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Character Stories (Unused Content) |
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第一節 (TU)/ Tutorial
Summary | |
---|---|
謎の声が聞こえ、名前を聞かれる。 | |
謎の声が聞こえ、名前を聞かれる。 |
謎の声
……よし、始めろ。 |
Mysterious Voice |
???
認識……認識……認識……。 |
??? |
1: ……? |
1: |
???
――か? ――か? ――ですか? ――大丈夫ですか? |
??? |
1: だれ? |
1: |
???
気が……付かれましたか? すみません、アナタを巻き込んでしまって……。 |
??? |
???
(……認識) |
??? |
1: なにこれ? 夢? |
1: |
シエル
申し遅れました、私は……シエル。シエル=サルファー。 御剣機関のスレイプニールです。 |
Ciel |
シエル
よろしければアナタの名前を教えていただけますか? |
Ciel |
???
(……認識) |
??? |
???
(……認識……認識) |
??? |
シエル
……承認……了解。 |
Ciel |
シエル
シエル=サルファー。 現時点よりレイさんの護衛を開始します。 |
Ciel |
1: |
1: |
シエル
気がつかれましたか、レイさん。 申し訳ありませんが即時撤退したいのですが、動けますか? |
Ciel |
1: 君はさっき、夢の中で会った…… |
1: |
シエル
すみません、ご質問にお答えしている猶予がありません。 今は急いで……。 |
Ciel |
???
<size=135%>うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!</size> |
??? |
???
いつつつっ……。あ! レイくん! 良かった、気が付いたんですね。 |
??? |
???
いつつつっ……。あ! レイさん! 良かった、気が付いたんですね。 |
??? |
1: え、え? 誰? |
1: |
カズマ
カズマですよ、カズマ=クヴァル! 同じ学園の先輩を忘れるなんて、ひどくないですか? |
Kazuma |
カズマ
よかったです、覚えていてくれて。 同じ学園の後輩に即忘れられるとか、悲しいですから……。 |
Kazuma |
カズマ
ああいや、今はそんな悠長な話をしてる場合じゃないんです。 気絶から復活したばかりで、急かしてすみませんが……。 |
Kazuma |
カズマ
それより、ええと……シエルさん、でしたよね? これ、どうにかしてもらえませんかねぇ!? |
Kazuma |
シエル
敵性体……完全に囲まれていますね。 |
Ciel |
カズマ
何ですか? その残念そうな顔は。 |
Kazuma |
シエル
『戦える人』だと思ったのですが…… 見込み違いだったようです。 |
Ciel |
カズマ
勝手に見込まないでください。 僕、戦闘は専門外なんです……よっ! |
Kazuma |
カズマ
……駄目だ。何なのですかこの魔物たちは!? いくら倒しても再生して……全くキリがない。 |
Kazuma |
カズマ
僕ひとりじゃ、どうにもなりませんよ……! レイくん、動けそうなら手伝ってください! |
Kazuma |
カズマ
魔道学園に入学したんだし、 魔術くらい使えるでしょう? |
Kazuma |
カズマ
僕ひとりじゃ、どうにもなりませんよ……! レイさん、動けそうなら手伝ってください! |
Kazuma |
カズマ
魔道学園に入学したんだし、 魔術くらい使えるでしょう? |
Kazuma |
1: 魔術なんて使えません!! |
1: |
???
!!!!!!!!!! |
??? |
シエル
『つべこべ言うな、教えてやるから 言われた通りにやってみろ』……だそうです。 |
Ciel |
第一節/
Summary | |
---|---|
謎の声が聞こえ、名前を聞かれる。 | |
魔物が消え安堵すると、突如襲来した謎の少
女マイ。追い詰められそうになるが、不意に 視界がゆがみ、その場からの離脱に成功する。 |
謎の声
……よし、始めろ。 |
Mysterious Voice |
???
認識……認識……認識……。 |
??? |
1: ……? |
1: |
???
――か? ――か? ――ですか? ――大丈夫ですか? |
??? |
1: だれ? |
1: |
???
気が……付かれましたか? すみません、アナタを巻き込んでしまって……。 |
??? |
???
(……認識) |
??? |
1:なにこれ? 夢? |
1: |
シエル
申し遅れました、私は……シエル。シエル=サルファー。 御剣機関のスレイプニールです。 |
Ciel |
シエル
よろしければアナタの名前を教えていただけますか? |
Ciel |
???
(……認識) |
??? |
???
(……認識……認識) |
??? |
シエル
……承認……了解。 |
Ciel |
シエル
シエル=サルファー。 現時点より、レイさんの護衛を開始します。 |
Ciel |
1: |
1: |
シエル
気がつかれましたか、レイさん。 早速で申し訳ありませんが即時撤退します。動けますか? |
Ciel |
1: 君はさっき、夢の中で会った…… |
1: |
シエル
申し訳ありません、今はお答えしている時間がありません。 急いでこの場を……。 |
Ciel |
???
<size=135%>うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!</size> |
??? |
???
いつつつっ……。あ! レイくん! 良かった、気が付いたんですね。 |
??? |
???
いつつつっ……。あ! レイさん! 良かった、気が付いたんですね。 |
??? |
1: え、え? 誰? |
1: |
カズマ
カズマですよ、カズマ=クヴァル! 同じ学園の先輩を忘れるなんて、ひどくないですか? |
Kazuma |
カズマ
よかったです、覚えていてくれて。 同じ学園の後輩に即忘れられるとか、悲しいですから……。 |
Kazuma |
カズマ
ああいや、今はそんな悠長な話をしてる場合じゃないんです。 気絶から復活したばかりで、急かしてすみませんが……。 |
Kazuma |
カズマ
それより、ええと……シエルさん、でしたよね? これ、どうにかしてもらえませんかねぇ!? |
Kazuma |
シエル
敵性体……完全に囲まれていますね。 |
Ciel |
カズマ
何ですか? その残念そうな顔は。 |
Kazuma |
シエル
『戦える人』だと思ったのですが…… 見込み違いだったようです。 |
Ciel |
カズマ
勝手に見込まないでください。 僕、戦闘は専門外なんです……よっ! |
Kazuma |
カズマ
……駄目だ。なんなんですかこの魔物たちは!? いくら倒しても再生して……まったくキリがない。 |
Kazuma |
カズマ
僕ひとりじゃ、どうにもなりませんよ……! レイくん、動けそうなら手伝ってください! |
Kazuma |
カズマ
魔道学園に入学したんだし、 魔術くらい使えるでしょう? |
Kazuma |
カズマ
僕ひとりじゃ、どうにもなりませんよ……! レイさん、動けそうなら手伝ってください! |
Kazuma |
カズマ
魔道学園に入学したんだし、 魔術くらい使えるでしょう? |
Kazuma |
1: 魔術なんて使えません!! |
1: |
???
!!!!!!!!!! |
??? |
シエル
『つべこべ言うな、教えてやるから 言われた通りにやってみろ』……だそうです。 |
Ciel |
1: |
1: |
カズマ
きえ……た? 再生もしてこない……いったいどうして? |
Kazuma |
シエル
敵性体の消滅を確認しました。 |
Ciel |
シエル
……間違いありません。 先程の計測通り……レイさんは『観測者』です。 |
Ciel |
???
…………。 |
??? |
???
……なるほど、『そういう事』か。 |
??? |
シエル
<size=140%>!? </size> |
Ciel |
???
そいつも、ねぇ……。 まったく、仕事を増やしてくれる。後で追加報酬、請求しないと。 |
??? |
1: あの人……見覚えが…… |
1: |
シエル
危険です、レイさんは私の後ろに! |
Ciel |
カズマ
ま、待ってください、なんですか? なんなんですかこの人は!? |
Kazuma |
シエル
詳細は不明です。ですが先ほど攻撃を受けました。 つまり現時点では敵性体と認識しています。 |
Ciel |
カズマ
敵性体? じゃあ、敵ってことですか? いやいやいや、冗談じゃないですよ……! |
Kazuma |
カズマ
僕にでもわかるくらい、とんでもない魔力じゃないですか! イシャナ最強の魔術師『十聖』……いや、それ以上かも。 |
Kazuma |
カズマ
そんなのを相手にするとか、本気でヤバイやつですよ、 死んじゃいますよ!? 死ぬ気ですか!? |
Kazuma |
???
うるさいぞ……君。 |
??? |
カズマ
ひいっ、す、すみません……。 |
Kazuma |
シエル
アナタが……私たちの『敵』なんですか? |
Ciel |
???
酷いことを言うね、君。敵って言われると まるで僕のほうが悪役みたいじゃないか。 |
??? |
???
だいたい、僕の邪魔をしているのは君たちの方だよね? あぁ、つまり、君たちが僕の敵って事になるのか。 |
??? |
???
まぁ、今更の話なんだけどね。 |
??? |
???
だからさ、もう一回『死んで』みてよ? |
??? |
1: お……お前は!! |
1: |
???
『お前』? |
??? |
シエル
いけない、レイさん……! |
Ciel |
シエル
レイさん、 彼女を強く『認識』してはいけません。 |
Ciel |
シエル
大丈夫です。アナタのことは私が必ず守ります。 だからどうか、平静を保ってください。 |
Ciel |
1: あ、ありがとう…… |
1: |
???
駄目だよ、人の事をいきなり『お前』なんて言っちゃ。 僕にはちゃんと『マイ』って名前があるんだから。 |
??? |
カズマ
だからと言って、いきなり刺し殺そうとするのも いかがなものかと思うのですがね……。 |
Kazuma |
シエル
対象の名称を確認しました。 『マイさん』ですね。 |
Ciel |
マイ?
さん付けでどうも。 そう言う君は、さっきより動けるみたいだね。 |
Mai? |
マイ?
もしかして……大事そうに庇われてる、 そっちの『君』の力なのかな? |
Mai? |
マイ?
……でも君は、ここの『観測者』ではないみたいだね。 |
Mai? |
1: |
1: |
マイ?
……まぁいいや。少し予定外だけど念の為に全員 『処分』させてもらうよ。 |
Mai? |
カズマ
え……僕もですか? |
Kazuma |
シエル
……戦闘態勢に移行します。カズマさん、 レイさんを連れて退避してください。 |
Ciel |
シエル
今の私なら、足止めくらいは出来るはずです。 |
Ciel |
???
いや、却下だ。 |
??? |
1: え? |
1: Huh? |
シエル
ま、待ってください――! |
Ciel |
マイ?
今のは……『転移魔法』? いや違う……あの丸いのの仕業か。 |
Mai? |
マイ?
想像以上に面倒くさい依頼だなぁ……これ。 |
Mai? |
マイ?
まぁいいか。少し確かめたいこともできたし……ね。 |
Mai? |
カズマ
うわぁぁ! |
Kazuma |
カズマ
い、たたた……。 |
Kazuma |
1: な、なに? 今の? |
1: |
シエル
……なぜですか? なぜ『転移』を……ラーベさん? |
Ciel |
第二節 記憶の断片/
Summary | |
---|---|
シエルは、この世界の異常を正すべく、『窯』
を探しているとのこと。一方カズマは今の状 況を整理するべく、今に至るまでを回想する。 |
カズマ
い……今のって、まさか『転移魔法』ですか!? |
Kazuma |
1: |
1: |
カズマ
魔術の中でも超高難易度のものです。 まさに『魔法』と呼ぶべき、とんでもない術ですよ。 |
Kazuma |
カズマ
歴代の十聖でも扱えたのは数えるほどですよ。 それくらい、非常に難しい魔術なんです。 |
Kazuma |
カズマ
今のはいったい、どういうことなんですか? シエルさん……説明してもらえませんか? |
Kazuma |
カズマ
あの……シエルさん? |
Kazuma |
シエル
現在、周囲に敵影らしき反応はありません。 ひとまず安全は確保されたと思われます、ご安心ください。 |
Ciel |
シエル
それと、先程の事象は『転移魔法』ではありません。 私では原理を詳しく説明することはできませんが…… |
Ciel |
シエル
『事象干渉』の応用だと聞いています。 |
Ciel |
1: 事象……なに? |
1: |
カズマ
事象に、干渉する……? 理論はなんとなく勉強しましたけど、 そんなこと本当に……って、シエルさん、聞いてます? |
Kazuma |
シエル
すみません、少々お待ちください。 『アストロラーベ』が動かなくなってしまって……。 |
Ciel |
1: それ、アストロラーベっていうんだ |
1: |
カズマ
アストロラーベって、たしか『天体観測機』のことですよね。 それで……えっと、なぜそれを、ぶっ叩いているんです? |
Kazuma |
シエル
はい。以前読んだ資料に、動かなくなった機械は斜め四十五度の 角度で衝撃を与えると機能が回復するとありましたので……。 |
Ciel |
シエル
……もしかして、衝撃が足りないのでしょうか? |
Ciel |
1: だ、駄目だよ、壊れちゃう! |
1: |
ラーベ
<size=140%>!?</size> |
Raabe |
シエル
<size=140%>あいたっ!</size> |
Ciel |
ラーベ
!!!!!!(かなり怒っているみたいだ!) |
Raabe |
シエル
うぅ……。ど、どうやら無事に再起動できました……。 |
Ciel |
ラーベ
…………。 |
Raabe |
シエル
……ですが、先程の事象干渉の影響で、 音声再生機能に支障が出ているみたいです。 |
Ciel |
シエル
先程までは、わずかに機能していたのですが……。 |
Ciel |
シエル
データによる情報伝達も、断片的なものに なってしまいそうです……困りました。 |
Ciel |
カズマ
あの……安全が確保されたとのことですし、 一旦状況を整理させてもらえませんか? |
Kazuma |
カズマ
わけがわからないまま魔物に追い回されて、 なにがどうなっているんだか、さっぱりなんですが。 |
Kazuma |
1: 賛成です! |
1: |
シエル
……了解です。 私もおふたりに、聞きたいことがあります。 |
Ciel |
カズマ
まず初めに、シエルさん。あなたはどこの誰なんですか? |
Kazuma |
カズマ
僕やレイくんと違って、 魔道学園の生徒ではありませんよね。 |
Kazuma |
カズマ
まず初めに、シエルさん。あなたはどこの誰なんですか? |
Kazuma |
カズマ
僕やレイさんと違って、 魔道学園の生徒ではありませんよね。 |
Kazuma |
シエル
はい。私の名前はシエル=サルファー。 御剣機関のスレイプニールです。 |
Ciel |
シエル
こちらは、自立思考型支援ユニットのアストロラーベ。 通称……。 |
Ciel |
ラーベ
…………。 |
Raabe |
シエル
…………はい、詳細を省略します。 |
Ciel |
シエル
……私たちは『御剣機関』の者です。この島、『イシャナ』に 異常な『場』の反応があったため、調査に来ました。 |
Ciel |
シエル
調査中、先ほどの『マイさん』に襲撃を受け、 その際にレイさんと遭遇。 |
Ciel |
シエル
交戦状態からの離脱には成功したのですが、その後 レイさんが気を失ってしまい……。 |
Ciel |
カズマ
今に至る、というわけですね。 |
Kazuma |
シエル
はい。なお『マイさん』に関する情報はなにもありません。 私もあれが初めての遭遇でした。 |
Ciel |
カズマ
『マイさん』……ですか。 あの人には、できれば二度と関わりたくありませんね……。 |
Kazuma |
カズマ
アレは規格外です。敵に回すなんて、とんでもない。 あまりにも危険すぎます、僕はごめんですよ。 |
Kazuma |
シエル
…………。 |
Ciel |
カズマ
彼女のことはさておき。今のイシャナが異常な状態に あることについては、僕も同意します。 |
Kazuma |
カズマ
なにせ、人が誰もいないんですから。街にも、学園にも。 普段は小さな島に大勢、ひしめき合っているのに。 |
Kazuma |
カズマ
この異常状態を解明してくれるというのなら、 個人的には大歓迎なんですが……その前に。 |
Kazuma |
カズマ
『御剣機関』とかいう組織は、 イシャナとどのような関係なんですか? |
Kazuma |
カズマ
ここは外界から隔たれた、ちょっと特殊な孤島です。 無関係の調査機関では、気軽に入り込めないはずですが。 |
Kazuma |
シエル
すみません、私は御剣機関とイシャナの関係性について 知らされておりません。 |
Ciel |
シエル
ですが、私はあなたがたの敵ではありません。 これだけは明言できます。 |
Ciel |
カズマ
そう言い切れる理由があるのなら、 うかがいたいのですが。 |
Kazuma |
シエル
私たちならこの『場』を『本来あるべき形』に 修正できるからです。 |
Ciel |
カズマ
本来あるべき形に修正? つまり……あなたがたは、 なぜこんな状況になったのか知っている、ということですか? |
Kazuma |
シエル
『理由』はわかりません。 ですが『原因』はわかっています。 |
Ciel |
シエル
その『原因』を排除するために、 お聞きしたいことがあります。 |
Ciel |
シエル
『窯』について、知っていることがあれば 教えていただけませんか。 |
Ciel |
1: |
1: |
カズマ
窯……ですか。 それは、具体的にはどのようなものなんですか? |
Kazuma |
シエル
……わかりません。 私も『窯』を実際に見たことはないんです。 |
Ciel |
シエル
ですが、わかるかたにはそれが『窯』だと 認識できるそうです。 |
Ciel |
カズマ
……詳細不明、形状も不明。『窯』という名称だけ判明している ナニカを見つければ、この異常事態が解決すると? |
Kazuma |
シエル
はい。私は、そのためにここに来ました。 |
Ciel |
カズマ
……………………。 |
Kazuma |
カズマ
……すみません。あなたの説明をすぐに鵜呑みには できません。 |
Kazuma |
カズマ
そちらの事情は一応、わかりましたが…… こちらの情報を提示する前に、少し相談させてください。 |
Kazuma |
カズマ
レイくん、ちょっと向こうで、 ふたりで話しましょう。 |
Kazuma |
カズマ
レイさん、ちょっと向こうで、 ふたりで話しましょう。 |
Kazuma |
カズマ
…………あの、シエルさん? |
Kazuma |
シエル
何でしょうか? |
Ciel |
カズマ
僕はレイくんと ふたりで話をしたいと言ったはずですが……。 |
