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Revision as of 17:49, 8 January 2022
BBDW Story Navigation (edit)
| |
---|---|
Prologue | one emerging possibility |
Main Story | Prologue · Chapter 1 · Chapter 2 · Chapter 3 · Chapter 4 · Chapter 5 |
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Character Stories (Unused Content) |
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第0節 『 』/ 0.
Summary | |
---|---|
暗躍する『バベル』が最終階層での顛末につ
いて語る。「実験は予測通り」と笑むハーン は、次の一手に向けてセミアを送り出す。 |
ハーン
…………。 |
Hearn |
ハーン
……ザラ。 |
Hearn |
ハーン
戻ってきたんだ。 話なら聞くよ。入っておいで。 |
Hearn |
ザラ
……失礼いたします。 |
Zara |
ザラ
魔素を集めていらっしゃるところに お邪魔をしてしまい、申し訳ありません。 |
Zara |
ハーン
気にすることはないよ。急いでいるわけではないしね。 それより……。 |
Hearn |
ハーン
ツルギのことを聞かせてほしい。 どうだった? |
Hearn |
ザラ
はい。見込みより少々時間はかかりましたが、 窯を利用しての精錬には成功しました。 |
Zara |
ザラ
ですが起動から二十分ほどでツルギは自壊。 御剣機関により窯が破壊され、再生は不可能となりました。 |
Zara |
ザラ
窯を破壊したのは……『蒼の魔道書』です。 信じがたいことですが、不安定ながら起動していました。 |
Zara |
ザラ
窯の崩壊直後に御剣機関の連中は境界へ退去。 『場』はすぐに再構築が始まり、現在は停滞状態にあります。 |
Zara |
ザラ
……アナザーダークは回収しましたが、戦闘の影響が大きく、 即座の再使用には耐えないかと。 |
Zara |
ハーン
そうか。 |
Hearn |
ハーン
お疲れ様。報告をありがとう。 |
Hearn |
ザラ
ハーン様! ……申し訳ありません。 |
Zara |
ザラ
ツルギの自壊は、 おそらく精錬が不十分だったためと思われます。 |
Zara |
ザラ
貴重なサンプルを失い、そのうえ御剣機関の連中まで 取り逃がしてしまい……なんとお詫びをすればいいか……。 |
Zara |
ハーン
そんな顔をしないで、ザラ。そもそも今回は始めから、 ちょっとした実験だったんだ。失敗も貴重な結果だよ。 |
Hearn |
ハーン
それに、壊れたものは……。 |
Hearn |
ハーン
『また』作ればいい。 |
Hearn |
ザラ
ハーン様……。 |
Zara |
ハーン
それよりも、僕は壊した『手段』のほうが気になるな。
|
Hearn |
ハーン
あんなものが本当に動くなんてね。 驚いたよ。 |
Hearn |
ザラ
はい……。 所詮は紛い物と思っておりましたが……。 |
Zara |
ハーン
起動の鍵になったのは、おそらく『彼』だと思う。 ……観測の力を持つ者。 |
Hearn |
ハーン
起動の鍵になったのは、おそらく『彼女』だと思う。 ……観測の力を持つ者。 |
Hearn |
ザラ
そんな、まさか。アレは人間ですよ。 間違いなくただの『人間』でした! |
Zara |
ザラ
ただの人間にあの魔道書を起動させるほどの観測など、 不可能です。あり得ないことです! |
Zara |
ハーン
不可能などないよ。 可能性があるのなら、それは『可能』だ。 |
Hearn |
ザラ
……そう、ですね。 申し訳ありません。 |
Zara |
ハーン
ただ……それが『彼』になにをもたらすのかも、 数多の可能性があるけれど。 |
Hearn |
ハーン
ただ……それが『彼女』になにをもたらすのかも、 数多の可能性があるけれど。 |
Hearn |
ハーン
……可能性……か。 |
Hearn |
ハーン
本当に……『地獄』のようだな。 |
Hearn |
ザラ
ハーン様、どうされましたか? |
Zara |
ハーン
いや、なんでもないよ。 |
Hearn |
ハーン
実験の結果はおおむね予測通りだ。奇妙な巡り合わせもあった。 僕たちは前進していると言っていい。 |
Hearn |
ハーン
心配しなくても、大丈夫だよ。 |
Hearn |
ザラ
……もったいない、お言葉です。 |
Zara |
ザラ
ハーン様、どうか次の任務も私にご命令ください。 今回の経験を活かし、必ずより良い成果をご覧にいれます! |
Zara |
ハーン
無理はいけない。君にも休息は必要だ。 それに次は、セミアにお願いするつもりだから。 |
Hearn |
ザラ
セミアに!? そんな、私なら大丈夫です、問題ありません! 働けます! あなたのために! |
Zara |
ハーン
ザラ。気持ちは嬉しいけれど……。 |
Hearn |
セミア
ヤダヤダ……やめなよ……みっともない。 |
Semia |
セミア
はっきり言ってやったほうがいいよ、ハーン。 そういうの『重い』って……ねえ。 |
Semia |
ザラ
なっ……セミア! いつからそこに……。 ハーン様から離れろ、気安いぞ! |
Zara |
セミア
睨まないでよ。こ〜わ〜い。 |
Semia |
ザラ
だから、ハーン様にもたれかかるな! その不真面目な態度も改めろ。不敬だぞ! |
Zara |
セミア
不敬って、なに言っちゃってんの。 ハーンはアタシのご主人様? |
Semia |
ザラ
貴様……! |
Zara |
ハーン
まあまあ、ふたりとも落ち着いて。ザラもそう怒らないで。 セミアも、あまりザラを挑発しないでくれ。 |
Hearn |
セミア
はーい、かしこまりましたぁ〜、ご主人サマ♪ |
Semia |
ザラ
セミア!! |
Zara |
ハーン
ザラ。そこまでにしよう。 |
Hearn |
ハーン
……セミアと話したいことがあるんだ。 少し席を外してもらってもいいかな。 |
Hearn |
セミア
だって。 |
Semia |
ザラ
……はい。わかりました。 失礼いたします、ハーン様。 |
Zara |
ハーン
ザラをイジメるのは、ほどほどにしておいてくれよ。 |
Hearn |
セミア
真面目ぶってるのが面白いんだもの、アイツ。 シーアルくらい適当でいいのに。 |
Semia |
ハーン
……ところでセミア。どこか不調なのか? 顔色が優れないように見える。 |
Hearn |
セミア
え? ……大丈夫。なんともないよ |
Semia |
セミア
それより話があるんでしょ? アタシになにをしてほしいの? |
Semia |
ハーン
ああ……うん。 例の実験場から、オリヴァを回収してきてほしいんだ。 |
Hearn |
セミア
へえ。もうできるんだ。 いいよ。久し振りにあの子にも会いたいし。 |
Semia |
ハーン
頼んだよ。 |
Hearn |
ハーン
それから、御剣機関が来ると思う。 もし邪魔になるようなら排除してくれ。ただ……。 |
Hearn |
ハーン
白い髪の女の子がいる。 その子にはできるだけ、手出しをしないでほしい。 |
Hearn |
セミア
……なんで? |
Semia |
ハーン
彼女は素体だよ。僕たちの仲間だ。 |
Hearn |
セミア
なに甘いこと言ってるの。 あれはアタシたちとは違うでしょ。 |
Semia |
セミア
あれは人間の道具になり下がった。 『道具』はもう……仲間じゃない。 |
Semia |
ハーン
それでも、頼むよ。 |
Hearn |
セミア
…………はぁ。 ハーンの『お願い』なら、聞いてあげてもいいよ。 |
Semia |
ハーン
ありがとう。助かるよ。 |
Hearn |
セミア
あーあ。 オリヴァの面倒だけで手一杯だっていうのに。 |
Semia |
ハーン
信頼してるよ、セミア。 |
Hearn |
セミア
……ずるいよね、ほんと。 だからハーンってキライ。 |
Semia |
ハーン
僕はセミアのことが好きだよ。 |
Hearn |
セミア
バカ。 |
Semia |
セミア
……行ってきます。 |
Semia |
ハーン
はい、いってらっしゃい。 |
Hearn |
ハーン
……………………。 |
Hearn |
???
……いいのか? セミアに任せて。 |
??? |
ハーン
デュラウスか。 彼女が適任だよ。オリヴァはセミアに懐いてたからね。 |
Hearn |
ハーン
寝起きで機嫌が悪くても、 セミアの話ならちゃんと聞いてくれるはずだ。 |
Hearn |
ハーン
それに……あの子にも会ってみてほしかったからね。 |
Hearn |
デュラウス
御剣機関の素体、か……。 |
Deuraus |
デュラウス
まさかお前、仲間に誘おうって言うんじゃないだろうな? |
Deuraus |
ハーン
できるなら、そうしたいけど。たぶん難しいだろうな。 でも……。 |
Hearn |
第1節 喪失の色①/ 1. The Color of Loss - 1
Summary | |
---|---|
気が付くと、見知らぬ森の中に倒れていた。
旅の少女セリカとミネルヴァに助け起こされ るが、そこに白髪の少女が現れ戦闘となる。 |
目を開けた瞬間から、私は探している。 |
|
私の居場所を。私の役目を。私の意義を。 私の願いを。 |
|
私は……。 |
|
私はあなたに会いたい。 |
|
……………………。 |
|
…………………… …………………………………………。 |
|
少女
……か? |
Girl |
……………………。 |
|
少女
……ぶ、ですか? |
Girl |
少女
大丈夫ですか? ねえ、しっかり。 目、開けられる? |
Girl |
少女
あ……よかった。意識はあるみたい。 私の声、ちゃんと聞こえてる? |
Girl |
少女
うんうん。体は起こせそうかな。 どこか痛いところはある? それか……具合が悪いとか。 |
Girl |
1: ええと…… |
1: |
少女
私はセリカ。セリカ=A=マーキュリー。 |
Girl |
セリカ
あ。驚かせちゃったかな。 この子はミネルヴァ。よろしくね。 |
Celica |
ミネルヴァ
…………。 |
Minerva |
1: 人形なの? |
1: |
セリカ
ミネルヴァのこと? うーん……どうなんだろう。 なんて呼んだらいいのかわからないなぁ。 |
Celica |
セリカ
でも、とっても強くて優しいの。 怖い子じゃないから、安心して。 |
Celica |
セリカ
ところで、あなたは誰? その制服、イシャナの制服に似てるけど……。 |
Celica |
セリカ
もしかしてイシャナの人? お姉ちゃんに頼まれてきた……とかじゃ、ないよね。 |
Celica |
セリカ
あ、私のお姉ちゃんね、すっごく心配性なの。 そのお姉ちゃんに相談なしで、家を出てきちゃったから……。 |
Celica |
セリカ
私を見つけようとして、大勢の人に捜索を頼んだりしてたら どうしようって思って。 |
Celica |
1: それ、もしかして家出では? |
1: |
セリカ
家出だなんて、そんなのじゃないよ! |
Celica |
セリカ
ちょっとひとりで遠出してるだけ。 用事が終わったらちゃんと帰るつもり。 |
Celica |
セリカ
うん……そうだよね。私もそう思う。 だけど相談してたら、絶対許してくれなかったもん。 |
Celica |
セリカ
やりたいことがすんだら、ちゃんと帰るから。 |
Celica |
セリカ
それに手紙も書いてきたんだ。 行きたい場所があるから、しばらく出かけます、って。 |
Celica |
セリカ
いつになるかはわからないけど帰ってくるから、 待っててね、って。 |
Celica |
セリカ
でも考えてみたら、お姉ちゃんは私のこと 誰かに頼んだりしないか……。 |
Celica |
セリカ
どっちかっていうと、自分で直接探しに来るタイプかも。 それは困っちゃうなぁ。お姉ちゃん、すごく頭いいし。 |
Celica |
セリカ
一回見つかったら、逃げ切るのは難しいかも。 その前になんとかして辿り着かないと……。 |
Celica |
セリカ
あ! ごめんなさい、私ずっとおしゃべりしちゃってて。 あなた座り込んだままだったのに。 |
Celica |
セリカ
人に会えるの、久し振りだったから つい嬉しくなっちゃった。 |
Celica |
セリカ
はい、手をどうぞ。 立てる? |
Celica |
1: ありがとう |
1: |
ミネルヴァ
!! |
Minerva |
セリカ
え、きゃっ!? なに、ミネルヴァ……!? |
Celica |
白い髪の少女
無事ですか!? |
White-haired Girl |
セリカ
お、女の子? |
Celica |
ミネルヴァ
……………………。 |
Minerva |
白い髪の少女
失礼ですが、あなたはどなたですか? |
White-haired Girl |
白い髪の少女
何故レイさんに 触れようとしていたのか、説明を求めます。 |
White-haired Girl |
セリカ
え、えっと……レイさん、っていうのは……? |
Celica |
ミネルヴァ
…………! |
Minerva |
白い髪の少女
っ! |
White-haired Girl |
白い髪の少女
敵対反応を感知しました。 |
White-haired Girl |
セリカ
敵対? え、ちょっと待って、ミネルヴァ、ダメだよ……! |
Celica |
ミネルヴァ
!! |
Minerva |
白い髪の少女
う、く……。対象の攻撃意思を確認。 迎撃します。 |
White-haired Girl |
1: な、何事? |
1: |
セリカ
わ、わ、大変! あなた、こっちに来て。巻き込まれちゃったら危ないから! |
Celica |
ミネルヴァ
…………!! |
Minerva |
第1節 喪失の色②/ 1. The Color of Loss - 2
Summary | |
---|---|
少女はシエル、同行の機械はラーベという名
で、記憶を失った自分を助けにきたと語る。 誤解が解けた一同は共に状況を確認する。 |
白い髪の少女
っ、体が重い……。どうして……? |
White-haired Girl |
ミネルヴァ
…………。 |
Minerva |
セリカ
ミネルヴァ、もうおしまい! あの子、ケガしちゃうよ! |
Celica |
ミネルヴァ
……! |
Minerva |
白い髪の少女
まだ、やれます。 |
White-haired Girl |
ミネルヴァ
! |
Minerva |
???
待〜〜〜て待て待て待て待て待て〜〜〜〜〜い! |
??? |
セリカ
わ! ぼ、ボール? ……じゃない! |
Celica |
白い髪の少女
ラーベさん……。 |
White-haired Girl |
球体の機械
はい、両者ストーップ! こらシエル、勝手に飛び出して暴走するんじゃない! |
Round Machine |
白い髪の少女
……すみません。 |
White-haired Girl |
白い髪の少女
レイさんが正体不明の兵装を所持した人物と、 接触していたので……助けねばと思いました……。 |
White-haired Girl |
セリカ
兵装? それって、ミネルヴァのこと? |
Celica |
白い髪の少女
……はい。 |
White-haired Girl |
白い髪の少女
詳細は不明ですが、その人形のようなものは 戦闘行動を前提とした自立駆動兵装です。 |
White-haired Girl |
白い髪の少女
こちらの方を……攻撃しようとしていたのではありませんか? |
White-haired Girl |
セリカ
そんな、違うよ! 起き上がるのを手伝おうとしてただけ。 |
Celica |
セリカ
あー……でも確かに、構図としては 私たちがこの子を倒したようにも、見えちゃうかも……。 |
Celica |
セリカ
びっくりさせちゃったんだね。ごめんなさい。 |
Celica |
白い髪の少女
……い、いえ……こちらこそ……すみません。 早とちりでした。 |
White-haired Girl |
セリカ
私、セリカ。よろしくね。 |
Celica |
シエル
……シエルと申します。 こちらはラーベさんです。 |
Ciel |
シエル
本当に、失礼しました。 |
Ciel |
ラーベ
やれやれ……お前も、ぼーっと見てるんじゃない。 お前がシエルを止めないでどうする。 |
Raabe |
ラーベ
……おい? 聞いてるのか? お前だ、お前。レイ! |
Raabe |
1: それ、僕(私)……のこと? |
1: |
シエル
……今、なんと? |
Ciel |
ラーベ
……<size=120%>はぁ〜〜〜〜〜〜!? </size> |
Raabe |
ラーベ
ふーむ……なるほど。 |
Raabe |
シエル
……いかがですか、ラーベさん? レイさんは……どうされたのでしょうか? |
Ciel |
ラーベ
……うん。これはあれだ。間違いない。 |
Raabe |
セリカ
なになに? なにかわかったの? |
Celica |
ラーベ
一同、落ち着いて聞いてほしい。 |
Raabe |
ラーベ
レイ。 お前は記憶を失っている。 |
Raabe |
シエル
え。 |
Ciel |
セリカ
ええええっ!? |
Celica |
1: ……言われてみれば、なにも思い出せない |
1: |
ラーベ
そうだろうな。 |
Raabe |
ラーベ
しっかし、今の今まで自覚なしだったとは。 大した気の緩さというか、ある意味根性すわってるというか。 |
Raabe |
ラーベ
のんきか! |
Raabe |
ラーベ
自分のことをなにも覚えてないんだぞ。 もうちょっと危機感とか持ってくれるかな、お前は! |
Raabe |
シエル
レイさんが記憶喪失……。 |
Ciel |
シエル
それはつまり、私たちのこともご自分のことも覚えていない ということで……。 |
Ciel |
シエル
そ、それはつまり記憶がないということですね? |
Ciel |
ラーベ
うん、だからそうだって。動揺してるのはよくわかったから、 深呼吸しなさい。ね。落ち着いて。 |
Raabe |
シエル
すー……はー……。 |
Ciel |
シエル
……大変なことなのでは!? |
Ciel |
ラーベ
大変ですよ。 |
Raabe |
セリカ
本当にな〜〜〜んにも覚えてないの? 自分の名前は? レイくんっていうんだよね。 |
Celica |
セリカ
本当にな〜〜〜んにも覚えてないの? 自分の名前は? レイちゃんっていうんだよね。 |
Celica |
1: 確かにそんな気がしてきた…… |
1: |
セリカ
よかった、名前はわかるみたい! |
Celica |
シエル
で、では他の事項は……? 私のことや、ラーベさんのことは、わかりますか? |
Ciel |
1: いや……わかんない |
1: |
シエル
……そう、ですか。 |
Ciel |
セリカ
元気出して。自分の名前は思い出せたんだから、 なにかのきっかけで他のことも思い出せるかもしれないよ。 |
Celica |
ラーベ
だといいがな〜。 |
Raabe |
ラーベ
しかし……我々がこうして存在出来ていることを考えると、 システムの不具合とは考えづらい……。 |
Raabe |
シエル
はっ……まさか、先日遭遇したあの…… 『バベル』と名乗る方々の工作でしょうか。 |
Ciel |
シエル
私たちがなにをしているのかも、 レイさんに備わっている力についても、 |
Ciel |
シエル
把握している様子でした。 |
Ciel |
ラーベ
どうだろう……。 |
Raabe |
ラーベ
レイほどの観測力を持ったやつから 意図的に記憶を奪うとなると、かなりテクニカルだ。 |
Raabe |
ラーベ
こいつが無意識でやっている自己認識を、 無効あるいは阻害しようとするわけだから……。 |
Raabe |
ラーベ
どちらかというと、事故的要因の方が確率は高そうだ。
おそらく原因は |
Raabe |
シエル
|
Ciel |
シエル
そんなことが……あるのですか。 |
Ciel |
ラーベ
チェックした限りでは、私はそう判断するね。 |
Raabe |
ラーベ
そもそも、ただの人間がこれまで大した障害もなく 浸入できてたのがイレギュラーなんだ。 |
Raabe |
ラーベ
心配しなくても、自己認識がしっかりしてくれば、 徐々に思い出して……。 |
Raabe |
ラーベ
……まさか……あり得るのか? |
Raabe |
シエル
どうされました、ラーベさん? |
Ciel |
ラーベ
いや……なんでもない。 |
Raabe |
ラーベ
まぁ万が一、自力で思い出せなかったとしても、 フガクに戻ればタカマガハラシステムが補完してくれるし。 |
Raabe |
ラーベ
最悪ショック療法でもなんでもするさ。 だから安心しろ。 |
Raabe |
セリカ
こらこら。悪気はないのかもしれないけど、 治ればなにしてもいいってわけじゃないんだからね。 |
Celica |
セリカ
頭の中のことなんだから。 こういうのはゆっくり穏便に、焦らず待ってあげようよ。 |
Celica |
シエル
……この件に関しては、 私はセリカさんの意見に全面的に賛同します。 |
Ciel |
セリカ
ふふ、ありがと。 |
Celica |
ラーベ
おいおい、シエル。そう警戒した顔をするな。 私が行うのは、ちゃんと科学的に意義と根拠のある治療だぞ。 |
Raabe |
シエル
…………。 |
Ciel |
1: 疑いの眼差しだ…… |
1: |
シエル
