベ

食べなくても平気というのは、食べたくないのとは違うだろう。

Raabe
トキワ

そうですね……もうずいぶん昔のことですが、 私の暮らしていた世界に、料理が大好きな友人がいました。

Tokiwa
トキワ

彼女のことを考えていたら、いつの間にか 私は食べることをやめていました。ずっと昔の話ですが。

Tokiwa
シエル

境界を渡る前にトキワさんがいた世界、ですね。

Ciel

1: どんな世界だったの?

1:

トキワ

…………。

Tokiwa
トキワ

この世界で見る光景は、かすかに残っている記憶と よく似ている気がします。

Tokiwa
トキワ

階層都市と呼ばれる都市が世界各地に建っていて、 そこには大勢の人々が暮らしていました。

Tokiwa
トキワ

地表には『災厄』から生み出された魔素が充満し、 その脅威から逃がれるため、高い山の上に都市を築いたのです。

Tokiwa
ラーベ

階層都市……か。

Raabe
ラーベ

ん……?

Raabe
トキワ

私の顔になにか?

Tokiwa
ラーベ

……いや、なんでもない。話を続けてくれ。

Raabe
トキワ

魔素に覆われた厳しい世界でしたが、それでも人々は 懸命に生きていました。

Tokiwa
トキワ

……ある時、世界が滅びを迎えるまでは。

Tokiwa
トキワ

世界は抗えない『悪』によって蹂躙され、終わってしまった。 それ以外の可能性はもう、許されませんでした。

Tokiwa
トキワ

滅びを免れることは、できなかったのです。

Tokiwa
シエル

そのときも、トキワさんは戦っていたのでしょうか?

Ciel
トキワ

ええ。ですが私では力不足でした。 世界の滅びを阻止することなんて、とてもできませんでした。

Tokiwa
ラーベ

…………。

Raabe
トキワ

さして面白い話でもないと思いますが なにかあなた方の参考になりましたか?

Tokiwa
トキワ

そうですか、よかった。

Tokiwa
トキワ

レイさんの体力も戻ったようですね。 そろそろ先へ進みましょう。

Tokiwa
シエル

動作反応を感知、気を付けてください!

Ciel
トキワ

今のは……。

Tokiwa
ラーベ

人影のように見えたが……シエル、解析できたか?

Raabe
シエル

いえ。生体反応は殆ど感じられませんでした。 魔物の類とも違うようですし……今のはなんだったのでしょう。

Ciel
シエル

……兵装を纏った状態のトキワさんに、 雰囲気が似ているようにも感じられました。

Ciel
ラーベ

……トキワ、今の人影に見覚えがあるか?

Raabe
トキワ

…………。

Tokiwa
トキワ

確証はありませんが……そうですね。 私の知っている人物である可能性は高いと思います。

Tokiwa
トキワ

ですが、彼がこの世界にいる理由がわかりません。

Tokiwa
ラーベ

なるほど、観測者である可能性もあるな。

Raabe
ラーベ

罠かもしれないが……とにかく追ってみるか。 他にそれらしい手がかりもないし。

Raabe
トキワ

『彼』が観測者……ですか。わかりました。

Tokiwa
ラーベ

ああもう、面倒だな、こんな時に! シエル! レイ!

Raabe
シエル

了解しました、戦闘態勢へ移行します。

Ciel
トキワ

悪はすべて、殲滅します!

Tokiwa

第3節 『白い影②』/

Summary
白い人影は消えてしまう。しかし、トキワは

彼もまた悪を滅する者であり、いずれにせよ 同じ場所を目指しているのだと語った。

トキワ

魔物はすべて倒しましたが 先ほどの人影は見失ってしまいましたね。

Tokiwa
ラーベ

ふ〜む。どうするか…… 無理に追うのも危険かもしれないしなぁ。

Raabe
ラーベ

しかしあれは、本当に人影だったのか? 生体反応は感じられなかったようだが。

Raabe
ラーベ

本当にトキワの知り合いなのか?

Raabe
トキワ

あの姿は……おそらく彼は、かつての私の恩人です。

Tokiwa

1: だったら追ったほうがいい
2: 見間違いじゃなさそう?

1:
2:

トキワ

いえ、その必要はありません。

Tokiwa
トキワ

おそらく。ですが、私は彼を追おうとは思いません。

Tokiwa
シエル

何故ですか?

Ciel
トキワ

本当にあの方がこの世界にいるのならば 彼が目指す先は、おそらく私と同じモノでしょうから。

Tokiwa
ラーベ

つまり先ほどの影も、悪を滅するために行動しているわけか。 あれは一体何者なんだ?