Kazuma |
カズマ
僕はレイさんと ふたりで話をしたいと言ったはずですが……。 |
Kazuma |
シエル
その件について了承はしていません。 私にはレイさんを護衛する任務がありますので。 |
Ciel |
1: 護衛……って、あれ夢じゃなかったんだ |
1: |
シエル
はい。レイさんの身の安全を確保することは、 現在の私の最優先事項です。 |
Ciel |
カズマ
でしたらなおのこと、僕たちに情報開示の準備を させてくださいよ。 |
Kazuma |
カズマ
そんな配慮もなしに、黙って信用しろと言う人に、 自分の身の安全なんて預けられますか? |
Kazuma |
シエル
それは……そう、かもしれません……むう。 |
Ciel |
1: カズマさんと二人で話がしたい |
1: |
シエル
…………了解しました。 ですが、私の視界内でお願いします。 |
Ciel |
カズマ
この辺でいいですかね……。 |
Kazuma |
カズマ
護衛役の監視が厳しいようですから、 手短に言いますが……。 |
Kazuma |
カズマ
レイくん。僕は、シエルさんはもちろん、 あなたのことも今ひとつ信用しきれずにいます。 |
Kazuma |
カズマ
レイさん。僕は、シエルさんはもちろん、 あなたのことも今ひとつ信用しきれずにいます。 |
Kazuma |
1: え、僕もですか!? |
1: |
1: え、私もですか!? |
1: |
カズマ
信じきれないのは、そちらも同じじゃないですか? 僕のこと、決して全面的に信用できないでしょう。 |
Kazuma |
カズマ
だけど誤解しないでください、 信じたくないわけではないんです。 |
Kazuma |
カズマ
なにせ、こんな大変なことになる前からの知り合いは、 今のところあなただけなんですから。 |
Kazuma |
カズマ
ただ、僕が思っている通りのあなたなのか確認するためにも、 今現在に至るまでの経緯を、お聞きしていいでしょうか。 |
Kazuma |
1: 記憶に少々混乱がありまして |
1: |
カズマ
なら、思い出せるところから話をしましょうか。 |
Kazuma |
1: |
1: |
カズマ
すみません、お待たせしてしまって。 |
Kazuma |
カズマ
僕はカズマ=クヴァル。教授から、あなたを案内 するように頼まれたのですが……あの? |
Kazuma |
1: あ、すみません |
1: |
カズマ
ああ。『イシャナの大時計』を見ていたんですね。 |
Kazuma |
カズマ
気になりますよね。とても不思議な |
Kazuma |
カズマ
なんでも、魔道協会設立時からあるそうですよ。 ……ああ、魔道協会ってわかります? |
Kazuma |
カズマ
世界中から魔術や錬金術の知識と技術を集め、けれどそれを 決して表の世界には現さず、保護し続けるための機関。 |
Kazuma |
カズマ
それが『魔道協会』です。 |
Kazuma |
カズマ
その協会が、あらゆる魔術や錬金術を基部とする『世界』を 継承させるために設立したのが、この学園。 |
Kazuma |
カズマ
これだけご大層な場所の正面玄関を飾る時計ですから、 さぞ気合いの入ったものなのでしょうが……。 |
Kazuma |
カズマ
今はもう、壊れていて動かないみたいです。 |
Kazuma |
1: |
1: |
カズマ
ほ、本当ですか!? |
Kazuma |
カズマ
…………普段と変わらないように見えるのですが。 |
Kazuma |
カズマ
きっと気のせいですよ。それより、教授をあまり待たせると いけませんから、行きましょう。 |
Kazuma |
カズマ
ところで、学園へは迷わず辿り着けましたか? |
Kazuma |
1: どうやってここまで来たのか…… |
1: |
カズマ
そうなんですか? それは大変ですね。 といっても、この学園に関してはあり得ることか……。 |
Kazuma |
カズマ
僕も実は、この学園に来たときのことは、 はっきり覚えてないんですよ。 |
Kazuma |
カズマ
特殊な場所ですからね。 そういう人、結構いると思いますよ。 |
Kazuma |
カズマ
でもそれなら、簡単に説明しておきましょうか。 |
Kazuma |
カズマ
僕たちが今いるのは、魔道都市イシャナの、 中心にある魔道学園です。 |
Kazuma |
カズマ
学園を中心にして、 住居や商店のある街が広がっていまして……。 |
Kazuma |
カズマ
その外へ行くと、丘だとか森だとか、 自然豊かなエリアがあります。 |
Kazuma |
カズマ
その外は……まあ、海ですね。 イシャナはひとつの島ですから。 |
Kazuma |
カズマ
イシャナというのはそもそも、 魔道協会を中心にした組織全体のことを指すらしくて……。 |
Kazuma |
カズマ
その総本山があるから、この島は魔道都市イシャナなんて 呼ばれているんですよね。 |
Kazuma |
カズマ
島の名前がイシャナだから、組織の名前がそうなったのか。 組織の名前がイシャナだから、島の名前がそうなったのか。 |
Kazuma |
カズマ
その辺の事情や名前の由来がはっきりわかってないだなんて、 なんとも魔道協会らしいじゃないですか。 |
Kazuma |
カズマ
所属している人間すら、素性を把握していない。 さすが世界屈指の秘密組織ですよ。 |
Kazuma |
カズマ
そのうえ、イシャナの島は全体を強固な結界で覆われている。 |
Kazuma |
カズマ
島から出るのにも、島に入るのにも、面倒な手続きと 唯一の港を経由しなければならないなんて……。 |
Kazuma |
1: じゃあ、簡単には逃げられないね |
1: |
カズマ
え? ああ、はい。まあ、そうなりますね。 |
Kazuma |
カズマ
イシャナの説明は、こんなところで十分でしょうか。 |
Kazuma |
カズマ
あとは学園の中ですけど……授業に必要なときは、 手近な人に案内してもらえばいいでしょうし。 |
Kazuma |
カズマ
ああ、中庭だけ説明しておきましょうか。 |
Kazuma |
カズマ
一階のあちこちから出られる中庭があるんですが。 そこには大図書館と聖堂があります。 |
Kazuma |
カズマ
大図書館は言葉の通り、大きな図書館です。 |
Kazuma |
カズマ
ここの生徒なら誰でも利用できますから、 調べたいことがあればどうぞ。 |
Kazuma |
カズマ
もうひとつの聖堂ですが……こちらはあまり近づかないほうが、 身のためでしょうね。 |
Kazuma |
カズマ
イシャナでも特別な儀式を行うための場所らしくて、 許可のない生徒は基本的に立入禁止なんです。 |
Kazuma |
カズマ
まあ……あなたがあえて面倒事を引き起こしたいタイプなら、 止めはしませんが。 |
Kazuma |
1: 色々とご説明ありがとうございます |
1: |
カズマ
いえいえ。教授から説明しておくようにと 言われていましたから。 |
Kazuma |
カズマ
……ところで、レイくん。 その制服、どうしたんですか? |
Kazuma |
カズマ
それ、相当前に廃止された制服のデザインだと 思うんですけど。 |
Kazuma |
カズマ
……ところで、レイさん。 その制服、どうしたんですか? |
Kazuma |
カズマ
それ、相当前に廃止された制服のデザインだと 思うんですけど。 |
Kazuma |
1: そうなんですか? |
1: |
カズマ
あ、すみません、気にしないでください。 入学手続きが終われば、今の制服が支給されると思いますよ。 |
Kazuma |
カズマ
……それにしても十聖の列聖式前だからなのか、 妙に静かですねぇ。 |
Kazuma |
1: 十聖? |
1: |
カズマ
魔道協会の頂点と言える優秀な魔道士が『十聖』。 その座に新たな人物を加えるための儀式が『列聖式』ですが……。 |
Kazuma |
カズマ
なんだかピンときていない顔をしている気がするんですが、 もしかして十聖を知らないとか……ですか? |
Kazuma |
1: まったく |
1: |
カズマ
いったいどうやってイシャナに入校出来たのか…… 僕、すごく気になります……。 |
Kazuma |
カズマ
……どうしました? |
Kazuma |
1: |
1: |
カズマ
真っ赤なマントって……もしかして『レッドセンチネル』!? まさか、『アレ』が見えたんですか!? |
Kazuma |
1: はい、見えました |
1: |
カズマ
それはすごい……! いや、本当にすごいことなんですよ! |
Kazuma |
カズマ
すごいって、それ本当にすごいことなんですよ! |
Kazuma |
カズマ
レッドセンチネルというのは、イシャナに伝わる都市伝説、 いえ学園伝説と言ったほうがいいですね。 |
Kazuma |
カズマ
その中でもかなり古くから伝わっているもので、 もしかしたら学園設立当時から存在していたのでは、 |
Kazuma |
カズマ
とまで言われているんです! |
Kazuma |
カズマ
過去、イシャナにかなり大掛かりな魔術攻撃を 仕掛けてきた組織があったそうなのですが、 |
Kazuma |
カズマ
噂……話によると、レッドセンチネルたったひとりで 撃退、いえ『殲滅』させたとか。 |
Kazuma |
カズマ
つまりですね、
レッドセンチネルはこの魔道都市に関わる何らかの |
Kazuma |
カズマ
もしかしたらこの謎だらけの魔道都市『イシャナ』の 秘密に繋がる可能性があるんです! |
Kazuma |
カズマ
いやぁ、一度お話を聞いてみたいですねぇ。 まあ、言葉が通じるならですけど……。 |
Kazuma |
カズマ
そもそも人かどうかもわかりませんし、 ゴーレムや使い魔の類とも考えられますから。 |
Kazuma |
カズマ
それに、レッドセンチネルを認識するのはかなりの…… それも先程お話した十聖か、 |
Kazuma |
カズマ
それに匹敵するほどの魔力が必要だと言われています。 |
Kazuma |
カズマ
それでも、 存在を認識出来る程度だそうですが……あれ? |
Kazuma |
カズマ
そう考えると、レイくんってもしかして すごい魔力をお持ちなのでは……? |
Kazuma |
カズマ
そう考えると、レイさんってもしかして すごい魔力をお持ちなのでは……? |
Kazuma |
カズマ
<size=130%>ち、ちょっと待ってください!</size> <size=130%>僕、こんなにハイテンションでしたか!?</size> |
Kazuma |
1: かなり |
1: |
カズマ
うっ……。 と、とりあえず話を続けましょうか……。 |
Kazuma |
シエル
駄目です。 |
Ciel |
カズマ
うわぁぁぁっ!! シ、シエルさん、いつからそこに!? |
Kazuma |
シエル
驚かせて申し訳ありません。 至急、この場からの移動を提案します。 |
Ciel |
カズマ
何かあったのですか? |
Kazuma |
シエル
話に聞き入り……いえ、考え事をしていたせいです。 申し訳ありません、索敵を怠りました……。 |
Ciel |
1: それって |
1: |
シエル
敵性体に囲まれています、お二人とも戦闘準備を。 |
Ciel |
第三節 断絶された島①/
Summary | |
---|---|
魔物は『異物』であるシエル達を狙っている
らしく、安全な場所へ移動する。カズマは魔 物の襲撃によって中断となった回想を続ける。 |
シエル
敵性体の排除を完了しました。 |
Ciel |
1: お疲れ様。ところで……今の人たちは? |
1: |
シエル
戦闘に参加していた個体は『ユニット』といいます。 |
Ciel |
シエル
私が装備している接続器を介してデータをサルベージし、 具現化した存在です。 |
Ciel |
カズマ
具現化? 僕には、ボヤッとしたなにかが 動き回ってるようにしか見えませんでしたが……? |
Kazuma |
シエル
|
Ciel |
シエル
それをレイさんの持つ『観測の力』によって、 一時的に具現化させています。 |
Ciel |
シエル
ですので基本的に『ユニット』は、レイさんや、 データの処理を行う私にしか、明確に認識できません。 |
Ciel |
シエル
レイさんのおかげでなんとか具現化できている 状況なので、現状では戦闘時のみ、数体の確保が限界ですが……。 |
Ciel |
シエル
今後、観測の力が安定、あるいは強化されることで、 より強力に、より明確に具現化させることができるはずです。 |
Ciel |
1: やり方、よくわかってないんだけど…… |
1: |
シエル
問題ありません。無事に戦闘は行えました。 現在は自衛のための手段として、使用してください。 |
Ciel |
シエル
……そろそろ、移動したほうがいいかもしれません。 |
Ciel |
シエル
先程カズマさんが魔物と呼称した生物は、 こちらの存在を感知しているようです。 |
Ciel |
シエル
一度倒したとしても、別の個体が再び集まってきて 私たちを追跡する可能性が高いです。 |
Ciel |
カズマ
それって、僕たちが魔物に狙われてるってことですか? なんでまた……。 |
Kazuma |
シエル
まだ推測ですが、私……いえ、私たちが この場において『異物』だからかもしれません。 |
Ciel |
1: 異物って? |
1: |
シエル
異物というのは……本来、この世界に存在してはいない者を 指します。この場に巻き込まれた人と言いますか……。 |
Ciel |
カズマ
存在しない、って。僕たちはイシャナの生徒ですよ? いないはずなのは、シエルさんだけでは? |
Kazuma |
カズマ
それに今は、いるはずの人がいない、という状況だと 思うんですけどね。島の人がどこにもいないんですから……。 |
Kazuma |
シエル
誰が異物であるかは、私には判断できません。 現状、私を含めて誰でも、異物である可能性はあります。 |
Ciel |
シエル
先程の魔物たちは、異物を排除しようとしていると 思われます。そのため、繰り返し襲撃される危険性があります。 |
Ciel |
シエル
ただ、感知能力はそれほど広くはないようです。 |
Ciel |
シエル
私もある程度の範囲なら、敵性体を感知することが可能です。 奇襲は回避できると思いますので、ご安心ください。 |
Ciel |
カズマ
今しがた囲まれたばかりですが!? |
Kazuma |
シエル
……すみませんでした。つい夢中になっていて……。 |
Ciel |
カズマ
夢中? なににです? |
Kazuma |
シエル
なんでもありません。失礼しました。 |
Ciel |
シエル
不手際について、お詫びします。ですが先ほどの戦闘で こちらの所在地を感知した魔物が、徐々に集まりつつあります。 |
Ciel |
シエル
この場に留まるのは危険ですので、 早急な移動を推奨します。 |
Ciel |
カズマ
わかりました……レイくん、 とりあえず話の続きは後にしましょう。 |
Kazuma |
カズマ
わかりました……レイさん、 とりあえず話の続きは後にしましょう。 |
Kazuma |
カズマ
ですが移動と言っても……どこに行ったものか……。 |
Kazuma |
1: |
1: |
カズマ
ち、ちょっと……そんなに簡単に この人を信用していいんですか? |
Kazuma |
シエル
……確実とは言えませんが、 北東の方角は敵性体の反応が少なく感じます。 |
Ciel |
カズマ
……ここから北東に行けば、港がありますね。確か港には、 島外への通信機があるはずです。それに、船も……。 |
Kazuma |
1: 外部に連絡できるかも! |
1: |
カズマ
……わかりました。とりあえず港に向かいましょう。 |
Kazuma |
シエル
レイさん。 信用してくださって、ありがとうございます。 |
Ciel |
シエル
それと、私のことは『シエル』で結構です。 |
Ciel |
1: |
1: |
1: カズマさんとの話、どこから聞いてた? |
1: |
シエル
カズマさんがレイさんを迎えにきて、 学園の入り口にある大時計のお話を……。 |
Ciel |
シエル
カズマさんが興奮しながらお話を始めて、 そんなにテンション高かったっけ、と……。 |
Ciel |
シエル
あ。 |
Ciel |
1: 結構引っかかりやすいタイプ? |
1: |
シエル
す、すみません。立ち聞きをしていました……。 |
Ciel |
シエル
はじめはレイさんの安全を危惧しての ことだったのですが……途中からは、お話が興味深くて……。 |
Ciel |
ラーベ
…………。 |
Raabe |
カズマ
ふたりとも、移動するんじゃないんですか? ひとりにしないでくださいよ……。 |
Kazuma |
シエル
失礼しました。行きましょう。 |
Ciel |
カズマ
はぁ〜、結構歩きましたね……。 |
Kazuma |
カズマ
普段なら町から真っ直ぐ行けばいいことなのに、 遠回りな上に道も悪くて……さすがに疲れました。 |
Kazuma |
シエル
魔物との接触を避けてもいますから、ルートとしてはかなり 非効率的ですね。 |
Ciel |
カズマ
危険を冒すよりは、非効率的なほうがいいですよ。 |
Kazuma |
シエル
はい、私もそう思います。 |
Ciel |
シエル
カズマさんは戦闘に不向きのようですし、 可能な限り交戦は回避すべきです。 |
Ciel |
シエル
……レイさんは、少しお疲れのようですね。 |
Ciel |
シエル
ここなら視界も開けていて安全を確保できます。 レイさんの休息を提案します。 |
Ciel |
カズマ
『レイくんの』と言うか『僕たちの』ですね。 でも賛成です、少し休憩しましょう。 |
Kazuma |
カズマ
『レイさんの』と言うか『僕たちの』ですね。 でも賛成です、少し休憩しましょう。 |
Kazuma |
カズマ
それに、話も途中でした。 続きを……ああ、でもシエルさんが……。 |
Kazuma |
シエル
安全面と警備面を考慮して、私も同席させていただきます。 |
Ciel |
カズマ
……やっぱり、そうおっしゃいますよね……。 |
Kazuma |
1: 多分、大丈夫だと思いますよ |
1: |
シエル
レイさん。多分、と言われるのは 心外です。私は確実に大丈夫です。 |
Ciel |
シエル
はい。レイさんの言う通りです。 私を信用してくださって、問題ありません。 |
Ciel |
シエル
現状、私の最優先事項は、レイさん……。 |
Ciel |
シエル
…………。 お二人の安全ですから。 |
Ciel |
カズマ
先程から、なんとなく僕がオマケのように 感じているんですけど。 |
Kazuma |
シエル
気のせいです。 |
Ciel |
カズマ
はぁ……。 わかりました、いきなり魔物に襲われても困りますし。 |
Kazuma |
カズマ
えっと……どこまで話しましたっけ? |
Kazuma |
シエル
カズマさんが興奮しながらお話を始めた辺りです。 |
Ciel |
カズマ
そこまで興奮してませんよ! って、なんで知ってるんですか!? |
Kazuma |
シエル
気のせいです。 |
Ciel |
1: まぁまぁ、とりあえず話の続きを…… |
1: |
カズマ
……確か、レッドセンチネルが現れた辺りでしたよね? |
Kazuma |
カズマ
そう考えると、レイくんってもしかして すごい魔力をお持ちなのでは……? |
Kazuma |
カズマ
そう考えると、レイさんってもしかして すごい魔力をお持ちなのでは……? |
Kazuma |
???
