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第1節『十三①』/ 1. Juusan - 1
Summary | |
---|---|
ラーベと共にフガクに引き上げられ、意識を
取り戻すシエル。しかしそこに、彼女が護衛 すべき人物の姿は見当たらなかった。 |
―――― |
|
―――― ……………………。 |
|
1: シエル…… |
1: |
1: 頼りになる素体の少女 |
1: |
1: ラーベ…… |
1: |
1: 分析に長けた独立思考型ユニット |
1: |
1: 僕は……/私は…… |
1: |
オペレーター
シークエンスクリア! システム、ランニング! |
Operator |
TA
――対象を捕捉した。情報に過不足無し。観測を開始する。 |
TA |
カガミ
来た……? いたか!? 見つけたのか!? タカマガハラ! |
Kagami |
TC
イエス。対象を捕捉しました。 |
TC |
TB
そう急かさないでよ。今観測中なんだから。 すぐにそっちに……ああ、ほら。 |
TB |
TB
――帰ってきたよ。 |
TB |
ラーベ
…………。 |
Raabe |
カガミ
ラーベ! ……機能を停止している? |
Kagami |
カガミ
いやこっちはいい、データさえ無事ならどうとでもなる。 レイ! シエル!? |
Kagami |
シエル
…………。 |
Ciel |
カガミ
シエル! シエル、シエル!? しっかりしろ! くそっ、メディカルルームに運べ! |
Kagami |
カガミ
タカマガハラ、観測状態はどうなってる!? |
Kagami |
TA
認識に問題は生じていない。過不足なく観測されている。 |
TA |
TB
意識がないのは僕らのせいじゃなくて、 あの素体の意識そのものの問題だよ。 |
TB |
TB
正常に調整されれば、そのうち目を覚ますんじゃない? |
TB |
カガミ
そうか……。 |
Kagami |
カガミ
……おい。 |
Kagami |
カガミ
待て。そんな馬鹿な……。 これは……どういうことだ? |
Kagami |
シエル
…………確認。確認。――完了。 システムに異常なし。 |
Ciel |
カガミ
……うむ。こっちの解析でも異常なし。 |
Kagami |
カガミ
はぁぁ〜〜……よかったぁ……。 一時はどうなることかと……。 |
Kagami |
カガミ
生身で境界に飛び込むなんて冗談じゃない。私があの場に いたとしても同じ判断をしただろうが、二度とごめんだ……。 |
Kagami |
カガミ
なにもかもいっぺんに失ったかと思ったよ……。 お前が目を覚ましてくれてよかった、シエル。 |
Kagami |
シエル
……はい。 |
Ciel |
シエル
……境界……生身で……あ。そうです。 |
Ciel |
シエル
覚えています。ファントムフィールドが崩壊するからと、 私たちはラーベさんの指示で起動中の窯から境界に入り……。 |
Ciel |
シエル
それで……。 |
Ciel |
カガミ
今しがたようやくまともな意識を取り戻したってわけだ。 意識だけでなく、記憶もはっきりしてるようでなによりだ。 |
Kagami |
カガミ
これも、レイが きっちりお前とラーベを観測し続けてくれたおかげだ。 |
Kagami |
シエル
……そうだったんですね。 レイさんのおかげで……。 |
Ciel |
シエル
境界の中にありながら、自分だけでなく私とラーベさんを 観測し続けてくださったなんて……すごい方です。 |
Ciel |
シエル
……あの、カガミさん。 |
Ciel |
カガミ
……なんだ? |
Kagami |
シエル
そのレイさんは…… どちらにいるのですか? |
Ciel |
第1節『十三②』/ 1. Juusan - 2
Summary | |
---|---|
荒野で目を覚ますと、目の前には十三という
少女と、ドライと名乗る男。仲間とはぐれた ことを説明する途中、野盗の襲撃を受ける。 |
|
フガクにて、シエルは仲間の危機を知る。タ
カマガハラは捜索を続け、探査範囲を境界内 からファントムフィールドへと広げていく。 |
少女
……か? |
Young Woman |
少女
だい……か? |
Young Woman |
少女
…………。 ……………………。 |
Young Woman |
少女
……いつまで寝てるんだ、さっさと起きろ!!</style> |
Young Woman |
少女
やっと起きたのか。これで起きなかったら、 ゴミと判断して捨てていくつもりだったんだけど。 |
Young Woman |
1: お……おはようございます |
1: |
少女
呑気な奴だ。 こんな荒んだ場所で、ぐっすり眠るなんて。 |
Young Woman |
少女
まあ、アンタが死のうが私には関係ないけど。 |
Young Woman |
少女
ここがどこかって? 見てわからない? |
Young Woman |
少女
見渡す限りの荒れ地。 水も食料も手に入らない、不毛の地だよ。 |
Young Woman |
少女
で。アンタ、なに? 行き倒れ? |
Young Woman |
少女
こんななにもない場所でぶっ倒れてるなんて 変わった趣味だね。 |
Young Woman |
少女
……もしかして、死にたがり? だったら、邪魔して悪かったかな。 |
Young Woman |
男性
十三。どうやらこの方は そういうわけではなさそうですよ。 |
Man |
十三と呼ばれた少女
なんだ。ドライはこいつのこと知ってるのか。 |
"Juusan" |
ドライと呼ばれた男性
いいえ、なにも。 |
"Drei" |
ドライと呼ばれた男性
ただ非常に戸惑っておられるようです。 ご自分の状況がわかっていないのではないでしょうか。 |
"Drei" |
ドライと呼ばれた男性
やはり。 |
"Drei" |
ドライと呼ばれた男性
このような場所に倒れていたのです、 なにか事情がおありなのでしょう。 |
"Drei" |
ドライと呼ばれた男性
どうぞ警戒なさらないでください。 我々に害意はありません。 |
"Drei" |
十三と呼ばれた少女
……今のところは、ね。 |
"Juusan" |
ドライと呼ばれた男性
彼女は十三。私のことはドライとお呼びください。 あなたのお名前をうかがっても、宜しいですか? |
"Drei" |
ドライ
……レイさん、とおっしゃるのですね。 |
Drei |
ドライ
レイさんはなぜ、 こちらで倒れていらしたのですか? |
Drei |
ドライ
私共が偶然この場を通りかかったのも、何かの縁。 是非、事情をおうかがいしたいのですが。 |
Drei |
1: シエルとラーベさんは……? |
1: |
十三
誰、それ? アンタの連れ? |
Juusan |
十三
知らない。アンタの連れ? |
Juusan |
ドライ
あいにく、心当たりはありませんね。 もしや仲間とはぐれてしまったのですか? |
Drei |
十三
もういいだろ、ドライ。 |
Juusan |
十三
アンタが放っとけないと言うから付き合ってやったんだ。 コイツは生きてたんだから、それでいいじゃないか。 |
Juusan |
十三
余計なことまで関わる必要はない。 あとはコイツの好きにさせよう。 |
Juusan |
ドライ
待ってください、十三。 まさかこのまま彼を、置いていくというのですか? |
Drei |
ドライ
待ってください、十三。 まさかこのまま彼女を、置いていくというのですか? |
Drei |
十三
当たり前だろ。 コイツがどうなろうと、どうでもいいし関係ないよ。 |
Juusan |
ドライ
しかしこの方はどう見ても、なんの力も持たぬ一般人。 このようなところに置き去りになどできません。 |
Drei |
ドライ
もし次に彼を見つけるのが、よからぬ者であったら……。 |
Drei |
ドライ
もし次に彼女を見つけるのが、よからぬ者であったら……。 |
Drei |
ドライ
ああ、ほら。ちょうど、彼奴らのようにです。 |
Drei |
十三
ちッ……面倒くさいな……。 だから時間を無駄にしたくなかったんだ。 |
Juusan |
ドライ
この辺りを根城にしている、盗賊のような連中です。 通りがかる者を襲っては、身ぐるみを剥いでしまう。 |
Drei |
ドライ
……場合によっては、 体そのものもバラバラにして売りさばいてしまうとか。 |
Drei |
十三
へぇ……ようするに雑魚ってことか。 |
Juusan |
十三
遊び相手にもならない雑魚は嫌いだ。 あぁ、本当に面倒くさい。 |
Juusan |
十三
ほら、アンタもいつまで呆けてるんだ。 自分の身くらい自分で守りなよ。 |
Juusan |
十三
その内に私が……排除してやるよ。 |
Juusan |
シエル
……では、レイさんはフガクに 帰還していないのですか!? |
Ciel |
カガミ
……ああ、そうだ。 |
Kagami |
カガミ
タカマガハラシステムが境界でキャッチできた反応は、 たしかに3人のものだった。 |
Kagami |
カガミ
だが実際にサルベージできたのは、シエルとラーベのみ。 レイの行方はわからない。 |
Kagami |
シエル
そんな……。 |
Ciel |
シエル
そんな……そんなこと、は、だめです。 そんなこと、あっては、だめです……! |
Ciel |
シエル
私たちがいたのは、境界なんです! サルベージできなかったということは……。 |
Ciel |
シエル
レイさんはおひとりで、 まだ境界にいるということになります……。 |
Ciel |
TB
通常なら、情報の断片として境界に溶けて消えてしまうだろうね。 |
TB |
TB
運よくどこかの時間軸に流れ着いたとしても、 まともな状態ではいられないよ。 |
TB |
シエル
……っ! |
Ciel |
カガミ
タカマガハラ。シエルを不安にさせないでくれ。 それはあくまでも『通常なら』の例に過ぎない。 |
Kagami |
カガミ
シエルも少し冷静になれ。 お前たちをサルベージできたことには理由がある。 |
Kagami |
カガミ
タカマガハラの観測下に入る寸前まで、 レイによって観測されていたからだ。 |
Kagami |
カガミ
そのこと自体がすでに信じがたい奇跡だが、 レイの観測に問題はなかった。 |
Kagami |
カガミ
つまりまだ自己観測によって、 境界内に存在している可能性は……十分にある。 |
Kagami |
シエル
……十分、とは、どれくらいの確率ですか……? |
Ciel |
カガミ
…………。 |
Kagami |
カガミ
とにかく、探すしかない。 今、タカマガハラシステムが境界内を探してる。 |
Kagami |
カガミ
……どうだ? 反応はあったか? |
Kagami |
TC
……ノー。フガク探査可能範囲に、該当の反応はありません。 |
TC |
TB
これはダメだよ。全然ダメだ。成果なし。 境界をいくら探しても見つからないんじゃないかな。 |
TB |
TB
捜索対象を広げるべきだと思うよ。 というより、変えるべきかな。 |
TB |
TA
我々の観測範囲内において出現が確認されている ファントムフィールドを捜索対象に含める。 |
TA |
TA
計測を開始。 |
TA |
カガミ
…………まだか。 |
Kagami |
TB
そりゃまだだよ。 なにを探させてるのか、わかってる? |
TB |
カガミ
わかっている。 いいからそっちはそっちのことに集中してくれ。 |
Kagami |
TB
はいはい。やってるよ。 そっちはずいぶん焦ってるみたいだね。 |
TB |
TB
ちょっとしたおしゃべりくらいでパフォーマンスが落ちるような システムじゃないって、知ってるだろうにさぁ。 |
TB |
シエル
…………っ。 |
Ciel |
カガミ
おい、待て。シエル。 どこへ行くつもりだ? |
Kagami |
シエル
捜索対象のファントムフィールドに |
Ciel |
カガミ
気持ちはわかるが、シエルは待機だ。 下手に動くな。 |
Kagami |
シエル
ですが! |
Ciel |
カガミ
レイが、サルベージ直前まで自身ごとシエルを 観測していたことは間違いない。 |
Kagami |
カガミ
ならば、そのまま自己観測を続けることも可能だったはずだ。 |
Kagami |
カガミ
レイがまだ存在している可能性はかなり高い。 それは本当だ。信じろ。 |
Kagami |
シエル
……………………はい。 |
Ciel |
カガミ
ファントムフィールド内で見つけられた場合、
|
Kagami |
カガミ
そのときは速やかに対応してもらう。 だからそれまでは、待機だ。いいな。 |
Kagami |
シエル
…………了解。 |
Ciel |
シエル
(……なにもできない。) |
Ciel |
シエル
(待っているしかできない……。) |
Ciel |
シエル
レイさん…… どうか無事でいてください……。 |
Ciel |
第1節『十三③』/ 1. Juusan - 3
Summary | |
---|---|
荒野で十三・ドライと共に野盗を排除。二人
は観測の力に興味を示し、この世界を仕切る 『灰の王』を探す旅を共にすることに。 |
|
二人もまた、他の世界からこの荒野に紛れ込
んだのだとドライは言った。腰を落ち着けて 話すため、行く手のダイナーへと向かう。 |
十三
…………。 |
Juusan |
ドライ
不届き者は片付いたようですね。 レイさん、お怪我はありませんか? |
Drei |
1: ドライさん、すごく頼もしいですね! |
1: |
ドライ
私の魔術が誰かを守ることに役立つのは、 実に喜ばしいことです。 |
Drei |
ドライ
おや、意外そうな顔ですね。魔術に見えませんでしたか? こう見えて私は、それなりの魔術師なのですよ。 |
Drei |
ドライ
私も初めて彼女の技を見た時は驚きました。 |
Drei |
ドライ
彼女のように小さな身体から、あれほどの威力の攻撃が 繰り出されるのですから。 |
Drei |
ドライ
出会ってそれほど長い時間はたっていませんが、 彼女の戦闘における実力は絶大な信頼に値しますよ。 |
Drei |
十三
その『さん』ってつけるやつ、やめろ。 なんか聞いててうっとうしい。 |
Juusan |
十三
ドライはともかく、私のことをそんな呼び方したら…… 勢いあまって死ぬことになるから。 |
Juusan |
ドライ
やれやれ、十三は乱暴な言い方をしますね。 とはいえ、私のことも『ドライ』で結構ですよ。 |
Drei |
ドライ
私はあなたをレイさん、とお呼びしますがね。 |
Drei |
十三
そんなことより、アンタ。 |
Juusan |
十三
今の戦い。なにやった? |
Juusan |
十三
アンタだよ、アンタ。さっきなんかやってただろ。 いや……『なんか』とかじゃない。あれは『観測』だ。 |
Juusan |
十三
……なんとなく、わかってきたよ。 そうか、アイツが言ってたのは……アンタか。 |
Juusan |
ドライ
『観測』……? 成程、どうりで。 ですが、驚くべきことです。 |
Drei |
ドライ
一時的にとはいえ他者の存在を……それも複数、同時に観測し、 疑似的に戦力とするなど……常人に行えることではありません。 |
Drei |
ドライ
レイさん、あなたは一体……。 |
Drei |
十三
……化け物の『ご友人』だろ。 |
Juusan |
ドライ
化け物? |
Drei |
ドライ
もしや、出会った頃にお聞かせいただいた 『探し人』のことですか? |
Drei |
十三
……そう。 仕方ないから、もののついでに探してやってたけど。 |
Juusani |
十三
その当人の方から現れたっていうなら、仕方ない。 アンタの力になれって頼んだ奴に感謝しな。 |
Juusan |
十三
それでアンタ、連れとはぐれたって言ったっけ? |
Juusan |
十三
……心当たりは? |
Juusan |
十三
面倒だな……やっぱりやめるか。 |
Juusan |
ドライ
困っている人を前にして、 そのような言い方はいかがなものかと思いますよ。 |
Drei |
ドライ
この方の力になると、決めたのでしょう? |
Drei |
十三
言っただろ、頼まれただけだって。 私が望んでそう決めたんじゃないよ。 |
Juusan |
十三
……誰に頼まれたか? だから、化け物だよ。 |
Juusan |
十三
だけど力になるって言ったって…… アンタ、なにもわからないんだろ。 |
Juusan |
十三
そんな状態の奴を、どうしろって言うんだ。 |
Juusan |
ドライ
ふむ……そうですね……。 |
Drei |
ドライ
ではお連れの方が見つかるまで、我々に 同行していただくというのはいかがですか? |
Drei |
ドライ
幸か不幸か、我々もまだこの世界に不慣れでして。 情報収集をしていれば、なにか耳に入るかもしれません。 |
Drei |
ドライ
いかがでしょう、十三? |
Drei |
十三
…………。 |
Juusan |
十三
アンタの観測は、なにかと便利そうだ。 |
Juusan |
十三
……そうだね。こっちの用が終わるまで付き合うなら 考えてやってもいい。 |
Juusan |
ドライ
最後まで……ですか? しかし、さすがにそれはいささか危険ではありませんか? |
Drei |
1: そっちの用って? |
1: |
十三
ふぅん、その聞き方だと、事と次第によっては手伝うつもり? いいよ、教えてあげる。 |
Juusan |
十三
その願いは叶わないよ。 この『世界』にいる以上、危険からは逃げられない。 |
Juusan |
十三
逃げるなら勝手にしな……と言いたいところだけど、 ドライがうるさそうだ。気は乗らないけど教えてあげるよ。 |
Juusan |
十三
私たちはこの『世界』を仕切ってる 『灰の王』に会いに行く。 |
Juusan |
十三
そいつに会って、確かめたいことがあるんだ。 それが私とドライの、共通の用事だよ。 |
Juusan |
ドライ
とはいえ、実は『灰の王』については我々も 詳しくはありません。 |
Drei |
ドライ
確実なのは、非常に強い力を持っているということ…… 私と十三が共闘関係を結んでいるのは、そのためです。 |
Drei |
ドライ
もしあなたの力が借りられるのなら、私たちにとって 思いがけない好機を得られるかもしれませんが……。 |
Drei |
ドライ
それにしても、この旅路はかなり危険をともないます。 そこまでの同行となると、賛同はできませんね。 |
Drei |
十三
それ、私に関係ある? |
Juusan |
十三
使えるものは使う。 |
Juusan |
十三
助けてほしいなら、それなりの代償を払ってもらう。 それだけの話だよ。 |
Juusan |
十三
『灰の王』が誰であろうと、観測の力があれば 殺せないものを殺すことだって可能だ。 |
Juusan |
十三
だから、これは取引だよ。 |
Juusan |
十三
連れが見つかるまで同行を許す代わりに 私たちの用にも付き合ってもらう。 |
Juusan |
十三
だってドライ……コイツがひとりでうろつくのも アンタは『賛同しない』でしょ? |
Juusan |
ドライ
ええ、賛同しません。 この世界は、危険な場所です。どこも治安が悪い。 |
Drei |
ドライ
しかし、我々の旅路は更なる危険も……。 |
Drei |
十三
そう。当然、危険だ。 |
Juusan |
十三
だから道中は、私がアンタを守ってあげる。 |
Juusan |
1: 守る……? |
1: |
十三
そう。例えば……。 |
Juusan |
人相の悪い男
ヒャッハー! そこを動くなテメェら!! 金目のもんと食料、身ぐるみ全部置いていきなぁ!! |
|
覆面の男
おっと、女がいるじゃねぇか。ツイてるぜぇ。 男ふたりはバラして、女は手土産にするってのはどうだ? |
|
覆面の男
おっと、女がいるじゃねぇか。ツイてるぜぇ。 あのデカい男はバラしちまって、女どもは手土産にしようぜ。 |
|
十三
……ああいうくだらない連中から。 私が守ってあげるよ。 |
Juusan |
私が必ずお守りします。 |
|
シエル
私はレイさんの護衛です。 |
Ciel |
人相の悪い男
ヒャァッハァーーー! みんなぁ、やっちまえ!! |
|
十三
狙う相手を間違えたよ。 バラされるのは、オマエたちだ。 |
Juusan |
ドライ
立ちはだかると言うのなら、容赦はしません。 叩き潰すのみ! |
Drei |
人相の悪い男
ヒイィィ〜! た、助けてぇ〜!! |
|
十三
……くだらない。 時間を無駄にしたよ。 |
Juusan |
ドライ
いつもながらお見事です、十三。 |
Drei |
ドライ
それにレイさんも。 ご一緒できるのが心強いですよ。 |
Drei |
十三
どうかな……。観測の力は不安定で、そう簡単に 制御できるものじゃない。 |
Juusan |
十三
そいつが、いつまでそんなに器用に戦い続けられると思う? |
Juusan |
ドライ
……それほど気に掛けておられるとは、 よほどレイさんが心配なのですね。 |
Drei |
十三
はぁ!? 違う。なに勝手なこと言ってるの。 殺すよ? |
Juusan |
ドライ
ははは。 |
Drei |
ドライ
ああ、こうして和やかに談笑していたいところですが、 また今のような連中に声をかけられてはとても落ち着けません。 |
Drei |
ドライ
そろそろ場所を移してはどうでしょう。 |
Drei |
十三
勝手に話を変えるな。 |
Juusan |
十三
……フン。もういいよ。 行くよ、レイ。 |
Juusan |
十三
……レイ? |
Juusani |
ラーベ
くそ、こっちも窯の内部に超高密度エネルギーの片鱗を感知した。 時間がない、急げ、飛び込め!! |
Raabe |
シエル
了解!! |
Ciel |
シエル
レイさん、手を離さないでください! |
Ciel |
1: (シエル、ラーベさん。無事かな……) |
1: |
十三
ぼけっとしていたら置いてくよ。 考え事は後にして。 |
Juusan |
十三
普通に喋って。 そのお行儀のいい話し方は好きじゃない。 |
Juusan |
ドライ
この先にキャンプ地のような場所があるはずです。 ここの世界の人たちはダイナーと呼んでいるようですが。 |
Drei |
ドライ
……ああ、ええ。お察しの通り、私や十三は この世界の住人ではありません。 |
Drei |
ドライ
他の世界から、なにかの理由でこの世界に 紛れ込んでしまった者なのです。 |
Drei |
ドライ
その辺りについても、腰を落ち着けてゆっくり話しましょう。 |
Drei |
第1節『十三④』/ 1. Juusan - 4
Summary | |
---|---|
フガクでは捜索の結果、目標の位置を捕捉し
ていた。対処が困難な状況に手が打てずにい ると、突然ココノエとテイガーが現れる。 |
TA
当該反応を捕捉した。 |
TA |
カガミ
……当該? なんの……ん? 待て、今なんて言った、なにを見つけたって!? |
Kagami |
TA
当該反応を捕捉した。 |
TA |
カガミ
レイか!?</style> |
Kagami |
シエル
……っ! |
Ciel |
カガミ
待て、シエル! 場所と状況を確認してからだ! |
Kagami |
カガミ
詳細を報告してくれ、タカマガハラ。 |
Kagami |
TB
はいはい。捜索範囲を大小問わずファントムフィールドにまで 広げてたわけだけど……。 |
TB |
TB
そのうちのひとつから、たった今突然、 レイの反応が確認された。 |
TB |
TB
なんか突然、引っかかったんだよね。 内部できっかけになることがあったのかもしれない。 |
TB |
シエル
そ、それは、レイさんの身に なにかあったということですか……!? |
Ciel |
TC
イエス。状況は不明ですが、 フガクないしそれに関連する事項を強く認識したと見られます。 |
TC |
シエル
カガミさん、早く私をそのフィールドに……! |
Ciel |
カガミ
急かすな、座ってろ。 |
Kagami |
カガミ
見つけたからってホイホイ気軽に飛び込めるものじゃないんだ、
|
Kagami |
シエル
……すみません。 |
Ciel |
TB
ちょっと驚きだよね。 |
TB |
TB
境界に落ちてなお存在を保っていたばかりか、 そのまま別のファントムフィールドに漂着してるなんて。 |
TB |
TB
しかも、そこでも平然と自己を保っている。 これほどの観測力を持った存在っていうと……。 |
TB |
カガミ
おしゃべりは後にしてくれ。 反応があったファントムフィールドはどこだ? |
Kagami |
オペレーター
タカマガハラシステムから座標が提示されました。 モニターに出力します。 |
Operator |
カガミ
……やはりか。くそっ、かなり遠いな。 |
Kagami |
TB
当たり前だろ。ファントムフィールドだよ。 同じ時間速度なわけがない。 |
TB |
シエル
時間速度……? |
Ciel |
カガミ
前に話さなかったか。ファントムフィールドと境界内に 存在するフガク内部とでは、時間の流れの速度が著しく違う。 |
Kagami |
カガミ
そもそも境界内では、時間の流れなんてものは意味を成さない。 そこを漂っているわけだから、フガクは時間の流れが遅いわけだ。 |
Kagami |
カガミ
加えて、ファントムフィールドの時間はというと、 常に加速している状態にある。 |
Kagami |
カガミ
この時間の流れ……時間速度の乖離があればあるほど、 『遠い』。 |
Kagami |
シエル
では……レイさんが今いるファントムフィールドは、 フガクよりもかなり時間速度が速いのですね。 |
Ciel |
カガミ
そうだ。……本来は時間をかけて |
Kagami |
カガミ
遅れれば遅れるほど、今まさにファントムフィールド内にいる レイと、時間の誤差が生じてしまう。 |
Kagami |
シエル
そうすると、どうなりますか……? |
Ciel |
カガミ
簡潔に言うと、サルベージできなくなる。 |
Kagami |
シエル
な……っ。 |
Ciel |
カガミ
だからどうにかして、通常の手順をすっ飛ばして極力速やかに……。 |
Kagami |
カガミ
できれば瞬時に『時間の並列化』を行い、 |
Kagami |
カガミ
ああくそっ、今すぐ劇的にフガク内の技術レベルが上がれ! |
Kagami |
TC
ノー。不可能です。 |
TC |
???
そうでもないぞ。 |
??? |
カガミ
なんだと? なにを……って、お前……!? |
Kagami |
シエル
あなたは……! |
Ciel |
ココノエ
ふふん、驚いているな。いい顔をするじゃないか。 間が抜けていて実に愉快だ。 |
Kokonoe |
シエル
ココノエ博士!? なぜここにいらっしゃるのですか……? レイさんもいないのに……。 |
Ciel |
ココノエ
そのレイの類まれな観測のおかげだ。 |
Kokonoe |
ココノエ
ファントムフィールド内で私をこれでもかと観測してくれたんでな。 その後は自己観測に切り替えて、ここまで来た。 |
Kokonoe |
カガミ
馬鹿な、そんなことが……。 |
Kagami |
ココノエ
可能かどうかを議論している時間はあるのか? 技術レベルを劇的に上げたいんだろう? |
Kokonoe |
カガミ
っ、そうか、お前がいれば……! 協力を頼めるか、ココノエ! 一刻を争うんだ! |
Kagami |
ココノエ
そのために声をかけたんだろうが。 |
Kokonoe |
ココノエ
私の存在を確立してくれた礼をしなくちゃならない。 それと、お前たちがしようとしていることにも興味がある。 |
Kokonoe |
ココノエ
次元境界潜航船フガク――タカマガハラシステム。 どちらも私手ずから改造してやろう。 |
Kokonoe |
ココノエ
なに、心配するな。後悔はさせん。 多分な。ふふふッ……。 |
Kokonoe |
第2節『願望を叶える者①』/ 1. Wish-Granter - 1
Summary | |
---|---|
時間の並列化に目途がついたココノエたち。
しかし準備には24時間かかる上、浸入から 救出までに使える時間は8時間のみだった。 |
シエル
…………。 |
Ciel |
テイガー
…………。 |
Tager |
シエル
……………………。 |
Ciel |
テイガー
シエル、だったか。少し落ち着いてはどうだ。 |
Tager |
テイガー
今の私にその記憶はないが、記録によれば お前は冷静で職務に忠実な兵士だと聞いているぞ。 |
Tager |
シエル
テイガーさん……。 |
Ciel |
シエル
カガミさんにも言われたばかりだというのに…… すみません。 |
Ciel |
シエル
でも、自分でもわからないのです。 こんなにも身体が落ち着かないのは、何故なのでしょう。 |
Ciel |
テイガー
命あるものならば、当然の反応だ。 |
Tager |
テイガー
人は皆なにかにすがり、寄り添い生きている。 その対象は人、物、神、概念、時間、それぞれだ。 |
Tager |
テイガー
そういったものが見えなくなった時、 人は普段の自分ではいられなくなる。 |
Tager |
テイガー
それが、不安というものだ。 |
Tager |
シエル
不安……。 |
Ciel |
シエル
はい、私は不安なのだと思います。 |
Ciel |
シエル
レイさんが本当に無事なのか…… そう考えると、身体が落ち着かなくなります。 |
Ciel |
シエル
この気持ちを、どうしたらいいのか……。 |
Ciel |
ココノエ
お前たち。お喋りは程々にしておけ。 |
Kokonoe |
シエル
ココノエさん。 |
Ciel |
ココノエ
めずらしいな、テイガー。 お前が他人にアドバイスとは。 |
Kokonoe |
ココノエ
シエルに自分と似たところを感じたか? |
Kokonoe |
テイガー
ココノエ。私は……。 |
Tager |
カガミ
ああ、いいよいいよ。 |
Kagami |
カガミ
むしろうちのシエルにプラスの影響があるかもしれない。 見ての通り『経験』の少ない部下でね。 |
Kagami |
カガミ
だが今はそれよりも、大事なことがある。 レイを助けられるかどうか、だ。 |
Kagami |
カガミ
シエルもそれが一番気になってるんだろ? |
Kagami |
カガミ
早速、現状を共有しておきたいのだが。 心の準備はいいか? |
Kagami |
シエル
心の準備が必要となるような内容……ということでしょうか? |
Ciel |
カガミ
うん。単刀直入に言うが、いい報せと悪い報せがある。 といっても全体的に見ればそう悲観するものでもないんだけれど。 |
Kagami |
カガミ
いい報せから言おうか。 |
Kagami |
カガミ
今しがた、フガクとファントムフィールドにおける 異なった時間速度の並列化の、シミュレーションに成功した。 |
Kagami |
テイガー
並列化……時間の速度と同じにすることか。 |
Tager |
ココノエ
平たく言えばそうだ。この船に積まれているシステムを 最大限に活用すれば、可能だと判明した。 |
Kokonoe |
シエル
ココノエさんが計算されたのですか? |
Ciel |
カガミ
本来なら、私の船を他人にいじくり回させるなんて 絶対にごめんだが……今は緊急事態だからね。 |
Kagami |
カガミ
ファントムフィールドを自己観測で作り変えるほどの 知識と技術は、伊達じゃない。 |
Kagami |
カガミ
計算だけなら私ひとりでも可能だが、実現できるレベルの 技術とシステムの構築は、ココノエなしでは不可能だった。 |
Kagami |
カガミ
優秀な助手が来てくれて助かったよ。 |
Kagami |
ココノエ
おいこら、誰が助手だ。 ありがたく思えよ、この天才の頭脳を貸してやったのだからな。 |
Kokonoe |
ココノエ
だがまあ、タカマガハラを直接弄れるというのは 私にとっても悪くない話だ。 |
Kokonoe |
ココノエ
私の想像していたものとは少々違ったが、 かなり得るものも大きかった。 |
Kokonoe |
ココノエ
とはいえ、約束の報酬は必ず頂くがな。 |
Kokonoe |
テイガー
……報酬? |
Tager |
カガミ
うおっほん! とにかくだ! |
Kagami |
カガミ
時間速度の並列化が実現可能となった今、 レイ救出の可能性は大きく上がったわけだ。 |
Kagami |
テイガー
その点は理解した。 それで、悪い方の報せはなんだ? |
Tager |
ココノエ
時間速度の並列化、と言葉にするのは簡単だが 実際それを行うには膨大な演算が必要だ。 |
Kokonoe |
ココノエ
複数の観測によって生まれる相対速度や重力場の ズレを少しずつ修正する作業だ。 |
Kokonoe |
ココノエ
必要な演算量は、普段ファントムフィールドを観測する 場合とは比べものにならない。 |
Kokonoe |
ココノエ
つまりだな。時間の並列化を行うには時間がかかり、 かつそれを維持するには限界がある。 |
Kokonoe |
ココノエ
並列化の準備に必要な時間は、試算でおよそ24時間。 並列化の後、それを維持できるのは……8時間程度だ。 |
Kokonoe |
テイガー
8時間? その間に |
Tager |
ココノエ
その通りだ。 |
Kokonoe |
シエル
…………。 |
Ciel |
シエル
8時間のリミットを越えると、どうなるのですか? |
Ciel |
ココノエ
タカマガハラシステムがダウンし、 時間の並列化も当然解除される。 |
Kokonoe |
ココノエ
再び時間の並列化を行うには、かなりの時間が必要だ。 |
Kokonoe |
ココノエ
そうなればまず間違いなく、再並列化の前に ファントムフィールドにリセットがかかるだろう。 |
Kokonoe |
ココノエ
リセットに巻き込まれたレイがどうなるかは 断言できないが……。 |
Kokonoe |
ココノエ
情報の再構成に巻き込まれるのは避けられない。 おそらく、ここに無事戻れることはないだろう。 |
Kokonoe |
シエル
そんな……。 |
Ciel |
カガミ
シエル。いま我々にできることはひとつしかない。 |
Kagami |
カガミ
来るべき8時間のために、最善の準備を整えることだ。 それがレイを救う鍵になる。 |
Kagami |
カガミ
もちろん私も、全力を尽くすつもりだよ。 |
Kagami |
シエル
……了解しました。 |
Ciel |
カガミ
それからもうひとり……レイ救出のために 全力を尽くしてもらわなきゃいけない者がいるんだが……。 |
Kagami |
シエル
もうひとり……ですか? それは、どなたのことでしょうか。 |
Ciel |
テイガー
レイ自身のことだろう。 |
Tager |
シエル
あ……なるほど。 |
Ciel |
カガミ
その通りだ。 先ほども言ったが、時間は限られている。 |
Kagami |
カガミ
|
Kagami |
シエル
カガミさん。 時間の並列化が必要ということは…… |
Ciel |
シエル
フガクとファントムフィールド内で、 時間の流れる速度が違うということですよね? |
Ciel |
シエル
準備に24時間かかる、とおっしゃいました。 |
Ciel |
シエル
フガクで24時間たつと、ファントムフィールド内では どのくらい時間がたつのでしょうか……? |
Ciel |
カガミ
……ざっと7日間くらいかな。 |
Kagami |
シエル
7日間……こちらからは、なにもできないのですね。 |
Ciel |
カガミ
今はまだ捕捉をするだけで精一杯だが、 数時間のうちには通信の目途をつけるつもりだ……。 |
Kagami |
ココノエ
通信なら間もなく目途がつきそうだぞ。 |
Kokonoe |
カガミ
うむ、間もなく目途が……なに!? なんでだ!? どうやった!? |
Kagami |
カガミ
あっちは加速し続けるフィールドだぞ!? |
Kagami |
ココノエ
時間速度のズレが生じるのは、2つの異なる観測…… つまり、フガクとフィールドの2箇所で起きた現象だ。 |
Kokonoe |
ココノエ
私には、単独で境界に潜入できる優秀な部下がいるのでな。 中継地点になってもらった。 |
Kokonoe |
カガミ
くそ! うらやましいな! |
Kagami |
カガミ
待てよ、シエルやラーベならあるいは……。 |
Kagami |
ココノエ
気持ちはわかるが、今はそれどころじゃないだろう。 |
Kokonoe |
ココノエ
それよりもだ。 たった今、その部下から興味深いデータが送られてきた。 |
Kokonoe |
ココノエ
レイの存在するファントムフィールドに 素体が存在するようだ。 |
Kokonoe |
カガミ
素体だと? まさか……バベルの連中か? |
Kagami |
ココノエ
……いや。このデータには見覚えがある。 |
Kokonoe |
ココノエ
これは……ふふ、なるほどな。 面白いことになりそうだ。 |
Kokonoe |
第2節『願望を叶える者②』/ 1. Wish-Granter - 2
Summary | |
---|---|
ドライと十三はダイナーで『ゲーム』の存在
を知る。にわかに騒がしくなった外では、若 い男女がドライブ能力者に囲まれていた。 |
ドライ
さあ、どうぞ食べてください! |
Drei |
十三
……ドライ、頼みすぎじゃない? |
Juusan |
ドライ
レイさんは空腹のようですし、 まだお若い。これくらいいけるでしょう。 |
Drei |
ドライ
十三も、どうぞ遠慮せずに。 |
Drei |
十三
……前にも言っただろう。私はそんなに食べない。 元々、食事をそこまで必要としないんだ。 |
Juusan |
ドライ
ですが食べてはいけないというわけではないのでしょう? |
Drei |
ドライ
食は胃よりも心を満たしてくれます。 こうやって皆で食卓を囲むことが重要なのです。 |
Drei |
ドライ
さあ、どうぞ。 |
Drei |
十三
アンタね……。 |
Juusan' |
十三
はぁ……わかったわかった、食べるよ。 ……ホント面倒な奴。 |
Juusan |
1: 食事を必要としないってどうして? |
1: |
十三
……それ、アンタに関係ある? |
Juusan |
十三
人にあれこれ聞かれるのは嫌いなんだ。 余計なことは詮索しないで。 |
Juusan |
十三
死にたいなら話は別だけど。 |
Juusan |
ドライ
どうか気を悪くしないでください。 彼女は、昔のことや自分のことを話したがらないのです。 |
Drei |
ドライ
ははは、そんなに気を遣わなくても良いのですよ。 さあ、お代わりもありますから、お腹いっぱい召し上がれ。 |
Drei |
十三
こういう奴だから。 空気を読んでもらうのは、諦めた方がいいよ。 |
Juusan |
十三
そんなことよりも……時間がもったいない。 話をするなら今の内だよ、ドライ。 |
Juusan |
ドライ
そうですね。 レイさんは食事をしながら聞いてください。 |
Drei |
ドライ
お察しの通り、私たちもあなたと同じように 外の世界から来た人間です。 |
Drei |
ドライ
ある日突然、気が付くとこの世界に取り込まれていたのです。 ですから、この世界のことはそれほど詳しいわけではありません。 |
Drei |
ドライ
ですがこの世界で目覚めたとき…… 私は『何者か』の気配を強く感じ取りました。 |
Drei |
ドライ
瞬間的に、私は直感したのです。 |
Drei |
ドライ
その『何者か』こそが…… 私が会わなければならない人物である、と。 |
Drei |
ドライ
そして人探しをしている最中、十三と出会ったのです。 |
Drei |
十三
私の場合は少しだけ違うけど…… この世界に来た時に『ソイツ』の気配を感じたのは同じ。 |
Juusan |
十三
まあ、私の方は『殺さなきゃいけない相手』の気配だったけど。 |
Juusan |
十三
何にせよ、外から来た境遇。探してる相手。 私たちの目的は一致したってわけ。 |
Juusan |
十三
この世界の空気そのものに気配を充満させられるほどの存在だ。 当然、探し始めてすぐに情報も見つかったよ。 |
Juusan |
十三
そこで出てきた名前が『灰の王』。 |
Juusan |
十三
そのご大層な名前の奴が、この世界を支配しているんだってさ。 |
Juusan |
ドライ
さぞおかしいと思われたことでしょう。 |
Drei |
ドライ
たったこれだけのあやふやな情報を元に、お互い同じ目的かも わからない相手を追って、旅をしているのですから。 |
Drei |
ドライ
しかし、右も左もわからない世界にわけもわからず放り込まれた 身としましては、微かであっても目的がほしいものでして。 |
Drei |
ドライ
それが私にとってこの気配の主であり『灰の王』なのです。 |
Drei |
十三
ドライがすがろうとしている奴と、私が殺そうとしている奴は もしかしたら同一人物かもしれない。 |
Juusan |
十三
それでも一緒についてくるっていうんだから、変な奴だよ。 |
Juusan |
ドライ
『灰の王』についても、この世界についても まだまだ知らないことの方が多いのですから、当然です。 |
Drei |
ドライ
十三。あなたと同じように、私もまた、 手段を選ぶ類の人間ではありませんから。 |
Drei |
十三
ふん……好きにすれば。 |
Juusan |
十三
……ん? |
Juusan |
十三
アンタ、なに? |
Juusan |
痩せた男
な……なあ、話が聞こえちまったんだけどさ…… もしかして、あんたらもゲームの参加者なのか? |
|
ドライ
ゲーム? |
Drei |
ドライ
質問の意味がわかりかねるのですが…… ゲームとはいったい、なんのことでしょうか? |
Drei |
痩せた男
ごまかすなって。 あんたら、『灰の王』を目指してるって言ってたじゃないか。 |
|
痩せた男
だったら、ドライブ能力者なんだろ? |
|
十三
…………。 |
Juusan |
痩せた男
お、俺は違うからな! ただ違うって言いたかっただけなんだよ! |
|
痩せた男
だから殺さないでくれよ、な? |
|
十三
なに、あれ? 敵ってわけじゃなさそうだけど。 |
Juusan' |
ドライ
気になることを言っていましたね。 |
Drei |
ドライ
彼の言い分だと、『ドライブ能力者はゲームに参加している』 という風にも捉えられましたが……。 |
Drei |
痩せた男
おい、すげぇぞ! すぐそこでバトルが始まってる! |
|
痩せた男
ドライブ能力者同士のバトルだ! |
|
痩せた男
あんたたちも見といた方がいいんじゃないか!? |
|
十三
……食事は静かに摂る主義なんだけどな。 |
Juusan |
ドライ
ええ、同感です。 ですが、ドライブ能力者同士の戦いというのは、気になりますね。 |
Drei |
ドライ
騒がしくなってきたのは、 すぐ外に野次馬が集まっているのでしょうか。 |
Drei |
ドライ
なにか情報が得られるかもしれません。 我々も、行ってみましょう。 |
Drei |
野次馬の女
すごーい! 私、ドライブ能力者のバトルって初めて見た! |
|
野次馬の男
でも、この人数差じゃあのふたりは駄目だろうな。 もう完全に囲まれてるじゃないか。 |
|
十三
なにこれ、すごい人だかり。 |
Juusan |
十三
あっちの奴らが……ドライブ能力者か。 |
Juusan |
少女
きゃあ! |
Young Woman |
青年
シオシオ! 大丈夫!? |
Young Man' |
シオシオと呼ばれた少女
ええ……タロ先輩こそ、私にお構いなく! |
"Shioshio" |
シオシオと呼ばれた少女
とはいえ、完全に囲まれてしまいましたね……。 |
"Shioshio" |
タロと呼ばれた青年
……みたいだね。 |
"Taro" |
タロと呼ばれた青年
何とか俺がスキを作ってみるから シオシオは上手くタイミングを合わせて。 |
"Taro" |
シオシオと呼ばれた少女
やってみますけど、この人数差では望み薄ですわね……。 |
"Shioshio" |
屈強そうなドライブ能力者
そうそう、いい加減諦めた方がいいんじゃないか? |
Strong-looking Drive-user |
屈強そうなドライブ能力者
あんたらもそこそこ強いドライブを持ってるみたいだけど たったふたりじゃ、どうしようもないだろ? |
Strong-looking Drive-user |
屈強そうなドライブ能力者
おとなしくクリスタルを渡すっていうなら 見逃してやらないこともないぜ? |
Strong-looking Drive-user |
十三
あれが騒ぎの元凶か。 なんだ、もう終わりそうだよ。 |
Juusan |
痩せた男
おーい、あんたたち! こっちこっち! |
|
痩せた男
今、どっちのチームが勝つか、賭けを開催しているんだ。 よかったら、あんたたちも賭けてみないか? |
|
痩せた男
あのふたりに賭けてる奴はほとんどいないから 今なら大穴につぎ込むチャンスだぜ。 |
|
ドライ
……悪趣味なことですね。 大勢がふたりを取り囲む様で、博打を楽しむとは。 |
Drei |
ドライ
しかし何か情報を得られればと思いましたが この状況ではどうにもなりませんね。 |
Drei |
ドライ
あのドライブ能力者たちと話せればいいのですが。 |
Drei |
1: あのふたりを助けよう |
1: |
ドライ
正しい決断です。 多勢で無勢をいたぶる卑劣な行為、看過出来ません。 |
Drei |
ドライ
そうですね。 |
Drei |
ドライ
今この場にいるドライブ能力者は、 あの者たちの他は私たちだけのようです。 |
Drei |
ドライ
この戦いを止められるのは、私たちしかいません。 |
Drei |
ドライ
十三、あなたはどうしますか? |
Drei |
十三
……アイツらがどうなろうが、私には関係ないよ。 |
Juusan |
十三
助けたいなら、勝手にすれば? でも、面倒に巻き込むのはやめて。 |
Juusan |
ドライ
そうですか……残念です。 |
Drei |
ドライ
行きましょう、レイさん! |
Drei |
十三
…………。 |
Juusan |
十三
なんで自分から揉め事に首を突っ込むんだか。 |
Juusan |
痩せた男
なあなあ、あんたはどっちに賭けるんだい!? |
|
痩せた男
ほら、早くしなきゃバトルが終わってしまうよ! |
|
十三
……うざいよ、アンタ。 |
Juusan |
十三
どっちに賭けるかだって? いいよ、教えてあげる。 |
Juusan |
十三
私は、確実に勝てる賭けしかやらない。 |
Juusan |
十三
私が賭けるのは…… |
Juusan |
十三
……私自身だけだ。 |
Juusan |
第2節『願望を叶える者③』/ 1. Wish-Granter - 3
Summary | |
---|---|
助けた男女はタロ、シオリと名乗り、『ゲー
ム』の詳細を話す。クリスタルを奪い合い、 『灰の王』に謁見すると願望が叶うのだと。 |
屈強そうなドライブ能力者
な、なんだこいつら!? 特にあのチビ女……めちゃくちゃ強いぞ!? |
Strong-looking Drive-user |
屈強そうなドライブ能力者
おい! な、仲間を呼ぶなんて、卑怯だぞ!! |
Strong-looking Drive-user |
ドライ
あれだけの人数差でふたりを囲んでおきながら 不利になった途端にこの口ぶり……。 |
Drei |
ドライ
想像以上に、どうしようもない者たちですね。 |
Drei |
十三
けど、この程度じゃ遊び相手にもならないよ。 |
Juusan |
十三
さてどうする……? この場で殺してやろうか。 |
Juusan |
細身のドライブ能力者
ひ、ひいぃぃ……!! こ、降参する! だから殺さないで!! |
Thin Drive-user |
十三
…………。 |
Juusan |
十三
だったら10数える前に、さっさと消えなよ。 |
Juusan |
屈強そうなドライブ能力者
う、うぅ……す、すみませんでしたぁ……!! |
Strong-looking Drive-user |
ドライ
ん……? 彼奴ら、なにか落としていきましたね。 |
Drei |
ドライ
これは……なんでしょうか。 |
Drei |
タロと呼ばれた青年
ねえ、君たち。 |
"Taro" |
タロと呼ばれた青年
お陰で助かっちゃったよ。 君たちもドライブ能力者なんだ? |
"Taro" |
タロ
俺はタロ。タロ=ササガエ。 よかったら、タロって呼んでよ。 |
Taro |
タロ
ほら、シオシオもちゃんとお礼と自己紹介して。 |
Taro |
シオリ
シオリ=キリヒトですわ。 どなたか存じませんけど……先ほどはありがとうございました。 |
Shiori |
シオリ
ですが……。 |
Shiori |
シオリ
そのクリスタルは、私たちが頂きます。 |
Shiori |
ドライ
……クリスタル? |
Drei |
ドライ
なぜそのように警戒しているのかはわかりませんが 我々は敵ではありません。どうか武器を下ろしてください。 |
Drei |
ドライ
まずは、少々お話を聞かせていただきたいのですが。 |
Drei |
タロ
……この人の言う通りだよ。シオシオ。 俺の勘だけど、この人たちは敵じゃない気がする。 |
Taro |
シオリ
タロ先輩は甘いです! シフォンケーキのように甘々ですわ! |
Shiori |
シオリ
先ほどもそうやって裏切られたではありませんか! |
Shiori |
タロ
うっ……さっきは確かに俺が甘かったと思うけど。 でも多分この人たちは大丈夫だよ! |
Taro |
タロ
だって君たち……この世界に来たばかりなんでしょ? |
Taro |
シオリ
……えっ? |
Shiori |
ドライ
ええ。あなたの仰る通りですが、どうしてそれを? |
Drei |
タロ
『ゲーム』も『クリスタル』のことも、 よく知らないみたいだから。 |
Taro |
タロ
俺たちも少し前までそうだったんだ。 ねえ、良かったら場所を移して話をしないか? |
Taro |
十三
断る。 |
Juusan |
タロ
ええ!? 即答なの!? |
Taro |
十三
アンタたちが信用できる保証は? それに、アンタの技……『術式』だろ? |
Juusan |
十三
そんなものを使う奴は、なおさら信用できない。 アンタ……『図書館』じゃないの? |
