More actions
BBDW Story Navigation (edit)
| |
---|---|
Prologue | one emerging possibility |
Main Story | Prologue · Chapter 1 · Chapter 2 · Chapter 3 · Chapter 4 · Chapter 5 |
Events | |
Character Stories (Unused Content) |
This article contains phrases or names that do not have official English localizations. Their current translations act as placeholders. |
序章/ Prologue
Summary | |
---|---|
その人物は、一つの目的をもって異なる世界
を渡り歩く。悪を探し出して滅する、彼女は 自らをホワイトジャスティスと名乗った。 |
――――これで幾つ目になるのか、もう思い出せない。 |
|
数えきれないほどそうしてきたように、境界を斬り、 降り立ったその場所は…… |
|
見たこともない、けれどどこかで見たことがあるような、 美しい時計の前だった。 |
|
見回してみても、歩いてみても、人の姿は見られない。 『あるべき』存在が『いない』世界だ。 |
|
おそらく維持し続けていられなかったのだろう。 それだけの数、この世界は『繰り返し』た。 |
|
そして度重なる『繰り返し』の果てに、生み出した。 |
|
――悪を。 |
|
――『黒』を。 |
|
この世界は、すでに『終わった』ことのある世界だ。 |
|
気配を辿って、足を向ける。 |
|
目指すのは、この世界を生んだ根源。 この世界が悪を生むに至った礎。 |
|
――今はその役割から解き放たれた、けれど存在はいまだ残された、 『観測者』だったもの。 |
|
緑の髪の男
うわっ! |
Green-haired Man |
緑の髪の男
な、な……なんなんですか、あなた!? 一体どこから……? |
Green-haired Man |
予想してなかった声に足を止めた。 この世界にもまだ人がいた。 |
|
もうなにもかも消えてしまった、 なにも残すことのできなかったはずの. |
|
世界に、最後まで存在していたのだろうか。 |
|
『それ』の因子は、悪につながっていた。 |
|
緑の髪の男
――っ!? |
Green-haired Man |
悪はひとつ残らず、滅さなければならない。 |
|
白金色の髪の女
きゃぁぁっ! |
Platinum Blonde Woman |
白金色の髪の女
しっかり、しっかりしてください……! |
Platinum Blonde Woman |
白金色の髪の女
どうしてこんな……あ、あなたは一体、誰なのですか!? なぜ……!? |
Platinum Blonde Woman |
――其は悪へと至る可能性。 |
|
白金色の髪の女
あ……。 |
Platinum Blonde Woman |
赤い髪の白面
我が名はホワイトジャスティス。 |
|
ホワイトジャスティス
……滅せよ。 |
White Justice |
……妄執が、残滓のようにこびりついている。 それもやがて消えるだろう。 |
|
ここにもう用はない。 |
|
次の『場』へ、向かわなければ。 |
第1節 『トキワ=カメリア①』/ 1. Tokiwa Camellia - 1
Summary | |
---|---|
シエル、ラーベと共に訪れたのは、濃い魔素
が漂う生命のない世界。そこで一行は、白き 鎧を纏って魔物と戦う女性に遭遇する。 |
ラーベ
よしよし。 |
Raabe |
ラーベ
全員、揃ってるな。問題もないな? よーし。 |
Raabe |
1: 魔素が濃いって聞いてたけど |
1: |
ラーベ
ああ、そうだな。しかも想定以上の濃さだ……。 |
Raabe |
シエル
そうですね。周囲に生体反応はありません。 人間だけでなく、小動物も確認できないようです。 |
Ciel |
ラーベ
事前に伝えていた通り、 今回のファントムフィールドの規模はかなり小さい。 |
Raabe |
ラーベ
シエルが確認してくれたように、 生体反応はほとんど確認できなかった。 |
Raabe |
ラーベ
まあ、この魔素の濃さじゃ無理もないだろうな……。 フガクでも確認できていた状況だが、まさかここまでとは。 |
Raabe |
シエル
確か事前調査では、 動体反応はいくつか確認されていましたよね。 |
Ciel |
ラーベ
ああ。ただこの感じだと、 おそらく魔物の反応だったんだろうな |
Raabe |
ラーベ
だから場合によっては戦闘訓練に使えるかもと 思ってたんだけど……これはちょっと不穏すぎるな。 |
Raabe |
シエル
不穏……予想よりも魔物が多数存在しそう、 ということでしょうか。 |
Ciel |
ラーベ
そうそう。危険な場所だからこそ、 戦闘訓練に相応しいという考え方もできるけど……。 |
Raabe |
ラーベ
訓練で大ケガしたら元も子もないし、 無理はすべきじゃないだろう。 |
Raabe |
シエル
同意します。私の力が足りず、 レイが負傷しては大変です。 |
Ciel |
ラーベ
というわけで、訓練場所としての確保はなしだ。 |
Raabe |
ラーベ
通常通り、観測者の発見、 ファントムフィールドの解放を最優先でよろしく。 |
Raabe |
ラーベ
この世界がループを繰り返して、 最終的に消滅したりする危険性を排除しておくとしよう。 |
Raabe |
シエル
了解しました。 |
Ciel |
シエル
ループ……。 |
Ciel |
シエル
観測者が命を落としたり、ある特定の事柄が起こると 世界にリセットがかかり、ループが行われるのでしたよね。 |
Ciel |
ラーベ
そうだ。ループするたびに、 ファントムフィールドは世界としての『可能性』を失っていく。 |
Raabe |
ラーベ
そして最後にはあらゆる可能性を失い、 消滅するしかなくなるってわけだ。 |
Raabe |
シエル
ループも、観測者による観測の範囲内なのでしょうか? |
Ciel |
ラーベ
おそらくね。もっとも、意識的にループを起こしている 観測者なんてのは、まあまず存在しないだろうが。 |
Raabe |
1: こんな世界にも観測者がいるのかな? |
1: |
ラーベ
たとえどんな状態でも、ここがファントムフィールドで ある限り、観測者は存在するはずだ。 |
Raabe |
シエル
この魔素濃度ですからね。 探索する間も注意が必要そうです。 |
Ciel |
ラーベ
いずれにせよ、周囲を見て回ってみるしかないね。 |
Raabe |
シエル
はい。移動を開始します。 レイさん、ラーベさん、追従してください。 |
Ciel |
シエル
……止まってください。 |
Ciel |
ラーベ
なにかあったか? |
Raabe |
シエル
戦闘らしき物音と、生体反応を確認しました。 前方10時の方向です。どうしますか? |
Ciel |
ラーベ
ほーう。魔物同士で戦闘しているとは考えにくい。 行ってみよう。なにかの手がかりがあるかもしれない。 |
Raabe |
シエル
わかりました。先導します。 |
Ciel |
シエル
発見しました! やはり戦闘音だったようです。 |
Ciel |
???
……はぁぁっ! |
??? |
???
……あらかたは片付いたでしょうか。 あとはその一群のみ。 |
??? |
???
魔素に乱された生き物…… ひとつ残らず――斬る!! |
??? |
ラーベ
いかん、シエル、レイ、 ちょっと離れろ! |
Raabe |
ラーベ
向こうはこっちに気付いていない。 下手に飛び込むと巻き込まれる! |
Raabe |
シエル
わかりました! レイさん、こちらへ! |
Ciel |
???
参る!! |
??? |
第1節 『トキワ=カメリア②』/ 1. Tokiwa Camellia - 2
Summary | |
---|---|
鎧の人物はトキワと名乗った。境界を渡り
「悪」を滅するために戦っている彼女に、 ラーベ達は同行を申し出る。 |
???
……ふう。 |
??? |
???
……あら? あなたたちは……? |
??? |
シエル
……対象の戦闘レベルの低下を確認。 戦闘用の形態なのでしょうか……。 |
Ciel |
ラーベ
どうも、初めまして。 どうか敵意がないことを信じてもらいたい。 |
Raabe |
ラーベ
私はラーベ。こっちの子はシエルで、 こっちはレイだ。 |
Raabe |
???