まぁ、そうなんですかぁ? |
??? |
カズマ
うわっ! あ、と、トリニティさん!? ええと、あの、どうも……。 |
Kazuma |
トリニティ
こんにちは。それと……はじめまして〜。 転校生さんですね。 |
Trinity |
トリニティ
私はトリニティ=グラスフィールと申します。 カズマさんの、同級生なんですよぉ。 |
Trinity |
1: はじめまして |
1: |
トリニティ
ふふ、よろしくお願いしますね。 |
Trinity |
トリニティ
今のお話、立ち聞きしてしまってごめんなさい。 |
Trinity |
トリニティ
レイさんは、 とってもすごい魔力をお持ちなんですか〜? |
Trinity |
カズマ
そうなんだと思います。 だって彼、あのレッドセンチネルを見たそうなんですよ。 |
Kazuma |
カズマ
そうなんだと思います。 だって彼女、あのレッドセンチネルを見たそうなんですよ。 |
Kazuma |
トリニティ
まあ! それは本当にすごいですねぇ〜。 びっくりです〜。 |
Trinity |
トリニティ
私のお友達に、それはそれは強い魔力を持った、 コノエという子がいるんですけどね。 |
Trinity |
トリニティ
彼女でも、薄っすらと存在を感じられるくらいなんだそうです。 それを認識できただなんて。 |
Trinity |
トリニティ
レイさんにはなにか、とてつもない才能が あるのかもしれませんよぉ〜。 |
Trinity |
カズマ
ええ。なんたって、今のイシャナでレッドセンチネルを 知覚できるのは、あの十聖くらいなんですから。 |
Kazuma |
1: |
1: |
カズマ
……え? 十聖を知らないって、あれ本気だったんですか? え、本当に? 嘘でしょう? |
Kazuma |
トリニティ
あらぁ〜、そういうこともあるのですねぇ。 では、簡単にご説明しましょうか〜。 |
Trinity |
トリニティ
十聖はイシャナの特別優秀な魔術師に与えられる 称号なんですぅ〜。 |
Trinity |
トリニティ
ただ優秀なだけではなく、技術と才能、類まれなる能力を 有する者だけが、その名を冠することを許されます。 |
Trinity |
トリニティ
本来は十人いることになっているんですけれど……。 |
Trinity |
トリニティ
その席が埋まるほど一度に才覚が集まることはそうそうなくて、 いつもどこかしらに空席があるんだとか。 |
Trinity |
カズマ
……ん? 十聖といえば、コノエさんの列聖式が もうすぐですよね。トリニティさん、準備でお忙しいのでは? |
Kazuma |
トリニティ
まあ、まあ。そうでした、私ったらついうっかり、 おしゃべりに夢中になってしまって〜。 |
Trinity |
トリニティ
その準備の真っ最中だったんですけどね、 ちょっと困ったことが起こってしまいまして〜……。 |
Trinity |
トリニティ
カズマさんのお力を借りたくて、探していたんですぅ。 |
Trinity |
カズマ
僕を……ですか。なにも僕じゃなくても、トリニティさんなら 他にもたくさんお知り合いがいるでしょうに。 |
Kazuma |
トリニティ
そんなことありませんよ〜。それに、こういうことを お願いできるのは、カズマさんだけですから。 |
Trinity |
カズマ
はぁ……そうですか。 ちなみに、困ったことというのは? |
Kazuma |
トリニティ
はい。列聖式では十聖に選ばれた魔術師に合わせて、 様々な術式や魔力を織り込んだ、法衣を用意するんですけれど〜。 |
Trinity |
トリニティ
コノエの魔力量に合わせてたくさん魔力を織り込んだら、 ちょっと多すぎたみたいで〜。 |
Trinity |
トリニティ
肝心の法衣が、今にも燃えだしてしまいそうなんですよ〜。 |
Trinity |
カズマ
も、燃え!? ええ!? |
Kazuma |
トリニティ
なので、魔力を一度抜き取りたいんですが、 絶妙なバランスで織り合わさっているので……。 |
Trinity |
カズマ
バランスを崩さないよう、一度にまとめて魔力を抜く必要が ある……ってことですよね? |
Kazuma |
トリニティ
そうなんですぅ。ひとりではちょっと難しいので、 カズマさんにお手伝いをお願いできればと思ったのですけれど〜。 |
Trinity |
トリニティ
まだ、レイさんのご案内の 途中だったようですね〜。では、またあとでにします〜。 |
Trinity |
カズマ
いやいやいや、なに悠長なこと言ってるんですか! こうしてる間にも、法衣が駄目になるかもしれないでしょう!? |
Kazuma |
カズマ
すぐ行きますから! コノエさん級の魔力が暴れだしたら、 下手したら校舎吹っ飛びますよ!? |
Kazuma |
トリニティ
あらぁ、でもご案内の途中ですし〜。 私の都合でお邪魔するのも、申し訳ないですからぁ……。 |
Trinity |
カズマ
そんなこと言ってる場合じゃないですよ! |
Kazuma |
カズマ
レイくん、すみませんがここでちょっと 待っていてください。作業が終わったらすぐ戻るので。 |
Kazuma |
カズマ
レイさん、すみませんがここでちょっと 待っていてください。作業が終わったらすぐ戻るので。 |
Kazuma |
1: 近くなら、ひとりで行ってみます |
1: |
カズマ
そう……ですか? |
Kazuma |
トリニティ
まあ……すみません、お気を遣わせてしまって……。 |
Trinity |
トリニティ
でも、助かりますぅ。実はちょっと、急がないと 危なかったものですからぁ〜。 |
Trinity |
トリニティ
お言葉に甘えて、カズマさんをお借りしますね。 ありがとうございます、レイさん。 |
Trinity |
カズマ
では、すみませんが教員室まで おひとりでお願いします。 |
Kazuma |
カズマ
教員室はこの廊下を真っ直ぐ行って、突き当りを左に曲がった ところにあります。曲がって最初に見える扉がそうです。 |
Kazuma |
カズマ
上にプレートもついているはずですから、 それで確認してください。 |
Kazuma |
1: わかりました! |
1: |
カズマ
よろしくお願いします。 では、僕はこれで。 |
Kazuma |
トリニティ
はい、急ぎますね〜。 では、失礼します〜。 |
Trinity |
1: 真っ直ぐ行って、左に曲がる…… |
1: |
……………………。 …………………………………………。 |
|
……………………。 …………………………………………。 |
|
1: (窓から中庭が見える……) |
1: |
1: (トリニティさんだ。ひとりかな?) |
1: |
…………。 |
|
1: ……あれ? |
1: |
???
…………。 |
??? |
1: (さっき見た……) |
1: |
1: 待って! |
1: |
1: 待って! |
1: |
1: (ここ、カズマさんが言ってた聖堂だ) |
1: |
1: 地下にこんなところがあるんだ…… |
1: |
???
…………。 |
??? |
???
…………。 |
??? |
1" なに? |
1: |
???
……負けないで。 |
??? |
1: え? え? え? え? |
1: |
1: なんの物音? |
1: |
マイ?
遅いよ! |
Mai? |
シエル
っ……! |
Ciel |
マイ?
やるね。人形のくせに。 |
Mai? |
シエル
……損傷を確認。被害状況、軽微。 戦闘を続行します。 |
Ciel |
マイ?
まだやれるつもりなんだ。逃げたほうが賢明じゃないかな。 君が僕に勝てる見込みなんてないと思うけど。 |
Mai? |
マイ?
まあでも……逃さないけどね! ……ん? |
Mai? |
シエル
<size=140%>……!?</size> |
Ciel |
1: うわ、こっち見た! |
1: |
マイ?
なんで島の人間が? いや、異物? だとしたら……この感じは……どういうことだ? |
Mai? |
シエル
<size=140%>逃げてください!!!</size> |
Ciel |
マイ?
……まあいいか、なんでも。 邪魔だし、排除しておこう。 |
Mai? |
マイ?
なんで島の人間が? いや、異物? だとしたら……この感じは……どういうことだ? |
Mai? |
マイ?
……え? |
Mai? |
シエル
……!! |
Ciel |
1: なん……だ、今の……? |
1: |
マイ?
この、感覚……。まさか……。 |
Mai? |
シエル
今のは……。 |
Ciel |
マイ?
……事象干渉。 |
Mai? |
マイ?
どういうことだ? 誰が『此処』を |
Mai? |
シエル
退避します! 私につかまってください! |
Ciel |
カズマ
……で、気を失って……そのあとは? |
Kazuma |
1: 気がついたらシエルがいて |
1: |
カズマ
ああ、なるほど。 さっきの、僕と合流した場面に繋がるわけですか。 |
Kazuma |
カズマ
……なんだか、不思議な現象に遭遇してばかり いたんですね。 |
Kazuma |
カズマ
レッドセンチネルらしき人影に遭遇して、呼ばれるまま 中庭の建物に入ったら……地下の奇妙な部屋にたどり着いた。 |
Kazuma |
カズマ
で、気が付いたら今度は、突然森の中にいた……なんて。 |
Kazuma |
カズマ
というか、夢でもない限りありえないですよ。 中庭の建物って、聖堂でしょう? |
Kazuma |
カズマ
聖堂の地下に入ったなんて、 そんなこと……できるはずが……。 |
Kazuma |
カズマ
ああ、いえ。なんでもありません。 |
Kazuma |
カズマ
それより、今の話だとレイくんも シエルさんとは初対面で、彼女が何者かは知らないんですね。 |
Kazuma |
カズマ
それより、今の話だとレイさんも シエルさんとは初対面で、彼女が何者かは知らないんですね。 |
Kazuma |
カズマ
……まあ、実際何者かなんて、ここにいる全員が お互いにわかってないことなんでしょうが。 |
Kazuma |
シエル
お話中に失礼します。前方に港らしき照明を確認しました。 それと……。 |
Ciel |
カズマ
あ、本当ですね。あの辺りが港だと思います。 それじゃあ休憩はこのくらいにして、そろそろ行きま……。 |
Kazuma |
カズマ
ひえっ!? |
Kazuma |
シエル
それと、魔物が接近しています。 警戒してください。 |
Ciel |
カズマ
そ、そういうことは、 もう少し早く言っていただけませんか!? |
Kazuma |
シエル
戦闘行動に移行します。 レイさん、私から離れないようにしてください。 |
Ciel |
カズマ
ああ、戦闘は専門外なのに……! |
Kazuma |
第三節 断絶された島②/
Summary | |
---|---|
港に辿り着き、船と通信機を確認するシエル
達。不意に悲鳴が聞こえ、カズマが駆けつけ た時、少女トリニティが魔物に襲われていた。 |
カズマ
はぁ〜……なんとか港まで来られましたね。 |
Kazuma |
ラーベ
!! |
Raabe |
シエル
はい、ラーベさん。確認します。 ……周囲に敵性反応はありません。 |
Ciel |
シエル
見通しは悪いですが、辺りはとても静かですから、 魔物の接近があればわかりやすいと思います。 |
Ciel |
カズマ
それはなによりです。 では……そうですね。 |
Kazuma |
カズマ
レイくんは、 港に船が残っていないか見てきてもらえませんか。 |
Kazuma |
カズマ
レイさんは、 港に船が残っていないか見てきてもらえませんか。 |
Kazuma |
カズマ
ついでに誰かいるといいんですけど……。 |
Kazuma |
1: 船だね、わかった |
1: |
カズマ
僕はあの建物に行ってみます。 |
Kazuma |
カズマ
あそこは港に入る船の管理をしているところでして、 外部と通信機でやりとりをしているはずなんです。 |
Kazuma |
カズマ
もし通信機が動けば、外部に連絡ができるかもしれません。 |
Kazuma |
カズマ
確認が終わったら、またここで待ち合わせということで。 では、よろしくお願いします。 |
Kazuma |
シエル
ここが船着き場ですね。波止場があります。 港の規模としては中規模程度と思われます。 |
Ciel |
シエル
……ですが……。 |
Ciel |
ラーベ
…………。 |
Raabe |
1: 船がない…… |
1: |
シエル
はい。小型船1艇すら見当たりませんし、 海上にもそれらしいものは確認できません。 |
Ciel |
1: 船で脱出はできそうにないね |
1: |
カズマ
ああ、もう戻られていたんですね。 すみません、お待たせしました。 |
Kazuma |
カズマ
それで……船着き場のほうは、どうでしたか? |
Kazuma |
シエル
船は1艇もありませんでした。船影も見られません。 また、人がいる様子もありませんでした。 |
Ciel |
カズマ
……船なし、人なし、ですか……。 そうじゃないかなとは思っていたんですよね……。 |
Kazuma |
シエル
通信機はいかがでしたか? |
Ciel |
カズマ
お察しかとは思いますが……繋がりませんでした。 |
Kazuma |
カズマ
通信機自体はすぐに見つかりましたし、電源も入ったんですが、 いざ通信しようとするとどこにも繋がらないんです。 |
Kazuma |
カズマ
故障しているわけでもなさそうなのですが……。 |
Kazuma |
カズマ
やれやれ……こうなると、まるでこの島だけが 外の世界から切り離されてしまったかのようですね。 |
Kazuma |
シエル
…………。 |
Ciel |
カズマ
とはいえ、イシャナはそもそも、外界から認識できないように 結界が張ってあるはずですから、 |
Kazuma |
カズマ
それが影響して通信を阻んでいるのかもしれません。 |
Kazuma |
カズマ
結界を維持したまま外部と連絡を取るために、 なにか特別な手順が必要なのかもしれませんし……。 |
Kazuma |
カズマ
まずはその辺りを、確認できれば……。 |
Kazuma |
シエル
っ! |
Ciel |
ラーベ
!!! |
Raabe |
1: 今の…… |
1: |
シエル
はい。女性の悲鳴が聞こえました。 |
Ciel |
カズマ
今の声は、もしかして……行ってみましょう! |
Kazuma |
1: 僕も行くよ! |
1: |
1: 私も行くよ! |
1: |
シエル
待ってください、レイさん。 危険です。 |
Ciel |
シエル
聞こえた悲鳴から推察するに、 声の主は生命維持に関わる重大な危機に直面しています。 |
Ciel |
シエル
行けばレイさんの身に 同様の危険が降りかかる恐れがあります。 |
Ciel |
シエル
現場へ向かうことは、推奨できません。 |
Ciel |
1: そういうわけにはいかないよ |
1: |
シエル
あっ……待ってください! |
Ciel |
シエル
安全の確保が、生存のための重要事項のはずです。 それなのに……なぜ、危険だとわかっていて向かうのでしょう。 |
Ciel |
シエル
私には……理由がわかりません。 |
Ciel |
ラーベ
…………。 |
Raabe |
シエル
はい。レイさんを追走し、 想定される危険から守ります。 |
Ciel |
魔物
グゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ! |
Monster |
トリニティ
はぁ……はぁ……。倒しても、倒しても……。 一体どこから、こんなにたくさんの魔物が……? |
Trinity |
魔物
グアァァァァァァァァァ!! |
Monster |
トリニティ
きゃぁっ……だ、だめ……! |
Trinity |
カズマ
トリニティさん! |
Kazuma |
トリニティ
え……カズマさん!? どうして……。 |
Trinity |
カズマ
説明はあとにさせてください。 戦いながらなんて器用なこと、僕にはできませんからね……! |
Kazuma |
第三節 断絶された島③/
Summary | |
---|---|
倒しても、再び集まってくる魔物たち。カズ
マを追いかけてきたシエルたちは魔物を捕捉 すると、その排除を開始する。 |
|
魔物達を退け、トリニティと無事を喜び合う
カズマ達。しかし、彼らがいるイシャナ島は、 外界から切り離されているようだった。 |
カズマ
ひい……はぁ……と、とりあえず倒しましたか……? |
Kazuma |
カズマ
大丈夫ですか、トリニティさん? |
Kazuma |
トリニティ
は、はい……でも、カズマさん……! |
Trinity |
カズマ
へ? う、うわ! また集まってきた……! |
Kazuma |
シエル
敵性体を確認。 ……カズマ=クヴァル及び要救助者、計2名を確認。 |
Ciel |
1: カズマさん、大丈夫!? |
1: |
カズマ
な、なんとか。死ぬかと思いましたが……。 |
Kazuma |
トリニティ
レイさん……? あなたまで来てくださったなんて……。 |
Trinity |
シエル
周囲の敵性体の捕捉完了。対象の排除を開始します。 |
Ciel |
カズマ
これで、全部ですかね……? |
Kazuma |
シエル
……はい。周囲の警戒レベルの低下を確認。 敵性体の反応はありません。 |
Ciel |
カズマ
よかった……。 トリニティさんにも、お怪我はないみたいですね。 |
Kazuma |
トリニティ
は、はい……ええ、大丈夫です。どこも、なんともありません。 その前に、来てくださいましたから……。 |
Trinity |
トリニティ
でも、ごめ、ごめんなさい。 安心したら、気が緩んでしまって……。 |
Trinity |
カズマ
え、あ、わ、その、な、泣かないで、ください。 あの……。 |
Kazuma |
トリニティ
倒しても、倒してもきりがなくて…… いつまでも魔物が追いかけてくるんです……。 |
Trinity |
トリニティ
必死に逃げてきたのですけれど、もうこれ以上は 逃げられないと……。 |
Trinity |
トリニティ
誰にも会えないまま、魔物に食べられてしまうんだと 思っていたので……。 |
Trinity |
トリニティ
カズマさんやレイさんに、 お会いできて、よかった……。 |
Trinity |
1: |
1: |
1: |
1: |
トリニティ
はい……。 すみません……私ったら、取り乱してしまって〜。 |
Trinity |
トリニティ
本当に、カズマさんとレイさんが ご無事でよかったです〜。 |
Trinity |
ラーベ
…………。 |
Raabe |
シエル
そちらの方が『トリニティさん』ですか? |
Ciel |
カズマ
ああ……そうです。トリニティ=グラスフィールさん。 僕のクラスメイトで……。 |
Kazuma |
トリニティ
はじめまして。 トリニティ=グラスフィールと申します〜。 |
Trinity |
シエル
シエル=サルファーと申します。 |
Ciel |
トリニティ
よろしくお願いいたしますぅ。 |
Trinity |
トリニティ
シエルさん、とってもお強いのですね〜。 魔物を次から次へと倒して……あら? |
Trinity |
トリニティ
まぁ、大変ですぅ。 お礼を言うのがすっかり遅れてしまいましたぁ〜。 |
Trinity |
トリニティ
カズマさん、レイさん、それにシエルさん。 助けていただいて、ありがとうございます〜。 |
Trinity |
シエル
いえ。それが私の任務です。 |
Ciel |
シエル
ところで、先程の戦闘ですが。私達が到着するまでの間は、 カズマさんが戦っていらしたのですよね。 |
Ciel |
カズマ
え? ええ、まあ……。 どうやら僕にも倒せる程度の敵だったようです。幸運でした。 |
Kazuma |
シエル
そう……ですか。 |
Ciel |
カズマ
そうだ、トリニティさん。 落ち着かれたなら、うかがいたいのですが。 |
Kazuma |
カズマ
どうして、こんなところにいらしたんです? 街の外れなんて、今でなくても人気がないのに。 |
Kazuma |
トリニティ
はい……でも気になることがあって、 港を見に行ってきたところだったんですぅ。 |
Trinity |
カズマ
港を? トリニティさんもでしたか。 実は、僕たちも今見てきたところなんです。 |
Kazuma |
トリニティ
あらぁ、では、危うく入れ違いになるところだったんですねぇ。 お会いできて、本当によかったですぅ。 |
Trinity |
カズマ
そうですね。 でも……それなら、もう船がないことはご存知なんですね。 |
Kazuma |
トリニティ
はい……。それに、結界も。 |
Trinity |
シエル
結界? 外界から認識できないように張ってある、 とカズマさんが言っていたものですか? |
Ciel |
トリニティ
ええ……そうですぅ。 いつもは、島全体を覆うように張られているんです。 |
Trinity |
トリニティ
でも、それがなくなっていましたぁ。 |
Trinity |
カズマ
そんな、馬鹿な……! |
Kazuma |
トリニティ
港まで行って、直接目で見て確認しましたから、 間違いありません……。 |
Trinity |
カズマ
そんな……。あれ、でも、でしたら さっき通信が繋がらなかったのは……? |
Kazuma |
トリニティ
通信というと、港の通信装置のことですか? |
Trinity |
カズマ
ええ。それで外部に連絡が取れないかと思ったんですが、 試してみてもどこにも繋がらなかったんです。 |
Kazuma |
カズマ
結界があるせいかと思っていたんですが……。 どうやらそのお話だと、原因は違うようですね。 |
Kazuma |
トリニティ
……そうですね。通信が繋がらなかったのは、おそらく イシャナ自体が外界から遮断されているせいだと思いますぅ。 |
Trinity |
カズマ
え……? そ、それって、どういうことですか? 普段の結界がある状態とは違うんですか? |
Kazuma |
トリニティ