Juusan |
タロ
おっとと。 |
Taro |
タロ
どうやらそっちの怖いお姉さんは、俺たちに近い場所から やって来たみたいだね。 |
Taro |
タロ
でも安心してよ。 俺たちはお姉さんが思ってる『図書館』じゃないから。 |
Taro |
十三
…………。 |
Juusan |
タロ
じゃあ、こういうのはどう? |
Taro |
タロ
俺たちの知ってる情報を全部タダで教えるよ。 もちろん見返りはいらない。 |
Taro |
タロ
あ、ちょっとだけお願いしたいことはあるんだけど…… それは聞いてから断ってくれてもいいから。 |
Taro |
タロ
これならどう? そっちにはメリットしかないよね。 |
Taro |
1: 話を聞いてみたい |
1: |
ドライ
そうですね、私もレイさんに賛成です。 情報こそが、我々の目的を達成するための命綱ですから。 |
Drei |
タロ
お、そっちの人たちは話がわかるみたいでよかった〜。 |
Taro |
ドライ
お言葉ですが、おふたりとも。 我々はこの世界のことを、まだほとんどなにも知りません。 |
Drei |
ドライ
ここは彼らの話を聞いてみませんか? 情報こそが、我々の目的を達成するための命綱ですから。 |
Drei |
タロ
お、そっちの人は話がわかるみたいでよかった〜。 |
Taro |
十三
ちっ……わかったよ。 |
Juusan |
十三
だけど話を聞くだけだ。 そっちの頼みとやらは、知らないから。 |
Juusan |
タロ
うん、うん! それで十分! お姉さんも、ありがとう! |
Taro |
タロ
シオシオも、いいよね? |
Taro |
十三
…………。 |
Juusan |
シオリ
……はぁ。タロ先輩が本気でそうしたいと仰るなら、 シオリに止める理由はありませんわ。 |
Shiori |
ドライ
私たちはそちらのダイナーで食事の途中でした。 宜しければ共に食卓を囲みましょう。 |
Drei |
タロ
いいね、俺もうお腹ぺこぺこ! |
Taro |
十三
やれやれ。騒がしいのは苦手なんだけどな……。 |
Juusan |
タロ
はい、これ。飲み物買ってきたよ。 あ、もちろんさっき助けてくれたお礼だから気にしないで! |
Taro |
十三
それ、ご機嫌取りのつもり? そんなことより、そっちの持ってる情報を教えて。 |
Juusan |
タロ
じゅうじゅう……じゃない。十三……だっけ? せっかちなお姉さんだなぁ……。 |
Taro |
タロ
この世界にはね、俺やシオシオ、それに十三やドライ、 レイの他にも大勢のドライブ能力者がいるんだ。 |
Taro |
タロ
そして誰もがみんな、別の世界からこの世界にやってきたと 感じてる。当然、俺とシオシオもね。そして面白いことに……。 |
Taro |
タロ
そのドライブ能力者たちはみんな『クリスタル』と 呼ばれるものを奪い合って、戦いを繰り返しているんだ。 |
Taro |
タロ
『クリスタル争奪戦』って言えばわかりやすいかな。 |
Taro |
ドライ
それが先程から耳にしている『ゲーム』ですか。 |
Drei |
十三
それで、さっきの雑魚どもが落としていった石…… あれがその『クリスタル』か。 |
Juusan |
タロ
そう。この世界のドライブ能力者たちは全員クリスタルを持ってて 争奪戦で負けを認めると、相手にそれを奪われる。 |
Taro |
ドライ
全員……? 私たちはクリスタルなど持ってはいませんが……。 |
Drei |
タロ
いいや、持ってるよ。 |
Taro |
タロ
心の中で石をイメージして、念じてみなよ。 |
Taro |
1: 念じてみる |
1: |
ドライ
なんと……確かに念じるだけで、石が現れました。 |
Drei |
ドライ
まるでレイさんの観測のようですね……。 |
Drei |
タロ
安心したよ。そのクリスタルの大きさだと、3人とも確かに この世界で一度もゲームに参加してないみたいだね。 |
Taro |
ドライ
そういえば、先ほどの者たちが逃げる際に落としたクリスタルは もっと大きかったように思いますね。 |
Drei |
シオリ
ゲームの勝者は、敗者のクリスタルを吸収できるのですわ。 そして吸収する度に、石はどんどん大きくなる……。 |
Shiori |
シオリ
そして他のすべてのクリスタルを吸収した最後のひとりだけが 『灰の王』への謁見を許され……。 |
Shiori |
シオリ
ひとつだけ |
Shiori |
ドライ
願望を叶える……ですか。 それはまた実に大きな話ですね……。 |
Drei |
十三
じゃあ、なに? |
Juusan |
十三
この世界にやって来たドライブ能力者たちは、 本当かどうかもわからない、願望が叶うという噂のために、 |
Juusan |
十三
会ったこともない『灰の王』を目指して、 お互いに殺し合ってるってこと? |
Juusan |
十三
そんなこと本気で信じると思う? 大体そんなことして『灰の王』になんの得があるの? |
Juusan |
シオリ
それはゲームの開催者である『灰の王』に 直接聞くしかありませんわ。 |
Shiori |
シオリ
不思議に思うでしょうけど、今の話は全部 『この世界のルール』なのですから、仕方ないでしょう? |
Shiori |
1: 観測者……? |
1: |
ドライ
まさか……この世界そのものを観測しているというのですか? 馬鹿な、それほどの力を持つ者など……。 |
Drei |
ドライ
……いえ、私の探している方なら、あるいは。 |
Drei |
ドライ
もしや本当に、あの方だというのですか……? |
Drei |
ドライ
このように大規模な計画を立てる方に、 ひとりだけ心当たりがあります。 |
Drei |
ドライ
いや、しかしあの方だとしても、さすがにこの規模は……。 |
Drei |
十三
ドライ。 |
Juusan |
十三
下手に推理を口にするべきじゃない。 誰が聞いてるかわからないよ。 |
Juusan |
ドライ
……ええ、そうですね。 |
Drei |
十三
とにかく。 |
Juusani |
十三
クリスタルを集めれば『灰の王』に会えるんだろ? |
Juusan |
十三
願望とやらに興味はないけど、ソイツには会わなきゃいけない。 だったら……やることは決まったね。 |
Juusan |
ドライ
『ゲーム』に参加し、クリスタルを集める……ですね。 |
Drei |
タロ
だよな! そうこなくちゃ! |
Taro |
タロ
で、ここからが俺たちのお願いなんだけどさ。 |
Taro |
十三
……仲間になれっていうんだろ? |
Juusan |
タロ
ええ!? なんでわかったの!? |
Taro |
十三
アンタ、馬鹿にしてる? そんなの、見ればわかるに決まってる。 |
Juusan |
十三
さっきの奴らも、アンタたちも、チームで動いてた。 人数差がある状況で、当たり前のように戦ってた。 |
Juusan |
十三
つまりこの『ゲーム』は、チーム人数は固定じゃない。 誰と組もうが、何人で組もうが自由ってこと。 |
Juusan |
十三
……まあ、上限はあるのかもしれないけど。 |
Juusan |
十三
少なくとも、さっきの奴らの人数……4人くらいなら チームで戦っても構わないってことなんでしょ? |
Juusan |
タロ
さすがお姉さん。そこまでわかってるなら、話が早い! |
Taro |
タロ
同時に戦うことが許されるのは4人までなんだけどさ。 実はこのゲーム、1チ-ムの人数に制限はないんだ。 |
Taro |
タロ
つまり何人で組んでも、代表として戦うのが4人であれば 問題ないってこと。 |
Taro |
タロ
当然、どのチームも基本4人以上でメンバーを集めてる。 |
Taro |
タロ
俺たちはふたりだし、そっちは3人でしょ? だから組んだ方が、お互い都合が良いと思うんだよね。 |
Taro |
タロ
……どうかな? |
Taro |
十三
……好きにすれば。 |
Juusan |
タロ
お願い、お姉さん! そこをなんとか!! |
Taro |
タロ
……えええっ!!?</style> |
Taro |
タロ
いいの!? 絶対ダメって言われると思ってたのに!! |
Taro |
十三
……気に入らないなら他をあたるんだね。 |
Juusan |
タロ
いや、気に入る! 気に入りました! |
Taro |
ドライ
私も少々意外でした。本当に良かったのですか? |
Drei |
十三
何度も言わせないで。 |
Juusan |
十三
『灰の王』が、もし本当に私の探してる奴なら 辿り着く可能性は少しでも上げた方が好都合でしょ。 |
Juusan |
十三
それに……アイツは、少しは見込みがある。 私のことをお姉さんと呼んでたし。 |
Juusan |
ドライ
…………は? |
Drei |
十三
私はチビじゃない。 今度私をそう呼ぶやつがいたら……問答無用で殺すから。 |
Juusan |
ドライ
なるほど。 先ほど言われたことを気にしていたのですね……。 |
Drei |
第2節『願望を叶える者④』/ 1. Wish-Granter - 4
Summary | |
---|---|
一同はチームとして共に戦うことを決め、互
いの能力や願望を確認する。そこに突如開く 通信回線……その発信者はココノエだった。 |
ドライ
これから共に行動するとして、あなた方は 『灰の王』の居場所をご存じなのですか? |
Drei |
シオリ
いえ、ハッキリとそれを知る人は、今のところ お会いしたこともありませんわ。 |
Shiori |
シオリ
ただ、『灰の王』は、この世界の中央に位置する『塔』に 座して待っていると言われています。 |
Shiori |
シオリ
ですから『灰の王』に会うためには、クリスタルを集めたうえで その塔を見つけなければなりません。 |
Shiori |
ドライ
世界の中央にそびえる塔……ですか。 大きなものであればすぐに見つかりそうなものですが……。 |
Drei |
ドライ
詳しい場所を誰も知らないのであれば、 なんらかの術で隠されているのかもしれませんね。 |
Drei |
十三
ねえ、クリスタルを集めるならさっさと集めに行かない? その辺のドライブ能力者を倒して奪えばいいんだよね。 |
Juusan |
ドライ
まあまあ、そう焦らないでください。 |
Drei |
ドライ
まだ我々は知らない情報が多すぎます。 ゲームのことも、この世界のことも、この方たちのことも。 |
Drei |
タロ
そうだね。同じチームとして動くことになるんだから 俺たちのことも教えておくよ。 |
Taro |
タロ
まず俺からね。俺の得意技は……これだよ。 |
Taro |
ドライ
それは……糸ですか。 珍しい技ですね。 |
Drei |
タロ
術式で編んだ特別製の糸だよ。 ちょっとやそっとのことじゃ切れないし、伸縮自在。 |
Taro |
タロ
おまけに、術式で編んでるから、何度だって出せる。 俺の体力が尽きない限りはね。 |
Taro |
タロ
接近戦もやれなくはないけど、この糸を使った攻撃が得意かな。 スピードにはそこそこ自信があるよ。 |
Taro |
タロ
ま、スピードで言えばそこのシオシオの方が 俺なんかより数段上だけどね。 |
Taro |
シオリ
またまた、タロ先輩ったら……。 そんなに言われる程でもありますわ。 |
Shiori |
1: 自信たっぷりだね |
1: |
シオリ
はい、それはもう。 |
Shiori |
シオリ
だって、シオリの技は暗殺の技。 敵に気付かれず、一瞬で息の根を止めるための技ですから。 |
Shiori |
十三
そんな小さな身体で暗殺? へえ……面白いね。 |
Juusan |
シオリ
はい。キリヒト家は、毒を以って暗殺を成す一族。 このナイフに塗ったシオリの毒は、特別製ですわよ。 |
Shiori |
シオリ
もちろん、毒だけがシオリの強さじゃありませんけど。 試してみます? |
Shiori |
ドライ
いえ、先ほどの戦いを見れば、おふたりの実力はわかります。 ドライブ能力者として、確かな腕をお持ちのようですね。 |
Drei |
タロ
そっちこそ、俺、驚いちゃったよ。 |
Taro |
タロ
ドラドラは、とんでもない威力の術を使うし。 まるで、魔法かと思ったよ。 |
Taro |
ドライ
……ドラドラ? |
Drei |
タロ
じゅうじゅうは、ものすごい速度から 信じられないくらい正確な一撃。 |
Taro |
タロ
もしかして、じゅうじゅうも暗殺者だったりする? |
Taro |
十三
じゅうじゅう……。 |
Juusan |
タロ
それからそっちのレイは…… なんだか不思議な技を使うよね。 |
Taro |
タロ
黒い影のようなものを操って戦っていたように見えたけど…… あれ、どういう原理なの? |
Taro |
1: 呼び方が…… |
1: |
タロ
なんだかしっくりくるのが思いつかなくて。 とりあえず保留ってことで! |
Taro |
十三
じゅうじゅう……。 |
Juusan |
タロ
もしかして、気に入ってくれた? これからよろしくね、じゅうじゅう! |
Taro |
十三
…………。 |
Juusan |
ドライ
ま、まあ……それについては置いておきましょう。 あなた方の実力も、よくわかりました。 |
Drei |
タロ
うん、ありがとう。 |
Taro |
タロ
あとは……さっきのクリスタルを吸収して……。 |
Taro |
タロ
あっ、その前に。 |
Taro |
タロ
手に入れたクリスタルの配分なんだけどさ、 君たちに全部預けるってことでいいよね? |
Taro |
ドライ
我々にですか。それはまた何故でしょう。 あなた方にも必要なものなのではないのですか? |
Drei |
タロ
チームとして持っていれば問題ないんだ。 |
Taro |
タロ
だったら、強い君たちに持っててもらった方がいいかなって。 俺たちが君たちを信用している証にもなるし。 |
Taro |
ドライ
わかりました。ではレイさん。 我々を代表してクリスタルの所持をお願いします。 |
Drei |
1: 僕(私)なの!? |
1: |
ドライ
はい。私が思うに、このメンバーの中であなたが最も 中立かつ客観的な立ち位置です。 |
Drei |
ドライ
ですから、代表者はレイさんこそ相応しい。 |
Drei |
ドライ
十三も、異論はありませんよね。 |
Drei |
十三
……まあね。 |
Juusan |
十三
でも、もし他の奴に奪われたらタダじゃおかないけど。 |
Juusan |
タロ
じゃあレイ、クリスタルを出して。 |
Taro |
タロ
そしてこの手に入れたクリスタルに手をかざして、 自分の内に取り込むように、イメージするんだ。 |
Taro |
ドライ
なんと。レイさんのクリスタルに 統合されるとは驚きです。 |
Drei |
ドライ
それに、クリスタルから感じる気配も濃くなりました。 なるほど、こうやって大きくしながら集めていくのですね。 |
Drei |
タロ
そういうこと。 |
Taro |
タロ
さっきの奴らはドライブ能力者といっても 少数の能力者だけを狙った、おいはぎみたいな存在。 |
Taro |
タロ
当然、そんなに強い相手を狙うことはないから 手に入るクリスタル量だって、どうしても少ない。 |
Taro |
タロ
だけど、強いドライブ能力者同士の戦いは 一気にクリスタルを集めるチャンスでもあるんだ。 |
Taro |
ドライ
その辺の戦力差、戦う日程、仲間の疲労…… それらのバランスを取って進める必要があるというわけですか。 |
Drei |
ドライ
この戦いが『ゲーム』と呼ばれる理由がわかってきた気がします。 |
Drei |
タロ
俺たちが知ってる情報は、こんなところかな。 |
Taro |
タロ
また何かあったら聞いてね。 知ってることでよければ、なんでも答えるから。 |
Taro |
十三
……なら、あとひとつ教えて。 |
Juusan |
十三
アンタたちの |
Juusan' |
十三
こんなわけのわからないルールを押し付けられて それでも『灰の王』を目指すのは、なんで? |
Juusan |
タロ
……すごく身勝手な願望さ。 力になりたい人がいるんだ。 |
Taro |
タロ
その人はいつもひとりで戦ってて……すごく苦しんでた。 |
Taro |
タロ
その人は、誰にも助けを求めなかったけど…… でも、せめて俺だけは力になりたいんだ。 |
Taro |
タロ
だけど今の俺にはそんな力はない。 だから力が欲しい。そんな、俗っぽい身勝手な願望だよ。 |
Taro |
シオリ
シオリは……大好きな人に会いたいのです。 |
Shiori |
シオリ
大好きな人に会うことが、本当にその人のためになることなのか シオリは自信がありません。 |
Shiori |
シオリ
だけど……。 |
Shiori |
シオリ
タロ先輩と同じお気持ちです。 やっぱりシオリも大好きな人の力になりたい。 |
Shiori |
シオリ
あの方には、もっと笑っていてもらいたいのです。 |
Shiori |
十三
そう……。 |
Juusani |
タロ
逆にそっちの願望も、よかったら教えてよ。 |
Taro |
十三
……私の願望は、誰かに叶えてもらう必要なんかないから。 ゲームもクリスタルも興味ないよ。 |
Juusan |
ドライ
私は……そうですね。 確かめたいことがあります。 |
Drei |
ドライ
願望が叶うなら、そのことに使おうと思います。 |
Drei |
タロ
ふぅん……レイは? |
Taro |
1: シエルに会いたい |
1: |
タロ
シエル? レイの仲間? |
Taro |
タロ
みんな? 仲間がいたの? |
Taro |
ドライ
この世界に来た時に、はぐれてしまったそうです。 |
Drei |
シオリ
それは……心配ですわね……。 |
Shiori |
タロ
まあでも、安心して。きっと大丈夫だよ。 |
Taro |
タロ
こんな世界に放り込まれて、俺たちも生きてるんだから。 世界はどこかで繋がってる。きっと無事に会えるはずだよ。 |
Taro |
ドライ
世界は繋がっている……確かに、そうですね。 |
Drei |
ドライ
レイさん。 仲間の方と再会を目指して、進みましょう。 |
Drei |
ドライ
きっとこの先のどこかで、情報が……。 |
Drei |
ドライ
ッ……!!? |
Drei |
タロ
通信!? どこから!? |
Taro |
シオリ
みなさま、警戒を! |
Shiori |
シオリ
どこかに敵が潜んでいるのかもしれませんわ! |
Shiori |
通信
……る……めか……こを……こう、して…… |
Transmission |
通信
よし……安定してきたぞ……。 |
Transmission |
十三
げっ……! |
Juusani |
ココノエ
あー、聞こえるか。聞こえるな? 私だ。天才科学者のココノエ様だ。 |
Kokonoe |
第3節『第一戦目①』/ 3. The First Battle - 1
Summary | |
---|---|
短時間の通信に成功したカガミたち。わずか
に見て取れた現地の状況は厳しく、またココ ノエはひとつの反応に興味を示していた。 |
ココノエ
よし、始めるぞ。フガクと通信の波数を同調。 時間軸を固定する。 |
Kokonoe |
ココノエ
あー。あー。テステス。 |
Kokonoe |
ココノエ
駄目か……まだかなりズレがあるな。 |
Kokonoe |
ココノエ
通信に使う波数をマイナス方向に。 ふむ……近づいてきた。 |
Kokonoe |
ココノエ
ここを接続して……こうして…… いいぞ、ここだ! 出力を上げろ! |
Kokonoe |
ココノエ
よし……安定してきたぞ……。 |
Kokonoe |
ココノエ
あー、聞こえるか。聞こえるな? 私だ。天才科学者のココノエ様だ。 |
Kokonoe |
ココノエ
ちょっ、おいコラ! まだ私が喋ってるだろうが、押すな! |
Kokonoe |
シエル
レイさん! |
Ciel |
カガミ
私の声が聞こえるか、レイ!? |
Kagami |
ココノエ
ああ、くそ! もういい! いいか、通信は1分しか持たん、手短に話せ! |
Kokonoe |
カガミ
とにかく無事でよかった。 だが時間がない、私の話をよく聞いてほしい。 |
Kagami |
カガミ
我々は今、そのファントムフィールドからレイを サルベージするため、全力を尽くしている。 |
Kagami |
カガミ
だが準備には時間がかかる。 およそ160時間だ。 |
Kagami |
カガミ
おまけに、 |
Kagami |
カガミ
だから、我々が |
Kagami |
カガミ
今回の任務は、お前ひとりに頼るしかない。だから……。 |
Kagami |
シエル
レイさん、私が必ずそちらに行きます。 だからどうか……それまでご無事でいてください! |
Ciel |
シエル
あっ……。 |
Ciel |
シエル
レイさん……。 |
Ciel |
ココノエ
安心しろ、お前たちの声は届いたはずだ。 完全にこちらからの一方通行の通信ではあるがな。 |
Kokonoe |
ココノエ
現状ではこの程度が限界だ。 今後再び通信が繋がるという保証もない。 |
Kokonoe |
カガミ
いや、お前の協力のおかげで望みが見えたんだ。 感謝してる。 |
Kagami |
カガミ
絶望的な状況ではあるが、我々はやるべきことをやるしかない。 それほど大きなファントムフィールドでないのが唯一の救いだな。 |
Kagami |
ココノエ
ああ。私の観測していた階層都市よりも、 やや大きい程度だろう。 |
Kokonoe |
ココノエ
そのほとんどがひどく乾燥した地域のようだ。 生命反応もかなり少なく、まばらだな。 |
Kokonoe |
ココノエ
生き抜くにはなかなか厳しい環境と見える。 |
Kokonoe |
カガミ
そうだね……。 ただ……気になるな。 |
Kagami |
シエル
気になるとは……なにがでしょうか。 |
Ciel |
カガミ
あちこちに、妙な反応があるんだ。 ……というか、大量のドライブ反応がある。 |
Kagami |
カガミ
まるで大勢のドライブ能力者がいるみたいにね。 |
Kagami |
シエル
大勢のドライブ能力者……ですか。 レイさんはひとりで大丈夫でしょうか。 |
Ciel |
カガミ
……観測者の条件は、異物ではないドライブ能力者だ。 |
Kagami |
カガミ
フィールドのドライブ能力者が多いということは、 それだけ観測者を探すハードルも上がるということ。 |
Kagami |
カガミ
フガクのバックアップもなしに、その中から 観測者を探すというのは、並大抵の難易度じゃないだろう。 |
Kagami |
カガミ
レイにとって厳しい状況であることに間違いはない。 それでも我々は、レイを信じるしかないんだ。 |
Kagami |
カガミ
……乗り越えなければならない、試練だな。 レイにとっても、我々にとっても。 |
Kagami |
カガミ
さて、とにかくこちらは 準備を全速力で進めようじゃないか。 |
Kagami |
カガミ
なにせレイの救出は、我々のサポートに かかっているんだからね。 |
Kagami |
シエル
はい……わかりました。 |
Ciel |
シエル
私も |
Ciel |
ココノエ
さて……気になるのはレイの近くにある この反応だが……。 |
Kokonoe |
ココノエ
やはり『奴』で間違いなさそうだ。 こいつが吉と出るか、凶と出るか……。 |
Kokonoe |
第3節『第一戦目②』/ 3. The First Battle - 2
Summary | |
---|---|
十三たちはココノエからの通信を受け取った
ことで、この先の行動について検討。しかし そのさなか魔物が現れ、全員で応戦する。 |
|
魔物が落としたメモで、バトルの場所と時間
が示される。タロからルールの詳細を聞きな がら、一行は指定された場所へと向かった。 |
タロ
今のが、レイの仲間の人? |
Taro |
ドライ
そのようですね。 話の内容は私には理解できませんでしたが……。 |
Drei |
ドライ
レイさんを助けようとしていることだけは 伝わってきました。 |
Drei |
シオリ
……タロ先輩。 さっきの人、ココノエと名乗ってましたけど……。 |
Shiori |
タロ
うん。第七機関のココノエ博士……だと思う。 こんなところで名前を聞くなんて、驚きだ。 |
Taro |
ドライ
おや、あなた方もご存じなのですか? |
Drei |
タロ
ううん、直接知ってるわけじゃないんだ。噂だけ。 ほとんど都市伝説みたいな人だよ。 |
Taro |
タロ
でも、あのココノエ博士が仲間って…… レイって、いったい何者? |
Taro |
1: ……詳しく話せない |
1: |
タロ
……ごめん、そうだよね。 簡単に言えないことって、誰にでもあるよね。 |
Taro |
ドライ
不思議な人ですね、レイさんは。 ですが悪い人ではない……それは確かです。 |
Drei |
ドライ
それにしても、映りこんだ背景はこの世界のどこかとは とても思えない場所でしたね。 |
Drei |
ドライ
とても高度な技術が使われているように思えます。 まるで世界の外側、あるいは別の世界であるかのような。 |
Drei |
ドライ
少なくともこの近辺では見られない技術です。 かなり遠方であることは間違いないでしょう。 |
Drei |
ドライ
だとすると、レイさんが仲間の方々と 合流するのは、そう簡単ではなさそうですね。 |
Drei |
ドライ
十三、なにかいい手はありませんか? |
Drei |
十三
……どうしてそこで、私に聞くの? |
Juusan |
ドライ
いえ、私の気のせいでしたら申し訳ありませんが…… 先ほどの『ココノエ博士』をご存じのようでしたので。 |
Drei |
十三
……別に。こっちが勝手に知ってるだけだよ。 といってもそんなに詳しいわけじゃない。 |
Juusan |
十三
だいたい、さっきの話だと、わざわざ会いに行かなくても あっちから勝手に来てくれるんじゃないの? |
Juusan |
ドライ
どうでしょうね。あの様子では、すぐこちらへ向かう というわけにはいかないようでしたから。 |
Drei |
ドライ
十三はレイさんを助ける理由があるのでしょう? お仲間のところへお連れできれば、助けたことになるのでは? |
Drei |
十三
違う、私はこう言ったんだ。 仕方ないから、もののついでだってね。 |
Juusan |
タロ
まあまあ、ふたりとも落ち着いて。 |
Taro |
タロ
そんなことより―― |
Taro |
魔物
ギョワアアアア!!! |
Monster |
タロ
――あっちをなんとかしなきゃ! |
Taro |
シオリ
くっ、数が多いですわよ! |
Shiori |
十三
……そうだね、話はあとだ。 まずはこの雑魚どもを片付けるよ。 |
Juusan |
シオリ
きますわよ! みなさま、お気をつけて! |
Shiori |
魔物
ギャア! ギャアア! |
Monster |
ドライ
むっ……逃げますか。 魔物のくせに、いい判断です。 |
Drei |
十三
だけど、妙な動きだった。 まるで、こちらを試しているみたいな……。 |
Juusan |
タロ
いや……今の魔物はもしかしたら……。 |
Taro |
タロ
あっ、ほら! なにか落とした! |
Taro |
十三
……どういうこと? それ、なに? |
Juusan |
タロ
やっぱり。次のバトルの指示だよ。 場所と時間が記されてる。 |
Taro |
ドライ
ずいぶんと面倒な伝え方をするのですね。 |
Drei |
シオリ
これだけではありませんわ。 |
Shiori |
シオリ
今までも、街ですれ違う子供が伝えてきたり、 廃墟の壁に書かれていたり……。 |
Shiori |
シオリ
そうそう、矢文で伝えられたこともありました。 とにかく、毎回異なる凝った方法で伝えてくるんです。 |
Shiori |
十三
よくわからないけど、そこに書かれた場所に行けば、 ドライブ能力者がいるってこと? |
Juusan |
タロ
そう。相手のチームにもなんらかの方法で 同じ情報が伝わってるんだ。 |
Taro |
タロ
で、その時間、その場所に行けば 相手のチームとバトルになるって仕組みさ。 |
Taro |
十三
指示に従わなかったら? |
Juusan |
タロ
試したことはないけど……失格になるって噂だよ。 |
Taro |
十三
失格? 失格になるとどうなるの? |
Juusan |
タロ
……クリスタルごと消失する。消えるんだ。 |
Taro |
ドライ
質問ばかりですみませんが、消えるとはどういう……? |
Drei |
シオリ
あの……このメモに書かれた時刻まで、あまり時間がありません。 話でしたら、移動しながらにしませんか? |
Shiori |
シオリ
遅れてしまっては大変ですわ。 |
Shiori |
ドライ
そうですね。 まずはメモに書かれた場所に向かいましょう。 |
Drei |
十三
じゃあ、バトルに負けたら問答無用で死ぬってことか。 |
Juusan |
タロ
死ぬのとは違うって。 この世界から追い出されるだけだよ。 |
Taro |
ドライ
つまり、元いた世界に戻る……そういうことでしょうか。 |
Drei |
タロ
多分、ね。この世界の人たちはみんなそう言ってる。 ……もっとも、それを証明する手段はないけれど。 |
Taro |
タロ
負けてクリスタルを奪われたら消えるのは間違いないよ。 俺たちも、何度か見てきたからね。 |
Taro |
タロ
だからさっきの能力者たちも、逃げた後おそらく……。 |
Taro |
ドライ
そうですか……。 |
Drei |
ドライ
となると、我々も進むしかないということですね。 |
Drei |
1: 辞退はできないんだね |
1: |
ドライ
ええ。 |
Drei |
ドライ
ゲームで負ければ失格。 ゲームから逃げても失格。 |
Drei |
ドライ
ならば我々は、このゲームに勝ち進むしか道がありません。 今はそのために、成すべきことを成さなければ。 |
Drei |
ドライ
難しいかもしれませんね。 |
Drei |
ドライ
ゲームに参加しなければ失格……失格になれば クリスタルは消失し、我々も消えてしまう。 |
Drei |
ドライ
それを避けるためには、ゲームに参加し、 勝ち続けなければならないのですから。 |
Drei |
ドライ
私たちはもう、このゲームを仕掛けた者の 手の内ということですよ。 |
Drei |
ドライ
ゲームを仕掛けた開催者……おそらく『灰の王』のね。 |
Drei |
ドライ
レイさん、あなたの仲間と合流するためにも なんとしてもこのゲームを勝ち抜きましょう。 |
Drei |
タロ
じゃあ、勝ち抜くためにもう少し説明しておくから 移動しながら聞いてね。 |
Taro |
タロ
このゲームがクリスタルの争奪戦っていうのは 既に話した通りだけど……。 |
Taro |
タロ
ルールとしては単純明快。 負けを認めれば、相手にクリスタルを奪われる。 |
Taro |
タロ
試合の勝利条件は、相手チームの『リーダー』が 敗北を認めること。 |
Taro |
タロ
逆に言えば、 リーダーが敗北しなければゲームは終わらない。 |
Taro |
タロ
だからチームの勝利が確定するまで、油断しちゃ駄目だよ。 徹底的に戦うこと。 |
Taro |
タロ
でも、負けを認めてクリスタルを奪われた者は そこでゲームオーバー。 |
Taro |
タロ
もうゲームに復帰することはできないよ。 数分もしたらその場からスッと消えてしまうからね。 |
Taro |
ドライ
では、戦力を集中して各個撃破する作戦も有効そうですね。 |
Drei |
タロ
うん、もちろんそいつはハマればいい作戦だ。 けど、逆に集中して攻められるリスクも負う。 |
Taro |
十三
チームが4人構成だからね。様々な局面が考えられる。 それだけひとりひとりの負担も大きい。 |
Juusan |
十三
リーダーの敗北がチームの負けっていうのなら、 なおさらだ。 |
Juusan |
十三
ひとり倒れただけで戦力差も大きくなる。 だから位置取りがなによりも大事になるはず。 |
Juusan |
ドライ
意外ですね。あなたはひとりで戦うタイプかと思いましたが 戦術にも精通していたとは。 |
Drei |
十三
……私には、戦いしかなかったから。 それで? リーダーを判別する方法はあるの? |
Juusan |
タロ
ない。相手のリーダーが誰なのかを見破るのも ゲームの大切な要素なんだ。 |
Taro |
十三
ふぅん……。 |
Juusan' |
タロ
それから、これが一番大切なことなんだけど。 リーダーは、念じるだけでチーム全員と意思疎通が可能だ。 |
Taro |
十三
はぁ? なんだって? |
Juusan |
タロ
だからリーダーは同時に、重要な指揮官でもある。 戦場を見極めて、誰がどう動くのかを瞬時に指示するんだ。 |
Taro |
タロ
チーム内で誰がリーダーかを決めておけば、 ゲームのシステムが勝手に認識してくれる。 |
Taro |
タロ
不思議だけどね。 |
Taro |
十三
……よくわからないな。 |
Juusan |
十三
なんだって『灰の王』はこんな面倒なルールを敷いたの? そもそも『灰の王』の目的はなに? |
Juusan |
タロ
さあね。俺たちが知ってるのは、彼の作ったルールだけ。 知りたければ……『灰の王』へ辿り着くしかないよ。 |
Taro |
十三
知れば知るほどムカついてきた。 やっぱりソイツは……私が殺す奴かもね。 |
Juusan |
タロ
怖いなぁ……。 でさ、ポジション分けなんだけど。 |
Taro |
タロ
じゅうじゅうとドラドラが前衛。俺が後衛。 レイがリーダー、でどうかな? |
Taro |
シオリ
ええ〜? シオリは補欠なんですかぁ? |
Shiori |
十三
戦力のことを考えたら、妥当だね。 アンタのスタミナじゃ、長期戦や連戦はキツそうだし。 |
Juusan |
十三
レイがリーダーっていうのは、悪くない。 意外と冷静だし、やれることが幅広いし。 |
Juusan |
十三
私が前衛っていうのもいいね。 ちょっとやる気も出てきたよ。次の対戦場所はまだ? |
Juusan |
シオリ
……はぁ、仕方ありませんわね。 あなたがたがお強いのは事実ですし。 |
Shiori |
シオリ
対戦する場所には、間もなく到着のはずですわ。 皆さん、気を引き締めてくださいね。 |
Shiori |
第3節『第一戦目③』/ 3. The First Battle - 3
Summary | |
---|---|
到着した荒野で、レリウス、リンファ、アラ
クネ、ツヴァイと激突。巧妙な戦略に苦戦す るが、リーダーの指示で形勢は逆転する。 |
|
勝負は決着し、敵チームからクリスタルが手
に入る。初戦から強敵を破った喜びと疲労を 共有しつつ、一行はダイナーへと向かった。 |
ドライ
こちらが、指定された場所……ですか。 あそこに、人影が見えます。 |
Drei |
タロ
……どうやら、向こうの方が先に着いてたみたいだね。 |
Taro |
ツヴァイ
おっ、誰かと思えばドライじゃないか。 久しぶりだな、元気にしていたか? |
Zwei |
ドライ
なんと……これは驚きました。 我が師ツヴァイ、なぜあなたがこのような世界に。 |
Drei |
ツヴァイ
おいおい、馬鹿な質問をするなよ弟子。 相変わらず生真面目な奴め。 |
Zwei |
ツヴァイ
これだけドライブ能力者が集まっている世界なんだ。 わかるだろ? |
Zwei |
ドライ
あなたが私たちの対戦相手……ということですか。 |
Drei |
ツヴァイ
そういうこと。少しは喜んでくれてもいいんじゃないか? 久しぶりの師弟の再会なんだから。 |
Zwei |
ドライ
本来ならばそうしたいところですが……今の私にとっては あまり好ましい再会とは言えませんので。 |
Drei |
十三
アイツ、強いね。何者? |
Juusan |
ドライ
ツヴァイ……私の魔術師としての師ですよ。 |
Drei |
ドライ
魔道協会の最高位となる称号を与えられた大魔術師でしたが よくわからない理由でその地位をすべて捨てた方です。 |
Drei |
ドライ
自由奔放で……悪く言えば、実に身勝手な方でした。 ですが……その強さは間違いなく本物です。 |
Drei |
タロ
へえ〜、でもこんなところで再会できるなんて、すごい偶然だね! |
Taro |
タロ
ねえ、お姉さん。ドラドラのお師匠さん……なんだよね? 可愛い弟子のために、負けてやってくれたりしない? |
Taro |
ツヴァイ
ん? ドラドラ、というのは我が弟子のことか? |
Zwei |
ツヴァイ
はっはっは! おもしろいな、君! 確かに、可愛い弟子のためだもんな! |
Zwei |
ツヴァイ
……だけど、そいつは無理だ。 なんせ私にも、この世界で目指すものがあるのでね。 |
Zwei |
ドライ
では、あなたも願望を叶えるために『灰の王』を目指していると? ……意外ですね。 |
Drei |
ツヴァイ
意外? なにが? |
Zwei |
ドライ
あなたは常に、ご自身の道を自ら切り拓いてこられた。 |
Drei |
ドライ
そのあなたが、他者の手で願望を叶えようと しておられるのは……意外です。 |
Drei |
ツヴァイ
私だけじゃない。 うちのチームの他の者だって、同じだ。 |
Zwei |
ツヴァイ
皆、それぞれの願望を叶えるために。 自らの意思で戦いの道を選んだ者たちだ。 |
Zwei |
ツヴァイ
だがね、ドライ。時間は有限なんだ。 若い君にはわかるまいが……。 |
Zwei |
ツヴァイ
人生は短い! ショートカットできるなら、近道したっていいんだよ! |
Zwei |
ツヴァイ
そして私の最終目標を達成するためには、今この瞬間! どうしても、先に叶えねばならぬ願望があるのだ!! |
Zwei |
ドライ
宜しければ、その願望とやら……お聞きしても? |
Drei |
ツヴァイ
究極のスパイスの調合だ!!!</style> |
Zwei |
ツヴァイ
これこそが私の最終目標!</style> 究極のカレーへの道となる!!</style> |
Zwei |
シオリ
あの……よくわからないのですが……。 でしたら、究極のカレーを叶えてもらえばよいのでは……。 |
Shiori |
ツヴァイ
いきなりゴールに辿り着いてはつまらないだろう!? 自分の道は、自ら切り拓くから楽しい! そうだろう我が弟子よ! |
Zwei |
シオリ
えっ、だって先ほど、近道してもいいって……。 |
Shiori |
シオリ
すみません、シオリ、少々頭が混乱してきました……。 あの、ドライ様? この方は……こういう方ですか? |
Shiori |
ドライ
さすがはわが師ツヴァイ。 その自由奔放なお姿、かつて憧れた師そのものです。 |
Drei |
シオリ
えーと…………。 |
Shiori |
タロ
シオシオ、あんまり考えない方がいいと思うよ。 |
Taro |
タロ
それより、そんなにすごい人と一緒にいるってことは あっちの3人もかなり手強そうだね。 |
Taro |
タロ
寡黙そうなお兄さんと……。 |
Taro |
タロ
可愛い女の子と……。 |
Taro |
タロ
えーと……黒いかたまり? |
Taro |
アラクネ
キヒ……キヒヒヒヒヒ! アオ、アオあお蒼アオアオ……よこせ!! |
Arakune |
アラクネ
貴様のクリスタル! ワレ、頂くゾ! |
Arakune |
タロ
この人、マジでやばそうだな…… ていうか、あんまり戦いたくない……。 |
Taro |
タロ
そっちの子とお兄さんは話が通じそうだね。 ねえ、君たちも叶えたい願望があるの? |
Taro |
リンファ
もちろん! ボクの願望は、立派なお医者様になること! |
Linhua |
レリウス
……くだらんな。 これから戦う相手に語る意味などない。 |
Relius |
タロ
なんだか全然一枚岩じゃないチームだね……。 |
Taro |
十三
急造の寄せ集めだ、当然だよ。 だけど、最後の答えには同感だ。 |
Juusan |
十三
これから戦う相手に語る必要なんかない。 これから消える相手なら、なおさらね。 |
Juusan |
ツヴァイ
ほう、なかなか言ってくれるじゃないか。 |
Zwei |
ツヴァイ
確かに我々は一枚岩ではないが……こと戦いに関しては それほど悪いチームではないぞ? |
Zwei |
十三
なら、試してみればいい。簡単だよ。 どちらが正しいのかは、結果が教えてくれる。 |
Juusan |
ドライ
……そうですね。十三の言う通りです。 |
Drei |
ドライ
お互いに信じる道があるのならば、戦うほかありません。 |
Drei |
ドライ
私も、師を超えることで証明してみせましょう。 私の信じる道が、いかに正しいのかを。 |
Drei |
ツヴァイ
ふむ、確かに……これ以上のお喋りは時間の無駄というものか。 よろしい、では始めよう! |
Zwei |
ツヴァイ
この私を超えてみるがいい、我が弟子ドライよ! |
Zwei |
ドライ
望むところです! |
Drei |
リンファ
ボクも負けない! |
Linhua |
レリウス
…………。 |
Relius |
1: 僕(私)を見ている? |
1: |
レリウス
……なるほどな、なかなかおもしろい趣向だ。 |
Relius |
タロ
それじゃあ、いくよ! 皆、作戦通りに! |
Taro |
アラクネ
キッヒヒヒヒ!! |
Arakune |
タロ
くそっ……こいつ、動きが読めない! おまけに攻撃方法もめちゃくちゃだ! |
Taro |
アラクネ
死ねシネシネシネ消えろォ!! ワレ蒼を手にスル……貴様ら、邪魔だ!! |
Arakune |
タロ
術糸、縫製!! |
Taro |
アラクネ
……きひっ? いまナニかしたか? |
Arakune |
タロ
また攻撃がすり抜けた!? どうなってるの、こいつの身体!! |
Taro |
リンファ
あわわわわ……ひゃあっ!! |
Linhua |
十三
ちっ……今のは惜しかった。 |
Juusan |
十三
ねぇアンタ。いつまで逃げるつもり? 本当に戦う気、ある? |
Juusan |
リンファ
だ、だって君、強すぎるし!! それに、逃げちゃ駄目なんてルールはないんだから!! |
Linhua |
リンファ
ボクは遠慮なく逃げ回らせてもらうよ〜! |
Linhua |
十三
また逃げた……。 戦意のない奴は、面倒だな……。 |
Juusan |
ドライ
ヌゥンッ!! |
Drei |
ツヴァイ
甘い!! |
Zwei |
ドライ
なっ……! |
Drei |
ドライ
さすがは十聖のツヴァイ。 我が術を片手で相殺するとは、お見事です。 |
Drei |
ツヴァイ
お前の技は確かにパワーはある。 だが雑すぎる。それに真っすぐだ。 |
Zwei |
ツヴァイ
お前の生き方同様、不器用なんだよ。 |
Zwei |
ドライ
確かに私は、あなたのように自由な生き方はできません。 それでも!! |
Drei |
ツヴァイ
くっ!? |
Zwei |
ドライ
私はこのチームで、あなたに勝つつもりです。 |
Drei |
ツヴァイ
ふむ……確かに、なかなかいいチームではある。 だけど、それで勝つというには、どうかな? |
Zwei |
ツヴァイ
見たところそっちのチームで最強なのは、 あの白い髪の少女だろう。 |
Zwei |
ツヴァイ
たしかにあの少女は脅威だ。 本当に人の身体かと疑うほどにね。 |
Zwei |
ツヴァイ
1対1であれば、私が相手をしても勝てるかどうか。 ……だから、リンファを彼女にあてた。 |
Zwei |
ツヴァイ
アレは戦意や殺気を正面から斬り倒すタイプだ。 だけどリンファのような力なき少女相手ではどうだ? |
Zwei |
ツヴァイ
リンファには殺気がない。狂気もない。 おまけに一向に攻撃もせず、ただ逃げ回るだけ。 |
Zwei |
ツヴァイ
あの手のタイプは、リンファのように逃げ回る一般人には 本来の10%も力を出せないよ。 |
Zwei |
ツヴァイ
あっちの糸使いの少年は、経験が足りない。 それに、お前と同じく真面目で正直なタイプだ。 |
Zwei |
ツヴァイ
だからアラクネをぶつけた。彼の技量では、 流動体のアラクネにダメージを与えるのは難しいだろう。 |
Zwei |
ツヴァイ
レリウスはいかなる時も冷静、かつどんな環境にも対応できる。 私ですら奴の底は見えない。 |
Zwei |
ツヴァイ
相手にどれほどの力があっても、レリウスであれば問題ない。 少なくとも、時間稼ぎ程度はね。 |
Zwei |
ドライ
時間稼ぎ……? |
Drei |
ツヴァイ
そうだ、ドライ。 何故ならお前では私には勝てない。 |
Zwei |
ツヴァイ
さっきのやり取りで確信したよ。 お前の力は昔のままだ。私の想定を上回れていない。 |
Zwei |
ツヴァイ
つまりこの戦いは……私とお前の力の差が そのまま勝敗を決することになる! |
Zwei |
ドライ
ぐはぁっ!! |
Drei |
ドライ
ぐっ、くぅ……な、なんという力…… これが十聖ツヴァイの本気というわけですか……。 |
Drei |
ドライ
確かに、まずい状況です……なんとかしなければ……。 |
Drei |
レリウス
…………。 |
Relius |
レリウス
ふむ……まるで動くつもりがないようだな。 面白いものを見せてくれるかと思ったが、見込み違いか? |
Relius |
レリウス
その眼でなにを観ているのか、興味はあるが…… このままじっとしているわけにもいかないのでな。 |
Relius |
レリウス
消える前に、その中身を少し見せてもらうとするか。 |
Relius |
1: チームに指示を出す |
1: |
ドライ
頭の中に声が……これは、レイさん!? |
Drei |
十三
おもしろいね、これが指揮官の能力ってこと? それに……へぇ。 |
Juusan |
タロ
あー、なるほどそういう作戦ね! 了解、了解っと! |
Taro |
ドライ
な、なんですかこれは? 突然頭の中に声が……ポジションを、入れ替える? |
Drei |
十三
ふん……うまくいかなかったら、ただじゃおかないから。 けど、いいよ。今はその作戦に乗ってあげる。 |
Juusan |
タロ
よ〜し、それじゃフォーメーションベータってことで! |
Taro |
ドライ
師ツヴァイよ、残念です……。 我々の手で決着をつけたかったのですが……。 |
Drei |
ツヴァイ
ん? あっ!? |
Zwei |
ツヴァイ
おい待て、ドライ! 馬鹿な、あの馬鹿正直な男が逃げの手だと!? |
Zwei |
ツヴァイ
ちぃっ! |
Zwei |
十三
やっぱりアンタの方が遊び相手によさそうだね。 ほら、相手を探してるんだろ? かかってきなよ。 |
Juusan |
十三
言っておくけど、私から逃げようとしても無駄だよ。 獲物を追うのは得意なんだ、昔から。 |
Juusan |
ツヴァイ
くっ……こいつは参った。 だが確かに、逃がしてはもらえなさそうだ! |
Zwei |
リンファ
あれ? あの人、どこに行ったんだろう? おっかしいなぁ、ついさっきまで後ろにいたはず……。 |
Linhua |
リンファ
えっ? |
Linhua |
リンファ
うわっ!? ひゃあああ!? な、な、なにこの糸!? |
Linhua |
リンファ
うううーーん!! ぜ、全然切れない……! |
Linhua |
タロ
よーし、捕まえたよ! |
Taro |
タロ
俺の糸は術式で編んだ特別製だからね、 そう簡単には切れないよ。 |
Taro |
タロ
あんまり女の子には使いたくないんだけど…… なるべくきつく縛らないようにするから、ごめんね? |
Taro |
アラクネ
ギヤアアァァァ!! |
Arakune |
アラクネ
カ、身体が……ワレの身体が崩れるルルルぅぅ!! キサマ、貴様貴様、なにをシタ!! |
Arakune |
ドライ
その肉体、液体を空間に固定しているようですね。 ですが、内側から魔術で爆ぜればどうですか? |
Drei |
ドライ
すみませんが、手加減はできませんよ。 私の魔術は……不器用ですからね。 |
Drei |
アラクネ
オノレエエエエ!! |
Arakune |
レリウス
それぞれの特性を瞬時に把握し、ポジションを入れ替えたか。 やはり貴様のその眼……興味深い。 |
Relius |
レリウス
そちらのチームのリーダーは貴様で間違いないな。 |
Relius |
1: 答える |
1: |
レリウス
あるいは願望など叶えずとも…… 私の求めるものが見つかったのかもしれないな。 |
Relius |
レリウス
是非ともその眼を私に見せてくれ。 |
Relius |
レリウス
無言は肯定と受け取ろう。 その眼……どこで手に入れた? |
Relius |
レリウス
まあいい……これからじっくりと見せてもらうとしよう。 |
Relius |
アラクネ
レリ、レリレリレリウスぅ! ワレの身体、崩れるうぅ……キサマも戦エ! |
Arakune |
リンファ
なんとか逃げて来れたけど、危なかったぁ……。 ねぇ、あの人たち本当に強いよ!? |
Linhua |
ツヴァイ
ふぅ、完全に一本取られたよ。 てっきり指揮官はドライかと思っていたのだが。 |
Zwei |
ツヴァイ
こちらの有利を消すような、的確なポジションだった。 いや、敵ながら実にお見事な指揮だ。 |
Zwei |
ツヴァイ
やれやれ。こうなっては集まって戦うしかないね。 各個撃破でもされたら終わりだ。 |
Zwei |
ドライ
お見事です、レイさん。 一気に形勢はこちらに傾きましたね。 |
Drei |
十三
くだらない鬼ごっこは終わりだよ。 さっさと私がせん滅してやる。 |
Juusan |
タロ
俺たちのチームワーク、見せてやろうよ! |
Taro |
シオリ
見てください、相手チームのクリスタルが出現しました! さすが皆さん! これでこちらの勝利ですわ! |
Shiori |
アラクネ
ギヒアアア……ワレの、ワレのクリスタル……! |
Arakune |
ツヴァイ
まいった。 残念だけど、君たちの想いの方が強かったみたいだ。 |
Zwei |
ツヴァイ
……私がこちらのリーダーだよ。完敗だ。 |
Zwei |
リンファ
そんな……ボクの医学の道は、 こんなところで終わってしまうの……。 |
Linhua |
ツヴァイ
そんなことはない。ここで敗北したとしても 我々という存在は、本来あるべき世界に帰るだけだ。 |
Zwei |
ツヴァイ
だからリンファの願望はまだ終わってはいない。 むしろここから始まるんだ。胸を張りなさい。 |