そうですか。敵意がないことは信用します。 あったとしても、対処しますし。 |
??? |
トキワ
私は……トキワ=カメリア。 はじめまして。 |
Tokiwa |
トキワ
このような場所に人がいるとは、驚きました。 一体どこから現れたのですか? |
Tokiwa |
シエル
それは……。 |
Ciel |
ラーベ
あー、我々はとある研究機関に所属していてな。 この辺りの空間に異常が感知されたので、調査に来たんだ。 |
Raabe |
トキワ
まあ、それは。 |
Tokiwa |
トキワ
嘘ですね。 |
Tokiwa |
ラーベ
ほう。 |
Raabe |
トキワ
調査というのは、嘘ではないかもしれませんが……。 あなたたちはこの世界の『外側』から来た。 |
Tokiwa |
トキワ
そしてまだ到着したばかりで、この世界については 何も知らない状態……ですね? |
Tokiwa |
シエル
……なぜ、そう思われたのですか? |
Ciel |
トキワ
この世界には、あなたたちの言うような研究機関など 存在しないからですよ。 |
Tokiwa |
トキワ
それどころか、人間も存在しません。 |
Tokiwa |
トキワ
ここに在るのは、ただ溢れるだけの魔素。 |
Tokiwa |
トキワ
魔物や、人の姿になれなかった魔素の塊だけが、 現れては消える世界です。 |
Tokiwa |
ラーベ
……なるほどな。 じゃあ、なんでトキワは『ここ』にいるんだ? |
Raabe |
トキワ
私も、この世界の外から境界を渡ってやってきましたから。 |
Tokiwa |
シエル
私たちと同じように、外部からファントムフィールドに 干渉している存在……『未確定存在』なのですね……。 ストレンジャー |
Ciel |
トキワ
ご事情は知りませんが、もし興味本位で来られたのなら、 早々に立ち去ることをおすすめしますよ。 |
Tokiwa |
ラーベ
忠告には感謝する。だけど、そう簡単には帰れなくてね。 |
Raabe |
ラーベ
ここから出ていくためには、 出口になる場所を探さないといけない。 |
Raabe |
1: 調査をしないわけにはいかないし |
1: |
ラーベ
そうそう、そうなんだ。 上司からの命令でね。 |
Raabe |
ラーベ
<size=130%>しーっ!</size> ……帰れって言われてすんなり帰れるか。 |
Raabe |
ラーベ
それに、相手の正体も目的もわかってないのに、 ご忠告を素直に受け取れないだろ……。 |
Raabe |
ラーベ
ところで、そういうトキワはなんの目的で この世界にやってきたんだ? |
Raabe |
ラーベ
あてもなく放浪していたってわけじゃないんだろう? |
Raabe |
トキワ
そうですね……お話して、理解が得られるかわかりませんが……。 |
Tokiwa |
トキワ
私はあちこちの世界を渡り、 『悪』を滅するために戦っています。 |
Tokiwa |
シエル
『悪』……ですか。 |
Ciel |
トキワ
『悪』です。 |
Tokiwa |
トキワ
この世界にも、倒すべき『悪』が存在しています。 その気配を追ってこの世界にやってきました。 |
Tokiwa |
ラーベ
ふーむ、その『悪』とやらの存在に興味が湧いてきたな。 |
Raabe |
ラーベ
トキワ。よければその旅路に、同行させてもらえないか? |
Raabe |
ラーベ
我々の調査のためにも、ここからの出口探しのためにも、 この世界について我々より詳しいお前の力を借りたい。 |
Raabe |
ラーベ
……人がいない世界でようやく会えたドライブ能力者だ。 |
Raabe |
ラーベ
世界の外から来たという話の真偽も確かめたいし、 彼女を取っ掛かりに情報を得ていこう。 |
Raabe |
シエル
……了解です。 |
Ciel |
トキワ
そう……ですね。 |
Tokiwa |
トキワ
ついてこられるのは構いませんが、当然、危険ですよ。 |
Tokiwa |
トキワ
私には私の目的がありますし、 あなた方を護衛するつもりはありません。 |
Tokiwa |
トキワ
それでもいいのであれば、ご自由にどうぞ。 |
Tokiwa |
ラーベ
あぁ、もちろん。 自分たちの身くらいは守るよ。 |
Raabe |
トキワ
わかりました。 |
Tokiwa |
トキワ
ああ、それから……。 |
Tokiwa |
トキワ
もしあなたがたが、私が屠るべき『悪』であるなら、 そのときは遠慮なく斬らせていただきます。 |
Tokiwa |
ラーベ
…………。 |
Raabe |
ラーベ
わかった。それでいい。 |
Raabe |
トキワ
よかった。ご一緒できて嬉しいですね。 |
Tokiwa |
トキワ
一般的に、仲間が増える……のは喜ばしいことなのでしょうから。 では、行きましょう。 |
Tokiwa |
ラーベ
……彼女、ちょっと違和感があるな。 |
Raabe |
シエル
違和感、といいますと……どのような違和感でしょうか。 丁寧な方だと思いますが。 |
Ciel |
ラーベ
言葉や態度だの大部分は、そうだけども…… なんかチグハグというか……。 |
Raabe |
ラーベ
ただ、私たちを斬るっていう言葉には 少しの迷いもなかっただろ。 |
Raabe |
ラーベ
さっきの『一般的には』って言い方も引っかかる。 |
Raabe |
ラーベ
あれってつまり、『みんな』がそう思いそうだから そう振る舞ってるってことだろう? |
Raabe |
ラーベ
もしも『みんな』とやらが仲間が増えることを喜ばないなら ……はたして、彼女は喜んでいたかな。 |
Raabe |
トキワ
みなさん。早速ですが、気を付けてください。 魔素が集まってきていますよ。 |
Tokiwa |
シエル
……魔物の出現を確認しました! 魔素から突然現れたように見えます。 |
Ciel |
トキワ
はい。高濃度の魔素が集まり、形を成し、魔物となります。 |
Tokiwa |
トキワ
この世界はずっとそう。どこへ行っても魔物が溢れ、 どこへ行っても戦いしかない……。 |
Tokiwa |
トキワ
我が前に現れる『悪』…… その全てを滅する! |
Tokiwa |
シエル
戦闘態勢に移行! レイさん、囲まれていますので、気を付けてください! |
Ciel |
第2節 無人の世界の観測者①/
Summary | |
---|---|
道中トキワは自ら持つ兵装と目的を語る。
『悪』を滅ぼすこと──今の彼女は、 その使命を果たすためだけに生きていた。 |
ラーベ
殲滅完了だな。 みんなお疲れさん。 |
Raabe |
トキワ
シエルさん、あなたは優れた戦闘能力をお持ちなのですね。 |
Tokiwa |
シエル
ありがとうございます。 トキワさんも、とてもお強いです。 |
Ciel |
トキワ
どうも。 |
Tokiwa |
トキワ
ところで、レイさん…… あなたはかなり特殊な力を使うのですね。 |
Tokiwa |
トキワ
……それは『観測の力』ですね? |
Tokiwa |
ラーベ
境界を渡り歩いている、なんて言うくらいだ。 さすがにそれくらいは見抜いてくるか。 |
Raabe |
トキワ
一応、聞かせてください。 |
Tokiwa |
トキワ
あなたはその力を、どんな目的のために使っているのですか? |
Tokiwa |
1: 世界のため |
1: |
トキワ
…………そうですか。 |
Tokiwa |
トキワ
混とんとしたファントムフィールドの乱立状態を解消するため、 皆さんは旅をしているのですね。 |
Tokiwa |
トキワ
世界の均衡を崩さないために、その力はある ということですか。 |
Tokiwa |
トキワ
…………なるほど。 |
Tokiwa |
トキワ
いくつものファントムフィールドを渡って、 あちこちで異変の調査を行っているのですか。 |
Tokiwa |
トキワ
危険な任務にあたって、ご自分の身を守るために観測の力を……。 |
Tokiwa |
トキワ
わかりました。 |
Tokiwa |
トキワ
世界に混乱をもたらすためでないとわかり、安心しました。 |
Tokiwa |
トキワ
……ですがそれは、非常に不安定で危険な力です。 誤った使い方をすれば、全てを破壊しかねません。 |
Tokiwa |
トキワ
……あなたがそういう人間でないといいのですが。 |
Tokiwa |
シエル
レイさん、なにか気になることがあるのですか? 先程から……不思議そうにされています。 |
Ciel |
ラーベ
うん? ……なに。トキワに違和感があるって? |
Raabe |
ラーベ
それはさっき私が言っただろ。 そうじゃない? 姿がぼんやりしているような感じ……? |
Raabe |
トキワ
それはおそらく、私の兵装のせいでしょう。 |
Tokiwa |
シエル
兵装というと、あの白い鎧のことですか? |