ええ〜。 普段のイシャナは、結界によって外界を遮断していますぅ。 |
Trinity |
トリニティ
ですが今は……外界、つまり世界そのものから 切り離されてしまっている状態なんだと思います。 |
Trinity |
トリニティ
……いつもは、ただこちらが姿を隠しているだけで、 その外に世界は存在していました。 |
Trinity |
トリニティ
でも今は、本来ならあるはずの イシャナの外の世界が確認できないんです……。 |
Trinity |
カズマ
そ、そんなことって、あり得るんですか? |
Kazuma |
トリニティ
これは、私も本で読んだだけなので、 詳しいことまでは知らないのですけれど……。 |
Trinity |
トリニティ
なんらかの原因で『イシャナ』という存在を 維持できなくなった。 |
Trinity |
トリニティ
もしくはそれに準じる事象が発生した場合、 |
Trinity |
トリニティ
この島ごと別の次元に隔離、保護するシステムが あるらしいんですぅ。もしかしたら、今回の現象は……。 |
Trinity |
カズマ
そのシステムが関係しているかもしれない、 ってことですか……。 |
Kazuma |
シエル
島ごと別の次元に隔離するなど、 容易なことではありません。 |
Ciel |
シエル
なぜそうまでして、 この島を外界から隠す必要があるのですか? |
Ciel |
カズマ
ああ、なんでもイシャナが抱える『魔術』についての 技術や知識を、正しく保存するためだそうですよ。 |
Kazuma |
カズマ
そのために、外部からの来訪者は厳重にチェックされ、 島から出るときも様々な手続きが必要なんです。 |
Kazuma |
カズマ
……とは、聞きますけど。僕がこの島に来たときは、 それほど厳重なチェックを受けた記憶はないんですけどね……。 |
Kazuma |
1: 僕にもないな…… |
1: |
カズマ
ですよねぇ。だから島の管理が厳重という話を、 あまり信用してなかったんですけど。 |
Kazuma |
カズマ
船じゃないですか? それ以外の方法では島に入れませんし。 だけど……。 |
Kazuma |
1: 私にもないな…… |
1: |
カズマ
ですよねぇ。だから島の管理が厳重という話を、 あまり信用してなかったんですけど。 |
Kazuma |
カズマ
船じゃないですか? それ以外の方法では島に入れませんし。 だけど……。 |
Kazuma |
カズマ
まさかその島ごと隔離するなんて…… 思いもしませんでしたよ。 |
Kazuma |
シエル
隔離システムは、イシャナがなんらかの危険に 晒されたから作動した、と考えていいのでしょうか? |
Ciel |
トリニティ
たぶんそうだと、思いますぅ。すみません、私も厳密な 動作条件までは知らなくて……。 |
Trinity |
カズマ
あ、でも、だとしたらですよ。危険がなくなれば、 この状態は解除されるってことです……よね? |
Kazuma |
トリニティ
そうだと思いますぅ。 |
Trinity |
カズマ
なんだ、じゃあ我々はこのまま待っているだけで 事態は解決されるわけですか。 |
Kazuma |
トリニティ
おそらくは……けれどイシャナが安全だと判断するまで、 どれくらいの時間がかかるのか、想像もつきません。 |
Trinity |
トリニティ
1年かもしれませんし…… 10年や……100年以上、必要なのかもしれません。 |
Trinity |
カズマ
ひ……100年……。 |
Kazuma |
1: 100年はさすがに待てない…… |
1: |
シエル
問題は空間の遮断、 あるいは隔離そのものだけではありません。 |
Ciel |
シエル
住人が見当たらない中、 ライフラインの確保ができるとも限りません。 |
Ciel |
シエル
それに、魔物は町の中にも出没しています……。 |
Ciel |
カズマ
……そうでした。『マイ』さんの存在もありますね。 |
Kazuma |
トリニティ
『マイさん』、ですか? |
Trinity |
カズマ
イシャナを徘徊している、異様に強い人です。 なぜか僕たちを殺そうとしているみたいで……。 |
Kazuma |
カズマ
このままだと、イシャナが世界に戻るより 僕たちが彼女に始末されるほうが早いでしょうね……。 |
Kazuma |
カズマ
どうにか、システムとやらを 解除する方法はないんですかね? |
Kazuma |
カズマ
一度元に戻ってもらって、僕たちが脱出してから また別次元に隔離されてもらうとか。 |
Kazuma |
トリニティ
ど、どうでしょう、わかりません〜。できたとしても、 一時的にとはいえ解除なんてしていいのかどうか……。 |
Trinity |
トリニティ
だって、その必要があるから、島は今こういう状態に なっているんでしょうから……。 |
Trinity |
カズマ
イシャナを大事に思うお気持ちはわかります。 でも僕は、ここと心中なんてできませんよ。 |
Kazuma |
カズマ
システムそのものを破壊しようってわけじゃないんです。 |
Kazuma |
カズマ
解除方法があるのかどうかだけでも、 調べてみる価値はあるんじゃないでしょうか? |
Kazuma |
トリニティ
……そう、ですね。そうですよね。 このままじゃ、みんな……助からないかもしれないですもんね。 |
Trinity |
トリニティ
でしたら大図書館に行きましょう。 私がイシャナのシステムを知ったのも、大図書館でした。 |
Trinity |
トリニティ
解除方法には辿り着けなくても 手がかりくらいは見つけられるかもしれません。 |
Trinity |
カズマ
ええ。 レイくん、それでいいですか? |
Kazuma |
1: 僕も行きたいです |
1: |
カズマ
ええ。 レイさん、それでいいですか? |
Kazuma |
1: 私も行きたいです |
1: |
シエル
状況の進展に必要な行動だと思います。 即座に身の危険に繋がる可能性も低いでしょう。 |
Ciel |
シエル
向かわれることに私も賛成です。 ですが私も同行させてください。 |
Ciel |
カズマ
ではみんなで行きましょう。 大図書館は学園の中ですから、街を通り抜けて……。 |
Kazuma |
シエル
それは危険です。街中には敵性反応が多数確認できます。 通り抜けようとすれば、戦闘はまぬがれないかと思います。 |
Ciel |
カズマ
それじゃあ……どうやって学園に向かったら いいでしょうね……。 |
Kazuma |
トリニティ
あ……でしたら。確か……えっと、こちらへ。 |
Trinity |
第4節 地下道を抜けて①/
Summary | |
---|---|
事態解決の糸口を得るべく、シエルたちは、
魔道学園の大図書館を目指し、イシャナの地 下道を進む。 |
カズマ
地下通路ですか……。 よくこんな場所をご存知でしたね、トリニティさん。 |
Kazuma |
トリニティ
私も、コノエに教えてもらうまでは知りませんでしたぁ。 一度だけ、こっそり中を覗きに来て……それ以来ですねぇ。 |
Trinity |
トリニティ
魔術で明かりは作りましたけど、 暗いので足元には気を付けてくださいね〜。 |
Trinity |
シエル
はい、わかりました。 レイさんも、どうぞ気を付けてください。 |
Ciel |
トリニティ
お優しいですね、シエルさん。 おふたりはご友人なのですか? |
Trinity |
1: 知り合い……というわけではないです |
1: |
トリニティ
まぁ、そうなんですかぁ? とてもそうは見えませんでした。仲が良さそうです。 |
Trinity |
トリニティ
そういえばシエルさんのお洋服は、イシャナの制服では ありませんね。外部からいらしたのですか? |
Trinity |
シエル
はい、私は学生ではありません。 御剣機関に所属しています。 |
Ciel |
トリニティ
御剣機関……? どこかで、聞いたことがあるような……。 |
Trinity |
シエル
この島から検出された異常反応の調査、 並びに、事態の解決方法を探ることが私の目的です。 |
Ciel |
カズマ
異常な反応というのは、 この状況を予知……したものだったんですかね? |
Kazuma |
シエル
というより、この事象そのものだと思います。 |
Ciel |
トリニティ
反応が検出された……ですか。すみません、シエルさん。 それはどなたが確認されたのか、教えていただけませんか? |
Trinity |
シエル
はい。 反応を観測したのは、フガクのタカマガ……。 |
Ciel |
シエル
はウっッ! |
Ciel |
ラーベ
!!!!、!!!! |
Raabe |
トリニティ
だ、大丈夫ですかぁ〜? とても凄い音がしましたけれど……ゴシュッ……みたいな。 |
Trinity |
シエル
も……問題ありません。それと、すみません。 私の説明ではご理解いただけないかと思います。 |
Ciel |
シエル
調査に赴くまでの経緯や、調査方法については、 疑問に思われるでしょうが……。 |
Ciel |
シエル
私たちは、皆さんを異常現象から解放するために来ました。 それだけは、間違いのないことです。 |
Ciel |
カズマ
解放……ですか。 |
Kazuma |
シエル
……と、上司が申しております。 |
Ciel |
ラーベ
〜〜〜〜〜!! |
Raabe |
シエル
……今のは余計でしたか? すみません。 |
Ciel |
トリニティ
このおかしな状況から、私たちを解放……つまり 助けようとしてくださっているのですよね。 |
Trinity |
トリニティ
それはとても、頼もしいですぅ。 来てくださって、ありがとうございます〜。 |
Trinity |
トリニティ
シエルさんがここへいらっしゃるまでの経緯は、 気になりますけど……複雑なご事情があるのでしょうね。 |
Trinity |
トリニティ
もし話してもいいと思われたら、 少しでも聞かせてもらえたら嬉しいですぅ。 |
Trinity |
トリニティ
島の外のお話、ちょっと興味があります。 |
Trinity |
シエル
はい。可能でしたら、そのようにいたします。 |
Ciel |
カズマ
これまでの経緯といえば…… トリニティさんはあのあと、どうしてたんですか? |
Kazuma |
カズマ
僕やレイくんは、気が付いたらそれぞれ 誰もいない森の中にいた……って感じだったんですけども。 |
Kazuma |
カズマ
僕やレイさんは、気が付いたらそれぞれ 誰もいない森の中にいた……って感じだったんですけども。 |
Kazuma |
トリニティ
まあ……おふたりもなんですねぇ〜。 私も、いつの間にか森で倒れていまして〜。 |
Trinity |
トリニティ
……そのときにはもう、 イシャナには誰もいなくなっていたと思いますぅ。 |
Trinity |
トリニティ
カズマさんとレイさんは、 目を覚ましたときからご一緒だったのですかぁ? |
Trinity |
カズマ
……その辺りも含めて、 僕たちのこれまでの状況をお話しておきましょうか。 |
Kazuma |
カズマ
よかったらそのあと、トリニティさんの状況が どんなだったのかも、聞かせてもらえませんか。 |
Kazuma |
カズマ
自分以外の視点での情報があると、欠けている部分が 補足できて、視野が広がると思うので。 |
Kazuma |
トリニティ
ええ、もちろん。 |
Trinity |
カズマ
それじゃあ、まずレイくんから……。 |
Kazuma |
カズマ
それじゃあ、まずレイさんから……。 |
Kazuma |
トリニティ
……そうだったんですね。森や港や……私も近くにいたはず なのに、おふたりにちっとも気が付かなかったなんて。 |
Trinity |
トリニティ
それにレイさんは、気を失う前、 とても不思議な体験をされたのですね。 |
Trinity |
カズマ
トリニティさんは、どうでしたか? なにか不思議な体験をしたりはしませんでしたか? |
Kazuma |
トリニティ
私は……それほど変わったことはなかったと思います。 思い出しながら、順を追ってお話しますね。 |
Trinity |
シエル
待ってください。先ほどの敵性体と同一の反応が接近中です。 |
Ciel |
トリニティ
魔物……こんなところにもですか? |
Trinity |
シエル
通路の奥からです。排除します。 |
Ciel |
カズマ
ひぃぃ……っ、ぼ、僕は戦闘は苦手なので…… よろしくお願いします、シエルさん……! |
Kazuma |
トリニティ
わ、私も、お手伝いします! |
Trinity |
第4節 地下道を抜けて②/
Summary | |
---|---|
シエルに促され、今に至るまでを回想するト
リニティ。友人コノエの工房を訪ねたはずの 彼女には、記憶の断絶があるようだった。 |
シエル
敵性体の排除を完了しました。 現在、周囲に魔物の反応はありません。 |
Ciel |
トリニティ
シエルさん、本当にお強いですねぇ〜。 すごいです。 |
Trinity |
カズマ
そうなんですよ。彼女のおかげで、僕も レイくんも無事でいられたんだと思います。 |
Kazuma |
カズマ
そうなんですよ。彼女のおかげで、僕も レイさんも無事でいられたんだと思います。 |
Kazuma |
1: いなかったら魔物に食べられてたかも…… |
1: |
シエル
レイさんの護衛は、私の最優先事項ですから 私が戦うのは当然です。 |
Ciel |
トリニティ
ごえい? |
Trinity |
シエル
それより、お話が戦闘で中断されてしまいました。 状況確認の再開を、お願いします。 |
Ciel |
トリニティ
あ、ええ、そうでしたねぇ〜。失礼しましたぁ。 |
Trinity |
トリニティ
では……廊下でレイさんと 別れたところから、お話しますねぇ。 |
Trinity |
トリニティ
あのあと私とカズマさんは、 校内にある友人の工房に行きましたぁ。 |
Trinity |
トリニティ
レイさんとカズマさんのご好意で、 たっぷり手伝っていただけることになりましたからぁ、 |
Trinity |
トリニティ
せっかくなので、あれこれお手伝いいただこうと 思っていたのですけれど……。 |
Trinity |
トリニティ
……駄目、ですねぇ……。 |
Trinity |
カズマ
やっぱり、駄目ですか。 |
Kazuma |
トリニティ
はい〜。 たぶんコノエが自分で封印しちゃったんだと思いますぅ。 |
Trinity |
トリニティ
あの子、封印をほどこすのも鍵をかけるのも、 労力としてあまり変わらないでしょうから……。 |
Trinity |
カズマ
だからって、ただの引き出しに こんな厳重な封印ほどこしますか? |
Kazuma |
カズマ
しかも、その中身を人が使うとわかっているはずなのに……。 |
Kazuma |
トリニティ
そういうところがありますからねぇ〜。 そそっかしいんです、案外。 |
Trinity |
カズマ
そそっかしいで済む話じゃないですよ、間違えれば即死級の 防御術式とか、ありえないですから! |
Kazuma |
トリニティ
コノエに解除コードを教えてもらってきますねぇ〜。 すぐに戻りますから、待っていてください〜。 |
Trinity |
カズマ
へ? ト、トリニティさん!? ……それまで僕、ここで待ってるんですか……? |
Kazuma |
カズマ
……絶対になににも触らないでおこう。 |
Kazuma |
トリニティ
(確か聖堂にいるはず…… 列聖式の準備をしているのでしょうかぁ) |
Trinity |
トリニティ
(それにしては、静かですけれど……) |
Trinity |
トリニティ
失礼いたしますぅ。あ、コノエ〜、 ちょっとお願いしたいことがあるのですが……。 |
Trinity |
トリニティ
確かにコノエを呼んだところまでは覚えているのですけれど、 その直後からまったく記憶がなくて……。 |
Trinity |
トリニティ
ふと目を覚ましたら、 森にいたんですぅ。 |
Trinity |
カズマ
…………。 |
Kazuma |
トリニティ
カズマさん? どうされましたか〜? 難しいお顔をなさっていますけれど……。 |
Trinity |
カズマ
いや……その。 トリニティさんがコノエさんを呼びに行かれた少し後……。 |
Kazuma |
カズマ
すごく……恐ろしいものを見たような気がするんです……。 でも、いざそれを思い出そうとすると、思い出せないんですよ。 |
Kazuma |
シエル
恐ろしいもの……ですか? |
Ciel |
カズマ
あ、すみません。倒れている間に見た夢かもしれませんね……。 気にしないでください。 |
Kazuma |
カズマ
それより、トリニティさん。 聖堂に入られたんですね? |
Kazuma |
トリニティ
ええ。今日の放課後は聖堂にいるから、 なにかあれば呼んでと言われていたので〜。 |
Trinity |
トリニティ
もちろん、立入禁止区域には入っていませんよ〜。 |
Trinity |
カズマ
……聖堂に入ってすぐ、記憶が……意識がなくなった。 どうして意識がなくなったのかは、覚えていないんですよね? |
Kazuma |
トリニティ
はい。次に目を開けたときはもう、森の中でしたぁ。 |
Trinity |
カズマ
ちなみにコノエさんの姿は、見ましたか? |
Kazuma |
トリニティ
見た……と思います。いた、と思って声をかけましたから〜。 |
Trinity |
カズマ
そうですか……。 |
Kazuma |
トリニティ
なにか気になることがありましたか? |
Trinity |
カズマ
あるというか、ないというか……。 もうちょっと考えさせてください。 |
Kazuma |
カズマ
気にはなっているんですけど、まだ自分でも、 なにが気になっているのかはっきりしないので……。 |
Kazuma |
トリニティ
もちろん、待ちますとも。 お考えの役に立てそうでしたら、なんでも言ってくださいね〜。 |
Trinity |
シエル
私も、可能な範囲でお手伝いします。 |
Ciel |
ラーベ
……………。 |
Raabe |
カズマ
はは……どうも。 |
Kazuma |
カズマ
ところで、抜け道ってどこまで続いてるんですか? |
Kazuma |
トリニティ
もうすぐおしまいのはずです。 ええと……あ、ありました、出口のマーク。 |
Trinity |
トリニティ
ここを……こうして……。 |
Trinity |
シエル
壁が、階段と扉に変形しました。 これが魔法ですか……? |
Ciel |
トリニティ
はい。本来あるべき形へと戻す。 錬金術の応用です。では、地上へ上がりましょう〜。 |
Trinity |
第4節 地下道を抜けて③/
Summary | |
---|---|
地上に出て、学園近くの公園に至るシエルた
ち。記憶と違う公園の様相に違和感を抱くカ ズマだが、そこにも魔物が現れる。 |
|
気分を悪くしたカズマを案じたトリニティが
離れた隙に、カズマは、彼女の記憶が断絶す ることについて、懸念を抱く。 |
シエル
ここは……どこでしょうか。 イシャナの学園の敷地内ですか? |
Ciel |
トリニティ
いいえ。近くにある公園です〜。 |
Trinity |
トリニティ
学園の地下には、色々と魔術的な施設があったりするので…… 真下に通路は作られなかったそうですよ。 |
Trinity |
シエル
なるほど。 |
Ciel |
カズマ
……なんでしょう。 この公園、あんまりいい思い出がないような……。 |
Kazuma |
トリニティ
そうなんですかぁ? 綺麗で穏やかな公園だと思いますけれど〜。 |
Trinity |
カズマ
僕にはちっともそうは思えませんね。 今にも魔物かなにかに襲われそうな気がしますよ……。 |
Kazuma |
カズマ
それにここ……こんなに綺麗でしたっけ? もっとめちゃくちゃに破壊されていたような……。 |
Kazuma |
トリニティ
破壊? まさか、そんなことあるはずないですよぉ。 |
Trinity |
カズマ
…………。 |
Kazuma |
シエル
気になられますか? |
Ciel |
カズマ
ああ、いえ。いいんです。 早くここを抜けてしまいましょう。 |
Kazuma |
カズマ
……って、どうやらそう穏便にはいかないようですね……。 |
Kazuma |
シエル
カズマさんの予見の通りですね。 公園各所から、魔物がこちらに接近中です。 |
Ciel |
カズマ
そんな予見、当たっても嬉しくないんですけど……。 |
Kazuma |
トリニティ
こんな学園の近くにまで、魔物が現れるなんて。 通常のイシャナでは、絶対にあり得ないことですぅ。 |
Trinity |
シエル
公園を抜けるには、戦闘は避けられないようです。 迎撃します。レイさんは、私の後ろへ。 |
Ciel |
トリニティ
はぁ……なんとか撃退できましたが……。 学園の退魔防衛機能は働いていないようですね……。 |
Trinity |
カズマ
ええ……ですが、その、すみません。 ちょっと休ませてもらってもいいですか? |
Kazuma |
シエル
なにか問題ですか? |
Ciel |
トリニティ
まさか! 今の戦いで怪我をされましたか? 大変ですぅ、すぐに手当てを……。 |
Trinity |
カズマ
ああいや、怪我とかは大丈夫です。 ただちょっと……気分が悪くて。 |
Kazuma |
カズマ
えーと、申し訳ないんですけど、 水とかどこかにないですかね……? |
Kazuma |
トリニティ
お水ですね。確か、表通りにお店が……。 |
Trinity |
トリニティ
いただいてきますから、 待っていてくださいね、カズマさん……! |
Trinity |
カズマ
すみません。ありがとうございます……。 |
Kazuma |
カズマ
…………。 |
Kazuma |
1: 具合、大丈夫……? |
1: |
カズマ
ああ、全然大丈夫です。なにも問題ありませんから。 |
Kazuma |
カズマ
それに彼女のことも心配いりませんよ。 そうは見えないでしょうけど、彼女は僕の数倍は強いですから。 |
Kazuma |
カズマ