Zwei |
リンファ
ツヴァイさん……ありがとう。 |
Linhua |
レリウス
レイ……だったか。 今日は面白いものを見せてもらった。 |
Relius |
レリウス
今度はその中身を……是非見せてもらいたいものだ。 貴様の今後には、大いに期待している。 |
Relius |
ツヴァイ
ま、そういうわけだ。 私たちも別に死ぬわけじゃないから、気にしないでくれ。 |
Zwei |
ツヴァイ
元の世界に帰ったら、究極のスパイス探しに明け暮れるだけさ。 |
Zwei |
ツヴァイ
それでは、君たちの幸運を祈っているよ。 そこの未熟な弟子のこと、よろしく頼む。 |
Zwei |
ドライ
なっ……ツヴァイ、私はまだあなたに……! |
Drei |
ドライ
消えた……。 |
Drei |
ドライ
レイさんに、すべてのクリスタルが集まって……。 これで、ゲームに勝利したということですか。 |
Drei |
タロ
そう。あの4人のクリスタルを、 レイが手に入れたってことだよ。 |
Taro |
タロ
はぁ〜……。それにしても、手強い相手だったね。 いきなりあんな強敵と当たるなんて。 |
Taro |
シオリ
それでも勝ったのですから、すごいことですわ! 特にレイさんの作戦……お見事でした! |
Shiori |
タロ
うん。頭の中に声が響いた時は驚いちゃった。 あの一瞬で、大した判断力だよ。 |
Taro |
タロ
でも、これでこのチームで1勝。 誰も脱落しなかったし、幸先は良いと思うよ! |
Taro |
タロ
まだまだ強敵が現れるかもしれないけど、 力を合わせれば、きっとなんとかなるよね! |
Taro |
十三
『灰の王』に辿り着くまで、すべての障害は排除するだけ。 誰が相手だろうが、関係ないよ。 |
Juusan |
十三
むしろ強い相手なら大歓迎だ。 あの程度の奴らじゃ、物足りないし。 |
Juusan |
十三
……アンタたち、私と組んで正解だったね。 |
Juusan |
ドライ
しかし油断はできませんよ。我々の他にどのような ドライブ能力者がいるのか、わかっていないのですから。 |
Drei |
ドライ
それに体力も消耗しています。もし今この状況で 他のチームに襲われれば、ひとたまりもありません。 |
Drei |
ドライ
なるべく早く休める場所を探す必要がありますね。 |
Drei |
シオリ
あ、でしたら。確かこの先にダイナーがあったはずですわ。 そこなら食事もとれますし、少し休んでいきましょう。 |
Shiori |
十三
いいね……おなか空いたし。 |
Juusan |
タロ
じゅうじゅう、意外と食いしん坊キャラだったりする? |
Taro |
タロ
よし、じゃあとにかくまずはダイナーに向かおう! 次の戦いまで、作戦も練っておかなきゃね! |
Taro |
第4節 『助けてあげる①』/ 4. I'll Save You - 1
Summary | |
---|---|
一同は食卓を囲み、様々に会話を交わす。し
かし食事が届くと同時に次の対戦指示が手渡 され、慌ただしく指定の場へ向かうことに。 |
チンピラ
ぐ……ぐえぇ……っ。 |
Ruffian |
タロ
……残りはどう!? |
Taro |
シオリ
今ので最後ですわ! |
Shiori |
タロ
よかった〜……よし、今のうちにダイナーに急ごう。 これ以上雑魚の相手は嫌だからね! |
Taro |
十三
……やっとついた。 |
Juusan |
ドライ
中々厳しい道中でしたね。 大した距離ではなかったはずですが……。 |
Drei |
タロ
次から次へと絡まれるんだもんなぁ。 精神的には、さっきの対戦よりきつかった……。 |
Taro |
タロ
レイは大丈夫? |
Taro |
シオリ
たぶん、私たちがクリスタルを手に入れるのを見ていたのですわ。 それで標的にされたのでしょうね……。 |
Shiori |
十三
面倒くさい連中だな……。 あんまり関わりたくない。 |
Juusan |
タロ
それには同感。 とりあえずメシ休憩にしよう。腹が減ったよ。 |
Taro |
シオリ
ふぅ……ようやく一息、ですわね。 |
Shiori |
十三
…………。 |
Juusan |
ドライ
どうしました、十三? |
Drei |
十三
戻ってくる間に倒した連中、誰もクリスタルを 落とさなかったな。 |
Juusan |
タロ
そうだね。彼らはドライブ能力者じゃなかったから。 |
Taro |
タロ
ただ、どうもドライブ能力者のクリスタルは、 裏で高値で取引されてるみたいなんだ。 |
Taro |
タロ
さっきの連中はみんな、それを狙って襲ってきたんだろう。 |
Taro |
十三
金になるのか……。 |
Juusan |
シオリ
どうやら、結構な値打ちらしいですわ。 彼らにとっては、集めたって綺麗なだけの石ですのに。 |
Shiori |
ドライ
ということは、能力があるわけでもない一般の人間が、 ああして通りかかる能力者を襲撃しているということですか。 |
Drei |
ドライ
なんと乱れた世の中でしょう……嘆かわしい。 |
Drei |
タロ
そうだね。治安はお世辞にもいいとは言えないよ。 |
Taro |
タロ
この世界には俺たちみたいな、別の世界から招かれた ドライブ能力者の他に、そういう『普通の人』が暮らしてる。 |
Taro |
タロ
ああいう荒っぽい連中の他にも、ダイナーの周辺で暮らしてる 人とか、ダイナーを経営してる人とか。あと、魔物とかね。 |
Taro |
シオリ
そういった人や魔物は、別の世界から来たわけではなくて、 初めからこの世界で暮らしている人たちのようです。 |
Shiori |
シオリ
もちろん、ドライブ能力者ではありませんから、 倒したとしてもクリスタルは手に入りませんわ。 |
Shiori |
シオリ
もっとも、別の能力者から奪ったクリスタルを持っていれば、 その限りではないかもしれませんけれど。 |
Shiori |
十三
……ここに着くまでのあの戦いは、 全部無駄骨だったってことか……聞いたらなんか疲れた。 |
Juusan |
タロ
はは、そうなるね。私怨や憂さ晴らしでもない限りは、 体力を使うだけかも。 |
Taro |
タロ
ドライブ能力者はクリスタルを見せて証明すれば、 ダイナーでの食事や宿泊も無料だしね。 |
Taro |
ドライ
そうなのですか!? |
Drei |
シオリ
え、ええ……そうです。私たち、ずっとそうやってきましたし。 |
Shiori |
十三
……もっと早く知りたかった。 |
Juusan |
タロ
あー……ああいう連中から、巻き上げてたクチかぁ。 |
Taro |
ドライ
もちろん、襲撃してきた者たちからのみで、 そうではない一般の人々に手を出したことはありませんよ。 |
Drei |
ドライ
ですが……まさかそのような仕組みがあったとは……。 |
Drei |
十三
ここまでどれだけ無駄骨を折らされてきたんだ、まったく。 |
Juusan |
シオリ
ま、まあまあ、知らなかったのですから、仕方ありませんわ。 それぞれの感じでそう落ち込まないでくださいませ。 |
Shiori |
1: この世界の人はみんな普通の人? |
1: |
タロ
普通ってのは、ドライブのない人ってことだよね。 うーん。絶対とは言えないけど、俺が知る限りではそうだな。 |
Taro |
シオリ
どうでしょう。断言まではできませんけれど、ダイナー付近の 方々は違うのではないでしょうか。見たことありませんもの。 |
Shiori |
シオリ
意図的に能力を隠していたら、わかりませんけれど。 そうまでする必要もないと思いますし……。 |
Shiori |
ラーベ
私たちの目的は観測者探しだ。観測者が見つからなければ、 私たちがここにいる意味はない。そうだな? |
Raabe |
シエル
はい。 |
Ciel |
ラーベ
で? 観測者の条件は? |
Raabe |
シエル
ドライブ能力者であることと……ファントムフィールド化した 『時間軸』の世界の住人であることです。 |
Ciel |
シエル
あ……異物であれば、観測者の候補から外れますが……。 |
Ciel |
1: (観測者は、その世界の能力者だから……) |
1: |
十三
なに、レイ。 難しい顔して考えこんじゃって。 |
Juusan |
シオリ
もしかして、はぐれたというお仲間のことを 考えていらしたのでは? |
Shiori |
シオリ
その方々がドライブ能力者なら、 ゲームの途中で会うかもしれませんわ。 |
Shiori |
シオリ
もしこの世界に来れば、 自動的に参加させられてしまうんですもの。 |
Shiori |
十三
そういえば、あの通信はもう来ないの? |
Juusan |
タロ
無理じゃないかな。前だって向こうから一方的に話しかけてくる だけだったし。それもやっと繋がってる感じだったよ。 |
Taro |
シオリ
……そうですね……あの様子からすると、こちらから通信を 繋ぐ手立てもないのでは? |
Shiori |
シオリ
あるのでしたら、レイさんが 連絡取らないわけがありませんわ。 |
Shiori |
十三
そっか……。じゃあ、どちらにせよしばらくは 私たちに付き合うしかないわけだ。 |
Juusan |
十三
ならいい。 |
Juusan' |
シオリ
……あのう。 |
Shiori |
シオリ
もし仲間の方々と連絡がついて……再会できたら、 レイさんはチームを抜けてしまいますの? |
Shiori |
タロ
シオシオがそんな風に言うなんて珍しいな。 レイにいてほしい、ってことでしょ。 |
Taro |
シオリ
それはまあ、いてほしいです。 |
Shiori |
シオリ
レイさんの扱う不思議な力はユニークですし、 状況に柔軟に対応できる能力をお持ちです。 |
Shiori |
シオリ
それになにより、レイさんが一緒にいると、 普段より軽やかに動ける気がいたしません? |
Shiori |
タロ
ああ、うん。俺もそう思う! |
Taro |
タロ
不思議なんだけど、普段の自分より もう一段階強くなれたような気がするんだよね。 |
Taro |
十三
……気のせいじゃない? |
Juusan |
タロ
いや、そんなことないって。 じゅうじゅうはそう感じない? |
Taro |
十三
……別に。 |
Juusani |
ドライ
私は、タロさんに同意しますよ。 |
Drei |
ドライ
始めは、庇護対象が近くにいるからと 気持ちが高揚しているだけかと思っておりましたが……。 |
Drei |
ドライ
何度が戦場を共にして、レイさんの 力の影響であると今では確信しております。 |
Drei |
ドライ
レイさんは観測の力をお持ちです。 |
Drei |
ドライ
その力でもって、私たちをより強い存在だと 認識してくださっているおかげでしょう。 |
Drei |
シオリ
そんなことまでできますの? ますます、チームにいてほしい人材ですわ。 |
Shiori |
十三
そう一生懸命引き止めようとしなくたって、 どうせしばらくは一緒に行くしかない。 |
Juusan |
十三
それはレイ自身が よく身に染みてわかってるんじゃない。 |
Juusan |
タロ
はは。だけどもし自分が足手まといだと思ってたら、 そんなことないから、気にしないでね。 |
Taro |
タロ
むしろ頼もしいと思ってるくらいなんだから。 |
Taro |
タロ
……あ、そうだ。君に聞いておきたかったんだ。 さっきの対戦、どうだった? |
Taro |
タロ
いきなりリーダーを任せることになっちゃったけど…… 問題はなかったかな? |
Taro |
ドライ
前衛も後衛も、レイさんにお任せするのは 少々危険がありすぎましたからね。 |
Drei |
ドライ
賢明な役割分担だったと、私は思いますが。 |
Drei |
タロ
そっか、それならよかった。 実はさ、リーダーをお願いしてむしろよかったって思ってるんだ。 |
Taro |
タロ
レイは戦場を広く見ることができてたし、 シオシオも言ってたけど、状況への対応力に優れてると思う。 |
Taro |
タロ
俺たちの中で一番リーダー向きだよ。 |
Taro |
十三
……まあ確かに、向いてるかもね。私はやれって言われても 絶対嫌だし、アンタがやるのがいいと思うよ。 |
Juusan |
タロ
うん。よかったらこれからも、リーダーをお願いできないかな。 |
Taro |
1: 自分でよければ |
1: |
ドライ
頼もしいお言葉です、レイさん。 どうぞよろしくお願いいたします。 |
Drei |
シオリ
あなたなら大丈夫ですわ。 もちろん、戦闘は私たちがバッチリこなしますから。 |
Shiori |
店員
6番席のお客さん! 料理できたよー!</style> |
Shop Staff |
シオリ
あ、私たちですわ。 できたようですね。 |
Shiori |
タロ
俺、取ってくるよ。 |
Taro |
十三
…………。 |
Juusan |
タロ
そんなに嫌そうな顔しないでよ、じゅうじゅう〜。 味が微妙なのは俺もわかってるよ。 |
Taro |
シオリ
でも腹が減ってはなんとやら。 それなりには食べないと、次の対戦がしのげませんもの。 |
Shiori |
タロ
神妙な顔してても、味は変わらないし。 強気の姿勢で食事に向かおう。 |
Taro |
十三
……強気の姿勢でも味は変わらないんだけど。 |
Juusan |
ドライ
空腹を満たせるだけも十分な状況です。 この環境で、味に言及するのは贅沢というものでしょう。 |
Drei |
タロ
ただいま……戻ったよ。 |
Taro |
ドライ
おや、どうされましたか? なんとも言えない顔をされていますよ。 |
Drei |
十三
強気の姿勢は? 見た目からして食欲が失せるほど不味そうなの? |
Juusan |
シオリ
……いえ、そうではありません。 食事と一緒に、これを渡されましたの。 |
Shiori |
十三
なにこれ。カード? |
Juusan |
ドライ
もしやそれは、次の対戦の指定ですか? |
Drei |
シオリ
ええ、そうです。場所はかなり近いのですけれど、 時間の指定が1時間後でして……。 |
Shiori |
タロ
のんびり食って休憩って訳にもいかなくなったな……。 |
Taro |
十三
こっちの都合はお構いなしってことね。 『灰の王』って、もしかして私たちのこと舐めてない? |
Juusan |
タロ
うう〜ん……ただひとつわかるのは、時間に遅れたら不戦敗で、 俺たちは問答無用で消滅するってことかな。 |
Taro |
タロ
そうなったら『灰の王』に会うことはできなくなる。 |
Taro |
シオリ
あーもう! さっさと食べちゃいましょう! 時間がありませんわよ!? |
Shiori |
十三
味わう暇がないのは都合がいいかも、ね。 ……はぁ。 |
Juusan |
第4節 『助けてあげる②』/ 4. I'll Save You - 2
Summary | |
---|---|
指定された森へと辿り着くと、タオカカ、
チャチャカカ、ナイン、獣兵衛が現れた。た だならぬ気配を放つ相手とのバトルに挑む。 |
|
戦いの後、ナインは無意識の願望が叶ったこ
とを自覚し、満足して去った。勝利を収めた 一行は、近くのダイナーへ戻り休むことに。 |
ドライ
なんとか間に合いましたね。 |
Drei |
シオリ
ええ、時間的にはちょうどいいくらいですわ。 |
Shiori |
十三
で? 相手はどこ? 誰もいないけど。 |
Juusan |
タロ
まだ来てないんじゃないかな。 |
Taro |
タロ
このまま誰も現れないといいんだけどね。 そしたらこっちの不戦勝になる。 |
Taro |
十三
余計な戦闘をしなくていいってわけだ。 それなら、そのほうが楽でいい。 |
Juusan |
ドライ
なにをおっしゃいます。強制的に参加させられたゲームとはいえ、 正々堂々、正面から勝ち得てこその勝利でしょう。 |
Drei |
タオカカ
おっ! 奴らもう来てるニャス。 せっかちニャスねぇ。それともあわてん坊さんニャスか。 |
Taokaka |
タオカカ
急いだって、ごほうびに肉まんが もらえるわけじゃないニャスのにねぇ。 |
Taokaka |
チャチャカカ
げぇ〜、相手来てるニャスかぁ。面倒くさい…… なんで来るニャス。 |
Chachakaka |
チャチャカカ
向こうがさぼってくれれば、チャチャたちが不戦勝だったのに。 |
Chachakaka |
チャチャカカ
ここは木陰があって気持ちいいし、 のーんびりお昼寝したかったニャス。 |
Chachakaka |
タオカカ
ナイスアイデアニャス! ここはあいつらにお任せして、タオたちはのんびりと……。 |
Taokaka |
声
そうしてあげたいのはやまやまだけど、 まだお昼寝には早いわよ、ふたりとも。 |
Voice |
ナイン
すぐそこに、叩きのめすべき敵がいるんだもの。 お昼寝はそのあと。そういう約束だったでしょ? |
Nine |
チャチャカカ
うにゃ〜……やっぱそうなっちゃうニャス? でもあんまやる気しないニャスよね〜。 |
Chachakaka |
ナイン
ん〜、もう、しょうがないわねぇ。 じゃあ私がふたりの分も頑張りましょうか。 |
Nine |
ナイン
大丈夫、相手が誰であろうと、私の敵じゃないわ。 すぐに全員消し屑にして、みんなでのんびり休憩しましょうか。 |
Nine |
獣兵衛
おいおい、ナイン。それにタオ、チャチャも。 そういうわけにはいかんだろうが、シャキっとしろ。 |
Jubei |
獣兵衛
相手がどんな連中かもわからんうちから、侮るんじゃない。 油断大敵という言葉を知らんのか。 |
Jubei |
ナイン
そうは言うけど。 今までだって大した敵にあたってこなかったじゃない。 |
Nine |
ナイン
私とあなたが組めば、どんな相手だって雑魚よ、雑魚。 そうでしょう? 獣兵衛。 |
Nine |
獣兵衛
今回もそうとは限らんだろう。よく見てみろ。 これまでの連中とは、ちょっとばかり雰囲気が違うぞ。 |
Jubei |
ナイン
……ふぅん? |
Nine |
ドライ
彼女たちが相手チームのようですね。 それにしても、ずいぶんと……ワイルドなチームメンバーですね。 |
Drei |
十三
……猫ばかり……。 |
Juusan |
タロ
ちょっとかわいい相手だけど、 あんまり強そうには見えない……よね? |
Taro |
十三
いや……どうかな。 あのカカ族ふたりもそこそこやるみたいだけど……。 |
Juusan |
十三
あっちの魔女と眼帯の獣人は、気を付けたほうがいい。 |
Juusan |
ドライ
十三、あの者たちをご存知なのですか? |
Drei |
十三
……ちょっと心当たりがあるだけ。 |
Juusan |
タロ
そっか。でもじゅうじゅうがそう言うんなら、 油断しないほうがよさそうだ。 |
Taro |
シオリ
ええ……確かに、ただならぬ感じがいたします。 |
Shiori |
タロ
どういう人たちなのかある程度分かってから、 バトルを始めたいな……ちょっと話しかけてみようか。 |
Taro |
タロ
やあ、こんにちは。君たちが次の対戦相手……だよね? |
Taro |
獣兵衛
ということは、そちらもゲームに参加している ドライブ能力者で間違いないようだな。 |
Jubei |
獣兵衛
俺は獣兵衛。 こっちのカカ族ふたりは、タオカカとチャチャカカだ。 |
Jubei |
チャチャカカ
ニャス。 |
Chachakaka |
タオカカ
ニャス! |
Taokaka |
獣兵衛
それから彼女が……。 |
Jubei |
ナイン
……ナインよ。 |
Nine |
ナイン
そちらは? |
Nine |
ドライ
私はドライと申します。彼女は十三。 彼はレイさん。 |
Drei |
ドライ
私はドライと申します。彼女は十三。 彼女はレイさん。 |
Drei |
タロ
俺はタロ。それで、この子がシオリだ。 |
Taro |
シオリ
お手合わせ、よろしくお願いしますわ。 |
Shiori |
タロ
ところで……4人チームなんだな。 補欠要員はいないんだね。 |
Taro |
タオカカ
そんなもん、いらないニャス! タオたちはとーっても強いのネ! |
Taokaka |
タオカカ
誰もタオとチャチャのスピードにはついてこられないニャス! |
Taokaka |
チャチャカカ
もちろん持ち味はスピードだけじゃないニャスよ。 |
Chachakaka |
チャチャカカ
チャチャたちの見た目で侮った連中はみんな、 この爪でズタズタにしてやるのニャス。 |
Chachakaka |
ドライ
スピードを生かした戦術が得意なチームのようですね。 |
Drei |
シオリ
急襲攻撃が主体でしょうか……。 |
Shiori |
1: ナインの魔術に気を付けて |
1: |
ナイン
あら。あなた、もしかして私を知っているの? そうじゃないなら、大した観察眼ね。それとも知識かしら。 |
Nine |
獣兵衛
ほう。どこで仕入れた情報だ? この短期間で見抜いたというのなら、大した観察眼だ。 |
Jubei |
獣兵衛
だが……それだけでは俺たちには勝てないぞ!! |
Jubei |
シオリ
っ……すごい威圧感。 十三やレイの警告も、頷けますわ……! |
Shiori |
タロ
うん……睨まれるだけで、体中がビリビリする。 |
Taro |
十三
フン。どんな相手だろうと関係ない。 向かって来るなら、斬り払うまで。 |
Juusan |
十三
大口は、私を倒してからにして! |
Juusan |
ナイン
いい度胸じゃない。いいわ、来なさい。 ひとり残らず灰にしてあげる! |
Nine |
タオカカ
っしゃー! やったるニャス! ぶっ倒して、ごほーびに肉まん買ってもらうニャス! |
Taokaka |
チャチャカカ
はー……しょうがないニャスか。 さっさと片付けて、お昼寝タイムニャス。 |
Chachakaka |
ドライ
来ますよ。みなさん! |
Drei |
タロ
戦術は前回のままで! 行こう! |
Taro |
タオカカ
ふぎゃん! |
Taokaka |
タオカカ
あうぅぅ……も、もうダメニャス……。 |
Taokaka |
チャチャカカ
こうさーん、こうさんニャース。 |
Chachakaka |
獣兵衛
…………勝負あった、と認めざるを得ないな。 |
Jubei |
ナイン
悔しいけど、そうね。人数差の問題じゃないわ。 あなたたちが強かったのよ。 |
Nine |
タロ
ど……どうも。結構、運もあったと思うけどね……。 |
Taro |
シオリ
どっちが勝ってもおかしくない対戦でしたもの……。 |
Shiori |
シオリ
レイさんが的確に指示を飛ばしてくださったから、 対応できた……そう見えました。 |
Shiori |
十三
……観測の力、か。 それで勝敗が決まったとは、あんまり考えたくないな。 |
Juusan |
十三
癪に障る。 |
Juusan |
ドライ
まあまあ、そう言わずに。今は勝利を喜びましょう。 |
Drei |
タオカカ
こっちはちっとも喜べないのニャスー! |
Taokaka |
タオカカ
世界中のうまいものを お腹いっぱい食べさせてもらうはずだったのに! |
Taokaka |
チャチャカカ
チャチャは一生、三食昼寝つきの生活を叶えてもらう 予定だったニャスのに……アテが外れたニャス……。 |
Chachakaka |
獣兵衛
やれやれ……参ったな。 俺は俺で、故郷の復興を願ってゲームに参加していたんだが……。 |
Jubei |
獣兵衛
そもそもよくわからん異世界の不思議な力に願ったところで、 この世界にはない俺の故郷が復活するはずもないか。 |
Jubei |
獣兵衛
そもそも叶わぬ願いだったと思えば、仕方ない。 諦めもつく。 |
Jubei |
獣兵衛
お前たちの力は、それに見合うだけのものだったしな。 |
Jubei |
ドライ
こちらこそ、いい経験になりました。 拳を交えることができてよかった。 |
Drei |
タロ
一歩間違えば、こっちもやばかった……。 |
Taro |
獣兵衛
はは、若者の糧になったのなら、本望だ。 |
Jubei |
獣兵衛
……さて。それじゃあクリスタルを渡そう。 ナイン。 |
Jubei |
ナイン
……ええ。 |
Nine |
シオリ
……よし。吸収完了、ですわね。 |
Shiori |
十三
何度見ても、実感ないな。 |
Juusan |
ナイン
…………。 |
Nine |
タオカカ
ん? どしたニャス、帽子の人? |
Taokaka |
ナイン
……私ね、願い事なんてなかったのよ。 そもそも自分の願いを誰かに叶えてもらうつもりがないの。 |
Nine |
ナイン
それでもこの世界に呼ばれた以上、 このゲームとやらに参加しないわけにはいかなかったし……。 |
Nine |
ナイン
負けるのは嫌いだからそれなりに全力でやってきたわ。 |
Nine |
ナイン
だけど今、わかったの。 そしてわかったと同時に、叶えてもらうまでもなく叶ったわ。 |
Nine |
チャチャカカ
は? なに言ってるニャス? |
Chachakaka |
ナイン
私は自分でも気づかないうちに、素敵な人に出会いたいって…… そう夢見ていたんだと思うの! |
Nine |
十三
……は? |
Juusan |
ナイン
そんな人は世界中探したっていやしない。そう自分の気持ちに 蓋をして、見ないようにしていたのかもしれないわ……。 |
Nine |
ナイン
でも今、私、本当の意味で目が覚めた気分。 |
Nine |
ナイン
こんなに素敵な人がすぐ側にいたことに、 今になってようやく気付いたんだもの……。 |
Nine |
獣兵衛
……へ? す、素敵な人って、お、俺のことか……!? |
Jubei |
ナイン
ええ、そうよ! 他に誰がいるっていうの? |
Nine |
ナイン
この場にいる誰よりも 素敵で凛々しい面立ちをしてるっていうのに。 |
Nine |
獣兵衛
え、ええと、はは……いや、その。 |
Jubei |
タロ
なんだ、なんだ? |
Taro |
シオリ
んもう、わからないんですか、タロさん。 あれは……恋ですわ。 |
Shiori |
シオリ
よく見てくださいませ。ナインさんの、獣兵衛さんを見つめる 瞳……あれはまさしく、恋する乙女の瞳です! |
Shiori |
タロ
そ、そうなの? |
Taro |
シオリ
そうなのです! |
Shiori |
ナイン
ああ……タオカカやチャチャカカがあまりにも愛くるしいから、 気を取られていたせいかしら……。 |
Nine |
ナイン
それともこれでお別れだと思うからこそ、 急に運命が動いたのかしら。 |
Nine |
ナイン
それでも私、この長くない共闘の時間を一緒にすごせて…… 本当によかったと思っているわ。 |
Nine |
獣兵衛
あ……ああ。それは俺も、同意見だ。 タオカカたちはもちろんだが、ナイン、お前が一緒でよかったよ。 |
Jubei |
獣兵衛
これほど頼もしい魔術師は、他にいまい。 |
Jubei |
ナイン
ねえ……ここで私たちはこの世界から消えるけど、 もし元の世界に戻って、戻った世界で会えたら……。 |
Nine |
ナイン
そのときはどうか、お茶をご一緒してくださらない? |
Nine |
獣兵衛
お茶だと? そういうのはガラじゃないんだが……。 |
Jubei |
シオリ
もーう! 女の子からの、勇気を振り絞った デートのお誘いですわよ! 断るおつもりですか!? |
Shiori |
獣兵衛
いいっ!? い、いや、俺は……。 |
Jubei |
チャチャカカ
ひゅーひゅー。 いいじゃんいいじゃん、付き合っちゃえよ〜。 |
Chachakaka |
タオカカ
お? お茶しないならタオが代わりに うまいもの食べてあげるニャスよ? |
Taokaka |
獣兵衛
お、お前たちまで首を突っ込んでくるんじゃない……! |
Jubei |
獣兵衛
あ、ええと、その……。 |
Jubei |
ナイン
……はい。 |
Nine |
獣兵衛
そ、その、妙なテンションをやめてくれ。 そうしたら……お茶くらいなら。一緒に行くから。 |
Jubei |
シオリ
やった、やりましたわ、ナインさん……! おめでとうございます……! |
Shiori |
ナイン
ありがとう。あんたたちに負けて、むしろよかったわ。 |
Nine |
シオリ
元の世界に戻ったら、どうか幸せになってくださいね……っ。 |
Shiori |
ナイン
ふふ、気が早いわよ。まだ戻ってもいないんだから。 |
Nine |
ナイン
……それじゃあ、あんたたちはこの不毛な土地で、 引き続き頑張りなさいね。 |
Nine |
ナイン
私を負かせたんだから、簡単に敗退するんじゃないわよ。 |
Nine |
十三
言われるまでもない。 負けるつもりはないよ。 |
Juusan |
獣兵衛
頼もしいな。こうなったからには、応援している。 |
Jubei |
タオカカ
そんじゃまー、タオたちは帰るニャス! バイバイニャス! |
Taokaka |
チャチャカカ
ふぁ〜あ、これでやっとのんびり寝られるニャス……。 |
Chachakaka |
シオリ
……消えてしまいましたわね。 |
Shiori |
タロ
そうだね。 |
Taro |
ドライ
戦いは厳しいものでしたが、最後は微笑ましくもありましたね。 |
Drei |
十三
くだらない。どうでもいいよ。それより戻ろう。 クリスタルは手に入れたし、もうここに用はない。 |
Juusan |
ドライ
十三は繊細な少女の想いには鈍感ですね。 |
Drei |
十三
……なにそれ。馬鹿にしてる? 喧嘩売ってるの? |
Juusan |
ドライ
いえいえ、とんでもない。 |
Drei |
タロ
はは、まあまあ。でも十三の言う通り、 いつまでもここにいてもしょうがない。 |
Taro |
タロ
近くのダイナーに引き返そうか。 今日はさすがにもう、対戦はないだろうし。 |
Taro |
シオリ
ですわね。今度こそ、ゆっくり休みましょう。 |
Shiori |
シオリ
レイさんも、お疲れ様でした。 今回も見事な指揮官ぶりでしたわよ。 |
Shiori |
シオリ
次もよろしくお願いしますわ。 |
Shiori |
第4節 『助けてあげる③』/ 4. I'll Save You - 3
Summary | |
---|---|
眠れず外に出ると、十三の姿が。「私が
助けてあげる」と言い放つ彼女は、それが かつて誰かに言われた言葉だと微笑んだ。 |
タロ
はぁ〜、食べた食べた。 おなかいっぱいだ。 |
Taro |
シオリ
やっとゆっくり食事ができましたわ……。 対戦に次ぐ対戦のうえ、移動は徒歩。もうへとへとです。 |
Shiori |
ドライ
そうですね。本日は皆さん、本当にお疲れ様でした。 |
Drei |
ドライ
ダイナーの宿泊部屋も抑えられましたし、 今夜はゆっくり休むとしましょう。 |
Drei |
十三
一番休みが必要そうなのはレイだろうな。 ぐったりしてるじゃないか。 |
Juusan |
ドライ
それはそうでしょう。戦いの場にこそ慣れているようですが、 レイさんは戦士でも兵士でもないようです。 |
Drei |
ドライ
訓練を受けたわけでもない一般人、といった様子です。 そうではない我々とは、疲労の溜まり方も違いますよ。 |
Drei |
十三
ふぅん……。 |
Juusan' |
シオリ
はぁ……私、確かに特別な訓練を受けて育った身ですけれど、 さすがに今日は堪えましたわ。 |
Shiori |
シオリ
はしたないですけど、お腹がいっぱいになったら 今度は眠たくて……。 |
Shiori |
タロ
体が休みを求めてる証拠だろうね。 かくいう俺も、もう今にも寝そう……。 |
Taro |
タロ
ここで突っ伏す前に、部屋に戻っておくよ。 意地悪なゲームの運営が、夜中に叩き起こすかもしれないしね。 |
Taro |
ドライ
そうならないことを祈りましょう。 私も、引き上げます。 |
Drei |
ドライ
レイさんも、参りましょう。 |
Drei |
十三
レイも、部屋に戻るよ。 でないとここにひとりで置いていく。 |
Juusan |
…………。 |
|
……………………。 |
|
十三
……なにしてるの? |
Juusan |
十三
こんな世界で夜中に外をうろつくなんて、 正気とは思えないんだけど。 |
Juusan |
十三
どれだけ治安が悪いか、散々思い知ってるだろうに。 |
Juusan |
十三
……なに。寝れないの? |
Juusan |
十三
ふぅん。 |
Juusan |
十三
……慣れない環境だと、人間は緊張して普段通りに睡眠を とれない……って、聞いたことあるな。そういえば。 |
Juusan |
十三
アンタもそれ? |
Juusan |
十三
……機能不全みたいなものだよね。 しょうがないな。じゃあ、その気になるまで近くにいてあげるよ。 |
Juusan |
十三
私が側にいれば、誰に絡まれたって心配ないでしょ。 |
Juusan |
1: ありがとう |
1: |
十三
……どういたしまして。 |
Juusan |
十三
だろうね。 |
Juusan' |
十三
…………星、たくさん見えるな。 |
Juusan |
十三
私がいた世界より、魔素が薄いからかな。 よく見える。 |
Juusan |
十三
…………。 |
Juusan |
十三
……あの通信の画面で、最後に映った……白い髪の女の子。 あの子……アンタの仲間? |
Juusan |
1: そうだよ、ちょっと心配性なんだ |
1: |
十三
ああ。そんな感じだった。 必死そうな顔してたし。 |
Juusan |
十三
へぇ、護衛か。 大層な護衛つけてもらってるんだな。 |
Juusan |
十三
……どんな奴なの? 笑ったり、泣いたりする? アンタと……仲はいいの? |
Juusan |
十三
そうだ。そいつ、人を殺すような料理を作る? そうじゃなきゃ、クッキーを焼く? |
Juusan |
十三
会いたい? |
Juusan |
十三
……ああ。次々に聞いても、困るか。 ちょっと興味があってさ。 |
Juusan |
十三
外にいたアンタが、ずいぶんぼーっとしてたから。 その、仲間のことを考えてたのかなーって。 |
Juusan |
十三
……私にもさ。 ずいぶん昔に、そんな人がいたような気がするんだ。 |
Juusan' |
十三
いつでも、ちょっとでも暇があると、 そいつのことばっかり考えてた。そんな相手が……。 |
Juusan |
十三
……誰なのか、どんなやつなのか、全然思い出せないんだけど。 |
Juusan |
十三
会いたいわけじゃないんだ。 |
Juusan |
十三
会ったら……きっと殺す。 そうだな、殺すためになら会いたいかも。 |
Juusan |
十三
おかしいと思うだろ。でもそう思うんだ。 理由もわからないけど。 |
Juusan |
十三
…………。 |
Juusan |
十三
……私は、巻き込まれてこのファントムフィールドに 招かれたわけじゃないんだ。 |
Juusan |
十三
私は自分の意思で、自主的に、境界を使って ファントムフィールドを渡ることができる。 |
Juusan |
十三
今回もそうやって、自分の意思でここに来た。 |
Juusan |
十三
どうやらアンタも、同じようにして あちこち行ってるらしいじゃないか。 |
Juusan |
十三
……アンタを助けるように言って来た、おせっかい野郎に聞いた。 |
Juusan |
十三
私がファントムフィールドを渡ってるのは、 ある人物を探すためだ。 |
Juusan |
十三
そいつもファントムフィールドを、あちこち渡り歩いてる。 その気配を追いかけてるんだ。 |
Juusan |
十三
……何故追うのかって? 殺すためだよ。 |
Juusan |
十三
『その女』を見つけて、殺す。それが今の私の目的。 ただ『灰の王』はそいつとは違う。今回のは、ただの寄り道だ。 |
Juusan |
十三
……ベラベラと話し過ぎたな。 アンタと仲間のことを聞こうと思ってたのに。 |
Juusan |
十三
ダイナーに戻ろう。 チンピラに絡まれなくても、このまま外にいると風邪ひくぞ。 |
Juusan |
十三
…………。 |
Juusan |
十三
……仲間のことが気がかりなのはわかるけど。 必ず行くって言ってたんだから、信じて待っててやれば。 |
Juusan |
十三
それまでは、 アンタのやれることを、やるべきことをやればいい。 |
Juusan |
十三
それまでは……私が守ってあげるよ。 |
Juusan |
十三
いや、私流に言うと……『助けてあげる』かな。 |
Juusan |
十三
――昔、誰かに言われた言葉なんだ。 |
Juusan |
第5節 『誰かを求めてる①』/ 5. Wishing For Someone - 1
Summary | |
---|---|
次の対戦場所へと向かう道中、アナザーダー
ク=マイに遭遇する。クリスタルを狙う彼女 に、狂気の笑みを浮かべた十三が挑む。 |
|
マイが強力な一撃を放った刹那──Esとジ
ンが割って入り、刃を止める。戦況の変化を 面倒くさいと吐き捨て、マイは立ち去った。 |
タロ
おはよう、レイ。 ようやくお目覚めだね。朝ごはんにする? |
Taro |
タロ
って、あちこち痛そうだね。 大丈夫? |
Taro |
シオリ
大丈夫じゃないですわ。 シオリも、全身バッキバキです……。 |
Shiori |
タロ
ええ、そっちも? でもシオシオ、昨日はほとんど戦ってないよね。 |
Taro |
シオリ
仕方ないじゃないですか……。 |
Shiori |
シオリ
休憩場所はゴツゴツした岩肌ばかりでしたし、 やっと布団で寝れると思ったら固い木のベッド。 |
Shiori |
シオリ
おかげで首も腰も寝違えて……シオリの身体は、 タロ先輩のように鈍感にはできていないんです。 |
Shiori |
シオリ
ねえ、レイもそう思いますよね!? |
Shiori |
1: ……うーん、おはよう…… |
1: |
シオリ
んもう! シオリを無視しないでくださる!? |
Shiori |
タロ
まだ寝ぼけてるみたいだな。 よっぽど疲れてたんだねぇ。 |
Taro |
タロ
まあ、昨日は大活躍だったもんね。お疲れ様。 |
Taro |
シオリ
んもう! シオリを無視しないでくださる!? |
Shiori |
タロ
とっくに起きて、外に出て行ったよ。 じゅうじゅうは剣の素振り。ドラドラは瞑想だってさ。 |
Taro |
タロ
ふたりとも、昨日あれだけ戦ったばかりなのにね……。 あのふたりの強さの理由がわかった気がするよ。 |
Taro |
十三
やっと起きたのか。 よくそんなに寝られるな……。 |
Juusan |
十三
素質はありそうなのに、体は平凡そのものだね。 少しは鍛えたら? |
Juusan |
十三
時間なら、まだありそうだし。 |
Juusan |
ドライ
おはようございます、レイさん。 |
Drei |
ドライ
次の対戦の指示があるまで動きようがない、 というのも難儀なものですね。 |
Drei |
ドライ
いつ指示があるかもわかりませんから、 体力も温存しておいたほうがいいでしょうし。 |
Drei |
ドライ
たてられる対策も、 かなり制限されてしまいます。 |
Drei |
タロ
事前準備からすでにゲームは始まってるってことだね。 さて、この時間をどう使うべきか……。 |
Taro |
シオリ
シオリは、散歩でもしたい気分ですわ。 ここにいなきゃいけないってルールでもありませんし。 |
Shiori |
ドライ
散歩……ですか。 |
Drei |
ドライ
ふと思ったのですが、指示が我々と 行き違いになるという可能性はないのでしょうか? |
Drei |
タロ
どういうこと? |
Taro |
ドライ
指示といっても、その提示方法は毎回違う。 我々が事前にその方法を知ることはできないのです。 |
Drei |
ドライ
ならば、そう。例えば散歩、食事、睡眠…… あらゆる理由で、指示を見逃す可能性は存在すると思うのですが。 |
Drei |
タロ
確かにそうだね。でも、そういう理由で 失格になったって話は聞いたことないなぁ。 |
Taro |
タロ
考えてみれば、それもおかしな話だよね。 |
Taro |
ドライ
ええ、不確定要素が多すぎます。 ですから……これは仮定になってしまうのですが……。 |
Drei |
ドライ
『灰の王』はなんらかの方法で、我々の行動を監視し より確実な方法で、指示を飛ばしているのではないでしょうか。 |
Drei |
ドライ
我々のゲーム参加が『灰の王』にとって意味のあることならば 見落としによるゲーム脱落など、許容するとは思えません。 |
Drei |
十三
つまり『灰の王』はどこかで私たちを観ているってことか。 ふん……どこまでも陰気な奴だ。 |
Juusan |
十三
まあでも、だったらこっちは向こうの都合なんか 考えるだけ無駄ってことだね。 |
Juusan |
十三
遠慮せず、外でもどこでも行けばいい。 |
Juusan |
シオリ
そうですわね、いつまでも部屋の中にいては 全身カビが生えてしまいそうです。 |
Shiori |
シオリ
ここは散歩でもして、 少しでもリフレッシュしておきましょう。 |
Shiori |
シオリ
…………。 |
Shiori |
十三
確かに、見落としは許容しない性格みたいだ。 これなら誰だって気付くからね。 |
Juusan |
タロ
確かにそうかもしれないけどさ。 なにも地面にこんなにでかでかと書かなくてもよくない? |
Taro |
タロ
あっ、ねえねえ。 これ書いた人がきっとまだ近くにいるんじゃない? |
Taro |
タロ
その人を見つけて、『灰の王』の居場所を 聞くっていうのはどうかな? |
Taro |
ドライ
聞いて……どうするのです? |
Drei |
タロ
えっ? ほら、探す手間も省けるかな〜って。 |
Taro |
ドライ
ですが、クリスタルを集めなければ謁見はできないのでしょう? ならば、今居場所がわかったとて、さして意味はないかと。 |
Drei |
ドライ
それに……能力者全員に強制的にルールを課せるほど力を持つ者が そのように足のつく方法を選ぶとは思えません。 |
Drei |
ドライ
おそらく体力を無駄にするだけですよ。 |
Drei |
シオリ
ええ、それにどうやら、そんな時間もなさそうですわよ。 |
Shiori |
シオリ
これを見る限り、次の対戦場所はかなり遠いみたいですし。 すぐに移動しないと、間に合わなくなりますわ。 |
Shiori |
十三
場所も時間も、対戦の間隔も指示のやり方も適当か。 自分勝手な奴だな。 |
Juusan |
十三
……本来とは別の理由で、殺してやりたくなってきたよ。 |
Juusan |
タロ
まあ、今までもこんな感じだったしね。 その辺は慣れるしかないかな……。 |
Taro |
タロ
さて、じゃあ。あまりゆっくりもしてられなくなったし、 移動しながら次の対戦の作戦でも考えようか。 |
Taro |
シオリ
では皆さん、荷物をまとめてください。 準備ができたら、すぐに出発しますわ。 |
Shiori |
タロ
はぁ〜、毎日毎日歩いてばっかり。 この世界には列車も魔操船もないのかなぁ……。 |
Taro |
ドライ
魔操船? 初めて耳にする名ですね。 察するにそれは、タロさんの世界の乗り物ですか? |
Drei |
タロ
そうそう。何百人も乗せた大きな船が空を飛んでね。 遠く離れた場所にも、ものの数日で行くことができるんだ。 |
Taro |
タロ
魔素を利用した技術で船体を浮かせるんだよ。 |
Taro |
ドライ
魔操船というのは、私のいた世界で言うところの 飛行機のようなものでしょうかね。 |
Drei |
ドライ
やはり私とあなたの世界は、 随分と様相が異なるようです。 |
Drei |
シオリ
飛行機……ですか。 |
Shiori |
シオリ
不思議なものですわね。私たちは今こうして同じ場所に いるというのに、その生まれも文化も、全然違うなんて。 |
Shiori |
シオリ
そうですわ。 よかったら、皆さんの世界のことを、教えていただけません? |
Shiori |
シオリ
ほら、お互いのことをもっとよく知ることにもできますし。 ちょっとした暇つぶしにもなりますもの。 |
Shiori |
十三
……興味ないね。 話すようなこともないし。 |
Juusan |
ドライ
いいではないですか。 確かにお互いを知ることは、戦力の上昇にも繋がります。 |
Drei |
十三
……はぁ。 いいよ、好きにすれば。 |
Juusani |
ドライ
では十三の承諾も得られたということで。 |
Drei |
ドライ
そうですね……私が思い浮かべる『自分のいた世界』は、 ここよりもずっと緑豊かで、人の多い世界でしたね。 |
Drei |
ドライ
多くの人々が日々の糧のために学び、働くような 世界です。 |
Drei |
ドライ
その中で私は、 イシャナと呼ばれる島で長く暮らしておりました。 |
Drei |
十三
イシャナ……魔術師の島か。 |
Juusan |
ドライ
ご存知でしたか、それは驚きです。 |
Drei |
タロ
ってことは、ドラドラが使ってるのって魔術なの? なんとなく、俺達の使う術式とは違うなーとは思ってたけど……。 |
Taro |
ドライ
ええ、ですがタロさんの技を見る限り、その術式とやらの 基礎構造には、魔術の要素が組み込まれているようです。 |
Drei |
ドライ
これは私の予想ですが、術式を開発した方は かなり魔術に詳しい方だったのではないでしょうか。 |
Drei |
ドライ
おそらくは相当高位の魔術師…… もしかすると、私に近い立場の者かもしれませんね。 |
Drei |
タロ
へえ……それは興味深い話だね。 ドラドラたちの使う魔術って、ドライブ能力とは違うの? |
Taro |
ドライ
似て非なるもの、といった具合でしょうか。 |
Drei |
ドライ
魔術が才能と知識、技術によって編み出される テクニカルなものであるのに対して、 |
Drei |
ドライ
ドライブは魂の力、 各々個人の魂から発せられる力です。 |
Drei |
ドライ
そのドライブによって特殊な魔術が操れたり、常人とは違った 魔術の使い方ができたりすることもありますから、 |
Drei |
ドライ
根源を別にしてはいるものの、 密接なかかわりのある力とも言えますね。 |
Drei |
シオリ
魔術では、どのようなことができるのですか? |
Shiori |
ドライ
色々ですとも。 それこそ魔術師個人の技術と才能に左右されます。 |
Drei |
ドライ
炎や氷といった自然物を操る術に長けている者もいれば、 私のように肉体増強に才を見出される者もいます。 |
Drei |
ドライ
このゲームの中で魔術師と遭遇したならば、 やはり一番は攻撃用の魔術を警戒するべきでしょうね。 |
Drei |
ドライ
私の知る魔術師には、強力な氷の魔術を扱う方がいました。 珍しいものでいうと、重力を操る魔術……なども存在します。 |
Drei |
ドライ
大掛かりな魔術であれば、相応の準備や詠唱、集中が必要に なりますから、そういった隙を狙うという戦法もあるでしょうね。 |
Drei |
タロ
その辺りも術式に似てるんだな。 |
Taro |
タロ
ねえ、じゅうじゅうはどんなところで暮らしてたの? |
Taro |
タロ
たぶん、俺やシオシオがいたところとそんなに大きく違わない 世界なんじゃないかと思うんだけど。 |
Taro |
十三
…………。 |
Juusan |
十三
私が暮らしていたのは……教会だった。 |
Juusan |
十三
ずっとそこにいたから、そこ以外の世界のことは あんまり知らない。 |
Juusan |
シオリ
教会にいたというのは……おひとりでですか? |
Shiori |
十三
違う。 私を妹と呼ぶ女が、ふたりいた。 JuusanRei | |
タロ
妹と呼ぶ……って、お姉さん!? じゅうじゅう、ひとりっこじゃなかったんだ! |
Taro |
十三
……だから、そこでの生活以外は、ほとんど知らない。 私の知ってる外の世界は全部、教会を出てからのものだから。 |
Juusan |
シオリ
そうなのですか……。 なにか事情がおありなのですわね。 |
Shiori |
シオリ
私は暗殺者の一族ですから……なんとなく、わかりますわ。 あなたにはどこか、近いものを感じていますし。 |
Shiori |
シオリ
レイはどうなんですか? あなたのいた世界、気になります。 |
Shiori |
1: フガクのことを話す |
1: |
ドライ
世界の外を航行する船、ですか。 信じがたい技術です。 |
Drei |
ドライ
その船の中に、レイさんの仲間がいるのですね。 |
Drei |
ドライ
世界の外を旅する方たち……ですか。 |
Drei |
ドライ
しかしそのような旅を可能にする船があるとは。 あなたの仲間は、信じがたい知識と技術をお持ちなのですね。 |
Drei |
タロ
でもさすがに、船の中で生まれ育ったわけでは ないでしょ? |
Taro |
タロ
そのフガクっていう船に乗る前は、 どんなところにいたの? |
Taro |
シオリ
――待ってください。 |
Shiori |
シオリ
なにか聞こえます。 …………人の声です。あっちの方向から。 |
Shiori |
十三
敵かもしれない。前に出ないで。 |
Juusan |
タロ
じゅうじゅう!? ひとりで行くと危ないって! くそ、俺たちも追いかけよう! |
Taro |
傷を負った男
うぅ……! |
|
倒れている男
……ぁ……ぐ……! |
|
シオリ
これは……皆さん、ひどい怪我ですわ。 息はあるようですが……下手に動かすのは危険な状況です。 |
Shiori |
シオリ
でも、いったいなにが……いえ。 『なにと戦ったら』こんな状態になるのですか……? |
Shiori |
十三
この感覚……。 こいつら、ドライブ能力者だ。 |
Juusan' |
ドライ
まさか……彼らが我々の対戦相手でしょうか? |
Drei |
ドライ
ドライブ能力者にこれほどの重傷を負わせるということは おそらく怪我を負わせたものたちも、かなりの強者でしょう。 |
Drei |
ドライ
あるいはよほど大勢か、強力な武器を持っているのか……。 |
Drei |
十三
……ひとりだ。 これをやった奴は、ひとりだよ。 |
Juusan' |
タロ
ひ、ひとり!? いやいや、さすがにそれは無理でしょ!? |
Taro |
タロ
4人のドライブ能力者をひとりでこんなにするって どれだけ強くても無理だって! |
Taro |
十三
無理じゃない。圧倒的な力の差だ。 それにこの感覚……。 |
Juusan |
???