Ciel |
トキワ
鎧も剣も、今私が着ている衣類も全部そうです。 名を封印兵装・十六夜といいます。 |
Tokiwa |
ラーベ
十六夜……待て、十六夜だと!? |
Raabe |
トキワ
十六夜をご存じなのですね。 |
Tokiwa |
トキワ
この兵装は特殊で、十六夜そのものが 常に私を観測しています。 |
Tokiwa |
トキワ
そのため、私は他の観測による影響は受けません。 |
Tokiwa |
ラーべ
なるほど……それで境界が渡れるのか。 |
Raabe |
ラーべ
常に自己観測し続けていれば、境界の中であろうと 観測が乱れることもない……。 |
Raabe |
トキワ
レイさんは、無意識レベルで常に観測を 行っているのでしょう。 |
Tokiwa |
トキワ
だから、十六夜を纏った私が、 普段とは違ったように見えているのかもしれません。 |
Tokiwa |
シエル
つまり、レイさんは すごいということですね。 |
Ciel |
トキワ
……それは、冗談? |
Tokiwa |
トキワ
ふふ。 ……笑うのが遅かったかしら。。 |
Tokiwa |
シエル
いえ。冗談ではありません。 |
Ciel |
トキワ
そう……ごめんなさい。 |
Tokiwa |
魔物
ギィィッ! |
Monster |
シエル
こうして歩いているだけでも、魔物が次々に現れますね。 |
Ciel |
ラーベ
トキワはなんでもないように切り倒していくな。 剣には詳しくはないけど、見事な太刀筋だよ。 |
Raabe |
ラーベ
相当長く戦い続けていないとその域には達しないと思うけど、 どうしてそれほど熱を入れて『悪』を倒し続けるんだ? |
Raabe |
トキワ
『悪』は不要なものです。 それを倒すことに、理由なんていりません。 |
Tokiwa |
ラーベ
『一般的』にはそうかもしれないね。 |
Raabe |
ラーベ
でも、それを始めた理由やきっかけは、あるんだろう? |
Raabe |
トキワ
……あまりに昔のことです。 忘れてしまいましたね。 |
Tokiwa |
ラーベ
思い出したくないのか? それとも、思い出せない? |
Raabe |
トキワ
…………。 |
Tokiwa |
トキワ
初めは、親しい人を守るため、だったと思います。 |
Tokiwa |
トキワ
ですがそれも力及ばず、失いました。だから次は世界のために 戦いました。……でも、それも実を結びませんでした。 |
Tokiwa |
トキワ
その結果、私が見た絶望を繰り返さないためには、『悪』と それに至る可能性の全てを滅してしまうのが一番だと考えました。 |
Tokiwa |
トキワ
だから、『悪』を滅ぼすために戦っています。 |
Tokiwa |
トキワ
お聞きになりたいのは、こういうことで合っていましたか? |
Tokiwa |
ラーベ
ああ、ありがとう。 トキワのことが少しは知れた気がするよ。 |
Raabe |
トキワ
それはよかった。 |
Tokiwa |
トキワ
……この世界も、戦いの跡地のように見えます。 |
Tokiwa |
トキワ
私のよく知る景色に、どことなく似ているようにも思えます。 |
Tokiwa |
トキワ
斬るべき『悪』が絶えないところも、似ていますね。 |
Tokiwa |
ラーベ
悪は即、滅する……か。徹底しているね。 |
Raabe |
シエル
レイさん、私たちも加勢しましょう。 |
Ciel |
第2節 無人の世界の観測者②/
Summary | |
---|---|
観測者の望みについて推測する一行。その願
望が世界の形を変えると知ったトキワは、観 測者の解放に自分も協力すると表明する。 |
ラーベ
戦っているうちに、ずいぶんと遠くへ来てしまったな。 |
Raabe |
シエル
建物の形式から察するに、この付近は市街地でしょうか。 |
Ciel |
トキワ
正しくは、市街地だった場所、でしょうね。 |
Tokiwa |
シエル
そうですね。人の気配も、人が住んでいる形跡もないです。 |
Ciel |
ラーベ
トキワの言う通り、この世界は本当に人間がいないんだな。 |
Raabe |
シエル
それは、観測者さんがこの形を望んでいる……ということに なるんですよね? |
Ciel |
ラーベ
意識的にかはともかく、そうなるね。 |
Raabe |
シエル
いったい、どういう望みなのでしょうか。 誰にも会わず、ひとりでいたいのでしょうか……。 |
Ciel |
ラーベ
いやぁ……それなら魔素は不要はなずだ。 ひとりがいいなら、魔物だっていらないだろう。 |
Raabe |
ラーベ
異物を排除するための、防衛機構としての魔物、 って感じもしないし……。 |
Raabe |
ラーベ
そうなると、魔物自体に存在価値を見出している? ……でも、それもまた理由がわからないね。うーん。 |
Raabe |
ラーベ
ただこの状況そのものは、観測者の願望と繋がっているはずだ。 手掛かりにはなるだろう。 |
Raabe |
トキワ
観測者とは、ファントムフィールドを発生させ、 この世界を具現化している存在のことですよね。 |
Tokiwa |
トキワ
その現象と、観測者の願望に、なにか関わりがあるのですか? |
Tokiwa |
ラーベ
……なるほど。トキワはこの世界が観測者の望みによって 形を変えていることまでは知らないわけか。 |
Raabe |
シエル
ファントムフィールドがどのような世界になるかは、 観測者が無意識に抱えている願望によるのだそうです。 |
Ciel |
トキワ
……ではファントムフィールドは、 観測者の望みひとつで性質を変えるのですか。 |
Tokiwa |
シエル
そうです。 |
Ciel |
トキワ
……誰かの意思が、世界を歪めるだなんて。 あってはならないことだわ。 |
Tokiwa |
ラーベ
ずいぶんと厳しい顔だな。 そこまで思う理由を聞いてもいいか? |
Raabe |
トキワ
……ずっと昔、私の近くに そういう宿命を与えられた人がいたのです。 |
Tokiwa |
トキワ
その子はとても、宿命に苦しんでいたわ。 彼女だけじゃない。彼女の周りにいる人も……多く苦しんだ。 |
Tokiwa |
ラーベ
……ここの観測者も、同じように苦しんでいるかもしれないな。 |
Raabe |
ラーベ
誰もが望んで観測者に選ばれるわけじゃない。 |
Raabe |
ラーベ
ここの世界のどこかに、望んだわけでもないのに 大層な役目を背負わされた誰かがいるはずだ。 |
Raabe |
ラーベ
私たちの本当の目的は、その誰かの解放なんだ。 誰かが、この世界からそいつを解放してやらないといけない。 |
Raabe |
トキワ
役目からの解放……そうですか。 そういう理念をお持ちなのですね。 |
Tokiwa |
トキワ
であれば、私もあなたがたの目的に協力しましょう。 |
Tokiwa |
トキワ
観測者の願望が世界を歪めるのであれば、その願望が 新たな『悪』を生み出すかもしれません。 |
Tokiwa |
トキワ
……そしてその願望の果てに、 世界はあれを生み出すのですね、きっと。 |
Tokiwa |
ラーベ
あれ、とはなんだ? |
Raabe |
トキワ
――『災厄』と呼ばれるモノ。 |
Tokiwa |
トキワ
世界を終わらせるシステムです。 |
Tokiwa |
シエル
…………。 |
Ciel |
ラーベ
……お前の言う不安定な世界、ファントムフィールドは 最終的に世界として終わるために、災厄を生み出す。 |
Raabe |
ラーベ
そういうものだという認識は、我々も持っている。 |
Raabe |
トキワ
ファントムフィールドは最終的に、世界として終わるために システムを起動させます。つまり『災厄』を呼び出すのです。 |
Tokiwa |
トキワ
私はそれを許すわけにはいかない。 |
Tokiwa |
トキワ
もしも世界が『災厄』を呼び出したのなら、世界に災厄を 記録させた観測者もまた、残しておくわけにはいきません。 |
Tokiwa |
トキワ
『災厄』こそ『悪』。 『悪』に繋がるものは、全て滅する。それが私の役目です。 |
Tokiwa |
トキワ
話が長くなってしまいましたね。 さぁ、行きましょう。 |
Tokiwa |
1: ……決意は固そうだね |
1: |
ラーベ
その目的のために、境界を渡り歩いているのだろうな。 |
Raabe |
ラーベ
よほど、『悪』とやらに特別な思い入れがあるらしい。 |
Raabe |
シエル
レイさんがそうおっしゃるのなら、 警戒します。 |
Ciel |
ラーベ
悪い奴ではないんだろうけどな……。 |
Raabe |
ラーベ
観測者に出くわした途端、いきなり斬りかかる可能性も ありそうだから、注意しておこう。 |
Raabe |
トキワ
……っ! |