なにかあったら、声を上げてくれますよ。 それに彼女はああ見えて、かなりの実力者ですから。 |
Kazuma |
カズマ
そうは見えないでしょうけど、 彼女は僕の数倍は強いですよ。 |
Kazuma |
カズマ
それよりも、レイくん。 あなたに聞きたいことがあるんです。 |
Kazuma |
カズマ
それよりも、レイさん。 あなたに聞きたいことがあるんです。 |
Kazuma |
カズマ
このおかしなイシャナで目を覚ます前……。 教員室に向かっているとき、 |
Kazuma |
カズマ
あなたは確か、聖堂に入って行くトリニティさんを見た、 と言っていましたよね? |
Kazuma |
1: 校舎の廊下から見たよ |
1: |
カズマ
そのあと、あなたもまた聖堂に入った……ですよね? |
Kazuma |
シエル
確かそのように、お話されていました。 |
Ciel |
カズマ
でも、レイくんが行ったとき、 聖堂には誰もいなかった。トリニティさんも、コノエさんも。 |
Kazuma |
カズマ
でも、レイさんが行ったとき、 聖堂には誰もいなかった。トリニティさんも、コノエさんも。 |
Kazuma |
カズマ
……そうですよね? |
Kazuma |
1: そういえば…… |
1: |
カズマ
念の為うかがいますが、争った形跡や、 争いを連想させるような痕跡はありませんでしたか? |
Kazuma |
カズマ
それから……聖堂は、壊れてはいませんでしたか? |
Kazuma |
1: そんなものはなかったと思う |
1: |
カズマ
……そうですか……。 |
Kazuma |
シエル
疑問ですか? |
Ciel |
カズマ
そう……ですね。トリニティさんは聖堂に行った直後に、 なんらかの理由で意識を失った。あるいは記憶が途切れた。 |
Kazuma |
カズマ
自然と記憶が途切れるはずはありません。 なにかあったから、途切れたんです。 |
Kazuma |
カズマ
ですから聖堂には、トリニティさんが記憶を途切れさせるに 足る『なにか』があったはずなんです。 |
Kazuma |
カズマ
なのにレイくんは、 その『なにか』と遭遇していない。 |
Kazuma |
カズマ
なのにレイさんは、 その『なにか』と遭遇していない。 |
Kazuma |
カズマ
それどころか、おそらく意識を失って倒れているだろう トリニティさんを見てもいない。 |
Kazuma |
カズマ
……ふたりが聖堂に入ったのは同時ではありませんから、 その間にすれ違った可能性はあります。 |
Kazuma |
カズマ
でも誰にも会わなかったうえに、 痕跡すらなかったなんて……なんだか妙じゃないですか。 |
Kazuma |
シエル
妙……ですね。 時系列が合っていないように思います。 |
Ciel |
カズマ
彼女……トリニティさんは、 |
Kazuma |
カズマ
コノエ=マーキュリーさんの次は、 彼女が十聖ではとも言われていたんです。 |
Kazuma |
カズマ
その彼女が、なんの因果もなく『意識を失う』、 『記憶が途切れる』なんてこと、まずありえない……。 |
Kazuma |
シエル
……確かに、そうですね。 |
Ciel |
トリニティ
お待たせしました〜。カズマさん、お水、ありましたぁ〜。 |
Trinity |
カズマ
あ……ああ、ありがとうございます。すみません、本当に。 |
Kazuma |
トリニティ
いいえ。お店の方がいなかったので、 お金と一緒にメモも置いてきました。 |
Trinity |
トリニティ
むせるといけませんから、ゆっくり飲んでくださいね〜。 |
Trinity |
カズマ
……ありがとうございます。もう大丈夫そうです。 |
Kazuma |
トリニティ
それはよかったですけれど……本当に大丈夫ですか? ご無理はなさらないでくださいね〜。 |
Trinity |
カズマ
ちょっと立ちくらみしただけみたいです。 心配をおかけして、どうもすみませんでした。 |
Kazuma |
カズマ
シエルさんたちも、すっかり付き合わせてしまいましたね。 もう大丈夫ですから、行きましょうか。 |
Kazuma |
ラーベ
…………。 |
Raabe |
シエル
わかりました。もしまたなにか不調があったり…… あるいは、気にかかることがあれば、言ってください。 |
Ciel |
カズマ
ええ、そうします。 |
Kazuma |
第5節 大図書館①/
Summary | |
---|---|
ようやく魔道学園のエントランスに至るシエ
ルたち。そこにある大時計は、トリニティに だけ見えている時間が違っていた。 |
カズマ
はぁ〜……なんとかここまで来られましたね。 |
Kazuma |
カズマ
公園から学園までなんて、いつもならすぐなのに……。 あちこちから魔物が出てくるんですから……。 |
Kazuma |
シエル
私達の進行を妨害するかのような動きでした。 |
Ciel |
トリニティ
それは……魔物が学園を守っているということですか? |
Trinity |
シエル
わかりません。 ですが可能性は否定できません。 |
Ciel |
トリニティ
……そうですね。今のイシャナがどうなっているのかは、 まだなにもわかっていませんものね。 |
Trinity |
カズマ
じ、じゃあまさか、学園の中はすでに魔物でいっぱい…… とか、ありますか……? |
Kazuma |
シエル
その可能性を懸念しましたが、どうやらそうではないようです。 少なくとも現在、学園内から魔物の反応はありません。 |
Ciel |
カズマ
それを聞いて安心しました……。 魔物が集まってくる前に、大図書館に向かいましょう。 |
Kazuma |
カズマ
……それにしても……綺麗ですね、ここも。 |
Kazuma |
トリニティ
え? ええ……学園の正面エントランスですからねぇ。 とても綺麗なところだと思いますぅ。 |
Trinity |
カズマ
ああ、いえ、そうではなくて……。 ……いや、なんでもないんです。 |
Kazuma |
シエル
なにか気になりますか? レイさん。 先程から上のほうを見ているようですが……。 |
Ciel |
1: 大時計が…… |
1: |
カズマ
……ああ、大時計ですか。 |
Kazuma |
カズマ
レイくんと初めて会ったときにも、見ましたね。 確か、時計が動いたように見えたと言っていましたっけ。 |
Kazuma |
カズマ
レイさんと初めて会ったときにも、見ましたね。 確か、時計が動いたように見えたと言っていましたっけ。 |
Kazuma |
カズマ
あのときから時間が変わっていないのなら、 やっぱり壊れているんですねぇ。 |
Kazuma |
カズマ
もしかしたら修理されたのかとも思ったのですが。 |
Kazuma |
トリニティ
12時過ぎ、ですね。 いつからあの時計は、12時のままなのでしょう〜。 |
Trinity |
カズマ
え? 12時? |
Kazuma |
トリニティ
え? はい。あら、違いますか? |
Trinity |
1: |
1: |
シエル
はい。私も3時に見えます。 |
Ciel |
カズマ
実は……僕もです。 |
Kazuma |
トリニティ
まあ、本当ですかぁ? 眼鏡が歪んでいるのでしょうか〜? 困りました〜。 |
Trinity |
ラーベ
…………。 |
Raabe |
シエル
ここは見通しがいいです。長く留まるのは危険です。 移動を推奨します。 |
Ciel |
カズマ
そうですね。時計を見ていても仕方ないですし。 大図書館はこっちです。行きましょう。 |
Kazuma |
トリニティ
あ。あの〜……。 |
Trinity |
カズマ
はい? |
Kazuma |
トリニティ
その……大図書館には……。ええと……。 |
Trinity |
トリニティ
…………。 |
Trinity |
カズマ
行きましょう、トリニティさん。 |
Kazuma |
トリニティ
あ……は、はい〜。 |
Trinity |
第5節 大図書館②/
Summary | |
---|---|
大図書館に至るも、更なる手がかりを求め書
庫へ進むことに。トリニティが入り口を解錠 するも、警備用ゴーレムが立ちふさがる。 |
|
ゴーレムを倒すも、部外者であるシエルたち
の同行を懸念するトリニティ。カズマにさと されて、ようやくその同行に同意する。 |
カズマ
……外も中も、綺麗ですね。 |
Kazuma |
トリニティ
そうですね。掃除が行き届いていると思いますぅ。 |
Trinity |
シエル
ここが、イシャナの大図書館ですか。とても広いです。 それに、とてもたくさんの書物が集められているんですね。 |
Ciel |
トリニティ
ええ、そうです〜。古いものから新しいものまで、 様々な書物が保管されていますぅ。 |
Trinity |
トリニティ
魔術や歴史に関する書物が主ですが、 お料理の本やお魚の図鑑なんかもあるんですよ〜。 |
Trinity |
カズマ
ちょっとでも魔術に関わりそうなものなら 手当たり次第に、って感じですよね。 |
Kazuma |
カズマ
魔法使いの出てくる童話とか、小説なんかもあるみたいですし。 |
Kazuma |
シエル
魔術を守り伝える島の蔵書ですか。興味深いです。 |
Ciel |
トリニティ
シエルさん、ご本はお好きですか? 私もなんですぅ。 放課後はよくここに来て、色々と借りているんですよ〜。 |
Trinity |
トリニティ
調べ物がしたいときなんかは、本当に重宝します〜。 |
Trinity |
トリニティ
ふふ、そういえば今日も、 カズマさんとここで調べ物をしましたね。 |
Trinity |
トリニティ
正確には、私の調べ物を手伝ってもらっていたんですけれど〜。 |
Trinity |
カズマ
あれ、それって今日でしたっけ? |
Kazuma |
トリニティ
ええ、そうですよ〜。 レイさんを迎えに行かれる前まで。 |
Trinity |
カズマ
ああ……そうでしたっけ。すみません、なんだか記憶が曖昧で。 |
Kazuma |
カズマ
それより、今は必要な調べ物をしてしまいましょう。 |
Kazuma |
カズマ
トリニティさんが読んだ、イシャナを異次元に隔離させる システムについての記述は、どの本ですか? |
Kazuma |
トリニティ
はい、ちょっと待ってくださいね。ええと……確か……。 これ、だったかと思います〜。 |
Trinity |
カズマ
『十聖という礎』…… 十聖がこれまでイシャナに残してきた実績の本ですか。 |
Kazuma |
トリニティ
公的で正式な記録というより、十聖というすごい人たちの すごい伝説をまとめた本、といった感じなんですけれど。 |
Trinity |
トリニティ
その中で、少しだけ触れてあったんですぅ。 ……この辺りです。 |
Trinity |
シエル
……イシャナ創設期のお話のようですね。知識と技術を 守るために、イシャナを島ごと隠匿することが可能……。 |
Ciel |
カズマ
このころの十聖やイシャナの正確な記録が読みたいですね。 こういう、さらっとした内容でなく。 |
Kazuma |
トリニティ
そうですねぇ……。 となるとやっぱり『奥』に行ったほうがいいですよねぇ。 |
Trinity |
シエル
『奥』とは、なんですか? |
Ciel |
トリニティ
大図書館の奥に、通常閲覧禁止の書物が収められている 特別な書庫があるんです〜。 |
Trinity |
トリニティ
イシャナそのものにまつわる記録は、 すべてそこに保管されているので…… |
Trinity |
トリニティ
逆に言えば、原則として 『外』にはそういうものは置かれていないんですぅ。 |
Trinity |
シエル
『外』が、私達が今いるエリアですね。 |
Ciel |
カズマ
ええ、そうです。本来なら『奥』へは手続きがないと 入室出来ないんですが……今は非常事態ですからね。 |
Kazuma |
カズマ
ちょっと入らせてもらいましょうか。 トリニティさん、入り方、わかりますか? |
Kazuma |
トリニティ
え、ええ……わかりますよぉ。 ……こちらですぅ。 |
Trinity |
トリニティ
ここが入り口ですぅ。魔術で封印されているので、 まずはそれを解かないといけません。ええと……。 |
Trinity |
トリニティ
ここと、ここがこうなって…… こっちを外して、これも外して。それから……。 |
Trinity |
トリニティ
……はい。開きました〜。 |
Trinity |
カズマ
さすがですね。 僕にはなにがどうなっていたのか、さっぱりです。 |
Kazuma |
トリニティ
物の構造を解析するのは、大得意ですから〜。 |
Trinity |
トリニティ
……あ、誤解しないでくださいねぇ。 普段からこんなことは、していませんからね〜。 |
Trinity |
1: もちろん、わかってます |
1: |
トリニティ
まぁ、よかったです。 |
Trinity |
トリニティ
まぁ。信じてください〜。 |
Trinity |
シエル
トリニティさんは物の構造を把握するのが得意で、 けれど普段から解錠を行っているわけではない。理解しました。 |
Ciel |
トリニティ
はい。わかっていただけて、嬉しいです。 |
Trinity |
カズマ
はは……。ほら、行きましょう。入り口、開けますよ。 |
Kazuma |
トリニティ
あっ、待ってくださ……。 |
Trinity |
カズマ
<size=140%>ぐえっ。</size> |
Kazuma |
シエル
対象、出現。敵性体の反応を確認しました。 |
Ciel |
カズマ
な、な、なんですか、これは……!? |
Kazuma |
トリニティ
警備用のゴーレムですぅ。許可のない者が扉を開けて、 中に入ろうとすると発動してしまうんです。 |
Trinity |
トリニティ
危ないですので、気をつけてくださいねぇ〜。 |
Trinity |
カズマ
発動しちゃったあとに言われましても、 気をつけようがないんですがっ! |
Kazuma |
カズマ
というか、 トリニティさんどうしてそのことを知ってるんですか!? |
Kazuma |
トリニティ
だって、私が作った警備システムですから。 |
Trinity |
カズマ
次からは早めに言っていただけると、非常に助かります!! |
Kazuma |
シエル
対象の戦闘レベルの上昇を確認。 ……対処方法を指示してください。 |
Ciel |
トリニティ
すみません……動いてしまった以上、 倒さないと中には入れません。 |
Trinity |
1: だったら倒すしかないね |
1: |
シエル
了解です。戦闘態勢に移行、対象の排除を開始します。 |
Ciel |
カズマ
まさか図書館の中で、 戦闘をする日が来るとは思いませんでした……。 |
Kazuma |
トリニティ
みなさん、すごいですぅ〜。 こんなにあっさり倒されてしまうなんて……。 |
Trinity |
トリニティ
耐久テストもかなりしたんですけれど。 これは、頑張って改良しないといけませんねぇ〜。 |
Trinity |
カズマ
そ、それについての考察は、 イシャナを元の世界へ戻してからにしましょうか。 |
Kazuma |
トリニティ
はい。そう……ですね。 |
Trinity |
シエル
内部に動体反応はありません。 現時点では、危険はないようです。 |
Ciel |
カズマ
ええ……じゃあとりあえず手分けして……。 |
Kazuma |
トリニティ
あ、あ、あの! すみません、待ってください……! |
Trinity |
トリニティ
こんなことを突然言い出すのは、とても失礼だと わかっているのですが……。 |
Trinity |
トリニティ
ごめんなさい……。 |
Trinity |
トリニティ
シエルさん。イシャナの関係者ではないあなたを、 この先へは……お連れしたくありません。 |
Trinity |
カズマ
そんな……トリニティさん、なにを今更。 |
Kazuma |
シエル
理由をうかがってもよろしいでしょうか? |
Ciel |
トリニティ
ここは……イシャナにとって、とても大切な場所なんです。 |
Trinity |
トリニティ
古くから多くの魔術師たちが積み重ね、 守ってきた知識や技術が保管されています。 |
Trinity |
トリニティ
それこそ、島を異次元に隔離させてでも守りたいものが、 たくさんここにあるんです。 |
Trinity |
トリニティ
そこへ……そんな場所へ、申し訳ないですが素性の明らかでない 方をお連れするのは……ためらわれます……。 |
Trinity |
トリニティ
すみません。私、とても失礼なことを言っています。 |
Trinity |
トリニティ
だけど……私はまだ学生ですが、イシャナの魔術師です。 イシャナの『意義』を守らなくてはなりません……。 |
Trinity |
シエル
…………。 |
Ciel |
シエル
……申し訳ありませんが、私はレイさんを 守らなければなりません。 |
Ciel |
シエル
レイさんが内部に入られるのでしたら、 私もついていきます。 |
Ciel |
シエル
さもなければ……レイさんと共に、 ここでおふたりの調査終了を待っています。 |
Ciel |
トリニティ
そうですね、なら……。 |
Trinity |
カズマ
僕は、シエルさんには来てもらったほうがいいと思いますよ。 |
Kazuma |
トリニティ
か、カズマさん……? |
Trinity |
カズマ
こんな事態です。大図書館の奥であったとしても、 安全とは断言できません。 |
Kazuma |
カズマ
トリニティさんの知らない警備システムによって、 突然攻撃を受ける可能性だってあるわけです。 |
Kazuma |
カズマ
危険を察知する能力や、 戦闘能力に長けている人がいたほうが、安全ですよ。 |
Kazuma |
トリニティ
……ごもっともだと思いますぅ。 ですがここは……イシャナそのものです。 |
Trinity |
カズマ
イシャナに籍を置く者としては、トリニティさんの言い分が 正しいということはわかります。 |
Kazuma |
カズマ
ですが僕たちは今、そのイシャナの非常事態を強引に解除して 自分たちの生存を優先させようとしているところなんですよ。 |
Kazuma |
カズマ
……真面目なあなたには、心苦しいことかもしれませんが。 学園の規律にこだわっている場合ではないと思います。 |
Kazuma |
トリニティ
……それは……確かにそうですが……。 |
Trinity |
カズマ
それに、イシャナの学生か否かを基準にするのなら、 レイくんだって部外者になってしまいますよ。 |
Kazuma |
カズマ
レイくん。教員室に行く前に 気を失ったのなら、入学手続きはまだですよね? |
Kazuma |
カズマ
それに、イシャナの学生か否かを基準にするのなら、 レイさんだって部外者になってしまいますよ。 |
Kazuma |
カズマ
レイさん。教員室に行く前に 気を失ったのなら、入学手続きはまだですよね? |
Kazuma |
1: まだです |
1: |
カズマ
でしょう? ……トリニティ=グラスフィールさん。 イシャナの魔術師としての立場は理解できますが……。 |
Kazuma |
カズマ
そう頑なにされると、シエルさんを中に入れたくない 特別な理由でもあるのかと、邪推してしまいますよ。 |
Kazuma |
トリニティ
決して、そのようなことは……。 |
Trinity |
1: 入らないで、入り口で待ってますよ |
1: |
シエル
私もレイさんにならいます。 |
Ciel |
トリニティ
レイさん……シエルさん……。 |
Trinity |
カズマ
……いいえ、現実的ではありません。大図書館の蔵書は膨大です。 そして僕たちがここでのんびりできる保障はない。 |
Kazuma |
カズマ
トリニティさん。今はなにを優先するべきか、考えてください。 あなたなら……おわかりでしょう。 |
Kazuma |
シエル
……機密の漏えいが気がかりでしたら、 内部で知り得た情報は口外しないと約束します。 |
Ciel |
1: 僕も約束します |
1: |
1: 私も約束します |
1: |
トリニティ
おふたりとも……ありがとうございます。 |
Trinity |
トリニティ
わかりました。 私のわがままで、お時間をとらせてしまってすみません。 |
Trinity |
トリニティ
行きましょう……。 みんなが助かる方法を、みんなで探しましょう。 |
Trinity |
第5節 大図書館③/
Summary | |
---|---|
大図書館の書庫にてイシャナ島の別次元への
隔離が『窯』によるものらしいと突き止める。 窯があると思われる聖堂の地下へ向かう。 |
シエル
失礼します。 ……似た系統の本を探してきました。 |
Ciel |
シエル
いかがですか、レイさん。 有益な記述は見つかりましたか? |
Ciel |
1: まだなにも…… |
1: |
シエル
……ラーベさんが読まれているのですね。 |
Ciel |
シエル
レイさんは少し休憩されてはいかがでしょうか。 ラーベさんのサポートは、私が引き継ぎま……。 |
Ciel |
ラーベ
……、……! |
Raabe |
シエル
わ。なんですか、ラーベさん。 この本がどうかしたのですか? |
Ciel |
ラーベ
……………………。 |
Raabe |
シエル
……なるほど。わかりました。 |
Ciel |
カズマ
どうしたんです? なにかわかったんですか? |
Kazuma |
シエル
はい。イシャナ創設時の、 都市構造計画についての資料なのですが……。 |
Ciel |
シエル
島全体を覆う結界に代表されるような、 大規模な魔術の構想や仕様等が記載されています。 |
Ciel |
シエル
記述によると、どんな魔術的装置であっても 膨大な魔力源の確保が必要なのだそうです。 |
Ciel |
カズマ
それは……そうでしょうね。 |
Kazuma |
カズマ
発動そのものにも膨大な魔力が必要でしょうけど、 それを維持するための魔力はもっと膨大でしょうし。 |
Kazuma |
シエル
現状をみると、島を異次元に隔離させるシステムが 起動しているのは間違いないと思われます。 |
Ciel |
カズマ