私はレイさんの身の安全を守る役目があります。 それはラーベさんであっても、同様です。 |
Ciel |
ラーベ
はいはい、わかってますよー。 |
Raabe |
セリカ
ところで……あなたたちは、この人の知り合い? お友達なのかな? |
Celica |
シエル
お友達……かどうかは、不明です。 任務を共に行っています。 |
Ciel |
1: 任務ってなに? |
1: |
シエル
……我々の任務は窯の破壊です。 そのために観測者を特定し……。 |
Ciel |
ラーベ
あ〜〜〜〜〜っとととと、つまりだな。 人と場所を探してる。 |
Raabe |
セリカ
人と場所……。 じゃあ、私と同じだ! |
Celica |
セリカ
私もね、ある人とある場所を……。 |
Celica |
ミネルヴァ
!! |
Minerva |
セリカ
きゃっ! あ、ありがとう、ミネルヴァ。 |
Celica |
シエル
……敵対反応を感知。 すみません、接近に気付けませんでした。 |
Ciel |
ラーベ
魔物か。 |
Raabe |
セリカ
わ、わ、大変、囲まれちゃってる! |
Celica |
シエル
レイさん、私の近くにいてください。 対象を確認、迎撃します! |
Ciel |
セリカ
私たちも。やるよ、ミネルヴァ! |
Celica |
第1節 喪失の色③/ 1. The Color of Loss - 3
Summary | |
---|---|
改めて互いの自己紹介をした後、セリカは同
行を提案した。帰らぬ父を探す彼女と共に、 シエルたちも日本へと向かうことになる。 |
セリカ
やったぁ! ありがとう、ミネルヴァ。お疲れ様。 |
Celica |
セリカ
シエルちゃんも、お疲れ様。大丈夫? |
Celica |
シエル
はい……。 …………。 |
Ciel |
シエル
……やはり、変です。 先程、ミネルヴァさんと交戦したときにも感じたのですが……。 |
Ciel |
シエル
想定通りに身体が動きません。 機能不全が起きています。 |
Ciel |
ラーベ
ああ。それはそうだろう。 なんせレイが記憶喪失なんだからな。 |
Raabe |
ラーベ
私やシエルのことを思い出せないうちは、 これまで通りに観測することは不可能だ。 |
Raabe |
ラーベ
現状は、レイが無意識下で行っている観測と、 タカマガハラシステムのサポートでなんとか保っているが……。 |
Raabe |
ラーベ
こいつが私たちを正確に認識できないうちは、 シエルの戦闘能力は当然落ちる。 |
Raabe |
ラーベ
というかそもそも存在自体が非常に不安定だ。 私もシエルも、そしてレイもな。 |
Raabe |
1: なんの話かわからないような…… |
1: |
ラーベ
なんとなくでも、わかってくれるといいんだがな。 あー、とりあえず、できる限り認識をしっかりさせておこう。 |
Raabe |
ラーベ
改めてになるが…… 私の名前はアストロラーベ。ラーベちゃんと呼べ。 |
Raabe |
ラーベ
お前とシエルを連れてここへやってきた。 任務の進行を管理する、司令官的な存在だ。 |
Raabe |
ラーベ
ほらシエル、お前も自分のことを教えてやれ。 |
Raabe |
シエル
シエル=サルファーです。御剣機関所属のスレイプニール。 レイさんを……お守りするためにいます。 |
Ciel |
1: ふたりとも、よろしくね |
1: |
シエル
はい。……よろしくお願いします。 状況の改善に、全力を尽くします。 |
Ciel |
シエル
……いえ。問題……は、ありますが。 状況の改善に、全力を尽くします。 |
Ciel |
セリカ
じゃあ私も改めて自己紹介。 セリカ=A=マーキュリーです。 |
Celica |
セリカ
何度も話に出てきてるからわかってるとは思うけど。 後ろのこの子はミネルヴァ。私の頼もしい相棒だよ。 |
Celica |
ラーベ
相棒、ね。 どう見ても兵器の類だけど、そこんとこは理解してるのか? |
Raabe |
セリカ
うん、一応。でも危ない子じゃないよ。 いつも私のことを守ってくれるの。 |
Celica |
セリカ
あ。シエルちゃんと一緒だね。 |
Celica |
ラーベ
一緒? |
Raabe |
セリカ
レイくんのこと、 守ってあげてるんでしょ。すごいなぁ〜。 |
Celica |
シエル
私がレイさんをお守りするのは、任務です。 すごいことではありません。 |
Ciel |
セリカ
そんなこともないと思うけどなぁ。 |
Celica |
セリカ
さっき魔物と戦ってるときも、 ずっとレイくんのこと気にしてたじゃない。 |
Celica |
セリカ
誰かのために頑張るって、すごいよ。 |
Celica |
セリカ
レイちゃんのこと、 守ってあげてるんでしょ。すごいなぁ〜。 |
Celica |
シエル
私がレイさんをお守りするのは、任務です。 すごいことではありません。 |
Ciel |
セリカ
そんなこともないと思うけどなぁ。 |
Celica |
セリカ
さっき魔物と戦ってるときも、 ずっとレイちゃんのこと気にしてたじゃない。 |
Celica |
セリカ
誰かのために頑張るって、すごいよ。 |
Celica |
シエル
そう……ですか。 |
Ciel |
1: いつもお世話になってるんだね |
1: |
シエル
いえ。……任務、ですから。 |
Ciel |
ラーベ
さて。記憶喪失だろうがなんだろうが、 さっきも言った通り我々には任務がある。 |
Raabe |
ラーベ
デリケートな頭抱えてるとこ悪いが、 始めさせてもらうぞ。 |
Raabe |
セリカ
あ、さっき言ってた人探しだよね。 それならさ、私から素敵な提案があるんだけど。 |
Celica |
ラーベ
ほうほう? 素敵とな。 聞こうじゃないか。 |
Raabe |
セリカ
私と一緒に行くっていうのはどう? 実はね、私も人探しをしてるの! |
Celica |
シエル
魔物に襲撃される直前に、おっしゃっていましたね。 セリカさんは、どなたを探しているのですか? |
Ciel |
セリカ
私の父さん。 |
Celica |
セリカ
ちょっと偉い研究者なんだけどね。 もうずっと家に戻ってなくて、連絡もないままで。 |
Celica |
セリカ
心配だから、様子を見に行きたいんだ。 |
Celica |
1: それでこの森に? |
1: |
セリカ
ううん、違うよ。ここはただの通り道。 歩いてたら、偶然あなたを見つけたの。 |
Celica |
セリカ
今どこでどうしてるのか、 詳しいことはわからないの。 |
Celica |
セリカ
父さんについてわかってるのは、最後に働いてた 研究所の場所と、それが日本にあるってことだけ。 |
Celica |
ラーベ
日本か……。 |
Raabe |
ラーベ
おっといかん。 そういえば我々の現在地点の確認がまだだったな。 |
Raabe |
ラーベ
まったく、レイの姿が見えないもんだから、 色々行程すっ飛ばしてしまった。手順が大混乱だ。 |
Raabe |
ラーベ
ちょっと待ってろ。シエルと私の状態確認も含めて、 もろもろチェックするから。 |
Raabe |
セリカ
すごーい、現在地のチェックなんてできるの? それありがたいかも。 |
Celica |
セリカ
実はちょっと迷っちゃってるのかも、 って思ってたところで……。 |
Celica |
セリカ
地図はあるんだけど、 自分がどこにいるのか見失っちゃったんだよね。 |
Celica |
1: わかる、地図って難しいよね |
1: |
セリカ
ね〜。普段あんまり使わないから、 たまに使うとわけがわかんなくなっちゃう。 |
Celica |
セリカ
うん。私がいた街と、着きたい街の名前はあるから…… その間にいるとは思うの。……あ、あった! |
Celica |
セリカ
これが、私が使ってる地図だよ。 |
Celica |
シエル
こ、これは……! |
Ciel |
1: 世界地図…… |
1: |
セリカ
うん、そうだよ。世界中どこでも見られて、便利でしょ。 |
Celica |
シエル
出発点がどこかは存じませんが……これで日本を目指すのは、 かなり困難だと思われます……。 |
Ciel |
セリカ
うん。ちょっと大きすぎたよね。 広げるのが大変で、見ながら歩けないんだ……失敗。失敗。 |
Celica |
1: 問題点はそこじゃない…… |
1: |
ラーベ
……う、うむ。問題点はそこじゃない。 |
Raabe |
ラーベ
……いや、大雑把なんてもんじゃないぞこれは。 |
Raabe |
セリカ
何の音? |
Celica |
ラーベ
マッピングが終わった。 適切な縮尺の地図を出してやるから、よーく見ろ。 |
Raabe |
ラーベ
まず我々がいるのは、ここだ。 山ん中だな。西方の中腹にいる。 |
Raabe |
セリカ
うんうん。 あ、ここ! 私が泊まった街! 名前書いてある。 |
Celica |
ラーベ
……やはりか。 |
Raabe |
シエル
なにか問題ですか? |
Ciel |
ラーベ
日本へ向かうなら、順路はこっちだろう。 出発点の街から、方角としては南東だ。 |
Raabe |
ラーベ
だが我々がいる山はここ。 出発地点の街から北東の方角だ。 |
Raabe |
セリカ
ん? つまり? |
Celica |
シエル
このまま進んで、目的の町へ辿り着く可能性はかなり低いです。 なぜこんな場所にセリカさんたちはいるのでしょう? |
Ciel |
ラーベ
考えられる理由はいくつかある。 例えば、教えられた道がそもそも違った。 |
Raabe |
ラーベ
あるいはなにか特殊な妨害に遭った。 ……そして……こいつが致命的な方向音痴。 |
Raabe |
シエル
方向……音痴? |
Ciel |
ラーベ
そうだ。そして私はその『方向音痴説』を推す。 でなきゃとんだ天然ボケだ。 |
Raabe |
ラーベ
こんな山の奥深くに入り込む前に、危機感覚えて引き返すとか、 道を疑うとかするだろ。しなさい! |
Raabe |
セリカ
え、道が間違ってたの? 教えてもらった通り、南に向かったと思ってたのに。 |
Celica |
シエル
方向音痴説、同意いたします。 |
Ciel |
1: ……街まで連れて行ってあげよう |
1: |
セリカ
ほんと? やった、仲間が増えた〜! |
Celica |
セリカ
ミネルヴァとふたりでいるのも楽しいけど、 人数が増えたらもっと楽しいよね、きっと。 |
Celica |
ラーベ
のんきさがすごいな。 |
Raabe |
ラーベ
だがまあ、いいだろう。流れには乗ってみようじゃないか。 世界情勢についての情報もほしい。 |
Raabe |
セリカ
ふふふ。では改めまして、よろしくお願いします。 さあ、気を取り直して、出発〜! |
Celica |
ミネルヴァ・シエル
…………!! |
Minerva & Ciel'
...!! |
シエル
敵対反応を感知。 高速で接近中。 |
Ciel |
ラーベ
おっとしまった。魔素のある場所で、長居し過ぎたな。 魔物だろう。シエル、対処しろ。 |
Raabe |
シエル
了解。 |
Ciel |
シエル
対象を認識。 対象の排除を開始します。 |
Ciel |
第2節 災厄を知る世界①/ 2. A World That Knows Calamity - 1
Summary | |
---|---|
山道を進む一行。広さに反して生物がいない
この世界への違和感を語るラーベに、セリカ は命を奪う『災厄』の存在について教える。 |
セリカ
ふぅ……倒した〜。 お疲れ様、ミネルヴァ。 |
Celica |
シエル
……戦闘終了です。 何度もサポートしていただき、ありがとうございました。 |
Ciel |
セリカ
いえいえ。一緒に旅する仲間だもん。 協力するのは当たり前だよ。 |
Celica |
1: 少し疲れてる? |
1: |
シエル
……いえ。問題ありません。戦えます。 |
Ciel |
ラーベ
ようやく山から抜け出せそうだな。 視界が開けてきた。 |
Raabe |
セリカ
だね! よかったぁ。 昨日は山の中で寝たから、今夜はベッドで寝れるといいなぁ〜。 |
Celica |
ラーベ
その装備状況で野宿とは。 案外お前、豪気だな。 |
Raabe |
セリカ
へへへ。 |
Celica |
ラーベ
それにしても……『広い』な、この世界は。 |
Raabe |
シエル
|
Ciel |
シエル
これまでのものとは比べものにならないくらい 『広い』と。 |
Ciel |
ラーベ
ああ。 島ひとつ、階層都市ひとつ。そんなレベルではない。 |
Raabe |
ラーベ
さっき周囲をスキャンしたときにも思ったが…… 大陸ひとつくらいはあるだろうな。 |
Raabe |
ラーベ
これは並大抵のことではない。 さらにもうひとつ、不可解なことがある。 |
Raabe |
ラーベ
これだけの規模のファントム……。 |
Raabe |
ラーベ
んっんんっ……世界であるにも関わらず、 異様に生命の反応が少ない。 |
Raabe |
ラーベ
人間だけじゃない。動物や虫、植物の反応が極端に少ない。 これは……どういうことなんだろうな。 |
Raabe |
セリカ
それは、災厄のせいじゃなくて? |
Celica |
シエル
災厄? |
Ciel |
セリカ
うん。6年前にあったでしょ。 突然現れて……世界中から大勢の人を消してしまった『災厄』。 |
Celica |
ラーベ
!? それは……。 |
Raabe |
シエル
世界規模の災害のことですか? それとも、もっと超常的な現象のことでしょうか。 |
Ciel |
セリカ
うーん、どういうものなのかは私もよく知らないんだけど……。 黒くて大きくて、すごく恐いものだよ。 |
Celica |
セリカ
どこからともなく突然現れて、 そこにあるものを手当たり次第に壊しちゃうの。 |
Celica |
セリカ
街も家も、そこに住んでる人や他の命も……。 |
Celica |
1: それは恐いね…… |
1: |
セリカ
うん、恐いよ。どうにかしようと色んな人が 頑張ってるらしいけど……簡単には方法が見つからないみたい。 |
Celica |
セリカ
信じられないよね。私も実はそうなの。 実際に見たことはないし……あんまり本当だと思いたくない。 |
Celica |
セリカ
でもね。 ここ一年くらい、ずっと『災厄』は出現していないの。 |
Celica |
セリカ
もしかしたら休眠状態なのか……もしくは、 いなくなったんじゃないかって言われてて。 |
Celica |
セリカ
だから安心して。……って言うのも、変か。 そうだって確定したわけじゃないしね。 |
Celica |
セリカ
……でもなんだろう。いなくなったのかもって思うと、 それはそれで胸の辺りがきゅってするような。 |
Celica |
ラーベ
おいおい、災厄相手になにを感傷的になってるんだ。 |
Raabe |
ラーベ
とにかくだ。その災厄とやらは……よくわからんが突然現れて、 多くの命を奪った後に、現在は活動休止中……。 |
Raabe |
ラーベ
そういうことだな? |
Raabe |
セリカ
うん。そういうこと……かな。 |
Celica |
セリカ
でね、その『災厄』が最初に現れた場所っていうのが…… 私の父さんが働いてた、研究所なの。 |
Celica |
シエル
では……その研究所はすでに、 破壊されているのではないですか? |
Ciel |
シエル
先ほど、手当たり次第になんでも壊してしまうと おっしゃっていました。 |
Ciel |
シエル
生存者はいないのではありませんか? |
Ciel |
1: シエルさん、もう少し言い方を…… |
1: |
If Choice 1: | |
---|---|
シエル
……『シエル』で結構です。 |
Ciel |
シエル
私の言葉遣いに問題がありましたか? 失礼しました。 情報の内容には、誤りはないと思います。 |
Ciel |
If Choice 1: | |
---|---|
シエル
……『シエル』で結構です。 |
Ciel |
シエル
湾曲した言い方では、情報が正確に伝わりません。 そう思ったのですが……問題があったでしょうか。 |
Ciel |
ラーベ
こいつが言いたいのは、そういうことじゃなくてだな。 |
Raabe |
セリカ
私のことを気遣ってくれてるなら、大丈夫だよ。 |
Celica |
セリカ
父さんの研究所はたぶん、破壊されてる。 私もそうだろうと思ってるし、お姉ちゃんからもそう聞いてる。 |
Celica |
セリカ
でも、どうしても『もしかしたら』って考えちゃうの。 だから自分の目で直接見て、納得するために行くんだ。 |
Celica |
セリカ
父さんのいた研究所がどうなって、 父さんがどうなったのか……確かめたいの。 |
Celica |
ラーベ
確かめる、なぁ。 |
Raabe |
ラーベ
災厄が休止中だかなんだか知らんが、魔物は平気ではびこってる。 そんなご時世に単身陸路で日本を目指すとは。 |
Raabe |
ラーベ
呆れる蛮勇だな。 しかも地図は世界地図だし。 |
Raabe |
セリカ
あ、あはは…… 私もちょっとだけ無謀だったかなーって思ってる。 |
Celica |
セリカ
途中でミネルヴァに会えなかったら、挫けてたかも。 |
Celica |
シエル
ミネルヴァさんとは、最初からご一緒だったのでは ないのですか? |
Ciel |
セリカ
うん、違うよ。 |
Celica |
セリカ
日本に向かうぞー! って頑張ってる途中で、会ったの。 何日か前だよ。 |
Celica |
ラーベ
なんだと? 何日か前にたまたま出会って…… 今、それだけ自在に操作しているのか? |
Raabe |
セリカ
私が操作してるわけじゃないよ。 ミネルヴァが一生懸命、私のことを守ってくれるの。 |
Celica |
セリカ
どうしてなのかはわからないんだけど……一緒に行くのは 嫌じゃないみたいだから、ついてきてもらってるんだ。 |
Celica |
ラーベ
なんだよ、そうなのかぁ〜〜〜。 |
Raabe |
ラーベ
そいつを作ったのが誰で、どういう構造と仕組みになってるのか、 興味津々だったのに……がっかりだ。 |
Raabe |
セリカ
あらぁ……そうだったの。ごめんね。 |
Celica |
ラーベ
……と、まあ、冗談はさておきだ。 |
Raabe |
1: 本当に冗談? |
1: |
ラーベ
ごほん。 いやなに……。 |
Raabe |
ラーベ
私はてっきり、その人形自体がセリカのドライブなんだと 思ったんだよ。だがそういう経緯なら……なんとも言えんな。 |
Raabe |
シエル
そうですね。 セリカさんは、ドライブ能力者ではないのでしょうか? |
Ciel |
セリカ
うーん、ドライブを持ってます、と言われたことは ないかな……。 |
Celica |
ラーベ
ほう。お前はドライブがなんなのか、知っているのか。 これは説明が省けていい。 |
Raabe |
セリカ
うん、知ってるよ。学校で少し習ったから。 |
Celica |
ラーベ
学校でドライブを教えるのか……この世界では……。 |
Raabe |
セリカ
私の通ってるとこ、そういうのをお勉強するところなの。 |
Celica |
シエル
もしかして、イシャナの学生さんですか? |
Ciel |
セリカ
イシャナを知ってるの? |
Celica |
ラーベ
ああ、まあな。 |
Raabe |
セリカ
あ、そっか。 えっと、レイくん……。 |
Celica |
セリカ
あ、そっか。 えっと、レイちゃん……。 |
Celica |
1: レイでいいですよ |
1: |
セリカ
ありがとう。 ならレイ。 |
Celica |
セリカ
その服、古いデザインだけどイシャナの制服……だもんね。 それでシエルちゃんたちも、イシャナ知ってるんだ。 |
Celica |
ラーベ
まあそんな感じだ。 |
Raabe |
ラーベ
レイはピンときてないかもしれないが、 記憶喪失が解消されればわかることだから、説明はなし。 |
Raabe |
ラーベ
それより、気がかりなのはセリカがドライブ能力者かどうかだ。 できればしっかり分析しときたいな……。 |
Raabe |
ラーベ
……お。 おあつらえ向きに、行く先に魔物がいるな。 |
Raabe |
ラーベ
セリカ。ミネルヴァを使って、思いっきり戦ってみてくれ。 お前の力について知りたい。 |
Raabe |
セリカ
うん、わかった。 私もミネルヴァについて、もっと知りたい。 |
Celica |
ミネルヴァ
…………。 |
Minerva |
シエル
ラーベさん、私は……どうしていればいいですか? |
Ciel |
ラーベ
もちろん、レイの護衛だ。 魔物にこちらの事情は通じないだろうからな。 |
Raabe |
シエル
了解しました。 |
Ciel |
魔物
グアワァァァァァァ!! |
Monster |
セリカ
よーし、行くよ、ミネルヴァ! |
Celica |
第2節 災厄を知る世界②/ 2. A World That Knows Calamity - 2
Summary | |
---|---|
セリカの持つ能力を見極めるため、戦う様子
を分析するラーベ。セリカの意思に従って、 ミネルヴァは魔物を次々と倒していく。 |
セリカ
あ……消えちゃった。変なの。 見た目は、ちょっと変になった動物や植物なのに。 |
Celica |
セリカ
倒すと、 始めからいなかったみたいに消えちゃうなんて……。 |
Celica |
ラーベ
活動停止したものをわざわざ『存在』として 残しておく必要がないんだろうな。 |
Raabe |
ラーベ
これまでのファントムフィールドでも、 よく見かけた仕組みだ。 |
Raabe |
セリカ
魔物ってそういうものなの? |
Celica |
ラーベ
さあな。私は魔物には詳しくない。 ただ……世界の仕組みにはちょっとばかり詳しいんでね。 |
Raabe |
ラーベ
理屈をつけるとしたらそういうことなんじゃないかっていう、 仮説だ。 |