Raabe
トキワ

私が彼について語れることは多くありません。

Tokiwa
トキワ

ただ、彼は悪を斬り続けることで英雄となった方です。 私にとって彼は……強さの象徴です。

Tokiwa
ラーベ

強さの象徴……英雄か。 ……ふむ。

Raabe
ラーベ

トキワと同じように悪を探しているのなら、 確かにこの先でまた出会うこともあるか。

Raabe
ラーベ

なにせトキワ以外で初めて見つけた、観測者の手がかりだ。 見失ったのは惜しいが……また見つかることを祈ろう。

Raabe
シエル

ではラーベさん。我々はこれからどうしますか?

Ciel
ラーベ

トキワを信じて、悪の気配を辿るしかないね。 トキワとさっきの奴の目的が同じっていうのなら。

Raabe
ラーベ

『行きつく先は同じ』ってヤツだ。

Raabe
トキワ

この先に、道を塞ぐ『悪』の気配を感じます。 斬り伏せつつ進みましょう。

Tokiwa

第4節 『揺らがぬ心①』/

Summary
昼夜問わず生命の気配すらない世界。魔物以

外を意に介さないその姿はまるで、トキワや 白い人影のようだとラーベは呟いた。

ラーベ

うーん……。ふーむ……。

Raabe
シエル

さきほどからずっと唸っていますが、どうかされましたか?

Ciel
ラーベ

ちょっと、気になってね……。

Raabe
ラーベ

もしかしたらこのファントムフィールドは、 時間が停滞しているんじゃないだろうか。

Raabe
シエル

時間が停滞……ですか?

Ciel
ラーベ

といっても、我々の時間自体が進んでいるのは間違いない。

Raabe
ラーベ

空気も、重力もある。だから時間が止まっているのではなく 時間の経過だけが停滞しているんじゃないか、とね。

Raabe
ラーベ

本当にフィールドの時間が全て止まってしまっていたら 我々はここに存在できないだろうし。

Raabe

1: 難しい話だ……
2: どうしてそう思うの?

1:
2:

ラーベ

まあ、お前たちが理解する必要性はないから あまり気にしないでくれ。

Raabe
ラーベ

日の傾きどころか、影の長さすらまったく変わらないし 植物や土の中すら生命反応が希薄すぎるんだ。

Raabe
シエル

確かにラーベさんのおっしゃる通り、 これまで生命の痕跡すら見つけられていません。

Ciel
シエル

この世界に存在するのは、魔物だけなのでしょうか。

Ciel
ラーベ

かもしれない。

Raabe
ラーベ

この世界を作っている人物は、 そういうものをまるで必要ないと思っているかのようだ。

Raabe
ラーベ

あるいは、まるで気に留めていないか。

Raabe
ラーベ

まるで……そうだな。トキワのような世界だな。

Raabe

1: じゃあトキワが観測者?
2: まだそう決まったわけじゃない

1:
2:

ラーベ

いや、その可能性は低い。

Raabe
ラーベ

境界の外から来たという彼女の話が真実ならば 異物は観測者にはなりえないし。

Raabe
ラーベ

それに彼女の兵装、十六夜は見たところ本物だ。 さっきも言ったがアレは観測の影響を受けない。

Raabe
ラーベ

その十六夜を完全に使いこなしている『現在の』トキワが 観測者である可能性は、ほぼ皆無といっていいだろう。

Raabe
ラーベ

ああいや、別に断定したいわけじゃないよ。

Raabe
ラーベ

私も彼女が観測者である可能性は低いと思っているし。

Raabe
ラーベ

境界の外から来たという彼女の話が真実ならば 異物は観測者にはなりえない。

Raabe
ラーベ

それに彼女の兵装、十六夜は見たところ本物だ。 さっきも言ったがアレは観測の影響を受けない。

Raabe
ラーベ

その十六夜を完全に使いこなしている『現在の』トキワが 観測者である可能性は、ほぼ皆無といっていいだろう。

Raabe
トキワ

ほぼ皆無……ということはゼロではないということですね。

Tokiwa
ラーベ

気を悪くさせたのならすまない。 だけど、ゼロでない以上、可能性としては考える必要がある。

Raabe
トキワ

いえ、正しいと思います。 可能性がゼロなど、本来ありえないのですから。

Tokiwa
ラーベ

へぇ……剣だけを振り続けた人間から、そんな 数学的な言葉が聞けるとはね。

Raabe
トキワ

事実を述べただけです。

Tokiwa
ラーベ

そうか……まあいい。

Raabe
ラーベ

とにかく観測者として疑うなら、トキワよりも さっきの白い人影『英雄』の方だろう。

Raabe
ラーベ

もう少しその人物の情報を知りたいところだが…… トキワ、その『彼』とこの世界は関係していそうか?