つまりイシャナは何かしらの方法で、膨大で、しかも安定した 魔力の供給源を確保しているはずだ……と、言いたいんですね? |
Kazuma |
シエル
はい。 |
Ciel |
シエル
であれば、その供給源を止めてしまえば、 システム自体を維持できなくなる可能性が高いです。 |
Ciel |
カズマ
システムを強制的にダウンさせる、ってことですか……。 |
Kazuma |
1: かなり大胆な方法だけど…… |
1: |
カズマ
動力源を止めた途端、異次元に島ごと永遠に置き去り…… なんてことには、ならないですよね……? |
Kazuma |
シエル
それはわかりません。これはあくまで提案のひとつであり、 発見した情報のひとつにすぎません。 |
Ciel |
カズマ
な、なるほど。ですが……今のお話を踏まえると、 僕が見つけたこの記述の真実味が増しますね……。 |
Kazuma |
トリニティ
まあ。どんな内容ですか〜? |
Trinity |
カズマ
先程の、島の機能を維持するために必要な膨大な魔力を、 いかに補うか……という事についてなんですが。 |
Kazuma |
カズマ
……いや、 さすがにちょっと信じがたい話なんですけどね。 |
Kazuma |
カズマ
異次元の魔力を吸い上げて、島の動力として利用する……。 |
Kazuma |
カズマ
膨大な魔力資源で満たされた次元に直接、 島を接続するという仕組みです。 |
Kazuma |
カズマ
しかも、実際に完成させて、それを運用しているとか……。 |
Kazuma |
ラーベ
…………。 |
Raabe |
シエル
……それはおそらく『窯』についての記述だと思われます。 |
Ciel |
カズマ
『窯』……。前にシエルさんが言っていたものですね。 詳細不明、形状不明のナニカ。 |
Kazuma |
シエル
何故『窯』と呼称されているかは、不明です。 |
Ciel |
シエル
ですが、この世界……の外側には『境界』と呼ばれる…… 次元の狭間のような領域が存在しています。 |
Ciel |
シエル
その境界には、膨大な……それこそ人智の及ばない程の エネルギーが満ちていて……。 |
Ciel |
シエル
『窯』は、その境界へ接続するために必要な 装置のようなものなのだそうです。 |
Ciel |
シエル
ですから、この規模の島を覆うほどの結界を維持したり、 島ごと別次元へ転移したりする魔力源を確保するなら……。 |
Ciel |
シエル
『窯』を利用する以外には、考えにくいです。 |
Ciel |
シエル
……で、合っているでしょうか、ラーベさん? |
Ciel |
ラーベ
……(こくり)。 |
Raabe |
トリニティ
私は何年もイシャナで学んでいますが、 そんな装置の事は聞いたことがありません……。 |
Trinity |
トリニティ
シエルさんは、どうしてそのようなことをご存知なのですか? |
Trinity |
シエル
『神秘』に関する知識は、イシャナだけが独占している わけではありません。 |
Ciel |
シエル
イシャナが窯を所持しようとしていたことは、 御剣機関の記録にも残されています。 |
Ciel |
シエル
そして御剣機関は、イシャナに窯の危険性を 通達しているはずです。 |
Ciel |
シエル
その後、イシャナが実際に窯をどうしたのかまでは、 記録されていませんが……。 |
Ciel |
シエル
ここにある資料から察するに、 実際に完成させ運用しているようですね。 |
Ciel |
トリニティ
そんな……。では、それでは……。 |
Trinity |
カズマ
イシャナは危険性を指摘されながらも、 使用に踏み切った……ということになりますね。 |
Kazuma |
カズマ
……実際に『窯』なるものがあれば、の話ですが。 |
Kazuma |
トリニティ
……おそらく、あるのだと思います。 |
Trinity |
トリニティ
それにシエルさんがおっしゃっていることも…… きっと本当のことなのでしょう。 |
Trinity |
カズマ
何故ですか? |
Kazuma |
トリニティ
私の読んでいた本に……あ、ここです。見てください〜。 理論的なものかと思い、読み飛ばしていた箇所なのですが……。 |
Trinity |
トリニティ
イシャナの存続に関わる事象が発生した場合、 知識と技術の保護を優先し、島ごと別次元に隔離するシステム。 |
Trinity |
トリニティ
それは……『イシャナ』そのものが状況を判断するため、 起動にも状況判断にも魔術師は不要……と、ありますぅ。 |
Trinity |
トリニティ
魔術師は、己の中に蓄えた魔力を使って、魔法を扱います。 |
Trinity |
トリニティ
周囲のものから魔力を引き出すにしても、 そうするための技術が必要ですぅ。 |
Trinity |
トリニティ
魔術師という、魔力も、技術も存在しない状態で、 これほど大掛かりな魔法を扱うのであれば……。 |
Trinity |
トリニティ
通常では考えられないような、なにかしらのシステムや 装置が必要です。 |
Trinity |
トリニティ
それこそ、シエルさんがおっしゃる 『窯』のようなものが……。 |
Trinity |
カズマ
……なるほど。では現状、イシャナの隔離システムが 働いているとして、 |
Kazuma |
カズマ
そのシステムは、魔力資源が満ちた次元に島を接続している 『窯』が動かし、維持しているとしましょう。 |
Kazuma |
カズマ
まあ、ただその『窯』を止めれば元の世界に戻れるかどうかは、 結局不明なままなんですけどね……。 |
Kazuma |
カズマ
……そもそも根本的な疑問なんですけど。 |
Kazuma |
カズマ
この隔離システムはイシャナの存続に関わる危機的状況が 起こったときの、対抗措置なんですよね? |
Kazuma |
カズマ
じゃあその『危機的状況』ってなんなんですか? イシャナ自体が危機だと感じるようなことって、例えば……。 |
Kazuma |
カズマ
痛ッ……。 |
Kazuma |
トリニティ
カ、カズマさん、大丈夫ですか!? |
Trinity |
カズマ
あ……いえ、大丈夫です。 一瞬、急に頭痛がして。 |
Kazuma |
カズマ
なにか……思い出しそうになったんですけど。 なんだろう、わからなくなってしまいました……。 |
Kazuma |
カズマ
すみません、落ち着きがなくて。 |
Kazuma |
トリニティ
気にしないでください〜。 こんな状況です、誰だって、落ち着いてはいられませんよ。 |
Trinity |
トリニティ
それより、頭痛は大丈夫ですかぁ? ご無理なさらないでくださいね。 |
Trinity |
トリニティ
カズマさんにもしものことがあったら、私……。 心配ですぅ。カズマさんも、イシャナも。 |
Trinity |
トリニティ
他の方々やコノエたちのことも、すごく心配で……。 みんな、大丈夫なのでしょうか。 |
Trinity |
カズマ
え? あぁ、そうですね……心配……ですね。 |
Kazuma |
ラーベ
…………。 |
Raabe |
カズマ
で……『窯』の話に戻りますけど。この状況を打開する鍵が 『窯』なら、次はどこにあるのかを調べないと……ですよね。 |
Kazuma |
カズマ
トリニティさん、心当たりはありませんか? |
Kazuma |
トリニティ
そうですねぇ……う〜ん……。 |
Trinity |
1: もしかして…… |
1: |
トリニティ
聖堂……? |
Trinity |
カズマ
……あり得ない話ではありませんね。 |
Kazuma |
カズマ
魔道協会には、十聖しか知り得ない『機密』があると 聞いたことがあります。 |
Kazuma |
カズマ
イシャナ聖堂の地下は、十聖も聖冠式でしか 立ち入ることのできない聖域です。あそこなら……。 |
Kazuma |
トリニティ
窯の存在をほぼ完璧に隠匿することができますね……。 |
Trinity |
カズマ
ええ。僕達一般生徒はもちろん、魔道協会の重役だって 聖堂の地下には入れません。 |
Kazuma |
カズマ
そこになにがあるのかは、十聖以外は誰も知らない。 そして十聖は、聖堂になにがあるのかを誰にも知らせない。 |
Kazuma |
トリニティ
……ですが……だからこそ、あそこに立ち入ることが どんな意味を持つのか、カズマさんもご存知でしょう。 |
Trinity |
トリニティ
聖堂地下に立ち入ることは、重大な禁忌です。それを犯すと いうことは……相応の『罪』を負うということです……。 |
Trinity |
カズマ
それは平常時の話でしょう。この状況で罪を犯したとして、 一体『誰が』僕たちを罰するって言うんです? |
Kazuma |
トリニティ
それは、そうなのですけれど……。 本当に、いいのでしょうか……私、怖くて……。 |
Trinity |
シエル
……私はレイさんの判断に従います。 |
Ciel |
1: 行くだけ行ってみない? |
1: |
カズマ
レイくんもそう言ってますし。 とりあえず確認だけしてみませんか。 |
Kazuma |
カズマ
レイさんもそう言ってますし。 とりあえず確認だけしてみませんか。 |
Kazuma |
トリニティ
……わかりました。そうですよね、このままここにいても らちが明かないのですし……。 |
Trinity |
トリニティ
なにを優先するべきなのか考えるように、ついさっきも 言われたばかりなのに……ごめんなさい。 |
Trinity |
トリニティ
ですが、お願いします。 『窯』があるか、確認するだけにしましょう。 |
Trinity |
トリニティ
目的のものが見つからなければ、すぐに立ち去る。 どうか、そうさせてください……。 |
Trinity |
カズマ
ええ、もちろん。 僕だって、聖堂のあちこちを弄り回す勇気はありませんよ。 |
Kazuma |
トリニティ
……ふふ、そうですね。 |
Trinity |
トリニティ
…………。 |
Trinity |
トリニティ
こんな時に……コノエがいてくれたら……。 |
Trinity |
シエル
コノエさん。トリニティさんの状況説明で、何度かあがった 名称ですね。十聖のひとりだと認識しています。 |
Ciel |
トリニティ
ええ。 正確には、十聖になる準備を進めていたところですぅ。 |
Trinity |
トリニティ
明日には、十聖の九番目…… 『ナイン』とお呼びすることになっていました〜。 |
Trinity |
トリニティ
私の知る限り……知識、実力など全てにおいて、 最強と呼んで差し支えない魔術師です。 |
Trinity |
シエル
最強……ですか。 |
Ciel |
トリニティ
はい。 |
Trinity |
トリニティ
……でも、駄目ですね、私ったら。 こんな時にもあの子を頼ろうなんて。しっかりしないと。 |
Trinity |
シエル
…………。 |
Ciel |
トリニティ
では、行きましょうか。まずは中庭に出ましょう〜。 聖堂へは……そこから行くのが近いです。 |
Trinity |
第6節 世界の仕組み①/
Summary | |
---|---|
道中、シエルはこの世界の異常を解決するた
め、窯を破壊することをカズマたちに告げる。 だがトリニティには反対されてしまう。 |
シエル
向こうに見えるのが、聖堂ですか? |
Ciel |
カズマ
ええ、そうです。学園やそれを取り仕切る魔道協会が 儀式や集会なんかを行うときに使われています。 |
Kazuma |
カズマ
建物の地上階は僕たち学生も度々使いますが、地下へは……。 |
Kazuma |
トリニティ
…………。 |
Trinity |
カズマ
浮かない顔ですね……。 やっぱり、抵抗がありますか? |
Kazuma |
トリニティ
それは……はい。聖堂の地下は決して立ち入ってはならないと 言われてきましたから。 |
Trinity |
トリニティ
そこへ踏み込むには、少し、 勇気がいるみたいです。 |
Trinity |
トリニティ
だからなのか、余計なことも 色々と考えてしまって……。 |
Trinity |
カズマ
本当なら、トリニティさんが『十聖』になってから 入りたかったですか? |
Kazuma |
トリニティ
い、いえ、そんな! 私が十聖なんて……ありえませんよ。 |
Trinity |
トリニティ
十聖なんて……『人』には重すぎる称号です……。 |
Trinity |
シエル
重すぎる……ですか? |
Ciel |
トリニティ
あ、ごめんなさい、気にしないでください〜。 |
Trinity |
トリニティ
ただ、漠然と……その、不安に思っているだけです。 『窯』なんてものが本当にあるのか、とか……。 |
Trinity |
トリニティ
仮に、あったとしても、 それをどうしたらいいのかなぁとか、そんなことを〜。 |
Trinity |
カズマ
確かにそうですよねぇ……。 その『どうしたらいいのか』は問題ですよね。 |
Kazuma |
カズマ
この状況を作り出している要因が その『窯』と呼ばれるなにかしらであるとしてですよ、 |
Kazuma |
カズマ
それを止めるにはどんな操作や手順が必要なのか…… 調べた資料の中には、それらしい記述はありませんでしたし。 |
Kazuma |
カズマ
もし『窯』を見つけられたとしても、 同時に止める方法も考えないと……。 |
Kazuma |
シエル
『窯』は停止させません。 破壊します。 |
Ciel |
トリニティ
え……? |
Trinity |
カズマ
は? |
Kazuma |
シエル
『窯』を破壊すれば、境界との接続は断たれます。 |
Ciel |
シエル
よって、この現象も停止し、本来あるべき世界へ戻れる……。 |
Ciel |
ラーベ
…………。 |
Raabe |
シエル
……ようです。 |
Ciel |
カズマ
そりゃあ、 壊してしまえば止められるでしょうけど……。 |
Kazuma |
カズマ
というか『窯』というのは、 そう簡単に破壊できるものなんですか? |
Kazuma |
シエル
『窯』は物理的な干渉を一切受け付けないと聞いています。 ですので『窯』を破壊することは不可能です。 |
Ciel |
カズマ
へ!? なら壊せないじゃないですか!? |
Kazuma |
シエル
はい。ですが私は『窯』を破壊する手段を持っています。 『窯』へ至ることさえできれば、破壊は可能です。 |
Ciel |
シエル
そもそも私の最終的な目的は、 『窯』の破壊です。 |
Ciel |
カズマ
そ、そう断言されても、 いささか反応に困るのですが……。 |
Kazuma |
カズマ
ん? でもなんだか引っかかる言い方ですね。 窯へ……至る? |
Kazuma |
シエル
『窯』のある場所に到着したとしても、 おそらくそこには『窯』が存在しないと思われます。 |
Ciel |
1: どういう意味? |
1: |
シエル
『窯』は間違いなく、この世界……イシャナにあります。 ですが、その姿は認識不可能……な、状況だと思います。 |
Ciel |
カズマ
あー……ええと、つまり……『窯』は なんらかの方法で隠されている……と、いうことですか? |
Kazuma |
シエル
その通りです。なので『窯』を出現させるためには、 観測者を特定しなければなりません。 |
Ciel |
トリニティ
観測者? ……誰かが『窯』を観測しているというのですか? |
Trinity |
1: 観測者って……聞き覚えがあるような |
1: |
トリニティ
私たちが言う『観測者』は……簡単に説明しますと、 |
Trinity |
トリニティ
世界に『これ』が『ある』と定義し、 確定させる存在のことを指しています。 |
Trinity |
トリニティ
『窯』を誰かが観測しているということは、その誰かは 『窯』の存在自体を左右できるということになります。 |
Trinity |
トリニティ
……でも、そんなことができる人など いるはずがないんです。 |
Trinity |
トリニティ
ただの人が事象を観測し、それを確立させるなんて…… 通常は不可能です。 |
Trinity |
トリニティ
なにより観測者というのは本来、 概念や理論上にのみ語られる存在ですから……。 |
Trinity |
カズマ
でも、なんとなくですけど、シエルさんの言っている『観測者』 というのは、僕たちが授業で聞くものとは少々違うようですね。 |
Kazuma |
カズマ
少なくとも…… もっと具体的な存在のように聞こえます。 |
Kazuma |
トリニティ
『観測者』……シエルさんがそうおっしゃる何者かによって 『窯』が認識されたとして……。 |
Trinity |
トリニティ
そうなったら、あなたは窯を破壊されるおつもりなんですよね? |
Trinity |
シエル
はい、そうです。 |
Ciel |
トリニティ
……どうにか、破壊しないですませることは できませんか? |
Trinity |
シエル
できません。 ……なぜ破壊したくないのですか? |
Ciel |
トリニティ
もし本当に『窯』があって、それがイシャナの動力源なら、 『窯』はイシャナにとって非常に重要なもののはずですぅ。 |
Trinity |
トリニティ
それを止めるならまだしも、破壊するだなんて…… 取り返しのつかないことです……。 |
Trinity |
トリニティ
イシャナに致命的なダメージを与えることだって、 考えられます。そんなこと……できません……。 |
Trinity |
カズマ
……確かに、取り返しのつかないことですね。 |
Kazuma |
カズマ
万が一これが、あなた方……ミツルギ機関でしたっけ? そちらの破壊工作であったなら……。 |
Kazuma |
カズマ
僕たちはまんまと嵌められて、 イシャナを失う可能性もある……と。 |
Kazuma |
1: 多分、それはないと思います |
1: |
1: 多分、それはないと思います |
1: |
カズマ
何故そう思うのか、うかがっても? |
Kazuma |
1: 僕たちを守る意味がない |
1: |
1: 私たちを守る意味がない |
1: |
シエル
信用していただき、ありがとうございます。 レイさん。 |
Ciel |
カズマ
うーん…… 確かに、シエルさんには度々助けられていますね。 |
Kazuma |
シエル
……もし私たちが、破壊行動を目的としてこのイシャナに 来ているとしたら、このような遠回しな行動はしません。 |
Ciel |
シエル
この場で速やかに皆さんを無力化し、目的を達成します。 |
Ciel |
シエル
トリニティさんはかなりの実力者であると認識していますが、 戦闘行動においては私のほうが性能は上です。 |
Ciel |
カズマ
……戦力として、僕は頭数にすら入っていないようですね。 |
Kazuma |
トリニティ
おっしゃりたいことは、わかります。 私も、たくさんシエルさんには助けていただきましたし……。 |
Trinity |
トリニティ
でもだからといって、イシャナの重要設備の破壊に 同意するのは……難しいことですよ……。 |
Trinity |
シエル
…………。 |
Ciel |
カズマ
ま、まあまあ、ここで対立していても なにも始まりませんよ。 |
Kazuma |
カズマ
破壊するもしないも、まず窯を見つけてから考えませんか? 窯が本当にあると確定したわけでもないんですから。 |
Kazuma |
トリニティ
そう……ですね。 |
Trinity |
シエル
了解しました。 |
Ciel |
シエル
なお、現状のイシャナにある窯を破壊しても『本来あるべき』 イシャナに影響はありません。心配は無用です。 |
Ciel |
トリニティ
本来あるべき? あの〜……シエルさんは、 一体なんのお話をされているのですか? |
Trinity |
シエル
ここにいるはずの観測者が存在を決定づけているのは、 窯『だけ』ではありません。 |
Ciel |
シエル
観測者が観測しているのは、このイシャナ全体です。 |
Ciel |
トリニティ
…………。 |
Trinity |
カズマ
……正直なところ、また突飛なことを言い出したな この人は、と思っていますよ。 |
Kazuma |
カズマ
観測者がイシャナ全体を観測している、ですか? |
Kazuma |
カズマ
なら、僕達やこの島自体も、 誰かの認識、意思によって存在していると? |
Kazuma |
シエル
概ねは、そうです。 |
Ciel |
カズマ
概ね? |
Kazuma |
シエル
意思というよりは、願望……だと聞いています。 |
Ciel |
シエル
その願望により、今ある『この』イシャナは存在している。 と、いうことになります。 |
Ciel |
カズマ
全く理解できませんね。 |
Kazuma |
シエル
理解していただく必要はありません。 カズマさんが理解しなくても、現状に変化はありませんので。 |
Ciel |
カズマ
うっ…… そんな風に言われると……ちょっと気まずいですね。 |
Kazuma |
シエル
それに、正確に理解するのは難しい事項です。 ですので……。 |
Ciel |
シエル
すみません。お話は一旦中断いたします。 |
Ciel |
カズマ
え? ……うわぁっ!? |
Kazuma |
トリニティ
そんな……魔物が学園の中にまで 入ってくるなんて……! |
Trinity |
シエル
先程までは、気配はありませんでした。 突如出現したように思えます。 |
Ciel |
魔物
<size=135%>グアァァァァァァ!</size> |
Monster |
シエル
警戒してください。戦闘行動に移行します。 |
Ciel |
第6節 世界の仕組み②/
Summary | |
---|---|
観測者は、トリニティその人であった。彼女
もまた、皆のいる元の世界が良いと言い、出 現した窯へシエルたちと共に向かう。 |
シエル
……対象の排除を完了しました。 準警戒態勢へと移行します。 |
Ciel |
シエル
……検索。進行方向に複数の敵性反応があります。 |
Ciel |
ラーベ
…………。 |
Raabe |
トリニティ
まだ、学園の中に魔物がいるということですか? |
Trinity |
シエル