Raabe |
シエル
リソースの無駄を防止するための仕組みでしょうか。 |
Ciel |
ラーベ
たぶんね。観測者の力は無限大じゃない。 不要なもので容量いっぱいにしてたら、本末転倒だからな。 |
Raabe |
セリカ
うーん、ラーベさんたちのお話、私には少し難しいみたい。 世界の仕組みか……。 |
Celica |
ラーベ
お前は今は、わかっていなくていいことだ。 |
Raabe |
セリカ
そっか。じゃあ、わかってないといけなくなったら、 詳しく教えてね。理解できるように頑張るから。 |
Celica |
ラーベ
無論、そのつもりだが。 |
Raabe |
ラーベ
セリカ、お前はどーもあっけらかんとしているというか、 お気楽というか。そういうタイプだな。 |
Raabe |
セリカ
えへへ、よく言われる。 |
Celica |
1: こっちまで気が楽になってくる |
1: |
If Choice 1: | |
---|---|
セリカ
そう? よかった。気持ちは楽なほうがいいもんね。 |
Celica |
If Choice 2: | |
---|---|
セリカ
そう? ふふ、実はそれもよく言われるの。 |
Celica |
シエル
…………。 |
Ciel |
シエル
……ラーベさん、分析結果はいかがですか? |
Ciel |
ラーベ
うむ。なかなか面白いデータが取れてるぞ。 |
Raabe |
ラーベ
どうも典型的なドライブ能力とは少々毛色が違うらしい。 ただもう一声、確証がほしいな。 |
Raabe |
ラーベ
あと何戦かしてみてくれないか。 他のデータもほしい。 |
Raabe |
セリカ
はーい! 歩く先にどんどん魔物出てくるし、 ちょうどいいね。頑張ろう、ミネルヴァ。 |
Celica |
ミネルヴァ
…………。 |
Minerva |
第2節 災厄を知る世界③/ 2. A World That Knows Calamity - 3
Summary | |
---|---|
戦闘後、魔法で傷を治癒するセリカ。ラーベ
は、彼女が貴重な魔法の使い手であり、同時 に特殊なドライブ能力者でもあると語る。 |
セリカ
ふう……。お疲れ様、ミネルヴァ。 たくさん戦ってくれて、ありがとう。 |
Celica |
シエル
戦闘終了です。 周囲に敵対反応はありません。 |
Ciel |
シエル
これまでより感知範囲が狭いので、自信がありませんが…… すぐに魔物の襲撃を受けることはないと思われます。 |
Ciel |
1: ちょっと一息つけるね |
1: |
If Choice 1: | |
---|---|
シエル
……はい。 |
Ciel |
If Choice 2: | |
---|---|
シエル
いえ……私の基本機能です。 |
Ciel |
セリカ
シエルちゃんとレイも、 お疲れ様。怪我はない? |
Celica |
セリカ
……あ。レイ、 ほっぺた、ちょっと切れちゃってる。 |
Celica |
1: さっき枝に引っ掻けちゃって |
1: |
セリカ
けっこう痛そうだよ。 ばい菌入るといけないし、治しといたほうがいいと思う。 |
Celica |
シエル
そうですね。すぐに応急手当てを……。 |
Ciel |
セリカ
ふっふっふー。待って、待って。こういうのは私に任せて。 得意分野なの。 |
Celica |
シエル
手当の専門知識をお持ちなのですか? |
Ciel |
セリカ
そういうのじゃないんだけどね。 レイ、ちょっとじっとしてて。 |
Celica |
1: 傷のところがあったかい |
1: |
シエル
傷が……治ってしまいました。 これも、セリカさんのドライブ能力ですか? |
Ciel |
ラーベ
いや。それは……ドライブ能力とは違うようだな。 魔法か? |
Raabe |
セリカ
うん、魔法だよ。私、イシャナの魔術師だから。 まだ学生だけど。 |
Celica |
ラーベ
ってことは、治癒魔法か。 え、治癒魔法? 本当に? |
Raabe |
セリカ
うん。 |
Celica |
ラーベ
おいおい…… まさか実際に目にすることになるとは……。 |
Raabe |
シエル
珍しいのですか? |
Ciel |
ラーベ
珍しいなんてもんじゃないぞ。 |
Raabe |
ラーベ
理論上では可能だが、実際に扱うことはできない。 その代表例のひとつが治癒魔法だ。 |
Raabe |
ラーベ
近いもので『回復魔術』もあるが、あれは体細胞を活性化し、 回復を促進させるものだから限度がある。 |
Raabe |
ラーベ
だが治癒魔法は違う。 治癒魔法は『回復』ではなく『復元』だ。 |
Raabe |
ラーベ
だから前提として、扱うには特殊な才能がいる。そのせいで 実際に使える人間が少なすぎるから、研究も進んでいない。 |
Raabe |
ラーベ
要はよくわかっていないけど、目茶苦茶難しい魔法だ。 |
Raabe |
セリカ
私、魔術はあんまりだけど、治癒魔法だけは 小さいころから得意なんだ。どう、もう痛くない? |
Celica |
1: なんともないよ。すごい魔法だね! |
1: |
セリカ
ふふ、よかった。 |
Celica |
シエル
傷をたちどころに癒してしまうなんて、すごい技ですが…… 魔法はドライブとは違うのですか? |
Ciel |
ラーベ
違う。魔法はもっと技術的で理論的なものだ。 必要な条件さえ揃えば、使い手もそれなりにはいる。 |
Raabe |
ラーベ
だがドライブは個々の魂を根源としている。魔法よりずっと スピリチュアルというか……得体の知れない……。 |
Raabe |
ラーベ
個の『存在』が持つ『特殊能力』だ。 |
Raabe |
セリカ
あ、そうだった、ドライブ! 私のドライブのこと調べてるんだった。なにかわかった? |
Celica |
ラーベ
ああ。 なにもかも解析できたわけじゃないが、ある程度は把握した。 |
Raabe |
ラーベ
魔法についてはここまでにして、 ドライブの話に戻るとしよう。 |
Raabe |
シエル
はい。 |
Ciel |
セリカ
自分のこと教えてもらうのって、ちょっとわくわくする。 |
Celica |
ラーベ
結論から言うと、セリカはドライブ能力者だ。 ドライブはその人形、ミネルヴァだな。 |
Raabe |
ミネルヴァ
…………。 |
Minerva |
セリカ
ミネルヴァが……私のドライブ……。 |
Celica |
シエル
質問ですが、セリカさんはミネルヴァさんと数日前に、 偶然出会ったとおっしゃっていました。 |
Ciel |
シエル
ミネルヴァさんの反応は、明らかに人工物です。 ドライブによって発現した存在とは、考えにくいのですが。 |
Ciel |
ラーベ
その通り。ミネルヴァ自体は誰かの手によって造られた れっきとした兵器だ。 |
Raabe |
ラーベ
しかも尋常でない知識と技術が注ぎ込まれている。 とんでもない量のリソースもな。 |
Raabe |
セリカ
うんうん。ってことは、私のドライブは……。 |
Celica |
1: 兵器と仲良くなるドライブ? |
1: |
ラーベ
簡単に言うとそういう感じになるな。 だがさすがにもう少し、小難しい説明をしておくぞ。 |
Raabe |
ラーベ
セリカのドライブは、 その自立駆動型兵器と特殊なリンクをつなぐものだ。 |
Raabe |
ラーベ
リンクする相手はミネルヴァに限定されているのか、 そうでないのかはわからん。 |
Raabe |
ラーベ
ただ繋がることによって、ミネルヴァはセリカの意思を汲み取り、 それを己の行動指針とするようになる。 |
Raabe |
ラーベ
つまり、セリカのしてほしいことをするようになるわけだ。 |
Raabe |
ラーベ
ミネルヴァという戦力を 意思ひとつでコントロールできるドライブ、と言ってもいい。 |
Raabe |
ラーベ
戦闘能力のないセリカが この魔物だらけの世界で旅をするには、うってつけの能力だな。 |
Raabe |
セリカ
わぁ! じゃあ、私のドライブはミネルヴァがくれたってこと? |
Celica |
ラーベ
そういう解釈もできなくもないが……このドライブはあくまでも セリカ、お前を発現場所としている。『お前』の能力だ。 |
Raabe |
ラーベ
プログラムをいじれば変化はさせられるだろうが、 現状、ミネルヴァはお前でなければコントロールできない。 |
Raabe |
シエル
外的な要因で発現したドライブということですか。 そういうこともあるのですね。 |
Ciel |
ラーベ
あるとも。ドライブは、強い魂が蒼に近付きさえすれば 現れる可能性がある。その過程は問わない。 |
Raabe |
ラーベ
……とまあ、難しい話はこんなもんにしておこう。 本筋とあまり関係がない。 |
Raabe |
ラーベ
重要なのは、セリカがドライブ能力者だという点だけだ。 |
Raabe |
1: セリカがドライブ能力者だと……? |
1: |
シエル
ドライブ能力者であれば、 ファントムフィールドの観測者である可能性があります。 |
Ciel |
シエル
……その。要約しますと、我々の任務遂行のための 重要人物である可能性がある……ということです。 |
Ciel |
ラーベ
ほう。らしくない説明の仕方だな。 |
Raabe |
シエル
情報に誤りがあったでしょうか? |
Ciel |
ラーベ
いやいや。的確な要約だったとも。 |
Raabe |
シエル
……ありがとうございます。 |
Ciel |
セリカ
それって、私にシエルちゃんたちのお手伝いができるかも、 ってこと? |
Celica |
ラーベ
そうなるな。現段階では『かも』だが。 |
Raabe |
セリカ
わあ。もしそうなったらいいね。 そしたら私たち、運命の出会いだ。山の中で。 |
Celica |
ラーベ
今のところは迷子の回収だがな。 |
Raabe |
セリカ
その点につきましては、これからどんどん恩返ししていくよ。 魔物の相手は私……というか、ミネルヴァにどーんと任せて! |
Celica |
シエル
とても頼もしいです……。 |
Ciel |
ラーベ
さーて。だいぶ歩いたな。 目指していた街の反応が近づいてきた。もうひと頑張りだぞ。 |
Raabe |
セリカ
いよいよかぁ〜。 ラーベさんたちに会えなかったら、今夜も野宿だったかも。 |
Celica |
セリカ
どんな街だろう。楽しみだね。 |
Celica |
第3節 用心棒参上!①/ 3. Bodyguards Arrive! - 1
Summary | |
---|---|
途上の街に到着するも、そこは壊滅し無人と
なっていた。『災厄』によるものと思われる その被害の大きさに、一行は戦慄する。 |
セリカ
…………。 |
Celica |
セリカ
……街、が……。 |
Celica |
シエル
……壊滅状態です。 |
Ciel |
1: どこもかしこもボロボロ…… |
1: |
セリカ
怪我してる人がいるかも。助けなくちゃ。 すいませーん! 誰かいませんかー!? |
Celica |
1: 僕(私)も手伝うよ |
1: |
シエル
追従します。 ……検索……検索。 |
Ciel |
シエル
生体反応、近くにはありません。 |
Ciel |
セリカ
向こうのほうにも行ってみよう! |
Celica |
シエル
……この辺りも、反応はありません。 |
Ciel |
セリカ
誰もいない……。そんな、誰も助からなかったの? それともみんな、逃げたあとなのかな。 |
Celica |
シエル
あちこちに戦闘の痕跡があります。 この街で戦闘が行われたのは間違いないと思います。 |
Ciel |
ラーベ
それもただの戦闘じゃない。 |
Raabe |
ラーベ
とんでもなく……大きなものが、 街をえぐり取るように蹂躙していったんだ。 |
Raabe |
セリカ
とんでもなく大きなもの……? |
Celica |
1: 巨大兵器とか? |
1: |
ラーベ
いや違う。だとしたら、あるべきものが残っていない。 |
Raabe |
セリカ
あるべきものってなに? もったいぶらないで、教えて。 |
Celica |
ラーベ
見てわからないか? 死体だよ。 |
Raabe |
セリカ
え? ……あ。 |
Celica |
ラーベ
街は交戦状態にはあったはずだ。 だがその交戦を行っていた者の『痕跡』がどこにもない。 |
Raabe |
ラーベ
死体がない。骨もない。 埋葬の跡もなければ、戦闘のあとに死体を集めた様子もない。 |
Raabe |
ラーベ
それどころか生き残った人間が少しの間でも治療したり、 食事したりした跡もない。 |
Raabe |
セリカ
そんな。じゃあ、生き残った人はいないってこと? みんな……死体も残らずに消えちゃった……の? |
Celica |
セリカ
そんな、どうして……。 |
Celica |
ラーベ
セリカ……お前なら心当たりがあるんじゃないか? |
Raabe |
ラーベ
これほど無慈悲に破壊し尽くし、 その場に存在する生物すべてを消し去ってしまうものに。 |
Raabe |
セリカ
……『災厄』。 |
Celica |
セリカ
こんなことになっちゃうの? これほど……目茶苦茶にしちゃうの……? 災厄って。 |
Celica |
セリカ
……私、実際に襲撃された場所を見たことはなかったの。 |
Celica |
セリカ
イシャナは災厄とは無縁で。 ずっと遠い世界のニュースだったから……。 |
Celica |
セリカ
世界のあちこちが、こんなことになってるんだ。 本当に、大勢の人が……いなくなっちゃってるんだね。 |
Celica |
セリカ
……父さんは、どうだったんだろう。 父さんのいた研究所も、こんな感じになってるのかな……。 |
Celica |
シエル
……動体反応を感知。 敵対反応。 |
Ciel |
ミネルヴァ
……! |
Minerva |
セリカ
え、わ、なに!? |
Celica |
シエル
突然周囲に多数の反応が出現しました。 いくつかは先程交戦した魔物と同一の反応です。 |
Ciel |
シエル
戦闘態勢に移行。 レイさん、側にいてください。 |
Ciel |
セリカ
魔物……。 ミネルヴァ、戦うよ! みんなを守らないと! |
Celica |
ミネルヴァ
…………。 |
Minerva |
ラーベ
おお、来た来た。 建物の影から、あっちにもこっちにも。対処しろ! |
Raabe |
シエル
了解。対象の排除を開始します。 |
Ciel |
第3節 用心棒参上!②/ 3. Bodyguards Arrive! - 2
Summary | |
---|---|
魔物に囲まれた一行。『災厄』の影響による
ものか数が多く、退路の確保すら難しい危険 な状況だが、そこに助太刀が現れる。 |
シエル
対象、消滅を確認。 同時に別個体の出現を確認。 |
Ciel |
セリカ
ど、ど、どうしよう。あっちからも来てる! 私たち、囲まれちゃってない? |
Celica |
ラーベ
囲まれちゃってるな。しかもまだまだ出てくる。 |
Raabe |
シエル
異物である私たちを排除するための防衛機構…… ですか? |
Ciel |
ラーベ
だろうな。 |
Raabe |
ラーベ
しかし場所が広いせいか、この廃墟が生まれた原因のせいか わからんが、ずいぶんな大盤振る舞いだな。 |
Raabe |
シエル
即時の突破、撤退は難しいです。 迎撃しつつ、少しでも手薄な方へ下がるしかありません。 |
Ciel |
セリカ
手薄な方ね、わかった! ええっと……ど、どこもたくさんいるように見えるけど! |
Celica |
ラーベ
うーむ、こりゃまずい。退路確保は至難の業だぞ。 |
Raabe |
シエル
検索……照合……。 このまま後方へ下がります。 |
Ciel |
シエル
こちらのほうが圧倒的に少数です。 少しでも障害物のあるほうへ……。 |
Ciel |
謎の声
<size=130%>わーっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!!</size> |
Mysterious Voice |
1: な、何者だ!? |
1: |
謎の声
助けを求める声あらば、どこへなりとも即座に参上! 人の世にありて影となり、か弱きものを守るが使命!! |
Mysterious Voice |
謎の声
駆け抜けるは風が如く、忍ぶ姿は林が如く……。 猛る心は火が如く! 堂々たる構えは山の如し!!! |
Mysterious Voice |
謎の声
とうっ!!!!! |
Mysterious Voice |
謎の声の主
そこな御一行、 魔物どもに囲まれてさぞかしピンチと見える!! |
The Mysterious Voice's Owner |
バング
我が名はシシガミ=バング!! 愛と正義のために戦う男!! ゆえに、助太刀いたぁぁぁぁぁぁす!!! |
Bang |
少女
うるっせーーーーぞ、おっさん!!! |
Girl |
少女
ぺらぺらぺらぺら口上が長いんだよ! 愛だか正義だか 知らねーけど、ひとりで勝手にどっか行ってんじゃねーぞタコ! |
Girl |
少女
そもそもこんなか弱い子供ひとり置き去りにして 全力ダッシュとか正気か? |
Girl |
少女
死ぬ気で走らされたじゃねーか! 余計な体力使わせんじゃねーぞ。あと声がでかいんだよ!! |
Girl |
バング
なーにを言うか、プラチナ! お主はただの子供ではあるまい! この愛の忍者、シシガミ=バング様の弟子でござるぞ。 |
Bang |
バング
師の後を追うは弟子の務め、弟子の前に背を晒すは師の務め! よくぞついて参った!! |
Bang |
少女
はぁ??? 好きでついてきたんじゃねーっつーの! |
Girl |
少女
おっさんいなくなったらもういよいよわけわかんないから、 仕方なくだっつーの! |
Girl |
ルナ
あとルナ様はルナ様だ!! つーか弟子じゃねーから!! |
Luna |
バング
おお、そうでござった! ならばルナよ! 拙者と共に、か弱き旅人の窮地を救おうではないか!! |
Bang |
ルナ
お前話聞いてるか!?!? |
Luna |
ルナ?
ルナぁ……いちいち言い返すのやめときなってば〜。 それこそ体力の無駄遣いだよぉ〜……。 |
Luna? |
ルナ
だからって大人しくしてられっか、セナ! こいつ放っとくとずーーーーっとこの調子だぞ!? |
Luna |
ルナ
ルナたち舐められっぱなしだぞ!? |
Luna |
シエル
……あ、あの方たちは一体……何者でしょうか? |
Ciel |
ラーベ
うるさ……いや、愉快な連中だな。 |
Raabe |
1: 助太刀してくれるって言ってた! |
1: |
セリカ
うんうん! きっと味方してくれるんだよ! おーい、助太刀、お願いしまーす! |
Celica |
バング
うむ、任されよ! 行くぞルナよ、セナよ! 魔物になど臆するでない!! うおぉぉぉぉぉぉ!!! |
Bang |
ルナ
なっ……誰がビビッてるって言った! この程度の魔物くらい、むしろルナ様ひとりで十分だし! |
Luna |
ルナ
かかってこいやオラーーーーー!!! |
Luna |
第3節 用心棒参上!③/ 3. Bodyguards Arrive! - 3
Summary | |
---|---|
現れたバングとルナ、セナの助力で危険な状
況を切り抜けた。『異物』である彼らは元の 世界に戻るため、シエルたちに協力する。 |
シエル
……検索……検索。周囲に敵対反応、ありません。 戦闘終了。 |
Ciel |
シエル
レイさん、ご無事ですか? ……怪我もないようですね、よかったです。 |
Ciel |
1: 守ってくれてありがとう |
1: |
シエル
はい。一時はかなり厳しい戦況でしたが、 助太刀いただいたおかげで、どうにか打開できました。 |
Ciel |
ルナ
へっへーん、どんなもんだ。 ルナ様の力思い知ったか! |
Luna |
バング
うむ、見事でござる、我が弟子ルナよ! お主の愛と正義の心、しかと見届けたでござる! |
Bang |
ルナ
だーから、弟子になった覚えはないって言ってんだろーが! |
Luna |
セリカ
あの、助けてくれてありがとうございました。 |
Celica |
セリカ
私たちだけじゃ倒しきれなかったと思うの。 おかげでみんな、ほとんど怪我なしだよ。 |
Celica |
セリカ
私、セリカ=A=マーキュリー。こっちはミネルヴァ。 はじめまして。 |
Celica |
バング
おお、皆無事か! なにより、なにより。 |
Bang |
バング
拙者はシシガミ=バング。 愛と正義のために戦う炎の忍者でござる! |
Bang |
シエル
私はシエル=サルファーと申します。 こちらはレイさん。こちらは、ラーベさんです。 |
Ciel |
1: 助かりました……! |
1: |
バング
うむ! 見ればお主らもそれなりの手練れの様子。 先程の戦い、よく頑張ったでござるな! |
Bang |
バング
わっはっはっは! |
Bang |
ラーベ
そちらもかなり面白い人員のようだな。 バングに……ええと、そっちのチビっ子。ルナとかいったか? |
Raabe |
ルナ
誰がチビっ子だ、ひとつ目ウサミミボール! サッカーボールにすんぞ! |
Luna |
ルナ
ルナ様は、ルナ様だ! このルナ様直々に助けてやったんだから、感謝しろよな。 |
Luna |
セリカ
うん、ありがとう。 |
Celica |
セリカ
……あれ、あなた……どこかで会ったような、 会ってないような……。 |
Celica |
ルナ
はぁ? ルナはお前なんか知らないぞ。 |
Luna |
セリカ
そっかぁ。うーん、気のせいかなぁ。 誰かに似てるのかも……。 |
Celica |
ラーベ
で、もうひとりはなんていう名前だ? |
Raabe |
シエル
もうひとり……? |
Ciel |
ラーベ
このルナという少女だが、肉体に対して魂がひとつじゃない。 もう一人……居るんだろ? |
Raabe |
ルナ?
……あれぇ、このボールさん、意外と賢いねぇ〜。 |
Luna? |
ルナ?