あれ? 君、もしかして……。 |
??? |
アナザーダーク=マイ
やっぱりレイだ。 こんなところで会うなんて、奇遇だね。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
そんなに警戒しないでよ。 大丈夫、今回の目的は君じゃない。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
まあ、遊びついでに殺してあげても 別にいいんだけどさ。ククク……。 |
Another Dark Mai |
シオリ
……マイ様? やっぱり、そうだ。マイ様ですわよね!? いえ、でも……そのお姿は……? |
Shiori |
タロ
近づくな!!</style> |
Taro |
タロ
シオシオ……違うよ。『アレ』は……マイマイじゃない。 似てるけど、絶対に違う。なにかもっと、どす黒いモノだ。 |
Taro |
アナザーダーク=マイ
ん? あ〜……そうか。 もしかして君たちは、マイ=ナツメの知り合い? |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
でも……そっか、マイ=ナツメは一緒じゃないんだね。 だったらいいや、君たちも見逃してあげるよ。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
運が良かったね。 もしあいつといたら、一緒に殺してるところだ。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
それより、ちょっとそっちの雑魚どもに用があるんだけど、 そこをどいてくれる? |
Another Dark Mai |
傷を負った男
うぅ……も、もう許して、くれ……。 |
|
シオリ
あっ……た、倒れた方たちから、クリスタルが……! |
Shiori |
アナザーダーク=マイ
まったく、面倒なルールだよ。ギリギリ死なない 状態じゃなきゃ、クリスタルが手に入らないなんて。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
殺せば勝ちにしてくれたらわかりやすいのに。 |
Another Dark Mai |
シオリ
クリスタルを集めてるって…… まさか、あなたもゲームの参加者……? |
Shiori |
タロ
シオシオ!</style> |
Taro |
アナザーダーク=マイ
……あれ? |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
あ〜……そっか、そういうこと。 お前たちも、クリスタルを持ってるんだね。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
だったら、話は別だなぁ……? |
Another Dark Mai |
タロ
うそだろ……なんて殺気だ……! |
Taro |
ドライ
皆さん、下がってください! 彼女は普通ではありません! |
Drei |
ドライ
この気配……これは十聖すら遥かに凌ぐほどの……。 そんな……これほどの力、信じられません……! |
Drei |
アナザーダーク=マイ
よし、決めた。やっぱりお前たちのクリスタルももらおう。 その方が手っ取り早く標的に辿り着けそうだし。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
安心して、すぐに消してあげるからさぁ! |
Another Dark Mai |
十三
消す? おもしろいな……やってみなよ。 |
Juusan |
アナザーダーク=マイ
……へぇ? |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
あれ? お前……その身体、もしかして……。 あぁ〜、そういうこと? |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
歪だね、素体ってやつは。 ……つくりものが、人に口を出すな!! |
Another Dark Mai |
十三
その気配、やっぱり……。 クク……アハハハハハ! |
Juusan |
十三
あぁ……ようやくだ。やっと見つけたよ。 この、ひどく懐かしい、腐った生ゴミみたいな臭い! |
Juusan |
十三
消すだって? いや……お前は私がせん滅する。 私がお前を……『壊して』あげるよ。 |
Juusan |
アナザーダーク=マイ
意外とやるね、人形。 |
Another Dark Mai |
十三
私をそう呼ぶな! |
Juusan |
ドライ
なんという戦いでしょう…… あの速度では、手出しすらできません。 |
Drei |
ドライ
我々では、逆に足手まといになってしまいます……! |
Drei |
シオリ
でも、十三が押しているようにも見えますわ。 あのまま戦いが続けば、勝てるのでは!? |
Shiori |
1: 十三の動きが…… |
1: |
ドライ
レイさんの言う通りです。 今の十三は冷静さを欠いている……焦りすぎです。 |
Drei |
ドライ
確かに……十三の動きが僅かに鈍くなっている。 このままでは、まずいですよ。 |
Drei |
ドライ
なにを焦っているのです、十三!? それは、あなたの本来の動きではありません……! |
Drei |
十三
私の前で、その気配を撒き散らすなぁ!! |
Juusan |
アナザーダーク=マイ
なにを怒っているのかは知らないけど……訳アリかな? |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
でも、いいの? 本当にそんな状態で……僕の攻撃を避けられるのかなぁ!? |
Another Dark Mai |
十三
くっ……ちぃっ……!? |
Juusan |
アナザーダーク=マイ
さよなら……人形。 |
Another Dark Mai |
十三
――ッ!? |
Juusan' |
アナザーダーク=マイ
くっ……だれだ!? |
Another Dark Mai |
Es
何者かは知りませんが、その力を有する者を 見過ごすことはできません。 |
Es |
アナザーダーク=マイ
そっちこそ誰? 僕は戦いの邪魔をされるのが嫌いなんだ。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
邪魔した代償として、死んでもらうけどいいよね? |
Another Dark Mai |
???
おもしろいな……その話、僕にも聞かせてもらおうか。 |
??? |
タロ
うそ、ジンジン!? |
Taro |
ジン
邪魔をされるのが嫌い、だと? ……奇遇だな。僕もだ。 |
Jin |
ジン
見たところ、貴様が戦っているのは僕たちの次の対戦相手だ。 となると貴様は、僕にとって邪魔者ということになる。 |
Jin |
ジン
邪魔の代償として、貴様も死んでみるか? |
Jin |
アナザーダーク=マイ
へぇ……驚いた。 お前はジン=キサラギか。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
なんてことだ。今日はものすごく運命的な日だよ。 こんなにも知ってる顔ばかりに会えるなんて。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
でも……さすがにこれだけウジャウジャ湧かれると ちょっと面倒くさいな。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
よし、クリスタルは別の奴から奪うことにしよう。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
どうせ遅かれ早かれ、君たちとはまた会うだろうからね。 君たちを殺すのは……もう少し、先だ。 |
Another Dark Mai |
ジン
……行ったか。 |
Jin |
ジン
さて……どういう状態だ、これは? |
Jin |
第5節 『誰かを求めてる②』/ 5. Wishing For Someone - 2
Summary | |
---|---|
ジンとEsに続き現れたノエル、ひなた。彼
らが次の対戦相手だったが、ジンは灰の王に 向かって呼びかけ、対戦の中止を要求する。 |
タロ
いや〜まさかこんなところでジンジンと再会できるなんて。 やっぱり持つべき者は親友だよ。ねぇ、ジンジン。 |
Taro |
ジン
あいにくだが、再会を喜んでいる暇などない。 僕とお前は、今はクリスタルを奪い合う関係だ。 |
Jin |
ジン
それに……お互い、同じところから来たとも限らない。 |
Jin |
タロ
え、それってどういうこと? |
Taro |
ジン
……いや、お前は知らなくていいことだ。 |
Jin |
ジン
それよりも、何故その女がここにいる? |
Jin |
十三
…………。 |
Juusan |
ドライ
彼女は十三。私たちの仲間です。 |
Drei |
ドライ
先ほども我々を助けるため、彼女がひとりで あの槍の少女を止めてくれました。ですから……。 |
Drei |
ドライ
よろしければ、その殺気を収めていただけないでしょうか。 |
Drei |
ジン
……いいだろう。 |
Jin |
ジン
だが、覚えておけ。その女は危険な存在だ。 あのマイ=ナツメに似た女と同様にな。 |
Jin |
シオリ
マイ様……。 |
Shiori |
???
キサラギ少佐〜! |
??? |
ノエル
ふぅ……やっと追いつきましたぁ……。 |
Noel |
ノエル
ひどいですよ、キサラギ少佐も、エスさんも。 私たちをあんな森の中に置き去りにするなんて……。 |
Noel |
ノエル
私はともかく、ひなたさんは少佐たちみたいに 速く走れないんですから。 |
Noel |
ひなた
はぁ、はぁ……ご、ごめんねノエルちゃん…… 私、足遅くて……。 |
Hinata |
シオリ
ノ、ノエル!? どうしてあなたまでここにいるんですか!? |
Shiori |
ノエル
えっ? あれ? シオリ? うわ〜、ひさしぶりだねぇ! 元気だった!? |
Noel |
シオリ
あ、相変わらず能天気ですわね……。 先ほどまで、とんでもない事態だったというのに。 |
Shiori |
ノエル
え? とんでもないって? あれ、みんななにかあったんですか? |
Noel |
Es
はい、実は……。 |
Es |
ノエル
ええ!? マイがタロ先輩たちを殺そうとした!? |
Noel |
シオリ
違いますわ、ノエル。あれはマイ様によく似た、別人です。 あれはシオリの知るマイ様ではありませんもの。 |
Shiori |
ノエル
そう……とにかく、シオリたちが無事でよかった。 |
Noel |
ノエル
えっと、十三ちゃん……だっけ? あなたも大変だったね。 |
Noel |
十三
……っ……いや、たいしたことないから。 |
Juusan |
ノエル
……? そう? |
Noel |
ノエル
でも、こんな人気もない場所でなにをしてたの? あ〜、もしかして道に迷っちゃったとか? |
Noel |
シオリ
えぇと、それはですね……。 |
Shiori |
ジン
そいつらは、次のゲームの対戦場所に向かうところだった。 そしてその対戦相手とは……僕たちのことだ。 |
Jin |
ひなた
ええっ!? そんな……ノエルちゃんのお友達と、 戦わなきゃいけないの? |
Hinata |
ひなた
人違いってことは……ないんですよね……? |
Hinata |
ジン
ならばこのメモを見せてやればいい。 |
Jin |
タロ
……俺たちに提示された場所と時間と、同じだ。 |
Taro |
ジン
そういうことだ。 |
Jin |
ジン
これだけ人気のない場所でドライブ能力者同士が遭遇して まったく無関係の偶然というはずがないだろう。 |
Jin |
ドライ
……では、ここで始めますか? あなた方には借りがあるとはいえ、手加減はできませんが。 |
Drei |
ひなた
ま、待って! この人たち、すごく危ない目にあった あとなんでしょう? |
Hinata |
ひなた
対戦時刻まではまだ時間があるし……まずは手当てをしたり、 ゆっくり休んでもらったほうがいいんじゃないでしょうか。 |
Hinata |
ひなた
こんな状態で戦わなくちゃいけないなんて……。 |
Hinata |
ドライ
…………。 |
Drei |
ジン
…………。 |
Jin |
ジン
……ふん。 |
Jin |
ジン
確かに、予定外の邪魔が入った以上、 この状況のまま戦うのは公平とは言えまい。 |
Jin |
ジン
今回のゲームは中止だ。それでいいな? |
Jin |
タロ
ええ? いやでもジンジン? そんな中止って、俺らが勝手に決めていいの……? |
Taro |
タロ
ルールは『灰の王』が全部決めてるんだから、そんな勝手な ことをしたら、どっちも失格なんてことになるかもしれないよ。 |
Taro |
ジン
『灰の王』とやらは、僕たちの動きを把握している。 この世界で奴に知られず、何かをすることは不可能だ。 |
Jin |
ジン
そうだろう!? 『灰の王』よ!</style> |
Jin |
ジン
僕たちはこのゲームの中止を要求する!</style> 不満があるのならそう知らせろ!</style> |
Jin |
タロ
えええ〜……ジンジンってば相変わらず強引なんだから〜。 でも本当にそんなやり方で大丈夫なのかなぁ。 |
Taro |
シオリ
……あ。 どうやらその心配は杞憂みたいですわよ。 |
Shiori |
シオリ
ほら、野生のリスがそこに。口になにかくわえていますわ。 |
Shiori |
タロ
ほんとだ! メモに次の対戦場所と時間が書いてあるよ! |
Taro |
ノエル
こっちも、鳥が落とした木の実に、文字が彫られてます! |
Noel |
ひなた
王様が許してくれたってことですよ、きっと。 |
Hinata |
十三
フン。命拾いしたね。 |
Juusan |
ジン
ああ、お互いにな。 |
Jin |
タロ
えっと、じゅうじゅう? そんな怖い顔して……どうしたの? |
Taro |
ドライ
おそらく、十三は先ほどの戦いで相当消耗しています。 今の状態で戦えば、我々はおそらく負けていたでしょう。 |
Drei |
タロ
じゅうじゅうが? 全然そんな風には見えないけど……。 |
Taro |
ドライ
当然でしょう。我々はともかく、戦うかもしれない相手の前で 疲労を気取られるような下手を彼女が打つはずがありません。 |
Drei |
ドライ
十三は戦闘の申し子のような人です。 |
Drei |
ドライ
しかしあのジン=キサラギという者も、 おそらく十三の状態に気付いていた。 |
Drei |
ドライ
戦えば容易くクリスタルを奪えていたはずですが…… 彼は崇高な精神の持ち主ですね。さすがタロさんのご友人です。 |
Drei |
タロ
へへ……うん、そうなんだ。 ジンジンはちょっと愛想はないけど、いい奴なんだよ。 |
Taro |
ジン
……話は以上だ。 |
Jin |
ジン
これ以上貴様らと馴れ合うつもりはない。 縁があればまた会うこともあるだろうがな。 |
Jin |
ノエル
あっ、もう行くんですかキサラギ少佐? 待ってください、皆まだ話が……。 |
Noel |
ノエル
あ、ありがとうございました皆さん! ひなたちゃん、行こう! また置いて行かれちゃう! |
Noel |
ひなた
う、うん! それじゃあ、この先も気を付けてくださいね! |
Hinata |
ひなた
ジンさん、待って〜! 置いていかないで〜! |
Hinata |
Es
…………。 |
Es |
Es
最後にひとつ、お聞きしても良いでしょうか。 |
Es |
Es
あなたたちが『灰の王』を目指すのはやはり、 願望を叶えるため……ですか? |
Es |
ドライ
タロさんとシオリさんはそうですが、私と十三、 それにレイさんは違います。 |
Drei |
ドライ
私たちは、『灰の王』に会うことそのものが目的です。 |
Drei |
Es
……やはり。 あなたたちもそうですか。 |
Es |
ドライ
私たちも……とは? |
Drei |
Es
我々のチームも、そうです。 |
Es |
Es
私も、ひなたも、ジンも、ノエルも。 私たちは、記憶にない『なにか』を探しています。 |
Es |
Es
そしてその手がかりが『灰の王』にあると予感しているんです。 それが私たちがゲームを続ける理由です。 |
Es |
十三
記憶にない『なにか』……。 |
Juusan |
Es
あなたたちにも、なにかある気がしました。 |
Es |
Es
もしかしたら、この出会いには意味があるのかもしれません。 |
Es |
Es
……ジンの言っていた通り、また会うこともあるかもしれませんね。 |
Es |
ドライ
……行ってしまわれましたか。 |
Drei |
タロ
はぁ……ジンジンともう少し話したかったなぁ。 |
Taro |
シオリ
気持ちはわかりますけれど、 今しがた言われたばかりではないですか。 |
Shiori |
シオリ
この先、またどこかで会えるかもしれないって。 |
Shiori |
タロ
そうだね。そのときは敵同士かもしれないけど。 ……ジンジンと戦うのは、ちょっと嫌だなぁ。 |
Taro |
シオリ
そうですわねぇ……。 |
Shiori |
シオリ
とりあえず、どこか休める場所に移動しましょう。 |
Shiori |
シオリ
次の対戦は明日ですし、それまでに傷の手当ても補給も、 しっかり行っておきたいですわ。 |
Shiori |
タロ
そうだね! あ〜、俺もうお腹ペコペコだよ。 |
Taro |
ドライ
確かに、慌ただしく出てきてしまいましたからね。 ダイナーへ行きましょう。 |
Drei |
タロ
そうと決まれば、さっさと移動しよっか! ほら、行くよ! レイもじゅうじゅうも! |
Taro |
十三
さっきの女……どこかで見覚えがあるような……。 |
Juusan |
第5節 『誰かを求めてる③』/ 5. Wishing For Someone - 3
Summary | |
---|---|
対戦は中止され、傷の手当と補給のためダイ
ナーへと向かう道中、ナイフを手にした謎の 男の襲撃を受ける。一行も応戦することに。 |
|
襲撃者が本気でないことに気づき、十三は刀
を下ろす。アベンジと名乗ったその男は非礼 を詫び、手を組みたいと話を持ち掛ける。 |
ドライ
…………。 |
Drei |
タロ
どうしたの、ドラドラ? さっきから難しい顔してるけど、なにか考え事? |
Taro |
ドライ
……エスさんの言葉が少し気になりまして。 |
Drei |
シオリ
ああ……例の『さがしもの』のことですか? |
Shiori |
シオリ
不思議ですわよね。シオリの知る限り、ゲームの参加者は皆、 願望を叶えるために『灰の王』を探していました。 |
Shiori |
シオリ
けれど、あの方々は違いました。 なにかを探すために、『灰の王』を目指している、と。 |
Shiori |
シオリ
確か、ドライと十三も同じようなことを おっしゃっていましたよね。 |
Shiori |
ドライ
『灰の王』とは、いったい何者なのでしょう。 私の知る誰かなのか。十三の殺すべき者なのか。 |
Drei |
ドライ
それともあの者たちの探している者なのか。 あるいは、それらがすべて同一人物を指しているのか。 |
Drei |
ドライ
なにかしらの手がかりとなれば良いのですが。 ……妙な不安のようなものが拭えません。 |
Drei |
十三
今いない奴のことなんか、わかるわけないよ。 そんなの考えるだけ時間の無駄だ。 |
Juusan |
十三
その『灰の王』に会えば、全部わかるんでしょ? だったら私たちはただ、そいつを目指せばいい。 |
Juusan |
十三
それよりも……気になるのは、あの槍の女だ。 |
Juusan |
十三
アイツが纏っているアレは…… アレは、私の分身と同じ気配がした。 |
Juusan |
1: 分身って、どういうこと? |
1: |
十三
黒くて、暗くて、強大な力だ。 私であって、私じゃない、もうひとつの姿……。 |
Juusan |
十三
かつて私は、その力の『心臓』だった。 |
Juusan |
十三
確信はない。だけど、近しいモノなのは間違いないね。 昔の話だ。私はそいつの『心臓』だった。 |
Juusan |
十三
その力は……そいつは、こう呼ばれてるよ。 |
Juusan |
十三
……『災厄』ってね。 |
Juusan |
1: 災厄? それってどこかで…… |
1: |
十三
――ッ!! |
Juusan' |
十三
下がれ、レイ!! |
Juusan |
シオリ
敵ですわ! タロ先輩、周囲の警戒を! |
Shiori |
タロ
なんだこれ、ナイフ!? |
Taro |
タロ
くそっ、全然気配が読めない! どこから攻撃してきたんだ!? |
Taro |
ドライ
そこです! ヌゥン!!</style> |
Drei |
???
……ほう。 お前、魔術師か。 |
??? |
シオリ
突然背後から攻撃してくるなんて卑怯ですわ! あなた、いったい何者ですか!? |
Shiori |
???
…………。 |
??? |
十三
答えるつもりはないって。 |
Juusan |
十三
その殺気……へぇ、面白いね。 いいよ、来なよ。少しだけ、遊んであげる。 |
Juusan |
十三
……やめた。 |
Juusan |
シオリ
やめって……どういうことですか? |
Shiori |
シオリ
この方はドライブ能力者で、おまけに レイを殺そうとしたんですよ! |
Shiori |
ドライ
……殺気ですよ。ひとりで4人を襲撃する割に この方の殺気は、あまりにも薄い。 |
Drei |
ドライ
まるで最初から本気ではなく、 私たちを試そうとしているようでした。 |
Drei |
???
どうやら、運だけで生き残ってきた能力者ではないようだな。 |
??? |
十三
目的はなに? まさか興味本位ってわけじゃないよね。 |
Juusan |
十三
まあ、返答によってはやっぱり殺すことになるけど。 |
Juusan |
アベンジ
俺はアベンジ。 試すような真似をした非礼を詫びよう。 |
Avemge |
アベンジ
だが、試させてもらったのには理由がある。 お前たちを強者と見込んで、話をさせてくれ。 |
Avemge |
十三
……いいよ、続けて。 |
Juusan |
アベンジ
少し前から様子を見させてもらっていた。 お前たちは、『灰の王』を目指しているそうだな。 |
Avemge |
シオリ
そうですけど……あの…… 様子を見せてもらったって……どこから? |
Shiori |
アベンジ
お前たちがダイナーを出た頃からだ。 |
Avemge |
シオリ
ダイナー……って、朝からじゃないですか!! 信じられない! ストーカー! あなたストーカーですか!? |
Shiori |
十三
微かに、ダイナーを出てから妙な感覚があった。 アレはアンタだったのか。 |
Juusan |
十三
それで? 私たちが『灰の王』を目指していたら、 なんだっていうの。 |
Juusan |
アベンジ
単刀直入に言う。俺と手を組んで欲しい。 |
Avemge |
十三
ああ、そっちか。残念、じゃあね。 |
Juusan |
アベンジ
お前たちは、願望を叶えるためではなく 『灰の王』に会うことを目的としているな? |
Avemge |
アベンジ
俺も同じだ。 |
Avemge |
十三
……どういうこと? |
Juusan |
アベンジ
俺はこの世界に来てから、ずっと『灰の王』に 疑問を持っていた。 |
Avemge |
アベンジ
何故か周りの奴らは皆、この世界を疑いもせず 己の願望に囚われ、ゲームに夢中になっていたが。 |
Avemge |
アベンジ
この世界の中央にそびえ立つと言われている『塔』のことは 知っているな? |
Avemge |
ドライ
ええ、聞いています。 |
Drei |
アベンジ
『灰の王』は塔の中にいるそうだが、 その姿を見た者は誰もいない。 |
Avemge |
アベンジ
『そいつ』は塔の中で、このゲームの勝者を待つのだという。 |
Avemge |
アベンジ
だが……なぜそんなことをする? |
Avemge |
タロ
なぜって……願望を叶えるやつを決めるためだろ? |
Taro |
アベンジ
違う。そこじゃない。 ならば戦いで勝者だけを決めればいいはずだ。 |
Avemge |
アベンジ
だが『灰の王』は、この世界に妙な枷を嵌めた。 |
Avemge |
十三
……クリスタル、か。 |
Juusan |
アベンジ
そうだ。クリスタルとはなんだ? なぜゲームの勝者にそいつを奪わせる? |
Avemge |
アベンジ
……先日、俺のクリスタルを狙った ドライブ能力者がいた。 |
Avemge |
アベンジ
勝ったのは俺だ。相手のクリスタルを手に入れた。 そして俺は、そのクリスタルを破壊した。 |
Avemge |
アベンジ
……中に詰まっていたのは、なんだと思う? |
Avemge |
ドライ
魔力……? いえ、まさか……。 |
Drei |
アベンジ
そうだ。中に詰まっていたのは、ドライブだった。 |
Avemge |
アベンジ
クリスタルとは、持ち主のドライブを吸って成長する 強力なエネルギータンクだ。 |
Avemge |
アベンジ
ではなぜ、『灰の王』はドライブを集めさせるのか……。 その理由があるはずだ。 |
Avemge |
1: すべてのドライブを奪うため? |
1: |
アベンジ
そうだ。『灰の王』は、この世界にドライブ能力者を集め、 そいつらからドライブを奪おうとしている。 |
Avemge |
アベンジ
そうだ。『灰の王』は大量のドライブを集めて、 なにかに使うつもりだ。 |
Avemge |
アベンジ
奴が集めたドライブを使ってなにをするのか…… そこまでは俺もまだ掴めてはいない。 |
Avemge |
十三
へぇ、おもしろい仮説だ。 |
Juusan |
十三
ドライブの力をなにかに使う……か。 やっぱりそいつは、私が殺す奴かもしれないな。 |
Juusan |
ドライ
なにか心当たりでも? |
Drei |
十三
……どうかな。 |
Juusan' |
十三
だけど話は大体わかったよ。 それで? 組む条件はなに? |
Juusan |
アベンジ
俺がお前たちの眼となる。 だからお前たちは、ゲームを進めて力を集めて欲しい。 |
Avemge |
十三
なぜひとりで力を集めないの? |
Juusan |
アベンジ
ゲームに参加すれば、否応なしに次の対戦を迫られ、 自由には動けない。 |
Avemge |
アベンジ
だがゲームに参加する条件はふたり以上のチームだ。 単独で動く限り、俺は自由に情報を集められる。 |
Avemge |
ドライ
単独ではゲームに参加できない……? |
Drei |
ドライ
なるほど、あの槍の少女が自由に動き回っていたのは、 そういうことですか。 |
Drei |
ドライ
彼女はゲームのルールとは異なる形で クリスタルを集めている……。 |
Drei |
アベンジ
塔を目指せば目指すほど戦いは厳しくなる。 情報収集はそちらにとっても悪い話ではないはずだ。 |
Avemge |
アベンジ
どうだ、俺と組まないか。 |
Avemge |
十三
だってさ。どうする? |
Juusan |
1: 僕(私)が決めていいの? |
1: |
十三
他に誰がいるの? アンタがうちのリーダーだろ。 |
Juusan |
十三
そう……なら決まりだね。 |
Juusan |
十三
へぇ、即決するなんて意外だな。 |
Juusan |
タロ
ちょっ……ちょっと待って!? |
Taro |
タロ
『灰の王』はゲーム全体を把握しているんだから 俺たちの会話だって聞いてるんじゃないの? |
Taro |
タロ
これってルール違反じゃないの? 本当に大丈夫? |
Taro |
ドライ
おそらく心配はいりませんよ。これがルール違反ならば、 アベンジさん自身、とっくに消えてるはずです。 |
Drei |
アベンジ
『灰の王』は世界にルールを敷いてはいるが、 ゲームを壊さない限りは寛容だ。 |
Avemge |
アベンジ
……契約成立だな。 |
Avemge |
アベンジ
情報があれば共有する。 お前たちは『灰の王』の指示に従い、塔を目指せ。 |
Avemge |
ドライ
あとひとつだけ、お聞きしたいのですが。 |
Drei |
ドライ
あなたは我々をずっと見ていたと言いました。 ならば、先ほど我々が出会ったチームも見たはず。 |
Drei |
ドライ
なぜ、彼らではなく私たちに声を掛けたのですか? |
Drei |
アベンジ
……知っている奴がいた。 そいつには、同じことを言えない。それだけだ。 |
Avemge |
ドライ
そうでしたか……。 |
Drei |
アベンジ
お前は魔術師だったな。なにかの時は、魔術で合図をしろ。 こちらは、用がある時だけ姿を現す。 |
Avemge |
アベンジ
塔に入るには、お前たちが頼りだ。……負けるなよ。 |
Avemge |
ドライ
なんとも強引な人だ……。 おや? シオリさん、浮かない顔ですが考え事ですか? |
Drei |
シオリ
……いえ。ただ……あの人は、なぜそうまでして 灰の王を目指すのか、と思いまして。 |
Shiori |
十三
本心を言うつもりはなかったんだろうね。 そこは、お互い様だ。 |
Juusan |
タロ
まあ、いま考えたってわからない……ってことで。 |
Taro |
タロ
あ〜、今日は色々ありすぎて本当に疲れたよ。 ほら、ダイナーはもうすぐそこだ。早く進もう。 |
Taro |
シオリ
……そうですわね。行きましょう。 |
Shiori |
第6節 『大事な人だから①』/ 6. Because You're Important To Me - 1
Summary | |
---|---|
ココノエたち技術者がフガクで時間と戦う
中、シエルは無力感に歯がゆさを覚えてい た。テイガーはそんな彼女に言葉をかける。 |
ココノエ
おい、もっと簡略化しろ。コードが複雑すぎる。 余計な負荷は少しでも減らせ。処理を溜めさせるな。 |
Kokonoe |
今にも倒れそうなスタッフ
……す、すみません。 |
|
ココノエ
おい、倒れるなよ。まだやれるはずだ。 お前がここにいるのはなんのためだ? 手を動かし続けろ。 |
Kokonoe |
ココノエ
倒れたら特別に、体力回復のキャンディーを分けてやる。 そしたら起きてすぐにまた手を動かせ。わかったな? |
Kokonoe |
今にも倒れそうなスタッフ
はい……わ、わかりました! |
|
テイガー
……他所のスタッフを死なせるなよ。 さすがに無茶をさせすぎではないのか? |
Tager |
ココノエ
そんなことを気にかけている余裕はない。 とにかく今回は、時間との勝負なんだ。 |
Kokonoe |
テイガー
……それは、そうだが。 |
Tager |
カガミ
いいんだ、テイガー。 |
Kagami |
カガミ
ココノエの言う通り、我々には時間がない。 間に合わなければレイを失うかもしれない。 |
Kagami |
カガミ
そうなったら、なにもかもが水の泡だ。 うちのスタッフもきついだろうが、踏ん張ってもらうしかない。 |
Kagami |
ココノエ
私のクローンでも作っておくべきだったな。 それならもっと作業効率が上がったろうに。 |
Kokonoe |
カガミ
同感だ。 私もラーベ以外に私自身を複製しておくべきだったか。 |
Kagami |
カガミ
とはいえ、自分自身と方針の違いでも生じたら 面倒なことこの上ないしな……。 |
Kagami |
テイガー
ココノエがふたり以上存在するなど考えたくもない。 勘弁してくれ。 |
Tager |
テイガー
平和的に話が進むとは思えないし、なにより私の体がもたん。 |
Tager |
ココノエ
なんだと。その言い方だと、まるで私がいつも お前に苦労ばかりかけているかのようではないか。訂正しろ。 |
Kokonoe |
カガミ
その一言で、お前の日々の苦労が窺えるようだ。 どうだ、ひと段落したらうちに職場を変えないか、テイガー。 |
Kagami |
テイガー
考えておこう。 |
Tager |
ココノエ
この体たらくの現場だぞ。私のところよりずっと過酷じゃないか。 あと、目の前で引き抜きを画策するんじゃない。 |
Kokonoe |
カガミ
それでもなお移動したいほどそっちが過酷かもしれないだろうが。 |
Kagami |
カガミ
ん、ココノエ、こっち終わった。 そっちの続きを引き受けるから、お前はタカマガハラを見てくれ。 |
Kagami |
ココノエ
わかった。あとは任せる。 |
Kokonoe |
テイガー
……こういう場面だと、どちらも頼もしい上司のようなんだがな。 |
Tager |
シエル
…………。 |
Ciel |
テイガー
…………。 |
Tager |
カガミ
……ああ、シエルか。また来ていたんだな。 |
Kagami |
テイガー
ずいぶんと気落ちしているようだな。 ……無理もないが。 |
Tager |
カガミ
あの子があそこまで沈んだ顔をしているのは、初めて見た。 普段なら、いい傾向だと喜ぶんだが、今はそれどころじゃないな。 |
Kagami |
テイガー
……ふむ。 |
Tager |
テイガー
シエル=サルファー。 |
Tager |
シエル
……テイガーさん。 |
Ciel |
テイガー
レイのことが気にかかるのか。 |
Tager |
シエル
……はい。 |
Ciel |
シエル
皆さんが必死に頑張ってくださっている中で、こんな顔をして うろうろしていては、士気に関わります。推奨されない行動です。 |
Ciel |
シエル
ですが……どうしても……普段通りにできないのです。 |
Ciel |
テイガー
……そうか。 気持ちはわかる。 |
Tager |
シエル
………私にはなにもできません。 |
Ciel |
シエル
レイさんが大変な状況に陥っているというのに、 安全なフガクで時間を待つことしかできない。 |
Ciel |
シエル
私がこうしていられるのは、全てレイさんのおかげ なのに……そのレイさんは……! |
Ciel |
テイガー
お前がここに存在していることが、レイの功績なら、 その功績をお前が否定するものではない。 |
Tager |
シエル
否定、するつもりは……。 |
Ciel |
テイガー
そうか? お前がなにもできないと自分を責めることは、 お前を助けた者の意向に反するとは思わないか? |
Tager |
テイガー
レイはそんなことのために お前を助けたのだと思うか? |
Tager |
シエル
…………思いません。 |
Ciel |
テイガー
ではなぜ助けたと思う? |
Tager |
シエル
え……? |
Ciel |
シエル
それは……ええと…… 私が、任務の遂行に必要だから……でしょうか。 |
Ciel |
テイガー
きちんとレイの人柄や、 性質を考えたうえでの結論か? |
Tager |
シエル
…………。 |
Ciel |
シエル
……私の答えは、不適切だと思います。 |
Ciel |
シエル
レイさんは……もっと、任務とは違う 道徳的な観点から私を助けたのだと思います。 |
Ciel |
シエル
それはつまり……あの方が、優しいから……。 私を生かそうと思ってくれたから……。 |
Ciel |
テイガー
そうだな。つまりレイにとってお前は、 そうするに足るほどの存在ということだ。 |
Tager |
シエル
……私が……。 |
Ciel |
テイガー
レイは助けるべき者を助けた。 では助けられたお前は、どうする? |
Tager |
シエル
レイさんを助けたいです! 今すぐにでも! |
Ciel |
テイガー
今すぐは無理だ。わかっているな。 では今のお前がするべきことはなにか。 |
Tager |
テイガー
それは、いざレイを助けに向かうとなったときに、 万全の態勢で臨めるよう自らを整えることではないか? |
Tager |
シエル
は、はい。わかります。わかっては、いるのです……。 |
Ciel |
テイガー
だが、己がコントロールできないか。 |
Tager |
シエル
はい……。 |
Ciel |
テイガー
それはよくないな。兵士としては致命的だ。 |
Tager |
テイガー
己をコントロールできないまま、戦場へ赴けば、 思わぬところで味方を窮地に追いやることになりかねない。 |
Tager |
テイガー
お前の場合、味方とはつまりレイのことだ。 |
Tager |
シエル
……っ! |
Ciel |
テイガー
だが、だからといって無理に自分を押し殺したり、 考えすぎたりするな。 |
Tager |
テイガー
心を殺すべきじゃない。人を動かすのは、心だからだ。 |
Tager |
シエル
心……。 |
Ciel |
テイガー
……そうだな。 シエル、お前は何故、レイを助けたいんだ? |
Tager |
シエル
それは……私がレイさんの護衛だからです。 護衛対象の救出は、最優先任務です。 |
Ciel |
テイガー
任務だから、レイを助けるのか? 理由はそれだけか? 己にきちんと聞いてみろ。 |
Tager |
シエル
己に……ですか? |
Ciel |
シエル
…………私は。 |
Ciel |
シエル
私が、レイさんを助けたいのは…… レイさんに、会いたいからです。 |
Ciel |
シエル
レイさんがいなくなったら、 嫌だからです……。 |
Ciel |
テイガー
なぜ、嫌だと思うんだ? 任務に失敗するからか? |
Tager |
シエル
違います、一緒にいたいからです。 |
Ciel |
シエル
もっとレイさんと一緒にいて、 もっと色々な場所に行きたいからです。 |
Ciel |
シエル
…………。 |
Ciel |
シエル
……私は、レイさんと一緒に……いたいのですね。 |
Ciel |
テイガー
それがお前の『心』のようだな。 |
Tager |
シエル
……レイさんは、いつも私を気遣ってくれます。 力を貸してくれて、力を使ってくれます。 |
Ciel |
シエル
私にとって、レイさんは唯一の人です。 だから、助けたい。会いたいです。 |
Ciel |
テイガー
それがわかれば、不安に思うこともないだろう。
じきに準備は整い、お前は |
Tager |
テイガー
|
Tager |
テイガー
そのために、今のお前ができることはなんだ。 お前は本当に、今なにもできないのか? |
Tager |
シエル
……いいえ。 |
Ciel |
シエル
|
Ciel |
シエル
……まだ、胸のあたりがざわざわとしていて、 落ち着きませんが……。 |
Ciel |
シエル
全てがレイさん救出に繋がると信じて…… できることを、やります。 |
Ciel |
テイガー
それでいい。 |
Tager |
テイガー
自分を信じろ。お前は強い。 お前が行けば、必ずレイを助けることができる。 |
Tager |
テイガー
どんなことがあろうと、成し遂げてみせるだろう? |
Tager |
シエル
はい。 必ず。 |
Ciel |
テイガー
……いい目になった。 |
Tager |
テイガー
それだけの奮起をさせるのだ。 お前にとってレイは、大事な存在なのだな。 |
Tager |
シエル
……大事……。 |
Ciel |
シエル
はい。大事な人です。 |
Ciel |
シエル
ありがとうございます、テイガーさん。 私、ひとまずトレーニングルームへ行ってきます。 |
Ciel |
テイガー
ああ。訓練相手が必要なときは、声をかけるといい。 |
Tager |
シエル
はい。そのときは、よろしくお願いします。 |
Ciel |
シエル
失礼いたします。 |
Ciel |
テイガー
……行ったか。 これで、前向きに動いてくれるならいいんだが……。 |
Tager |
不健康そうなスタッフ
すみませんテイガーさん。 ココノエ博士がお呼びです。 |
|
テイガー
わかった、今行く。 |
Tager |
テイガー
やれやれ、一難去って一難か。 無理難題を聞くのも、部下の仕事だな。 |
Tager |
第6節 『大事な人だから②』/ 6. Because You're Important To Me - 2
Summary | |
---|---|
十三たちの次の対戦者はバレット、アハト、
ライチ、マコト、そしてマイだった。シオリ は想い人と敵する立場での再会に動揺する。 |
タロ
ふぅ……あのガレキの山を越えたら、 対戦の指定場所だと思うよ。 |
Taro |
十三
それ、さっきも聞いた。 |
Juusan |
タロ
あ、あはは……そうなんだよねぇ。 |
Taro |
タロ
この辺り、地形が似てて。 地図に描いてある場所がどこなのかよくわからないんだ。 |
Taro |
シオリ
次はぜひ、もっとわかりやすくてランドマーク的なものが ある場所での対戦を希望しますわ……。 |
Shiori |
シオリ
これじゃあ、対戦までにへとへとになってしまいそう。 |
Shiori |
ドライ
それでなくても、寝ても覚めても戦いを続けるばかりの 日々ですからね……。 |
Drei |
ドライ
肉体的のみならず、精神的な疲労も蓄積してくるでしょう。 レイさんは、大丈夫ですか? |
Drei |
十三
こんなこと、いつまで続けなくちゃいけないんだ? いい加減、飽きてきた。 |
Juusan |
十三
クリスタルなんかなくったって、さっさと『灰の王』がいる っていう塔に乗りこんじゃえばいいのに。 |
Juusan |
タロ
俺もそう思ったことがあったんだけど…… どうやら駄目みたいなんだ。 |
Taro |
ドライ
駄目、というと? |
Drei |
タロ
じゅうじゅうが言ったみたいに、直接塔に乗り込んで 『灰の王』に会いに行こうとした連中がいたらしいんだ。 |
Taro |
タロ
だけど塔の周りには障壁があって、 資格のある人でないと入れないようになっていた。 |
Taro |
タロ
だからその人たちは障壁を壊して、無理矢理中に入ろうと したんだ。そうしたら……消えちゃったんだって。 |
Taro |
十三
消えた? 対戦に負けたときみたいに? |
Juusan |
タロ
たぶんね。俺が直接その現場を見たわけじゃないから、 はっきりしたことはわからないけど。 |
Taro |
シオリ
ルールを破ろうとしたから、失格とみなされた…… ってことなんでしょうか。 |
Shiori |
タロ
そういう感じなんじゃないかな。 |
Taro |
十三
所詮噂話だろ。ルール違反した奴らが全員消えたって いうんなら、なんで消されたってことがわかるんだ。 |
Juusan |
タロ
俺もそれは疑問に思ったけど……消されたのは 塔の障壁を攻撃した人だけだったらしいよ。 |
Taro |
タロ
現場に居合わせたけど、 攻撃はせずに残った人の証言なんだって。 |
Taro |
ドライ
楽な近道はない、ということですね。 |
Drei |
ドライ
我々はルールにのっとって、 王に認められるまで戦い続けるしかない。 |
Drei |
十三
面倒だな……。 |
Juusan |
ドライ
急がば回れと申しますから。 ああ、ほら。今度は合っていたようです。 |
Drei |
ドライ
対戦相手がいらっしゃっていますよ。 |
Drei |
バレット
お前たちが次の対戦相手か。 |
Bullet |
アハト
今回は5人? 私たちと同じね。 |
Acht |
タロ
全員女性のチームか……て、あれ? |
Taro |
シオリ
マイ様!?</style> |
Shiori |
マイ
シオリ! それに……タロ先輩まで……! |
Mai |
シオリ
マイ様ーーーーーーーーー!!!!!!</style> |
Shiori |
マイ
うわっ、わっ! シオリ、急に飛びついたら危ないって。 |
Mai |
シオリ
ああ、今度こそ本物のマイ様ですわ! あ〜ん、マイ様、お会いしたかったですぅ〜! |
Shiori |
シオリ
まさかこんな異世界で出会えるなんて、 私たち運命で繋がっているとしか思えませんわ! |
Shiori |
マコト
シオリってば、どこにいても相変わらずだなぁ。 |
Makoto |
マコト
まさか会えるなんて思ってなかったから びっくりしたけど、なんか安心しちゃった。 |
Makoto |
シオリ
マコトも一緒だなんて。こちらこそ驚きましたわ。 |
Shiori |
タロ
やあ、ふたりとも。 元気そうでなによりだよ。 |
Taro |
マイ
はい、タロ先輩も。 ……お会いできて、嬉しいです。 |
Mai |
マコト
んふふ、よかったね、マイ。 タロ先輩にも会えてさ。 |
Makoto |
マイ
ち、ちょっとマコト、変な言い方しないでよ……! |
Mai |
十三
……前に見た『マイ』ってやつと、よく似てるな。 |
Juusan |
ドライ
ですが別人のようですね。こちらがシオリさんの言う 『マイ様』ご本人のようです。気配がまるで違います。 |
Drei |
ライチ
お知り合いなの? |
Litchi |
マコト
あ、はい! 学生時代のクラスメイトと、先輩なんです。 |
Makoto |
アハト
巡り合わせって重なるものね。 私のよく知った顔もいるみたい。 |
Acht |
ドライ
アハト。思いがけない再会ですね。 |
Drei |
アハト
まったくだわ。『灰の王』は同窓会でも開きたいのかしら。 |
Acht |
ライチ
まあ、そちらも知り合いだったの? すごい偶然ね。 |
Litchi |
マコト
先輩たちも……気が付いたらこの世界にいた、って感じ? |
Makoto |
タロ
うん、そう。 ってことは、そっちも同じような事情なんだね。 |
Taro |
マコト
はい。チーム全員、色々願い事を叶えてもらうつもりで、 『灰の王』を目指してます。 |
Makoto |
タロ
こっちもそう。全部同じだね。 ってことは……やっぱりマコマコたちが対戦相手なんだね。 |
Taro |
マイ
……そうなりますね。 |
Mai |
バレット
現実を確認できたか? だったら同窓会はもう終わりだ。 |
Bullet |
バレット
私たちは戦うために、ここに来た。 話がすんだなら、構えろ。 |
Bullet |
シオリ
戦うって、そんな……マイ様と!? |
Shiori |
マイ
……シオリや、タロ先輩と戦う……。 せっかく、偶然とはいえ会えたのに……。 |
Mai |
マコト
マイ、シオリ……そんな顔しないでよ……。 私までやりづらくなってきちゃうよ。 |
Makoto |
タロ
シオシオ。気持ちはわかるけど……。 |
Taro |
シオリ
で、できません、そんなこと! |
Shiori |
シオリ
マイ様と戦うことなんて、シオリにはできませんわ。 マイ様は私にとって大好きな、大事な人なんです! |
Shiori |
シオリ
その人に武器を向けるなんて、ありえませんわ! |
Shiori |
マコト
…………。 |
Makoto |
マイ
シオリ……。 |
Mai |
マイ
……私も……。 |
Mai |
シオリ
前のように、引き分けにしましょうよ! |
Shiori |
シオリ
必ずしも戦って、勝敗を決めなければならないわけでは ないでしょう!? |
Shiori |
マイ
引き分け? そんなことできるの? |
Mai |
ドライ
私たちもつい先ほど知ったばかりですが、イレギュラーが 起こった際は、試合の無効を申請することができるようです。 |
Drei |
ドライ
受理されれば、その場で即座に次の対戦が指示され、 それまでの対戦はなしになります。 |
Drei |
マコト
そっか、それができるなら、この対戦も 無効にしてもらえるよう頼んでみるのはアリかも……! |
Makoto |
バレット
いいや、ナシだ。 |
Bullet |
シオリ
な、なんでですか!? |
Shiori |
アハト
あなたたちは違うのかもしれないけれど、私はなにも 遊びや暇つぶしでこのゲームに参加しているわけではないの。 |
Acht |
バレット
私たちには叶えたい願望がある。そのために戦ってきたし、 仲間の願いも叶えるつもりでここまで共にやってきた。 |
Bullet |
バレット
クリスタルを得られるかもしれない貴重な機会を、 みすみす逃してなるものか! |
Bullet |
アハト
なにも本当に殺し合いをするわけじゃないわ。このおかしな世界に 残るか、帰るか。残存を賭けた戦いをしているにすぎない。 |
Acht |
アハト
そうでしょう? |
Acht |
マイ
わ、わかってる……。それはそうなんだけど……。 |
Mai |
シオリ
それでもシオリは、マイ様と戦いたくなんかありません! やっとこうしてお会いできたのに! |
Shiori |
ライチ
……なんだか可哀想になってきたわ。 |
Litchi |
アハト
だったら、こっちのチームに入れば? |
Acht |
シオリ
え? |
Shiori |
マコト
はいい?</style> ちょっと、何言ってんの、アハトさん!? |
Makoto |
アハト
私たちのチームに入れば、あなたが戦いたくないマイさんと 一緒のチームになれるわよ。もちろん戦う必要なんかなくなる。 |
Acht |
十三
私たちの前で堂々と引き抜きしようっていうの? 舐められたものだな。 |
Juusan |
ドライ
ですが、シオリさんのお気持ちを考えると、 確かに彼女にとっては利の多い話ですよ。 |
Drei |
アハト
戦いそのものが嫌なんじゃなくて、マイさんと争うのが 嫌なのでしょう? だったらその願いを叶えるのは簡単じゃない。 |
Acht |
シオリ
そ、それは……。 シオリは……シオリは……。 |
Shiori |
シオリ
それなら確かに、マイ様に刃を向けることはありません。 でも、タロ先輩たちは……。 |
Shiori |
バレット
うだうだとまどろっこしい!</style> |
Bullet |
バレット
腹を決めきれないというのなら、決めやすくしてやる! |
Bullet |
タロ
ッ!? |
Taro |
タロ
じゅうじゅう!? |
Taro |
十三
さがっていろ。私がやる。 |
Juusan |
マコト
バレットさん! |
Makoto |
バレット
どうするのかさっさと決めろ。 タイムリミットは決着がつくまでだ! |
Bullet |
アハト
いいわね。私もそれに乗るわ。 |
Acht |
アハト
……私の魔術が全てを凍り付かせるのが先か、 あの子が心を決めるのが先か……。 |
Acht |
ドライ
そういうことであれば、あなたのお相手は私がいたしましょう。 |
Drei |
アハト
面白いわね。あなたとこうして向かい合って戦うなんて。 一度やってみたかったのよ。 |
Acht |
ドライ
奇遇ですね、アハト。 実は私もです。 |
Drei |
ドライ
ぐっ……! |
Drei |
ドライ
なんのぉぉぉっ! |
Drei |
マイ
……っ。 始まっちゃった……。 |
Mai |
マコト
どうする、マイ? ここで見てるってわけにはいかないよ。 |
Makoto |
マイ
うん……そうだよね……。 |
Mai |
ライチ
無理をすることはないのよ。 |
Litchi |
マコト
ライチさん……! |
Makoto |
ライチ
大事な人と戦いたくない気持ちは、よくわかるわ。 私も、あなたと同じ立場だったら迷うと思うもの。 |
Litchi |
ライチ
でも……私は私の願いのために、戦わないわけにはいかないの。 引き分けには応じてあげられない。 |
Litchi |
ライチ
戦いたくなければ、戦わなくてもいいわ。 だけど私は、私の大事な人のために戦いたい。だから……。 |
Litchi |
ライチ
たぁぁぁぁぁぁっ!</style> |
Litchi |
タロ
レイ……! |
Taro |
1: 大丈夫、心配いらないよ |
1: |
シオリ
…………っ。 |
Shiori |
ライチ
あなた、優しいのね。 |
Litchi |
ライチ
あなたのその優しさに、私も応えるわ。 行くわよ! |
Litchi |
第6節 『大事な人だから③』/ 6. Because You're Important To Me - 3
Summary | |
---|---|
思い悩むシオリに対し、マイは互いに武器を
向けても大事な友達だと伝えた。その言葉で シオリは吹っ切れ、本気で戦う決心をする。 |
ライチ
なかなかやるのね。その動き、判断力……見かけによらず、 かなりの戦いを潜り抜けてきているみたい。 |
Litchi |
ライチ
それにその、不思議な技……。 そんな戦い方をする人は、初めてよ。 |
Litchi |
十三
させるか! |
Juusan' |
アハト
あら、残念。 うまく不意打ちできたと思ったのに。 |
Acht |
アハト
だけどそんなに素早く反応して、庇いにくるなんて…… もしかしてその子がそっちのリーダーなのかしら? |
Acht |
十三
くだらない憶測だな。あんまりにも見え見えの 攻撃だったから、ついでに振り払っただけだ。 |
Juusan |
バレット
どこへ行く。お前の相手はこの私だ! |
Bullet |
十三
ちっ! 大人しく転がっていればいいのに……! |
Juusan |
バレット
あれしきで私を仕留められると思ったか? 馬鹿にするな! |
Bullet |
十三
それはこっちの……台詞だ!! |
Juusan |
アハト
押されてるわね。少し手助けしてあげようかしら。 |
Acht |
アハト
――っ! |
Acht |
アハト
あう、くぅ……! |
Acht |
アハト
相変わらず、頑丈ね。 |
Acht |
ドライ
お褒めいただき、光栄です、アハト。 あなたの魔術も、相変わらず鋭い。 |
Drei |
ドライ
ですがまだ、私を打ち倒すには至っておりませんよ。 よその手助けをしている暇は……ないはず! |
Drei |
アハト
すごい圧……。これだけ本気ってことは、 あなたの叶えたい願いとやらも私と同じということかしら。 |
Acht |
ドライ
ではあなたも感じていらっしゃるのですね。 この世界に満ちる空気に潜む、あの方の気配を。 |
Drei |
アハト
ふふ。 そういうことならますます引き下がれなくなったわ。 |
Acht |
アハト
そう簡単に誰かに託せる願いじゃない。 たとえ相手があなたであっても。 |
Acht |
アハト
なんとしても私が、私の手で到達しなければ。 |
Acht |
ドライ
それはこちらとて同じこと。 |
Drei |
ドライ
なにがなんでもあなたを倒し、クリスタルを手に入れて、 事の真相をこの目にします。 |
Drei |
アハト
あなたにだけは、譲れないわ! |
Acht |
ドライ
ふんっ!!! |
Drei |
バレット
くっ、強い……こんな強敵がいようとは……。 |
Bullet |
十三
諦めな。アンタじゃ私には勝てない。 特に、ここでは。 |
Juusan |
バレット
ハッ、ふざけるな! 相手が誰だろうと関係ない! |
Bullet |
バレット
……私にも譲れない願いがある。 |
Bullet |
バレット
どうしても会いたい人がいる…… それが叶うのなら、なにを犠牲にしても惜しくはない! |
Bullet |
十三
知るか! 叶えたいなら勝手に叶えればいいだろ! |
Juusan |
バレット
ああ、そうするつもりだとも! だから私の願望のために、消えろ!! |
Bullet |
マコト
……そうだよね。突然こんなところに連れて来られて、 最初はなにがなんだかわかんないって感じだったけど。 |
Makoto |
マコト
それでも、叶うなら叶えたい願いがあって、 みんなでここまで頑張ってきたんだ。 |
Makoto |
マイ
それは……うん……そうだよね。 |
Mai |
マコト
大丈夫、マイとシオリは下がってて。 ふたりの分も、あたしが戦うからさ! |
Makoto |
タロ
そういうことなら、俺が相手になるよ。 |
Taro |
マコト
タロ先輩が!? |
Makoto |
タロ
気が進まないっていうふたりに戦わせたくないって気持ち、 よくわかるよ。俺も同じ気持ちだ。 |
Taro |
タロ
それになにより、レイやみんなにばかり 戦わせていられない。 |
Taro |
タロ
レイたちは、貧弱だった俺たちのチームに 加わって、ここまで引っ張ってきてくれた恩人なんだ。 |
Taro |
タロ