はい。 完全に進路を塞がれる前に、聖堂へ向かうことを推奨します。 |
Ciel |
トリニティ
なら無理せず、一度引いてから態勢を立て直したほうが……。 |
Trinity |
カズマ
僕はここで引いたらまずい気がします。 聖堂まで一気に駆け抜けましょう。 |
Kazuma |
1: 賛成です! |
1: |
シエル
了解です。 |
Ciel |
カズマ
走りますよ、トリニティさん! |
Kazuma |
トリニティ
え? あ、あわわ、待ってください、カズマさん!? |
Trinity |
1: つ、疲れた…… |
1: |
カズマ
ハァハァハァハァ……。 僕的には、一生分走った……気分です。 |
Kazuma |
トリニティ
はぁ………はい……私も……一生分……走った…… 気が……します……はぁ、はぁ……。 |
Trinity |
シエル
この扉……魔術的な処理が施されていますね。 これならすぐに破られる心配はないと思われますが……。 |
Ciel |
シエル
現状、学院内にいる魔物が全てこちらに押し寄せた場合、 いつまでもつかは保証しかねます。 |
Ciel |
トリニティ
すぅ……はぁ……。ならどうでしょうか。 この聖堂のすぐ近くに、コノエの工房があります〜。 |
Trinity |
トリニティ
コノエの工房は多分この学園……いえ、この島で最も強固な 結界に護られています。 |
Trinity |
トリニティ
まず破られることはないと思いますので、一旦そちらに 身を隠しませんか? |
Trinity |
カズマ
え? まあ、確かにコノエさんの工房は安全でしょうが……。 聖堂までやっと来たのに、ですか? |
Kazuma |
シエル
……聖堂……。すでにここは聖堂の内部なのですね。 |
Ciel |
カズマ
そうです。僕はあまり入ったことがないので、 案内はできませんけど。 |
Kazuma |
シエル
…………。 |
Ciel |
1: シエル? |
1: |
シエル
窯の気配を……感じません。 |
Ciel |
カズマ
ち、ちょっと、ここまできて 窯がないってことですか? |
Kazuma |
シエル
ですが、力の流れは感じます。 近くにあるのは間違いない……はずなのですが……。 |
Ciel |
カズマ
なんだか曖昧ですね。先程言っていた、 観測者とやらを見つけないと駄目ってことですか? |
Kazuma |
トリニティ
それなら、やはりコノエの工房に向かったほうが、 いいのではないですか? |
Trinity |
トリニティ
今のイシャナで誰かを闇雲に探し回るのは、 すごく危険な気がしますし……。そこで一度状況を……。 |
Trinity |
ラーベ
…………。 |
Raabe |
シエル
……了解しました。 |
Ciel |
トリニティ
そうですか、よかった。では早速……。 |
Trinity |
シエル
申し訳ありません。 トリニティさんの発言への了解ではありません。 |
Ciel |
シエル
このまま任務を遂行するよう指示を受けたので、 それに対する返答です。 |
Ciel |
シエル
どこにいても、魔物は異物である『私たち』を排除するべく、 押し寄せてくるでしょう。 |
Ciel |
1: やっぱり急がないと…… |
1: |
シエル
はい、やばいです。 |
Ciel |
トリニティ
だ、だったらなおのこと……。 |
Trinity |
シエル
なので、そろそろ真実を開示していただけませんか。 『カズマ=クヴァル』さん。 |
Ciel |
カズマ
……はい? |
Kazuma |
トリニティ
シエルさん……? なにをおっしゃっているんですか? |
Trinity |
シエル
言葉の通りです。 |
Ciel |
カズマ
意味がわかりませんね。 僕になにを開示しろと? |
Kazuma |
シエル
先程お話した通り、我々のいるイシャナは 観測者の願望により存在しています。 |
Ciel |
シエル
正確には、観測者の願望を元に事象が発生しているのですが。 |
Ciel |
シエル
極端に言えば、現状のイシャナは観測者の願望を 叶えている状態なのです。 |
Ciel |
カズマ
……そうなるでしょうね。 あなたの言うことが全て事実ならば。 |
Kazuma |
シエル
これは私の上司、ラーベさんからの指摘ですが。 |
Ciel |
シエル
カズマさんは街の中でお会いしてからここに至るまでの間、 一度も『他者』を心配しませんでした。 |
Ciel |
シエル
カズマさんとレイさんのお話の中には、 トリニティさん以外の登場人物こそいませんでしたが、 |
Ciel |
シエル
他者の存在は認識されていました。 |
Ciel |
シエル
レッドセンチネルと呼ばれる存在や、十聖、それにコノエさん という方、教員室にいるはずの教員などがそうです。 |
Ciel |
シエル
ですがこの無人のイシャナにおいて、カズマさんはそのうちの 誰も、心配することはありませんでした。 |
Ciel |
シエル
それよりも、ご自身の保身や、島からの脱出、 それに原因解明に対して意欲的でした。 |
Ciel |
カズマ
なんだか、僕が他人より自分のことを優先する、 非人道的な人のような言われ方ですね。 |
Kazuma |
シエル
非人道的であるかは私には判断できませんが、 カズマさんは本来、そういう人であったはずです。 |
Ciel |
トリニティ
そ、そんなことは……! |
Trinity |
カズマ
……いえいえ。そんなこと、ないとは言えませんよ。 少なくとも、他人と積極的に関わる人間ではありませんしね。 |
Kazuma |
シエル
それが悪いというわけではありません。重要なのは、 カズマさんが、今言った通りの行動をとっていたという点です。 |
Ciel |
カズマ
ああ……なるほど。 それで? |
Kazuma |
シエル
さらにアナタは、大図書館に私達を引き入れました。 しかも、イシャナの機密に関わる最奥にまで。 |
Ciel |
カズマ
何を言い出すのかと思えば……この状況ですよ? |
Kazuma |
カズマ
知り得た情報を、皆で知恵を出し合って 解決手段を模索するのは当たり前じゃないですか。 |
Kazuma |
シエル
ですがトリニティさんのおっしゃったように 魔道協会の性格を考えると、本来ならあり得ない禁忌です。 |
Ciel |
シエル
なのにカズマさんは、トリニティさんを説得してまで 私たちを招き入れ、 |
Ciel |
シエル
その結果、魔道協会の機密である『窯』の存在を 知ることができました。 |
Ciel |
シエル
そうされたのはおそらく、 どうしても知りたい事項があったからではないでしょうか。 |
Ciel |
カズマ
…………。 |
Kazuma |
シエル
カズマさんはずっと、なにかを知りたがっていました。 なにかを確認したがっていました。そのために動いていました。 |
Ciel |
シエル
アナタはなにが知りたかったのですか? なにを確認したかったのですか? |
Ciel |
カズマ
――ふ……ははっ、はははははは。 |
Kazuma |
カズマ
あーあ。そこまで言うのでしたら、 もう気が付いているのでしょう? |
Kazuma |
カズマ
なら、僕も認めるしかないじゃないですか。 ええ、そうですね。シエルさんのご指摘の通りですよ……。 |
Kazuma |
カズマ
……トリニティ=グラスフィールさん。 『観測者』はあなたですよ。 |
Kazuma |
トリニティ
……え? |
Trinity |
シエル
……窯の出現を確認しました。 |
Ciel |
1: ってことは…… |
1: |
シエル
はい。彼女が観測者です。 |
Ciel |
トリニティ
そ、そんな……そんなこと。私、知りません。 観測者なんて……。 |
Trinity |
シエル
いいえ。アナタはすでに、無意識的に 自分が観測者であると自覚しているはずです。 |
Ciel |
シエル
また窯の出現によって、アナタに窯からの力が 流れ込んでいることも確認できました。間違いありません。 |
Ciel |
トリニティ
…………。 |
Trinity |
カズマ
……観測者の話をシエルさんからうかがったときから、 そうではないかと考えていたんですよ。 |
Kazuma |
カズマ
だって……ここで会った人の中で、あなただけが 『このイシャナ』を生み出すことができるんですから。 |
Kazuma |
1: どういう意味ですか? |
1: |
カズマ
思い出してくださいよ、イシャナの街並みを。 家の並びはもちろん、細い路地、細かなレリーフ、 |
Kazuma |
カズマ
植えられた木々や小さな損傷に至るまで、 僕の知っているイシャナそのままです。 |
Kazuma |
カズマ
イシャナをこれだけ細部まで描き出すことは、つい先日転校して きたばかりのレイさんには不可能でしょう。 |
Kazuma |
カズマ
もちろん、外部からやってきたはずのシエルさんにも難しい。 あの『マイ』さんにもできないでしょうね。 |
Kazuma |
カズマ
なんとなくですが、彼女が世界にイシャナを作るとしたら、 |
Kazuma |
カズマ
道端の花や伝統あるレリーフなんてものを 気に留めるとは思えません。 |
Kazuma |
カズマ
残るは僕ですが……これは先ほど、シエルさんの言葉が 否定してくれましたからね。 |
Kazuma |
トリニティ
え……? |
Trinity |
カズマ
僕は他人と積極的に関わるような人物じゃない。 誰かを心配するような『お優しい』心も持ち合わせていません。 |
Kazuma |
カズマ
だからもし僕がイシャナを作って、そこから人が消えるとしたら、 中途半端に誰かだけ残したりしませんよ。 |
Kazuma |
カズマ
いや、いっそ初めから誰も残さないかもしれません。 |
Kazuma |
カズマ
そして誰より僕が、僕の知っている、そしてあなたの知っている カズマ=クヴァルであるはずがない。 |
Kazuma |
トリニティ
…………。 それは……そうかも、しれませんね……。 |
Trinity |
トリニティ
カズマさんはいつも、忘れてしまったご自分の過去を 気にされていました。 |
Trinity |
トリニティ
あなたが観測者だったなら……ずっと抱えていらしたその穴を、 埋めないはずがないですものね……。 |
Trinity |
カズマ
ええ。なんたって、こんなときでも探していたくらいですから。 自分が何者なのか。それから、ここはどこなのか……って。 |
Kazuma |
カズマ
……ね? 完璧なイシャナに、歪みのない僕を置ける人物は、 あなただけでしょう? |
Kazuma |
カズマ
僕がなくした記憶や、それについてどう思っているのかを 話したのは、あなただけなんですから。 |
Kazuma |
トリニティ
でも……ごめんなさい。未だにわからないんですぅ。 私が観測者だなんて、とても信じられません。 |
Trinity |
トリニティ
ここが私の願望から生まれたのなら、 どうして私はこんなイシャナにしてしまったんでしょう? |
Trinity |
トリニティ
魔物がいて、お友達はカズマさんしかいない、 こんな寂しくて閉ざされたイシャナを、 |
Trinity |
トリニティ
私は望んでいたというのでしょうか……? |
Trinity |
シエル
……その件についてですが。 現状この『場』は特殊な状況にあるようです。 |
Ciel |
シエル
イシャナの現状は、不完全とも言えます。 観測者の願望に、なんらかの干渉が働いた可能性があります。 |
Ciel |
トリニティ
干渉……ですか? |
Trinity |
ラーベ
…………………。 |
Raabe |
シエル
……原因は……不明ですが。 |
Ciel |
1: ??? |
1: |
カズマ
なるほど……だからですか。これは感覚的な話ですが…… トリニティさんはなんだかずっと、妙……でしたからね。 |
Kazuma |
カズマ
例えば、そう、学園の正面入り口にある大時計の前での ことがそうですよ。 |
Kazuma |
カズマ
僕やレイさん、シエルさんには 同じ時間が見えていたのに、 |
Kazuma |
カズマ
トリニティさんだけ違う時間が見えていました。 |
Kazuma |
カズマ
何故だかわからなかったのですが、あれはトリニティさんに 見えた時間がおかしかったのではなくて…… |
Kazuma |
カズマ
『僕たち』に見えた時間が、違っていたんですね。 |
Kazuma |
カズマ
大図書館でも、トリニティさんと僕の間では、 経過した日数の感覚が違っていました。 |
Kazuma |
カズマ
他にも、合流するまで、いた場所は近かったはずなのに お互いに戦闘の音を聞いていなかったり。 |
Kazuma |
カズマ
例の『マイ』さんに狙われなかったり。 |
Kazuma |
カズマ
……ずっと、トリニティさんだけが世界からズレているように 感じていましたが……。 |
Kazuma |
カズマ
トリニティさんが『観測者』なら、世界からズレていたのは、 僕たちのほうだったんでしょう。 |
Kazuma |
カズマ
そうなると、僕も……シエルさんの言う『異物』なのかも しれませんね。 |
Kazuma |
トリニティ
……異物……。 |
Trinity |
カズマ
これは僕の予想ですけれど、 本当はこの世界はもっとトリニティさんがいかにも望みそうな、 |
Kazuma |
カズマ
平和なイシャナだったのではないでしょうか。 |
Kazuma |
カズマ
だけどシエルさんの言うように、なんらかの影響があって おかしくなってしまった。 |
Kazuma |
カズマ
僕も本当はトリニティさんの世界にいたんだと思いますよ。 |
Kazuma |
カズマ
でも……今は世界が、 あなただけを取り残して消えようとしているかのようです。 |
Kazuma |
カズマ
どういうわけか、最後まで僕とレイさんは 残されたみたいですけど。 |
Kazuma |
トリニティ
……カズマさんが最後まで残っているのは……きっと、私が 望んだからだと思いますぅ。 |
Trinity |
カズマ
なにをですか? |
Kazuma |
トリニティ
あなたと……。 |
Trinity |
トリニティ
あなたと、ずっと友達でいたい……だとか。 あなたの力になりたい……だとか。 |
Trinity |
カズマ
それはまた……あなたは本当に『お優しい』んですね。 |
Kazuma |
トリニティ
違います、私……優しいんじゃありません。 これはもっと身勝手な……私の『願望』です。 |
Trinity |
トリニティ
でも……悲しいですね。私がこんな世界を…… こんな形を望んだということは……。 |
Trinity |
トリニティ
望まなければ、あなたとはこんな風にいられない、 ということでしょうから……。 |
Trinity |
カズマ
…………。 |
Kazuma |
トリニティ
すみません。……行きましょう。『窯』を確認しに。 |
Trinity |
カズマ
いいんですか? あなたが観測者なら、 ここはあなたの願望が生んだ世界のはずです。 |
Kazuma |
カズマ
それを……破壊することになるかもしれませんよ。 |
Kazuma |
トリニティ
だとしたら、私は愚かです。 思い描くだけでは、なにも形にはなりません。 |
Trinity |
トリニティ
仕組みを理解して、繋がりを構成し、 言葉や物質を組み合わせて、物は形作られるんです。 |
Trinity |
トリニティ
錬金術師でありながら、 その本分を見失ったままではいられません。 |
Trinity |
カズマ
そういうところ、実にあなたらしいです。 |
Kazuma |
トリニティ
それにカズマさんが、言っていました。 私だけが世界に取り残されているみたいだって。 |
Trinity |
トリニティ
そんなの、寂しいです。私、とても弱い人間ですから。 本当にひとりぼっちになる前に、どうしても戻りたいです。 |
Trinity |
トリニティ
あなたの……みんなのいる世界のほうがいいです。 |
Trinity |
シエル
では、聖堂の地下へ向かいましょう。 |
Ciel |
カズマ
はい。ではちゃっちゃと……。 |
Kazuma |
カズマ
ひえぇっ!? な……警備用ゴーレム!? なんでこんなところに? |
Kazuma |
トリニティ
わ、わかりません。普段ならこんな場所に、 理由もなく現れたりしないはずですが……。 |
Trinity |
ラーベ
…………! |
Raabe |
シエル
我々が地下へ行くのを、阻止しようとしているのかも しれません。 |
Ciel |
カズマ
阻止って、なぜです!? |
Kazuma |
シエル
おそらく、そこに『窯』があるからだと思われます。 |
Ciel |
1: こっちに向かってくるよ! |
1: |
カズマ
話し合いで解決は、難しそうですね。 仕方ありません……! |
Kazuma |
トリニティ
はい……私たちは、地下へ行かなくてはなりません。 そこを通していただきます! |
Trinity |
第7節 聖堂の地下①/
Summary | |
---|---|
聖堂の地下へ進むシエルたち。窯を守る魔物
たちが押し寄せ、不意に動けなくなったトリ ニティを守りながら、突破する。 |
シエル
……地下へ降りる階段や通路には、 本来は封印が施されていたのですね。 |
Ciel |
シエル
それもかなり強固なものが設置されていたようです。 |
Ciel |
トリニティ
聖堂は地下へ行くほど、 立ち入れる人が制限されていきます〜。 |
Trinity |
トリニティ
階層に相応しい人でなければ入れないよう、 封印されているのですけれど……。 |
Trinity |
トリニティ
それが消えてしまっているなんて。 これも私のせい……なのでしょうか。 |
Trinity |
シエル
カズマさんがおっしゃっていた、魔道協会の機密というのは、 聖堂の一番下にあるんでしたよね。 |
Ciel |
カズマ
ええ、そう聞いています。 噂ですけどね。 |
Kazuma |
トリニティ
私も聞いたことがありますから、本当は地下になにもなくても、 今ならあるかもしれませんよ。 |
Trinity |
トリニティ
……ここは、私の願望が造り出した、 イシャナの幻のような場所なのでしょう? |
Trinity |
シエル
厳密には違いますが……。 |
Ciel |
ラーベ
……! |
Raabe |
シエル
……とりあえず現状では、その理解で問題ないそうです。 |
Ciel |
1: 少し緊張する |
1: |
カズマ
……そうですね、僕もです。 以前からずっと、魔道協会の機密とやらに興味がありましたから。 |
Kazuma |
トリニティ
必要なもの以外には、触らないほうがいいと思いますよ〜。 なにが起こるか、わかりませんから〜。 |
Trinity |
カズマ
ええ、わかっていますよ。 |
Kazuma |
シエル
……っ! 待ってください。 下のほうから、反応が接近しています。 |
Ciel |
トリニティ
あらぁ? そういえば…… 勢いよく階段を駆け上がってくるような……。 |
Trinity |
カズマ
げぇっ! |
Kazuma |
1: なんかいっぱい来た! |
1: |
ラーベ
!!!!! |
Raabe |
シエル
我々を排除しようとしているようです。 |
Ciel |
カズマ
『窯』を守っているんですかね。 なら、やっぱり地下にあるのは『窯』なのか……。 |
Kazuma |
トリニティ
…………っ。 |
Trinity |
カズマ
トリニティさん? どうしました? |
Kazuma |
トリニティ
体が……思うように、動かないんです……。 |
Trinity |
カズマ
えぇっ!? で、でもこんなところで突っ立ってたら、 挟み撃ちで格好の餌食ですよ……! 逃げないと! |
Kazuma |
シエル
退路はありません。 前方の敵性体をすばやく処理しながら、先へ進みます。 |
Ciel |
カズマ
えぇ、で、でも……! |
Kazuma |
シエル
先陣は私が。レイさんは離れないでください。 カズマさん、トリニティさんをお願いします。 |
Ciel |
カズマ
お、お願いしますと言われましても……! |
Kazuma |
シエル
走ります。追従してください。 |
Ciel |
カズマ
ひぃ〜〜〜! |
Kazuma |
第7節 聖堂の地下②/
Summary | |
---|---|
最下層に至るシエルたち。しかし、マイが窯
の前に立ちふさがる。マイはシエルたちに興 味を示し、その力を試そうとする。 |
|
本気で戦ってはいなかったマイ。姿を消すマ
イだが、窯を破壊しようとするシエルの前に、 トリニティが立ちはだかる。 |
カズマ
ま、まだ、最下層には着かないんですか……!? もうそろそろ、さすがに限界……なんですけど……! |
Kazuma |
トリニティ
す、すみません……ご迷惑を……。 |
Trinity |
カズマ
うわ、あ、足がもつれて……。 |
Kazuma |
トリニティ
きゃっ……! |
Trinity |
カズマ
い……ったたた。すみません、巻き込んでしまって。 |
Kazuma |
トリニティ
いえ……私こそ、どんくさくてすみません〜。 |
Trinity |
1: ふたりとも大丈夫!? |
1: |
トリニティ
す、すみません、レイさん〜。 ご心配いただいて、ありがとうございます〜。 |
Trinity |
トリニティ
……あら? |
Trinity |
カズマ
ここ……は……。 |
Kazuma |
シエル
……下層への通路は見当たりません。 |
Ciel |
ラーベ
…………! |
Raabe |
シエル
ここが、聖堂の最下層ですか。 |
Ciel |
カズマ
…………。 |
Kazuma |
カズマ
これが……ここが……。 |
Kazuma |
トリニティ
カズマさん? |
Trinity |
カズマ
…………。 そう……か……。 |
Kazuma |
シエル
カズマさん。危険です。必要以上に窯に近づかないでください。 |
Ciel |
カズマ
あ……ああ、そうですね、すみません。 見ていたら、なんだかぼうっとしてしまって……。 |
Kazuma |
???