わかってるなら、隠すこともないか〜。 はじめまして、僕はセナ。 |
Luna? |
セナ
ルナと一緒にこの器を使っているんですけど……。 |
Sena |
セナ
普段は基本的にルナが話しますから、 あまり僕のことは気にしないでくださいねぇ〜。 |
Sena |
1: ルナと…… |
1: |
シエル
ひとつの肉体……器に、 ふたつの魂が同時に存在しているのですか。 |
Ciel |
シエル
拒絶反応などは起こらないのですか? |
Ciel |
ルナ
きょぜつはんのー? セナのことをキョゼツなんかするわけないだろ。 |
Luna |
ルナ
ずっと一緒にいるんだからな。 |
Luna |
セリカ
すごいね。 ずっと一緒なんて、仲がいいんだ。 |
Celica |
ルナ
ふふん、まあな。 |
Luna |
バング
ときに、少年少女よ。お主たち、なぜこのような 人っ子ひとりおらぬ廃墟を訪ねたのだ? |
Bang |
バング
ときに、少女たちよ。お主たち、なぜこのような 人っ子ひとりおらぬ廃墟を訪ねたのだ? |
Bang |
バング
このような魔素の濃い場所にいては、 魔物が集まってくるばかりでござるよ。 |
Bang |
セリカ
私たち、それぞれやりたいことがあって、旅をしてるんです。 |
Celica |
セリカ
向こうの方にある町で、ここにも町があるって聞いて 来たんですけど……。 |
Celica |
ラーベ
……お前が前に立ち寄った町の方角は、反対だぞ。 |
Raabe |
セリカ
こっちか。 |
Celica |
セリカ
でも到着してみたら、なにもなかったんです。 |
Celica |
バング
ふうむ、そうか。そういうことでござったか。 |
Bang |
ラーベ
そっちはどうなんだ? 風変りな格好の大男と、 巨大な杖を持った子供とは、奇妙な取り合わせだ。 |
Raabe |
ルナ
言っておくけど、誤解すんなよウサミミボール。 |
Luna |
ルナ
ルナ様とこいつは、 たまたま目的が同じだったから一緒にいるだけだ。 |
Luna |
シエル
目的は、なんですか? |
Ciel |
ルナ
……自分がいた世界に帰ること。 |
Luna |
セリカ
それって……どういうこと? あなたたちは、この世界の人じゃないの? |
Celica |
ラーベ
ほうほう。異物か。 |
Raabe |
ルナ
は? 異物ってなんだ? |
Luna |
ラーベ
お前たちのようなやつらのことだよ。 つまり『この世界の人じゃない』連中のことだ。 |
Raabe |
ラーベ
より正確には、 この世界の人間じゃないと自覚している者、のことだな。 |
Raabe |
セリカ
そんな人がいるの? うわぁ、すごい! じゃあ私の知らない『世界』がどこかにあるってことだよね。 |
Celica |
セリカ
ここじゃない、別の世界かぁ。どんなところなんだろ。 |
Celica |
セリカ
ねえねえ、バングさんたちのいた世界っていうのは、 どんな場所なの? |
Celica |
バング
それがはっきりとはわからぬのだ。 ただここではなかった、という確信だけがあるばかり。 |
Bang |
バング
そんな状態でどこを頼ればいいかもわからず、 手がかりだけでも見つからぬかと流浪の旅に出た道中で……。 |
Bang |
バング
このルナとセナと出会い、弟子としたわけでござる。 |
Bang |
ルナ
弟子じゃねーから。おっさんが勝手に言ってるだけだから。 |
Luna |
セナ
小さな子供をひとりで旅させるわけにはいかないから、 弟子として連れていく……って言って、聞かないんですよぉ〜。 |
Sena |
セリカ
あなたたちが心配だったんだね。 ちょっと強引みたいだけど、いい人なんだね、バングさん。 |
Celica |
ルナ
いい人〜〜〜ぉ? |
Luna |
バング
わっはっは、よせよせ、照れるではないか!! |
Bang |
セナ
……ねぇ、ルナ。そんなことより、この人たちにちゃんと 話を聞いたほうがいいんじゃないかなぁ〜。 |
Sena |
セナ
この人たち、僕たちが困ってることについて すごく詳しいみたいだよぉ〜。 |
Sena |
ルナ
なに、そうなのか!? |
Luna |
ルナ
おいお前たち! ルナたちが元の世界に戻るためには どうしたらいいのか教えろ! 今教えろ! すぐ教えろ!! |
Luna |
セリカ
わ、わ、待って。私はよくわからないの。 シエルちゃんたちは、わかる? |
Celica |
シエル
はい。異物の方々は、ファントムフィールド構築の際に 紛れ込んでしまった、本来はないはずの情報です。 |
Ciel |
シエル
ファントムフィールドが解放されれば、この場に情報として 留める力からも解放されることになりますので……。 |
Ciel |
ルナ
ふぁん、とむ? |
Luna |
ルナ
うがー! なに言ってんだか全然わかんないし! つまりなにすればいいんだ!? |
Luna |
シエル
その。私たちの目的が完遂されれば、 おのずと元の世界に戻るはずです。 |
Ciel |
ルナ
なんだ、そうなのか。 そうならそうと、早く言えよな。 |
Luna |
バング
手立てがないと弱っていたところでござった。 これはありがたい情報でござる。 |
Bang |
バング
して、お主らの『目的』とはなんなのだ? |
Bang |
シエル
観測者を見つけて……。 |
Ciel |
ルナ
難しい話はなしにしろよな。 |
Luna |
シエル
ええと……窯を……。 ラーベさん、なんと説明すれば適切でしょうか。 |
Ciel |
ラーベ
こんなところか……まあ、シエルにしてはよく頑張った。 |
Raabe |
ラーベ
窯という施設を探している。簡単に言うと、 お前たちをこの世界に繋ぎ止めている元凶だ。 |
Raabe |
ラーベ
それを破壊すれば、 お前たちはこの世界から解放され、元のあるべき場所に戻れる。 |
Raabe |
ラーベ
ただしそのためには、 窯の場所を知っている人物を探さなければならなくてな。 |
Raabe |
ラーベ
特徴は『ドライブ能力者』というだけだ。 これといって手がかりは今のところない。 |
Raabe |
ルナ
はぁ? じゃあ結局、今のルナたちとなにも変わらないじゃんか。 |
Luna |
ルナ
誰が知ってて、どこにあるのか、わかんないんだろ? |
Luna |
ラーベ
まあ、そうなっちゃうな。 |
Raabe |
1: よかったら一緒に行かない? |
1: |
ラーベ
そうだな。いい意見だ、レイ。 採用。 |
Raabe |
ラーベ
情報はないが、我々には窯を破壊するための手段がある。 お前たちが元の世界に戻るためには、不可欠なものだ。 |
Raabe |
ラーベ
しかしこちらは少々戦力に欠ける。今のような大規模な襲撃が 今後もあるようだと対処が厳しい。 |
Raabe |
ラーベ
同行して、戦力となってくれないか? |
Raabe |
ラーベ
私たちの任務が無事完了すれば、 お前たちの望みも叶うわけだしな。 |
Raabe |
ラーベ
悪い話ではないだろ? |
Raabe |
バング
ふーむ、なるほど。 それは拙者としても、ありがたい提案でござるなぁ。 |
Bang |
バング
この見知らぬ世界では頼るものもわからぬ始末。 |
Bang |
バング
であれば、事情を知り、解決方法を持つというお主らの力に なることが一番よかろう。 |
Bang |
ルナ
ルナも! ルナも行くぞ! |
Luna |
ルナ
ルナたちは……大事な人に会いに行く途中だったはずなんだ。 よくわかんない世界でフラフラしてる暇はない! |
Luna |
セリカ
やったぁ! じゃあ決まり! みんな行こう! |
Celica |
ルナ
で、行くってどこ向かってるんだ? |
Luna |
セリカ
日本だよ。 |
Celica |
バング
日本……? 確か、かつてこの世界を襲った『災厄』によって 滅ぼされた土地……と、聞いておるが? |
Bang |
シエル
はい。その日本で消息を絶った、セリカさんの『父さん』について 調査するために向かっています。 |
Ciel |
ラーベ
ちょっと気になることもあってな。 そこにもしかしたら、我々の探し物があるかもしれない。 |
Raabe |
ラーベ
……なくても、手がかりくらいはあるだろう。 |
Raabe |
ルナ
そっか。わかった。 んじゃ、目的地は日本だな。 |
Luna |
バング
日本へ向かうのであれば、海に出ねばなるまい。 彼の国は島国だ。 か |
Bang |
バング
東へ向かい、 海岸沿いにあるだろう港町に辿り着く必要があろうな。 |
Bang |
ルナ
海か! 海が見れるんだな! |
Luna |
シエル
海がお好きなのですか? |
Ciel |
ルナ
別に好きってわけじゃないけど、 海ってなんか旅してる気分出るじゃんか。 |
Luna |
シエル
そう、なのですね。 |
Ciel |
ルナ
知らないけど。ルナはそうなるって話! お前のことはお前が決めればいいだろ。 |
Luna |
シエル
……………。 |
Ciel |
セリカ
それじゃあ、みんなで日本に向けてしゅっぱーつ! |
Celica |
ラーベ
待て待て。 今日はもう店じまいだ。 |
Raabe |
セリカ
え? |
Celica |
バング
うむ。日が傾いてきておる。 じきに夜になり、辺りは暗くなろう。 |
Bang |
バング
今から次の町を目指すより、 建物の跡地を利用して野営の準備をしたほうがよいでござるよ。 |
Bang |
セリカ
そっかぁ……残念。 |
Celica |
バング
夜闇の交戦は、危険すぎるでござるからな。 危険を回避し、体を整えるのもまた旅の極意でござる。 |
Bang |
シエル
バングさんは旅慣れているのですね。 |
Ciel |
バング
少々心得があるだけでござるよ。 では皆の衆! 火を起こす支度と参ろう! |
Bang |
セリカ
キャンプみたい。楽しそう! |
Celica |
ラーベ
楽しそうってお前、のんきな……。 |
Raabe |
1: そこがいいところじゃない? |
1: |
If Choice 1: | |
---|---|
セリカ
ふふ。でしょ! のんきでいられるなら、そのほうがいいよ。 |
Celica |
If Choice 2: | |
---|---|
セリカ
うん! みんなで行けば、たどり着けるよね。 きっと! |
Celica |
シエル
…………。 |
Ciel |
シエル
…………。 |
Ciel |
第4節 東を目指して①/ 4. Heading East - 1
Summary | |
---|---|
壊滅した街を訪れた二人の女性、ナインとト
リニティ。セリカの身を案じ後を追う彼女た ちだが、セリカは既にこの地を離れていた。 |
三角帽子の女
……なによ。なんにもないじゃない。 |
Woman Wearing a Witch's Hat |
フードの女
ナイン。昨日お話をうかがった方も、 そうおっしゃっていたではないですかぁ〜。 |
Woman Wearing a Hood |
フードの女
どうやら『災厄』の被害に遭っていて、 今はもう、街は残っていないらしい……と。 |
Woman Wearing a Hood |
ナイン
わかってるわよ、トリニティ。 |
Nine |
ナイン
だけどそいつ、教えたんでしょう? ここに街があるって、あの子に。 |
Nine |
ナイン
あの子のことだから、 真っ直ぐここへ辿り着けているとは思えないけれど。 |
Nine |
ナイン
それでもやっとの思いで到着した先が この有様だったなんて……。 |
Nine |
ナイン
あぁ、きっとがっかりしたはずよ。かわいそうに。 |
Nine |
トリニティ
そうかもしれませんね……優しい子ですから。 |
Trinity |
トリニティ
誰もいませんね。 |
Trinity |
ナイン
そりゃそうよ。本当に『災厄』によって崩壊したのなら、 ここはもう1年くらいこのままってことでしょ。 |
Nine |
ナイン
好き好んで寄り付くやつなんかいるものですか。 いたとしても、魔物の餌食になるだけよ。 |
Nine |
ナイン
……なのに、あの子ったら。 本当に、心配ばっかりかけるんだから。 |
Nine |
トリニティ
早く追いつけるといいのですけれど……。 あら? |
Trinity |
トリニティ
ナイン。この辺り、野営をした跡がありますよぉ。 どれくらい前に使用されたものかはわかりませんが……。 |
Trinity |
ナイン
見せて。 |
Nine |
ナイン
……残っているマナの痕跡からして、複数人ね。 それにこれ……あの子の魔力の反応だわ。 |
Nine |
トリニティ
では、ここで休憩されたのですね。 それも、誰かと一緒に。 |
Trinity |
トリニティ
あぁ、よかったですぅ。 おひとりではないのですね〜。 |
Trinity |
ナイン
ええ……ひとりじゃないようね。 |
Nine |
ナイン
ふぅん……誰かしら……私の可愛い妹に近付いて、 あの子をたぶらかした不届き者は……。 |
Nine |
ナイン
見つけなくちゃ……必ず。 |
Nine |
トリニティ
な、ナイン〜? 悪い人に騙されていると、決まったわけではありませんよぉ。 |
Trinity |
トリニティ
とても親切な人に、旅を手伝ってもらっているだけなのかも しれないじゃないですかぁ。 |
Trinity |
ナイン
だったとして、そいつが最後まで親切でいる保証はないわ。 相手はあの子よ? |
Nine |
ナイン
あれだけ可愛い子が近くにいて、 おかしな気を起こさないやつがいる!? いいえ、いないわ!! |
Nine |
トリニティ
え、ええと〜……世の中にはそういう気を起こさずに 親切にしてくださる方も、いると思いますけれど……。 |
Trinity |
トリニティ
とはいえ、保証がないのも事実です。 楽観視せずに、早く追いかけましょう〜。 |
Trinity |
ナイン
ええ。絶対に見つけて、連れ戻すわよ。 |
Nine |
ナイン
待ってなさい、セリカ。 |
Nine |
バング
なんと! お主、記憶喪失とな!? |
Bang |
1: はい、そうらしいんです |
1: |
ルナ
覚えてないって、なーんにもか? 全部? |
Luna |
セリカ
シエルちゃんたちに教えてもらったおかげで、 名前だけはなんとか思い出せたみたいだよ。 |
Celica |
ルナ
名前だけか……。他にはなんも思い出せないのか? シエルたちのことも? 仲間なんだろ? |
Luna |
1: お世話になってるのはわかるけど…… |
1: |
ルナ
ふーん。じゃあがっかりだな、シエルは。 自分のこと忘れられちゃったなんてさ。 |
Luna |
シエル
いえ……私は……。 |
Ciel |
バング
これ、よさんか。レイ殿とて、 よもや好きで忘れたわけでもあるまい。 |
Bang |
ルナ
それはそうかもしれないけどさー。 忘れられちゃったほうは、覚えてるじゃん。 |
Luna |
ルナ
ルナだったら嫌だな。大事な人がルナのこと忘れちゃったら…… 忘れちゃったら……。 |
Luna |
セナ
あ。泣いちゃう、ルナ? |
Sena |
ルナ
はぁ!? 泣かねーし! そんくらいでルナ様が泣くか! |
Luna |
ルナ
ただ、めちゃくちゃヘコむけどな!! |
Luna |
ラーベ
おーおー、お子様は物言いに遠慮がないな。 |
Raabe |
ルナ
お子様じゃない、ルナ様だ! |
Luna |
1: 確かに薄情だよね…… |
1: |
シエル
いえ。私のことはどうか、お気遣いなく。 むしろ……阻止できずに、申し訳ありません。 |
Ciel |
セリカ
もう、どっちかが悪いってことじゃないんだから、 ふたりともそんなシュンとした顔しないで。 |
Celica |
セリカ
大丈夫。ちょっとずつ思い出すよ。 |
Celica |
セリカ
もし思い出せなかったら、そのときはもう一度最初から 始めたらいいんだし。一緒にいるんだからさ。 |
Celica |
セリカ
……もし完全に忘れちゃっても、その人のことが 大事じゃなかったってことにはならないと思うよ。 |
Celica |
ルナ
えー。そうかなー。 |
Luna |
セリカ
そうだよー。 |
Celica |
バング
ふーむぅ……ラーベ殿、ご助言願いたい。 |
Bang |
ラーベ
……ああ、道か。 |
Raabe |
バング
うむ。この先前方、なだらかな丘陵地帯になっておる。 |
Bang |
バング
日当たりはよく明るいが、視界は開けているため ひとたび魔物と遭遇すれば、逃げ隠れはできまい。 |
Bang |
バング
丘を回り込むように、下方の森林地帯を行く手もござる。 だがあちらは昼間でも薄暗く、日暮れの影響も早くに受けよう。 |
Bang |
バング
はてさて、どちらの道を行ったものか。 この辺りで腹を決めておかねばならぬでござる。 |
Bang |
ラーベ
うーむ、そうなんだよなぁ。 今夜もきっと野宿だ。野営のことも考えないといけないし……。 |
Raabe |
ラーベ
とかなんとか言ってる間に、 せっかちな連中が集まってきたみたいだな。 |
Raabe |
シエル
はい。前方及び右方向から、多数の敵性反応が接近中です。 すでにこちらは補足されている模様です。 |
Ciel |
バング
なんと!? |
Bang |
バング
皆、固まって、離れるでないぞ。 こう開けた場所では容易に分断されかねん! |
Bang |
ルナ
わ、わかった! |
Luna |
シエル
レイさん、セリカさん、気を付けてください。 |
Ciel |
1: シエルさんの側から離れない、だよね |
1: |
シエル
はい。レイさんの護衛は、私の任務です。 お守りします。 |
Ciel |
ルナ
来た来た、たくさん来た! |
Luna |
シエル
対象を補足。迎撃します。 |
Ciel |
第4節 東を目指して②/ 4. Heading East - 2
Summary | |
---|---|
草原地帯を進むシエルたち。
一行は多数の魔物に囲まれるが、 共に力を合わせて襲撃を切り抜ける。 |
バング
ぬおぉぉぉぉぉぉぉぉ!! 多勢に無勢なにするものぞ!!! |
Bang |
ルナ
このこのこのこの! ……って、まだいるのかよ! |
Luna |
ラーベ
バングが危惧していた通り、 丘は多数に囲まれるときついな……。 |
Raabe |
シエル
そうですね……。 くっ……。 |
Ciel |
1: シエルさん、後ろ! |
1: |
シエル
はっ! |
Ciel |
ルナ
へっへーん! 隙ありだ! |
Luna |
ルナ
こいつら、数は多いけど大して強くないぞ。 やれるやれる! |
Luna |
バング
うむ! 我等の敵ではないわ! さあもうひと踏ん張りでござるよ、シエル殿! |
Bang |
シエル
は……はい! |
Ciel |
第4節 東を目指して③/ 4. Heading East - 3
Summary | |
---|---|
戦闘が終わると、その場からセリカの姿が消
えていた。手分けして捜索することになり、 シエルと入った森の奥で彼女を発見する。 |
ルナ
よっしゃぁ! どんなもんだ、魔物め。ばーかばーか! |
Luna |
シエル
はぁ、はぁ…… 対象の排除を完了しました……。 |
Ciel |
バング
よく戦ったでござるな、シエル殿。 見事であったぞ! |
Bang |
シエル
……ありがとうございます。ですが……。 |
Ciel |
ラーベ
不調は仕方がないだろう。 お前は特にレイの観測の影響を受ける。 |
Raabe |
1: ちゃんと思い出せればな…… |
1: |
シエル
いえ……問題ありません。 少し休憩をいただければ……すぐに動けます。 |
Ciel |
バング
あまり無理をするでないぞ。 おなごはこういうとき、どーんと頼もしい男に頼るものよ! |
Bang |
ルナ
どこにいんだよ、そんな男。 |
Luna |
バング
拙者がおるではないか! 皆まで言わせるな、わっはっはっは! |
Bang |
ラーベ
……ん? おいちょっと待て。セリカはどこだ? |
Raabe |
シエル
え? あ…… |
Ciel |
シエル
姿がありません。ミネルヴァさんもです。 |
Ciel |
ルナ
あ! そういえばさっき、魔物に追っかけられてたような……。 あのでっかい人形がいるから、大丈夫だと思ったんだけど。 |
Luna |
バング
新たな魔物に遭遇しているのやもしれん。 探すでござるよ! |
Bang |
シエル
はい! |
Ciel |
シエル
セリカさん! セリカさん! どちらですか? |
Ciel |
ルナ
おーい! どこだー、返事しろー! |
Luna |
1: セリカさーん! |
1: |
ルナ
ったくも〜、世話焼かせやがって〜。 |
Luna |
シエル
……それらしい反応は見つけられません。 魔素が濃いせいか、センサーも鈍いようです……。 |
Ciel |
シエル
もしかしたら、あの特異な方向感覚によって どこか遠くへ行ってしまったのかもしれません。 |
Ciel |
ルナ
え〜? ……もうちょっと遠くまで見てくるかぁ。めんどくさいな〜。 |
Luna |
シエル
では、私はこちらのほうを見てきます。 レイさん、ご同行願います。 |
Ciel |
1: うん、わかった |
1: |
If Choice 1: | |
---|---|
シエル
ありがとうございます。 |
Ciel |
If Choice 2: | |
---|---|
シエル
いえ、できればご一緒にお願いします。 |
Ciel |
シエル
魔物は異物である私やレイさんを、 積極的に標的にします。 |
Ciel |
シエル
いつ襲撃があるかわかりませんので、 できるだけ近くにいていただいたほうが安全です。 |
Ciel |
シエル
戦力としては、いささか力不足ですが……。 |
Ciel |
シエル
……いえ、なんでもありません。 行きましょう。 |
Ciel |
シエル
セリカさん、いらっしゃいますか? |
Ciel |
1: なかなか見つからないな…… |
1: |
シエル
検索……反応、確認できません。 こちらの方角から、ぼんやりとは感じられたのですが……。 |
Ciel |
シエル
魔素の影響が大きいようです。 もう少し検索してみます……。 |
Ciel |
1: セリカさんだ! |
1: |
第4節 東を目指して④/ 4. Heading East - 4
Summary | |
---|---|
セリカを見つけて合流できたが、今度はシエ
ルとはぐれてしまった。探して歩くうちに、 なぜか森の奥深くへと踏み込んでしまう。 |
|
セリカと踏み入った森の奥で、多数の魔物に
襲われてしまう。その窮地を救ったのは、 氷の魔術を操るアハトという女性だった。 |
セリカ
んー、みんなどこ行っちゃったのかな。 中々会えないなぁ。 |
Celica |
セリカ
もっとこっちかも。行ってみよう、ミネルヴァ。 |
Celica |
ミネルヴァ
…………。 |
Minerva |
ミネルヴァ
…………! |
Minerva |
セリカ
え、なに? どうしたの? |
Celica |
1: セリカさーん! |
1: |
セリカ
わ! レイ!? |
Celica |
セリカ
もしかして……私のこと、探してくれてたの? ありがとう! |
Celica |
セリカ
戦ってる最中に、魔物に追いかけられちゃって…… 逃げてたら、いつの間にかみんなとはぐれちゃってたの。 |
Celica |
セリカ
すぐにミネルヴァが来てくれたから、魔物は倒せたんだけど…… みんなのところに辿り着けなくなっちゃって、困ってたんだ。 |