Raabe
トキワ

……すみません。私にはわかりません。 私は、彼の素性についてはほとんど知りませんから。

Tokiwa
ラーベ

そうか……。

Raabe
シエル

お話中すみません。 前方に、巨大な建造物を感知しました。

Ciel
シエル

形状からして、城のようです。

Ciel
ラーベ

城? なんでそんなものがあるのかは知らんが ようやく人の痕跡が見つかりそうなものが出てきたか。

Raabe
ラーベ

観測者が関係している可能性もある。 その城に向かってみよう。

Raabe
トキワ

ですがそのためには……。

Tokiwa
トキワ

眼前の『悪』を断つ必要があります。

Tokiwa
ラーベ

いつの間に……完全に囲まれたか。

Raabe
シエル

妙です。周辺の黒い霧が、意思を持っているように動いています。 皆さん、警戒してください。

Ciel
トキワ

魔素の形は固定ではありません。 その相手、状況、あらゆるモノの影響を受けて、変化する。

Tokiwa
トキワ

見てください。集まった魔素が、形を成していきます。

Tokiwa
ラーベ

こいつらは……!

Raabe
シエル

レイチェルさん、それにヴァルケンハインさん!

Ciel
ラーベ

いや……本人じゃない。 魔素が形作った人形だ。

Raabe
ラーベ

しかし、本当に本物がそこにいるかのように思える。

Raabe
ラーベ

これは、この世界に残された思念や観測者の思考が 魔素に影響を与えているのか?

Raabe
ラーベ

ならば観測者は、彼女たちを知っている可能性が高いな……。

Raabe
ラーベ

これまでの魔物とはまるで違うぞ。 シエル、レイ、注意しろよ。

Raabe
シエル

了解しました。 これより戦闘を開始します。

Ciel

第4節 『揺らがぬ心②』/

Summary
行く手に現れた無人の城を調査。現世と境界

が曖昧なその場所で、一行の潜在意識から形 作られた魔素の影が、現れては襲い掛かる。

シエル

城内も隅々まで調べましたが、誰もいませんね。 気配も感じませんし、ここは無人で間違いなさそうです。

Ciel
ラーベ

あるのは、魔素の痕跡と、誰かが戦闘した痕跡だけ……か。

Raabe
トキワ

苦戦した形跡もなく、一方的に斬り伏せられている…… 状況から考えて、おそらく彼でしょう。

Tokiwa
ラーベ

トキワほどの強さを持った奴でもそこまで言うんだ。 相当な力を持っているんだろうな、『彼』は。

Raabe
ラーベ

だがその人物は本当に、この誰もいない世界で 『悪』を滅するためだけに戦い続けているのか……?

Raabe
トキワ

愚問ですね。他の理由など考えられません。

Tokiwa
ラーベ

ふ〜む……。

Raabe
シエル

……! みなさん、下がってください! 何か来ます!

Ciel
トキワ

また魔素ですか。 行く手を阻むというのなら、斬らぬ理由はありません。

Tokiwa
シエル

はい。戦闘態勢に……あ、魔素が形を変えます! また人の形に……。

Ciel
トキワ

これは……。

Tokiwa
トキワ

この世界の観測者は、 彼女たちを知っているということ……?

Tokiwa
シエル

ノエルさんに、マコトさん……ですよね。

Ciel
シエル

っ! 魔素、再び収束。 こちらも形を変えます。

Ciel
ラーベ

カズマとトリニティか。 なるほど、カラクリが読めてきたぞ。

Raabe
ラーベ

おそらくこの城には、窯に近いモノがあるんだろう。 窯そのもの……かもしれないが。

Raabe
トキワ

……この城内は、境界の気配がとても近いです。

Tokiwa
トキワ

それも窯、あるいはそれに近しいものが 存在しているからですか?

Tokiwa
ラーベ

その可能性が濃厚だろうな。 ここはたぶん、特別な場所なんだろう。

Raabe
ラーベ

現世とも境界とも呼べるような、曖昧な領域……。

Raabe
ラーベ

それがゆえに、この場にいる者の潜在意識や記憶から 情報を引き出し、それを元に魔素が形を作っているんだろう。

Raabe
シエル

対象の戦闘レベルの上昇を確認。 戦闘態勢へ移行します!

Ciel
トキワ

襲撃してくるということは、敵ということ。 悪は我が刃にて、ひとつ残らず滅する!

Tokiwa

第4節 『揺らがぬ心③』/

Summary
影は一行がイシャナで出会った人物の姿を取

るが、トキワに躊躇いはない。その冷ややか な剣筋が、彼女の失ったものを示していた。

トキワ

……この場にいる者の潜在意識や記憶から、情報を引き出して いる……先ほど、ラーベさんはそうおっしゃっていましたよね。

Tokiwa
トキワ

その推察が正しいとしたら……。

Tokiwa
トキワ

もしかしてレイさんとシエルさんは、 イシャナを訪れたことがありますか?