気になるなら、入ってみれば? 未知の世界にたどり着けるかもしれないよ。 |
??? |
シエル
!! |
Ciel |
カズマ
あ、あなたは……! |
Kazuma |
1: あのときの……! |
1: |
マイ?
やあ。ようやくここまでたどり着いたね。いつまで待てば いいのか、うんざりしていたところだったけど……。 |
Mai? |
マイ?
『窯』は姿を表している。 このファントムフィールドの正体には、気づいているんだね。 |
Mai? |
カズマ
ど、どうしてここに……。 |
Kazuma |
マイ?
僕がここにいる理由? 呼ばれたからさ。 |
Mai? |
マイ?
『窯』を求める不届き者を始末するためにね。 |
Mai? |
マイ?
そうだろ? 観測者のお嬢さん。 |
Mai? |
トリニティ
わ、私……は……。 |
Trinity |
マイ?
震えてるね。怖いのかな? それとも、体が覚えてるのかな。 |
Mai? |
マイ?
『此処』が『こう』なるひとつ前。 君は僕に殺されたんだからね。 |
Mai? |
カズマ
なっ……! |
Kazuma |
マイ?
あのとき、この建物に入ってきた君を、僕は待ち構えていた。 入り口のすぐ近くでね。 |
Mai? |
マイ?
友だちを探して入ってきた君は僕を見つけて、 声をかけようとして。その瞬間に、この槍に貫かれたんだよ。 |
Mai? |
トリニティ
っ……! |
Trinity |
マイ?
……殺せるはずだった。『この槍』ならね。 |
Mai? |
マイ?
でも君は死ななかった。 いや『死んだ』けど『消滅』はしなかった。 |
Mai? |
マイ?
そのせいなのか、なんなのか。まさかこんな中途半端な 再構成が始まるとは、思ってなかったよ。 |
Mai? |
マイ?
まぁ、ここの窯はイシャナの魔術師達が本物を模して作り上げた 『人工』のモノだからね。 |
Mai? |
マイ?
機能は本物の窯と変わらないけど、性能のほうは……ねえ。 比較するのもばかばかしいくらいだ。 |
Mai? |
マイ?
それなのに、僕まで観測の影響下に置くなんてさ。 使い捨ての検証用のくせに、意外と根性あるじゃないか。 |
Mai? |
シエル
……あなたは何者ですか。 なぜこのファントムフィールドに介入しているのですか? |
Ciel |
マイ?
そうだな……目的は色々あるけど。 今回は『観察』かな。 |
Mai? |
マイ?
君たちと同じだよ……御剣機関。 テストだ。これからのための、ね。 |
Mai? |
シエル
…………。 |
Ciel |
カズマ
テストって、なにを言っているんですか、あなたは! |
Kazuma |
カズマ
イシャナもトリニティさんも、 あなたのおもちゃではないんですよ! |
Kazuma |
マイ?
おもちゃ? 楽しく遊べるほどの価値もない、 検証用のコマが何を言うかな……。 |
Mai? |
カズマ
うっ……。 |
Kazuma |
マイ?
本当は、さっさと必要な作業を終えて撤収しようと思って たんだけど……思いがけず、興味深いものを見つけたからさ。 |
Mai? |
1: それって……僕? |
1: |
1: それって……私? |
1: |
マイ?
そうとも言えるし、そうじゃないとも言える。 なんにせよ、懇切丁寧に教示してやる義理はない。 |
Mai? |
マイ?
ただ君は、見せてくれればいい。 君たちの戦い方。君たちの力を、その性能を! |
Mai? |
シエル
来ます。全員、戦闘態勢を取ってください! |
Ciel |
カズマ
は、はい……! |
Kazuma |
トリニティ
……ごめん、なさい……私は……。 |
Trinity |
カズマ
トリニティさん…… 巻き込まれないところまで、下がっていてください。 |
Kazuma |
マイ?
練習はたくさんしたろ? なら、今度はもっと思いっきり暴れてみせろ! |
Mai? |
マイ?
はぁぁぁぁぁっ!! |
Mai? |
マイ?
……ふうん。やっぱり、そういうことか。 |
Mai? |
シエル
く……っ。対象の戦闘レベルに変化を確認できません……。 本気ではないようです。 |
Ciel |
マイ?
……こんなところかな。 これ以上、ここで回収できるものはなさそうだし。 |
Mai? |
カズマ
え……? |
Kazuma |
マイ?
もうこの『場』は用済みだから。君たちの好きにすればいい。 煮るなり焼くなり、切り刻むなり……。 |
Mai? |
マイ?
じゃあね。 またどこかで会おう……君たちが生きていたらね。 |
Mai? |
カズマ
消えた……? |
Kazuma |
シエル
っ! ……周囲に反応はありません。 |
Ciel |
カズマ
イシャナから……出ていったのでしょうか? でも、だとしたらどうやって……? |
Kazuma |
シエル
…………。 |
Ciel |
ラーベ
…………!! !!!! |
Raabe |
シエル
……はい。 |
Ciel |
シエル
『窯』の破壊を実行します。 |
Ciel |
カズマ
……トリニティさん、どうしたんですか? 窯がなにか……。 |
Kazuma |
トリニティ
……ごめんなさい。 |
Trinity |
トリニティ
でも……私、ここからどくことができません。 |
Trinity |
トリニティ
『窯』を……渡せません。 |
Trinity |
第7節 聖堂の地下③/
Summary | |
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観測者としての意思のために、道を明け渡す
ことができないトリニティ。彼女自身も救う べく、シエルたちは戦闘を開始する。 |
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『蒼の魔道書・写本』を起動し、窯を破壊す
るシエル。そして異物であるシエル達は、カ ズマとトリニティを残してその場から消える。 |
1: トリニティさん、どうして? |
1: |
トリニティ
本当に、ごめんなさい。わかっています。 皆さんのやろうとしていることは、きっととても正しいことです。 |
Trinity |
トリニティ
そして私がやろうとしていることは、とても悪いこと。 |
Trinity |
トリニティ
いけないと私は確かにわかっているのに……あなたたちの 行く手を阻み、こうして武器を握りしめている……。 |
Trinity |
カズマ
トリニティさん。 なにも僕たちがここで争う必要はないはずでしょう。 |
Kazuma |
カズマ
これを壊せば、僕たちは今まで通りのイシャナに 戻れるかもしれないんです。 |
Kazuma |
カズマ
もしかしたら、あなたのお友達だってみんな、 何事もなかったかのように戻ってくるかもしれないんですよ? |
Kazuma |
カズマ
そういう……この場の誰よりもあなたが大切にしていた イシャナに、戻りたくはないんですか? |
Kazuma |
トリニティ
戻りたいです! もちろん……今すぐにでも。 |
Trinity |
トリニティ
イシャナは私の故郷です。私を育ててくれた大切な場所。 とても穏やかで、とても綺麗な島なのです。 |
Trinity |
トリニティ
イシャナでの私の日々は、それは幸せなものでした。 だから、戻りたい。 |
Trinity |
カズマ
それなら! |
Kazuma |
トリニティ
でも……駄目なんです。 どうしてなんでしょう? |
Trinity |
トリニティ
戻りたくて仕方がないのに、 ここをどきたくなくて仕方がないんです。 |
Trinity |
トリニティ
『窯』を壊されてはならないと、強く強く、 私が勝手に思ってしまって。 |
Trinity |
トリニティ
まるでこの『窯』を破壊されたら、 イシャナそのものが破壊されてしまうかのようで。 |
Trinity |
トリニティ
怖くて、恐ろしくて。許せない……。 |
Trinity |
ラーベ
…………!!!! |
Raabe |
シエル
『観測者であるトリニティ』さんの意思と 『世界をあるべき形にと望むトリニティ』さんの意思が、 |
Ciel |
シエル
彼女の中で拮抗しているのだろう、と 私の上司が分析しています。 |
Ciel |
シエル
この状態を解消する方法は、ひとつです。 |
Ciel |
カズマ
……確か『窯』は膨大なエネルギーを取り込む装置、 でしたね。 |
Kazuma |
カズマ
それを使って『観測者』は『イシャナ』を、 いわば無意識にコントロールしている。 |
Kazuma |
カズマ
だから『窯』を壊せば、トリニティさんは解放される。 ……そうですね? |
Kazuma |
シエル
……はい。 |
Ciel |
カズマ
であれば、迷うことはないですね。 |
Kazuma |
カズマ
僕はトリニティさんほどイシャナに思い入れはありませんが、 それでも魔物だらけの今よりは快適に暮らしていました。 |
Kazuma |
カズマ
それに、元のイシャナには、僕の大事なものがあるはずなんです。 だから是が非でも戻りたいので。 |
Kazuma |
トリニティ
ああ……いや……もうやめてください……。 |
Trinity |
トリニティ
私の……私の大事な学園から……出ていって……! |
Trinity |
シエル
対象の戦闘レベルの上昇を確認。 敵性反応を検知。……戦闘を開始します。 |
Ciel |
1: トリニティさん、イシャナに帰ろう! |
1: |
トリニティ
あ……う……。 |
Trinity |
カズマ
はぁ……はぁ……いやはや、彼女とは思えない強さでした……。 こんな力をお持ちとは。 |
Kazuma |
カズマ
……いや、本来のトリニティさんとは、違うのでしょうかね。 |
Kazuma |
1: 大丈夫? しっかり! |
1: |
1: 大丈夫? しっかり! |
1: |
トリニティ
…………。 |
Trinity |
トリニティ
……ええ。もちろんですぅ。 |
Trinity |
カズマ
……立てますか? |
Kazuma |
トリニティ
いえ……お恥ずかしいですけれど、すっかり力が抜けてしまって。 しばらくは立ち上がれなさそうですね〜。 |
Trinity |
トリニティ
ですから……どうか、今のうちに。 『窯』を……お願いします。 |
Trinity |
シエル
…………。 |
Ciel |
1: 壊していいの? |
1: |
トリニティ
まあ。ふふ……誘惑しないでください〜。 壊さないで、やめて……って、今も私、思っているんですからぁ。 |
Trinity |
トリニティ
だから、今のうちですぅ。私がなにも手出しできないうちに、 終わらせてください……。 |
Trinity |
シエル
わかりました。では、終わらせます。 |
Ciel |
シエル
……第666拘束機関解放。次元干渉虚数方陣展開。 |
Ciel |
シエル
|
Ciel |
1: すごい……! |
1: |
トリニティ
ああ……っ! 『窯』が……壊れて……。 |
Trinity |
カズマ
トリニティさん、しっかりしてください。 |
Kazuma |
トリニティ
もう、頭の中がぐちゃぐちゃですぅ。 |
Trinity |
カズマ
元通りに戻ったら、 きっとそのぐちゃぐちゃな頭の中身もすっきりしてますよ。 |
Kazuma |
トリニティ
ええ。そうですね。 |
Trinity |
シエル
…………『窯』の反応の消失を確認。 任務完了。 |
Ciel |
カズマ
お疲れ様です。……で、いいんですかね? |
Kazuma |
トリニティ
ありがとうございます、シエルさん。 これで……イシャナは元の平和な姿に、戻れるのでしょうか? |
Trinity |
シエル
はい。そのはずです。 |
Ciel |
シエル
『窯』が破壊されたことで、 現状のイシャナを維持していた力の供給は断たれました。 |
Ciel |
シエル
『観測者』に流れていた力も断たれたことになりますから、 観測により発生していたイシャナの異常事態も解消されます。 |
Ciel |
シエル
……そうなるはずだと、聞いています。 |
Ciel |
カズマ
今ひとつ、安心しきれないんですよねぇ…… シエルさんの言い方って。まあ、もう慣れましたけど。 |
Kazuma |
トリニティ
でも、きっと今までよりはいいはずです。 そう私は信じていますよぉ〜。 |
Trinity |
トリニティ
だってもう、信じるしかないですから。 |
Trinity |
カズマ
確かにそうですね。 |
Kazuma |
ラーベ
!!!!!! |
Raabe |
カズマ
え? 今のは……なんですか? シエルさんたちの姿が……ブレたように見えたんですが。 |
Kazuma |
シエル
任務は完了しました。 |
Ciel |
シエル
私達は本来、ここにいるべき存在ではありません。 外部から介入した者です。ですので、帰還します。 |
Ciel |
トリニティ
『異物』……とおっしゃっていましたね。 |
Trinity |
トリニティ
始めは島の外からいらしたのだと思っていましたけれど…… もっと『外』からいらしていたんですねぇ。 |
Trinity |
カズマ
僕はまだ事態が信じられないんですけど。 もうなにもかも夢だったかのような気分です。 |
Kazuma |
シエル
夢ではありません。これも現実です。 |
Ciel |
シエル
……アクセスを確認。これより帰還します。 |
Ciel |
トリニティ
もう、行かれるのですか? |
Trinity |
シエル
はい。任務は終わりましたので。 |
Ciel |
カズマ
そうですか……。なんだか淡々としたものですね。 らしいと言うべきなんでしょうか。 |
Kazuma |
カズマ
では、お疲れ様です。お戻りはお気をつけて。 |
Kazuma |
トリニティ
あの、シエルさん。ありがとうございましたぁ。 窯が壊れて……解放されたような心地です。 |
Trinity |
トリニティ
もしシエルさんがいらっしゃらなかったら、私、イシャナを どうしてしまっていたのか……想像するのも怖いです。 |
Trinity |
トリニティ
大変お世話になりました。 またどこかでお会いできたら、そのときは……。 |
Trinity |
トリニティ
自慢のハーブティをごちそうさせてくださいね〜。 |
Trinity |
シエル
はい。よろしくお願いします。 |
Ciel |
シエル
では、失礼します。 ……行きましょう、レイさん。 |
Ciel |
1: え!? |
1: |
1: え!? |
1: |
…………。 ……………………。 |
|
???
…………い。 ……おーい、聞こえるかー? |
??? |
1: ……誰!? |
1: |
???
ようし、意識ははっきりしているようだな。 |
??? |
???
はじめまして、レイ。 ようこそ、我らが船、フガクへ! |
??? |