Celica |
セリカ
レイと会えてよかった。 まずはひとり、合流だね。 |
Celica |
1: え? ひとり? |
1: |
If Choice 1: | |
---|---|
セリカ
うん。あなたひとり……だよ? |
Celica |
If Choice 2: | |
---|---|
セリカ
え? シエルちゃん、いないよ? |
Celica |
…………。 ……………………。 |
|
1: あれぇ? いない!? |
1: |
セリカ
あらら……。じゃあ、探しに行こう。 途中まで一緒だったんでしょ。だったらきっと近くだよ。 |
Celica |
セリカ
確か、こっちから来たよね。行ってみようよ! |
Celica |
1: ん? こっちだっけ? |
1: |
セリカ
レイ、早く早く! |
Celica |
セリカ
うーん……シエルちゃん、いないねぇ。 どこ行っちゃったんだろう。 |
Celica |
1: 本当にこっちだったかな…… |
1: |
1: 本当にこっちだったかな…… |
1: |
セリカ
大丈夫、心配しないで。 森って道に迷いやすいけど、そのうち出られるから! |
Celica |
セリカ
道はぜんぶ繋がってる、って言うでしょ? 森の中はどこも道みたいなものだから、絶対出られるよ。 |
Celica |
セリカ
はぐれないように、ついてきてね。 |
Celica |
セリカ
シエルちゃーん、どこー? 私たちはここだよー! |
Celica |
セリカ
……ん? 今、なにか聞こえた? |
Celica |
ミネルヴァ
……! |
Minerva |
魔物
グオオォォォォォォ!!! |
Monster |
セリカ
きゃぁっ! び、びっくりした! |
Celica |
魔物
ギシャァァァァァァァァ!! |
Monster |
1: うわ、こっちからも来た! |
1: |
セリカ
ミネルヴァ、頑張れる……? ごめんね、お願い! |
Celica |
ミネルヴァ
…………。 |
Minerva |
ミネルヴァ
…………。 |
Minerva |
セリカ
ミネルヴァ、大丈夫? 傷、すぐに治すから。 |
Celica |
セリカ
わわわ、今度はこっちから……! |
Celica |
1: 僕(私)が囮になるから逃げて! |
1: |
If Choice 1: | |
---|---|
セリカ
そ、そんなことできないよ! ミネルヴァ、お願い。頑張って……! |
Celica |
If Choice 2: | |
---|---|
セリカ
そうだよね……みんな近くにいるはず! ミネルヴァ、お願い。頑張って! |
Celica |
ミネルヴァ
…………。 |
Minerva |
ミネルヴァ
……! |
Minerva |
セリカ
え……!? な、なに今の? 魔術? 誰? |
Celica |
金髪の女
……怪我はない? |
Blonde Woman |
セリカ
あ! あなたが助けてくれたの? ありがとうございます! |
Celica |
金髪の女
いいえ、どういたしまして。 魔物がずいぶん騒がしいから、まさかと思ったら。 |
Blonde Woman |
金髪の女
もうすぐ日が暮れようってときに森の中を歩き回るなんて、 危ないわよ。一体どうしたっていうの、迷子? |
Blonde Woman |
セリカ
は、はい……実は。 |
Celica |
セリカ
仲間と一緒だったんですけど、はぐれちゃって。 探してる途中だったんです。 |
Celica |
金髪の女
仲間? そう、近くにいるの。 だったらそこまで連れて行ってあげるわ。 |
Blonde Woman |
金髪の女
こんな場所に子供をふたり置き去りにするなんて、 気分良くないものね。 |
Blonde Woman |
セリカ
わぁ、ありがとうございます! 助かっちゃう。 |
Celica |
金髪の女
それで? どっちから来たとか、わかる? |
Blonde Woman |
セリカ
はい。あっちです。 |
Celica |
金髪の女
……そっち、思いっきり崖だけど。 あなたたち、崖から落ちてきたの? |
Blonde Woman |
セリカ
え? あれ? あ、ほんとだ。 あれ? |
Celica |
金髪の女
呆れた。方角もわからずに、森の中を歩き回ってたの? 自殺行為よ。 |
Blonde Woman |
セリカ
あう……すみません……。 |
Celica |
金髪の女
はぁ。本当に、私に会えたことを感謝するのね。 少し辺りを探ってみるから、大人しくしていなさい。 |
Blonde Woman |
セリカ
はい! |
Celica |
セリカ
これ、魔術だ……。さっきの氷の技も魔術だった。 あなた、魔術師なんですね。 |
Celica |
アハト
……そうよ。名はアハト。 そういえば、あなたたちは? |
Acht |
セリカ
セリカ=A=マーキュリーです。こっちはミネルヴァ。 それからレイ。記憶喪失なの。 |
Celica |
アハト
記憶喪失? ……それ本気? 冗談? |
Acht |
1: 本気なんです |
1: |
アハト
ふうん。それはさぞかし、お困りでしょうね。 自分がどこの誰かもわからないんでしょう? |
Acht |
アハト
……まあ、私も人のこと言えないわけだけど。 |
Acht |
セリカ
どういう意味ですか? お姉さんも記憶喪失? |
Celica |
アハト
いいえ、違うわ。 ただ私は……ふふ、変な女だと思うでしょうけど。 |
Acht |
アハト
私……この世界の者ではないのよ! |
Acht |
1: それって…… |
1: |
セリカ
バングさんやプラチナちゃんと一緒だ! |
Celica |
アハト
なんですって!? |
Acht |
アハト
……あなたたち、面白い情報を握っているみたいね。 道すがらでいいわ。少し聞かせてくれない? |
Acht |
セリカ
はい。いいですよ。 |
Celica |
第4節 東を目指して⑤/ 4. Heading East - 5
Summary | |
---|---|
アハトの先導によって、無事にシエルたちの
もとに辿り着くことができた。アハトは自ら を、バングらと同じ『異物』であると言う。 |
ラーベ
……よしと。とりあえず応急処置はこんなもんか。 |
Raabe |
シエル
……ありがとうございます。 至急、レイさんの捜索に戻ります。 |
Ciel |
ラーベ
ああ。今度は私も同行しよう。 |
Raabe |
ルナ
はぁ? 魔物にやられて怪我したばっかじゃん。 大人しくしてろよ〜。 |
Luna |
バング
そうでござるよ。無理はいかんでござる。 捜索なら拙者たちが向かうゆえ。 |
Bang |
シエル
問題ありません。戦闘行動に影響はありませんし、 索敵も機能しています。 |
Ciel |
シエル
負傷箇所はレイさんと合流できれば、 徐々に修復されます。ご心配は無用です。 |
Ciel |
ルナ
そうは言うけどさぁ……。 |
Luna |
ラーベ
レイは我々にとって、最重要項目のひとつだ。 こう言ってはなんだが、シエルの多少の怪我よりもな。 |
Raabe |
ルナ
お前! そんな言い方冷たいだろ! |
Luna |
シエル
いえ、当然の……。 |
Ciel |
シエル
反応、感知しました。 |
Ciel |
ラーベ
ん? 反応? ……お! 本当だ。あっちだな。 |
Raabe |
セリカ
おーい! みんなー! |
Celica |
シエル
セリカさんの声です。……目標、視認しました。 レイさんも一緒です! |
Ciel |
セリカ
シエルちゃーん、プラチナちゃーん! ああ、よかった。みんないた〜! |
Celica |
ラーベ
お前たち! ったく、一体どこに行ってたんだ!? |
Raabe |
ラーベ
非戦闘員がふたり揃って行方をくらますとか、 肝が冷えるどころの話じゃないぞ! |
Raabe |
セリカ
ごめんなさい……。 魔物から逃げてたら、森に迷い込んじゃって。 |
Celica |
1: すみませんでした…… |
1: |
シエル
レイさん、セリカさん。 おふたりともご無事ですか? お怪我は? |
Ciel |
セリカ
大丈夫だよ。 シエルちゃんは……って、あ、怪我してる!? |
Celica |
シエル
はい。レイさんを捜索している最中に、 魔物に遭遇し……不覚を取りました。 |
Ciel |
1: 僕(私)のせいで…… |
1: |
シエル
いえ。違います。レイさんは セリカさんを発見し、即座に追跡を開始されました。 |
Ciel |
シエル
……反応が遅れ追従できず、反応も見失ってしまった 私の過失です。申し訳ありません。 |
Ciel |
セリカ
ううん、そもそも私がいなくなったからだよね。 ごめんね。傷見せて、すぐ治すから。 |
Celica |
シエル
気にしないでください。レイさんと 合流できましたから、少しすれば修復が完了するはずです。 |
Ciel |
セリカ
だとしても、痛いのは早くになくなったほうがいいでしょ。 見せて。 |
Celica |
シエル
……はい。 |
Ciel |
シエル
……温かいです。 |
Ciel |
セリカ
嫌な感じしない? よかった。 私にはこれくらいのことしかできないから。バンバン頼って。 |
Celica |
セリカ
頼ってもらえたら、私も嬉しい。 |
Celica |
シエル
…………。 |
Ciel |
シエル
……はい。 |
Ciel |
セリカ
治療、完了! 痛くない? |
Celica |
シエル
はい。違和感もまったくありません。 |
Ciel |
セリカ
よかったぁ〜。 |
Celica |
バング
うむ、皆合流できたし、一件落着でござるな! ところで……。 |
Bang |
バング
こちらの美しい女性は、どなたでござるか? |
Bang |
ラーベ
『アハト』ねぇ……。 旅の魔術師で……自分を異物だと感じていると。 |
Raabe |
アハト
ええ、そう。 あなたたちのことは、さっき人形遣いのお嬢さんから聞いたわ。 |
Acht |
アハト
そちらの小さい子と、逞しい殿方。 ふたりは『自分がいた世界に戻る』ために旅をしているそうね。 |
Acht |
バング
た……逞しい、殿方……。 |
Bang |
ルナ
オイ、デレデレすんな、おっさん。 |
Luna |
ルナ
そうだ。ルナの知ってる『世界』はこういう感じじゃない。 もっと……なんていうか……よくわかんないけど、違うんだ! |
Luna |
ルナ
だから帰る。 ……お前もそうなのか? |
Luna |
アハト
ええ。どうやら私たち、同じような境遇みたい。 |
Acht |
アハト
それで……そちらのラーベさん? |
Acht |
アハト
あなたが率いる人たちは、私のような人間を……、 『異物』だったかしら? |
Acht |
アハト
その『異物』を元の世界に戻す術をご存知だとか。 |
Acht |
アハト
というより、あなたがたの目的を達成することで、 結果的に私は元の世界へと戻される……。 |
Acht |
アハト
といったような説明を受けたのだけれど。 本当のことなの? |
Acht |
ラーベ
その通り。間違いない。 |
Raabe |
ラーベ
簡単に達成できることではないが、 我々は現在それを目指して、任務活動中だ。 |
Raabe |
アハト
目的地は日本だそうね。 探し物は日本に? |
Acht |
ラーベ
行ってみないことにはわからん。 が……可能性はあると思っている。 |
Raabe |
アハト
そう。 それなら、私もあなたたちに同行させてもらうわ。 |
Acht |
アハト
そこのチビさんと赤マフラーさんがOKなら、 私も構わないでしょう? |
Acht |
ラーベ
おいおい、誰でも歓迎ってわけじゃないんだぞ。 素性の知れないやつをそう簡単に受け入れられるか。 |
Raabe |
ラーベ
……と、言いたいのが本音だが、本当に異物となると 素性なんてないも同然だしな。 |
Raabe |
セリカ
アハトさんはいい人だよ。私たちを助けてくれたし。 それにとっても強い魔術師だから、頼りにもなると思うな。 |
Celica |
ラーベ
さっきも言っていたな、魔術師だとか。 |
Raabe |
アハト
ええ。連れて行くのに値する実力かどうか、 測りたいというのなら、今すぐ味わわせてあげましょうか? |
Acht |
シエル
危険行動はやめてください。 排除対象になります。 |
Ciel |
アハト
あら、真面目なのね、お嬢さん。 |
Acht |
アハト
だけどあなたで私をどうにかできるなんて、 思い上がらない方がよくてよ。 |
Acht |
セリカ
ち、ちょっとちょっと、喧嘩みたいになってない? |
Celica |
アハト
私はそんなつもりはないわ。 そうしてほしいなら、してあげるって言ってるだけ。 |
Acht |
バング
な、なにやら女の戦いめいた雰囲気になってきたでござるよ。 拙者、固唾を飲んでしまうでござる……。 |
Bang |
ルナ
どいつもこいつも、なにやってんだよー。 |
Luna |
ルナ
んお? おーおー。 だったらちょうどいいのが来たみたいだぞ。 |
Luna |
ルナ
あいつで実力、見せてもらおーじゃん。 |
Luna |
シエル
大型の魔物、接近中です! |
Ciel |
ラーベ
また魔物か! しかもデカいやつ……。 本当にこの世界は魔物が多いな! |
Raabe |
アハト
ふん、この程度じゃ私の力をどこまで見せつけられるか 怪しいものだけど。いいわ、入隊試験があるなら受けましょう。 |
Acht |
シエル
対象、なおも接近。攻撃態勢に移行します。 |
Ciel |
アハト
無理に手出しすることないわ。 私に任せなさい。 |
Acht |
第4節 東を目指して⑥/ 4. Heading East - 6
Summary | |
---|---|
日本への同行を申し出たアハトは、氷の魔術
で魔物を退けその実力を示す。一行は彼女を 仲間に加え、次の目的地へと歩みを進める。 |
アハト
ざっとこんなものね。 どう? 私を味方に引き入れるメリット、感じてもらえた? |
Acht |
バング
ビシバシ感じたでござるよ! いやはや、魔術とはすごいものでござるな! |
Bang |
ルナ
すっげーな。オバさん、めちゃくちゃ強いじゃん! |
Luna |
アハト
オバ……。 |
Acht |
ラーベ
うむうむ、こりゃ期待以上だ。 魔力はかのイシャナ十聖レベルなんじゃないか? |
Raabe |
アハト
あら、そう? ……そうでしょうね。 |
Acht |
シエル
どうなさいますか、ラーベさん? |
Ciel |
セリカ
私は、一緒に来てほしいって思うけどな。 |
Celica |
ラーベ
ふむーん……。 |
Raabe |
ラーベ
採用!! |
Raabe |
ラーベ
ちょうど頭脳派の助っ人もほしいところだったからな。 |
Raabe |
アハト
どうもありがとう。 改めて、よろしくね。アハトよ。 |
Acht |
1: よろしくお願いします! |
1: |
If Choice 1: | |
---|---|
アハト
ええ。よろしく。 |
Acht |
If Choice 2: | |
---|---|
アハト
ええ。そうね。 |
Acht |
ラーベ
では戦力拡充もすんだところで、野営場所を決めるぞー。 道はこのまま、丘コースだ。 |
Raabe |
ラーベ
方向音痴を抱えて森の中を抜けるのは あまりにリスクがあると判断した。 |
Raabe |
ラーベ
その分、魔物の襲撃は増えるかもだが、 これだけ戦力が整っていればなんとかなるだろ。 |
Raabe |
セナ
僕らは少しくらい、さぼってても大丈夫かもね〜。 |
Sena |
バング
なにを言うか。お主とて立派な戦力! 頼りにしているでござるよ! |
Bang |
セナ
あ〜……じゃあ、ルナ、あとはよろしく〜。 |
Sena |
ルナ
あ、こら! ルナばっかにやらせんな! たまにはセナも戦えよな! |
Luna |
アハト
……変わった子ね。 |
Acht |
セリカ
そうなの。お話してると、楽しいよ。 |
Celica |
ミネルヴァ
…………。 |
Minerva |
シエル
…………。 |
Ciel |
1: シエルさん、どうしたんですか? |
1: |
シエル
……いえ、なんでもありません。 先行し、野営地の候補を探してきます。 |
Ciel |
ラーベ
おお、よろしく。 |
Raabe |
ラーベ
明日には、この先にある村に到着できるはずだ。 順調にいけばな。 |
Raabe |
ルナ
やった。そしたら、久し振りにお布団で寝れるんだな! |
Luna |
バング
ひとつ風呂などいただければ、最高なのでござるがなぁ。 |
Bang |
アハト
その前に、目指している村がまだ生き残ってることを 願っておくのね。 |
Acht |
アハト
旅をしている間、あちこち見てきたけれど。 『災厄』とやらのせいで世界はひどい有様じゃない。 |
Acht |
アハト
情報も錯綜している。 『村がある』というその情報も、信憑性は薄いわよ。 |
Acht |
セリカ
そうだね……。 次の場所は、みんなが平和に暮らせてたらいいな……。 |
Celica |
セリカ
それを確認するためにも! 今夜はしっかり休もうね。 |
Celica |
セリカ
みんなたくさん戦ってくれたんだし。 料理の支度は私にやらせて! |
Celica |
1: 自分にも手伝わせて |
1: |
セリカ
うん、一緒にやろ! よ〜し、張り切っちゃうぞ〜。 |
Celica |
ラーベ
はしゃぐのはいいが、まずは場所の確保だっつーの。 ほら、移動するぞ。 |
Raabe |
セリカ
はーい。 |
Celica |
第5節 黒くて大きな化け物①/ 5. Gigantic, Pitch-Black Monster - 1
Summary | |
---|---|
森を抜け村はずれに出た一行は、行く手に生
体反応を感知した。近づいてみると魔物の 群れに襲われる少年を発見、救出に動く。 |
気が付けば、あなたは世界にいなかった。 |
|
あなたがいない世界など、暗闇のようなもの。 どこへも行けない。なにもできない。 |
|
だから。 |
|
私はあなたに会いたい。 |
|
会いたい。 |
|
セリカ
わぁ、抜けたー! やっと開けたところに出たよ〜。 |
Celica |
ルナ
ふい〜……ようやくだよ……。 朝から歩きっぱなしで、疲れたぁ〜! |
Luna |
アハト
そうね……。丘陵地帯を越えたと思ったら、荒野に山道。 最後は森。悪路続きだったもの……。 |
Acht |
アハト
さすがに堪えたわ。 |
Acht |
バング
確かに険しい道のりでござった。だが次の目的地を思えば、 これが最善の道であったのでござるよ。 |
Bang |
ラーベ
そうだそうだ。もっと迂回すれば平坦な道もあったが、 そっちだとあと2日は野宿だ。 |
Raabe |
ラーベ
最短にして最善のルートを導き出した私の能力に、 もっと感謝してくれてもいいんだぞ。 |
Raabe |
ルナ
へ〜んだ。それだって、シエルとオッサンが何度も 地形確認して歩き回ったからじゃんか。 |
Luna |
ルナ
オマエだけの手柄じゃないぞ! |
Luna |
ラーベ
な〜におう、生意気な。 |
Raabe |
ルナ
生意気じゃないもんねー。 こういうの、正論っていうんだもんねー。べーだ。 |
Luna |
ラーベ
っか〜〜〜! 言い方! 言い方がカチンとくるんだよなぁ! |
Raabe |
1: 仲がいいなぁ |
1: |
If Choice 1: | |
---|---|
ラーベ
いいわけあるか! |
Raabe |
ルナ
それはこっちの台詞だ! |
Luna |
If Choice 2: | |
---|---|
ルナ
だーれが子供だ! スカポンタン! ルナ様と呼べ! |
Luna |
ラーベ
甘やかすな。つけあがるぞ、このタイプは。 |
Raabe |
シエル
ご歓談中、失礼します。 前方に生体反応を多数、確認しました。 |
Ciel |
シエル
魔物ではありません。 おそらく人です。 |
Ciel |
バング
おお! きっと目指していた村に違いあるまい! |
Bang |
ルナ
村! よっしゃぁ、早く行こう! ふかふかのベッドと〜、おいしいごはんにありつくぞ〜! |
Luna |
アハト
ありつく、ってあなたねぇ。品位のない言い方だこと。 |
Acht |
ルナ
ヒンイなんか知るか! そんなもんじゃお腹は膨れないってね。 |
Luna |
ルナ
ってなワケで、お前ら行くぞ! ルナ様に続け〜! |
Luna |
セリカ
あ、待って待って〜! 私も行く〜! |
Celica |
ラーベ
おいこら! まだ村までは距離がある! 独断先行するんじゃない。また魔物に襲われるぞ! |
Raabe |
ラーベ
……ったく。世話の焼けるお子様たちだ。 |
Raabe |
アハト
だけど、私たちも少し急いだほうがいいかもしれないわよ。 妙に空気が騒がしいわ。 |
Acht |
バング
空気とな……ふうむ。 |
Bang |
ラーベ
シエル、なにかわかるか? |
Raabe |
シエル
検索します。 …………。 |
Ciel |
シエル
……あっ。前方に奇妙な反応を確認。 それと同じ地点に、人らしき反応があります。 |
Ciel |
シエル
おそらく、交戦中と思われます。 |
Ciel |
セリカ
それ、誰かが襲われてるってこと? 魔物かも! 大変、助けにいかなくちゃ! |
Celica |
1: 急ごう、みんな! |
1: |
シエル
……了解。追従してください。 |
Ciel |
バング
拙者も行くでござるよ! |
Bang |
バング
助けを求める者のところに、正義の忍びあり、 でござるからなぁ! |
Bang |
アハト
はぁ。本当に考えなしのお人好しって感じね。 あなたのお連れ様方は。 |
Acht |
ラーベ
そうなんだよ。もうちょっと損得とか後先とか考えてくれると、 生存率も上がるだろうになぁ。 |
Raabe |
ラーベ
でも……だからこそ備わった力、なのかもしれないな。 |
Raabe |
アハト
力というのは……あの子の? あれはなに。ドライブなの? |
Acht |
ラーベ
とりあえず、そういう扱いでいる。 実のところ、私にもどう判断していいのかわからん。 |
Raabe |
ラーベ
……って、お前。レイの力のこと、 理解しているのか。 |
Raabe |
アハト
さあ。見ているだけだもの。なんとなくしかわからないわ。 ……ただ、『なんとなくは』わかっている。ってところかしら。 |
Acht |
アハト
私たちも急いだほうがいいわね。 あの子たちに任せておくのは少しばかり不安だもの。 |
Acht |
ラーベ
それについてはまったく同感。 行くか。 |
Raabe |
子供
うわぁぁぁ……! |
Child |
影
…………。 |
Shadow |
子供
な、なんなんだ! なんなんだよぉ! なんでこんなところに魔物が……! |
Child |
影
…………。 |
Shadow |
子供
真っ黒い……影……もしかして、これがあの……。 ひぃっ、く、くるなぁ! |
Child |
バング
待て待て待て待てぇぇぇぇい! どこの誰だか知らぬが、 よってたかって子供をいじめるとはなんたる悪行! |
Bang |
バング
この愛と正義の燃える忍、シシガミ=バングの目の黒いうちは、 見過ごさないでござる!!! |
Bang |
セリカ
待って〜〜〜! バングさん、速い……やっと追いついた〜。 運んでくれてありがとう、ミネルヴァ。 |