Tokiwa |
トキワ
また、魔素が集まってきました。 |
Tokiwa |
シエル
集まった魔素が、魔物だけではなく 人のような形を模していきます。 |
Ciel |
ラーベ
ふうむ、観測者の持ちえない情報は世界に反映されない という前提で話すなら、 |
Raabe |
ラーベ
この魔素が形作る姿もまた、 観測者の持つ情報から選ばれているのかもしれない。 |
Raabe |
シエル
これは……。 |
Ciel |
トキワ
どのような姿を取ろうと、本質は魔素の塊にすぎません。 全て斬り伏せるのみ。 |
Tokiwa |
トキワ
我が名はホワイトジャスティス。 参る!! |
Tokiwa |
第3節 『白い影①』/
Summary | |
---|---|
暫し休息を取り、トキワの過去について語る
一行の前を白い人影がよぎる。彼女はその姿 に見覚えがあると言い、追跡を開始した。 |
トキワ
この先からも『悪』の気配を感じます。 行きましょう。 |
Tokiwa | ||
ラーベ
あ、おい! ふぅ……行ってしまったか。 |
Raabe | ||
ラーベ
ずっと連戦続きだというのに、疲れというものを 知らないのか、あいつは。 |
Raabe | ||
ラーベ
十六夜にそんな性能があるなんて、聞いたことがないぞ。 |
Raabe | ||
シエル
驚異的な体力です。あれだけ剣を振るだけでも、普通なら 疲弊するはず……ですが彼女は汗ひとつかいていません。 |
Ciel | ||
シエル
そういえば、 レイさんは大丈夫ですか? |
Ciel | ||
シエル
少し、顔色が優れないような……。 |
Ciel | ||
シエル
レイさんっ!? |
Ciel | ||
シエル
……怪我はありませんか? |
Ciel | ||
ラーベ
相当、足に来てしまっているな……。 トキワ、すまない。少し休憩させてくれ。 |
Raabe | ||
トキワ
すみません。普通の人間である レイさんの体力は有限でしたね。 |
Tokiwa | ||
トキワ
体力が戻るまで、ここで少し休みましょう。 |
Tokiwa | ||
シエル
ありがとうございます。 レイさん、座ってください。 |
Ciel | ||
ラーベ
……もしかして、トキワは人間ではないのか? |
Raabe | ||
トキワ
どうでしょうか。人間であって、人間ではないとも言えます。 |
Tokiwa | ||
トキワ
肉体の一部はまだ人間のものですが、 ほとんどは作り物で補っていますから。 |
Tokiwa | ||
ラーベ
なるほどね……だからその体力か。 |
Raabe | ||
シエル
質問してもよろしいでしょうか。 トキワさんは、自ら望んでそうなったのですか? |
Ciel | ||
トキワ
最初からこうなりたいと思っていたわけではありませんよ。 |
Tokiwa | ||
トキワ
戦いにより肉体の限界がくるたび、知り合いの科学者に改造を お願いしていました。結果的にこうなっただけです。 |
Tokiwa | ||
1: 厳しい戦いだったんだね |
1: | ||
トキワ
戦いに厳しいも楽もありません。 そこにあるのは事実と結果だけです。 |
Tokiwa | ||
トキワ
私が剣を振るう理由は悪を滅すること。 それはこれから先も、変わることはありません。 |
Tokiwa | ||
トキワ
後悔……ですか? |
Tokiwa | ||
トキワ
そうですね……昔の私は、後悔していたかもしれません。 ですが今は、目的のためにただ剣を振るうのみ。 |
Tokiwa | ||
トキワ
ここには、その事実と結果が残っているだけです。 |
Tokiwa | ||
トキワ
それにこの体でなければ境界を越えることはできません。 だから私は、この体であり続けなければならないのです。 |
Tokiwa | ||
ラーベ
確かに、境界に入るには最善の体だろうね。 それも十六夜があって成立するものではあるけど。 |
Raabe | ||
トキワ
ですから私の体は疲れを知りませんし、 栄養を口から補給する必要も、ほとんどありません。 |
Tokiwa | ||
トキワ
僅かな食事から、十六夜の観測によって 体を維持することができますから。 |
Tokiwa | ||
ラーベ
食べなくても平気というのは、食べたくないのとは違うだろう。 |
Raabe | ||
トキワ
そうですね……もうずいぶん昔のことですが、 私の暮らしていた世界に、料理が大好きな友人がいました。 |
Tokiwa | ||
トキワ
彼女のことを考えていたら、いつの間にか 私は食べることをやめていました。ずっと昔の話ですが。 |
Tokiwa | ||
シエル
境界を渡る前にトキワさんがいた世界、ですね。 |
Ciel | ||
1: どんな世界だったの? |
1: |
トキワ
…………。 |
Tokiwa |
トキワ
この世界で見る光景は、かすかに残っている記憶と よく似ている気がします。 |
Tokiwa | ||
トキワ
階層都市と呼ばれる都市が世界各地に建っていて、 そこには大勢の人々が暮らしていました。 |
Tokiwa | ||
トキワ
地表には『災厄』から生み出された魔素が充満し、 その脅威から逃がれるため、高い山の上に都市を築いたのです。 |
Tokiwa | ||
ラーベ
階層都市……か。 |
Raabe | ||
ラーベ
ん……? |
Raabe | ||
トキワ
私の顔になにか? |
Tokiwa | ||
ラーベ
……いや、なんでもない。話を続けてくれ。 |
Raabe | ||
トキワ
魔素に覆われた厳しい世界でしたが、それでも人々は 懸命に生きていました。 |
Tokiwa | ||
トキワ
……ある時、世界が滅びを迎えるまでは。 |
Tokiwa | ||
トキワ
世界は抗えない『悪』によって蹂躙され、終わってしまった。 それ以外の可能性はもう、許されませんでした。 |
Tokiwa | ||
トキワ
滅びを免れることは、できなかったのです。 |
Tokiwa | ||
シエル
そのときも、トキワさんは戦っていたのでしょうか? |
Ciel | ||
トキワ
ええ。ですが私では力不足でした。 世界の滅びを阻止することなんて、とてもできませんでした。 |
Tokiwa | ||
ラーベ
…………。 |
Raabe | ||
トキワ
さして面白い話でもないと思いますが なにかあなた方の参考になりましたか? |
Tokiwa | ||
トキワ
そうですか、よかった。 |
Tokiwa | ||
トキワ
レイさんの体力も戻ったようですね。 そろそろ先へ進みましょう。 |
Tokiwa | ||
シエル
動作反応を感知、気を付けてください! |
Ciel | ||
トキワ
今のは……。 |
Tokiwa | ||
ラーベ
人影のように見えたが……シエル、解析できたか? |
Raabe | ||
シエル
いえ。生体反応は殆ど感じられませんでした。 魔物の類とも違うようですし……今のはなんだったのでしょう。 |
Ciel | ||
シエル
……兵装を纏った状態のトキワさんに、 雰囲気が似ているようにも感じられました。 |
Ciel | ||
ラーベ
……トキワ、今の人影に見覚えがあるか? |
Raabe | ||
トキワ
…………。 |
Tokiwa | ||
トキワ
確証はありませんが……そうですね。 私の知っている人物である可能性は高いと思います。 |
Tokiwa | ||
トキワ
ですが、彼がこの世界にいる理由がわかりません。 |
Tokiwa | ||
ラーベ
なるほど、観測者である可能性もあるな。 |
Raabe | ||
ラーベ
罠かもしれないが……とにかく追ってみるか。 他にそれらしい手がかりもないし。 |
Raabe | ||
トキワ
『彼』が観測者……ですか。わかりました。 |
Tokiwa | ||
ラーベ
ああもう、面倒だな、こんな時に! シエル! レイ! |
Raabe | ||
シエル
了解しました、戦闘態勢へ移行します。 |
Ciel | ||
トキワ
悪はすべて、殲滅します! |
Tokiwa |
第3節 『白い影②』/
Summary | |
---|---|
白い人影は消えてしまう。しかし、トキワは
彼もまた悪を滅する者であり、いずれにせよ 同じ場所を目指しているのだと語った。 |
トキワ
魔物はすべて倒しましたが 先ほどの人影は見失ってしまいましたね。 |
Tokiwa |
ラーベ
ふ〜む。どうするか…… 無理に追うのも危険かもしれないしなぁ。 |
Raabe |
ラーベ
しかしあれは、本当に人影だったのか? 生体反応は感じられなかったようだが。 |
Raabe |
ラーベ
本当にトキワの知り合いなのか? |
Raabe |
トキワ
あの姿は……おそらく彼は、かつての私の恩人です。 |