Tokiwa
トキワ

やはりそうでしたか。 以前に私も立ち寄ったことがあります。

Tokiwa
トキワ

そのとき、 今見た影のうちのふたりと同じ姿に遭遇しました。

Tokiwa
トキワ

ちなみに、それはファントムフィールドの イシャナでしょうか?

Tokiwa
トキワ

ここほどは寂しくない場所ですが、人のいない…… ほとんど無人の学園島でしたか?

Tokiwa
シエル

以前に、調査に赴いたことがありました。

Ciel
シエル

トキワさんはどのような経緯で、 あのファントムフィールドに入られたのですか?

Ciel
トキワ

無論、『悪』を斬るためです。

Tokiwa
シエル

悪……イシャナにですか?

Ciel
トキワ

はい。あの世界には黒き災厄の因子が残っていました。 それを見つけて、排除してきたのです。

Tokiwa
トキワ

今しがた戦った魔素は確かに、 私や皆さんの記憶から情報を引き出していたのかもしれませんね。

Tokiwa
トキワ

私も皆さんも、 立ち会った全ての人物を知っているようですから。

Tokiwa
トキワ

そうですよね?

Tokiwa
シエル

はい、知っています。……ということはトキワはさんは、 マコトさんやノエルさんのことをご存知なのですね。

Ciel
トキワ

えぇ、知っていますよ。親しい間柄でした。

Tokiwa
ラーベ

ほお。その割には、あの影と戦うときに 迷いも躊躇いもなかったようだが。

Raabe
ラーベ

姿が同じなくらいでは、 トキワの心は乱れたりはしないということか?

Raabe
トキワ

もちろんです。 私には、そのようなものは不要です。

Tokiwa
トキワ

……それに、私のいた世界が滅びるより少し前に、 彼女たちは命を落としました。

Tokiwa
トキワ

ここで姿を目にしたとて、 彼女たちは本物でないことはわかりきっていることです。

Tokiwa
トキワ

たとえ本物だったとしても、私の目的を阻むようであれば、 排除したでしょう。

Tokiwa
トキワ

全ては『悪』を根絶するためです。

Tokiwa

1: それはトキワの本音?'
2: 本来の気持ちじゃない気がする

1:
2:

トキワ

その答えは、『悪』を討つことや観測者を解放するために 必要ですか?

Tokiwa
トキワ

おっしゃっている意味がわかりませんが、 レイさんの前にいる私が、私です。

Tokiwa
トキワ

一通り見て回りましたが、ここには何もなさそうですね。 窯らしきものも、気配だけが残っていて、実際にはないようです。

Tokiwa
トキワ

外へ出ましょう。

Tokiwa
ラーベ

こういう言い方をするのはよくないかもしれないが…… 彼女が失ったのは、人間の身体だけではないようだね。

Raabe

第5節 『ハクメン①』/

Summary
白い人影──ハクメンは考えていた。どれ程

剣を振るい続けたのか?終わりの無い戦いの 全ては、いずれ訪れる……『黒』のため。

どれ程、剣を振るい続けただろうか。

永き刻を、戦いに明け暮れ……。

行けども行けども、歩めど歩めど、 眼前に訪れるは、悪のみ。

其れでも尚、纏わり付く魔素を払い、 研ぎ澄まされた刃を振り下ろし続ける。

其処に終わりは無く、戦いの果てに訪れるモノは『黒』。 其れが解かって居ながら、其れでも歩みは止まらない。

何故なら、此の体に在るのは只、悪を滅するのみ。 『黒』を滅する為に、私は存在するのだ。

魔物

シャァアァァ……っ!

Monster
???

未だ来るか、『黒』に連なる者よ。

???
???

終わらぬと謂うのなら、私は只斬り伏せるのみ。 悪を滅する此の刃にて、魔素に還るが良い。

???
ハクメン

我は空、我は鋼、我は刃…… 我が名はハクメン……推して参る!

Hakumen

第5節 『ハクメン②』/

Summary
魔物を斬り続けた末に、ハクメンは窯へと辿

り着く。彼が境界に触れると膨大な情報が流 れ込み、自らが観測者であると理解した。

ハクメン

……此処か。

Hakumen
ハクメン

世界と境界を繋ぐ窯……。

Hakumen
ハクメン

私の追う『黒』が窯より出でるの為らば 其の根源を断つ必要が在る……。

Hakumen
ハクメン

此の音は……窯が、私を呼んでいると謂うのか……?

Hakumen
ハクメン

っ!? 此れは……蒼……!