Celica |
ルナ
ぜぇ、はぁ、この、オッサン! |
Luna |
ルナ
結局お前が誰よりも独断センコーしてんじゃねーか、 ひとりでかっこつけてずるいぞ! |
Luna |
バング
わっはっはっはっはっは! こういうのは早い者勝ちよ! |
Bang |
シエル
対象を確認。要救助者一名。 敵性反応……あれは……なんでしょう? |
Ciel |
1: 黒いもやもやしたものが…… |
1: |
アハト
魔素の塊ね。 魔素が集まってなにかの形を取ろうとすることがあるの。 |
Acht |
アハト
そこにどんな意図があるのかはわからないけれど……。 できあがったものは、大体魔物と同じよ。 |
Acht |
アハト
理性も本能もなく、ただそこにあるものを飲み込んで破壊する。 それだけ。 |
Acht |
ルナ
要は、ぶっ倒していいってことだよな! |
Luna |
ラーベ
そういうことだ。 |
Raabe |
子供
た、た、助けて……! |
Child |
1: そこを動かないで! |
1: |
シエル
戦闘態勢に移行。対象を排除します! |
Ciel |
第5節 黒くて大きな化け物②/ 5. Gigantic, Pitch-Black Monster - 2
Summary | |
---|---|
少年の案内で目的の村に着く一行。だがそこ
は『災厄』と呼ばれる黒い怪物に襲われ、 薬や食料すら満足に揃わない状態だった。 |
ルナ
おー! ほんとに村あった! |
Luna |
セリカ
よかったぁ〜。無事に辿り着けて。 案内してくれて、ありがとう。 |
Celica |
子供
へへ……どういたしまして! |
Child |
子供
でも助けてくれたのはお姉ちゃんたちだから、 お礼を言うのは俺のほうだよ。ありがとう。 |
Child |
バング
うむうむ、きちんと礼を言えるのは素晴らしいことでござる。 |
Bang |
母親
お前……どこに行ってたの! 姿が見えないと思ったら……まさか、村の外に行ってたの!? |
The Mother |
子供
ご、ごめんなさい。 みんなが、薬草がもっとあればって言ってたから……。 |
Child |
母親
薬草……こんなもののために! お前にもしものことがあったら、お母さんとても……。 |
The Mother |
母親
あ……ああ、すみません。 もしかして、この子を保護していただいたんですか? |
The Mother |
ラーベ
ちょうど、魔物に囲まれてるところを通りがかったもんでね。 いや、タイミングがよかった。 |
Raabe |
母親
魔物に!? なんて無茶を……。 |
The Mother |
子供
ごめんなさい……お母さん。 |
Child |
ルナ
なに情けない顔してんだ、お前。 みんなのために頑張って薬草採りに行ったんだろ。 |
Luna |
子供
あ……う、うん! |
Child |
ルナ
ま、その結果、黒いうねうねしたものに囲まれて、 泣きながらチビってたらカッコつかないけどなー! |
Luna |
子供
ち、チビってない!! あと、泣いてもない!! |
Child |
ルナ
泣いてたね〜。 べそかいてさ〜、腰抜かしてたじゃんか。 |
Luna |
子供
ぬ、抜かしてないってば! |
Child |
ラーベ
やれやれ。一瞬いいこと言った風だったのに、すぐこれか。 |
Raabe |
1: ルナなりの励まし方かな? |
1: |
セリカ
そうだね。そうかも。 |
Celica |
母親
皆さま、本当にありがとうございます。 息子を助けてくださって……。 |
The Mother |
母親
なんとお礼を申し上げていいか、わかりません。 |
The Mother |
アハト
だったら、そのお礼代わりに教えてもらえないかしら。 私たち、休むところを探しているんだけど。心当たりはない? |
Acht |
母親
休むところ……ですか? この村で? それは……。 |
The Mother |
シエル
宿泊施設のようなものは、ないのでしょうか。 |
Ciel |
母親
……昔はね、あったんですけど。今はもう。 |
The Mother |
母親
以前は土も豊かで、特産品なんかもあって。 遠くから人がくることもあったような場所なんですけどねぇ。 |
The Mother |
母親
6年前の、あの『災厄』以降は……村は廃れる一方でして。 |
The Mother |
母親
周りにあった大きな都市も、 みんな『災厄』にやられてしまいました。 |
The Mother |
母親
この村は取り残されて…… 住人はみんな、自分たちの生活を営むのに手いっぱいです。 |
The Mother |
母親
おもてなしやご宿泊なんて、とても……。 |
The Mother |
ルナ
ってことは、宿なし!? マジかよ! え〜、ふかふかのベッドで眠れると思ったのにぃ〜。 |
Luna |
セナ
もう、ルナ〜。わがまま言ったらだめだよぉ。 それに僕たち、野宿慣れっこじゃない。 |
Sena |
ルナ
慣れとかの問題じゃない! いくら慣れてようが、ベッドで寝たいもんは寝たいんだ! |
Luna |
シエル
正式な宿でなくても構いません。 どこか休めるところは、借りられないでしょうか。 |
Ciel |
シエル
せめてレイさんだけでも……。 |
Ciel |
ルナ
なんでそいつだけなんだよ。ルナも休みたい〜〜〜! |
Luna |
シエル
あ。そ、そうですね。 ルナさんも、休めるような場所は……ありませんか? |
Ciel |
母親
そうですねぇ……。 |
The Mother |
母親
……息子を助けてくださった方々ですから。 うちでよかったら、使ってください。 |
The Mother |
母親
と言っても、狭い場所ですけれど。雨風はしのげると思います。 人数分の寝具はないんですけれど……構いませんか? |
The Mother |
母親
どこかで調達してくるというのも、難しくて……。 |
The Mother |
バング
そうでござろうなぁ……。 見たところ、商店のような場所もない。 |
Bang |
バング
それぞれがそれぞれの家で、できることを精一杯やる…… そんな様子でござる。 |
Bang |
バング
こういうのは、覚えがあるでござるよ。 拙者の故郷を思い出すでござる。 |
Bang |
ラーベ
ほう。元いた世界のことを、思い出したのか? |
Raabe |
バング
いや、生憎。 なんとなく、そうだったような気がしているだけでござる。 |
Bang |
バング
だが故郷を愛しく思う気持ちに偽りはないでござる! いつになるかはわからぬが、きっと帰ってみせるでござるよ! |
Bang |
アハト
……そうね。 |
Acht |
アハト
だけど、ちょっと気になるわね。この村、流通が途絶えて 廃れているっていうだけじゃないように見えるけど。 |
Acht |
シエル
はい。あちこちに半壊状態の家屋が見られます。 まるでなにかに、襲撃されたあとのようです。 |
Ciel |
1: 襲撃って、魔物に? |
1: |
If Choice 1: | |
---|---|
シエル
破壊された建物の痕跡から推測すると、 かなり大型の魔物だと思われます。 |
Ciel |
シエル
災厄の襲撃……とは、考えにくいですね。 災厄が原因であれば……。 |
Ciel |
If Choice 2: | |
---|---|
セリカ
災厄? でも……ここ一年くらいは、 どこにも出現していないって話だよ。 |
Celica |
セリカ
それに、もし災厄が襲ってきたのなら……。 |
Celica |
ラーベ
ひとつ前に立ち寄った、廃墟と化した街の被害状況に鑑みると、 被害が小規模すぎる。 |
Raabe |
子供
ううん……災厄のせいだよ! 夜になると『災厄』が村を襲いにくるんだ! |
Child |
セリカ
それ、本当? |
Celica |
ルナ
だーかーらぁ、その災厄ってのはどこにも出てきてないんだろ。 なのになんでこの村には現れるんだよ。 |
Luna |
子供
なんで、って言われても……俺にはわかんないけど。 でもあれは、確かに『災厄』だよ! |
Child |
アハト
……少し詳しく状況を聞きましょうか。 |
Acht |
アハト
黒くて大きな化け物が、夜な夜な村を襲撃しては、 建物を壊したり、人を襲ったりしている……ってこと? |
Acht |
子供
うん、そうだよ。俺、ちゃんと見たんだ。 ……そいつに襲われて、お父さんもひどい怪我をしたんだよ。 |
Child |
1: 黒くて大きな |
1: |
シエル
それが『災厄』の姿なのですか? |
Ciel |
子供
そう聞いたんだ。 『災厄』は黒くて、すごく大きな化け物だって。 |
Child |
セリカ
うん。私も同じように聞いてる。 |
Celica |
セリカ
黒くて大きな……街ひとつくらい呑み込めてしまうくらい、 途方もない大きさの『ナニカ』だって。 |
Celica |
セリカ
いくつも頭がある、獣のような姿だっていう報告も あったみたいだよ。 |
Celica |
ラーベ
…………。 |
Raabe |
アハト
だけど、街ひとつ呑み込めてしまうのなら、 この程度の規模の村なんて一度で滅ぼせるんじゃない? |
Acht |
アハト
それなのに、 この子の話だと襲撃は何度もあったみたいじゃない。 |
Acht |
子供
それは……そうかもしれないけど。 でも実際に、あの黒い化け物は何度も村を襲ってるんだ。 |
Child |
子供
村のみんなも『災厄』だって言ってる。 俺の前では、平気だとか言うけど。みんな怖がってるんだ。 |
Child |
バング
この村に踏み入ったときから、なんとな〜く住人の表情が 暗く沈んでいるように思えたでござるが……。 |
Bang |
バング
その襲撃に怯えているがゆえのことでござったか。 |
Bang |
ルナ
襲われるってわかってるなら、なんで逃げないんだ? |
Luna |
子供
どこにも逃げられないって、大人はみんな言ってる。 近くに町はないし、行くあてもないし。 |
Child |
子供
じいちゃんばあちゃんがたくさんいるから、みんな連れて いくのは無理だけど……置いてもいけないって。 |
Child |
バング
気持ちはわかるでござるよ。共に暮らした者を切り捨てるなど、 簡単にできることではござらん。 |
Bang |
バング
それにここは、皆が大事に守ってきた土地でもあろうしなぁ。 |
Bang |
ルナ
だからってさぁ〜。 |
Luna |
1: なんとか力になりたいな…… |
1: |
セリカ
そうだよね! 私も、同じこと考えてたの。 |
Celica |
セリカ
村を襲撃するのが災厄なら…… 倒すことはできないかもしれないけど。 |
Celica |
セリカ
これ以上村が壊されないように、 追い払ったりするくらいはできないかな……? |
Celica |
ラーベ
相手が本当に『災厄』なら、まず不可能だろうな。 |
Raabe |
アハト
だけど違うものだったら? |
Acht |
ラーベ
無論、不可能とは言い切れない。 なにより……その『災厄』とやらに興味がある。 |
Raabe |
子供
それじゃあ……『災厄』を追い払ってくれるの!? |
Child |
母親
……ああ、すみません、息子の相手までしていただいて。 毛布、こちらに置いておきます。粗末なところでごめんなさい。 |
The Mother |
セリカ
ありがとうございます! わあ、こんなにたくさん。ふかふか、あったかい〜。 |
Celica |
子供
ねえねえ、お母さん。 この人たちが『災厄』を退治してくれるって! |
Child |
母親
なんですって? なにを言ってるの……。 すみません、きっとこの子が無茶を言ったんでしょうね。 |
The Mother |
母親
あの化け物を……退治するだなんて。とんでもないことです。 そんな危険なこと、絶対になさらないでください。 |
The Mother |
母親
あれは……とんでもないものです。 最初は私たちもなんとかしようとしましたが……。 |
The Mother |
母親
まともに戦おうとすればするほど、 被害者が増えるだけです。 |
The Mother |
ルナ
だからって、ずっと好き勝手させとくのか? それじゃいつか、ぜーんぶ壊されちゃうじゃんか。 |
Luna |
母親
そうかもしれません……でもだからって、わざわざ自分から 命を捨てにいくことはないでしょう……。 |
The Mother |
母親
皆さんはお客様です。この村の人間ではないのですから。 村のために危険を冒す必要なんてありませんよ。 |
The Mother |
母親
悪いことは言いませんから、真に受けないでください……。 |
The Mother |
母親
お前も、滅多なことを言うもんじゃないの。 |
The Mother |
子供
……でも……はぁい。 |
Child |
母親
それじゃあ、どうぞご自由にお過ごしください。 ただ夜は……あまり外に出ない方がよろしいかと思います。 |
The Mother |
母親
私はよそで手伝いがありますので……これで。 あとでなにかしら、食事になるようなものを持ってきますね。 |
The Mother |
バング
かたじけない。だがあまり無理をされぬよう。 我等とて、村やお主らの負担になりたいわけではござらん。 |
Bang |
母親
……お気遣いいただいてすみません。 では……。 |
The Mother |
バング
ふぅむ。 この村が立たされている状況はかなり厳しいようでござるな。 |
Bang |
シエル
そうですね。 今の女性も、決して良好な健康状態には見えませんでした。 |
Ciel |
子供
え? お母さん、どこか悪いの!? |
Child |
シエル
いえ、そこまではわかりません。 ただ標準体型を比べると、少々痩せすぎなように……。 |
Ciel |
ラーベ
あー、ごほん。んっんっー。 |
Raabe |
ラーベ
……シエル、あまり首を突っ込むな。 |
Raabe |
シエル
あ……はい。 |
Ciel |
アハト
……特にすることがあるわけじゃないし。 私は少し、村を見て回ってくるわ。 |
Acht |
アハト
夜になると現れるっていう『災厄』らしきものについて、 何か感じ取れるものがあるかもしれないし。 |
Acht |
アハト
可能そうなら、簡易的にでも 防御魔術を張っておくこともできるでしょうから。 |
Acht |
ルナ
下着みたいな格好してるわりに、 意外とまともなこと考えてるんだなー。 |
Luna |
アハト
……大人のファッションがわからないなら、 口を出すものではないわよ。 |
Acht |
ルナ
ファッションっていうか、性癖って感じじゃんか。 見せたがりか? |
Luna |
アハト
ファッション、よ! |
Acht |
バング
ははは、まあまあでござる。 プラチナが生意気な口をきくのはいつものこと。 |
Bang |
バング
少々あられもない格好と 拙者も思わなくもないでござるが……。 |
Bang |
バング
女性の『ふぁっしょん』というものは、往々にして 素人には及びもつかぬ突飛なものでござるからなぁ! |
Bang |
セリカ
私も、セクシーで素敵だと思うな。それにこういう服装って、 着てる人としては意外と動きやすいらしいよ。 |
Celica |
セリカ
お姉ちゃんがよく言ってる。 |
Celica |
ルナ
ふーん……。 |
Luna |
アハト
あなたも大人になったら、わかるわよ。 もっとも、育ったときの体型にもよるでしょうけど。 |
Acht |
ルナ
なんだと!? ルナの胸がちっさいってことか!? デカパイがなんだ、胸がデカイとそんなに偉いのか!? |
Luna |
アハト
そう言ったつもりはないけど? |
Acht |
ルナ
って言いながら、胸を強調するなーーー! 馬鹿にしてんのかーーー!? |
Luna |
シエル
胸……バストが大きいと、 より優秀な能力を発揮できるのですか? |
Ciel |
シエル
防御力の向上に繋がるのでしょうか。 それとも……。 |
Ciel |
ラーベ
こらこらこらこら。 収拾つかなくなるから。この話題はおしまいだ。 |
Raabe |
セリカ
ふふふ。はーい。 それじゃあ、私たちはどうしてようか。 |
Celica |
セリカ
防御魔術のお手伝いは、私にはできないから…… あ、そうだ! |
Celica |
セリカ
ねえ、あなた。さっき、薬草を採りに行ってたんだよね。 |
Celica |
子供
うん、そうだよ。 |
Child |
セリカ
その薬草、怪我した人たちに持っていくんでしょう? |
Celica |
子供
うん……。病院代わりに、怪我した人たちを集めて 看病してるところがあるんだ。 |
Child |
セリカ
そこに私も連れて行ってくれない? 怪我した人の手当てのお手伝い、できると思うんだ。 |
Celica |
シエル
治癒魔法、ですか。 |
Ciel |
セリカ
うん、そう。 どうかな? いい? |
Celica |
子供
うん! いいよ! お父さんにも、お姉ちゃんのこと紹介してあげるね! |
Child |
セリカ
ありがとう。お行儀よくしてないとね。 |
Celica |
セリカ
レイたちは、どうする? |
Celica |
1: 僕(私)もセリカと一緒に行こうかな |
1: |
シエル
私は……レイさんに同行します。 護衛の任務が……ありますので。 |
Ciel |
セリカ
うん! じゃあ一緒に行こう! |
Celica |
ラーベ
私は少し周囲を調べてくる。 『災厄』のことが少々気になっているんでな。 |
Raabe |
バング
拙者は村を出て、食料になりそうなものを 探してくるでござるよ。 |
Bang |
バング
野草でもキノコでも、果実でも肉でも。 もし多く手に入れば、宿代の代わりに献上することもできよう。 |
Bang |
ラーベ
そうだな、それは助かるし、お前が適任そうだ。 |
Raabe |
バング
任せるでござる! |
Bang |
ルナ
……ルナたちは? |
Luna |
セリカ
やりたいことがなかったら、一緒に行かない? |
Celica |
セリカ
怪我してる人はたくさんいるだろうし、 きっとお手伝いできることたくさんあると思うから。 |
Celica |
セリカ
それにしっかり者のルナちゃんが来てくれたら、 私も心強いな。 |
Celica |
ルナ
心強い? そう言われちゃったらなぁ〜。 付いて行ってやってもいいかなぁ〜。 |
Luna |
セナ
あはは……すっかり扱い方、覚えられちゃってる……。 |
Sena |
ラーベ
では一旦、解散。 後ほど、それぞれ情報を掴んだら報告するように。 |
Raabe |
シエル
はい、了解です。 |
Ciel |
第5節 黒くて大きな化け物③/ 5. Gigantic, Pitch-Black Monster - 3
Summary | |
---|---|
魔法を使い、村の怪我人を治癒するセリカ。
彼女は人々が苦しむ現状を目の当たりにし、 村を襲う『災厄』に対処したいと考える。 |
セリカ
……はい、これでよし。どうですか? もう痛くない? |
Celica |
村人A
あ……ああ、大丈夫だ。 痛みもないし、おかしなところもない……。 |
Villager A |
村人B
信じられん……あれだけの傷が、治ってるだなんて。 魔法ってのは、本当にあるんだな。 |
Villager B |
セリカ
なんでもかんでも治せるってわけじゃないんですけど。 ここではお役に立ててよかった。 |
Celica |
シエル
すごいですね……。 私には今のところ、どんな傷でも治せるように見えますが。 |
Ciel |
セリカ
んー、そうでもないんだ。 なくなっちゃったものを補うのはとっても大変だし……。 |
Celica |
セリカ
すごく弱ってる人に使うのは、私もちょっと怖いな。 |
Celica |
子供
でも、すごいよ! ありがとう、お父さんの怪我も 治してくれて……きっとお母さん、喜ぶよ! |
Child |
セリカ
どういたしまして。 |
Celica |
セリカ
でも実は、色んな人の前で使っちゃダメって言われてるから、 私がやったってことは内緒にしておいてね。 |
Celica |
子供
わかったよ、お姉ちゃん。 |
Child |
セリカ
……お姉ちゃんって呼ばれるの、ちょっと新鮮。 |
Celica |
村人C
あの……すみません。 よろしければ、彼の治療も……お願いできませんか? |
Villager C |
セリカ
もちろん、任せてください。 傷を見せてくださいね。 |
Celica |
ルナ
片っ端からかよ。お前、怪我人見つけたら 手当たり次第に治療しないと気がすまないのか? |
Luna |
セリカ
うん、そうなの。 |
Celica |
セリカ
痛いのも苦しいのも、私嫌いだもん。 他の人にもできるだけ、そういうの味わってほしくないんだ。 |
Celica |
セリカ
ルナちゃんやシエルちゃんや、レイも。 |
Celica |
セリカ
小さな怪我でも、遠慮なく言ってね。 |
Celica |
セリカ
役に立ちたいの。力になりたいの。 私にできるのって、本当にこれくらいだから。 |
Celica |
セリカ
これくらいのことで、元気になれたり、 また頑張るぞって思えるなら、いいこと尽くしでしょ。 |
Celica |
ルナ
頑張るのはいいけどさぁ。バカスカ魔法使ってると、 魔力切れになってぶっ倒れちゃうぞ。ルナ知らないからな。 |
Luna |
シエル
魔法のリソースは、有限なのですか。 |
Ciel |
セリカ
一応ね。 |
Celica |
セリカ
魔法や魔術を使える人の中には、魔力っていう、 力の源みたいなものが入ってるんだって。 |
Celica |
セリカ
私たち魔術師は、それを使って傷を治したり、 アハトさんみたいに敵を氷漬けにしたりするの。 |
Celica |
セリカ
でもそれは、ずーっと同じように使っていられるって わけじゃなくて……うーん、そうだなぁ。 |
Celica |
セリカ
あ、走り続けてると、どこかで疲れてきちゃうでしょ。 |
Celica |
セリカ
魔法もそういう感じで、息切れしちゃって、 最終的にはなにもできなくなっちゃうんだ。 |
Celica |
ルナ
最悪、命を削ることになるって、聞いたことあるぞ。 |
Luna |
セリカ
うん……そういうことも、あるみたいだね。 |
Celica |
シエル
セリカさんは、大丈夫なのですか? |
Ciel |
セリカ
まだ大丈夫! それに、よっぽどすごいのをドーンと 使うんじゃなければ、命を削るなんてことにまでならないよ。 |
Celica |
セリカ
その前に、ルナちゃんが言ったみたいに倒れちゃうもん。 |
Celica |
1: だからって、無理したらいけないよ |
1: |
セリカ
はぁい。心配しないで。 |
Celica |
村人C
ありがとうございます……助かりました。 |
Villager C |
セリカ
いえいえ。お安い御用です。 |
Celica |
セリカ
…………。 |
Celica |
1: 怪我人が気になる? |
1: |
セリカ
うん。やっぱり気になっちゃう……かな。 |
Celica |
セリカ
本物かどうかはわからなくても、村の人が『災厄』って 呼んでるなにかのせいで、これだけ大勢の人が怪我してる……。 |
Celica |
セリカ
なにかできないかな。できるなら、やりたいな。 ……なんて、戦えない私が言っても、格好つかないんだけど。 |
Celica |
シエル