Tokiwa |
1: だったら追ったほうがいい |
1: |
トキワ
いえ、その必要はありません。 |
Tokiwa |
トキワ
おそらく。ですが、私は彼を追おうとは思いません。 |
Tokiwa |
シエル
何故ですか? |
Ciel |
トキワ
本当にあの方がこの世界にいるのならば 彼が目指す先は、おそらく私と同じモノでしょうから。 |
Tokiwa |
ラーベ
つまり先ほどの影も、悪を滅するために行動しているわけか。 あれは一体何者なんだ? |
Raabe |
トキワ
私が彼について語れることは多くありません。 |
Tokiwa |
トキワ
ただ、彼は悪を斬り続けることで英雄となった方です。 私にとって彼は……強さの象徴です。 |
Tokiwa |
ラーベ
強さの象徴……英雄か。 ……ふむ。 |
Raabe |
ラーベ
トキワと同じように悪を探しているのなら、 確かにこの先でまた出会うこともあるか。 |
Raabe |
ラーベ
なにせトキワ以外で初めて見つけた、観測者の手がかりだ。 見失ったのは惜しいが……また見つかることを祈ろう。 |
Raabe |
シエル
ではラーベさん。我々はこれからどうしますか? |
Ciel |
ラーベ
トキワを信じて、悪の気配を辿るしかないね。 トキワとさっきの奴の目的が同じっていうのなら。 |
Raabe |
ラーベ
『行きつく先は同じ』ってヤツだ。 |
Raabe |
トキワ
この先に、道を塞ぐ『悪』の気配を感じます。 斬り伏せつつ進みましょう。 |
Tokiwa |
第4節 『揺らがぬ心①』/
Summary | |
---|---|
昼夜問わず生命の気配すらない世界。魔物以
外を意に介さないその姿はまるで、トキワや 白い人影のようだとラーベは呟いた。 |
ラーベ
うーん……。ふーむ……。 |
Raabe |
シエル
さきほどからずっと唸っていますが、どうかされましたか? |
Ciel |
ラーベ
ちょっと、気になってね……。 |
Raabe |
ラーベ
もしかしたらこのファントムフィールドは、 時間が停滞しているんじゃないだろうか。 |
Raabe |
シエル
時間が停滞……ですか? |
Ciel |
ラーベ
といっても、我々の時間自体が進んでいるのは間違いない。 |
Raabe |
ラーベ
空気も、重力もある。だから時間が止まっているのではなく 時間の経過だけが停滞しているんじゃないか、とね。 |
Raabe |
ラーベ
本当にフィールドの時間が全て止まってしまっていたら 我々はここに存在できないだろうし。 |
Raabe |
1: 難しい話だ…… |
1: |
ラーベ
まあ、お前たちが理解する必要性はないから あまり気にしないでくれ。 |
Raabe |
ラーベ
日の傾きどころか、影の長さすらまったく変わらないし 植物や土の中すら生命反応が希薄すぎるんだ。 |
Raabe |
シエル
確かにラーベさんのおっしゃる通り、 これまで生命の痕跡すら見つけられていません。 |
Ciel |
シエル
この世界に存在するのは、魔物だけなのでしょうか。 |
Ciel |
ラーベ
かもしれない。 |
Raabe |
ラーベ
この世界を作っている人物は、 そういうものをまるで必要ないと思っているかのようだ。 |
Raabe |
ラーベ
あるいは、まるで気に留めていないか。 |
Raabe |
ラーベ
まるで……そうだな。トキワのような世界だな。 |
Raabe |
1: じゃあトキワが観測者? |
1: |
ラーベ
いや、その可能性は低い。 |
Raabe |
ラーベ
境界の外から来たという彼女の話が真実ならば 異物は観測者にはなりえないし。 |
Raabe |
ラーベ
それに彼女の兵装、十六夜は見たところ本物だ。 さっきも言ったがアレは観測の影響を受けない。 |
Raabe |
ラーベ
その十六夜を完全に使いこなしている『現在の』トキワが 観測者である可能性は、ほぼ皆無といっていいだろう。 |
Raabe |
ラーベ
ああいや、別に断定したいわけじゃないよ。 |
Raabe |
ラーベ
私も彼女が観測者である可能性は低いと思っているし。 |
Raabe |
ラーベ
境界の外から来たという彼女の話が真実ならば 異物は観測者にはなりえない。 |
Raabe |
ラーベ
それに彼女の兵装、十六夜は見たところ本物だ。 さっきも言ったがアレは観測の影響を受けない。 |
Raabe |
ラーベ
その十六夜を完全に使いこなしている『現在の』トキワが 観測者である可能性は、ほぼ皆無といっていいだろう。 |
Raabe |
トキワ
ほぼ皆無……ということはゼロではないということですね。 |
Tokiwa |
ラーベ
気を悪くさせたのならすまない。 だけど、ゼロでない以上、可能性としては考える必要がある。 |
Raabe |
トキワ
いえ、正しいと思います。 可能性がゼロなど、本来ありえないのですから。 |
Tokiwa |
ラーベ
へぇ……剣だけを振り続けた人間から、そんな 数学的な言葉が聞けるとはね。 |
Raabe |
トキワ
事実を述べただけです。 |
Tokiwa |
ラーベ
そうか……まあいい。 |
Raabe |
ラーベ
とにかく観測者として疑うなら、トキワよりも さっきの白い人影『英雄』の方だろう。 |
Raabe |
ラーベ
もう少しその人物の情報を知りたいところだが…… トキワ、その『彼』とこの世界は関係していそうか? |
Raabe |
トキワ
……すみません。私にはわかりません。 私は、彼の素性についてはほとんど知りませんから。 |
Tokiwa |
ラーベ
そうか……。 |
Raabe |
シエル
お話中すみません。 前方に、巨大な建造物を感知しました。 |
Ciel |
シエル
形状からして、城のようです。 |
Ciel |
ラーベ
城? なんでそんなものがあるのかは知らんが ようやく人の痕跡が見つかりそうなものが出てきたか。 |
Raabe |
ラーベ
観測者が関係している可能性もある。 その城に向かってみよう。 |
Raabe |
トキワ
ですがそのためには……。 |
Tokiwa |
トキワ
眼前の『悪』を断つ必要があります。 |
Tokiwa |
ラーベ
いつの間に……完全に囲まれたか。 |
Raabe |
シエル
妙です。周辺の黒い霧が、意思を持っているように動いています。 皆さん、警戒してください。 |
Ciel |
トキワ
魔素の形は固定ではありません。 その相手、状況、あらゆるモノの影響を受けて、変化する。 |
Tokiwa |
トキワ
見てください。集まった魔素が、形を成していきます。 |
Tokiwa |
ラーベ
こいつらは……! |
Raabe |
シエル
レイチェルさん、それにヴァルケンハインさん! |
Ciel |
ラーベ
いや……本人じゃない。 魔素が形作った人形だ。 |
Raabe |
ラーベ
しかし、本当に本物がそこにいるかのように思える。 |
Raabe |
ラーベ
これは、この世界に残された思念や観測者の思考が 魔素に影響を与えているのか? |
Raabe |
ラーベ
ならば観測者は、彼女たちを知っている可能性が高いな……。 |
Raabe |
ラーベ
これまでの魔物とはまるで違うぞ。 シエル、レイ、注意しろよ。 |
Raabe |
シエル
了解しました。 これより戦闘を開始します。 |
Ciel |
第4節 『揺らがぬ心②』/
Summary | |
---|---|
行く手に現れた無人の城を調査。現世と境界
が曖昧なその場所で、一行の潜在意識から形 作られた魔素の影が、現れては襲い掛かる。 |
シエル
城内も隅々まで調べましたが、誰もいませんね。 気配も感じませんし、ここは無人で間違いなさそうです。 |
Ciel |
ラーベ
あるのは、魔素の痕跡と、誰かが戦闘した痕跡だけ……か。 |
Raabe |
トキワ
苦戦した形跡もなく、一方的に斬り伏せられている…… 状況から考えて、おそらく彼でしょう。 |
Tokiwa |
ラーベ
トキワほどの強さを持った奴でもそこまで言うんだ。 相当な力を持っているんだろうな、『彼』は。 |
Raabe |
ラーベ
だがその人物は本当に、この誰もいない世界で 『悪』を滅するためだけに戦い続けているのか……? |
Raabe |
トキワ
愚問ですね。他の理由など考えられません。 |
Tokiwa |
ラーベ
ふ〜む……。 |
Raabe |
シエル
……! みなさん、下がってください! 何か来ます! |
Ciel |
トキワ
また魔素ですか。 行く手を阻むというのなら、斬らぬ理由はありません。 |
Tokiwa |
シエル
はい。戦闘態勢に……あ、魔素が形を変えます! また人の形に……。 |
Ciel |
トキワ
これは……。 |
Tokiwa |
トキワ
この世界の観測者は、 彼女たちを知っているということ……? |