Hakumen
ハクメン

……成程。此の世界は、正常な其れでは無かったか。

Hakumen
ハクメン

観測者の潜在意識に拠って姿を変える幻影…… 其の観測者たる存在が、此の私……か。

Hakumen
ハクメン

下らん。

Hakumen
ハクメン

其れがどうした。我が目的は『黒』。 そして『黒』に連なる者を屠る事。

Hakumen
ハクメン

我を喰らいたくば来い。 此の意志を以て悪を滅し、『黒』諸共消滅させるのみ。

Hakumen

第6節 『白き花と白き刃①』/

Summary
シエル達がハクメンの下に辿り着く。彼は一

行にその目的を問うが意に介すことはなく、 ただ窯から溢れる『黒』へと刃を向けた。

ラーベ

あれか……白い鎧の『英雄』……というか、なんだあれ。 とんでもない強さだな!?

Raabe
シエル

驚きです。あれ程の数の魔物を、殆ど一瞬で倒してしまいました。

Ciel
ラーベ

トキワの言っていた通り、か。 ……ん? っておい、待て。

Raabe
ラーベ

あの白い鎧、まさか……いや……えっ? 本物のスサノオユニットか!?

Raabe
トキワ

はい。そういう名だと聞いています。

Tokiwa
ラーベ

驚いた。まさか、こんなところでお目にかかれるとは……。

Raabe
シエル

ラーベさん、知っているんですか?

Ciel
ラーベ

まあね。といっても、データでしか見たことはないけど。

Raabe
ラーベ

スサノオユニット……あれはかつて、御剣機関が 保有していた代物だ。

Raabe
ラーベ

どうりで強いわけだ。しかしあの鎧が『英雄』とはね……。

Raabe
ハクメン

……何者だ?

Hakumen
ハクメン

貴様たちが此の世界に干渉した存在か?

Hakumen
トキワ

そうではありません、ハクメン様。

Tokiwa
トキワ

私はトキワ=カメリア。あなたと同じく、『悪』を滅する者です。 そのためにこの世界へ渡りました。

Tokiwa
ハクメン

貴様は……。

Hakumen
ハクメン

……否、助力は不要。 『黒』は私が此の手で滅さなければ為らない。

Hakumen
トキワ

失礼しました。 ですが元より、手助けのつもりなんてありません。

Tokiwa
トキワ

私は私で『悪』を屠るのみ。 あなたの存在は私の目的に影響しません。

Tokiwa
ハクメン

…………。

Hakumen
ハクメン

トキワ……と言ったか。貴様の目的は理解した。 しかし、他の者は異なる目的で動いている様だな。

Hakumen
ハクメン

貴様らは、此の世界の終わりを見届ける者か?

Hakumen
ラーベ

いや、そうじゃない。はじめまして、ハクメン……だったか。 私はラーベという。こっちはシエルとレイ。

Raabe
ラーベ

私たちの目的はこの世界……ファントムフィールドの解放だ。 そのために、ここを作った観測者を探している。

Raabe
ラーベ

観測者が存在し続けることにより、世界はループを繰り返す。 そのたびにこの世界は可能性を失っていく。

Raabe
ラーベ

放置すれば、世界から可能性は全て消失し、 あとには何も残らない。

Raabe
ラーベ

そうならないようにするために、 私たちはここへやってきた。

Raabe
ハクメン

理の外の者か……。

Hakumen
ハクメン

此の世界を形作る意思と境界との接続を切り、 此の場を世界では無く情報の集合体として保全するつもりか。

Hakumen
ラーベ

何故そのことを知っている?

Raabe
ハクメン

此処の窯から、境界に触れた時に得た情報だ。

Hakumen
シエル

窯……ハクメンさんは、窯があることも、 それがなんなのかもご承知なのですね。

Ciel
ラーベ

だがどうにも、話からすると、 世界の仕組みを知る前からここに窯があったようだな。

Raabe
ラーベ

ということは……やはりお前が観測者か?

Raabe
ハクメン

我が何者で在るか等、関係は無い。

Hakumen
ハクメン

此の窯は、在るべくして此処に在る。 窯が無ければ『黒』は現れない。

Hakumen
ハクメン

私の身は『黒』を……『黒き獣』を倒すために在る。 其の邪魔をさせる訳にはいかない。

Hakumen
ラーベ

黒……黒き獣だと……!? おい、お前まさか、その窯は……!

Raabe
ラーベ

っ!? な、なんだ!?

Raabe
シエル

警戒してください! 窯から巨大な敵性反応が上がってきます!

Ciel
トキワ

皆さん、下がってください。

Tokiwa
ハクメン

矢張り……其の兵装は、十六夜か。

Hakumen
トキワ

そうです。

Tokiwa
ハクメン

持ち主、環境、状況に合わせて進化する兵装…… 幾多の苦難を乗り越え、斯様な姿に成ったか。

Hakumen
トキワ

……どういう意味です?