それは、村の方が『災厄』と呼んでいるものと 戦おうということですか? |
Ciel |
ルナ
おっ、やるかやるか? ルナ様はいいぞ。どんと来いだ! |
Luna |
セナ
えぇ〜……僕は嫌だなぁ。 だって大きくて強いんでしょう、その魔物……。 |
Sena |
セナ
危ないよぉ〜。やめといたほうがいいと思うよ〜。 |
Sena |
ルナ
なんだとセナの意気地なし! 根性見せろ! |
Luna |
セナ
そうはいうけどさぁ……死んじゃったら意味ないよ? |
Sena |
シエル
私も、セナさんに同意します。相当な危険が予想されます。 レイさんの身の安全を保証できません。 |
Ciel |
セリカ
うん……それは、そうなんだよね。 私のわがままで、皆を危ない目に遭わせることになるし……。 |
Celica |
セリカ
でも……ここで暮らしてる人たち、このままじゃ本当に……。 |
Celica |
1: それでも助けたい |
1: |
セリカ
うん! そうだよね! |
Celica |
ルナ
よーし、やってやろうじゃん! |
Luna |
シエル
……レイさんが、そう望まれるのでしたら。 私は全力で護衛を務めるまでです。 |
Ciel |
シエル
…………。 |
Ciel |
第5節 黒くて大きな化け物④/ 5. Gigantic, Pitch-Black Monster - 4
Summary | |
---|---|
ラーベは周辺を調べた結果、村を襲う魔物は
本物の『災厄』ではないと結論づけた。一行 はその討伐に乗り出し、迎撃準備にかかる。 |
ラーベ
『災厄』と戦う? |
Raabe |
セリカ
うん。私たちでやってみたいの。 この村の人たちを助けたい。 |
Celica |
ラーベ
構わんぞ。 |
Raabe |
セリカ
そこをなんとかお願い! 無茶はしないって約束するか……ら? あれ? 今なんて言ったの? |
Celica |
ラーベ
だから、構わんぞと言ったんだ。 |
Raabe |
シエル
…………。 |
Ciel |
ラーベ
今、お前たちが言っている『災厄』というのは、 この村を襲撃してくる何者かに間違いないな? |
Raabe |
セリカ
う、うん! |
Celica |
ラーベ
村のあちこちに残っている、襲撃の被害状況を見てきた。 |
Raabe |
ラーベ
痕跡を分析するに…… 村を襲っているのは、やはり本物の『災厄』ではない。 |
Raabe |
シエル
本物でないとなると、偽物……なのですか? |
Ciel |
ルナ
ただの魔物とか? |
Luna |
アハト
実態がなんなのかは、 そのものを調査してみないことには断言できないわ。 |
Acht |
アハト
だけどこれは…… そうね、残り香のようなものだと私は思うわ。 |
Acht |
バング
残り香……でござるか? |
Bang |
ラーベ
残滓……とでも表現するかな。 計り知れない大きなものの足跡、残留物、余波。 |
Raabe |
ラーベ
そういうものが滞留して集まって、固まって、 化け物のような姿を取っている……と言えるだろう。 |
Raabe |
アハト
ここに来る途中でも、魔素の塊のようなものと戦ったでしょう? 性質は、あれによく似ていると思う。 |
Acht |
アハト
ただ、村に出ている被害状況からして、 もっと強大なものでしょうけど。 |
Acht |
セリカ
それって、倒せる? |
Celica |
ラーベ
わからん。 |
Raabe |
ルナ
ええっ!? わかんないのかよ!? さっき、戦ってもいいって言ってたじゃん! |
Luna |
ラーベ
構わないと言っただけだ。 倒せるとも勝てるとも言っていない。 |
Raabe |
ルナ
屁理屈だ〜! |
Luna |
ラーベ
違う。実際そうだろうが。 私やアハトの言っていることは、仮説にすぎない。 |
Raabe |
ラーベ
仮説ってことは、想像ってことだ。多少の根拠はあれど、 現物を認識して調査したわけじゃないんだからな。 |
Raabe |
シエル
ですが、構わないということは、 倒せる可能性もあるということですよね。 |
Ciel |
ラーベ
まあ、そうなるな。 |
Raabe |
ルナ
倒せるんじゃん! |
Luna |
ラーベ
だから、仮説だってば! 『かもしれないねー』って話! |
Raabe |
セリカ
でも無理とも言い切れない……。 ラーベさんにそう言われると、できそうな気がしてきちゃう。 |
Celica |
ラーベ
こらこらこら。なんか過信するな。 一種の責任転嫁だぞそれは。 |
Raabe |
セリカ
あう……そっか、ごめんなさい。 |
Celica |
バング
望みがあれば希望を見出したいもの。 気持ちはわかるでござるよ。 |
Bang |
シエル
……それは、相応に危険を伴うことでもあります。 たとえ想定していたより、手の届く相手だったとしても。 |
Ciel |
シエル
村を容易く破壊し、多くの人を傷付けてきたモノです。 簡単にすむことでもないはずです。 |
Ciel |
アハト
そうね。 |
Acht |
シエル
私は……レイさんのしたいことを 実現するほうが、いいと思います。 |
Ciel |
シエル
ですがそのために、過剰な危険を冒すことは、 推奨できません……。 |
Ciel |
セリカ
シエルちゃんとしては、そうだよね。 護衛なんだもんね。 |
Celica |
シエル
はい。私の任務です。 |
Ciel |
バング
大事な任務なのでござるな。己に与えられた任務に 忠実であろうとすることは、素晴らしいことでござる。 |
Bang |
バング
であればこそ! 己が剣となり盾となり、主君のために働くが、臣下の務め! |
Bang |
バング
レイ殿の力になることと、 身の安全を守ること。 |
Bang |
バング
それはなにも相反するものではござらんよ! |
Bang |
シエル
そう、なのですか? |
Ciel |
バング
うむ。どちらも成せばよい。 |
Bang |
バング
もっとも、それはとても難しいことでもあるが……。 |
Bang |
バング
主の身も心も、どちらも守る。 それもまた臣下の心得と、拙者は思うでござる。 |
Bang |
ラーベ
厳密に言うと、シエルは私の部下であって、 レイの臣下ではないんだが。 |
Raabe |
バング
はっはっはっは! 細かいことは気にしないでござる! 主も臣下も、心意気よ!! |
Bang |
ラーベ
んな馬鹿な話があるか。 |
Raabe |
アハト
話を元に戻しましょう。 で、どうするの? |
Acht |
アハト
どうするって言っても、 もうそっちのふたりの気持ちは決まってるみたいだけど。 |
Acht |
セリカ
うん。追い払うだけでもできないか、やってみたい! |
Celica |
セリカ
倒せなかったとしても……村の人たちが少し休んで、 どうしようって相談したり、考えたり……、 |
Celica |
セリカ
皆で一緒に立ち上がったりできるだけの時間が作れたら、 すごくいいことだと思うの。 |
Celica |
1: やってみたい! |
1: |
シエル
……私はレイさんの決定に従います。 |
Ciel |
ラーベ
ふむ、許可だ。 |
Raabe |
バング
無論、拙者も参戦するでござる! |
Bang |
バング
一泊の恩義もある。なにより、義を見てせざるは勇なきなりと 言うでござるからなぁ! |
Bang |
バング
無力な村民を目の前にして、 なにもせずにここを後にはできぬでござるよ!! |
Bang |
セナ
あ、僕たちは遠慮しておきます〜……。 |
Sena |
ルナ
って! んなワケないだろ! ルナたちもやんだよ! |
Luna |
セナ
え〜〜本当にやるのぉ〜? |
Sena |
ルナ
やるったらやる! ここでやらなかったら、弱虫みたいじゃんか! |
Luna |
アハト
無理をするものじゃないわよ。 あなたはまだ子供なんだし。 |
Acht |
ルナ
無理じゃない! ルナ様にはこの『雷轟・無兆鈴』があるんだ。 |
Luna |
ルナ
どんなヤツが相手だって、 ペッシャンコのギッタンギッタンよ! |
Luna |
アハト
あらそう。頼もしいこと。 |
Acht |
ラーベ
では、皆の意思が確認できたところで。 夜の襲撃者の、迎撃準備に取り掛かるとするか。 |
Raabe |
セリカ
おーっ! 皆、頑張ろうね! |
Celica |
シエル
作業、完了しました。 |
Ciel |
村人A
早いね、お嬢さん。それに仕事が丁寧だ。助かるよ。 これでこの小屋も倒壊をまぬがれそうだ。 |
Villager A |
シエル
お役に立ててなによりです。 |
Ciel |
シエル
廃材を処分場に運びますね。 |
Ciel |
村人A
ああ、よろしく。あれもこれも悪いな。 |
Villager A |
村人A
悪いついでに…… 次、あっちの家の補修も手伝ってもらえないか? |
Villager A |
シエル
はい。承知しました。 |
Ciel |
1: お疲れ様、シエルさん |
1: |
シエル
はい。お疲れ様です、レイさん。 |
Ciel |
シエル
このペースなら、作戦決行予定の夜になる前に 一通りの補修は終わりそうです。 |
Ciel |
シエル
レイさんの担当は、柵の取り付けでしたね。 問題はありませんでしたか? お怪我などはありませんか? |
Ciel |
1: 怪我はないけど、大変だったよ |
1: |
If Choice 1: | |
---|---|
シエル
ご無理はなさらないでください。 体力が切れる前に、十分な休息を取ってくださいね。 |
Ciel |
If Choice 2: | |
---|---|
シエル
以前こういった集落で大工仕事のお手伝いをしたときも、 とても疲れたご様子でした。 |
Ciel |
シエル
すごいですね。 私はまだ不慣れで、教えていただくばかりでした。 |
Ciel |
シエル
以前こういった集落で大工仕事のお手伝いをしましたが、 そのときの経験がいきているのでしょうか。 |
Ciel |
シエル
レイさん……? |
Ciel |
1: 今、なにか…… |
1: |
シエル
記憶が……戻ろうとしているのでしょうか。 なにがわかりましたか? なにを思い出したのでしょう? |
Ciel |
シエル
あ……。 |
Ciel |
シエル
すみません。うるさく催促をしてしまいました。 セリカさんにも、焦らないようにと注意を受けていたのに。 |
Ciel |
シエル
…………。 |
Ciel |
シエル
……セリカさんなら、少しでも思い出しかけたことを喜び、 レイさんの体調を気遣ったと思います。 |
Ciel |
シエル
でも私はそうできませんでした。 |
Ciel |
シエル
レイさんが、 すぐにでも全てを思い出せばいいと思ってばかりいます。 |
Ciel |
シエル
……あなたをお守りするのが、私の任務なのに。 |
Ciel |
1: きっとすぐ全部思い出すよ |
1: |
シエル
私へのお気遣いは無用です。心配はいりません。 思い出していただけなくても、任務は遂行します。 |
Ciel |
シエル
ですが……機能不足を感じています。 |
Ciel |
シエル
バングさんは、 心身ともに守るべきだと言っていました。 |
Ciel |
シエル
私には……心因性の不具合を理解するのは、 難しいことです。 |
Ciel |
シエル
セリカさんなら……もっと……。 |
Ciel |
シエル
下がってください、レイさん! |
Ciel |
シエル
地面から、黒い粒子状の物質が噴き出してきています。 |
Ciel |
シエル
……確認、完了。これは魔素です。 それもかなり高密度の魔素が立ち込めている状態です。 |
Ciel |
シエル
状況の詳細は不明ですが、周囲を警戒します。 |
Ciel |
シエル
なっ……! |
Ciel |
シエル
くっ! |
Ciel |
シエル
魔素は集まって形を取る性質があると、 ラーベさんやアハトさんが言っていました。 |
Ciel |
シエル
これだけ多量の魔素が一カ所に集まれば、 容易いことですね……。 |
Ciel |
シエル
守ります。離れないでください。 |
Ciel |
シエル
対象を確認、戦闘態勢に移行。 対象を排除します! |
Ciel |
第5節 黒くて大きな化け物⑤/ 5. Gigantic, Pitch-Black Monster - 5
Summary | |
---|---|
シエルと共に補修作業中、魔素の濃度が高ま
り多数の魔物が出現。苦戦する中セリカと ミネルヴァの助けが入り、難を逃れる。 |
シエル
倒しきれない……! |
Ciel |
シエル
こちらに引きつけます。 その間にレイさんは突破してください。 |
Ciel |
1: 逃げきれないよ……! |
1: |
シエル
……っ。 |
Ciel |
シエル
耐久力も攻撃力も、想定の範囲内…… 対処可能なレベルのはず……。 |
Ciel |
シエル
私がもっと……。 |
Ciel |
シエル
対象……消滅を確認。 魔素の霧の発生もありません。 |
Ciel |
セリカ
大丈夫? シエルちゃん、じっとしてて。 |
Celica |
シエル
治癒魔法……。 ありがとう、ございます。 |
Ciel |
セリカ
どういたしまして。ちょうど近くに来ててよかった。 ふたりのピンチに、間に合ったね! |
Celica |
1: ありがとう、セリカ |
1: |
シエル
……そうですね。 |
Ciel |
シエル
あれだけの数を、あっという間に倒してしまうなんて。 ミネルヴァさんは、本当にお強いです。 |
Ciel |
セリカ
うん、すごいでしょ。 |
Celica |
セリカ
シエルちゃんもすごいね。あの黒いのに囲まれてたのに、 ちゃんとレイのこと守り切って。 |
Celica |
シエル
いえ、私は……。 |
Ciel |
シエル
……一度、ラーベさんのところに戻りましょう。 今の出来事を報告しておくべきだと考えます。 |
Ciel |
セリカ
そうだね。そうしよっか。 |
Celica |
セリカ
ふたりが持ってるの、廃材でしょ。 ぱぱっと置き場に置いちゃって、みんなで行こう。 |
Celica |
シエル
はい……。 |
Ciel |
第5節 黒くて大きな化け物⑥/ 5. Gigantic, Pitch-Black Monster - 6
Summary | |
---|---|
集まる魔素が形を成し、黒く巨大な獣が出現
した。それを撃破可能な『模倣品』だと語る ラーベを信じ、一行は協力して立ち向かう。 |
|
力を合わせて、巨大な魔物の撃破に成功す
る。魔素の霧は晴れ、村に平穏が戻ったが、 シエルはどこか沈んだ表情を浮かべていた。 |
ラーベ
さて、そろそろいい時間だな。 |
Raabe |
バング
村の住人の話によれば、すっかり陽が落ちたあと、 夜もかなり更けてきたころに出没するとか。 |
Bang |
アハト
じわじわと、村の周囲の魔素が濃くなってきたわ。 雰囲気出てきたわね。 |
Acht |
ルナ
災厄でも化け物でも、どっからでもかかってこいってんだ! |
Luna |
セリカ
うん、負けないよ。 |
Celica |
シエル
…………。 |
Ciel |
1: シエルさん、元気ない? |
1: |
シエル
あ……いえ。問題ありません、失礼しました。 |
Ciel |
ラーベ
夕暮れ時にレイたちが襲撃されたとき、 地面から魔素が霧状になって噴き出してきた。 |
Raabe |
ラーベ
おそらくそれが『災厄』の残滓。 この地に残された『化け物』の素だろう。 |
Raabe |
ラーベ
魔素の密集によって、一時的に、急激に魔素濃度が上がる。 そしてその魔素が固まって『化け物』が形作られる。 |
Raabe |
アハト
村の人たちが恐れるほどの規模になるのに、 どの程度魔素が必要なのかはわからないけど、 |
Acht |
アハト
おそらくさっきの、 村の外れでの襲撃とは比べものにならないはずよ。 |
Acht |
アハト
十分注意して。 それと、密集してくる魔素を確認したらすぐに知らせること。 |
Acht |
シエル
はい。 |
Ciel |
ルナ
で、それが始まるまでは、どうしてたらいいんだ? |
Luna |
バング
実際に現れてもらわないと、退治はできないでござるからな。 |
Bang |
バング
どの方角から現れてもいいように、 各自見回りといったところでござろう。 |
Bang |
ラーベ
あんまり効率のいいやり口ではないが、 いかんせん情報がないからな。 |
Raabe |
ラーベ
非戦闘員であるセリカとレイは、 村の敷地内で待機しておけ。 |
Raabe |
ラーベ
もちろん、問題のやつが現れたら、 すっ飛んできてもらわんと困るがな。 |
Raabe |
ラーベ
そいじゃま、一旦解散。 |
Raabe |
セリカ
……結局、私たちってこういうとき、 安全なところで待つ係になっちゃうよね。 |
Celica |
1: 仕方ないよ |
1: |
セリカ
うん……。突然なにかあったとき、ひとりじゃ戦えないし。 わかってるんだけどさ。 |
Celica |
セリカ
ちょっと、寂しいっていうか。悔しいっていうか。 |
Celica |
セリカ
昔っからそうなんだ。 私、いっつも誰かに守ってもらってばっかりで。 |
Celica |
セリカ
本当は私も守りたいのに。 |
Celica |
セリカ
だからね、ミネルヴァと出会えたとき、嬉しかったの。 これで私も戦えるって思っちゃった。 |
Celica |
セリカ
でも戦ってるのはミネルヴァで。私じゃないんだよね……。 |
Celica |
1: セリカのドライブのおかげでしょ |
1: |
If Choice 1: | |
---|---|
セリカ
ふふ、そうだけど。それって逆に、私がドライブを使えるのは、 ミネルヴァがいるからってことにもなるじゃない? |
Celica |
セリカ
私が強くなったわけじゃないもん。 |
Celica |
If Choice 2: | |
---|---|
セリカ
ふふ、そうだけど。 治癒魔法って、誰かが傷つかないと意味がないじゃない? |
Celica |
セリカ
傷つくほど頑張ったのは、私じゃないんだよなー、なんて。 |
Celica |
セリカ
あはは、私がこんなこと言うの、変だね。 あなたといると、つい考えちゃうんだ。 |
Celica |
セリカ
似てるからかも。私たち。 |
Celica |
セリカ
私とミネルヴァ。あなたとシエルちゃん。 守ってもらう側と、一生懸命守ってくれる側。 |
Celica |
セリカ
だからね、シエルちゃんがレイのこと 必死に守ろうとしてるのを見ると……。 |
Celica |
セリカ
もしかしたらミネルヴァも こんな風に思ってくれてるのかなーとか思うんだ。 |
Celica |
セリカ
だからね、あなたがシエルちゃんに負担かけないように、 気遣ったり戦ったりしてると、 |
Celica |
セリカ
私もミネルヴァに、そうしてあげたいって思うの。 |
Celica |
セリカ
どうしてか私のこと、頑張って守ってくれるから。 私もミネルヴァのこと、守ってあげられたらいいのになぁ。 |
Celica |
1: 僕(私)もシエルさんのこと守れるかな…… 2: 僕(私)もシエルさんに恩返ししたいな…… |
1: |
セリカ
一番は、記憶を取り戻してあげることじゃない? |
Celica |
セリカ
ふふ、なーんて。できたら苦労しないよね。 |
Celica |
セリカ
できることは色々あるよ。 お互い、マイペースに頑張っていこう。 |
Celica |
シエル
…………。 |
Ciel |
ミネルヴァ
…………。 |
Minerva |
シエル
…………。 |
Ciel |
ミネルヴァ
…………。 |
Minerva |
シエル
……………………。 |
Ciel |
ミネルヴァ
……………………。 |
Minerva |
シエル
……あの。 |
Ciel |
ミネルヴァ
…………。 |
Minerva |
シエル
ミネルヴァさんは……どうしてセリカさんを……。 |
Ciel |
シエル
これは……魔素の霧! |
Ciel |
シエル
ラーベさん、多量の魔素を確認しました! |
Ciel |
ラーベ
わかった。 全員連れてそっちへ行くから、先んじて対処にあたれ。 |
Raabe |
シエル
了解です。 |
Ciel |
セリカ
シエルちゃん、ミネルヴァ、大丈夫!? |
Celica |
シエル
皆さん。はい。こちらはまだ交戦前の状態です。 ですが、あれを……。 |
Ciel |
ルナ
うげげげげ、な、なんだあれ!? でっか!! |
Luna |
アハト
あ、あれが……『災厄』……? あれで残滓だっていうの? |
Acht |
バング
なんと……ものすごい大きさでござる……!!! |
Bang |
セリカ
大きくて……黒い、獣……。 |
Celica |
獣型の魔素
グルアァァァァァァァァァァ!!!!! |
Beastified Seithr |
シエル
来ます! 対象……。 |
Ciel |
シエル
うあぁっ……!! |
Ciel |
1: シエルさん! |
1: |
シエル
う、うぅ……すみ、ません。大丈夫、です。 |
Ciel |
セリカ
治療するよ! |
Celica |
セリカ
……無理はしないで。お願い。 |
Celica |
シエル
っ……平気です。問題ありません。戦えます。 |
Ciel |
ルナ
ま、まじでこんなでっかいのと戦うのか!? 本当に倒せんのかよ!? |
Luna |
ラーベ
……大丈夫だ。おそらく倒せる。 |
Raabe |
バング
それは朗報! しかし何故、倒せると判断されたのでござる? |
Bang |
ラーベ
予想通りだからだ。 |
Raabe |
ラーベ
やっぱり、あれは一年間も活動を止めている 『災厄』じゃない。 |
Raabe |
ラーベ
凄まじい量ではあるが、 所詮ただ魔素が集まっただけの『模倣品』だ。 |
Raabe |
ラーベ
何度も戦ってきたあの黒い塊と、基本構造は同じ。 ちょっとばかりでかくて強いが……それだけだ。 |
Raabe |
ルナ
ってことは、 今までよりもーっと強くぶっ飛ばせばいいんだな!? |
Luna |
ラーベ
その通り。天才だな。 |
Raabe |
ルナ
あったり前よ! ルナ様だぞ! |
Luna |
ルナ
うわわわわわ!! こんのぉ、やんのかこらぁ! |
Luna |
アハト
やる気に決まってるでしょ。向こうは私たちを蹴散らして、 村を破壊したくてしょうがないのよ。 |
Acht |
アハト
おしゃべりはここまで。行くわよ。 |
Acht |
バング
おう!!! |
Bang |
セリカ
行くよ、ミネルヴァ! |
Celica |
1: シエルさん、立てる? |
1: |
シエル
はい。戦闘態勢に移行! 対象の排除を開始します! |
Ciel |
セリカ
黒い霧が、なくなってく……。 倒した? 倒したよね、私たち! |
Celica |
バング
うむ……うむ! 倒したでござるな!? |
Bang |
アハト
……ええ。もう気配もない。だけど魔素の状態からして、 どこかへ逃げたというわけではなさそう。 |
Acht |
ルナ
ぜぇ、はぁ……ってことは? |
Luna |
ラーベ
安心しろ。お前たちは見事あのデカブツを撃破した。 |
Raabe |
ルナ
マジか! やったぁ〜! ほら見ろ、ルナ様は最強なんだ! |
Luna |
バング
わっはははははは! 我等にかかればこれしき! て、敵ではないわぁぁぁ〜〜〜!!! |
Bang |
アハト
まったく、調子のいいおふたりね。 レベルが近いから馬が合うのかしら。 |