Tokiwa |
シエル
ノエルさんに、マコトさん……ですよね。 |
Ciel |
シエル
っ! 魔素、再び収束。 こちらも形を変えます。 |
Ciel |
ラーベ
カズマとトリニティか。 なるほど、カラクリが読めてきたぞ。 |
Raabe |
ラーベ
おそらくこの城には、窯に近いモノがあるんだろう。 窯そのもの……かもしれないが。 |
Raabe |
トキワ
……この城内は、境界の気配がとても近いです。 |
Tokiwa |
トキワ
それも窯、あるいはそれに近しいものが 存在しているからですか? |
Tokiwa |
ラーベ
その可能性が濃厚だろうな。 ここはたぶん、特別な場所なんだろう。 |
Raabe |
ラーベ
現世とも境界とも呼べるような、曖昧な領域……。 |
Raabe |
ラーベ
それがゆえに、この場にいる者の潜在意識や記憶から 情報を引き出し、それを元に魔素が形を作っているんだろう。 |
Raabe |
シエル
対象の戦闘レベルの上昇を確認。 戦闘態勢へ移行します! |
Ciel |
トキワ
襲撃してくるということは、敵ということ。 悪は我が刃にて、ひとつ残らず滅する! |
Tokiwa |
第4節 『揺らがぬ心③』/
Summary | |
---|---|
影は一行がイシャナで出会った人物の姿を取
るが、トキワに躊躇いはない。その冷ややか な剣筋が、彼女の失ったものを示していた。 |
トキワ
……この場にいる者の潜在意識や記憶から、情報を引き出して いる……先ほど、ラーベさんはそうおっしゃっていましたよね。 |
Tokiwa |
トキワ
その推察が正しいとしたら……。 |
Tokiwa |
トキワ
もしかしてレイさんとシエルさんは、 イシャナを訪れたことがありますか? |
Tokiwa |
トキワ
やはりそうでしたか。 以前に私も立ち寄ったことがあります。 |
Tokiwa |
トキワ
そのとき、 今見た影のうちのふたりと同じ姿に遭遇しました。 |
Tokiwa |
トキワ
ちなみに、それはファントムフィールドの イシャナでしょうか? |
Tokiwa |
トキワ
ここほどは寂しくない場所ですが、人のいない…… ほとんど無人の学園島でしたか? |
Tokiwa |
シエル
以前に、調査に赴いたことがありました。 |
Ciel |
シエル
トキワさんはどのような経緯で、 あのファントムフィールドに入られたのですか? |
Ciel |
トキワ
無論、『悪』を斬るためです。 |
Tokiwa |
シエル
悪……イシャナにですか? |
Ciel |
トキワ
はい。あの世界には黒き災厄の因子が残っていました。 それを見つけて、排除してきたのです。 |
Tokiwa |
トキワ
今しがた戦った魔素は確かに、 私や皆さんの記憶から情報を引き出していたのかもしれませんね。 |
Tokiwa |
トキワ
私も皆さんも、 立ち会った全ての人物を知っているようですから。 |
Tokiwa |
トキワ
そうですよね? |
Tokiwa |
シエル
はい、知っています。……ということはトキワはさんは、 マコトさんやノエルさんのことをご存知なのですね。 |
Ciel |
トキワ
えぇ、知っていますよ。親しい間柄でした。 |
Tokiwa |
ラーベ
ほお。その割には、あの影と戦うときに 迷いも躊躇いもなかったようだが。 |
Raabe |
ラーベ
姿が同じなくらいでは、 トキワの心は乱れたりはしないということか? |
Raabe |
トキワ
もちろんです。 私には、そのようなものは不要です。 |
Tokiwa |
トキワ
……それに、私のいた世界が滅びるより少し前に、 彼女たちは命を落としました。 |
Tokiwa |
トキワ
ここで姿を目にしたとて、 彼女たちは本物でないことはわかりきっていることです。 |
Tokiwa |
トキワ
たとえ本物だったとしても、私の目的を阻むようであれば、 排除したでしょう。 |
Tokiwa |
トキワ
全ては『悪』を根絶するためです。 |
Tokiwa |
1: それはトキワの本音?' |
1: |
トキワ
その答えは、『悪』を討つことや観測者を解放するために 必要ですか? |
Tokiwa |
トキワ
おっしゃっている意味がわかりませんが、 レイさんの前にいる私が、私です。 |
Tokiwa |
トキワ
一通り見て回りましたが、ここには何もなさそうですね。 窯らしきものも、気配だけが残っていて、実際にはないようです。 |
Tokiwa |
トキワ
外へ出ましょう。 |
Tokiwa |
ラーベ
こういう言い方をするのはよくないかもしれないが…… 彼女が失ったのは、人間の身体だけではないようだね。 |
Raabe |
第5節 『ハクメン①』/
Summary | |
---|---|
白い人影──ハクメンは考えていた。どれ程
剣を振るい続けたのか?終わりの無い戦いの 全ては、いずれ訪れる……『黒』のため。 |
どれ程、剣を振るい続けただろうか。 |
|
永き刻を、戦いに明け暮れ……。 |
|
行けども行けども、歩めど歩めど、 眼前に訪れるは、悪のみ。 |
|
其れでも尚、纏わり付く魔素を払い、 研ぎ澄まされた刃を振り下ろし続ける。 |
|
其処に終わりは無く、戦いの果てに訪れるモノは『黒』。 其れが解かって居ながら、其れでも歩みは止まらない。 |
|
何故なら、此の体に在るのは只、悪を滅するのみ。 『黒』を滅する為に、私は存在するのだ。 |
|
魔物
シャァアァァ……っ! |
Monster |
???
未だ来るか、『黒』に連なる者よ。 |
??? |
???
終わらぬと謂うのなら、私は只斬り伏せるのみ。 悪を滅する此の刃にて、魔素に還るが良い。 |
??? |
ハクメン
我は空、我は鋼、我は刃…… 我が名はハクメン……推して参る! |
Hakumen |
第5節 『ハクメン②』/
Summary | |
---|---|
魔物を斬り続けた末に、ハクメンは窯へと辿
り着く。彼が境界に触れると膨大な情報が流 れ込み、自らが観測者であると理解した。 |
ハクメン
……此処か。 |
Hakumen |
ハクメン
世界と境界を繋ぐ窯……。 |
Hakumen |
ハクメン
私の追う『黒』が窯より出でるの為らば 其の根源を断つ必要が在る……。 |
Hakumen |
ハクメン
此の音は……窯が、私を呼んでいると謂うのか……? |
Hakumen |
ハクメン
っ!? 此れは……蒼……! |
Hakumen |
ハクメン
……成程。此の世界は、正常な其れでは無かったか。 |
Hakumen |
ハクメン
観測者の潜在意識に拠って姿を変える幻影…… 其の観測者たる存在が、此の私……か。 |
Hakumen |
ハクメン
下らん。 |
Hakumen |
ハクメン
其れがどうした。我が目的は『黒』。 そして『黒』に連なる者を屠る事。 |
Hakumen |
ハクメン
我を喰らいたくば来い。 此の意志を以て悪を滅し、『黒』諸共消滅させるのみ。 |
Hakumen |
第6節 『白き花と白き刃①』/
Summary | |
---|---|
シエル達がハクメンの下に辿り着く。彼は一
行にその目的を問うが意に介すことはなく、 ただ窯から溢れる『黒』へと刃を向けた。 |
ラーベ
あれか……白い鎧の『英雄』……というか、なんだあれ。 とんでもない強さだな!? |
Raabe |
シエル
驚きです。あれ程の数の魔物を、殆ど一瞬で倒してしまいました。 |
Ciel |
ラーベ
トキワの言っていた通り、か。 ……ん? っておい、待て。 |
Raabe |
ラーベ
あの白い鎧、まさか……いや……えっ? 本物のスサノオユニットか!? |
Raabe |
トキワ
はい。そういう名だと聞いています。 |
Tokiwa |
ラーベ
驚いた。まさか、こんなところでお目にかかれるとは……。 |
Raabe |
シエル
ラーベさん、知っているんですか? |
Ciel |
ラーベ
まあね。といっても、データでしか見たことはないけど。 |
Raabe |
ラーベ
スサノオユニット……あれはかつて、御剣機関が 保有していた代物だ。 |
Raabe |
ラーベ
どうりで強いわけだ。しかしあの鎧が『英雄』とはね……。 |
Raabe |
ハクメン
……何者だ? |
Hakumen |
ハクメン
貴様たちが此の世界に干渉した存在か? |
Hakumen |
トキワ
そうではありません、ハクメン様。 |
Tokiwa |
トキワ
私はトキワ=カメリア。あなたと同じく、『悪』を滅する者です。 そのためにこの世界へ渡りました。 |
Tokiwa |
ハクメン
貴様は……。 |
Hakumen |
ハクメン
……否、助力は不要。 『黒』は私が此の手で滅さなければ為らない。 |
Hakumen |
トキワ
失礼しました。 ですが元より、手助けのつもりなんてありません。 |