Tokiwa
ハクメン

……否、気にするな。昔の話だ。 其れより刀を構えろ、来るぞ。

Hakumen
トキワ

わかっています!

Tokiwa
ラーベ

おい、お前たち正気か!? 本当に黒き獣が現れたら世界が終わるんだぞ!?

Raabe
ラーベ

しかも、それを倒すつもりだって? 正気の沙汰じゃない!

Raabe

1: に、逃げる?
2: そんなにやばい相手なの!?

1:
2:

ラーベ

もう遅い! この状況下では距離置こうが無駄だし すでに緊急脱出に支障が出るほどの影響が生じている

Raabe
ラーベ

やばいもなにも、 ファントムフィールドを喰らうリセット装置そのものだ!

Raabe
ラーベ

この世界ごと我々もすべて消滅するぞ!?

Raabe
トキワ

私は『黒き獣』を倒すためにこの世界に来たのです。 畏れる必要などありません。

Tokiwa
シエル

魔素が……巨大な形状を成していきます……!

Ciel
ラーベ

くそっ……これは本気でまずいぞ!

Raabe
ハクメン

あれこそが『黒』。

Hakumen
トキワ

あれこそが『悪』! この刃を以て、全て滅します!

Tokiwa

第6節 『白き花と白き刃②』/

Summary
魔素は黒き獣に成りきらず、貫かれ散った。

この世界にもはや意味がないことを悟ったハ クメンは、自らを斬れ、と一行に対峙する。

シエル

はぁ、はぁ……やっと、倒しました……。 ですが……今のが『黒き獣』……ですか?

Ciel
ラーベ

いや。実物はあんなものじゃない。 あれはただの……いわば肉片だ。

Raabe
ハクメン

……『黒』では在ったが、『黒き獣』には非ず。 成り損ないの、魔素の塊だ。

Hakumen
ラーベ

黒き獣じゃなくて残念というような口ぶりだな。 お前、自分が何をしようとしているか、わかってるのか?

Raabe
ハクメン

無論だ。

Hakumen
ハクメン

黒き獣は『悪』。私は『悪』を屠る存在。 此の世界を私が生んだと謂うならば、其の目的は『黒』だけだ。

Hakumen
ラーベ

おいおいおい……いよいよもって正気が疑わしい。

Raabe
ラーベ

『黒き獣』が現れるかもしれない世界が、 お前の望みだっていうのか?

Raabe
ラーベ

その願望だけで、こんな世界を作ったっていうのか!?

Raabe
シエル

ラーベさん、どういうことですか?

Ciel
ラーベ

ここは、災厄……『黒き獣』を出現させて そいつを倒すためだけに生み出された世界だ。

Raabe
ラーベ

そんな世界を望み、そんな世界を構築するような者は、 こいつしかいないだろう。

Raabe
ラーベ

やはりハクメンが観測者で間違いない。

Raabe
ハクメン

……然り。

Hakumen
ハクメン

元より理解して居た訳では無い。 知ったのは、世界の仕組みと同様に……境界に触れた時だ。

Hakumen
ハクメン

私を阻むつもり為らば、貴様たちも斬り伏せる筈だったが 私の成すべき事は、最早此の世界には存在しない様だ。

Hakumen
ハクメン

現れた『黒き獣』を斬った所で、 世界は繰り返すのだろう?

Hakumen
ハクメン

為れば最早、此の世界に意味は無い。

Hakumen
ハクメン

…………。

Hakumen
ハクメン

貴様たちに、頼みが在る。

Hakumen
トキワ

頼み、ですか?

Tokiwa
ハクメン

私を……斬れ。

Hakumen

1: どうして?

1:

ハクメン

先程話した通りだ。 此の世界に、最早意味など無い。

Hakumen
ハクメン

私が存在する限り、此の世界が存在するのであれば、 此の世界を放棄するべく私を消し去れ。

Hakumen
ラーベ

いや、それはちょっと待ってほしい。

Raabe
ラーベ

観測者が居続けるだけじゃなく、観測者が死ぬことでも 世界はリセットを起こしてループする。

Raabe
ラーベ

そしてやはりそのループを繰り返すことで、 ファントムフィールドは可能性を枯渇させて、最終的に消滅する。

Raabe
ラーベ

……それでは『黒き獣』が出現するのと、 なにも変わらない。

Raabe
シエル

……ですが、それならレイさんの 力が有効なのでは?

Ciel
ラーベ

そう。いいぞシエル、大正解だ!