こんなところで、俺だけ見てるわけにはいかないよ。 |
Taro |
シオリ
……っ。 |
Shiori |
タロ
これで4対4。シオシオたちが戦う必要はない。 だから、安心して待っててよ。 |
Taro |
タロ
それじゃあ……行くよ! |
Taro |
マイ
待って!</style> |
Mai |
マコト
うわ、っととと……ど、どうしたのマイ? |
Makoto |
マイ
私も戦う。戦いたい! |
Mai |
シオリ
ま、マイ様!? どうして、そんな……! |
Shiori |
マイ
タロ先輩とマコトの言う通りだと思ったんだ。 |
Mai |
マイ
シオリも先輩も、私の大事な人だけど……。 |
Mai |
マイ
でもここまで一緒にやってきた、 ライチさんやバレットさん、アハトさんだって、大事な仲間だ。 |
Mai |
マイ
何度も助けてもらった。 今回だけ、私だけが逃げるなんて、なんだか納得がいかないよ。 |
Mai |
シオリ
マイ様……本気でおっしゃっているのですね。 でも……でもシオリは……。 |
Shiori |
シオリ
……駄目。できません。 だってシオリ、ずっとマイ様に会いたかったのに……っ。 |
Shiori |
シオリ
…………マイ様と戦えば、 シオリかマイ様、どちらかが消えてしまう……。 |
Shiori |
シオリ
そんなこと、したくもさせたくもありません……。 |
Shiori |
マイ
シオリ。それはシオリの本心? |
Mai |
シオリ
も、もちろん、ですわ! |
Shiori |
マイ
ねえ、シオリ。私はなにも、シオリと敵対したいわけじゃない。 この先一緒にやれるなら、それは嬉しいよ。だけどね。 |
Mai |
マイ
もしシオリが私のためにって思って、自分の本当の気持ちを 捻じ曲げようとしているなら、それは嬉しくないよ。 |
Mai |
シオリ
――っ!! |
Shiori |
マイ
私もそうだったから、シオリがこの世界で どんなふうに過ごしてきたのかよくわかる。 |
Mai |
マイ
タロ先輩やチームのみんなと一緒に、 毎日厳しい戦いを繰り返してきたはず。 |
Mai |
マイ
その人たちに背を向けることは、 シオリにとって辛いことじゃない? |
Mai |
シオリ
ど、どうしてそれを……。 |
Shiori |
マイ
わかるよ。友達だもん。 シオリがどんな子か、私はよく知ってる。 |
Mai |
シオリ
でも……でもシオリは……! マイ様に武器を向けるなんて……。 |
Shiori |
マイ
大丈夫だよ、シオリ。心配しないで。 |
Mai |
マイ
言ったでしょ。私たちは友達なんだから。 |
Mai |
マイ
もしここで武器を向け合って戦ったとしても、 シオリのことを敵だなんて思ったりしない。 |
Mai |
マイ
友達じゃなくなることもないし、嫌いになったりもしない。 私が勝ってもシオリが勝っても、大事な人のままだよ。 |
Mai |
シオリ
……ほ……本当に? 本当に、嫌いにならないでくださいますか? |
Shiori |
マイ
当然。 |
Mai |
マコト
そんなこと心配してたの!? もー、心配しすぎ! |
Makoto |
マコト
マイだけじゃないよ。あたしだって、どんなことがあっても シオリの友達なんだからね。 |
Makoto |
タロ
俺にとっても、どんな状況だろうと、みんなかわいい後輩だよ。 こんなゲームひとつで、変わることなんてない。 |
Taro |
シオリ
マイ様……マコト、タロ先輩……。 |
Shiori |
シオリ
……ごめんなさい。シオリ、マイ様にお会いできた喜びで、 どうかしていたんですわ。 |
Shiori |
マイ
うわっ! あ、あぶな……っ! |
Mai |
シオリ
まだ受けた恩を返すほど、働いておりませんの。 |
Shiori |
シオリ
尻込みして皆様を惑わせた分も含めて、 チームに貢献しなければなりませんわ! |
Shiori |
シオリ
マイ様、お覚悟! |
Shiori |
マイ
……ふふっ、シオリ相手に油断するなんて、命とりだったね。 もう不意打ちは食らわないよ! |
Mai |
シオリ
なんの! シオリをそう簡単に捕まえられると、思わないでくださいまし! |
Shiori |
マイ
まだまだぁ! せやぁっ!! |
Mai |
アハト
どうやら、あっちも踏ん切りがついたみたいね。 |
Acht |
ドライ
ですがそうなると、困りましたね。 ゲームのルールでは、対戦は4対4が最大人数だったはずです。 |
Drei |
ライチ
そうね。だったら私が対戦メンバーから抜けるわ。 選手交代よ。 |
Litchi |
ドライ
であれば、こちらは私が。 |
Drei |
ドライ
なに、私が信頼する仲間たちです。 相手がアハトであろうと、負けることはありませんよ。 |
Drei |
アハト
だったら、全力でお相手してあげないとね。 |
Acht |
バレット
腹が決まったなら、ここからは本気で行くぞ! 全員、隊列を組め! |
Bullet |
マイ
はい! |
Mai |
マコト
了解! |
Makoto |
十三
ずいぶん待たせてくれたじゃないか。 これ以上迷うようなら、アンタから叩き斬ってやろうと思ったけど。 |
Juusan |
シオリ
お待たせいたしまして、申し訳ありません。 でもシオリを捉えるのは難しいですよ? |
Shiori |
十三
その大口が嘘じゃないって、証明してもらうから。 |
Juusan |
シオリ
はいですわ。 |
Shiori |
1: こっちも負けじと隊列組もう! |
1: |
タロ
りょーかい! 俺も、出遅れた分を取り戻すよ! |
Taro |
シオリ
ええ! シオリ=キリヒト、全力で参ります! |
Shiori |
十三
はぁぁぁぁっ! |
Juusan' |
第6節 『大事な人だから④』/ 6. Because You're Important To Me - 4
Summary | |
---|---|
十三の攻撃で勝負は決着、マイたちは応援の
言葉を残して消えていった。ダイナーに戻っ た一行は、観測者の正体について話し合う。 |
十三
これで――終わりだ! |
Juusan |
バレット
がはっ……! |
Bullet |
1: 十三の勝ちだ! |
1: |
バレット
まだ、まだ……っ、くそ、力が入らない……! |
Bullet |
十三
……無理に立ち上がったって同じことだよ。 勝負はついた。 |
Juusan |
バレット
くそっ……! |
Bullet |
シオリ
クリスタルが……! |
Shiori |
ライチ
リーダーの敗北が決まったようね……。 おめでとう。そちらの勝ちよ。 |
Litchi |
マコト
ああ、そうだった! リーダー倒されたら終わりなんだった! 忘れてた〜……もっとサポートに行けばよかった、ごめん! |
Makoto |
バレット
いや。その作戦指揮も含めて、リーダーの役割だ。 悔しいが……実力差だ。 |
Bullet |
マイ
うん。とっても強かった。 私もまだまだ、修行しないといけないな。 |
Mai |
バレット
特にお前。お前は強かった。 どこかで会ったことがあるような気もするが……。 |
Bullet |
バレット
私の知っている奴とは比べ物にならない強さだ。 完敗だよ。 |
Bullet |
十三
…………。 |
Juusan |
ライチ
どちらも真剣にぶつかり合った、いい勝負だったと思うわ。 参加できなかったのが、ちょっと惜しいくらい。 |
Litchi |
ドライ
同感です。 |
Drei |
アハト
勝負の内容なんて、私にはどうでもいいことだわ。 負けたからには、退場。そのルールからは逃れられない。 |
Acht |
アハト
だから……ドライ。 |
Acht |
アハト
あとはあなたに託すわ。 ……必ずやり遂げて。 |
Acht |
ドライ
ええ。必ず。 |
Drei |
マコト
あたしたちのクリスタル、ちゃんと吸収されたみたいだね。 |
Makoto |
マイ
うん。もらってくれたのがシオリたちでよかった。 |
Mai |
タロ
そう言ってもらえるのは、嬉しいね。 |
Taro |
シオリ
でも……これでマイ様たちは、消えてしまうのですよね……。 せっかく、お会いできたのに……。 |
Shiori |
マコト
もー、シオリ。そんなに不安そうな顔しないでよ! 大丈夫。消えるって言っても、元の世界に戻るだけなんでしょ。 |
Makoto |
マコト
だったらあたしたちの本当の世界で、 シオリが帰ってくるのを待ってるからさ! |
Makoto |
シオリ
だけど……そ、そんな保障、どこにもないんですよ! 本当にそうなるのかなんて……。 |
Shiori |
マイ
心配しないで。きっとまたすぐ会えるよ。 私たちとシオリは、みんなつながってるから。 |
Mai |
マコト
あ! マイに会いたいからって、すぐに戻って来たら ダメだからね? どうせなら最後まで勝ってね! |
Makoto |
シオリ
……はい! マイ様の分も、マコトの分も、シオリが願いを叶えてきますわ! |
Shiori |
マコト
その意気だよ! |
Makoto |
マイ
それじゃあ、またね。頑張って、みんな! |
Mai |
ドライ
……行ってしまいましたね。 |
Drei |
十三
……中々手ごわかったよ。 |
Juusan |
タロ
やられそうだった? |
Taro |
十三
まさか。私の方が強い。だから私が勝った。 |
Juusan |
シオリ
あ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!</style> |
Shiori |
タロ
うわっ! どうしたシオシオ!? |
Taro |
シオリ
し……し……しまったですわ〜〜〜〜〜!!! |
Shiori |
ドライ
一体何事ですか? |
Drei |
シオリ
マイ様とマコトの願いを受け継いで、この先戦っていこうと 心に決めたところでしたのに……。 |
Shiori |
シオリ
ふたりの願い事を聞くのを忘れてしまいましたわ!!!</style> |
Shiori |
十三
なんだ……そんなことで大声出すな。 |
Juusan |
シオリ
そんなことではありません、大事なことです! |
Shiori |
シオリ
あ〜ん、マイ様のお願い事を知る チャンスでもありましたのに! |
Shiori |
タロ
まあまあ、聞けなかったのはしょうがないじゃないか。 ふたりからの、託された思いだけ受け継いでいくってことで。 |
Taro |
シオリ
あうぅ〜……大失態ですぅ。 マイ様、マコト〜! ちょっと一回戻ってきてくださいまし〜! |
Shiori |
十三
んな無茶な。 |
Juusan' |
ドライ
ははは。おふたりとは、友情でつながっているという お話だったではありませんか。 |
Drei |
ドライ
そう嘆くことはありませんよ。シオリさんの思う、 おふたりの願いが……きっとおふたりの気持ちそのものでしょう。 |
Drei |
シオリ
ドライさん……。そうでしょうか……。 |
Shiori |
ドライ
ええ。そうですとも。 友情とは、そういうものです! |
Drei |
シオリ
そう……なんですね。 わかりましたわ! シオリ、めげません! |
Shiori |
シオリ
私の思うふたりの願い……。そう、きっとマコトは、 世界一大きなマロンパフェが食べたいに違いありませんわ。 |
Shiori |
シオリ
それにマイ様は……そう、きっとシオリに会いたいはずです。 そしてふたりきりで甘い時間をすごしたいはず……。 |
Shiori |
十三
……ドライもドライだけど、それに乗せられて それだけおめでたい想像できるシオリも、相当だな。 |
Juusan |
シオリ
ああ、やる気がわいてきましたわ! 皆様、次の対戦に備えて、しっかり体を休めましょう! |
Shiori |
タロ
流れはともかく、シオシオに元気が出てなによりだ。 |
Taro |
タロ
それじゃあ気を取り直して、最寄りのダイナーを目指そうか。 |
Taro |
シオリ
はい! |
Shiori |
十三
はぁ……頭が単純なやつは、うらやましいよ。 |
Juusan |
タロ
いや〜。なんだかんだ今日も無事に勝ててよかった。 俺たち、結構順調に勝ち進んでるよね。 |
Taro |
タロ
クリスタルもだいぶ大きくなってきたし、そろそろ 『塔』に向かうことも考え始めなきゃ。 |
Taro |
シオリ
それは早計だと思いますわ、タロ先輩。 |
Shiori |
シオリ
クリスタルをどれだけ集めれば塔に入れるのかも謎ですし 例のアベンジさんからの連絡だってまだなにも無いのですから。 |
Shiori |
ドライ
ええ、シオリさんの言う通りです。 もう少し情報を集めなければなりません。 |
Drei |
ドライ
我々はまだ、この世界のことをほとんど知らない状態で 戦い続けているのですよ。 |
Drei |
タロ
アベンジか……。連絡がないと言えば、そういえばさ。 レイの仲間からの連絡はなにかあった? |
Taro |
1: それが、まだなにも |
1: |
タロ
そっかぁ……。でも、元気出して。 きっとまた会えるよ。 |
Taro |
タロ
探してるのは、観測者……だっけ? その人を探しながら、連絡を待ってみようよ。 |
Taro |
ドライ
…………。 |
Drei |
タロ
大丈夫、そんなことないって。 あっちだって探してくれてるんだから、きっとまた会えるよ。 |
Taro |
タロ
探してるのは、観測者……だっけ? その人を探しながら、連絡を待ってみようよ。 |
Taro |
ドライ
…………。 |
Drei |
ドライ
レイさん、ひとつお尋ねしたいことが。 以前から気にはなっていたのですが……。 |
Drei |
ドライ
あなたが探している『観測者』とは、この世界や、我々が この世界に呼ばれたことにも関係している人物ではないですか? |
Drei |
ドライ
お仲間からの通信や、あなたの戦いぶりを見ていれば かなり特殊な事情がおありだということはわかります。 |
Drei |
ドライ
ですが我々の付き合いもそろそろ長い。 宜しければ……話してはみませんか? |
Drei |
ドライ
あなたが探しているという『観測者』のことを。 私たちも、なにか力になれるかもしれません。 |
Drei |
1: 観測者のことを話す |
1: |
タロ
この世界を生み出している者……か。 規模が大きすぎて、正直よくわからないけど……。 |
Taro |
タロ
でもきっと、嘘じゃないんだろうな。それだけはわかるよ。 |
Taro |
シオリ
そうですね。現にシオリたち自身がこうして、外の世界から 強引にここに呼ばれているわけですから。 |
Shiori |
シオリ
今の話を信じない理由はありませんわ。 |
Shiori |
ドライ
つまり観測者の条件は、元々この世界に存在している ドライブ能力者……そういうことですね? |
Drei |
ドライ
つまり私たちのように、外の世界から呼ばれてきた者は省かれる。 そうなると『灰の王』がその観測者である可能性はかなり高い。 |
Drei |
ドライ
レイさんはそう睨んでいるということですか。 |
Drei |
ドライ
そしてこれは私の勘ですが……十三。 あなたも観測者のことを知っていたのではありませんか? |
Drei |
タロ
そうなの、じゅうじゅう!? |
Taro |
十三
……まぁね。けど『灰の王』がそうだという確証はなかった。 確信めいたものになったのは、最近だよ。 |
Juusan |
十三
それが『灰の王』だっていうなら ゲームは私にとって好都合。それだけのこと。 |
Juusan |
ドライ
そうですか……いえ、あなたの目的は問いません。 共に戦ってくれるだけで、我々としては心強いのですからね。 |
Drei |
タロ
それじゃあ、俺とシオシオ以外はみんな本当に 願望のために『灰の王』を目指してるんじゃないってことかぁ。 |
Taro |
タロ
なんだか少し複雑な気持ちかも……。 |
Taro |
十三
へぇ、アンタ見た目より繊細なんだ? そんなの気にする必要ある? |
Juusan |
十三
戦う理由なんか普通それぞれ違うものでしょ。 アンタはアンタの目指すもののために戦えばいいんじゃない? |
Juusan |
タロ
じゅうじゅう……。 うん、そうだね。じゅうじゅうの言う通りだ。 |
Taro |
タロ
前も言ったと思うけど、俺には力になりたい、 支えたい人がいるんだ。その人のために、俺は戦う。 |
Taro |
タロ
もちろん、みんなのためにも頑張るから。 だからみんなも、困った時はいつでも俺を頼ってよ。 |
Taro |
ドライ
ははは、頼もしいことです。 その時は是非、よろしくお願いしますよ。 |
Drei |
シオリ
…………。 |
Shiori |
ドライ
シオリさん? どうかされましたか? |
Drei |
シオリ
いえ、ただ……。 こうして世界の話を聞いていて、ふと思ったのです。 |
Shiori |
シオリ
私たちがどの世界に『いるべき』なのか。 それを決めているのは、一体どなたなのでしょうか……と。 |
Shiori |
タロ
いるべき? シオシオ、それどういうこと? |
Taro |
シオリ
いいえ、なんでもありませんわ。 |
Shiori |
シオリ
それより、また明日もゲームの指示があるかもしれません。 今日はこの辺にさせていただきますね。 |
Shiori |
タロ
変なシオシオ……。 |
Taro |
ドライ
シオリさんの仰る通り、次の戦いがいつなのかわかりません。 我々もそろそろ休むとしましょう。 |
Drei |
十三
…………。 |
Juusan |
7節『似て非なる存在①』/ 7. An Existence it'd be a Mistake to Imitate - 1
Summary | |
---|---|
次の対戦地への移動中、アベンジが現れる。
彼はゲームの終わりが近いことを伝え、以後 更に危険は増していくとチームに警告した。 |
シオリ
皆さん、お揃いですわね。 では出発しましょうか。 |
Shiori |
タロ
対戦場所を確認しておいたよ。 ここから一時間くらい歩くみたいだ。 |
Taro |
十三
向こうの一方的な指示で、あちこち移動させられ続ける日々か。 慣れたけど、うんざりするのは変わらないな。 |
Juusan |
ドライ
とはいえ、こう連日戦って勝利をおさめ、 クリスタルを手に入れているのです。 |
Drei |
ドライ
もうずいぶん我々のもとに集まっているはずですよ。 |
Drei |
シオリ
それならそれで、あといくつ集めればいい、 とか視覚的にわかればいいのに。 |
Shiori |
シオリ
あれこれルールを押し付けるわりに、 そういうところ不親切ですわ。 |
Shiori |
???
ぼやかずとも、そう長くはかからないだろう。 |
??? |
シオリ
だ、誰です!? |
Shiori |
タロ
アベンジ……なんだ、あんたか。 びっくりしたよ。 |
Taro |
十三
まだ生き残ってたんだな。姿を見なくなったから、 どこかで誰かにクリスタルを奪われたのかと思ってた。 |
Juusan |
アベンジ
ふ……今更、そんな下手は踏まない。 それなりの切り抜け方はあるものだ。 |
Avemge |
ドライ
十三も心配なさっていたのですね。 ご無事でなによりです、アベンジさん。 |
Drei |
十三
誰が心配するか。勝手に作るな。 |
Juusan |
ドライ
ははは。 |
Drei |
ドライ
ところで今しがた、そう長くはかからないと おっしゃっておりましたが、 |
Drei |
ドライ
アベンジさんは我々があとどれくらいクリスタルを 集めればよいのか、ご存知なのですか? |
Drei |
アベンジ
いや。だが周囲の状況から、このゲームの終わりが 近いんだろうと踏んでいる。 |
Avemge |
シオリ
どういうことです? |
Shiori |
アベンジ
ドライブ能力者同士の対戦の数が減っている。 |
Avemge |
アベンジ
この世界に残っているドライブ能力者の総数が、 かなり少なくなってきているんだ。 |
Avemge |
アベンジ
今後ぶつかる対戦相手は、少なくとも 複数のチームのクリスタルを吸収している状態だろう。 |
Avemge |
タロ
それってつまり…… 一回の対戦で、結構な量のクリスタルが手に入るってこと? |
Taro |
タロ
……この場合『量』って言い方が合ってるのかは わかんないけど。 |
Taro |
アベンジ
そういうことだ。 |
Avemge |
アベンジ
……だからその分、警戒を怠るな。 |
Avemge |
シオリ
対戦相手は、それだけ勝ち残っている相手……。 これまで以上の強敵も予想されるのですものね。 |
Shiori |
アベンジ
それだけじゃない。 |
Avemge |
アベンジ
対戦が減ったということは、この世界の住人たちにとっての 客と娯楽が減ったということでもある。 |
Avemge |
アベンジ
どこもかしこも治安はさらに悪化しているし、 どいつもこいつも残ったドライブ能力者を標的にし始めている。 |
Avemge |
ドライ
ああ……我々の持つクリスタルは、 高額で取引されているとのことでしたね。 |
Drei |
ドライ
その希少価値も当然、上がっているわけですか。 |
Drei |
アベンジ
今やドライブ能力者は、歩く宝石も同然だ。 |
Avemge |
アベンジ
……そんなもの手に入れたところで、 意味などないだろうにな。 |
Avemge |
シオリ
どうしてです? お金になるのなら、この世界の人にとっては 見逃せないチャンスなのではありません? |
Shiori |
シオリ
狙われるのは御免ですけれど、どう見ても豊かでは なさそうですし……当然の流れだとも思いますわ。 |
Shiori |
タロ
そうだな……。ゲームが進行してドライブ能力者が減れば、 ダイナーだって商売する相手がいなくなるわけだし……。 |
Taro |
アベンジ
だからこそ、このゲームが世界の情勢に 根付いたものでないことが判明しただろう。 |
Avemge |
シオリ
え……? |
Shiori |
アベンジ
考えてもみろ。 |
Avemge |
アベンジ
この世界にある、ダイナーを初めとした設備や環境は、 ドライブ能力者を対象にしているものばかりだ。 |
Avemge |
アベンジ
だというのに、ゲームは進行すればするほど、 ドライブ能力者は減っていく。 |
Avemge |
アベンジ
ドライブ能力者を相手に商売をするうまみなどないのに、だ。 生活の形態として、あまりに不自然だ。 |
Avemge |
十三
……儲かるわけでもない相手に、善意で商売するような 人柄だとは思えないしな。ここの連中。 |
Juusan |
ドライ
見た目は粗暴であれど、食事や休息場所を与えてくれる 優しい人たちなのだ……と主張したいのは、やまやまですが。 |
Drei |
ドライ
アベンジさんのおっしゃりたいことは、理解できます。 彼らの暮らしは、彼らの社会を支えるためのものとは思えない。 |
Drei |
ドライ
まるで初めから『そうあるべし』と 決められていたかのようです……。 |
Drei |
タロ
確かに。 クリスタルを見せれば食事がとれるとかも……。 |
Taro |
タロ
俺たちには都合がいいけど、 ここに住んでる人たちにとっては旨味がないよな……。 |
Taro |
タロ
『灰の王』から手当てが出てるとかなのかなって思ってたけど、 それにしては暮らしが質素すぎるし。 |
Taro |
シオリ
ゲームありきの社会情勢……ゲームの進行を支えるため のシステム。そんな印象を、受けないとは言えませんわね。 |
Shiori |
十三
私たちだけじゃなくて、ダイナーの連中も 『灰の王』にとっては駒か舞台装置でしかないんだろうな。 |
Juusan |
十三
どうでもいいとは思っても、やっぱり気に入らない。 |
Juusan |
ドライ
ということは……。 |
Drei |
ドライ
逆に言えば、そうまでして。つまり完全にそのための環境を 作り上げてまで、ゲームを行いたい理由があるのでしょうね。 |
Drei |
アベンジ
ああ。伊達や酔狂じゃない。 『灰の王』には確実に目的がある。 |
Avemge |
十三
目的ね……。 |
Juusan |
アベンジ
能力者が追加投入されないところを見ると、 目当てのドライブ能力者はすでにこの世界にいるんだろう。 |
Avemge |
アベンジ
そいつの動向を監視している可能性もある。 |
Avemge |
アベンジ
…………。 |
Avemge |
アベンジ
……レイだったな。 |
Avemge |
アベンジ
お前は観測の力を持っているらしいな。 |
Avemge |
十三
それがどうした? なにか問題でもあるっての? |
Juusan |
アベンジ
そうじゃない。睨むな。 |
Avemge |
アベンジ
……お前の力は、他にはない特異なものだ。 周囲には十分気を付けておいたほうがいい。 |
Avemge |
シオリ
まさか、『灰の王』の狙いは レイさんだとおっしゃるんですか? |
Shiori |
アベンジ
断言はできない。だが可能性はある。 ……それだけ希少価値と利用価値の高い能力だ。 |
Avemge |
アベンジ
ゲームを逸脱して、接触してくることもあるかもしれない。 |
Avemge |
1: その方が話は早いかも |
1: |
十三
来るなら来いって? 上等だな。言うじゃないか、レイ。 |
Juusan |
ドライ
ええ。私たちも気を付けておきましょう。 あなたの身近にどんな危険が潜んでいるか、わかりませんから。 |
Drei |
アベンジ
……ふ。 |
Avemge |
アベンジ
この世界の風土になじんだのかわからんが…… ちょっと見ない間に、一端の顔をするようになったな。 |
Avemge |
タロ
レイのこと? そうだろ。 |
Taro |
タロ
うちのチームのリーダーなんだ。 俺たちの頼れる仲間さ。 |
Taro |
シオリ
ちょっと頼りない見た目だからって侮ると、 痛い目みますわよ。 |
Shiori |
アベンジ
そうか。 ……お前たちに声をかけたのは、正解だったようだ。 |
Avemge |
十三
利用しやすそうだから? |
Juusan |
アベンジ
それもある。 |
Avemge |
アベンジ
さて……俺はドライブ能力者と世界情勢の現状について 伝えに来ただけだ。 |
Avemge |
アベンジ
用は済んだ。お前たちと一緒にいて、 余計なトラブルに巻き込まれる前に、退散するとしよう。 |
Avemge |
シオリ
まるで私たちがトラブルの中心部みたいに 言わないでください。不本意ですわ。 |
Shiori |
アベンジ
望んでいなくてもそうなる。 お前たちは勝ち残っているドライブ能力者のチームだ。 |
Avemge |
アベンジ
襲撃すれば、それだけでかいクリスタルが手に入る。 一攫千金だ。 |
Avemge |
タロ
そういうそっちだって、ゲームに参加していなくても クリスタルを持ってはいるんだろ? |
Taro |
タロ
大勢に囲まれて、奪われたりしないようにしてよ。 心配なのもあるけど、情報源としても結構頼りにしてるんだからさ。 |
Taro |
アベンジ
さっきも言ったが、そんな下手は踏まない。 ひとりでいる分、逃げ隠れするのは簡単だ。 |
Avemge |
アベンジ
お前たちこそ、頼りにしているんだ。 やられてくれるなよ。 |
Avemge |
十三
言われなくても。 |
Juusan |
アベンジ
そうであってほしいものだ。 |
Avemge |
ドライ
……彼は鼻がきくのでしょうかね。 それとも、勘がいいのか……はたまた運なのか。 |
Drei |
シオリ
このタイミングの良さだと、 なんだか押し付けられたような気になりますわね。 |
Shiori |
タロ
ま、まさか。たまたまだよ。それにアベンジも 言ってたじゃないか。治安が悪くなってるって。 |
Taro |
タロ
だから……。 |
Taro |
荒くれ者
おーおー5人もいるじゃねぇか、豊作だ! |
|
ならず者
大人しくクリスタルを出しやがれ! そうすりゃ、軽く痛い目見てもらうだけですませてやるよぉ! |
|
チンピラ
ヒヒヒッ、でもこいつら、 クリスタル取っちまったら消えちまうんだろ? |
Ruffian |
ならず者
だったら抵抗してもしなくても同じか? アッヒャッヒャ、どうでもいいや、めんどくせぇやっちまえ! |
|
十三
…………。 |
Juusan |
十三
……めんどくさいはこっちの台詞だよ……。 |
Juusan |
ドライ
治安の低下は、確かに著しいようです。 嘆かわしいことですね。 |
Drei |
十三
フン、前と一緒だろ。命を粗末にしたいっていうんなら、 その無謀を体に教えてやるまでだ。 |
Juusan |
十三
行くよ、みんな。 命知らずたちをせん滅してやる。 |
Juusan |
タロ
りょーかい。 |
Taro |
シオリ
ちょっと過激な準備運動ですわね! |
Shiori |
7節『似て非なる存在②』/ 7. An Existence it'd be a Mistake to Imitate - 2
Summary | |
---|---|
次の対戦者は、ヴァルケンハインとレイチェ
ル、ラケル、ナオト。十三とレイチェルは観 測者を巡る因縁について暫し言葉を交わす。 |
十三
……まだ着かないの? |
Juusan |
タロ
いや、もうすぐ。あの瓦礫を越えた辺りだよ。 |
Taro |
シオリ
はぁ、ようやくですわ。ここに来る間、何度もガラの悪い 方々に声をかけられて……普段以上に疲れました。 |
Shiori |
ドライ
アベンジさんがおっしゃっていた治安の低下が、 身に滲みますね。 |
Drei |
ドライ
……ん? これは……。 |
Drei |
シオリ
香り? 花……薔薇の香りですね。 |
Shiori |
タロ
この世界に薔薇なんてあった? |
Taro |
ドライ
いえ……今のところ見覚えは……。 |
Drei |
十三
ちょうど、対戦場所のあたりから漂ってる。 行ってみよう。実際に見てみれば、なにがあるのかはっきりする。 |
Juusan |
タロ
そうだね。なにかおかしなことが起こってるのかも しれないから、慎重に様子を見よう。 |
Taro |
ヴァルケンハイン
……遅い!</style> |
Valkenhayn |
ヴァルケンハイン
対戦相手はまだか!? いい加減待ちくたびれた。 時間も迫るというのに、どこで油を売っているんだ、連中は!? |
Valkenhayn |
ナオト
まだ時間まではもうちょっとあるよ。そうカッカするなって。 さっきから機嫌悪いな、ヴァルケンハイン。 |
Naoto |
ヴァルケンハイン
機嫌だと? 悪くもなる、当然だろう!? 機嫌どころの話じゃない。不愉快だ!! |
Valkenhayn |
ラケル
いやね、大きな声を出して。確かに快適な環境では ないけれど、文句を言ったって仕方がないじゃない。 |
Raquel |
レイチェル
そうよ、ヴァルケンハイン。少し落ち着きなさい。 ウロウロと辺りを歩き回って、みっともないわよ。 |
Rachel |
レイチェル
……ねえ、ヴァルケンハイン。 |
Rachel |
ヴァルケンハイン
はい、レイチェル様。どのような状況であろうと、 己を見失うことなく平静であること……。 |
Valkenhayn |
ヴァルケンハイン
それがアルカード家に仕える者としての当然の態度でございます。 それを……あの者はまるで理解しておりません。 |
Valkenhayn |
ヴァルケンハイン
まったく嘆かわしいことです……。我がことながら、 お見苦しい様をお目にかけまして、申し訳ございません。 |
Valkenhayn |
レイチェル
いいのよ、ヴァルケンハイン。 誰にでも若かりし頃というものは、あるものだわ。 |
Rachel |
レイチェル
それより、紅茶を淹れて。薔薇のいい香りがしてきたわ。 蒸らすには十分だと思うけれど。 |
Rachel |
ヴァルケンハイン
おお、失礼いたしました。 ただいまお持ちします。 |
Valkenhayn |
ナオト
おっと、こっちもいいころだな。 ……しかし、こんなところでまでお茶会とはな。 |
Naoto |
ラケル
どこで飲んだって、ナオトの紅茶が美味しいことに 変わりはないわ。 |
Raquel |
ナオト
そりゃ、どうも。お褒めにあずかり光栄だ。 |
Naoto |
ラケル
だけどそちらの執事さんの紅茶も美味しそうね。 あとで一杯いただける? |
Raquel |
レイチェル
あら、いいわよ。遠慮することはないわ。 |
Rachel |
ヴァルケンハイン
ええ。いつでもご用意いたしますよ、ラケル様。 |
Valkenhayn |
ヴァルケンハイン
あぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜!!!</style> やめろやめろ!! なんなんだ貴様らは! |
Valkenhayn |
ヴァルケンハイン
俺たちは戦いに来ているんだぞ!? ここで、今から、対戦相手と殴り合うためにここまで来たんだ! |
Valkenhayn |
ヴァルケンハイン
なのに、紅茶だと!?</style> そんなもの悠長に飲んでいる場合か! |
Valkenhayn |
ヴァルケンハイン
どこからか奇襲でもされたらどうする!? 警戒心というものがないのか!? |
Valkenhayn |
ナオト
んなこと言ったって、まだ相手が来てないだろ。 今からピリピリしてたってしょうがないだろ。 |
Naoto |
ナオト
まあ……確かに、こんなところでお茶会ってのは、 どうかなぁとは思うけどさ。 |
Naoto |
ナオト
ティーセットどころか、テーブルと椅子まであるし。 どこから出したんだよ。 |
Naoto |
レイチェル
アルカード家の秘密よ。 |
Rachel |
ナオト
……あんま深入りしないほうがよさそうだ。 |
Naoto |
ヴァルケンハイン
小僧。レイチェル様への口の利き方がなっていないぞ。 何度も言っているが、態度を改めろ。 |
Valkenhayn |
レイチェル
構わないわ、ヴァルケンハイン。 彼もまた、若いのだから。 |
Rachel |
レイチェル
そうそう、若いといえば。 そちらのヴァルケンハインもこちらに来たらどう? |
Rachel |
レイチェル
ヴァルケンハインの紅茶でも飲んで、 紳士らしい物腰を身に着けたらいいわ。 |
Rachel |
ヴァルケンハイン
うぐぐぐ……ええい、うるさい!! 俺の名前を呼ぶな、紛らわしい!! |
Valkenhayn |
レイチェル
ふふふふ。度し難い劣悪な世界に放り込まれて 辟易していたけれど、この面白い状況が見られるのは悪くないわ。 |
Rachel |
ヴァルケンハイン
レイチェル様のお心の、慰めになっているのでしたら 何よりでございます。 |
Valkenhayn |
ヴァルケンハイン
ですが……こうしてかつての己を見ることになろうとは、 思いませんでした。いやはや、お恥ずかしい。 |
Valkenhayn |
ヴァルケンハイン
それはこちらの台詞だ!</style> なんだそのザマは。 牙を失ったのか? |
Valkenhayn |
ヴァルケンハイン
それが自分の未来の姿かと思うと嘆かわしい。 俺は絶対に貴様のような、耄碌した老いぼれにはならんぞ! もうろく |
Valkenhayn |
レイチェル
ですってよ、ヴァルケンハイン。 |
Rachel |
ヴァルケンハイン
それは私めへのお言葉でしょうか、レイチェル様。 それともあそこで喚く子犬めへの言葉でしょうか。 |
Valkenhayn |
ヴァルケンハイン
誰が子犬だ!!!</style> |
Valkenhayn |
ナオト
あーあぁ、完全に遊ばれてるよ。 悪趣味だな……。 |
Naoto |
ラケル
そう? 私も面白いと思うけれど。 ナオトもいつかどう? |
Raquel |
ナオト
いやいや、勘弁してくれ。未来の自分だの過去の自分だのと 会話するなんて、俺は絶対嫌だぞ。 |
Naoto |
ナオト
ましてやそれを、自分の主人に見られるとかさ……。 じいさんのほうのヴァルケンハインにも同情するぜ。 |
Naoto |
ヴァルケンハイン
貴様に同情されるいわれはない。 |
Valkenhayn |
ヴァルケンハイン
が……レイチェル様にお楽しみいただけるのならば、 このような奇妙な巡り合わせも良いものだ。 |
Valkenhayn |
ヴァルケンハイン
なにがいいものか! ふざけるな!!</style> |
Valkenhayn |
ナオト
声がでかいんだよ。 |
Naoto |
ナオト
あと左右でその怖い顔で睨むなって。 背もでかいし、威圧感あんだからさ……。 |
Naoto |
ナオト
はぁ……ヴァルケンハインがふたりって時点で相当頭痛ぇのに、 ラケルと同じ顔したレイチェルって子までいるなんてな。 |
Naoto |
ナオト
いつまでたっても慣れねぇ。頭がどうにかなりそうだ。 |
Naoto |
ラケル
忠誠心が足りないのではなくて? |
Raquel |
ラケル
自分のご主人様が誰なのかわかっていれば、 顔が同じくらいでそう混乱することもないでしょう? |
Raquel |
ナオト
んな簡単に行くか。 そんな風に割り切れるような似かたじゃないんだよ。 |
Naoto |
レイチェル
あなたも同じ顔した誰かがもうひとりいれば、面白かったのに。 |
Rachel |
ナオト
冗談じゃないって。 |
Naoto |
ヴァルケンハイン
いい加減にしろ! その気の抜けた会話をやめて 戦闘準備をしろと言っているんだ! |
Valkenhayn |
レイチェル
だから落ち着きなさい、ヴァルケンハイン。 そう急かさなくても、時間通りに始まるわよ。 |
Rachel |
レイチェル
そうでしょう、ヴァルケンハイン? |
Rachel |
ヴァルケンハイン
あ? |
Valkenhayn |
ヴァルケンハイン
はい、そのようです。 |
Valkenhayn |
ヴァルケンハイン
ぐぅっ……そっちか……くそっ、紛らわしくて苛々する……。 |
Valkenhayn |
ヴァルケンハイン
……だが確かに、もう待つ必要はないようだな。 |
Valkenhayn |
ナオト
対戦相手が来たのか? |
Naoto |
ヴァルケンハイン
そうだ。嗅ぎ慣れない臭いがする。 ……隠れても無駄だぞ! さっさと出てこい!! |
Valkenhayn |
タロ
いやぁ……臭いかぁ。できればもう少し様子を見て そっちの戦力とか状況とか、把握したかったんだけどな。 |
Taro |
シオリ
あの大柄な男性ふたりは、獣人ですのね。 これでは、特別な策なく身を隠すのは無理ですわ。 |
Shiori |
ドライ
獣人……獣と人のハイブリット、といった存在でしょうか。 本当にそうなのであれば、ぜひお手合わせ願いたいものですね。 |
Drei |
十三
願わなくても、お手合わせするんだよ、今から。 |
Juusan |
レイチェル
……あら。あなた……。 |
Rachel |
十三
…………レイチェル=アルカードか。 |
Juusan |
ドライ
お知り合いですか? |
Drei |
十三
ちょっとだけね。あんまり良好な関係じゃない。 |
Juusan |
十三
……アルカードには関わりたくないって、 アンタたちの父親にも言ったんだけどな。 |
Juusan |
ラケル
父親……お父様をご存知なの? |
Raquel |
十三
ちょっと縁があってね。 ……縁があるのは、そっちのウサギ頭もだけど。 |
Juusan |
レイチェル
そうね。 でもお父様とまで繋がりがあるなんて、驚きだわ。 |
Rachel |
レイチェル
よければ、どんな繋がりなのか聞かせてもらえないかしら。 |
Rachel |
十三
別に……大したことじゃない。 アンタらの父親に言われて、ここにやってきたってだけの話。 |
Juusan |
ラケル
お父様が、あなたをここへ導いたということ? |
Raquel |
レイチェル
面白い話ね。あなた、自分の意思で境界を移動するのね。 それで、なんのためにここへ? |
Rachel |
レイチェル
お父様があなたに、なにを言ったの? |
Rachel |
十三
……こいつを助けるようにってさ。 |
Juusan |
十三
大事なご友人らしい。 |
Juusan |
1: 友人……なのかな? |
1: |
ナオト
あの人と友達……お前、大人しそうに見えて すごい奴なんだな……びびる。 |
Naoto |
ラケル
お父様の言うことよ。 あまり言葉通りに受け取らないほうがいいわ。 |
Raquel |
ラケル
どんな含みがあるのか、知れないもの。 |
Raquel |
ヴァルケンハイン
クラヴィス様のご友人ともなれば、 邪険にするわけには参りませんな。 |
Valkenhayn |
ヴァルケンハイン
幻想生物の世話になるなど、不運だったな、小僧。 その呪いはいつまでも付きまとうぞ。 |
Valkenhayn |
ヴァルケンハイン
幻想生物の世話になるなど、不運だったな、小娘。 その呪いはいつまでも付きまとうぞ。 |
Valkenhayn |
タロ
な、なんか、とんでもない人……なのか? |
Taro |
ドライ
そのようですね。 そんな方が助けるようにと言ったのであれば……。 |
Drei |
ドライ
レイさんもまた、かなりの要人のようです。 |
Drei |
シオリ
だったら、不戦勝にしてもらえないでしょうか。 だったら楽なんですけど。 |
Shiori |
レイチェル
…………。 |
Rachel |
ヴァルケンハイン
貴様らの事情などどうでもいい。不戦勝などさせるものか。 これでようやく戦えるのだぞ!! |
Valkenhayn |
ヴァルケンハイン
紅茶だの茶菓子だの、くだらない話を聞くこともない。 積もりに積もったうっぷんを、晴らさせてもらう! |
Valkenhayn |
ヴァルケンハイン
急くな、若造。 |
Valkenhayn |
ヴァルケンハイン
……レイチェル様、なにかお考えがございますか? |
Valkenhayn |
ナオト
ラケルは? 親父さんの話、もっと聞いたほうがいいか? |
Naoto |
ラケル
……お父様が、彼を助けるようにと言ったのよね。 |
Raquel |
ラケル
であれば、あの少年にはなにか特別なものが…… 助けなければならないだけの理由があるはず。 |
Raquel |
ラケル
……お父様が、彼女を助けるようにと言ったのよね。 |
Raquel |
ラケル
であれば、あの少女にはなにか特別なものが…… 助けなければならないだけの理由があるはず。 |
Raquel |
ラケル
理由のないことはなさらない方だもの。 |
Raquel |
ラケル
それが誰のためになって、誰を振り払うことになろうと…… お父様には、常にお考えがある……。 |
Raquel |
レイチェル
そうね。 間違いなく、そうするだけの理由があるのよ。 |
Rachel |
レイチェル
……であれば、ええ、戦いましょう。 |
Rachel |
ナオト
いいのか? クラヴィスさんは、あいつを助けろって言ったんだろ? |
Naoto |
ナオト
もし俺たちが勝ったら、 その言葉に反することにならないか? |
Naoto |
レイチェル
お父様が選んだ人物に間違いがないか、確かめたいわ。 |
Rachel |
レイチェル
もしもそれに足る人物でないのなら…… お父様があの子に求めているものは重荷すぎる。 |
Rachel |
レイチェル
それはこの世界においてに限らず……ね。 |
Rachel |
ナオト
どういう意味だ? |
Naoto |
シオリ
わたくしたちにも詳しく教えていただきたいですわね。 レイさんが、なんだとおっしゃるの? |
Shiori |
レイチェル
特別なご友人よ。お父様のね。 |
Rachel |
レイチェル
対戦の時間は過ぎているわ。 始めましょう。 |
Rachel |
ヴァルケンハイン
レイチェル様のご意思に従うのが、私の意思でございます。 このヴァルケンハイン、いつでも駆ける準備はできております。 |
Valkenhayn |
ヴァルケンハイン
チッ……アルカードのため、クラヴィスのためだと思うと 腹に据えかねるが、この際構うものか。 |
Valkenhayn |
ヴァルケンハイン
思い切り暴れられるのならそれでいい! |
Valkenhayn |
ナオト
俺も参加するんでいいんだよな? |
Naoto |
ラケル
……いいわ。私も……レイというようね。 彼に興味があるわ。 |
Raquel |
ラケル
……いいわ。私も……レイというようね。 彼女に興味があるわ。 |
Raquel |
ラケル
もしレイが私やレイチェルの思っている通りの 力を持っているなら、向こうが私たちに負けるはずがない。 |
Raquel |
ラケル
それにナオトにとっても、いい特訓相手になるわ。 |
Raquel |
ナオト
特訓ね。こんなときでも教育熱心だな、お前は。 |
Naoto |
十三
めんどくさい感じになったな……。 やっぱり、アルカードに関わるとろくなことがない。 |
Juusan |
ドライ
おやおや。 どうやら思いの外、根深い因縁がおありのようですね。 |
Drei |
十三
たぶん、私が思ってる以上のね。 |
Juusan |
タロ
相手はどんな人たちなの、じゅうじゅう? |
Taro |
十三
知らない奴もいるから、はっきりは言えないけど…… ウサギ頭とじいさんを甘く見たら死ぬよ。 |
Juusan |
十三
人間の常識を外れてる連中だ。 |
Juusan |
シオリ
ということは、残りも常識を外れてる可能性があるって ことですわね。 |
Shiori |
タロ
厳しい戦いになりそうだけど、やるしかない! |
Taro |
ドライ
その通りです。心してかかりましょう! |
Drei |
ヴァルケンハイン
行くぞぉぉぉっ!</style> うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!</style> |
Valkenhayn |
7節『似て非なる存在③』/ 7. An Existence it'd be a Mistake to Imitate - 3
Summary | |
---|---|
レイチェルは十分に力を見極めると、戦いを
止める。彼女の父の意図を図った末に、判断 を下し……自らのチームの敗北を宣言した。 |
|
遂にフガクは時間の並列化を成功させる。カ
ガミとココノエの手で強化された新装備を身 に纏い、シエルは目標への浸入を開始した。 |
ヴァルケンハイン
……驚きましたな。クラヴィス様が気にかける方と、 そのチームメンバー……侮ったつもりはありませんが。 |
Valkenhayn |
ヴァルケンハイン
思いの外に強敵ですな。 |
Valkenhayn |
ドライ
なんという強烈な蹴り……老体から繰り出される威力とは 思えません。これが……人狼……。 |
Drei |
ヴァルケンハイン
うらぁぁぁぁぁぁぁっ!!</style> |
Valkenhayn |
タロ
っ、嘘だろ、俺の糸を―― うわぁぁぁぁぁっ!!</style> |
Taro |
タロ
あう、ぐっ……。 |
Taro |
シオリ
タロさん! |
Shiori |
十三
くそっ、今行く! |
Juusan |
ヴァルケンハイン
ついて来るか……! |
Valkenhayn |
十三
フン、この程度……。 |
Juusan |
ナオト
もらったぁ!</style> |
Naoto |
十三
なっ、ぐ……っ。 |
Juusan' |
1: ナオトに好きにはさせない! |
1: |
ナオト
なに――!? |
Naoto |
十三
……っ!? |
Juusan' |
ナオト
っ、く、なんだ……? 急に体勢が崩れた!? |
Naoto |
十三
……戸惑ってる暇はないぞ。 |
Juusan |
ラケル
気を付けて、ナオト。 ……観測の力が働いているわ。 |
Raquel |
ヴァルケンハイン
観測の力だと? この重圧感はそのせいか……! |
Valkenhayn |
レイチェル
……無意識、なのかしら。 |
Rachel |
レイチェル
不器用にも観測をコントロールしようとしているのね。 今はまだ自在には扱えないようだけれど……。 |
Rachel |
ヴァルケンハイン
未熟といえど、これほどの存在を知りながら、 クラヴィス様が排除よりも保護を優先するとは……。 |
Valkenhayn |
タロ
……う……うぅ……。 |
Taro |
ドライ
タロさん、しっかりしてください。 十三、援護を! |
Drei |
十三
わかってる。 ……癪だけど、レイ、アンタの力を……! |
Juusan |
レイチェル
もういいわ。 |
Rachel |
シオリ
え……? |
Shiori |
ラケル
……わかったわ。 |
Raquel |
ナオト
ちょっと待てよ、まだ俺はやれるぞ! |
Naoto |
ヴァルケンハイン
そうだ! 観測の力がなんだ、 この程度の足かせで膝をつくつもりはないぞ! |
Valkenhayn |
ヴァルケンハイン
……そうではない。 もう十分力を見たと、レイチェル様が判断されたのだ。 |
Valkenhayn |
十三
フン、力を見るだなんて、ずいぶんな余裕だな。 それで勝ったつもり? |
Juusan |
レイチェル
勝つつもりなど最初からないわ。 対戦を始める前にも言ったはずよ。 |
Rachel |
レイチェル
お父様のお眼鏡に敵う観測者であるのなら、 そちらのチームが負けるはずがない、と。 |
Rachel |
レイチェル
レイ。 |
Rachel |
レイチェル
生憎、私は覚えがないのだけれど、あなたはどこかで お父様に会っているのね。 |
Rachel |
レイチェル
そしてそのとき、お父様はあなたの力を知った。 |
Rachel |
レイチェル
きっとあなたの力を危ぶまれたことでしょう。だけどその 危険性をわかったうえで、今のあなたを必要だと判断した。 |
Rachel |
レイチェル
だから……十三。あなたに、レイを 助けるように言ったのよ。 |
Rachel |
十三
…………。 |
Juusan |
十三
奴はなにを考えてる? 私やレイを利用して…… なんのつもりだ? |
Juusan |
レイチェル
さあ。わからないわ。 私はお父様のお考えを見通せるわけではないもの。 |
Rachel |
レイチェル
だけどお父様が保護するべきと判断したのなら、そして これだけ惜しみなく力を示してくれたのなら……。 |
Rachel |
レイチェル
ここで私たちが 万が一にも倒してしまうわけにはいかないの。 |
Rachel |
シオリ
それって……つまり、どういうことですか? |
Shiori |
レイチェル
私たちの負けを認めるわ。 |
Rachel |
ナオト
えぇっ!? |
Naoto |
ヴァルケンハイン
ふざけるな! 俺たちはまだ戦える、負けていない! 貴様が勝手に俺の勝ち負けを決めるな……うぐっ!? |
Valkenhayn |
ヴァルケンハイン
口を慎め。いくらレイチェル様の温情があったとて、 看過できぬ範囲があるぞ。 |
Valkenhayn |
ヴァルケンハイン
うぐぐぐ……くそ、放せ! |
Valkenhayn |
ヴァルケンハイン
レイチェル様がお決めになったのだ。 それに従うのが我が道理。 |
Valkenhayn |
ヴァルケンハイン
不服だろうが、付き合ってもらうぞ。 |
Valkenhayn |
ラケル
…………。 |
Raquel |
ラケル
ねえ、あの子はどうしたの? |
Raquel |
ナオト
ラケル? あの子って誰のことだよ。 |
Naoto |
ラケル
レイと一緒にいた子よ。 |
Raquel |
ラケル
ここは境界の影響が少なすぎて、はっきりと認識できないの だけれど……私、あなたと前にどこかで会ったわ。 |
Raquel |
ラケル
そのときはあなた、違う子と一緒だった。 |
Raquel |
ナオト
そう……なのか? |
Naoto |
1: シエルとはぐれちゃった |
1: |
ラケル
そう……だからあなたひとりの力で、 観測をコントロールして戦っているのね。 |
Raquel |
ラケル
すごいわ。強くなったのね、あなた。 |
Raquel |
ラケル
前はあの女の子の補助があるから、 なんとか形にできているという感じだったのに。 |
Raquel |
ラケル
それじゃあ、あの子はもういなくても大丈夫ね。 |
Raquel |
ラケル
あら……違うの? まだなにか役割があったのかしら。 もうあなたひとりで、なんでもできそうなのに。 |
Raquel |
ナオト
そりゃそうだろ、ラケル。 |
Naoto |
ナオト
事情はよくわかんねぇけど…… どんだけ強くなったって、大事なやつは大事なままなんだから。 |
Naoto |
ナオト
むしろ自分の側にいつもいてくれる大事な人がいるなら、 その人のために強くなりたいって思ったりするんだしさ。 |
Naoto |
ナオト
なんの役割とかじゃなくて、側にいてほしい子には、 そりゃ側にいてほしいよ。 |
Naoto |
ラケル
そう……。レイにとってのあの子も、 そういう存在なのね。 |
Raquel |
ラケル
側にいてほしいと思う気持ちは、私にもわかるわ。 利便性ではなく、もっとあやふやな気持ちでよ。 |
Raquel |
ラケル
……次に会うときは、あの子も一緒だといいわ。 あの子があなたのことをどう思っているのか、聞いてみたいの。 |
Raquel |
ナオト
お前がそんなことに興味を持つなんて、珍しいな。 |
Naoto |
ラケル
そうかしら。私は好奇心が旺盛なほうよ。 |
Raquel |
ナオト
まあ、確かに。 |
Naoto |
ナオト
……レイ、だっけ。お前の持ってる力、 なんか大変そうなんだな。 |
Naoto |
ナオト
俺が言うのもおかしいけど……まあ、頑張れよ。 |
Naoto |
ナオト
せっかくこうして会って、戦って、そんで半端な結果だけど 負かされたわけだから。応援してるよ。 |
Naoto |
ヴァルケンハイン
くそぉっ……! |
Valkenhayn |
ヴァルケンハイン
レイチェル様。クリスタルの吸収が完了したようです。 |
Valkenhayn |
レイチェル
そうね。私たちの奇妙な夢も、ここで終わり。 まあまあ楽しかったわ。 |
Rachel |
ラケル
この世界で最後に会えたのが、あなたたちだったのは、 運命のようなものを感じるわね。 |
Raquel |
レイチェル
運命だったのだと思うわ。 誰の手引きで紡がれたものかはわからないけれど。 |
Rachel |
レイチェル
……そろそろ行きましょう。 また、どこかで会いましょうね。 |
Rachel |
シオリ
……消えてしまいましたわ。 わたくしたちの勝ち……でいいのですわよね。 |
Shiori |
十三
向こうがいいって言ってるんだから、いいんじゃない。 あっちの目的は達成できたみたいだし。 |
Juusan |
十三
それより……。 大丈夫なの? そいつ。 |
Juusan' |
タロ
っ、つ……あ、はは……じゅうじゅう、 心配してくれるんだ……あい、ってて。 |
Taro |
ドライ
ああ、無理に起き上がろうとしなくても結構ですよ。 ダイナーまでは、私が運びましょう。 |
Drei |
シオリ
……応急手当だけはしておきますけれど、 とてもすぐに動ける状態ではありません。 |
Shiori |
シオリ
どうか無茶なさらないでくださいな。 |
Shiori |
十三
動けないなら、置いていく? |
Juusan |
タロ
……ぶっちゃけ、そうしてほしいかも。 戦力になれないどころか、かなりのお荷物になる。 |
Taro |
ドライ
なにを言うのです! そんな無情が許されるものですか。 重傷人ですよ? そのうえ我々の仲間です。 |
Drei |
シオリ
足手まといだというのはよくわかりますけれど、 だからといってこんな荒野に置き去りにはできませんわ。 |
Shiori |
シオリ
明日の寝覚めが悪くなりそうですもの。 |
Shiori |
十三
……どうせそんなこと、言い出すだろうと思ってたよ。 好きにしなよ。私はどうでもいいから。 |
Juusan |
タロ