Tokiwa |
トキワ
私は私で『悪』を屠るのみ。 あなたの存在は私の目的に影響しません。 |
Tokiwa |
ハクメン
…………。 |
Hakumen |
ハクメン
トキワ……と言ったか。貴様の目的は理解した。 しかし、他の者は異なる目的で動いている様だな。 |
Hakumen |
ハクメン
貴様らは、此の世界の終わりを見届ける者か? |
Hakumen |
ラーベ
いや、そうじゃない。はじめまして、ハクメン……だったか。 私はラーベという。こっちはシエルとレイ。 |
Raabe |
ラーベ
私たちの目的はこの世界……ファントムフィールドの解放だ。 そのために、ここを作った観測者を探している。 |
Raabe |
ラーベ
観測者が存在し続けることにより、世界はループを繰り返す。 そのたびにこの世界は可能性を失っていく。 |
Raabe |
ラーベ
放置すれば、世界から可能性は全て消失し、 あとには何も残らない。 |
Raabe |
ラーベ
そうならないようにするために、 私たちはここへやってきた。 |
Raabe |
ハクメン
理の外の者か……。 |
Hakumen |
ハクメン
此の世界を形作る意思と境界との接続を切り、 此の場を世界では無く情報の集合体として保全するつもりか。 |
Hakumen |
ラーベ
何故そのことを知っている? |
Raabe |
ハクメン
此処の窯から、境界に触れた時に得た情報だ。 |
Hakumen |
シエル
窯……ハクメンさんは、窯があることも、 それがなんなのかもご承知なのですね。 |
Ciel |
ラーベ
だがどうにも、話からすると、 世界の仕組みを知る前からここに窯があったようだな。 |
Raabe |
ラーベ
ということは……やはりお前が観測者か? |
Raabe |
ハクメン
我が何者で在るか等、関係は無い。 |
Hakumen |
ハクメン
此の窯は、在るべくして此処に在る。 窯が無ければ『黒』は現れない。 |
Hakumen |
ハクメン
私の身は『黒』を……『黒き獣』を倒すために在る。 其の邪魔をさせる訳にはいかない。 |
Hakumen |
ラーベ
黒……黒き獣だと……!? おい、お前まさか、その窯は……! |
Raabe |
ラーベ
っ!? な、なんだ!? |
Raabe |
シエル
警戒してください! 窯から巨大な敵性反応が上がってきます! |
Ciel |
トキワ
皆さん、下がってください。 |
Tokiwa |
ハクメン
矢張り……其の兵装は、十六夜か。 |
Hakumen |
トキワ
そうです。 |
Tokiwa |
ハクメン
持ち主、環境、状況に合わせて進化する兵装…… 幾多の苦難を乗り越え、斯様な姿に成ったか。 |
Hakumen |
トキワ
……どういう意味です? |
Tokiwa |
ハクメン
……否、気にするな。昔の話だ。 其れより刀を構えろ、来るぞ。 |
Hakumen |
トキワ
わかっています! |
Tokiwa |
ラーベ
おい、お前たち正気か!? 本当に黒き獣が現れたら世界が終わるんだぞ!? |
Raabe |
ラーベ
しかも、それを倒すつもりだって? 正気の沙汰じゃない! |
Raabe |
1: に、逃げる? |
1: |
ラーベ
もう遅い! この状況下では距離置こうが無駄だし すでに緊急脱出に支障が出るほどの影響が生じている |
Raabe |
ラーベ
やばいもなにも、 ファントムフィールドを喰らうリセット装置そのものだ! |
Raabe |
ラーベ
この世界ごと我々もすべて消滅するぞ!? |
Raabe |
トキワ
私は『黒き獣』を倒すためにこの世界に来たのです。 畏れる必要などありません。 |
Tokiwa |
シエル
魔素が……巨大な形状を成していきます……! |
Ciel |
ラーベ
くそっ……これは本気でまずいぞ! |
Raabe |
ハクメン
あれこそが『黒』。 |
Hakumen |
トキワ
あれこそが『悪』! この刃を以て、全て滅します! |
Tokiwa |
第6節 『白き花と白き刃②』/
Summary | |
---|---|
魔素は黒き獣に成りきらず、貫かれ散った。
この世界にもはや意味がないことを悟ったハ クメンは、自らを斬れ、と一行に対峙する。 |
シエル
はぁ、はぁ……やっと、倒しました……。 ですが……今のが『黒き獣』……ですか? |
Ciel | ||
ラーベ
いや。実物はあんなものじゃない。 あれはただの……いわば肉片だ。 |
Raabe | ||
ハクメン
……『黒』では在ったが、『黒き獣』には非ず。 成り損ないの、魔素の塊だ。 |
Hakumen | ||
ラーベ
黒き獣じゃなくて残念というような口ぶりだな。 お前、自分が何をしようとしているか、わかってるのか? |
Raabe | ||
ハクメン
無論だ。 |
Hakumen | ||
ハクメン
黒き獣は『悪』。私は『悪』を屠る存在。 此の世界を私が生んだと謂うならば、其の目的は『黒』だけだ。 |
Hakumen | ||
ラーベ
おいおいおい……いよいよもって正気が疑わしい。 |
Raabe | ||
ラーベ
『黒き獣』が現れるかもしれない世界が、 お前の望みだっていうのか? |
Raabe | ||
ラーベ
その願望だけで、こんな世界を作ったっていうのか!? |
Raabe | ||
シエル
ラーベさん、どういうことですか? |
Ciel | ||
ラーベ
ここは、災厄……『黒き獣』を出現させて そいつを倒すためだけに生み出された世界だ。 |
Raabe | ||
ラーベ
そんな世界を望み、そんな世界を構築するような者は、 こいつしかいないだろう。 |
Raabe | ||
ラーベ
やはりハクメンが観測者で間違いない。 |
Raabe | ||
ハクメン
……然り。 |
Hakumen | ||
ハクメン
元より理解して居た訳では無い。 知ったのは、世界の仕組みと同様に……境界に触れた時だ。 |
Hakumen | ||
ハクメン
私を阻むつもり為らば、貴様たちも斬り伏せる筈だったが 私の成すべき事は、最早此の世界には存在しない様だ。 |
Hakumen | ||
ハクメン
現れた『黒き獣』を斬った所で、 世界は繰り返すのだろう? |
Hakumen | ||
ハクメン
為れば最早、此の世界に意味は無い。 |
Hakumen | ||
ハクメン
…………。 |
Hakumen | ||
ハクメン
貴様たちに、頼みが在る。 |
Hakumen | ||
トキワ
頼み、ですか? |
Tokiwa | ||
ハクメン
私を……斬れ。 |
Hakumen | ||
1: どうして? |
1: |
ハクメン
先程話した通りだ。 此の世界に、最早意味など無い。 |
Hakumen |
ハクメン
私が存在する限り、此の世界が存在するのであれば、 此の世界を放棄するべく私を消し去れ。 |
Hakumen | ||
ラーベ
いや、それはちょっと待ってほしい。 |
Raabe | ||
ラーベ
観測者が居続けるだけじゃなく、観測者が死ぬことでも 世界はリセットを起こしてループする。 |
Raabe | ||
ラーベ
そしてやはりそのループを繰り返すことで、 ファントムフィールドは可能性を枯渇させて、最終的に消滅する。 |
Raabe | ||
ラーベ
……それでは『黒き獣』が出現するのと、 なにも変わらない。 |
Raabe | ||
シエル
……ですが、それならレイさんの 力が有効なのでは? |
Ciel | ||
ラーベ
そう。いいぞシエル、大正解だ! |
Raabe | ||
ラーベ
観測者であるハクメンと戦い、勝利することで、 レイの観測力がハクメンを上回ることができる。 |
Raabe | ||
ラーベ
そうすれば、観測者の意識から切り離された窯を 破壊することができる。 |
Raabe | ||
ラーベ
窯を破壊すれば、ファントムフィールドは解放される。 ハクメン、お前の望む状況が手に入るってわけだ。 |
Raabe | ||
ラーベ
観測者であるお前を殺す必要はない。 |
Raabe | ||
ハクメン
……理屈はどうでも良い。 |
Hakumen | ||
ハクメン
するべき事に変わりが無いのなら、其れが分かれば十分だ。 |
Hakumen | ||
シエル
っ……ハクメンさんの戦闘レベルの上昇を確認。 ただ構えただけなのに、ものすごい威圧感です……。 |
Ciel | ||
トキワ
ええ……息が詰まりそう。 これほどの気迫……これが『ハクメン』……。 |
Tokiwa | ||
ハクメン
ファントムフィールドの道理らしい。 私の意思がどうであれ、手加減は出来ない。 |
Hakumen | ||
ハクメン
心して来い。 |
Hakumen | ||
トキワ
……たとえどれほど強大な相手であろうとも、 それが私の道の先にいるのであれば、斬り払う。 |