Raabe
ラーベ

観測者であるハクメンと戦い、勝利することで、 レイの観測力がハクメンを上回ることができる。

Raabe
ラーベ

そうすれば、観測者の意識から切り離された窯を 破壊することができる。

Raabe
ラーベ

窯を破壊すれば、ファントムフィールドは解放される。 ハクメン、お前の望む状況が手に入るってわけだ。

Raabe
ラーベ

観測者であるお前を殺す必要はない。

Raabe
ハクメン

……理屈はどうでも良い。

Hakumen
ハクメン

するべき事に変わりが無いのなら、其れが分かれば十分だ。

Hakumen
シエル

っ……ハクメンさんの戦闘レベルの上昇を確認。 ただ構えただけなのに、ものすごい威圧感です……。

Ciel
トキワ

ええ……息が詰まりそう。 これほどの気迫……これが『ハクメン』……。

Tokiwa
ハクメン

ファントムフィールドの道理らしい。 私の意思がどうであれ、手加減は出来ない。

Hakumen
ハクメン

心して来い。

Hakumen
トキワ

……たとえどれほど強大な相手であろうとも、 それが私の道の先にいるのであれば、斬り払う。

Tokiwa
トキワ

それが私の、今の剣の形です。 こちらこそ、加減はしません。

Tokiwa
トキワ

我が名はホワイトジャスティス。 参る!!

Tokiwa
シエル

戦闘態勢に移行します。 レイさん、よろしくお願いします!

Ciel
ハクメン

おぉぉぉぉっ!

Hakumen

第7節 『境界を渡る者』/

Summary
観測は終わり、シエルが窯を破壊した。ハク

メンは行く宛もなく歩き去り、トキワは目的 のため、止まることなく世界を渡っていく。

シエル

はぁっ!

Ciel
シエル

くっ……!

Ciel
ハクメン

ぜあぁぁぁっ!

Hakumen
トキワ

はぁぁっ!

Tokiwa
ハクメン

其れが十六夜の行き着く果てか。 未だ……脆い!!

Hakumen
トキワ

くぅぅっ……! いいえ、まだです!!

Tokiwa
ラーベ

ふたりとも、そこまでだ!

Raabe
トキワ

はぁ、はぁ……っ! なぜです、ラーベさん!?

Tokiwa
ハクメン

…………。

Hakumen
ラーベ

もう十分だ。

Raabe
ラーベ

レイがハクメンを観測し、 この世界における観測の主導権を握った。

Raabe
ラーベ

あとは窯を破壊すれば、全てすむ。

Raabe
ラーベ

このまま続けていたら、どちらも無事ではすまないだろうが。 なんのために刃を合わせていたのか、忘れるんじゃない。

Raabe
シエル

では……もう戦闘を続行する必要はないのですね……。

Ciel

1: 大丈夫?
2: お待たせ

1:
2:

シエル

とても厳しい戦いでしたが、大丈夫です。問題ありません。 ……しかし、実力不足を実感しました……。

Ciel
シエル

もっと強くならなければなりません。

Ciel
シエル

いいえ、素早い対応です。

Ciel
シエル

それに、レイさんのために戦うのは、 私の役目です。

Ciel
シエル

……ですが、今回はちょっと緊張しました。 ハクメンさんはとても強かったです。

Ciel
ハクメン

……窯は如何にして破壊する?

Hakumen
ラーベ

シエルとレイがやる。 ……いけるか?

Raabe
シエル

はい。

Ciel
シエル

レイさん、観測をお願いします。

Ciel
シエル

第666拘束機関解放。次元干渉虚数方陣展開……。 『蒼の魔道書・写本』、起動! ブレイブルーCiel

トキワ

『蒼の魔道書・写本』…… 本当に窯を破壊してしまった……。 ブレイブルーTokiwa

トキワ

目の当たりにすると、少し驚きますね。

Tokiwa
ラーベ

窯の破壊はこれで完了だ。ファントムフィールドは 消滅することなく、ループもすることなく、境界に残る。

Raabe
ラーベ

ハクメン、お前はやがて本来あるべき場所に戻るはずだ。

Raabe
ハクメン

…………。

Hakumen
ハクメン

……戻るべき場所など、何処にも無い。

Hakumen
シエル

あ! ハクメンさん、どこへ……!

Ciel
シエル

……行ってしまいました。

Ciel
ラーベ

愛想のない奴だな。 付き合いが悪いぞ。

Raabe
トキワ

私も、次の世界へ向かいます。

Tokiwa
ラーベ

お前も付き合いが悪いな! 使命大好きか!?

Raabe
トキワ

好きとか嫌いとか、そういう問題ではありません。

Tokiwa
トキワ

『悪』が存在する限り、その『悪』を滅ぼすために この体は存在しています。

Tokiwa
トキワ

歩みを止める理由はないのです。 それだけが、私の居る意味なのですから。

Tokiwa
トキワ

それではみなさん、失礼します。

Tokiwa

1: それだけじゃないと思う
2: トキワは大事なものを忘れていない?