ごめんね……思いっきりもらっちゃって。 |
Taro |
タロ
あのおじいさんじゃないほうの人狼の人、 めちゃくちゃ強かったよ……。 |
Taro |
シオリ
わたくしは見ていただけですけれど、おじいさんの方も 相当強かったですわよ。 |
Shiori |
ドライ
ええ。私までタロさんのような状態にならなくて、 本当によかったです。 |
Drei |
1: 観測の力が使いこなせれば…… |
1: |
シオリ
……そうすれば、タロ先輩が怪我をしないですむように、 事象を変えられたかも……ってことですか? |
Shiori |
タロ
これは、俺が下手を踏んだだけだよ。 レイの責任じゃない。 |
Taro |
ドライ
レイさん。いけませんよ。 |
Drei |
タロ
え、なにが? |
Taro |
ドライ
レイさんの力は、観測の力。観測することで、 実際になにが起こったのかを確定させることができる力です。 |
Drei |
ドライ
とても強力で、素晴らしい力ですとも。 ですがこれは、言い換えれば現実を改変する力です。 |
Drei |
ドライ
無闇に、しかも己の欲のために使用するのは危険です。 あまり率先してするべきではない。……私はそう思います。 |
Drei |
十三
……昔の話だけど。 お前みたいに観測の力を持ってしまったやつを知ってる。 |
Juusan |
十三
そいつはその力を散々利用されて、振り回され続けてた。 まあ、私にはあんまり関係ないんだけど。 |
Juusan |
十三
でも観測の力ってのは、便利なものじゃないし、 便利に使えるものでもないから……。 |
Juusan |
十三
……気を付けたほうがいいよ。 |
Juusan |
タロ
……レイも心配してくれてるんだよな。 ありがとう。とりあえず生きてるし、大丈夫だよ。 |
Taro |
タロ
あと、置いていってくれなんて言ってごめん。 もちろん最後まで、みんなと一緒に行きたいよ。 |
Taro |
タロ
だから悪いんだけど、ドラドラ。 治療ができる場所まで、お願いしてもいいかな。 |
Taro |
ドライ
当然です。さあ、しっかり掴まって。 肩に担ぎますよ。 |
Drei |
シオリ
一応、痛み止め代わりに麻痺毒を少しだけ投与しますわ。 より動けなくはなりますけれど、痛みはマシになるはずです。 |
Shiori |
タロ
はは……ありがとう。助かるよ、シオシオ。 |
Taro |
十三
帰り道も、いわゆる治安の悪い連中だとか、魔物だとかが 出てくるかもしれない。 |
Juusan |
十三
戦闘は私が行くけど、シオリとレイは いつでもすぐに対応できるようにしておけ。 |
Juusan |
シオリ
了解です。 |
Shiori |
シエル
(……長くトレーニングルームにいたと思っていたのに、 まだ2時間しかたっていない……。) |
Ciel |
シエル
(レイさんのいるファントムフィールドが
発見されて、 |
Ciel |
シエル
(まだ一日もたっていない。) |
Ciel |
シエル
(なのに……もう何日も顔を見ていないような気がする……。) |
Ciel |
シエル
(体の中に、穴が開いたようです。 これを何と呼んだらいいのですか……。) |
Ciel |
シエル
(レイさん……。) |
Ciel |
シエル
……ううん。余計なことを考えて、 バイタリティに不調をきたしてはいけません。 |
Ciel |
シエル
今はカガミさんたちを信じて、レイさんを信じて、 自分にできることをする……。 |
Ciel |
シエル
あ……。 |
Ciel |
テイガー
トレーニングルームにいたのか。 |
Tager |
シエル
テイガーさん。 はい。ウォーミングアップをしておこうと思いました。 |
Ciel |
シエル
体が緊張で固まっていましたが、もう万全です。
いつでも |
Ciel |
テイガー
それはなによりだ。その状態を維持しておくといい。 |
Tager |
シエル
はい。 |
Ciel |
シエル
……カガミさんやココノエさんは、いかがですか? |
Ciel |
テイガー
相変わらず、あちこちいじくり回している。 |
Tager |
テイガー
俺は搭載されている計器がオーバーロードしたんでな。 冷却しきるまで邪魔だと追い出されたところだ。 |
Tager |
シエル
そ、それは大丈夫なのですか? |
Ciel |
テイガー
故障のことを心配しているのか? 問題ない。 そうなったとしてもココノエがあとで修理してくれるだろう。 |
Tager |
シエル
…………。 |
Ciel |
テイガー
どうかしたか? 複雑そうな顔をしているが。 |
Tager |
シエル
いえ。その。たとえ修理できるとしても、 今はお辛くないのだろうかと気になりました。 |
Ciel |
シエル
……いえ、レイさんだったら、そんなことを 危惧されるのではないかと……思いました。 |
Ciel |
テイガー
そうか。 |
Tager |
テイガー
安心しろ、そう辛くはない。慣れたものだ。 |
Tager |
シエル
そうですか……。 |
Ciel |
テイガー
……私のことより、レイだ。 不安にさせるつもりはないんだが……もうかなり時間がたった。 |
Tager |
テイガー
フガクの中よりも、ファントムフィールド内のほうが 時間の経過が早いのだったな。 |
Tager |
テイガー
前回の通信以降、 向こうはどれくらい経っているのだろうか。 |
Tager |
シエル
正確な数値を把握していないので、断言できませんが…… 少なくとも数日は経過しているはずです。 |
Ciel |
テイガー
数日か。状況がどう変わっているのかが気がかりだな。 |
Tager |
カガミ
シエル、司令室に来い。大至急だ。 |
Kagami |
シエル
は、はい。なにかありましたか!? |
Ciel |
カガミ
|
Kagami |
シエル
! |
Ciel |
シエル
はい! |
Ciel |
シエル
シエル=サルファー、参りました! |
Ciel |
カガミ
よし。すぐに準備を始める。位置につけ。 |
Kagami |
シエル
了解! |
Ciel |
テイガー
入れるのか? |
Tager |
ココノエ
今だけ、数分間だけな。 |
Kokonoe |
ココノエ
偶然も重なって、なんとか調整できた。 だが現状を長く保っていられない。 |
Kokonoe |
カガミ
聞いての通りだ。こちらからどれくらいサポートできるかは、 定かではない。ラーベもない。 |
Kagami |
カガミ
だが今を逃したら、次にいつ行けるかもわからない。 |
Kagami |
カガミ
ファントムフィールドの解放を確認できたら、帰還を行う。 約束できるのはそれだけだ。 |
Kagami |
シエル
問題ありません。行かせてください。 |
Ciel |
シエル
必ずレイさんと合流し、窯を破壊してきます。 |
Ciel |
ココノエ
ああ、その前に。 シエル、ちょっとこっちに来い。 |
Kokonoe |
シエル
え? ですがこれから |
Ciel |
ココノエ
いいから来い。すぐに終わる。 |
Kokonoe |
テイガー
ココノエ、まさかシエルに改造を……。 |
Tager |
ココノエ
お前から改造してやろうか……。 |
Kokonoe |
カガミ
おお〜。いいじゃないか、いいじゃないか。 |
Kagami |
テイガー
ほう。 |
Tager |
シエル
あの……これは? |
Ciel |
カガミ
私がココノエに頼んでおいた新装備だよ。 |
Kagami |
シエル
新装備……ですか? |
Ciel |
ココノエ
急ごしらえではあるが、性能は保証する。 |
Kokonoe |
ココノエ
詳細不明のファントムフィールドに単身 |
Kokonoe |
シエル
ココノエさん、ありがとうございます。 |
Ciel |
カガミ
一応私も手を加えているぞ。 シエルのデータを提供したのも私だ。 |
Kagami |
ココノエ
そうだな。共同制作ということにしておいてやろう。 |
Kokonoe |
カガミ
なにおう。 |
Kagami |
シエル
おふたりとも、ありがとうございます。 とても心強いです。 |
Ciel |
シエル
至急、装備を整え、 |
Ciel |
カガミ
……頼んだ。 |
Kagami |
カガミ
《浸入》開始!</style> ダイブKagami |
8節『約束①』/ 8. Promise - 1
Summary | |
---|---|
ダイナーでは、先の戦いでタロが負った傷の
手当てが続いていた。しかし休息も束の間、 チームに宛てた次の対戦指示が届けられる。 |
シオリ
ただいま戻りましたわ。 少ないですけど、いくつか薬草を手に入れてきました。 |
Shiori |
ドライ
シオリさん、ご苦労様です。 |
Drei |
シオリ
さっそく薬の調合を始めますわね。 ……タロ先輩の様子はどうですか? |
Shiori |
ドライ
つい先ほど、目を覚ましたところですよ。 今はひなたさんが付いてくれています。 |
Drei |
ドライ
痛みのせいで、あまり眠れないようですね。 |
Drei |
シオリ
そうですか……あの。 皆さん、本当にありがとうございます。 |
Shiori |
ノエル
気にしないで。この世界では争う相手かもしれないけど、 こういうときに助け合ったって別にいいと思う。 |
Noel |
Es
はい。ノエルさんの言う通りです。 |
Es |
Es
今の私たちは対戦相手ではありません。 行動を制限されているわけでもありません。 |
Es |
Es
それに……タロさんが回復に向かっているのは、 彼自身の生命力のおかげです。 |
Es |
ノエル
そうだよ。応急処置をしたのだってシオリたちだし。 私たちは、せいぜい護衛役くらいにしかなってないもん。 |
Noel |
ノエル
……その護衛だって、ほとんどキサラギ少佐がひとりで やってるようなものだけど。 |
Noel |
Es
ジンさんが、ご友人のタロさんのためと仰るのですから ノエルさんが気に病む必要はないと思います。 |
Es |
ジン
勝手に決めつけるな。僕の知らないところで勝手に死なれるのも 元学友として気分が悪いだけだ。 |
Jin |
Es
はい、ですからジンさんはタロさんを心配して……。 違うのですか? |
Es |
ジン
違う。二度と間違えるな。 |
Jin |
Es
そうですか、了解しました。 |
Es |
シオリ
ふふっ……あっと、こうしてはいられませんわ。 シオリはタロ先輩のところへ薬を持って行かないと。 |
Shiori |
ドライ
私も一緒に行きましょう。 |
Drei |
ひなた
あ、シオリさん。おかえりなさい。 |
Hinata |
シオリ
ただいまですわ。これ、痛み止めになる薬草です。 部屋の端で調合させていただきますね。 |
Shiori |
シオリ
タロ先輩、具合はいかがです? |
Shiori |
タロ
傷は痛むけど……なんとか大丈夫だよ。 酷くなってる感じもないし、みんなのおかげだね。 |
Taro |
タロ
……けど、まともに動けるようになるには しばらく時間がかかっちゃいそうだよ。 |
Taro |
タロ
みんなに迷惑かけちゃうなんて、ほんと情けないや……。 |
Taro |
シオリ
それは言わないお約束ですわよ。 こんな時のために、補欠としてシオリがいるんですから。 |
Shiori |
ドライ
ええ、チーム戦である以上、誰が離脱するかはわかりません。 今回はたまたまそれがタロさんだったというわけですよ。 |
Drei |
ドライ
あとは私どもにお任せください。 タロさんはまず、体の方をしっかり治すことが先決です。 |
Drei |
ひなた
ふふっ、いいチームですね。 |
Hinata |
タロ
ひなひなも、ありがとう。 おかげで、随分楽になったよ。 |
Taro |
ひなた
ひなひな…… ふふ、そんな風に呼ばれるの、初めて。 |
Hinata |
タロ
ジンジンたちにもあとでお礼しなきゃ。 ところで、じゅうじゅうは? |
Taro |
ドライ
ひとりで外を警戒していますよ。 |
Drei |
ドライ
……もっとも本人曰く、 馴れ合うのは性に合わない、外で風にでもあたってくる……。 |
Drei |
ドライ
……だ、そうですが。 |
Drei |
シオリ
まったく、素直じゃありませんわね。 |
Shiori |
タロ
はは、でもじゅうじゅうらしいや。 |
Taro |
ジン
思っていたより元気そうだな。 その様子なら、護衛なんか必要なかったか。 |
Jin |
タロ
またまた、ジンジンってば相変わらず厳しいんだから。 |
Taro |
タロ
それで? みんな揃ってどうしたの? |
Taro |
ノエル
食事の用意ができましたので、呼びに来たんです。 あ、タロ先輩の分はあとで持ってきますからね。 |
Noel |
シオリ
え"っ……あの、ノエル? まさかその食事って、ノエルが作った……とか? |
Shiori |
ノエル
えっ? ううん、ダイナーで注文したやつだよ。 どうして? |
Noel |
シオリ
あっ、ううん、だったら別に……あは、あははは……。 |
Shiori |
ノエル
あ、でもタロ先輩のお粥だけは私の手作りですよ。 具材も栄養もたっぷりですからね。 |
Noel |
タロ
え〜手作り? それは楽しみだなぁ! |
Taro |
シオリ
タロ先輩、せっかく助かった命なのに……ご愁傷さまです。 |
Shiori |
タロ
え? え? なにシオシオ? どういうこと? |
Taro |
シオリ
なんでもありませんわ。 はいこれ。特性の薬です。食後に飲んでくださいね。 |
Shiori |
タロ
ああ、ありがとう。 そうだ、ジンジン。少しだけ、いいかな。 |
Taro |
ジン
……ああ。 |
Jin |
ノエル
それでは、私たちは先に食事にしましょう。 タロ先輩のお粥は、あとで持ってきますね。 |
Noel |
ドライ
十三、外の警戒はもう大丈夫なのですか? |
Drei |
十三
ん……特に気配も感じないし、地形も把握したから 誰かが近づけばすぐに……。 |
Juusan |
十三
……私は風にあたってくるって言ったはずだけど。 |
Juusan |
ドライ
そうでしたね、失礼しました。 |
Drei |
十三
ふん……。 あいつの様子は? |
Juusani |
シオリ
空元気……といった感じでしょうか。 けど、しばらく休めば回復はすると思いますわ。 |
Shiori |
Es
そうですね、安静にして栄養価の高いものを摂取していれば、 数日で動けるようになるかと思われます。 |
Es |
十三
その様子じゃ、戦力として数えるのは厳しそうだね。 今後の戦術を考える必要がありそうだ。 |
Juusan |
シオリ
ちょっと、十三。今はそんなこと……! |
Shiori |
1: 大事なことだね |
1: |
シオリ
レイまで。 |
Shiori |
ドライ
いえ、正しい意見ですよ。タロさんの体調に関わらず 我々は勝ち進むしかないのですから。 |
Drei |
シオリ
……そう、ですわね。 |
Shiori |
シオリ
そりゃ、シオリだって頑張りますけど…… それよりまずは、タロ先輩が心配じゃないんですか? |
Shiori |
ドライ
みんな、心配ですよ。でも……。 |
Drei |
ドライ
私たちは戦うことを止めるわけにはいきません。 タロさんの体調に関わらず、勝ち続けるしかないのですから。 |
Drei |
シオリ
……そう、ですわね。 |
Shiori |
ノエル
でも、頑張るためにはご飯を食べて 体にパワーをつけておかなきゃ! |
Noel |
ノエル
さあさあ皆さん、まずはご飯にしましょう! ほら、十三ちゃんも。そんなに怖い顔してないで! |
Noel |
十三
えっ、いや、私は……。おい、押すな! |
Juusan |
ノエル
いいからいいから。ほら、座って。 |
Noel |
ノエル
十三ちゃんってきっと、私より年下でしょう? お姉さんの言うことは聞かなきゃダメだよ? |
Noel |
十三
うっ……わ、わかった……座る。 座るから、そんなに押すなって……。 |
Juusan |
十三
はぁ……どの世界でもこんなに強引なのか……。 |
Juusan |
ノエル
じゃあシオリ、料理運ぶのを手伝ってもらえる? |
Noel |
シオリ
ええ、あそこに並んでる料理でいいのですわね。 あら、この紙に包まれているのもですか? |
Shiori |
ノエル
えっ? 包み……ってなに? |
Noel |
シオリ
…………あ。 |
Shiori |
ドライ
シオリさん? どうしました? |
Drei |
シオリ
これを……。 |
Shiori |
ドライ
パンの包み紙、ですか? |
Drei |
シオリ
ええ。ここに、次の指示が……。 |
Shiori |
ジン
それで、僕に話か? |
Jin |
タロ
引き留めてごめん。そんなに大した話じゃないんだ。 |
Taro |
タロ
ただ、こんな世界でもなきゃ、なかなかジンジンと 話せる機会なんてないから。 |
Taro |
ジン
…………。 |
Jin |
ジン
そうだな。士官学校を出てから、初めてか。 立場も家も、なにも関係なくお前と話をするのは。 |
Jin |
ジン
ただし、今はある意味敵同士ではあるが……ふん、因果なものだ。 友人が話をするのに、敵である必要があるなんてな。 |
Jin |
タロ
あはは、まったくだよ。 |
Taro |
ジン
それで、傷の具合はどうなんだ? |
Jin |
タロ
それなりに痛いけど、動けないほどじゃないよ。 骨の何本かは折れたみたいだけど。 |
Taro |
ジン
……やせ我慢は程々にしておくことだ。 もう学生じゃないんだからな。 |
Jin |
ジン
どの道、その体ではもう、ゲームには参加できないだろう。 |
Jin |
タロ
あぁ……そうだね。 情けないよ、自分が。 |
Taro |
タロ
ジンジンは……強くなったんだなぁ。 |
Taro |
ジン
…………。 |
Jin |
タロ
いや……変わったのかな。 |
Taro |
タロ
俺が近くにいられた学生のころは、 もっと柔らかい雰囲気だったけど……。 |
Taro |
タロ
いつも気を張っていて、自分を押し殺していて、 危うげな印象があった。 |
Taro |
タロ
今は……ジンジンの心配をすることすら 俺なんかじゃ畏れ多いくらいだよ。 |
Taro |
タロ
まるで抜き身の刀だ。こうやって目の前にいるだけで、 今にも斬られるんじゃないかって冷や汗かいちゃいそうだ。 |
Taro |
タロ
その殺気、ずっと出してなきゃ駄目なの? |
Taro |
ジン
……癖なんだ。すまないが、我慢してくれ。 |
Jin |
タロ
それが癖になっちゃうくらい、死線を くぐり抜けてきたってことか……。 |
Taro |
タロ
まいったな、強くなるわけだよ。 士官学校の頃から、すっかり差を開けられちゃったな。 |
Taro |
タロ
そのユキアネサだってそう。 |
Taro |
タロ
前は剣そのものに振り回されてたけど、 今はジンジンの武器として、体の一部みたいに感じるからね。 |
Taro |
タロ
もう、俺の護衛もジンジンには必要なくなっちゃったな。 |
Taro |
ジン
……タロ。 今のお前には、他に護るべき人間がいるだろう。 |
Jin |
ジン
お前の目指している道も、簡単ではないぞ。 |
Jin |
タロ
それも見抜かれてるか……ああ、わかってるよ。 俺だって生半可な気持ちで決めたわけじゃないから。 |
Taro |
ジン
そうか……ならいい。 |
Jin |
タロ
ジンジンこそ、もう見つかったの? 『探してる相手』。 殺さなきゃいけないはずの誰か……だっけ? |
Taro |
ジン
……いいや。 僕の道も簡単ではないからな。 |
Jin |
ジン
だが……自分でも不思議なんだが そいつが見つかる方が良いとは……僕自身、思えないんだ。 |
Jin |
タロ
そっか……大変だね、お互い。 |
Taro |
ジン
……そうだな。 |
Jin |
8節『約束②』/ 8. Promise - 2
Summary | |
---|---|
森を移動する十三たちは、ファジーとハザマ
の奇襲を受けた。対戦そのものの妨害を狙う 襲撃に、一行は応戦しつつ目的地へと急ぐ。 |
シオリ
ちょっとちょっと! タロ先輩、荷物はシオリが持ちますから! |
Shiori |
タロ
なに言ってんの、大丈夫だって! こんな怪我くらいで……っ。 |
Taro |
タロ
つぅ……。 |
Taro |
シオリ
ほら、だから言ったじゃないですか! |
Shiori |
タロ
だ、大丈夫、大丈夫、これくらい……うぎっ……! |
Taro |
Es
ものすごい冷や汗です。 おそらくタロさんは、やせ我慢をしていると思われます。 |
Es |
シオリ
そんなの、誰が見たってわかりますわよ。 |
Shiori |
ひなた
やっぱり、まだ安静にしてたほうが いいんじゃないかなぁ……。 |
Hinata |
ノエル
そ、そうですよタロ先輩。 せめて傷が塞がるまでは寝てるべきです! |
Noel |
十三
言って聞くタマじゃないよ。 それより、自分たちの心配したほうがいいんじゃない? |
Juusan |
十三
……そっちも次、決まってるんでしょ。 |
Juusan |
ノエル
えっ! な、な、なんでわかるんですか!? |
Noel |
ジン
貴様のせいだ、ノエル=ヴァーミリオン。 昨日より明らかに、気が張っている。 |
Jin |
ノエル
そんな……それならそうと、教えてくれても いいじゃないですかぁ。 |
Noel |
ノエル
タロ先輩たちに気を使わせないようにと、 内緒にしてたのに〜……。 |
Noel |
ジン
教えたところで、貴様に隠し通せるはずがない。 貴様以外の全員がわかっていることだ。 |
Jin |
Es
はい、そうですね。 |
Es |
ノエル
そ、そんなぁ!? ひなたちゃん! ひなたちゃんは、そんなことないよね!? |
Noel |
ひなた
え? ええっと……あ、あはは。 ノエルちゃん、あんまり嘘が得意じゃなさそうだから……。 |
Hinata |
ノエル
みんな、ひどいよぉ〜!! |
Noel |
ひなた
だけどタロさん。本当に無理はしないでくださいね。 まだ寝てなくちゃいけないのは、間違いないんだから。 |
Hinata |
1: 大丈夫、タロはみんなで支えるよ |
1: |
ドライ
レイさんの言う通りです。 私たちは、チームですから。 |
Drei |
ドライ
タロさんのことは、我々にお任せください。 |
Drei |
十三
ま、本当に動けなくなったら置いていくけどね。 |
Juusan |
タロ
マジで……? |
Taro |
ドライ
ええ、タロさんはなにを言っても付いてくるでしょう。 我々に彼を止める手立てはありません。 |
Drei |
ドライ
タロさんのことは、我々にお任せください。 |
Drei |
十三
ま、本当に動けなくなったら置いていくけどね。 |
Juusan |
タロ
マジで……? |
Taro |
ジン
ああ、置いていく時は一切の遠慮をしないでくれ。 タロは優しくされると甘えるところがあるからな。 |
Jin |
タロ
ひどい、ジンジンまで! |
Taro |
ジン
僕たちもそろそろ行くぞ。 これ以上、遊んでいる暇はない。 |
Jin |
Es
そうですね。時間を考えても あまりゆっくりしていると間に合わなくなりそうです。 |
Es |
シオリ
皆さん、お世話になりました。 次に会う時は……今度こそ敵同士ですね。 |
Shiori |
ノエル
そう……だね。 塔を目指す者同士、どこかでまた会うことになるよね。 |
Noel |
ジン
それまで負けるなよ、タロ。 |
Jin |
タロ
ジンジンこそ! |
Taro |
十三
もういいかい? さっさと行くよ。 |
Juusan |
ドライ
それでは、我々はこれで。 |
Drei |
ノエル
行っちゃいましたね……。 本当に大丈夫かな、タロ先輩。 |
Noel |
ジン
問題ない、ああ見えて頑丈なやつだ。 |
Jin |
ひなた
…………。 |
Hinata |
Es
ひなた? どうしました? |
Es |
ひなた
こうしてまた、みんな塔を目指す…… 塔に行けば、本当に私たちの願望は叶うのかな? |
Hinata |
Es
もしや、またあの夢を見たのですか? |
Es |
ひなた
……うん。 |
Hinata |
ひなた
『誰か』がいた夢。私たちが知らないはずの『誰か』。 塔に行けば、私もEsちゃんも、それがわかるのかな。 |
Hinata |
ひなた
もうずっと思い出せない『誰か』のことが……。 |
Hinata |
Es
…………。 |
Es |
ドライ
……妙、ですね。 |
Drei |
十三
……だね。 |
Juusani |
シオリ
妙とは、なにがでしょうか? |
Shiori |
十三
さっきから纏わりついてくる気配のことだよ。 たぶんだけど、ドライブ能力者。 |
Juusan |
タロ
えっ? て、敵!? いつっ……つうぅ……! |
Taro |
シオリ
んもう、タロ先輩。ご自分の状態を自覚してください。 ここはシオリに任せてくださいな。 |
Shiori |
シオリ
でも……シオリにはなんの気配も感じられませんわ。 本当に敵なのでしょうか? アベンジさんなのでは? |
Shiori |
十三
あいつが私たちを付けまわす理由がないし、 それにアベンジからはもっと殺気が感じられた。 |
Juusan |
十三
今追ってきてるやつに敵意は感じられないから、 殺し屋のアンタじゃ察知できないんじゃないかな。 |
Juusan |
ドライ
ええ。私も魔術によって淀みを微かに感じられる程度です。 一定の間隔で、ずっと我々についてくる気配の淀みを。 |
Drei |
シオリ
魔術で……でも、ならば十三はなぜ その気配を感じられるのですか? |
Shiori |
シオリ
十三は、魔術は使えませんわよね? |
Shiori |
十三
…………。 昔、いたんだ。 |
Juusan |
十三
近くにいるだけで、こういう感覚を覚えるやつがね。 |
Juusan |
タロ
それじゃ、じゅうじゅうの知り合いなの? だったら味方になってくれる……とか? |
Taro |
十三
それはないかな。 私はそいつのことが、大嫌いだからね。 |
Juusan |
ドライ
ではやはり、敵ですか。 今度の対戦相手でしょうか? |
Drei |
十三
どうかな……。 敵でも味方でも気味の悪い蛇みたいな男だよ。 |
Juusan' |
シオリ
あ……。 でもやっぱり、敵みたいですわね。 |
Shiori |
シオリ
対戦に指定された場所までは、まだしばらく先ですけど この『臭い』は誤魔化せませんわ。 |
Shiori |
タロ
臭い……? 本当だ、言われてみれば。 なんだろうこの臭い、あまりいい臭いじゃないけど……。 |
Taro |
シオリ
この臭いなら、幼い頃から何度も嗅いできました。 これは……死臭ですわ。 |
Shiori |
タロ
死……ええっ!? |
Taro |
1: みんな、気を付けて! |
1: |
ドライ
森の中で挟み撃ちですか。厄介ですね。 |
Drei |
ドライ
しかし敵の姿が見えません。いったいどこに……? |
Drei |
タロ
うそだろ?! 地面から出てきたぞ!! 気持ちわる……なんだ、こいつら!? |
Taro |
シオリ
これは……アンデッドですわ! |
Shiori |
ドライ
アンデッド……死してなお戦う獣ですか。 見るからに動きは鈍そうですが……少々数が多い。厄介ですね。 |
Drei |
ドライ
しかしこの手の術は、必ず術者が近くにいるはず。 これほどの数です。きっと我々の見える場所に……。 |
Drei |
シオリ
――そこですわっ! |
Shiori |
ファジー
あれあれ〜? 気付いた? 気付いちゃった? おっかしいな〜、完璧に隠れてたはずなんだけど。 |
Fuzzy |
ファジー
あ、もしかして殺気が漏れてたとか? 君、ひょっとして殺し屋かな? かなかな〜? |
Fuzzy |
シオリ
子ども……? いえ、でもこの無邪気な殺気。 見た目に惑わされてはいけませんわね。 |
Shiori |
十三
へぇ、死霊使いか。 それに、この感じ……いや、似てるけど違う……。 |
Juusan |
十三
そんなに力も感じないし……気のせいか。 |
Juusan |
ファジー
ん〜? そこのお姉さん、なんか失礼なこと言った? せっかくだからお姉さんから遊んであげようかな? かなかな? |
Fuzzy |
十三
あぁ、わかった。あんた『混ざりもの』か。 どうりで中途半端な気配をしてるわけだ。 |
Juusan |
ファジー
あはは、おもしろいお姉さんだね。ちょっとムカついちゃったから すぐに殺しちゃってもいいかな。……いいよね? |
Fuzzy |
十三
試してみる? 半端なハーフヴァンパイアごときに 私を殺せるかどうか。 |
Juusan |
ファジー
っ……! だったら、試してあげるよ!! |
Fuzzy |
十三
……ふん。 |
Juusani |
タロ
じゅうじゅう、大丈夫!? くそっ、シオシオ! 援護を! |
Taro |
シオリ
わかっていますわよ! けど……こいつらが! |
Shiori |
ドライ
はぁッ!! |
Drei |
ドライ
一匹一匹はそれほど脅威ではありませんが、数が多い……。 これをすべて退けるのは骨が折れますよ。 |
Drei |
ファジー
あれあれぇ〜? お姉さん、どうしたのかな? かなかな? あんなに大口叩いて、逃げ回るだけなの? |
Fuzzy |
十三
…………。 |
Juusan |
タロ
やばいぞ、あのじゅうじゅうが防戦一方だなんて。 あの子、とんでもなく強いぞ!? |
Taro |
1: 十三なら大丈夫だよ |
1: |
ドライ
ええ。レイさんの言う通りですよ。 |
Drei |
ドライ
一見押されているように見えますが、 十三はあの鋭い攻撃をすべて見切っています。 |
Drei |
ドライ
彼女が攻撃に転じないのは、理由があるのです。 |
Drei |
ドライ
いえ、手を出す必要はありませんよ。見てください。 |
Drei |
ドライ
一見押されているように見えますが、 十三はあの鋭い攻撃をすべて見切っています。 |
Drei |
ドライ
彼女が攻撃に転じないのは、理由があるのです。 |
Drei |
シオリ
理由……ですか? |
Shiori |
ドライ
ええ。その理由のひとつめが……。 |
Drei |
ドライ
ぬぅん!!</style> |
Drei |
タロ
なっ……攻撃!? どこから!? |
Taro |
ドライ
理由のひとつめ。 我々の隙を狙っていた、もうひとりの存在です。 |
Drei |
ハザマ
おやおや、いなされてしまいましたか。 おまけに私の存在も気取られていたようで……参りましたね。 |
Hazama |
ハザマ
ファジーさんと戦う彼女といい、あなたといい、 とても強い力をお持ちのようですね。いや本当に強い。 |
Hazama |
ドライ
隙をついて背後から攻撃とは卑怯な……。 どなたかお聞きしても良いでしょうか? |
Drei |
ハザマ
これはこれは、失礼しました。 私、ハザマと申します。 |
Hazama |
ハザマ
あなたがたには、次の対戦相手、と言ったほうが ご理解いただきやすいでしょうか。 |
Hazama |
シオリ
対戦相手ですって!? |
Shiori |
シオリ
ちょっと! 場所も時間も、全然違いますわよ! |
Shiori |
ハザマ
ええ、その通りです。 ですから我々、いわゆる捨て駒というやつでして。 |
Hazama |
タロ
捨て駒だって? |
Taro |
ドライ
なるほど……そういう手も許されているのですね。 |
Drei |
1: どういうこと? |
1: |
ドライ
このゲームは4人までバトルに参加することができますが 見ての通り、彼らはふたりしかいません。 |
Drei |
ドライ
他に気配も感じませんし、今この場には本当に 彼らふたりしかいないのでしょう。 |
Drei |
ドライ
では、彼らはふたりしかいないチームなのでしょうか? |
Drei |
シオリ
ゲームが終盤に差し掛かり、勝ち進んだチームも強敵ばかり…… ふたりだけのチームで勝ち進むのは考えにくいですわ。 |
Shiori |
シオリ
つまり……残りのふたりは、別にいる。 |
Shiori |
ドライ
ええ。だから捨て駒なのです。 |
Drei |
ドライ
我々はチームの全員がここにいる。 |
Drei |
ドライ
もし我々がこのまま負けたり、仮に勝ったとしても 時間が足りなくなって指定場所に辿り着けなければ? |
Drei |
タロ
俺たちはゲーム不参加で敗北になる……。 |
Taro |
タロ
じゃあこいつら、単なる時間稼ぎの嫌がらせ!? |
Taro |
ハザマ
だから言ったでしょう。我々は捨て駒ですよ。 |
Hazama |
ファジー
ああもう、逃がしちゃった! |
Fuzzy |
十三
……ああ、やっぱりお前か。 |
Juusan |
ハザマ
おや? 私のことをご存じで? あいにく、あなたには見覚えがありませんが……。 |
Hazama |
十三
……蛇の言うことは信じられないね。 |
Juusan |
十三
それより、あんたたち本気? たったふたりで、時間稼ぎできると思ってるの? |
Juusan |
ハザマ
いや〜、私は正直あまり自信がないんですけど。 ファジーさんがどうしてもって言うもんですから。 |
Hazama |
ファジー
うーん、だってここ、森の中だし? |
Fuzzy |
ファジー
そこら中、仕込んでおいた魔獣だらけだし、 いけるかな〜。かなかなぁ? アハハハ! |
Fuzzy |
シオリ
確かに数はかなりのものですわね。 |
Shiori |
シオリ
けれど、こんなもの、術者を倒せば動けなくなる ただの操り人形でしょう!? |
Shiori |
ファジー
うん、その通り! 僕が死ねば、この子たちももう一度死ぬ。だから……。 |
Fuzzy |
タロ
消えた……!? |
Taro |
ファジー
君たちに見つからないように、 姿を消させてもらうよ。 |
Fuzzy |
ドライ
気配まで完全に消すとは……お見事です。 |
Drei |
シオリ
そんな……あの強烈な殺気も完全に消えた……? 先ほどのものは、わざと気付かせたのですね。 |
Shiori |
ファジー
アハハハ、当たり前だよそんなの。 |
Fuzzy |
ファジー
君みたいな弱い子に、僕が見つかるわけないじゃない。 昔から得意なんだよ、かくれんぼ。 |
Fuzzy |
シオリ
くっ……。 |
Shiori |
十三
ハザマも消えたか。 殺意がないっていうのもなかなか面倒だね。 |
Juusan |
十三
目的は時間稼ぎ。 本気で攻撃をするつもりはない……か。 |
Juusan |
シオリ
ちっ……せい! |
Shiori |
シオリ
薄暗い森の中で、これほどの数となると厄介ですわね。 |
Shiori |
シオリ
いくら弱いモンスターとはいえ、 あと何匹出てくるかもわかりませんし……。 |
Shiori |
十三
片っ端から斬ってやってもいいけど…… レイ、どうする? |
Juusan |
十三
このチームのリーダーはあんただ。 レイの判断に任せるよ。 |
Juusan |
1: 走って逃げよう |
1: |
ドライ
一気に森を抜ける手ですか。確かに、森さえ抜けてしまえば、 いかに気配を隠しても見つけられます。 |
Drei |
ドライ
それに、相手の狙いである時間稼ぎの無効化にもなる。 |
Drei |
十三
いいね、それでいこう。 |
Juusan |
十三
敵に背を向けるのは嫌いだけど…… 相手の思惑に乗るのはもっと嫌いなんだ。 |
Juusan |
ドライ
対戦場所は、右の方向ですが……。 なるほど、この状況を無視するつもりですか。 |
Drei |
ドライ
さすがレイさん。 思い切った一手です。 |
Drei |
シオリ
相手の狙いは時間稼ぎ……シオリたちが誘いに乗らず 一気にこの森を抜けてしまえば……。 |
Shiori |
シオリ
あの方たちも、こちらを追ってくるしかない。 |
Shiori |
十三
確かに、バカ正直に相手の土俵で戦う必要はないか。 いいね、それでいこう。 |
Juusan |
十三
敵に背を向けるのは嫌いだけど…… 相手の思惑に乗るのはもっと嫌いなんだ。 |
Juusan |
タロ
え? え? 一気に森を抜けるって……。 |
Taro |
ドライ
ご心配なく。怪我をされているタロさんは私が担ぎますので。 肉体強化の魔術を使えば、容易いことです。 |
Drei |
ドライ
それでは、失礼! |
Drei |
タロ
えええ? すごい、こんなに軽々と……!? |
Taro |
シオリ
じゃあ皆さん、行きますわよ! さん、に、いち……!! |
Shiori |
ファジー
あ〜〜〜! うそ〜!? 逃げた!!? |
Fuzzy |
ファジー
あのお姉さん、 絶対逃げるような性格じゃないと思ったのに……。 |
Fuzzy |
ハザマ
おやまあ、思ったより冷静な方たちですねぇ。 これはおもしろくなってきました。 |
Hazama |
ハザマ
さて、では追いますか、ファジーさん。 このまま逃げられては、私たちの働きが無駄になってしまいます。 |
Hazama |
ファジー
くっそ〜。仕方ないなぁ……。 |
Fuzzy |
十三
さて、と……。 |
Juusan |
十三
それで? 嫌がらせの時間稼ぎはもう終わり? |
Juusan |
ハザマ
ええ、あんなに堂々と逃げられては仕方がありません。 私、本当は戦闘なんてしたくないんですけど……。 |
Hazama |
ハザマ
このままタダであなた方を行かせるわけにもいきませんし。 |
Hazama |
ドライ
まさか本当に、ふたりで我々と戦うつもりですか? |
Drei |
ファジー
うーん? まだまだ手駒も用意してるし。 僕らだけで、全然問題ないかな〜。かなかな。 |
Fuzzy |
シオリ
またアンデッド……もう、しつこいですわね! |
Shiori |
シオリ
さっさと倒してしまいましょう。 のんびりしていられる時間はありませんわ! |
Shiori |
ドライ
そうですね。それに、彼らふたりをここで倒せるのなら、 相手チームの戦力を削ぐことにもつながります。 |
Drei |
ドライ
戦いましょう、レイさん。 |
Drei |
十三
ふん……。 |
Juusani |
8節『約束③』/ 8. Promise - 3
Summary | |
---|---|
激戦の末に辿り着いた対戦場所に、カズマと
キイロが待ち受ける。多重の策による窮地を 救ったのは、浸入に成功したシエルだった。 |
シオリ
はぁ、はぁ……んもう! 本当に戦う気があるんですか、あなたたち!? |
Shiori |
シオリ
さっきから、逃げてばかりじゃないですか! |
Shiori |
ファジー
アハハハ、そうかな〜? え〜、そんなことないと思うけどなぁ? |
Fuzzy |
シオリ
って言いながら、逃げるなー!! |
Shiori |
ファジー
アハハハ、今度は鬼ごっこだね。 僕に追いつけるかな? かなかな? |
Fuzzy |
シオリ
こんのぉ〜……! |
Shiori |
ハザマ
ちょっとちょっと、ファジーさん。 楽しんでいないで、こっちも手伝っていただけませんかね。 |
Hazama |
ハザマ
この方、めちゃくちゃ強いんですよ! |
Hazama |
十三
フッ……! |
Juusani |
ハザマ
ひぃっ!? |
Hazama |
ハザマ
はあぁ〜……今のは危ないところでした。 やられてしまったかと思いましたよ……。 |
Hazama |
十三
ほざけ、ピエロめ。 |
Juusan |
十三
――ドライ!! |
Juusan' |
ドライ
承知!! はぁッ!!</style> |
Drei |
ハザマ
おっとこれはいけません! |
Hazama |
ドライ
ぬぅっ……障壁!? |
Drei |
ドライ
どうやら、相手チームが揃ったようですね。 |
Drei |
タロ
あのふたりを追っているうちに、対戦場所に着いてたのか……。 |
Taro |
カズマ
間一髪でしたね。大丈夫ですか、ハザマさん? |
Kazuma |
ハザマ
大丈夫じゃないですよ、死んだかと思いました。 本当に間一髪で……ヒヤヒヤさせないでください、カズマさん。 |
Hazama |
ハザマ
本番の戦闘前にやられちゃったら、どうするんですか。 |
Hazama |
キイロ
どうするって、そのまま消えちゃうだけでしょ。 やられたらやられたで、仕方ないじゃない。 |
Kiiro |
ハザマ
おやおや、冷たい方ですねぇ。 こんな方と留守番なんて、大変だったでしょう。 |
Hazama |
カズマ
へ? いや……まあ、はい。 |
Kazuma |
キイロ
そんなことより、これだけ時間かけたんだから、 相手の戦闘データはしっかりとれたんでしょうね? |
Kiiro |
ハザマ
ええ、それはもう。こう見えても、諜報部に 所属しておりますのでね。お任せください。 |
Hazama |
シオリ
戦闘データ……? |
Shiori |
ドライ
捨て駒……というのもブラフですか。 いやはや、まんまと相手の作戦に振り回されていますね。 |
Drei |
十三
最初から、こっちの手の内を知るための尖兵か。 確かに、あのふたりならうってつけだね。 |
Juusan |
十三
もちろん、もし時間稼ぎが成功して、私たちが失格になれば それはそれで狙い通りだったんだろうけど……。 |
Juusan |
シオリ
二重の罠ということですか。 なかなか卑怯な手を使ってくれますわね。 |
Shiori |
カズマ
ハザマさん。ファジーさん。 相手のチーム構成を教えていただけますか? |
Kazuma |
ハザマ
相手のメインアタッカーは、あの怖い顔をした彼女……。 あちらの屈強な方もかなりの使い手ですね。頭の回転も早い。 |
Hazama |
ハザマ
おそらくカズマさん、あなたと同じ魔術師ですよ。あの方。 |
Hazama |
カズマ
さっきから僕を睨んでるので、 あっちも気付いてるみたいですね……。 |
Kazuma |
ファジー
毒使いの子は、動きは速いけど力は足りないかな。 背後を取るのは得意そうだけど、気を付けてれば問題ないよ。 |
Fuzzy |
ファジー
それから奥の男の人は、ただの怪我人だね。 動けないっぽいから、無視かな。かなかな。 |
Fuzzy |
ファジー
それから〜……。 |
Fuzzy |
ファジー
あの大人しそうな男の子。 |
Fuzzy |
ファジー
あの大人しそうな女の子。 |
Fuzzy |
ファジー
かなり不気味だよね。 なんていうか……すごく気持ち悪い。 |
Fuzzy |
カズマ
へぇ、そんな風には見えないですけど…… って、あれ? |
Kazuma |
カズマ
その制服、もしかしてあなた、 イシャナの関係者だったりします? |
Kazuma |
1: カズマさんですよね? |
1: |
カズマ
僕を知ってるんですか? すみません、覚えていなくて。 |
Kazuma |
カズマ
あまり人の顔を覚えるのは得意じゃないんです…… 人違い、ってことは……あ、なさそうですね。 |
Kazuma |
カズマ
まあ、でしたら。そうですか、はい。 |
Kazuma |
キイロ
あなた、お名前は? |
Kiiro |
キイロ
……へぇ。レイっていうの。 |
Kiiro |
キイロ
ファジーの言う通り、確かにおもしろいわね、あなた。 よかったら、うちのチームに入ってみない? |
Kiiro |
キイロ
私の良い『眼』になりそうだわ。 |
Kiiro |
キイロ
あら残念。フられちゃった。 |
Kiiro |
十三
ちっ……惜しい。 |
Juusan |
キイロ
いやぁね、横から急に。 まだ話してる途中だっていうのに、野蛮なんだから。 |
Kiiro |
十三
アンタ……素体だろ? |
Juusan |
十三
悪いけど、素体と会ったら破壊するって決めてるんだ。 |
Juusan |
キイロ
あら……あなた。へぇ……。 どこから来たの? お姉さん、ちょっと興味あるわ。 |
Kiiro |
ドライ
ふむ、確かに魔術師で間違いないようですね。 その服……イシャナの学生ですか? |
Drei |
ドライ
私の知るものとは少々デザインが異なるようですが……。 |
Drei |
カズマ
この魔力……とんでもないな。 僕なんかより遥かに格上の魔術師だ……。 |
Kazuma |
カズマ
というか、格上どころか十聖でもおかしくない……。 ええ、こんな人と戦って無事ですむと思えないんですけど。 |
Kazuma |
ドライ
もし戦意を喪失したのなら、逃げても良いのですよ。 もちろん、背後を狙うようなこともしないとお約束しましょう。 |
Drei |
カズマ
……それは願ってもないご提案なんですが、 残念ながらそうもいかないんですよね……。 |
Kazuma |
カズマ
こんな僕でも、叶えてもらいたい願望というものが ありまし……て! |
Kazuma |
ドライ
宜しい。ならばこのドライの全力を以って、 あなたを打ち負かしましょう! |
Drei |
ドライ
せいやっ!!</style> |
Drei |
カズマ
うわああああぁぁっ!!?</style> |
Kazuma |
カズマ
ひ、ひえぇ……な、なんですかそのパンチの威力は。 あなた、魔術師なんじゃないんですか……!? |
Kazuma |
ドライ
これが私の肉体強化の魔術です。 さあ、あなたの力も見せてください。存分に戦いましょう。 |
Drei |
カズマ
ひ、ひいぃ……!! |
Kazuma |
ファジー
アハハハ! 楽しい、楽しいねぇお姉さん! |
Fuzzy |
シオリ
くっ……次から次へと、どうなってるんですか!? 幻覚でもなさそうだし……ああもう、面倒くさい! |
Shiori |
ファジー
すごいすごい! お姉さんも結構強いんだね。 でも……それだけじゃ僕には勝てないかな。かなかな!? |
Fuzzy |
シオリ
くうぅっ……! |
Shiori |
ハザマ
さて、皆さん盛り上がっているようですけど…… あなたは戦わないんですか? |
Hazama |
ハザマ
私の見たところ、直接戦うタイプではないみたいですが……。 |
Hazama |
ハザマ
なんなんですかね、これ。あなたに観られると 体が重くなるような、変な感じがするんですよね。 |
Hazama |
ハザマ
あ〜、もしかして。 あなたのそれ、観測の力だったりします? |
Hazama |
ハザマ
……ふふ、やはりそうでしたか。でも、それなら納得です。 あなたたちがここまで生き残っている理由がわかりましたよ。 |
Hazama |
ハザマ
つまり、あなたさえ潰せば、そちらのチームは怖くない。 やはり最初から、狙うべきはあなただったのですね。 |
Hazama |
タロ
レイ、気を付けて! ひとり、そっちに行ってるよ! |
Taro |
ハザマ
ウロボロス!! |
Hazama |
十三
ちっ……狙いを変えてきた!? |
Juusan |
キイロ
ハザマ! こっちの生意気な子は任せたわよ! 私がその『眼』を潰す! |
Kiiro |
十三
しまった……逃げろ、レイ!! |
Juusan |
キイロ
もう遅いわ! この距離、捉えた! |
Kiiro |
タロ
レイーーーっ!!</style> |
Taro |
キイロ
……なっ!!? |
Kiiro |
ハザマ
キイロさん!? 大丈夫ですか!? |
Hazama |
キイロ
くっ……邪魔が入ったわ……。 でも、いったい誰が……。 |
Kiiro |
シエル
レイさん、遅くなってすみませんでした。 |
Ciel |
シエル
ですが、ギリギリ間に合ったようで、なによりです。 |
Ciel |
1: 来てくれたんだね、シエル! |
1: |
シエル
はい。シエル=サルファー、これより新装備にて レイさんの護衛任務に着任します。 |
Ciel |
シエル
ココノエさんとカガミさんに用意していただきました。 これより、護衛任務を再開します! |
Ciel |
キイロ
驚いたわ……あなたも素体ね? そっちのチームメンバーみたいだけど、何者? |
Kiiro |
キイロ
ていうか、補欠の介入はルール違反じゃないの? どうなってるのよ。 |
Kiiro |
シエル
ルール……ですか? チームというのも、なんのお話か理解できませんが……。 |
Ciel |
シエル
私の任務はただひとつ。 レイさんをお護りすることです。 |
Ciel |
キイロ
まさか……部外者? |
Kiiro |
タロ
そういえば、アベンジが言ってたっけ。 どのチームにも属さなければルールには縛られないって……。 |
Taro |
ファジー
えぇ〜、そんなのズルくない? |
Fuzzy |
シオリ
ルール外で時間稼ぎをしていたあなたがそれを言います? |
Shiori |
キイロ
ふぅん……。 |
Kiiro |
キイロ
まあいいわ。そっちがひとり増えたということは 手に入るクリスタルの量も増えるということだし。 |
Kiiro |
キイロ
まとめて消滅させてあげる。 |
Kiiro |
シエル
対象の戦闘レベルの上昇を確認。 レイさん、下がってください。 |
Ciel |
十三
……あんたがレイの仲間か。 へぇ……。 |
Juusan |
シエル
……? レイさん、この方も敵ですか? |
Ciel |
1: 十三は仲間だよ |
1: |
If Choice 1: | |
---|---|
シエル
そうですか。失礼しました。 |
Ciel |
シエル
では、こちらの皆さんが味方で、 あちらの4名が敵ということですね |
Ciel |
シエル
状況を把握しました。 危険を排除します。 |
Ciel |
If Choice 2: | |
---|---|
Ciel | |
シエル
不甲斐ないです。私がそばにいない間に レイさんを危険に晒してしまいました。 |
Ciel |
シエル
これより、任務を再開させていただきます。 |
Ciel |
シエル
状況を把握しました。 危険を排除します。 |
Ciel |
十三
勝手に場を仕切るな。 うちのリーダーはレイなんだ。 |
Juusan |
シエル
レイさんがリーダー…… 指揮官ということですね。わかりました。 |
Ciel |
シエル
ではレイさん、指示をお願いします。 |
Ciel |
1: 協力して対処しよう |
1: |
シエル
了解しました。 これより戦闘を開始します。 |
Ciel |
9節『灰の王①』/ 9. The Ashen King - 1
Summary | |
---|---|
激闘の末に勝利を掴むと、クリスタルが強く
輝いた。勝者の資格を得たのだとアベンジは 言い、一行は灰の王との謁見に向かう。 |
|
アベンジの情報をもとに、世界の中央にある
『塔』を目指す一行。しかし道中、窯を守る 防衛機構が働き魔物の襲撃は激しさを増す。 |
シエル
敵の戦闘レベル低下を確認。水晶状の発光体が出現。 引き続き警戒してください。 |
Ciel |
シオリ
クリスタルのことなら大丈夫ですわ。 これを手に入れるために、私たちは戦っているんですから。 |
Shiori |
シオリ
それで、ええと…… あなたのお名前を伺ってもいいですか? |
Shiori |
シエル
私はシエル=サルファーと申します。 御剣機関のスレイプニールです。 |
Ciel |
シエル
クリスタル……とは、この発光体のことでしょうか? |
Ciel |
タロ
うん、そうだよ。勝負に勝ったチームは、 負けたチームのクリスタルを手に入れられるんだ。 |
Taro |
ファジー
あーあ、負けちゃった。これでこの遊びもおしまいか。 ま、思ったより楽しめたから別にいいか〜。 |
Fuzzy |
キイロ
まさかクリスタルのことすら知らない子が 乱入してくるなんてね。 |
Kiiro |
キイロ
しかも、ちょっと変わった素体の子……。 ふふ、ここでお別れなのが残念だわ。 |
Kiiro |
ハザマ
これで私の願望も叶わず、ですか。 いや、実に残念です。 |
Hazama |
カズマ
……ハザマさんの願望って、なんだったんですか? |
Kazuma |
ハザマ
私の願望ですか? もちろん、世界平和ですよ。 |
Hazama |
カズマ
……はぁ。そうですか……。 |
Kazuma |
ハザマ
おや、信じていない顔をなさっていらっしゃる。 いけませんよぉ、人は見かけによらないものです。 |
Hazama |
ハザマ
……などとお話していたら、 あらあら、そろそろお時間のようですね。 |
Hazama |
ハザマ
では、私たちはお先に失礼いたします。 そちらの皆さんも、またどこかでお会いしましょう。 |
Hazama |
シエル
消えてしまいました……。 |
Ciel |
シエル
この世界は、かなり特殊な世界のようですね。 |
Ciel |
シエル
すみません、お手数ですが…… 状況とこの世界について、お教えいただけませんか。 |
Ciel |
ドライ
あなたはこの世界の外からいらしたばかりなのですね。 でしたら、私からお話しましょう。 |
Drei |
シエル
ドライブ能力者を集めて行うゲーム……ですか。 そのようなファントムフィールドが存在するとは、驚きです。 |
Ciel |
シエル
そんな危険な世界だったなんて……。 レイさん、ご無事でなによりです。 |
Ciel |
シエル
皆さんも、レイさんの身の安全を 確保していただき、ありがとうございます。 |
Ciel |
シエル
おかげでレイさんと合流することができました。 |
Ciel |
タロ
それはお互いさまだから、 礼には及ばないよってやつなんだけどさ。 |
Taro |
タロ
ファントムフィールドっていうのが、 この世界のことなんだよね? |
Taro |
タロ
それでエルエルは、レイをこの世界から 救出するためにきた、でいいんだよね。 |
Taro |
タロ
ってことは、この世界から脱出する方法も知ってるの? |
Taro |
シエル
エルエルとは、私のことでしょうか。 |
Ciel |
タロ
うん。君、シエルっていうんでしょ。だからエルエル。 それとも、シエシエのほうがよかった? |
Taro |
シエル
いえ、エルエルで構いません。 |
Ciel |
シエル
ファントムフィールドからの脱出には、 フガクによるサルベージを使用するつもりです。 |
Ciel |
シエル
そのためにはこのフィールドの観測者を発見し、窯を破壊して、 ファントムフィールドの解放を完了させなければなりません。 |
Ciel |
タロ
フガク? カマ? |
Taro |
シエル
必要な手順があるということです。 |
Ciel |
シエル
そのためにも、これから私は レイさんに同行します。 |
Ciel |
シオリ
詳しいことはわかりませんけど……その窯とやらを見つけるために シオリたちと一緒に来てくれる……ということですか? |
Shiori |
シエル
はい。私の任務は窯の破壊と、 レイさんの護衛です。 |
Ciel |
シエル
お話を聞く限り、『灰の王』と呼ばれる者が 観測者である可能性はかなり高いと思われます。 |
Ciel |
シエル
私が皆さんのチームに入り、『灰の王』を目指すのが 最善の手と考えます。 |
Ciel |
タロ
大歓迎だよ。俺は怪我でこのザマだし エルエルがチームに入ってくれるなら心強いしね。 |
Taro |
シオリ
シオリも賛成ですわ。 |
Shiori |
ドライ
私も異論ありません。シエルさんの戦闘能力はかなりのもの。 塔を目指す上で戦力アップは間違いありません。 |
Drei |
ドライ
十三も、よろしいですか? |
Drei |
十三
それがレイの望みなら構わない。 |
Juusan |
十三
だけど……まさかあんたの仲間が素体だったとはね。 つくづく、妙な縁を感じるよ。 |
Juusan |
シオリ
さて……。では、クリスタルも手に入りましたし、 一旦近くのダイナーにでも……。 |
Shiori |
シオリ
って、あら? レイさん、クリスタルが……! |
Shiori |
タロ
な、なに!? 急にどうしたの!? レイのクリスタル!? |
Taro |
ドライ
奇妙な光り方ですね。 これまで、このように光る様子は見たことがありません。 |
Drei |
ドライ
なにか意味があるのでしょうか? |
Drei |
???