Tokiwa | ||
トキワ
それが私の、今の剣の形です。 こちらこそ、加減はしません。 |
Tokiwa | ||
トキワ
我が名はホワイトジャスティス。 参る!! |
Tokiwa | ||
シエル
戦闘態勢に移行します。 レイさん、よろしくお願いします! |
Ciel | ||
ハクメン
おぉぉぉぉっ! |
Hakumen |
第7節 『境界を渡る者』/
Summary | |
---|---|
観測は終わり、シエルが窯を破壊した。ハク
メンは行く宛もなく歩き去り、トキワは目的 のため、止まることなく世界を渡っていく。 |
シエル
はぁっ! |
Ciel |
シエル
くっ……! |
Ciel |
ハクメン
ぜあぁぁぁっ! |
Hakumen |
トキワ
はぁぁっ! |
Tokiwa |
ハクメン
其れが十六夜の行き着く果てか。 未だ……脆い!! |
Hakumen |
トキワ
くぅぅっ……! いいえ、まだです!! |
Tokiwa |
ラーベ
ふたりとも、そこまでだ! |
Raabe |
トキワ
はぁ、はぁ……っ! なぜです、ラーベさん!? |
Tokiwa |
ハクメン
…………。 |
Hakumen |
ラーベ
もう十分だ。 |
Raabe |
ラーベ
レイがハクメンを観測し、 この世界における観測の主導権を握った。 |
Raabe |
ラーベ
あとは窯を破壊すれば、全てすむ。 |
Raabe |
ラーベ
このまま続けていたら、どちらも無事ではすまないだろうが。 なんのために刃を合わせていたのか、忘れるんじゃない。 |
Raabe |
シエル
では……もう戦闘を続行する必要はないのですね……。 |
Ciel |
1: 大丈夫? |
1: |
シエル
とても厳しい戦いでしたが、大丈夫です。問題ありません。 ……しかし、実力不足を実感しました……。 |
Ciel |
シエル
もっと強くならなければなりません。 |
Ciel |
シエル
いいえ、素早い対応です。 |
Ciel |
シエル
それに、レイさんのために戦うのは、 私の役目です。 |
Ciel |
シエル
……ですが、今回はちょっと緊張しました。 ハクメンさんはとても強かったです。 |
Ciel |
ハクメン
……窯は如何にして破壊する? |
Hakumen |
ラーベ
シエルとレイがやる。 ……いけるか? |
Raabe |
シエル
はい。 |
Ciel |
シエル
レイさん、観測をお願いします。 |
Ciel |
シエル
第666拘束機関解放。次元干渉虚数方陣展開……。 『蒼の魔道書・写本』、起動! ブレイブルーCiel |
|
トキワ
『蒼の魔道書・写本』…… 本当に窯を破壊してしまった……。 ブレイブルーTokiwa |
|
トキワ
目の当たりにすると、少し驚きますね。 |
Tokiwa |
ラーベ
窯の破壊はこれで完了だ。ファントムフィールドは 消滅することなく、ループもすることなく、境界に残る。 |
Raabe |
ラーベ
ハクメン、お前はやがて本来あるべき場所に戻るはずだ。 |
Raabe |
ハクメン
…………。 |
Hakumen |
ハクメン
……戻るべき場所など、何処にも無い。 |
Hakumen |
シエル
あ! ハクメンさん、どこへ……! |
Ciel |
シエル
……行ってしまいました。 |
Ciel |
ラーベ
愛想のない奴だな。 付き合いが悪いぞ。 |
Raabe |
トキワ
私も、次の世界へ向かいます。 |
Tokiwa |
ラーベ
お前も付き合いが悪いな! 使命大好きか!? |
Raabe |
トキワ
好きとか嫌いとか、そういう問題ではありません。 |
Tokiwa |
トキワ
『悪』が存在する限り、その『悪』を滅ぼすために この体は存在しています。 |
Tokiwa |
トキワ
歩みを止める理由はないのです。 それだけが、私の居る意味なのですから。 |
Tokiwa |
トキワ
それではみなさん、失礼します。 |
Tokiwa |
1: それだけじゃないと思う |
1: |
トキワ
…………。 |
Tokiwa |
トキワ
あなたは…… 私に違う人間の面影を見ているのではないでしょうか。 |
Tokiwa |
トキワ
もしそうだとしたら、見当違いです。 |
Tokiwa |
トキワ
トキワ=カメリアは私の知る限り、このような存在です。 |
Tokiwa |
ラーベ
やれやれ。似てるようで似てないような。 似てないようで似ているような、そんな連中だったなぁ。 |
Raabe |
ラーベ
ハクメンもトキワもいなくなったのなら、 ここにはもうなにもない。私たちも帰るとしよう。 |
Raabe |
シエル
はい。 |
Ciel |
シエル
……トキワさんは、本当に世界から世界へと 渡ることができるのですね……。 |
Ciel |
シエル
次はどのようなところに行ったのでしょうか。 |
Ciel |
ラーベ
さぁな。ファントムフィールドを渡り歩く限り、 また会うこともあるかもしれない。 |
Raabe |
ラーベ
そのときは、『悪』だと思われて 斬られないようにしておかないとな。 |
Raabe |
第8節 『黒の因子①』/
Summary | |
---|---|
シエル達と別れ、次の世界へと降り立つトキ
ワ。人の姿はなく、死臭が漂う世界の中…… 彼女は確かに『悪』の気配を感じとった。 |
――――そして再び、新たな世界へ降り立つ。 |
|
境界を斬り、踏み入れた世界で最初に感じたのは、 埃やカビの臭いに似た、臭気だった。 |
|
これは……死臭だ。 |
|
見覚えのある場所だった。しかし、人の姿がない。 気配もない。ここも『あるべき』存在が『いない』世界だ。 |
|
奇妙なのは、『繰り返した』形跡がないこと。 まるで時が止まっているかのような、静寂がある。 |
|
だが、微かに感じ取れるものがあった。 |
|
『悪』の気配。 |
|
すなわち、『黒』の気配。 |
|
トキワ
……世界虚空情報統制機構支部の建築様式ね。 だけど、特定のどこかというわけではなさそう。 |
Tokiwa |
トキワ
でたらめにつなぎ合わせた空間、世界……。 そういう意味では、さっきまでいた世界と少し似ているのかも。 |
Tokiwa |
トキワ
だけど……違うのは、 ここがすでに役目を終えた場であるということ……。 |
Tokiwa |
トキワ
観測者も、異物もいない。 放棄されたフィールド……。 |
Tokiwa |
トキワ
……それでも、『悪』の気配を伴って 動き回る亡者は存在しているのですね。 |
Tokiwa |
統制機構の衛士
う、あ、ぁぁ……。 |
NOL Soldier |
トキワ
統制機構の衛士のようだけれど…… すでに生きてはいない……? |
Tokiwa |
トキワ
まるで動く屍ね。 |
Tokiwa |
トキワ
あなたたちが何者であれ、邪魔をするなら斬るのみ。 |
Tokiwa |
トキワ
そして……この世界の深奥から漂う『黒』の気配を追う。 覚悟!! |
Tokiwa |
第8節 『黒の因子②』/
Summary | |
---|---|
停止した窯に辿り着き、気配は途切れた。
「必ず追いついて、滅します。」彼女は変わ らぬ使命を負って、再び世界を渡っていく。 |
魔物や亡者は次々に現れた。 目に入るものを片っ端から斬って捨てた。 |
|
在るのはただ、使命感だけだ。これまで幾多もの世界で そうしてきたように、ただ倒すべき『悪』を追う。 |
|
『悪』……『黒』の気配を。 |
|
トキワ
進めば進むほど、気配が強くなってくる……。 この奥には……やっぱり。 |
Tokiwa |
数えきれないほどの亡者を斬り倒し、奥へ奥へと進んだ先には、 予想していた通りのものあった。 |
|
トキワ
――窯。 |
Tokiwa |
トキワ
だけどすでに活動を停止している……。 破壊されたわけではないようだけれど。 |
Tokiwa |
トキワ
……観測者との繋がりも切れている。 それに、辿って来た『悪』の気配もここで途切れているわ。 |
Tokiwa |
トキワ
ここを捨てて、別のファントムフィールドへ移ったというの? なぜ……? それに、どうやって? |
Tokiwa |
トキワ
観測者……あるいは『黒』の因子を持つ者が、 境界を渡るすべを持っていたの? |
Tokiwa |
トキワ
それとも……別の何者かの協力があった……? |
Tokiwa |
考えても、答えには辿り着けそうになかった。 |
|
どんな真相があるにせよ、 ここで行き止まりであることは間違いない。 |
|
ならば、もうここに用はない。 |
|
トキワ
黒の因子を受け入れた者は、滅ぼすべき『悪』。 |
Tokiwa |
トキワ
必ず追いついて、滅します。 |
Tokiwa |
トキワ
無論……『黒き獣』をも。 |
Tokiwa |