1:
2:

トキワ

…………。

Tokiwa
トキワ

あなたは…… 私に違う人間の面影を見ているのではないでしょうか。

Tokiwa
トキワ

もしそうだとしたら、見当違いです。

Tokiwa
トキワ

トキワ=カメリアは私の知る限り、このような存在です。

Tokiwa
ラーベ

やれやれ。似てるようで似てないような。 似てないようで似ているような、そんな連中だったなぁ。

Raabe
ラーベ

ハクメンもトキワもいなくなったのなら、 ここにはもうなにもない。私たちも帰るとしよう。

Raabe
シエル

はい。

Ciel
シエル

……トキワさんは、本当に世界から世界へと 渡ることができるのですね……。

Ciel
シエル

次はどのようなところに行ったのでしょうか。

Ciel
ラーベ

さぁな。ファントムフィールドを渡り歩く限り、 また会うこともあるかもしれない。

Raabe
ラーベ

そのときは、『悪』だと思われて 斬られないようにしておかないとな。

Raabe

第8節 『黒の因子①』/

Summary
シエル達と別れ、次の世界へと降り立つトキ

ワ。人の姿はなく、死臭が漂う世界の中…… 彼女は確かに『悪』の気配を感じとった。

――――そして再び、新たな世界へ降り立つ。

境界を斬り、踏み入れた世界で最初に感じたのは、 埃やカビの臭いに似た、臭気だった。

これは……死臭だ。

見覚えのある場所だった。しかし、人の姿がない。 気配もない。ここも『あるべき』存在が『いない』世界だ。

奇妙なのは、『繰り返した』形跡がないこと。 まるで時が止まっているかのような、静寂がある。

だが、微かに感じ取れるものがあった。

『悪』の気配。

すなわち、『黒』の気配。

トキワ

……世界虚空情報統制機構支部の建築様式ね。 だけど、特定のどこかというわけではなさそう。

Tokiwa
トキワ

でたらめにつなぎ合わせた空間、世界……。 そういう意味では、さっきまでいた世界と少し似ているのかも。

Tokiwa
トキワ

だけど……違うのは、 ここがすでに役目を終えた場であるということ……。

Tokiwa
トキワ

観測者も、異物もいない。 放棄されたフィールド……。

Tokiwa
トキワ

……それでも、『悪』の気配を伴って 動き回る亡者は存在しているのですね。

Tokiwa
統制機構の衛士

う、あ、ぁぁ……。

NOL Soldier
トキワ

統制機構の衛士のようだけれど…… すでに生きてはいない……?

Tokiwa
トキワ

まるで動く屍ね。

Tokiwa
トキワ

あなたたちが何者であれ、邪魔をするなら斬るのみ。

Tokiwa
トキワ

そして……この世界の深奥から漂う『黒』の気配を追う。 覚悟!!

Tokiwa

第8節 『黒の因子②』/

Summary
停止した窯に辿り着き、気配は途切れた。

「必ず追いついて、滅します。」彼女は変わ らぬ使命を負って、再び世界を渡っていく。

魔物や亡者は次々に現れた。 目に入るものを片っ端から斬って捨てた。

在るのはただ、使命感だけだ。これまで幾多もの世界で そうしてきたように、ただ倒すべき『悪』を追う。

『悪』……『黒』の気配を。

トキワ

進めば進むほど、気配が強くなってくる……。 この奥には……やっぱり。

Tokiwa

数えきれないほどの亡者を斬り倒し、奥へ奥へと進んだ先には、 予想していた通りのものあった。

トキワ

――窯。

Tokiwa
トキワ

だけどすでに活動を停止している……。 破壊されたわけではないようだけれど。

Tokiwa
トキワ

……観測者との繋がりも切れている。 それに、辿って来た『悪』の気配もここで途切れているわ。

Tokiwa
トキワ

ここを捨てて、別のファントムフィールドへ移ったというの? なぜ……? それに、どうやって?

Tokiwa
トキワ

観測者……あるいは『黒』の因子を持つ者が、 境界を渡るすべを持っていたの?

Tokiwa
トキワ

それとも……別の何者かの協力があった……?

Tokiwa

考えても、答えには辿り着けそうになかった。

どんな真相があるにせよ、 ここで行き止まりであることは間違いない。

ならば、もうここに用はない。

トキワ

黒の因子を受け入れた者は、滅ぼすべき『悪』。

Tokiwa
トキワ

必ず追いついて、滅します。

Tokiwa
トキワ

無論……『黒き獣』をも。

Tokiwa