どうやら『資格』を得たようだな。 |
??? |
シエル
何者ですか! |
Ciel |
十三
いたのか、アベンジ。 |
Juusan |
シエル
……チームの方ですか? |
Ciel |
シオリ
チームメンバーではありませんけれど、シオリたちの協力者です。 単独行動をしていらして、情報収集をしてくださっているのですわ。 |
Shiori |
シオリ
それにしても。 いつもながら、前触れなく現れますわね。 |
Shiori |
タロ
今、資格って言ってたけど……? |
Taro |
アベンジ
ああ。お前たちは資格を得た。 塔に入るための、な。 |
Avemge |
アベンジ
それだけのクリスタルを集めたということだろう。 |
Avemge |
アベンジ
塔の情報を持ってきたのだが…… いいタイミングだったようだな。 |
Avemge |
ドライ
ゲームに勝ち抜いた者は、塔に入り『灰の王』への 謁見を許される。 |
Drei |
ドライ
つまり我々は勝者とみなされたのですね。 |
Drei |
タロ
……ってことは、ジンジンたちも負けちゃったのか。 俺たちが最後の勝者で、願望を叶えられるんだよね? |
Taro |
アベンジ
それはどうだろうな。 |
Avemge |
アベンジ
ゲームを勝ち抜けるチーム数も、願望を叶えられる人数も 明示されているわけではない。 |
Avemge |
アベンジ
複数の勝ち抜きチームが存在する可能性もあるだろう。 |
Avemge |
アベンジ
現に、他に生き残ったチームが存在することは 俺がこの目で確認している。 |
Avemge |
シオリ
たしかに。これまで得てきた情報でも、 勝者が1チームだけという話はありませんでした。 |
Shiori |
シオリ
複数のチームが同時に塔を目指す可能性もありそうですわね。 |
Shiori |
アベンジ
そういうことだ。 |
Avemge |
アベンジ
だが、今のところ塔に入る資格を得た者がいるという話は 他からは聞こえてこない。 |
Avemge |
アベンジ
それに、塔の正確な位置を知る者すらいなかった。 おそらくお前たちが最初の資格者と考えていいはずだ。 |
Avemge |
タロ
なるほどね……んじゃ、さっそくその塔に向かうとしますか! いよいよ『灰の王』とご対面ってことだし! |
Taro |
タロ
……で、その塔の正確な位置って、どこ? |
Taro |
シオリ
はぁ……タロ先輩……。 |
Shiori |
アベンジ
……そのために、俺がここにいる。 |
Avemge |
アベンジ
言ったはずだ。 お前たちが戦っている間、俺は塔の情報を集めると。 |
Avemge |
ドライ
ではつまり……。 |
Drei |
アベンジ
ああ。塔の場所の当たりはついた。 もっとも、確認はこれからだがな……。 |
Avemge |
アベンジ
世界の中央に塔は位置すると言われていることは お前たちも知っているな? |
Avemge |
アベンジ
だが、俺がどれだけ情報を集めても、実際にその塔を 見たという者は皆無だった。 |
Avemge |
アベンジ
不思議に思わないか? 誰も見たことがないのに 塔は世界の中央にあるという噂だけがひとり歩きしているんだ。 |
Avemge |
アベンジ
そこで俺はひとつの仮説をたててみた。この噂は 『灰の王』が意図的に流したものなのではないか……とな。 |
Avemge |
十三
おもしろいね。 『灰の王』って奴が、わざわざ自分の場所を教えたわけか。 |
Juusan |
十三
でもなんでそんなことをする? |
Juusan |
アベンジ
さあな、そこまではわからん。 |
Avemge |
アベンジ
だが、その噂を流したのが『灰の王』本人なのであれば、 世界の中央にあるという情報は正しいということだ。 |
Avemge |
アベンジ
あとは世界の中央がどこなのかを、洗い出せばいい。 |
Avemge |
アベンジ
お前たち、この世界には『壁』があることを知っているか? |
Avemge |
ドライ
いえ、存じません。壁ですか? |
Drei |
アベンジ
そうだ。ゲームに参加せずにすんでいた分、 俺はこの世界をくまなく歩き回ってみた。 |
Avemge |
アベンジ
その結果、世界にはそこから先に進むことのできない 『壁』が存在することがわかった。 |
Avemge |
アベンジ
東西南北、すべての方向にな。 |
Avemge |
アベンジ
まるで世界そのものが巨大なひとつの部屋なんだ。 |
Avemge |
タロ
世界に果てがあるってこと? そんなことってあるの? |
Taro |
シエル
そういう風にファントムフィールドが構築されている場合、 可能です。実際にそういう世界は他にもありました。 |
Ciel |
シエル
そのときはもっと小規模でしたが。 |
Ciel |
ドライ
巨大な部屋……それならば確かに 世界の中央がどこに存在するのか、割り出すことはできそうですね。 |
Drei |
アベンジ
ああ。この地点より、北東に徒歩で約2時間。 そこに塔は存在する。 |
Avemge |
十三
そこに行けば、いよいよ『灰の王』をご対面できるんだな。 |
Juusan |
シエル
北東に徒歩2時間……。 っ……これは……。 |
Ciel |
シエル
アベンジさんの情報は正しいと思います。 |
Ciel |
シオリ
あら。なぜそう思われるんです? |
Shiori |
シエル
その予測地点に、窯の反応を感知しました。 |
Ciel |
タロ
さっきも言ってたね。窯ってなんなの? |
Taro |
シエル
窯は、ファントムフィールド、 つまりこの世界を構築するためのエネルギー源のようなものです。 |
Ciel |
シエル
本来は世界のどこかに存在しながら、 その所在はわからないように隠されているのですが……。 |
Ciel |
シエル
この世界では、すでに窯は出現しているようです。 |
Ciel |
シエル
これはつまり、世界を構築した主である観測者が 自分の立場を自覚し、理解していることを意味します。 |
Ciel |
シエル
そして窯の地点に『灰の王』が存在するのであれば、 その者が観測者である可能性は非常に高いと言えます。 |
Ciel |
シエル
さすがはレイさんです。 |
Ciel |
シエル
すでに観測者の場所を把握し、さらには窯所在地に侵入するための 手段まで獲得されていたとは。 |
Ciel |
1: 運がよかったんだ |
1: |
十三
『灰の王』が観測者っていうのは単なる予測だったけど ゲームを勝ち進んだのは運じゃない。 |
Juusan |
十三
チームと、レイの力だろ。 |
Juusan |
十三
チームと……レイの力だろ。 あんたの頑張りがあったから、ここまで来れたんだ。 |
Juusan |
十三
最初は面倒だし置いて行こうかと思ったけど…… あそこであんたに会えてラッキーだったな。 |
Juusan |
シエル
…………。 |
Ciel |
シエル
レイさんが、皆さんに 称賛されているのを見ると……。 |
Ciel |
シエル
なんだか不思議と、良い気持ちになります。 |
Ciel |
十三
なんであんたが喜んでるんだよ。 変なやつ。 |
Juusan |
シエル
喜ぶ……私は喜んでいるのですか。 |
Ciel |
十三
……さあね。自分で考えな。 |
Juusan |
タロ
エルエル、いい子なんだなぁ。 そんな感じがする。 |
Taro |
タロ
んじゃ、クリスタルも集まったし、 今度こそ塔を目指そうか。北東でいいんだよね? |
Taro |
シオリ
ええ。他のチームと競争にならないとも限りませんし、 なるべく急ぎましょう。 |
Shiori |
シオリ
でもその前に…… まずは邪魔を片付ける必要がありそうですわね。 |
Shiori |
シエル
前方に敵性反応を感知しました。 みなさん、警戒してください。 |
Ciel |
魔獣
ギャアアア! |
Monster |
十三
魔物か。さっきやり合ったドライブ能力者に比べれば、 つまらない雑魚だ。 |
Juusan |
十三
来なよ。さっさと片付けてあげる。 |
Juusan |
ドライ
妙ですね。 ゲームの対戦場所にこれだけ多くの魔物が現れるなんて。 |
Drei |
ドライ
ゲームの邪魔にならないように、対戦場所には出現しないよう 『灰の王』が管理しているのかと思っていましたが。 |
Drei |
1: 事情が変わったんだと思う |
1: |
シエル
はい。 ここは自ら異物を取り込み続けてきたフィールドです。 |
Ciel |
シエル
異物も世界の一部とみなされ、世界の防衛機構が積極的に 異物を排除しようとはしてこなかったでしょう。 |
Ciel |
シエル
ですが私が窯の存在を感知したことで、 防衛機構を刺激した可能性が高いです。 |
Ciel |
シエル
……招かれざる異物である私は排除対象でしょうし、 窯を感知されたことは世界を危険に晒すことでしょうから。 |
Ciel |
シエル
レイさんの言う通りだと思います。 ここは自ら異物を取り込み続けてきたフィールドです。 |
Ciel |
シエル
異物も世界の一部とみなされ、世界の防衛機構が積極的に 異物を排除しようとはしてこなかったでしょう。 |
Ciel |
シエル
ですが私は、ゲームのために召集された ドライブ能力者ではありません。 |
Ciel |
シエル
……招かれざる異物である私は排除対象でしょうし、 窯を感知されたことは世界を危険に晒すことでしょうから。 |
Ciel |
ドライ
防衛機構……つまりは、世界が正しくあろうとするための 反発力ですね。 |
Drei |
ドライ
ならば狙いはシエルさんだけでなく、 私たち全員かもしれませんね。 |
Drei |
ドライ
私たちもまた、窯が存在することを知ってしまっています。 |
Drei |
シエル
あっ……すみません……。 私のせいでみなさんまで巻き込んでしまいました。 |
Ciel |
タロ
エルエル、いい子すぎ! |
Taro |
タロ
気にすることじゃないよ。たぶんだけど、ゲームを勝ち進めば どっちみち全部知ることになってた気がするし。 |
Taro |
タロ
だってチームリーダーのレイは エルエルと同じ目的で動いてるんだからね。 |
Taro |
タロ
だったらもう、一蓮托生! じゃない? あははは……つっ……いたたた……。 |
Taro |
シオリ
調子に乗らないでください、タロ先輩。 ご自分が重傷だってこと、忘れてたでしょう。 |
Shiori |
シオリ
でも、タロ先輩の言う通りですわ。 |
Shiori |
シオリ
このチームに、いまさら巻き込まれて迷惑なんて 思う人はいませんわよ。 |
Shiori |
シエル
……タロさん、シオリさん、ありがとうございます。 |
Ciel |
アベンジ
すまないが、お喋りは移動しながらにしてくれ。 |
Avemge |
アベンジ
その防衛機構だか反発力だかのせいで魔物が 襲撃してくるのなら、ここに留まるのは悪手だ。 |
Avemge |
ドライ
そうですね。みなさん、行きましょう。 世界の中央へ。『灰の王』が待つ、塔へ。 |
Drei |
ドライ
そこで、我々の旅も終わりを見るはずです―― |
Drei |
9節『灰の王②』/ 9. The Ashen King - 2
Summary | |
---|---|
フガクとの通信が途絶した中、活動限界時間
は徐々に迫る。窯を破壊し、あるべき世界に 戻すため、一行は困難な歩みを進めていく。 |
シオリ
やはり、駄目ですか? |
Shiori |
シエル
……はい。何度も試してみましたが、どうしても フガクとの通信が繋がりません。 |
Ciel |
シエル
以前フガクから通信を試みた時も、完全に一方通行でしか 繋がりませんでした。 |
Ciel |
シエル
おそらく、時間速度の並列化による影響を 受けているのだと思われます。 |
Ciel |
ドライ
時間速度のズレ……ですか。にわかには信じがたいお話ですが あなた方の技術力を見るに、事実なのでしょうね。 |
Drei |
シエル
……通信ができない以上、私たちとフガクの状況に 変化がないことを前提にして動かなければなりません。 |
Ciel |
シエル
レイさん。以前に一度通信が繋がったときに、 カガミさんから発言があったかと思いますが……。 |
Ciel |
シエル
私たちがフガクに帰還できる活動限界まで、 あと8時間……正確には、あと7時間と12分しかありません。 |
Ciel |
シエル
そのリミットまでに、我々は窯を破壊し このファントムフィールドを解放しなければなりません。 |
Ciel |
タロ
あんまり時間がないね……。 |
Taro |
タロ
あのさ、エルエル、確認なんだけど。 窯を破壊したら、俺たちは元の世界に戻されるんだよね? |
Taro |
シエル
はい。みなさんは他の世界から引き寄せられた異物ですから、 ファントムフィールドの解放と共に、あるべき世界に戻されます。 |
Ciel |
タロ
そしたら、ここでの記憶ってどうなるの? |
Taro |
タロ
エルエルの話だと、 この世界自体がなかったことになっちゃうんだろ? |
Taro |
シエル
……ここでの記憶はすべて失われます。 タロさんは何事もなかったように、元の世界で目覚めるはずです。 |
Ciel |
タロ
そっかぁ……せっかく知り合えたのに寂しいな。 |
Taro |
タロ
レイやエルエルも、 俺たちのことを忘れちゃうわけ? |
Taro |
シエル
いえ、我々はフィールドでの記憶を忘れることはありません。 忘れるのは、元の世界に戻る皆さんだけです。 |
Ciel |
タロ
ふぅん……そうなんだ。でも、なんで? 同じように 元の場所に戻るのに、エルエルたちはなんで覚えてるの? |
Taro |
シエル
それは……あれ? なぜでしょう、レイさん。 |
Ciel |
1: 観測のおかげ? |
1: |
シエル
そうですね。そうだと思います。 |
Ciel |
シエル
私たちを観測しているシステムには、 膨大なデータが蓄積されていると、私の上司が言っていました。 |
Ciel |
シエル
そのデータには、私たちがファントムフィールドで行った 活動のデータも含まれます。 |
Ciel |
シエル
そのため、私たちは記憶を保持して様々な ファントムフィールドへ赴くことができるのでしょう。 |
Ciel |
シエル
そうですよね……そのお話は、まだうかがっていないはずです。 |
Ciel |
シエル
予想するに、私たちをフガクで観測している システムのおかげかもしれません。 |
Ciel |
シエル
そのシステムには、私たちがファントムフィールドで行った 活動の全データが記録されています。 |
Ciel |
シエル
そのため、私たちは記憶を保持して様々な ファントムフィールドへ赴くことができるのでしょう。 |
Ciel |
十三
システム……。 |
Juusan' |
十三
確かココノエがいたな。 ってことは……タカマガハラシステムのことか? |
Juusan |
十三
そんなものを積んでるなんて、とんでもない船だな。 |
Juusan |
シエル
十三さん、ココノエ博士をご存じなのですか? |
Ciel |
十三
……さんは付けるな、十三でいい。 |
Juusan |
十三
別に、ご存じってほど接点があるわけじゃない。 ただ……少し知ってる程度だよ。 |
Juusan |
十三
けど、絶対に私をその船に呼ぼうだなんて考えないで。 |
Juusan |
十三
特にレイ。いいか。 絶対に私を観測するなよ、いいな? 絶対だぞ! |
Juusan |
十三
いいな!?</style> |
Juusan |
タロ
そのシステムってやつを俺は知らないけど…… でも安心したよ。 |
Taro |
タロ
レイやエルエルは、俺たちのことを 覚えていてくれるんだな。 |
Taro |
タロ
皆きれいさっぱり忘れるんじゃ、あまりに寂しいもんね。 全部が消えてしまうなんてさ。 |
Taro |
シエル
消える……。 そうですね。消えるのは、怖いです。 |
Ciel |
シエル
私も、もしかしたらレイさんがこのまま 消えてしまうんじゃないかと……そう考えるのは恐怖でした。 |
Ciel |
シエル
でも、カガミさんやココノエさん、皆さんのおかげで 私はまたこうしてレイさんに会えました。 |
Ciel |
シエル
だから……約束します。 私がレイさんを、今度こそ全力で護ります。 |
Ciel |
シエル
もう二度と、あなたを危険には晒しません。 必ず任務を遂行して、無事にフガクに帰りましょう。 |
Ciel |
1: 一緒にがんばろう |
1: |
シエル
一緒に……はい、そうですね。 一緒にがんばりましょう。よろしくお願いします。 |
Ciel |
シエル
……っ! |
Ciel |
シエル
敵性反応を感知。 数体の魔物がこちらに接近中です。 |
Ciel |
ドライ
塔に着くまで、できるだけ体力は温存したい ところですが……どうしますか? |
Drei |
シオリ
でも、回り道をしていたら他のチームに 先を越されるかもしれませんわ。 |
Shiori |
シオリ
できるだけ最短ルートで進むには……。 |
Shiori |
十三
魔物……世界の反発力ってやつか。 ねえ、全部ぶった切れば問題ないんだよね? |
Juusan |
シエル
異物を排除する力が有限なのかはわかりませんが…… 窯に辿り着くまで、退けながら進むしかありません。 |
Ciel |
十三
だったら難しく考える必要はないじゃないか。 全部、斬り倒していくとしよう。 |
Juusan |
9節『灰の王③』/ 9. The Ashen King - 3
Summary | |
---|---|
到達した世界の中心、そこにはただ荒野が広
がっていた。しかし力を蓄えたクリスタルを かざすと、強い光と共に巨大な塔が現れる。 |
シエル
敵性反応の消失を確認。 周囲に他の反応は感じられません。 |
Ciel |
ドライ
我々が進むほど、魔物の数も心なしか増えている気がします。 |
Drei |
ドライ
これが異物を排除しようとする力なのであれば、つまり 我々が目的地に近づいている……ということなのでしょうね。 |
Drei |
ドライ
シエルさん、窯とやらの位置はわかりますか? |
Drei |
シエル
はい、あの……。それが、朧げには感知できているのですが…… すみません、正確な位置が掴み切れません。 |
Ciel |
シエル
間違いなく、この近辺だと思われるのですが……変ですね。 『塔』はどこにも見当たりません。 |
Ciel |
アベンジ
やはり、入り口は隠されているということか……。 だがそうだな……地図を見ても、間違いない。 |
Avemge |
アベンジ
この場所が、我々が立つ世界の中心地点だ。 |
Avemge |
タロ
ここ? いやいや、荒野のど真ん中だし 塔も入り口も本当に何もなさそうだよ!? |
Taro |
タロ
まさか、地面の中に隠してるわけじゃないだろうし 本当にここで合ってるの? |
Taro |
シエル
この近くなのは間違いありません。 窯の反応が、それを証明しています。ですがいったい……。 |
Ciel |
十三
クリスタルを集めることが、塔に入る条件……か。 レイ、クリスタルを出してみて。 |
Juusan |
ドライ
あぁ、そういう仕掛けですか。 レイさん、お願いできますか。 |
Drei |
ドライ
なんと……。 |
Drei |
アベンジ
力を集めたクリスタルだけが、塔を出現させられるわけか。 やはり俺だけでは、難しかったな。 |
Avemge |
シエル
窯の反応を正確に感知しました。 この塔の上で、間違いありません。 |
Ciel |
タロ
じゃあ、そこに『灰の王』もいるのか……。 |
Taro |
十三
だろうね。くだらないゲームとやらを考えた奴の顔が ようやく見れるわけだ。 |
Juusan |
シオリ
周辺に罠などもなさそうですわね。 このまま中に入りましょう。 |
Shiori |
タロ
これが塔の中……? 外の世界とは、全然違う感じだ。 |
Taro |
タロ
俺のいたところじゃ、こういう様式はなかったよ。 これじゃまるで噂に聞いた第七機関みたいだ。 |
Taro |
ドライ
確かに外の世界とは違い、ここには 高度な建築技術が用いられているようです。 |
Drei |
ドライ
かなり頑丈な作りに見えますね。 これならば、塔の内部での戦闘にも耐えられそうです。 |
Drei |
シオリ
いきなり物騒な話をしますわね……。 |
Shiori |
シオリ
でも確かに、世界がシオリたちを排除するというのならば いつどこで魔物が現れるかわかりませんものね。 |
Shiori |
シオリ
今のうちにチーム構成を決めておきます? |
Shiori |
十三
なんで? もうゲームは終わったんだから、 チームも定員も関係ないんじゃない? |
Juusan |
十三
現に、『灰の王』から次の指示もないわけだし。 それに、相手が魔物ならなおさらだと思うけど。 |
Juusan |
ドライ
そうですね。もはやルールなどと言っている場合でもありません。 ここにいる全員で、危機に対応しなければ。 |
Drei |
タロ
でもさ……静かすぎない? こんな場所に、魔物なんかいるのかな? |
Taro |
タロ
案外、塔の中にいるのは『灰の王』ひとりだけかも。 |
Taro |
シオリ
それは楽観的すぎますわ。 |
Shiori |
シオリ
外から見ても塔の高さはかなりありましたし、 ここを登りきるまでは、まだまだ長いのですから。 |
Shiori |
シオリ
油断せず進みましょう。もしかしたら、侵入者を阻む 罠なんかも、あるかもしれませんから。 |
Shiori |
タロ
え〜? 『灰の王』が俺たちを呼んだんだから、罠なんて―― |
Taro |
タロ
なな、なんで扉が勝手に閉まるわけ!? |
Taro |
シオリ
だから言ったでしょう!? 罠ですわよ!! |
Shiori |
シエル
前方に敵性反応、多数! 気を付けてください! |
Ciel |
シオリ
これはまた頑丈そうなのが出てきましたわね……。 やはりすんなりと通してはもらえませんか……。 |
Shiori |
十三
『灰の王』が仕掛けた罠なのか、世界が私たちを 排除しようとしているのか、どっちか知らないけど……。 |
Juusan |
十三
……邪魔するつもりなら、さっさと来なよ。 遊んであげるから。 |
Juusan |
シエル
これより、敵の排除を開始します。 |
Ciel |
9節『灰の王④』/ 9. The Ashen King - 4
Summary | |
---|---|
侵入者を阻むように現れたゴーレムを倒し、
塔を上って灰の王へと近づいていく。ドライ には、『彼』の正体が判り始めていた。 |
|
多数のゴーレムを下し、最上階の扉を開く。
静寂の中、影のように一人の男が現れ…… ドライが「ゼクス」と彼の名を呼んだ。 |
タロ
はぁ……はぁ……だいぶ登ってきたはずだけど 『灰の王』は本当にここにいるのかな……。 |
Taro |
タロ
怪我人には結構きつい高さだよ、これ……。 |
Taro |
十三
だったらその辺で休んでる? 帰りでいいなら迎えに来てあげるよ。 |
Juusan |
十三
それともまた、ドライに抱えてもらう? |
Juusan |
ドライ
私は一向に構いませんが。 |
Drei |
タロ
が、頑張るって、頑張るよ! そんな何度もドラドラに迷惑かけられないよ。 |
Taro |
シオリ
はいはい。せめてシオリが肩くらい 貸して差し上げますわよ。 |
Shiori |
タロ
悪いね、シオシオ……。 |
Taro |
シオリ
ここに捨てていくのも寝覚めが悪くなりますし、 仕方ありませんわ。 |
Shiori |
シオリ
……それに、マイ様が悲しむかもしれませんし。 |
Shiori |
タロ
え? マイマイがなに? |
Taro |
シオリ
な、なんでもありません! ……それより! 先ほどから、辺りの雰囲気が随分変わってきましたわね。 |
Shiori |
タロ
そういえば、本当だ。 なんだろう、壁も変わった材質が使われてるね。 |
Taro |
アベンジ
目的地が近いのかもしれないな。 |
Avemge |
アベンジ
ゲームなどという趣向を凝らす奴だ。 この塔の作りにも、意味があるのかないのか……。 |
Avemge |
アベンジ
だが、進めば進むほどわからなくなる。 |
Avemge |
アベンジ
この世界にゲームなどというくだらんルールを敷き 世界を構築してきたのが『灰の王』のはずだ。 |
Avemge |
アベンジ
その王の居城に、なぜ衛兵のひとりすらいない? 魔物の類は住み着いてるようだが、ここに人間はいないのか? |
Avemge |
シオリ
言われてみれば確かに、その通りですわ。 |
Shiori |
シオリ
塔の外には大勢の人が暮らしていて、当たり前のように 『灰の王』の存在を信じ、支配者のように語っていました。 |
Shiori |
シオリ
なのに、誰も『灰の王』を見たことはなく、塔の場所も知らない。 おまけに塔の中は無人。考えると、かなり妙な状況です。 |
Shiori |
シオリ
『灰の王』とは、本当に存在する人物なのでしょうか。 |
Shiori |
アベンジ
……もうひとつ、気になっていることがある。 |
Avemge |
タロ
気になってること? |
Taro |
アベンジ
時折俺たちを襲ってくるゴーレムのことだ。 あのゴーレムからは、魔術の痕跡が感じられた。 |
Avemge |
シオリ
では、『灰の王』とはドライさんと同じ、魔術師なのですか? |
Shiori |
アベンジ
それならば、ドライが口を閉ざしている理由がわからない。 |
Avemge |
アベンジ
だが俺は魔術師ではないからな、そこまでの確証はない。 ドライが違うと言えば違うのだろうが……。 |
Avemge |
ドライ
……そうですね。 |
Drei |
ドライ
確かにアベンジさんの言う通り、あのゴーレムの残骸には 何者かが魔術を用いた形跡が見られました。 |
Drei |
アベンジ
ならば、なぜそのことを黙っていた? |
Avemge |
ドライ
『灰の王』が、私の追っている者である可能性が高いからです。 |
Drei |
タロ
ドラドラ、言ってたよね。探してる人がいるって。 それが『灰の王』かもしれないって。 |
Taro |
ドライ
ええ、どうも私の予想は当たっていたようですね。 |
Drei |
ドライ
皆さんにそのことをお話しなかったのは、私もまだ 『彼』の真意を測りかねているからです。 |
Drei |
ドライ
なんの目的で、ゲームを始めたのか。 クリスタルを集めて、いったいなにをしようとしているのか……。 |
Drei |
ドライ
それがもし危険なことであれば、場合によっては 私は『彼』を止めなければなりません。 |
Drei |
ドライ
ですから皆さんに、余計な情報を与えたくはありませんでした。 私と『彼』の関係を知れば、迷いが生まれるかもしれませんから。 |
Drei |
アベンジ
……友、なのか? |
Avemge |
ドライ
いえ。私にとって彼は、理想を体現された者です。 私程度が彼の友など畏れ多い。 |
Drei |
ドライ
もし彼の目的に正義があるのならば、共に往くことも 確かに考えましたが、今の彼は私の知る彼ではないかもしれない。 |
Drei |
ドライ
今はただ……私は、彼の真意を知りたいのです。 |
Drei |
十三
あんたの性格は面倒すぎる。難しいことを考えすぎなんだよ。 もっと自分に正直になればいいのに。 |
Juusan |
タロ
じゅうじゅうも、似たようなところあると思うけどなぁ。 |
Taro |
十三
……死にたい? |
Juusan |
タロ
えっ、あっ、いたたた……俺、ほら、怪我人だから! |
Taro |
十三
…………ふん。 |
Juusan |
シエル
皆さん、気を付けてください。窯の反応は、すぐ近くです。 そろそろ目的地にたどり着きます。 |
Ciel |
アベンジ
む……。 |
Avemge |
シオリ
扉が見えます。あの奥に『灰の王』がいるのでしょうか? |
Shiori |
タロ
かな……あれ、なんだろ、これ……。 体が勝手に震えて……。 |
Taro |
ドライ
……やはり。 |
Drei |
十三
へぇ……この気配。確かに『王』を名乗るだけのことはありそうだ。 ドライ、あんたのお友達はなかなか面白そうなやつだよ。 |
Juusan |
アベンジ
……待て。魔術の波動を感じる。 |
Avemge |
ドライ
これは……! 扉越しに、何らかの魔術が発動しています! |
Drei |
十三
こんなのが、最後の腕試しのつもりか? だとしたら、私たちも舐められたもんだ。 |
Juusan |
シオリ
けど、数が多い……皆さん、ここが最後の正念場ですわよ! |
Shiori |
ドライ
では……開けますよ。 |
Drei |
シオリ
ここも、静かですわね……。 |
Shiori |
シオリ
また罠が仕掛けられているかもしれません。 警戒して進みましょう。 |
Shiori |
タロ
ここまでずっと階段を登りっぱなしで また罠とか、本当勘弁してよ……? |
Taro |
タロ
っていうか、誰もいないっぽい……よね? おかしいな、さっきは確かに、気配みたいなのを感じたんだけど。 |
Taro |
1: 止まって! |
1: |
タロ
えっ―― |
Taro |
十三
奥だ……コイツが、そうなのか。 |
Juusan |
タロ
えっ、どこに!? |
Taro |
十三
目を凝らしてみろ。部屋の奥だ。 |
Juusan |
???
……現れたか。 |
??? |
ドライ
あぁ……あなたはやはり……。 |
Drei |
ドライ
ゼクス……!! |
Drei |
10節『バベルの尖槍①』/ 10. Babel's Sharp Spear - 1
Summary | |
---|---|
ゼクスは一行を窯へと導いた。彼はこの世界
の観測者でありながら不安定な状態にあり、 戦うことで自己を再観測してほしいと語る。 |
ドライ
ゼクス……ああ、やはりあなただったのですね。 |
Drei |
ドライ
この世界で目を覚ましたときからずっと、 空気に混じって感じられていた魔力の主……。 |
Drei |
ドライ
よもやまさかと思っておりましたが、 本当にあなたであったとは……。 |
Drei |
シオリ
ドライのお知り合い……? ゼクスとおっしゃるようですけど……。 |
Shiori |
タロ
なんだか、威圧的な雰囲気の人だな……。 いや、人なのか……? |
Taro |
アベンジ
……どうだろうな。 |
Avemge |
シエル
この方が『灰の王』、なのでしょうか? |
Ciel |
ゼクス
いかにも、私の名は『ゼクス』。 そしてこの世界においては『灰の王』でもある。 |
Sechs |
ゼクス
我が地に招かれ、戦いを強いられた者たちよ。 ここまで到達したことへの賞賛と慰労をまずは贈ろう。 |
Sechs |
十三
……全部を仕組んだ張本人か。ふん、偉そうに。 |
Juusan |
ゼクス
お前たちの到達を、長く、待っていた。 |
Sechs |
シオリ
あなたが『灰の王』ならば、 あなたが私たちの願い事を叶えてくださるの? |
Shiori |
シオリ
ゲームを勝ち抜いて塔へと到達した者は、 あなたに謁見して願望を叶えてもらえるはずですわ。 |
Shiori |
ゼクス
その通りだ。望むものがあるのなら、叶えよう。 |
Sechs |
ゼクス
……狭苦しい無法の地においては、 私の望むものだけが存在し、望まぬものは存在しえない。 |
Sechs |
シエル
『望むものだけが存在し、望まぬものは存在しえない』。 それは、あなたが観測者だから成せることだと考えます。 |
Ciel |
シエル
ゼクスさん。あなたはこの世界の『観測者』なのですね? |
Ciel |
ゼクス
…………。 |
Sechs |
ゼクス
肯定しよう。 |
Sechs |
タロ
それって……叶えてもらえる願いは、この世界限定ってこと? それじゃああんまり、俺にとっては意味がないな……。 |
Taro |
十三
どうせそんなことだろうと思ったよ。 |
Juusan |
十三
なんでも願いを叶えるなんて大口叩いてくれたけど、 そんなこと神様でもない限りできやしない。 |
Juusan |
十三
いや、神様にだってできない。 |
Juusan |
ドライ
いえ。ゼクスなら、すべてを叶えることはできなくとも、 ある程度のことは可能にしてみせるでしょう。 |
Drei |
ドライ
それだけの力と知識を持つ方です。 |
Drei |
ゼクス
…………。 |
Sechs |
ゼクス
お前たちがどのような願いを託し、どのような世界を望もうとも、 そのためにはしてもらわなければならないことがある。 |
Sechs |
シオリ
クリスタルを集める以外にも、ですか? まだ私たちになにかさせるつもりですの? |
Shiori |
アベンジ
むしろそれが、奴の狙いの本命だろう。 クリスタル集めはただの名目だ。 |
Avemge |
アベンジ
その結果、選別されてここまでやってくる者…… それを『灰の王』は待っていた。 |
Avemge |
アベンジ
その『してもらいたいこと』をさせるために。 そうだろう? |
Avemge |
ゼクス
そうだ。 |
Sechs |
アベンジ
ならば教えてもらおうか。 お前はゲームの勝者になにをさせるつもりだ? |
Avemge |
アベンジ
一体なにを成すために、ゲームなんて回りくどいことを 俺たちにさせていた? |
Avemge |
シオリ
そうですわ。結構大変だったんですからね。 |
Shiori |
シオリ
こっちの都合もお構いなしに戦わされるなんて…… それだけの重大な理由がなければ、納得できません。 |
Shiori |
ドライ
私も、是非お聞きしたい。 |
Drei |
ドライ
あなたが何故このようなことを執り行い…… 何故このような場所でひとり、『勝者』を待ち続けたのかを。 |
Drei |
ゼクス
…………。 |
Sechs |
ゼクス
……ついて来い。 『その』ために必要なものがある。 |
Sechs |
十三
待ちなよ。どこに行くつもりだ? |
Juusan |
十三
……ちっ。答えるつもりはないわけだ。 勝手なやつだな、本当に。 |
Juusan |
ドライ
行ってみましょう、皆さん。ここまで来たならば、 彼の真意を知らずに後退する意味はないでしょう。 |
Drei |
ドライ
それにゼクスのことです……彼の行いに 意味がないはずがない。 |
Drei |
ドライ
迷うことなどありますまい! |
Drei |
シオリ
そ、それはそうですけど……どうしたんですか、ドライ。 なんだかすごい勢い……。 |
Shiori |
タロ
ドラドラにとっては、 かなり思い入れのある人みたいだね。 |
Taro |
十三
さっきもそんなこと言ってたけど、その様子からして あいつはお前が探してた人物なんだな? |
Juusan |
ドライ
はい。間違いありません。 あの方こそ、私の探し求めていたお方。 |
Drei |
ドライ
私にとって唯一無二の存在であり、 彼についていくために私は全てを投げ捨てたのです。 |
Drei |
十三
ふうん……。 |
Juusan' |
ドライ
十三。あなたの探していた人物は……いかがですか? もしやあなたもゼクスを探していたのですか? |
Drei |
十三
いや。私の思ってたやつとは違った。 ……ちょっと似てる気がするけどね。 |
Juusan |
十三
といっても、未だにはっきり思い出せないんだけど。 |
Juusan |
アベンジ
ここまで来て、今更尻込みする必要もあるまい。 行こう。見失う。 |
Avemge |
シエル
はい。私たちにとっても、彼が観測者であるのなら その動向は無視できません。 |
Ciel |
シエル
それに……彼が向かう方向から、窯の気配を強く感じます。 |
Ciel |
十三
窯……か。 |
Juusani |
シオリ
これは……な、なんなんです? 塔の上に、こんなものがあったなんて……。 |
Shiori |
タロ
見たこともないものだけど……これがとんでもないもの だってことは、なんとなくわかるよ……。 |
Taro |
タロ
場の空気だけで、圧倒されそうだ……。 |
Taro |
ドライ
これは……。 |
Drei |
十三
……窯だな。間違いない。 |
Juusan |
シエル
はい。私たちが探している窯も、これに間違いありません。 |
Ciel |
ゼクス
……見えるか。窯が。 |
Sechs |
アベンジ
見える、とはどういう意味だ? 本来ならば見えるはずがないかのような、言い方だな。 |
Avemge |
ゼクス
その通りだ。 だから問うた。 |
Sechs |
シオリ
あ、あなたには、見えないのですか? |
Shiori |
ゼクス
……否。 |
Sechs |
ゼクス
燃えるように口を開ける窯の姿が見える。 認識できる。 |
Sechs |
ゼクス
ただしこれを観測しているのは、私ではない。 |
Sechs |
シエル
あなたではない……? ですが、この世界の観測者は、あなたのはずです。 |
Ciel |
シエル
窯がこの世界に存在しているということは、 あなたが観測しているはずですが……。 |
Ciel |
ゼクス
私には、観測できなかった。 いや、認識しきれなかった。 |
Sechs |
ゼクス
だから連れてきた。 もうひとりの『観測者』を。 |
Sechs |
シエル
っ!? |
Ciel |
ゼクス
いるのだろう。観測を行える力を持つ者が。 |
Sechs |
ゼクス
その力によって、お前たちは『勝利』を観てきた。 ……誰だ? |
Sechs |
シオリ
そんなことまで、把握しているのですか……。 |
Shiori |
ゼクス
誰だ。 |
Sechs |
十三
……下がってろ、レイ。 |
Juusan |
タロ
くっ……。 |
Taro |
ゼクス
……お前か。 |
Sechs |
1: そうです |
1: |
ゼクス
……いい目だ。 |
Sechs |
ゼクス
……ふ。 |
Sechs |
ゼクス
警戒する必要はない。 私に、観測者を害する必要がないからだ。 |
Sechs |
十三
だったらなぜ尋ねる? そっちの思惑も知らないで、馬鹿正直に信じられるか。 |
Juusan |
シエル
…………。 |
Ciel |
ゼクス
思惑か。 |
Sechs |
ゼクス
観測者よ。 お前に私を観測してほしい。 |
Sechs |
ゼクス
してほしいことは、それだけだ。 |
Sechs |
アベンジ
……どういうつもりだ? お前が『観測者』なのだろう? |
Avemge |
シエル
あなたの存在を含めて、この世界にあるものは 全てあなたの観測下にあります……『灰の王』。 |
Ciel |
シエル
その観測者であるあなたを、 改めて別の観測のもとに置こうというのですか? |
Ciel |
ゼクス
そうだ。 |
Sechs |
ゼクス
確かに私は『観測者』として『此処』に在る。 だがこの存在は、決して完全なものではない。 |
Sechs |
ゼクス
『私』という個体の存在はひどく不確定で不確実だ。 |
Sechs |
ゼクス
あいまいな情報を繋ぎ合わせて、 かろうじて『私』らしき姿を構築しているにすぎない。 |
Sechs |
ゼクス
要するに、私を私足らしめるだけの認識、 観測が足りていないのだ……。 |
Sechs |
ドライ
なんと……そのようなことが起こりうるのですか。 不完全な状態で存在しているなど……。 |
Drei |
十三
だとしたら、とんでもないやつだな。 |
Juusan |
十三
半端な状態だって言いながら、それでもなお観測者として ファントムフィールドをひとつ作り出してるんだから。 |
Juusan |
シエル
はい……とても信じられないことです。 |
Ciel |
シエル
この世界は荒廃し、不衛生な環境にあります。ですがそれは、 足りない観測力によって生じた不安定さとは別のものです。 |
Ciel |
シエル
そういった『世界』として 揺ぎなく保たれているように感じます。 |
Ciel |
シエル
それを……おっしゃるように半端な状態で 成したというのであれば……。 |
Ciel |
シエル
本来の力が備わっていたとき どれだけの強力な観測者になっていたか、想像もできません。 |
Ciel |
タロ
でもそれって、どういうことなんだ? |
Taro |
タロ
この世界にいる以上、俺のことも観測者…… ええと、ゼクスさんが観測? ってやつをしてるんでしょ? |
Taro |
タロ
俺は普通だよ。 特になにか、状態がおかしいって感じもしない。 |
Taro |
タロ
なのに自分のことだけ半端だなんてさ……。 |
Taro |
ゼクス
……『私』に関わる情報を意図的に隠匿している者がいる。 それゆえに、私は私を正確に観測できない。 |
Sechs |
ドライ
なんですって!? |
Drei |
シエル
情報を隠匿……ですか……。 観測者になるほどの人の情報を……。 |
Ciel |
アベンジ
心当たりがありそうだな。 |
Avemge |
シエル
……はい。 バベルが関わっているのかもしれません。 |
Ciel |
アベンジ
バベル? |
Avemge |
シエル
説明が難しいのですが……簡潔に言うと、 私やレイさんが所属する組織の、対抗勢力です。 |
Ciel |
シオリ
あなたたちの敵、ですか。 |
Shiori |
シオリ
でもどうして? ゼクスさんはなにかバベルって方々と因縁があるのですか? |
Shiori |
ゼクス
どうやら、そのようだ。 |
Sechs |
ゼクス
だが事情や関わりなどはどうでもいいことだ。 私にはお前の観測が必要だ。 |
Sechs |
ゼクス
全ての『世界』のために。 |
Sechs |
1: 全ての世界のためって? |
1: |
ゼクス
言葉の通りだ。 それ以上の意味はない。 |
Sechs |
ゼクス
あらゆる『世界』『場』があるべき形であるために。 異なるものへと変貌させぬために。 |
Sechs |
ゼクス
世界を歪めんとする意志と対峙するために、力が要る。 私にも、お前にも。 |
Sechs |
ゼクス
企みも謀りもない。 今の私にはそれすら持ちえない。 |
Sechs |
ゼクス
だが意図的に隠匿された『私』の情報は、やがて必要になる。 私にも、お前にも。 |
Sechs |
ゼクス
あらゆる『世界』『場』があるべき形であるために。 異なるものへと変貌させぬために。 |
Sechs |
十三
わけのわからない物言いを、鵜呑みにしろって? |
Juusan |
十三
レイがアンタを観測した結果、 とんでもない力を取り戻したアンタが手の平を返さない保証は? |
Juusan |
シエル
レイさんに危害が及ぶ可能性があるのなら、 それを了承することはできません。 |
Ciel |
ゼクス
怯えることはない。 |
Sechs |
ゼクス
私を観るのが『レイ』である以上、 私はその観測を逸脱した行動はとれない。 |
Sechs |
ゼクス
もし私が意に反するようであれば、 その力でもって制するといい。 |
Sechs |
ゼクス
さあ。どうする。 |
Sechs |
1: わかった。やります |
1: |
ゼクス
その決断に感謝する。 |
Sechs |
ゼクス
不安は不要だ。ただ観ればいい。 |
Sechs |
ゼクス
……窯は境界へと繋がる。 境界にはあらゆる世界のあらゆる情報が揺蕩っている。 |
Sechs |
ゼクス
近ければ近いほど、観測者としての力は増すだろう。 お前もまた、例外ではないはず。 |
Sechs |
ゼクス
ゆえに、ここで戦え。私と刃を交わせ。 それこそが最も正確に私を観測できる術だ。 |
Sechs |
ドライ
ゼクスと戦う? 本気ですか? あなたと戦うなど、こちらが無事ではすみません。 |
Drei |
ゼクス
これは滅ぼし合うための戦いではない。 それに、さっきも言ったが私の力は微々たるものだ。 |
Sechs |
ゼクス
たとえ窯の近くであっても、それは変わらない。 |
Sechs |
ゼクス
だからこの脆弱な力の全てを観ろ、レイ。 そして私を、認識してくれ。 |
Sechs |
10節『バベルの尖槍②』/ 10. Babel's Sharp Spear - 2
Summary | |
---|---|
ゼクスの観測中に黒いマイが乱入し、強襲す
る。一同は応戦するも、彼女に埋め込まれた 黒の因子による驚異的な力に圧倒される。 |
シエル
!? |
Ciel |
タロ
な、なんだ、突然!? |
Taro |
アナザーダーク=マイ
やっぱり、それが狙いか。 |
Another Dark Mai |
ゼクス
…………。 |
Sechs |
ドライ
あなたは! |
Drei |
シエル
マイさん……!? |
Ciel |
アナザーダーク=マイ
あれ。君にまで会うなんてね。 まあ、どうせそのうち会うだろうとは思ってたけど。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
ま、積もる話は……仕事を終えてから!!</style> |
Another Dark Mai |
ゼクス
っ! |
Sechs |
ドライ
ゼクス! |
Drei |
ドライ
お下がりください。あなたの盾になるのなら本望……! |
Drei |
アナザーダーク=マイ
へえ。盾になれると思ってるんだ? その程度で! |
Another Dark Mai |
ドライ
うぐぅぅっ……! な、なんだ、この力……!? |
Drei |
アナザーダーク=マイ
はぁぁぁぁっ!! |
Another Dark Mai |
ドライ
ぐぅっ、あ、ぐ……! っ!? |
Drei |
ドライ
ぐあぁぁぁぁぁっ……!! |
Drei |
シオリ
ドライ!? |
Shiori |
タロ
速い……それに、強い! 前に戦ったときも強かったけど、ここまでだっけ……!? |
Taro |
十三
好き勝手させるか! |
Juusan |
アナザーダーク=マイ
馬鹿だな。力の差もわからないの? |
Another Dark Mai |
十三
うっ、ぐ……! |
Juusan |
アナザーダーク=マイ
ほら、どうした!? さっきの威勢が跡形もないじゃないか! それで僕に勝つつもり!? |
Another Dark Mai |
シエル
はぁぁぁっ!</style> |
Ciel |
アナザーダーク=マイ
そらっ!! |
Another Dark Mai |
シエル
くぅっ……! |
Ciel |
十三
なんだ、あいつ……。 |
Juusan |
十三
尋常じゃなく強くなってる。つい数日前に会ったばっかり なのに、あのときとは比べものにならない。 |
Juusan |
タロ
そんな……! あのときだってめちゃくちゃ強かったのに!? |
Taro |
シエル
確かに……私も以前、戦ったことがありますが、 そのときよりもずっと攻撃が重い……。 |
Ciel |
アベンジ
……なにかあるな。様子が違う。 |
Avemge |
アナザーダーク=マイ
なにかだって? ククク……なにかもなにもないだろ。 ここにある特別なものといえば、ひとつだけだ。 |
Another Dark Mai |
ドライ
特別なもの……ま、まさか……。 |
Drei |
ゼクス
……黒の因子を持つ者か。 |
Sechs |
アベンジ
なに? 黒の因子? |
Avemge |
ゼクス
そうだ。……やつの中には黒の因子が組み込まれている。 人であるには間違いないが、その性質は変異している。 |
Sechs |
ゼクス
深く魔素に侵されている状態と言える……。 ゆえに、境界に近ければ近いほど、その力は増す。 |
Sechs |
十三
なるほど。アレに近い性質ってことか……。 |
Juusan |
シエル
あれとは、なんですか? マイさんの持つ因子について、なにか情報をお持ちなのですか? |
Ciel |
十三
お持ちだけど、 今それについてあれこれ説明してられる余裕はないよ。 |
Juusan |
十三
それに簡単に言葉で説明できるものじゃない……。 |
Juusan |
アナザーダーク=マイ
ふ……その通り! |
Another Dark Mai |
1: こっちに来た!? |
1: |
シエル
レイさん!</style> |
Ciel |
アベンジ
っ! 危ない、こっちへ! |
Avemge |
シオリ
よ、よかった、ご無事で。 |
Shiori |
タロ
不意打ちなんて……。 |
Taro |
アナザーダーク=マイ
卑怯だって? これだけ頭数揃えておいて、 僕を捕まえられないそっちが無力なだけだろう。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
ねえ、レイ。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
仕事の依頼はゼクスの始末だけど…… 君は残しておくと厄介そうだからね。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
先に消しておいたほうがいいよね!! |
Another Dark Mai |
シエル
くぅぅぅ……さ、させません! |
Ciel |
アナザーダーク=マイ
いつまでもつかな? ちょっと、試してあげるよ。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
君たちがどれだけ無謀な挑戦をしてるのか、 わからせてあげるから!! |
Another Dark Mai |
10節『バベルの尖槍③』/ 10. Babel's Sharp Spear - 3
Summary | |
---|---|
窮地に響く銃声。ゲームを勝ち抜いたノエル
たちが塔へ辿り着き、戦局は拮抗する。十三 はその間に自身の『力』の観測を要求した。 |
|
観測に成功した、十三の持つ『力』──
事象兵器『巨人・タケミカヅチ』。それは災 厄すらも抑え込む、極大な巨人の腕だった。 |
アナザーダーク=マイ
うっ、ぐぅ……! |
Another Dark Mai |
シエル
はぁ、はぁ、はぁ……。 |
Ciel |
アナザーダーク=マイ
……っ、ククククククク、アハハハハ! なぁんてね。勝ったと思った? |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
冗談だろ。その程度で僕が倒せるものか。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
ああ……この力が いつでも出せるわけじゃないっていうのが癪に障るけど……。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
今の僕が、君たちには倒せないほど強いってことに 間違いはないし、いいか。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
それが確かめられたから、気がすんだよ。 だからもう、遊びは終わりだ。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
死んでよ。 レイ。 |
Another Dark Mai |
シエル
う、ぐ……レイさん、 下がって、ください……っ! |
Ciel |
アナザーダーク=マイ
クククッ、観測の力で僕を制御しようとしても、無駄だよ。 君にはそれができない。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
君はよく知ってるはずだからね。 僕に勝てないってことを。 |
Another Dark Mai |
十三
チッ、なにを勝手なことを……! |
Juusan |
アナザーダーク=マイ
もう終わりだって言っただろ。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
レイも、ゼクスも。まとめて消えろ! |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
――朱墜『蒼溟月尖華』!!!</style> |
Another Dark Mai |
タロ
うわぁぁ……っ。 |
Taro |
シオリ
タロ先輩……! |
Shiori |
ドライ
ぐぬぅぅ……。 |
Drei |
ドライ
ゼクス、だけは守らねば……! |
Drei |
ドライ
があぁぁぁぁぁ……っ!! |
Drei |
ドライ
…………。 |
Drei |
アベンジ
う……ぐ……。 |
Avemge |
シオリ
あうぅ……。 |
Shiori |
シエル
っ、う……だい、じょうぶ、ですか…… レイさん……。 |
Ciel |
1: シエル、大丈夫!? |
1: |
シエル
はい、大丈夫です。問題ありません。 私は……レイさんの、護衛ですから……。 |
Ciel |
シエル
いえ、これが私の役目です。 それに……あなたを守るために、私はここへ来たのですから……。 |
Ciel |
シエル
っ、う、ぐ……。 |
Ciel |
十三
全員、下がってろ……。 近くにいると、邪魔だ……。 |
Juusan |
アナザーダーク=マイ
フフ……君たちはまだ戦うつもりなんだ? だけどそんな状態で、なにができる? |
Another Dark Mai |
ゼクス
…………。 |
Sechs |
十三
くっ……なにが、か……。 確かにな……。 |
Juusan |
十三
……こうなったら……『アイツ』を頼るしか……。 |
Juusan |
アナザーダーク=マイ
フッ―― |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
っ!? |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
……またお前たちか。 |
Another Dark Mai |
ノエル
皆さん! 助太刀にきましたよ! |
Noel |
シエル
ノエルさん……。 |
Ciel |
十三
なんで、ここにいる……!? |
Juusan |
Es
ゲームの勝者として『灰の王』への謁見資格を得たからです。 |
Es |
ひなた
みんな、しっかりして! |
Hinata |
シオリ
エス、ひなた……あなたがたまで……! |
Shiori |
アベンジ
……やはり、複数のチームに資格が与えられる方式だったか。 |
Avemge |
アベンジ
『灰の王』……ゼクスの目的が観測の力であるのなら、 たったひとチームに勝者を絞る必要はないからな。 |
Avemge |
アベンジ
むしろある程度絞れたなら、当たりが来るまで 『灰の王』として待ち続けるつもりだったんだろう。 |
Avemge |
タロ
みんながいるってことは……。 |
Taro |
アナザーダーク=マイ
チィッ……! |
Another Dark Mai |
ノエル
ドライさん、しっかりしてください! |
Noel |
ひなた
ひどい傷……手当てしないと……。 でもこんなところじゃ……。 |
Hinata |
シオリ
ええ……ここを切り抜けてからでないと、 手当てのしようもありませんわ。 |
Shiori |
ゼクス
……問題ない。ドライはまだ死にはしない。 |
Sechs |
ひなた
え……? あ、あなた、は……。 |
Hinata |
Es
ゼクス……。 |
Es |
Es
ではあなたが……『灰の王』……? |
Es |
ジン
……やはり、僕の知るマイ=ナツメではないな。 |
Jin |
ジン
それにこの不穏な気配……嫌な感じがする。 貴様、一体なにを取り込んでいる? |
Jin |
アナザーダーク=マイ
取り込んだんじゃない。 手に入れたんだ。 |
Another Dark Mai |
十三
黒の因子だそうだ。 |
Juusan |
十三
それがなんなのか、秩序の力を持っているアンタになら、 なんとなくわかるだろ。 |
Juusan |
十三
だから奴は境界の近く、 つまり窯の近くではケタ外れに強くなる。 |
Juusan |
十三
それから……あのふざけた因子を持っているがゆえに、 私にとって倒さなければならない標的にもなった。 |
Juusan |
十三
つまり、そいつは私の獲物だ。 |
Juusan |
ジン
……ほう。 |
Jin |
ジン
その話を聞いた以上、 僕も大人しく剣を引くわけにはいかないな。 |
Jin |
ジン
黒の因子……その気配、その感じ。 僕が殺さねばならないモノだ! |
Jin |
アナザーダーク=マイ
ジン=キサラギ……秩序の力か。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
均衡を保つための力。世界のバランサー。 相対する者の力が強ければ強いほど、秩序の力も強くなる……。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
厄介な相手がまた増えたな。 だけど、構うもんか。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
秩序の力だろうが素体だろうが、 なんでも好きにかかってきたらいいよ。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
僕はそんなものに、負けるわけにはいかないんだから! |
Another Dark Mai |
シエル
激しい攻防です。私たちも加わりましょう! |
Ciel |
十三
いや。その前にやってもらうことがある。 |
Juusan |
シエル
え? |
Ciel |
十三
私を観測しろ、レイ。 |
Juusan |
シエル
観測? 十三さんはすでに、ゼクスさんという観測者に 認識されていると思いますが……? |
Ciel |
十三
その力の足りない観測者や、 私自身の自己観測じゃ足りないから言ってる。 |
Juusan |
十三
正確には私じゃなくて……私が持ってる『力』を観測しろ。 ゼクスのときと同じだ。できるだろ。 |
Juusan |
シエル
十三さん、力とはどんなものですか? それにレイさんを危険に晒すわけには……。 |
Ciel |
十三
その危険から脱するために、観測しろって言ってるんだ。 |
Juusan |
十三
悠長におしゃべりしてる時間はない。 秩序の力があいつと渡り合えてるうちに、早く! |
Juusan |
十三
……はは。本当に観測してくれた。 アイツを……。 |
Juusan |
シオリ
な……な……な、なんなんですの、あれは!? |
Shiori |
タロ
今、どこからともなく、大きな腕が出てこなかった!? しかも、じゅうじゅうが呼び出したように見えたんだけど……? |
Taro |
ひなた
う、うん、私にもそう見えた……。 すごく恐くて、すごく威圧的な……。 |
Hinata |
アベンジ
あまりにも異様だ。 この世にあってはならないものであるかのような。 |
Avemge |
シエル
検索……検索……該当情報不明。 |
Ciel |
シエル
発掘兵器と称される強力な武具に似ている反応ですが 違うものです。 |
Ciel |
シエル
あれは……十三さん、あれはなんですか? |
Ciel |
十三
…………。 |
Juusan |
十三
あれは…… アイツは、『巨人』だよ。 |
Juusan' |
11節『その眼で観よ①』/ 11. Watch With Those Eyes - 1
Summary | |
---|---|
観測者、秩序の力、『巨人』……戦況は一変
する。しかし超常の力に囲まれて尚、神をも 殺すと嘯く少女はただ不敵に嗤っていた。 |
アナザーダーク=マイ
なっ……!? |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
それは……まさか……。 事象兵器……。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
君、そんな物騒なもの従えてたの? 事象兵器『巨人・タケミカヅチ』……。 |
Another Dark Mai |
ジン
なんだと? |
Jin |
十三
残念だけど、私が扱えるのはコイツの力のほんの一部だけだ。 だけどアンタの見抜いた通り、こいつは『巨人』……。 |
Juusan |
十三
かつて人類を全滅の直前まで追いやったとされる災厄。 そいつをねじ伏せ押さえ込んだことがある、巨人の腕だ。 |
Juusan |
十三
黒の因子がどれだけの力を持っているのか知らないが、 こいつからはそう簡単に逃げられないよ。 |
Juusan |
十三
その因子とやらごと、握りつぶしてやる。 |
Juusan |
アナザーダーク=マイ
はっ……。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
すごいや。 観測者に、秩序の力。そのうえ『巨人』か。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
そうそうたる顔ぶれじゃないか。 楽しくなってきた……。 |
Another Dark Mai |
十三
こっちはちっとも楽しくない。 コイツまで引きずり出されて……。 |
Juusan |
十三
ジン=キサラギ。あいつの動きはコイツで押さえる。 なんとか捕まえるから、そこを狙って。 |
Juusan |
ジン
貴様が僕に指図するな。 |
Jin |
ジン
……と、言いたいが……この状況では、 それが最善手だということくらい僕にもわかる。 |
Jin |
ジン
いいだろう。協力してやる。 |
Jin |
アナザーダーク=マイ
クククッ……! これだけのものと一度に対峙できるなんて、そうそうない。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
これを倒せたら……倒したら、 最終的にはきっと僕は、神だって殺せる。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
ああ……そのことを、証明しなくちゃ。 |
Another Dark Mai |
ノエル
マイ……。どうしてそんなことを……。 |
Noel |
ノエル
ううん、あれは私の知ってるマイじゃない。 マイとは違う……そうだよね。 |
Noel |
Es
ノエル、怪我人を連れてもっと下がりましょう。 ここは危険です。 |
Es |
ひなた
巻き込まれちゃう! |
Hinata |
アベンジ
こっちへ。前には俺が出ておく。 |
Avemge |
シオリ
なにを格好つけているんですか、 あなただってボロボロのくせに……。 |
Shiori |
アベンジ
無論、連中には及ばない。 下手な手出しは足手まといになるだけだ。 |
Avemge |
アベンジ
だが壁役くらいにはなれる。 |
Avemge |
アナザーダーク=マイ
さあ、来なよ。やろう。 戦おう! |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
フフフ、どれだけ超常的な力を揃えて歯向かってこようと、 無駄なことだって教えてあげる。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
そもそもそっちにいる観測者は、僕に勝てると思ってない。 僕の槍が恐ろしくて、観測の力ごとすくんでるみたいだからね。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
その時点で君たちはもう勝てないよ。 |
Another Dark Mai |
十三
……っ、そんなもの……。 |
Juusan |
1: 君(あなた)には負けない |
1: |
アナザーダーク=マイ
……生意気だなぁ。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
その虚勢が事実になるかどうか、 試してみようじゃないか! |
Another Dark Mai |
シエル
くっ! |
Ciel |
シエル
レイさん、攻撃は私が受け止めます。 私はあなたの盾であり、剣になる。 |
Ciel |
アナザーダーク=マイ
はいはい、弱い連中が涙ぐましいよ。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
段々苛々してきた。 ああ、もう終わりだよ、終わり。 |
Another Dark Mai |
十三
来るぞ、さっきの攻撃だ! |
Juusan |
アナザーダーク=マイ
無力を……思い知れ!!!</style> |
Another Dark Mai |
十三
……っ! |
Juusan |
十三
う、ぐ……なんだ? 弱い……? |
Juusan |
シエル
……はい。 さっきより、明らかに威力が軽減されています。 |
Ciel |
シエル
これは……。 |
Ciel |
ジン
……貴様の観測によるものか。 |
Jin |
アナザーダーク=マイ
僕の攻撃を、弱いと見なしたのか。 その眼で。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
ふざけるな。僕は弱くない。僕は負けない。</style> |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
その身に教えてやったはずだ。どれだけ君が弱いのか。 なのに……! |
Another Dark Mai |
十三
レイが気合いを見せてるってことか。 |
Juusan |
十三
なにを見たのか知らないけど、押し返せ! 観測の力なんて、最終的にはアンタの意思なんだから。 |
Juusan |
シエル
行きましょう、レイさん。 アナザーダーク=マイさんを、観測するんです。 |
Ciel |
11節『その眼で観よ②』/ 11. Watch With Those Eyes - 2
Summary | |
---|---|
総力を挙げた攻撃に、マイは倒れて消える。
しかしゼクスは既に時間の猶予はないと語 り、彼に対する観測の再開を促した。 |
|
観測の下に、ゼクスは戦う力を取り戻し……
迸った鮮血。頽れる彼の背後から現れたの は、『外』からの来訪者──ハーンだった。 |
アナザーダーク=マイ
はぁぁぁぁっ!!</style> |
Another Dark Mai |
シエル
っ、あうぅ……! |
Ciel |
アナザーダーク=マイ
ほら、ほら、ほらぁ! しっかり受け止めなよ、盾になるんだろ!? |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
なに!? |
Another Dark Mai |
シエル
……衝撃が消えた? 事象干渉……観測ですね。 |
Ciel |
シエル
レイさん……すみません、 何度も力を使わせてしまって。 |
Ciel |
アナザーダーク=マイ
くそ、忌々しい……! |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
だけどいつまでももつもんか。 観測の力で僕の攻撃を打ち消そうなんて目茶苦茶なこと……。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
しまった、巨人! |
Another Dark Mai |
十三
……ああ、いつまでももつもんじゃない。 だから今のうちに、捕まえさせてもらうよ。 |
Juusan |
アナザーダーク=マイ
う、く、くそぉ……っ! |
Another Dark Mai |
十三
しっかり観てなよ、レイ。 ……ジン=キサラギ!</style> |
Juusan |
ジン
僕に指図をするなぁぁぁ!</style> |
Jin |
アナザーダーク=マイ
……………………。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
…………そんな……ばかな。 僕が……こんなことで……。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
負けるのか……? |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
……僕を観ているな……観測者。 君さえいなければ……あのとき、仕留めていれば……。 |
Another Dark Mai |
シエル
…………。 |
Ciel |
アナザーダーク=マイ
ふ……は、きっと君も、そのうち思うよ。 あのとき大人しく死んでおけばよかった、ってね……。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
これだけの力をつけて、 これだけ常人離れしたことをしてみせて……。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
その眼で君は、世界の終わりを観るんだ……から……。 |
Another Dark Mai |
シエル
…………。 |
Ciel |
シエル
倒……した……倒しました。 マイさん……対象の反応が消失しました。 |
Ciel |
十三
……ああ。間違いない。 奴を倒した。 |
Juusan |
十三
アンタの勝ちだよ、レイ。 |
Juusan |
十三
っ、と……。 |
Juusan' |
ノエル
危ない。 ……大丈夫? 足元、ふらついてる。顔も真っ青だし。 |
Noel |
十三
……っ。 JuusanRei | |
十三
私に構うな。 ……特にアンタは。 |
Juusan' |
ノエル
え? どうして? |
Noel |
十三
どうしても。 |
Juusan |
十三
……大丈夫。力を使いすぎただけ。 |
Juusan |
シオリ
マイ様……。 |
Shiori |
シオリ
あっ……シエルも、大丈夫ですか? 傷だらけ……。 |
Shiori |
シエル
あ……はい。運動機能に問題はありません。 ですが……不思議と、信じがたいような気持ちです。 |
Ciel |
シエル
あのマイさんを倒せただなんて……。 |
Ciel |
1: みんなで力を合わせたから |
1: |
シエル
はい……そうですね。 私もそう思います。 |
Ciel |
シエル
特に十三さんとジンさん、 それにレイさんの力がなくては、不可能でした。 |
Ciel |
十三
なに言ってるんだ。 最大の功労者は、間違いなくアンタだ。 |
Juusan |
十三
私よりずっととんでもないものを持ってるよ、アンタは。 |
Juusan |
ゼクス
……窯が近いゆえか、 それともお前自身の無意識のうちの覚醒ゆえか。 |
Sechs |
ゼクス
黒の因子を持つ者の敗北と退場は、お前の観測が決定づけた。 ……やはり、間違いない。 |
Sechs |
ゼクス
もはやこれは期待や願望ではなく、確信だ。 お前なら私を、完璧に観測することができる。 |
Sechs |
ゼクス
その眼、その力こそ、私が求めるもの。 |
Sechs |
Es
ゼクス……あなたは何を知っているのですか……? 何をしようと……。 |
Es |
ゼクス
問いに答える時間はない。 我々には猶予がない。 |
Sechs |
ゼクス
黒の因子は送り込まれた刺客だ。 それを退けたことは、すでに知られているだろう。 |
Sechs |
ジン
知られている? 誰にだ。 |
Jin |
ゼクス
『外』にいる者に。 |
Sechs |
ゼクス
……私には戦わなければならない相手がいる。 いや、対峙せねばならぬ相手が。 |
Sechs |
ゼクス
戦えねば、全てが覆る。世界が失うべきだったものが蘇り、 世界に在るべきものが失われる。 |
Sechs |
ゼクス
お前の『世界』も、取り戻せなくなるぞ。 |
Sechs |
1: すぐに観測を始めましょう |
1: |
ゼクス
……頼む。 |
Sechs |
ゼクス
…………。 |
Sechs |
シエル
……対象を補足、認識……。 |
Ciel |
シエル
先程と大きく変わった様子はありませんが…… 完了したのでしょうか? |
Ciel |
ゼクス
……ああ。 |
Sechs |
ゼクス
私自身にしか感じ取れないことなのかもしれないが、 先程までとは明らかに違う。 |
Sechs |
ゼクス
内に感じる力も、目に見える光景も、肌に感じる空気も。 全てが鮮明で、克明だ。 |
Sechs |
ゼクス
ただ……万全と呼ぶにはまだ及ばない。 |
Sechs |
ゼクス
戦えるだけの力を取り戻しはしたものの、 より強く正確なお前の観測が私には必要なようだ。 |
Sechs |
ゼクス
レイ。お前には…… ――っ!! |
Sechs |
ゼクス
が、ふ……っ。 |
Sechs |
Es
ゼクス……! |
Es |
ひなた
きゃぁぁぁっ!</style> |
Hinata |
ゼクス
……ぐ……来た、か……。 |
Sechs |
ハーン
……また、会ったね。 レイ。シエル。 |
Hearn |
12節『失われた思い出①』/ 12. Lost Memories - 1
Summary | |
---|---|
一同はハーンの襲撃阻止に動く中、ゼクスが
シエルに託した願い……それは窯を破壊し、 彼と世界の繋がりを切り離すことだった。 |
ハーン
……また、会ったね。 レイ。シエル。 |
Hearn |
ドライ
う……なに、が、起きて……ゼクス……なぜ……? |
Drei |
ドライ
し……しっかり、してください、ゼクス……! |
Drei |
ゼクス
…………。 |
Sechs |
ハーン
…………。 |
Hearn |
シエル
あなたは、ハーン……。 |
Ciel |
アベンジ
ゼクスが言っていた『外』の者とは、そいつのことのようだな。 だが、何者だ? |
Avemge |
シエル
ハーン。バベルという、私たちの敵対組織の一員です。 |
Ciel |
ノエル
バベル……? |
Noel |
十三
こいつが……。 |
Juusan' |
ハーン
……敵対組織か。 僕は君と敵対するつもりはないんだけどね、シエル。 |
Hearn |
ハーン
だけど君たちがここに到達してしまったことは、残念だ。 |
Hearn |
ハーン
本当は彼を見つけられる前に、 マイ=ハヅキに始末してもらおうと思っていたんだけど。 |
Hearn |
シオリ
っ……あのマイ様に命令していたのは、 あなたですのね。 |
Shiori |
ハーン
命令だなんていうと、彼女は不服だろうな。 僕はただ、依頼しただけだ。 |
Hearn |
タロ
ゼクスを……始末ってことは。 殺させるつもりだったってことだよね。 |
Taro |
ハーン
そう。 |
Hearn |
ハーン
彼女は黒の因子を持っている。 |
Hearn |
ハーン
それにより、ファントムフィールドの観測者による観測の、 影響を受けずにすむんだ。 |
Hearn |
ハーン
だから観測者を殺すこともできる。 |
Hearn |
ハーン
……なのに、君たちに阻まれてしまった。 残念だよ。 |
Hearn |
ハーン
まあ……。 |
Hearn |
ハーン
蒼の魔道書の写本に、秩序の力。事象兵器の巨人に…… 観測の力まで揃っているんだ。仕方ない。 |
Hearn |
ハーン
そのうえ……観測に縁の深い人物が、 レイ以外にもいるようだしね。 |
Hearn |
ハーン
本当に、これだけの面々をよくそろえたものだよ。 執念をも感じるね。 |
Hearn |
ゼクス
…………。 |
Sechs |
ハーン
だけど。 それでも僕は君を存在させるわけにはいかないんだ。 |
Hearn |
ドライ
っ、させません! ゼクスには手出しをさせませんよ……! |
Drei |
タロ
だめだ、ドラドラ! |
Taro |
シオリ
いけません! |
Shiori |
ハーン
…………。 |
Hearn |
ドライ
なっ、うぐぅぅぅ……お、抑えきれない……っ。 うがぁぁぁぁぁっ!</style> |
Drei |
ゼクス
くっ……! |
Sechs |
シオリ
きゃぁっ……!</style> |
Shiori |
タロ
うわぁぁ!</style> |
Taro |
ノエル
このっ! |
Noel |
十三
せあぁぁっ! |
Juusan |
ハーン
困るな。君たちとは争いたくない。 大人しくしていてくれ。 |
Hearn |
十三
そっちにその気がなくても、 こっちは都合よく同意見ってわけじゃないんだよ! |
Juusan |
ノエル
事情はわかりませんが……今まさに目の前で、 誰かを殺そうとしていると聞いて、黙ってはいられません! |
Noel |
ジン
フン……なにより貴様。 どことなく……嫌な気配がするぞ。 |
Jin |
ジン
殺しておいた方が良さそうな気配だ。 |
Jin |
ハーン
……秩序の力……。 |
Hearn |
ゼクス
……お前たちに、もうひとつ頼みたいことができた。 |
Sechs |
シエル
ゼクスさん、今は動かないほうが賢明です。 下がっていてください。 |
Ciel |
シエル
ハーンは、私たちが……! |
Ciel |
ゼクス
そんなことはどうでもいい。 |
Sechs |
シエル
どうでも……? ど、どういうことですか? |
Ciel |
ゼクス
私は……やがて倒れる。 そうでなくとも、あの男は私を仕留める。 |
Sechs |
ゼクス
その前に、窯を壊せ。 |
Sechs |
シエル
窯を? |
Ciel |
ゼクス
可能なのだろう? |
Sechs |
シエル
はい、可能です。 それが私たちの目的でもあります。 |
Ciel |
シエル
ですがそれは、ゼクスさんからこの世界を完全に切り離すことに なります。わかっていて、おっしゃっているのですか? |
Ciel |
ゼクス
ああ。 だからこそだ。 |
Sechs |
ゼクス
……私がここで命を落とすことがあれば、 この世界は……どうなる? |
Sechs |
シエル
観測者が死亡すれば…… ファントムフィールドは即座にリセットがかかって……あ! |
Ciel |
ゼクス
それを阻止しろ。 繰り返すわけにはいかない。 |
Sechs |
ゼクス
アレを生み出すわけにはいかない。 |
Sechs |
シエル
あれ……? |
Ciel |
ゼクス
早くしろ! |
Sechs |
シエル
は、はい、わかりまし……。 |
Ciel |
シエル
っ、なっ!? 突然こんな場所に魔物!? |
Ciel |
ゼクス
……窯から出現したのか? 私の意図したことではないぞ……。 |
Sechs |
ちんぴら
……………………。 |
Ruffian |
ちんぴら
おお……女だ、女がいるぞ。 さらえ、奪え、殺せ、全部俺たちのもんだぁぁ! |
Ruffian |
魔物
ギシャァァァァァァァ!! |
Monster |
シエル
これはもしかして、ファントムフィールドの防衛機構……!? |
Ciel |
シエル
窯を破壊されるという危機的状況が確定したために、 発生しているのかもしれません。 |
Ciel |
ゼクス
やれ。雑魚は私が……。 |
Sechs |
アベンジ
その体でどれだけ引き受けられると思っているんだ。 |
Avemge |
シエル
アベンジさん。 |
Ciel |
アベンジ
お前が死んだらまずいのだろう? だったら俺が引き受ける。 |
Avemge |
アベンジ
だが長くはもたないぞ。 向こうも、こっちに専念できる状況ではないようだしな。 |
Avemge |
Es
私も、お手伝いします。 |
Es |
シエル
エスさん。ありがとうございます。 |
Ciel |
1: 後ろはお願い |
1: |
アベンジ
ああ。乗り掛かった舟だ。 最後まで付き合う。 |
Avemge |
Es
了解。任せてください。 |
Es |
Es
……知らなければならないことも、ありますので。 |
Es |
シエル
はい! 目標、前方に展開された魔物及び人型障害。 切り拓き、窯の破壊を行います! |
Ciel |
Es
お願いします。 |
Es |
Es
……まだ知らなければならないことがある。 退けません。 |
Es |
シエル
戦闘態勢に移行します! |
Ciel |
12節『失われた思い出②』/ 12. Lost Memories - 2
Summary | |
---|---|
ハーンの猛攻に耐え、窯の破壊に成功する。
ゼクスは微笑みを残して倒れ──目覚めると フガクの中で、シエルたちに囲まれていた。 |
シエル
たぁぁぁぁぁっ! |
Ciel |
シエル
っ、はぁ、はぁ……手が緩んだ……。 今なら行けます、レイさん! |
Ciel |
1: シエル、蒼の魔道書を! |
1: |
シエル
了解です! |
Ciel |
ハーン
……っ、窯が……! |
Hearn |
ハーン
どいてくれ! |
Hearn |
ノエル
!? |
Noel |
ノエル
あぁぁぁぁっ!</style> |
Noel |
ジン
そこだ! |
Jin |
ハーン
くっ……邪魔をするな! |
Hearn |
ジン
っ、ぐ、ぐぁぁっ……!!</style> |
Jin |
ハーン
せめて窯が壊れる前に、ゼクス、君だけは……! |
Hearn |
Es
いいえ、それは許しません。 |
Es |
ハーン
……っ。 |
Hearn |
シエル
第666拘束機関解放。次元干渉虚数方陣展開。 |
Ciel |
シエル
|
Ciel |
シオリ
うあぁっ……と、とんでもない衝撃です。 これを、シエルさんがやっているのですか……!? |
Shiori |
タロ
どうやら、そうみたい。 彼女の魔道書、ものすごい威力だ。 |
Taro |
ノエル
今、 |
Noel |
ジン
…………。 |
Jin |
シエル
……窯の停止、破壊を完了しました。 |
Ciel |
ゼクス
…………。 |
Sechs |
ドライ
ゼクス……! |
Drei |
ハーン
……ああ、壊れてしまったか。 |
Hearn |
ハーン
そうなる前に、彼だけでも持っていきたかったけど。 |
Hearn |
Es
…………。 |
Es |
ハーン
君がどうしても通してくれなさそうだな。 |
Hearn |
ひなた
……あの。あなた……。 |
Hinata |
ハーン
…………。 |
Hearn |
ひなた
あなたのこと……どこかで……私、どこかで……。 |
Hinata |
Es
……はい。ひなた。 私もそう感じてなりません。 |
Es |
Es
彼のことを……知っている。 |
Es |
ハーン
…………僕を知っているって? |
Hearn |
ハーン
僕は『世界から存在を否定された者』。 |
Hearn |
Es
あなたは……。 |
Es |
シエル
存在を、否定……? |
Ciel |
ハーン
……君たちは誰かを忘れている。 |
Hearn |
ハーン
思い出したらいい。 思い出せたら、僕が誰なのかきっとわかる。 |
Hearn |
Es
!? |
Es |
Es
――――あなたは。 |
Es |
シエル
レイさん、これは……フガクです! 窯の解放を感知したため、強制帰還が実行されます! |
Ciel |
シエル
ですが……っ、くぅぅ……っ! |
Ciel |
ハーン
……レイ。 |
Hearn |
ハーン
僕は、否定された僕自信と、僕の世界を取り戻す。 |
Hearn |
ハーン
君がその障害となるのなら、取り除く。 |
Hearn |
ハーン
……さようなら。 また会う日まで。 |
Hearn |
シエル
……さん、レイさん……! |
Ciel |
シエル
レイさん。 ……よかった、意識を取り戻されましたね。私がわかりますか? |
Ciel |
シエル
はい。シエルです。 |
Ciel |
シエル
……具合は悪くありませんか? どこかおかしなところは? 痛むところや、ええと、あとは……。 |
Ciel |
1: 大丈夫 |
1: |
シエル
よかった……本当に、よかったです。 ご無事でなによりです。 |
Ciel |
シエル
とても心配していました。 |
Ciel |
シエル
はい。おかえりなさい、レイさん。 ご無事でなによりです。 |
Ciel |
シエル
ずっとお帰りを、待っていました。 |
Ciel |
カガミ
レイ!</style> ああ、よかった、本当にレイなんだな!? |
Kagami |
カガミ
よかった、よかったぁ〜〜〜〜〜〜〜……。 あ〜〜〜、ほっとしたらどっと疲労が……。 |
Kagami |
カガミ
あ、いかん、立ちくらみが……。 |
Kagami |
ココノエ
だらしない姿をさらすな。 |
Kokonoe |
ココノエ
任務ご苦労、レイ。 それから……。 |
Kokonoe |
ココノエ
また会ったな。 |
Kokonoe |
テイガー
積もる話に、山ほどの報告があるだろうが…… まずは体を休めることが先決だろうな。 |
Tager |
テイガー
慣れない状況下に長時間置かれたのだ。 心身共に相当な負荷がかかっているはずだからな。 |
Tager |
シエル
あ、そうです、そうですよね。 急いでメディカルチェックを行いましょう。 |
Ciel |
カガミ
それと、栄養たっぷりの食事と質のいい睡眠をとってくれ。 報告の類は全部あとでまとめて聞く。 |
Kagami |
カガミ
こっちもこっちで、 目茶苦茶にいじり回したフガクの再調整があるしな。 |
Kagami |
カガミ
……ん? どうした? |
Kagami |
1: シエル、カガミさん |
1: |
カガミ
……なんだよ。助けてくれてありがとうって? そんなの当然だろう。 |
Kagami |
カガミ
……よせよせ、改まって。 第一、当然だろう。 |
Kagami |
シエル
先に助けてくださったのは、レイさんのほうです。 境界に飛び込んだとき、いいえ、もっとずっと前から……。 |
Ciel |
シエル
あなたはいつだって、私を支えて、助けてくれました。 だから、私はあなたを助けに行きました。 |
Ciel |
シエル
あなたともっと一緒にいたいから。 |
Ciel |
終節『ひとたび幕は下り』/ Finale: The Curtain Closes on One Journey
Summary | |
---|---|
フガクは再び日常に戻り、艦にラムダを迎え
て次の一手へと動き出した──やがて『蒼』 へと至るまで。物語は、紡がれ続けていく。 |
1: ふわぁ……よく寝た |
1: |
シエル
あ。レイさん。 ちょうどよかったです。 |
Ciel |
シエル
今、声をかけにいこうと、 お部屋に向かっていたところでした。 |
Ciel |
シエル
そろそろ食事の時間ですから、 よろしければ一緒にいかがですかと、思いまして。 |
Ciel |
シエル
ありがとうございます。 では、食堂に向かいましょう。 |
Ciel |
シエル
カガミさんは、今日も司令室で食事にするようです。 |
Ciel |
シエル
タカマガハラシステムの状態を元に戻すのに、 まだもうしばらくかかるみたいです。 |
Ciel |
シエル
ついでに長い間、負荷がかかっていたので、 その辺りのメンテナンスも行うとおっしゃっていました。 |
Ciel |
シエル
大変そうですが……ココノエさんもいらっしゃいますし。 そう遠くないうちに、状態も安定すると思います。 |
Ciel |
シエル
次こそは、レイさんと一緒に行けると、 少し楽しみでもあったのですが……。 |
Ciel |
シエル
しばらくは、フガクでのトレーニングに励みます。 |
Ciel |
シエル
レイさんは、 どのように過ごすか決めていますか? |
Ciel |
シエル
……あ。 |
Ciel |
ココノエ
おお。お前たちか。 |
Kokonoe |
テイガー
食堂か? 規則正しく食事をとることは、いいことだ。 心身のコンディション維持に効果がある。 |
Tager |
シエル
はい。おふたりもお食事でしたか? |
Ciel |
ココノエ
いや。私は基本的に皿に乗った食事はとらない。 栄養補給もカロリー摂取もエネルギーバーで十分だ。 |
Kokonoe |
テイガー
……お前たちは、このようにはなるなよ。 |
Tager |
テイガー
かくいう私も、取り立てて食事を必要としない体だ。 補給用のオイルがあるからな。 |
Tager |
ココノエ
こんなところをうろついている理由は、こいつだ。 |
Kokonoe |
シエル
あなたは……? |
Ciel |
ラムダ
ラムダ。 |
Lambda |
ココノエ
私が直接調整した、次元境界接触用素体、Λ-No.11だ。 |
Kokonoe |
ココノエ
レイが行方不明になったとき、境界に入って フガクとファントムフィールドの中継地点になってもらっていた。 |
Kokonoe |
ココノエ
それを今しがたサルベージしたので、 メンテナンスをしてきたわけだ。 |
Kokonoe |
ラムダ
…………。 |
Lambda |
シエル
そういえば、もうひとり部下がいるというようなお話を されていましたね。それが、ラムダさんだったのですね。 |
Ciel |
シエル
はじめまして。シエル=サルファーと申します。 御剣機関に所属しているスレイプニールです。 |
Ciel |
1: レイです、よろしく |
1: |
ラムダ
…………よろしく。 |
Lambda |
ラムダ
…………ラムダは命令に従っただけ。 |
Lambda |
ココノエ
愛想のないやつだが、いつもこんな感じだから気にするな。 |
Kokonoe |
ココノエ
これからの任務は、私やテイガーに加えて、 ラムダも協力することになるだろう。 |
Kokonoe |
ココノエ
境界そのものの調査も可能になるはずだ。 |
Kokonoe |
シエル
それは、とても頼もしいです。 |
Ciel |
カガミ
レイ、今いいか? |
Kagami |
シエル
カガミさん。お疲れ様です。 |
Ciel |
カガミ
なんだ、シエルも一緒だったのか。 |
Kagami |
シエル
はい。 ココノエさんとテイガーさん、それにラムダさんも一緒です。 |
Ciel |
カガミ
勢ぞろいじゃないか。ナイスタイミング、私。 |
Kagami |
テイガー
我々にもなにか用事か? |
Tager |
ココノエ
ああ。あのことか。 |
Kokonoe |
カガミ
そうだ。急で悪いんだが、ええとそうだな…… レイの部屋に集まってくれないか。 |
Kagami |
カガミ
司令室だとガチャガチャうるさいからな。 ああ、部屋貸してくれ、レイ。 |
Kagami |
1: わかりました |
1: |
カガミ
よろしく。私もすぐ行く。 |
Kagami |
カガミ
あとで説明する。とにかくよろしく。 |
Kagami |
カガミ
それじゃあ、あとでな。 |
Kagami |
カガミ
お、揃ってるな。 よしよし。 |
Kagami |
シエル
はい。……なにか、重大な話ですか? |
Ciel |
カガミ
うん、まあね。 |
Kagami |
カガミ
ただこれはフガク全体で取り組むというより、 私とココノエによる個人的な企みだ。 |
Kagami |
カガミ
だからこういう場所を使わせてもらった。 |
Kagami |
カガミ
……きっかけは、先日のファントムフィールドに、 ハーンが乗りこんできたことだ。 |
Kagami |
カガミ
彼は、そしてバベルは、具体的な目的を持って活動している。 それはもう疑いようがないだろう。 |
Kagami |
カガミ
ファントムフィールドに関わることも、ツルギについても。 あの異様なマイについても。なにかしらの目的があってのことだ。 |
Kagami |
カガミ
そして彼らの、その目的のための活動は、 徐々に活発になってきている。 |
Kagami |
ココノエ
あのハーンという男が、 観測者であるゼクスを殺害しようとしたこともそうだ。 |
Kokonoe |
ココノエ
これまではどこか実験でも見守るようだったそうだが、 今回は違う。自発的で積極的な、意思ある行動だ。 |
Kokonoe |
カガミ
そこでな、ココノエと相談した結果、 こちらの対応を少し変える必要があると考えた。 |
Kagami |
テイガー
対応を変えるというのは、具体的にどうするつもりなのだ? |
Tager |
カガミ
ああ。これまで私たちは、バベルの存在を知り、 脅威に感じながらも、その目的がはっきりしないことから……。 |
Kagami |
カガミ
追求と対処を保留し、自分たちの主目的である ファントムフィールドの探索、解放、確保を優先させてきた。 |
Kagami |
カガミ
それは狂った、あるいは歪んだ情報を消去して、 正しくあるべき形に情報を整える作業でもあった。 |
Kagami |
カガミ
そういったファントムフィールド内での我々の活動は、 全てタカマガハラシステムと……。 |
Kagami |
カガミ
レイの観測によって、成り立ってきた。 |
Kagami |
シエル
はい。レイさんの観測力は、 目覚ましく成長していると感じます。 |
Ciel |
カガミ
私もそう思う。 だからこそ、この手が使えるようになったとも言える。 |
Kagami |
カガミ
我々のこれまでの活動に関わる全ての情報は、 タカマガハラシステムに記録され、整頓、管理されている。 |
Kagami |
カガミ
だが、これからはより詳細で主観的な情報を、 タカマガハラシステムとは別に記録し、保持しようと思う。 |
Kagami |
シエル
タカマガハラには記録せず、別の媒体で管理するのですか? |
Ciel |
カガミ
そうだ。 |
Kagami |
カガミ
もちろん、記録したという事象と情報はシステムに記録されるが、 大事なのは別の場所にも保管場所を設けるという点だ。 |
Kagami |
カガミ
バベルの今後の関与によって、 どんな事態が引き起こされるかまったくもって予想ができない。 |
Kagami |
カガミ
タカマガハラシステムが使えない状況に陥ることも 考慮したほうがいい。 |
Kagami |
カガミ
他にも、予期できない事態に見舞われたとき。 万が一、レイの観測力が失われたとき。 |
Kagami |
カガミ
これまでとこれからの記録を、 タカマガハラに頼らず参照できる環境を作っておきたい。 |
Kagami |
ココノエ
そのために、 レイにはちょっと手伝ってもらう。 |
Kokonoe |
ココノエ
やることは簡単だ。レイのこれまでの記憶を、 全て書き出させてもらう。 |
Kokonoe |
ココノエ
その仕組みは私が構築した。 お前はただ装置をつけて、じっとしているだけでいい。 |
Kokonoe |
ココノエ
身の安全は保障しよう。 |
Kokonoe |
シエル
……本当ですか? |
Ciel |
テイガー
ココノエよ、その言い方をお前がすると、 かなり信用できない印象になる。 |
Tager |
ココノエ
なんでだ。心外だ。 私の作るものはいつだって、安心安全設計だろうが! |
Kokonoe |
テイガー
……ノーコメントで頼む。 |
Tager |
シエル
本当に、レイさんに危険はないんですね? |
Ciel |
カガミ
うん、安心しろ。私が保証する。 |
Kagami |
1: カガミさんが言うのもちょっと怪しい |
1: |
カガミ
ははは、疑心暗鬼はよくない、 もっと純真な心で世の中に接したまえよ、若者。 |
Kagami |
カガミ
おっと。そう真っ直ぐ言われると、ちょっと照れちゃうな。 |
Kagami |
ココノエ
安全だ。記憶障害の類も引き起こさない。 |
Kokonoe |
ココノエ
……もしそうでなかったとしても、 レイには協力してもらいたいところだがな。 |
Kokonoe |
カガミ
協力してくれるか。ありがとう。 |
Kagami |
カガミ
……お前にはいつも、選択しようのないことを 選ばせているな。 |
Kagami |
カガミ
すまない。だが、助かっている。 それは間違いない。 |
Kagami |
カガミ
……話は以上だ。 まあ、まずはゆっくり食事でもしてきてくれ。 |
Kagami |
カガミ
その間にこっちで準備をしておくから。 じゃあな。 |
Kagami |
シエル
……記憶の書き出し……記録の管理。 |
Ciel |
シエル
ココノエさんたちは、 とても大掛かりなことを始めるおつもりのようですね。 |
Ciel |
シエル
少し不安ではありますが、もしあなたに危険が 及ぶようであれば、私が全力で阻止します。 |
Ciel |
シエル
私はレイさんの護衛です。 お任せください。 |
Ciel |
シエル
……では、行きましょう。 |
Ciel |
蒼より出で、蒼に帰す。 生まれ出でた者、消え去った者、忘れられた者。 |
|
世界は大いなる目を失い、可能性という混沌の中に揺蕩う。 |
|
始まりはやがて終わりへとたどり着き、 終わりはやがて始まりへと至る。 |
|
これは紡がれ続ける蒼の軌跡。 |
|
――『蒼』へと至るべき物語。 |