Acht |
セナ
あ、今僕たちを、 あのむさいおじさんと同レベルにしましたね〜? |
Sena |
ルナ
聞き捨てならないぞ! おい、ケバケバオバサン、訂正しろ!! |
Luna |
アハト
だ・れ・が、ケバケバオバサンよ。 あんまり生意気言ってると、口を凍り付かせるわよ。 |
Acht |
ルナ
やれるもんならやってみろ〜。 べ〜〜〜だ。 |
Luna |
セリカ
あっはは。しかもみんな、元気。よかったぁ〜。 |
Celica |
セリカ
これでもう、村の人たち、夜に怯えなくてよくなるね。 |
Celica |
ラーベ
とはいえ、魔素の状態は不安定だ。 |
Raabe |
ラーベ
片付け残しや、騒ぎに寄ってきた魔物がいないか、 索敵しておけ、シエル。 |
Raabe |
シエル
…………。 |
Ciel |
ラーベ
おい、シエル? |
Raabe |
シエル
あ……は、はい。なんでしょうか? |
Ciel |
ラーベ
ぼーっとするな。周囲の索敵をしてくれと言ったんだ。 |
Raabe |
ラーベ
今の戦闘で引き寄せられた魔物なんかがいると、 厄介だからな。 |
Raabe |
シエル
了解。周囲を索敵します。 |
Ciel |
シエル
…………。 |
Ciel |
シエル
……通常時より狭い範囲でのことですが、 周囲に敵性反応はありません。 |
Ciel |
アハト
村の周囲には、簡易的なものだけど防御魔術も張ってあるわ。 少しくらいの魔物なら入ってこれないはずよ。 |
Acht |
ラーベ
さっすがぁ〜。 よし、じゃあ引き上げだ。 |
Raabe |
ラーベ
激戦、ご苦労。ゆっくり休めよ。 特にレイ。 |
Raabe |
1: まだ元気だよ、ラーベ |
1: |
If Choice 1: | |
---|---|
ラーベ
あまり自分の体力を過信するな。 お前は知らず知らずのうちに消耗してる。 |
Raabe |
ラーベ
私たちにとっては、お前が重要な鍵なんだ。 しっかり休め。 |
Raabe |
If Choice 2: | |
---|---|
ラーベ
そうだろう。 お前は知らず知らずのうちに消耗してるんだ。 |
Raabe |
ラーベ
私たちにとっては、お前が重要な鍵なんだからな。 しっかり休め。 |
Raabe |
シエル
…………。 |
Ciel |
セリカ
シエルちゃん? 貸してもらってるおうちに、帰ろう。 |
Celica |
シエル
あ……はい。 |
Ciel |
バング
シエル殿……浮かない顔でござるな。 ……ふぅむ。 |
Bang |
第6節 理由と意味①/ 6. Reasons and Meaning - 1
Summary | |
---|---|
村を救った一行は再び日本へと進路を取る。
各々の目的のため、かつて本物の『災厄』が 現れた地、グラウンド=ゼロを目指す。 |
子供
お兄ちゃんたち、本当にもう行っちゃうの? |
Child |
子供
お姉ちゃんたち、本当にもう行っちゃうの? |
Child |
ラーベ
最初から、一泊させてもらうつもりで立ち寄ったんだ。 予定通りの出発だよ。 |
Raabe |
1: 休ませてもらえて、助かったよ |
1: |
セリカ
私たち、行きたいところがあるの。 まだ遠いから、頑張らないといけないんだ。 |
Celica |
子供
そうなんだ……。また遊びにきてよね! 皆なら、いつでも大歓迎だよ! |
Child |
バング
それはありがたい。 また近くに来ることがあれば、きっと立ち寄るでござるよ! |
Bang |
ルナ
そんときまでに、ルナのふかふかベッド用意しとけよな。 そしたら遊びにきてやってもいいぞ。 |
Luna |
アハト
あら。だったら私の分もお願いしておこうかしら。 |
Acht |
子供
あはははっ! もー、わがままだなぁ。 |
Child |
母親
これ、本当に少しで申し訳ないんですが…… 持っていってください。朝焼いたパンです。 |
The Mother |
シエル
……助かります。活用させていただきます。 |
Ciel |
アハト
さあ。それじゃあ、行きましょうか。 |
Acht |
アハト
いつまでも別れを惜しんでいたら、 この先、野宿が一晩増えてしまうわ。 |
Acht |
母親
そうですね、あまりお引き留めしてはいけませんね。 |
The Mother |
母親
なにからなにまで……ありがとうございました。 村一同、心から感謝しております。 |
The Mother |
子供
皆、気を付けてね! また来てよ、絶対だよ! |
Child |
セリカ
うん! またね! 元気でね〜! |
Celica |
ルナ
じゃ〜な〜! |
Luna |
バング
達者で暮らすでござるよ〜〜〜!! |
Bang |
セリカ
あの村の人たち、昨日よりずっと穏やかな顔してたね。 |
Celica |
アハト
それはそうでしょう。 |
Acht |
アハト
夜のたびに、あの化け物が襲ってくるんじゃないかって 怯えていたんでしょうから。 |
Acht |
アハト
その心配が解消されたとなれば、 顔つきくらい一晩で変わるわよ。 |
Acht |
ルナ
強かったし、でかかったもんなー、あの化け物。 |
Luna |
ルナ
それを倒したルナたちは、あの村を救った英雄ってわけだ。 銅像とか建っちゃうかもだな〜、んふふふふ。 |
Luna |
バング
銅像か……ううむ、悪くないでござる……。 |
Bang |
アハト
英雄って。あの程度で、大袈裟ね。 |
Acht |
ルナ
なんだと? じゃあどの程度なら、英雄になれるんだよ。 |
Luna |
アハト
そんなの、わからないわよ。だけどそうね…… 例えば世界の在り方を変えるであるとか。 |
Acht |
アハト
もっとシンプルに、本物のほうの『災厄』を倒しでもすれば、 間違いなく英雄でしょうけど。 |
Acht |
ルナ
本物? あの、現れなくなったってやつだろ。 出てこないんじゃ倒せないじゃん。 |
Luna |
アハト
なら、もう少し英雄の称号はお預けね。 |
Acht |
ルナ
ぶー。いいじゃん、昨日のアイツで。 こーんなでっかかったんだし! |
Luna |
ラーベ
本物のほうの『災厄』か……。 |
Raabe |
シエル
ラーベさんは『災厄』をかなり気にしているようですが、 どんなものなのか、ご存知なのですか? |
Ciel |
ラーベ
ご存知……と言うか、 なんとなく予想がついているって感じだ。 |
Raabe |
アハト
それは、興味深いわね。 |
Acht |
アハト
あなたたちと合流する前に、 あちこちで『災厄』の話を聞いたわ。 |
Acht |
アハト
とてつもなく巨大で、にもかかわらず突如として出現し、 その場にあるものをことごとく破壊しては消える。 |
Acht |
アハト
その正体は、なんだと思っているの? |
Acht |
ラーベ
あまりこの場で開示したくない情報なんだよ。 |
Raabe |
ラーベ
『誤解』を招きたくないから、 具体的な名前は不確定な現状では避けるけど。 |
Raabe |
ラーベ
もし『災厄』が私の予想している通りのものなら……。 |
Raabe |
ラーベ
おい、セリカ。お前確か『災厄』が最初に出現したのが、 父親のいた研究施設だと言っていたな? |
Raabe |
セリカ
うん……。 今はね、グラウンド=ゼロって呼ばれてる。 |
Celica |
ラーベ
なるほど。 なら、我々が探している『窯』も、そこにあるはずだ。 |
Raabe |
シエル
窯が……。 では『災厄』は窯に関わりがある存在なのですね。 |
Ciel |
ラーベ
そうだ。そいつは窯から出てきたはずだ。 他は知らんが、少なくとも最初の一回はな。 |
Raabe |
ルナ
なあ、結局なんなんだよ、その『災厄』って! |
Luna |
ラーベ
簡単に言えば『世界の終わり』だよ。 |
Raabe |
バング
世界の終わり……それはまた、物騒な話でござるな。 |
Bang |
ラーベ
物騒どころじゃない。 世界を終わらせるために現れる、世界のリセット機能だ。 |
Raabe |
ラーベ
ここがそいつの出現している世界なら……観測者はもう、 このフィールドに存在していないかもしれないな……。 |
Raabe |
シエル
あの……観測者がいないファントムフィールドというのは、 あり得るのですか? |
Ciel |
シエル
私たちは |
Ciel |
シエル
それなのに、世界にリセットをかけるシステムが 機能しているということは……。 |
Ciel |
シエル
このファントムフィールドは一体…… どういう状況なのでしょうか……? |
Ciel |
ラーベ
混乱するのはよくわかる。 |
Raabe |
ラーベ
レイにいたっちゃ記憶がないわけだから、 さぞさっぱりだろうとは思うが。 |
Raabe |
ラーベ
シエルが言った通り、 この状況は私たちから見ると『異常』だ。 |
Raabe |
ラーベ
出現していないはずのものが出現していることに なってしまう。理屈が合わない。 |
Raabe |
ラーベ
一番穏便なのは、私がそもそも根本的な勘違いを していることなんだが…… |
Raabe |
ラーベ
それを第一の仮説とするにはあまりに楽観的過ぎる。 |
Raabe |
ラーベ
ま、どの道やることに変わりはないさ。 |
Raabe |
ラーベ
セリカが目指している、彼女の父親の仕事場に向かう。 そこになにがあるかによって、私の考えも予測も変わってくる。 |
Raabe |
ルナ
ふーん……やっぱルナにはよくわかんないや。 元の世界に戻れるなら、なんでもいーよー。 |
Luna |
ルナ
それより、おなかすいた。 さっきもらったパン食っていい? |
Luna |
アハト
本当に緊張感と無縁な子ねぇ。 気が抜けちゃうわ。 |
Acht |
ルナ
別にずーっと気合い入れてることないじゃん。 あ、オバサンいらないなら、ルナがもらうぞ。 |
Luna |
アハト
ちょっと、およしなさい。意地汚いわよ。 |
Acht |
シエル
では……少し休憩にしませんか。 |
Ciel |
シエル
レイさんの基礎体力からして、 疲労を感じ始める歩行距離です。 |
Ciel |
1: シエルさんはなんでも知ってるね |
1: |
シエル
護衛……ですので。 |
Ciel |
バング
ならばしばし休憩といたそう。 まだ予定している道のりは長い。 |
Bang |
バング
明日にはひと山越えてもらわねばならぬし、 体力は温存しつつ進もうぞ。 |
Bang |
セリカ
もうだいぶ東に来てるんだよね。 山の上から海、見えるかなぁ。 |
Celica |
ルナ
海! 海、見えるのか!? |
Luna |
バング
此度は頂上までは行かぬから、 道中では見えないでござろうなあ。 |
Bang |
バング
だが山を越えてしまえば、海まではあと一息! 目的地の港町へ到着した暁には、存分に見られるでござるよ! |
Bang |
ルナ
やっほーぅ、海だ海〜! |
Luna |
セナ
海〜。 |
Sena |
セリカ
楽しみだね〜! |
Celica |
シエル
その海の向こうに、日本があるのですね。 |
Ciel |
バング
左様。日本に渡れば、 あとはセリカ殿のお父上の研究所を目指すのみ! |
Bang |
バング
旅もいよいよ大詰めといったところでござるなぁ!! |
Bang |
アハト
まだ少し気が早いわよ。 |
Acht |
ラーベ
ああ、そうだ。セリカ、あとで父親の職場について、 知ってることをありったけ教えろ。名前とかおよその場所とか。 |
Raabe |
ラーベ
お前の案内で辿り着けるはずがないからな……。 こちらでなんとか調べてみる。 |
Raabe |
セリカ
わあ、ありがとう。 一度行ったことがあるから、大丈夫だと思うけど……。 |
Celica |
セリカ
私が行ったときとは、周りも変わってるだろうし。 よろしくお願いします。 |
Celica |
ラーベ
……一度行ったとか、周りがどうとかの問題では ない気がするが……ああ、わかった。 |
Raabe |
ルナ
なーなー、それより飯だってばー。 |
Luna |
セリカ
あ、そうだった。私もお腹空いてきちゃった。 荷物、ここに下ろしちゃおうか。 |
Celica |
シエル
はい。開けた場所ですので、 魔物の標的にならないか少々心配ですが……。 |
Ciel |
バング
シエル殿も気付かれたか。 いやはや、楽はさせてくれんでござるなぁ! |
Bang |
アハト
魔物ね……。 |
Acht |
ルナ
なんだよもー! 今から飯食おうとしてたってのにぃ〜! |
Luna |
セナ
あ〜あぁ。お腹空いてるときのルナは、機嫌悪いよぉ。 |
Sena |
セリカ
さくっと帰ってもらって、すぐにご飯にしよう! |
Celica |
1: お腹ぺこぺこだからね |
1: |
ルナ
おー! やったるぞ! |
Luna |
シエル
……対象を補足。 攻撃態勢に移行します! |
Ciel |
第6節 理由と意味②/ 6. Reasons and Meaning - 2
Summary | |
---|---|
一行が去った後の村を、ナインとトリニティ
が訪れる。セリカの魔法使用、そして同行す る者の存在を知り、ナインは歩調を早めた。 |
ナイン
……小さな村ね。集落って感じだわ。 |
Nine |
トリニティ
あちこちに畑がありますから、皆さん、自給自足の生活を 送っていらっしゃるのでしょうねぇ。 |
Trinity |
トリニティ
ですけど……村のあちら側、物々しい跡がありますね。 大きな魔物が大暴れしたような……。 |
Trinity |
ナイン
進路と方角からして、 普通ならこの村を経由しようと考えるはずだわ。 |
Nine |
ナイン
村の存在を知らなくても、よほど大回りするか、 とんでもない道を行かない限りは通りがかる。 |
Nine |
ナイン
あの子…… まさか魔物の襲撃に巻き込まれたりしてないでしょうね……。 |
Nine |
トリニティ
少し、村の方にお話をうかがってみませんか。 彼女らしき人が、立ち寄ったかどうかも聞いてみましょう〜。 |
Trinity |
ナイン
……はぁ。そうね。 |
Nine |
村人
ああ、魔物の襲撃か。あったあった。 ずいぶん長いこと、そいつには悩まされてたんだよ。 |
Villager |
村人
黒くてでかい、恐ろしい化け物だ……。村のみんなも俺も、 『災厄』が来たんだってすっかり怯えてしまっていて……。 |
Villager |
村人
だけどそこに、あの人らが現れてくれて、 襲ってきた真っ黒い化け物を倒してくれたんだよ! |
Villager |
トリニティ
黒くて大きな化け物、ですかぁ? それは……恐ろしいですねぇ。 |
Trinity |
トリニティ
でも、もうその魔物の心配はないのですね。 よかったですぅ。 |
Trinity |
トリニティ
その魔物を倒したのは、どんな人だったのですか? |
Trinity |
村人
若い魔術師だよ。いやぁ、驚いた。 魔術ってのは、あんなにすごいもんなんだな。 |
Villager |
村人
手ごわい魔物だったみたいだけど、ドカーンとやってくれてな! おかげで村は、久し振りに平和にすごせてるんだ。 |
Villager |
ナイン
それ、どんな子? 具体的な容姿は? 長い茶色の髪で、ポニーテールにしてる美少女? |
Nine |
村人
え? あ、ああ、そうだよ。そんな子だった。 |
Villager |
ナイン
やっぱり……セリカね。 |
Nine |
子供
お姉さんたち……誰? セリカお姉ちゃんの知り合いなの? |
Child |
ナイン
子供……。 あなた、セリカと会ったのね。 |
Nine |
子供
う、うん。会ったよ。魔物を退治してくれて、 村のみんなやお父さんの怪我も治してくれたんだ。 |
Child |
ナイン
怪我を治した……? あの子、治癒魔法を使ったの……。 |
Nine |
子供
っ!? |
Child |
子供
ち、違うよ、魔法じゃない! 魔法じゃないけど、治してくれたんだ……! |
Child |
ナイン
嘘ね。 大方、内緒にしておいてくれとか言われたんでしょうけれど。 |
Nine |
ナイン
それくらいわかるわよ。 |
Nine |
子供
お、お前ら、何者だ……? セリカお姉ちゃんを捕まえにきたのか!? |
Child |
ナイン
ええ。そうよ。 |
Nine |
トリニティ
まぁ、ナイン〜。それでは誤解させてしまいますよぉ。 |
Trinity |
トリニティ
驚かせてしまってすみません。 |
Trinity |
トリニティ
私たちは確かに、セリカさんを追いかけていますけれど…… 彼女にひどいことをしようと思っているわけではないんですよ。 |
Trinity |
トリニティ
私たちは……というより、私と一緒にいるこちらの人は…… あ、あら? ナイン? |
Trinity |
ナイン
…………。 |
Nine |
トリニティ
ナイン〜! |
Trinity |
トリニティ
もう、急にいなくならないでください〜。 びっくりしましたよぉ。 |
Trinity |
トリニティ
あら。なにかありましたか? |
Trinity |
ナイン
……防御魔術が張られた痕跡があるわ。 |
Nine |
トリニティ
防御魔術ですか? 先程うかがった、大きな魔物との戦いで 使われたものでしょうか? |
Trinity |
ナイン
でしょうね。でも……これはセリカの魔術じゃないわ。 あの子はこんな丁寧な魔術、使えないもの。 |
Nine |
トリニティ
では……誰か別の方が? |
Trinity |
ナイン
でしょうね。でも、あの子供の言っていた 『怪我を治した』魔術師は、十中八九セリカよ。 |
Nine |
ナイン
あの子、 何者か知らないけど別の魔術師と一緒にいるのね……。 |
Nine |
トリニティ
これほどしっかりした魔術が使える方と御一緒なら、 少し安心ですねぇ。 |
Trinity |
ナイン
安心じゃないわよ。 そいつがどういう立場の者なのか、わかったもんじゃないわ。 |
Nine |
ナイン
……早く追いつかないと。 |
Nine |
トリニティ
では、すぐに向かいますか? |
Trinity |
ナイン
ええ。 |
Nine |
アハト
こっちからも来てるわ。 皆、気を付けて! |
Acht |
シエル
せやぁ! |
Ciel |
シエル
っ、あ……! |
Ciel |
バング
危ないでござる、シエル殿! |
Bang |
シエル
っ……すみません。 |
Ciel |
バング
なんの! 仲間の窮地には必ず駆け付ける! それが愛の戦士シシガミ=バングでござる! |
Bang |
セリカ
レイも無事だから、 安心してね、シエルちゃん! |
Celica |
1: ありがとう、ミネルヴァ、セリカ |
1: |
セリカ
はい、どういたしまして。 |
Celica |
セナ
も〜〜〜また戦うんですかぁ……? 僕、疲れてきちゃいました〜。 |
Sena |
ラーベ
今日はこれで何回目の遭遇になるだろうなぁ……。 |
Raabe |
ラーベ
暗くなってきたし、 日が沈み切る前に安全を確保したいところだ。 |
Raabe |
ルナ
わかってるっての! 離れて見てろピョコピョコボール! こんなザコ、ルナ様にかかれば一瞬だ! |
Luna |
バング
威勢がいいでござるな! 拙者も負けてはおれぬ! 行くぞ!! |
Bang |
第6節 理由と意味③/ 6. Reasons and Meaning - 3
Summary | |
---|---|
山中を行くシエルたちは、このファントム
フィールドへ至る前に各々が生きた世界の状 況、目的や成すべきことについて語り合う。 |
ルナ
っしゃ! 二度とツラ見せんなばーか! |
Luna |
セナ
はぁ〜……やっと終わったぁ。 |
Sena |
セリカ
ふぅ。さすがにちょっと疲れたね。 今日は特に、たくさん戦った気がする。 |
Celica |
アハト
気がするんじゃなくて、実際にそうよ。 |
Acht |
ラーベ
また足止めされる前に、少しでも行程を進めよう。 歩くぞ。 |
Raabe |
シエル
……はい。 |
Ciel |
ラーベ
しっかし、本当に……この世界は特に魔物が多いな。 ただ歩いてるだけだっていうのに、次から次へと。 |
Raabe |
ルナ
魔物だもん。こっちの都合なんておかまいなしだって。 そういうもんじゃん。 |
Luna |
ラーベ
こちとら魔物って存在にあまり馴染みがなくてね。 あんなのと当たり前に遭遇するとは、物騒な世界があるもんだ。 |
Raabe |
セリカ
私もあんまり見たことはなかったけど、日本を目指してからは たくさん見るね。だから……少しずつ慣れてきた。 |
Celica |
セリカ
でも馴染みがないって、もしかしてラーベさんたちが住んでた 場所には魔物はいなかったの? |
Celica |
ラーベ
いないということになってるね。 そもそも、そんな生態系は存在してもらっちゃ困る。 |
Raabe |
バング
そのような場所があるでござるか。 |
Bang |
アハト
レアケースのように言うけど、私がいた世界でも 魔物は表立って存在を認知されているものではなかったわよ。 |
Acht |
ルナ
へー……いいなぁ。 魔物に襲われたり、荷物狙われたりしないのかぁ。 |
Luna |
ルナ
ぬるい世界で生きてんなぁ。 |
Luna |
シエル
ルナさんたちとバングさんがいた世界には、 魔物が普通に存在していたのですね……。 |
Ciel |
バング
うむ、いたでござる。拙者は街の外で活動することが 多かったでござるから、よくこんな風に絡まれたでござるよ。 |
Bang |
セリカ
そういえば……ルナちゃんたちやバングさんや、アハトさんは、 別の世界の人たちなんだっけ。ちょっと忘れてた。 |
Celica |
セリカ
どんな世界なんだろう。 ねえねえ、向こうの世界でも、今みたいに旅をしてた? |
Celica |
ルナ
ルナたちはしてたぞ〜。 ずーっと、大好きな人と一緒に旅してたんだ。 |
Luna |
ルナ
ルナがセナと同じくらい、大好きな人だぞ。 |
Luna |
セナ
僕にとっても、大好きな人です〜。 ルナと同じくらい。 |
Sena |
セナ
その人に頼まれて、 ルナと一緒に人探しをしていたんです〜。 |
Sena |
ルナ
そうだったっけ? あの人のためにがんばるぞー! って思ってたことしか、覚えてないなぁ。 |
Luna |
セナ
あはは……実は僕も、しっかりとは思い出せないんだよねぇ。 |
Sena |
ルナ
だけど! 大好きな人のことは、覚えてるぞ。 さっさと頼まれごと片付けて、その人に会いに行くんだ! |
Luna |
ルナ
なのに……気が付いたら、変なところにいるじゃん。 どー考えても、ルナたちの知らない世界にさ。 |
Luna |
セナ
このままここにいたら……人探しもできないし、 僕たちの大好きな人にも会いに行けないし。 |
Sena |
ルナ
だからな! さっさと元の世界に戻りたいんだ! 戻らなくちゃいけないんだ!! |
Luna |
ルナ
あ、一応確認するけど。シエルたちのやりたいことが 終わったら、ルナたち元の世界に戻れるんだよな!? |
Luna |
シエル
はい。そのはずです。 |
Ciel |
ルナ
よーしよしよし。 |
Luna |
バング
拙者のいたところは…… いや、さほどこの世界と大きくは変わらぬでござるなぁ。 |
Bang |
バング
ああいや、ひとつ大きく違うところがあるとすれば、 人はもっと一所に集まっていたのう。 |
Bang |
バング
拙者の故郷も、国や志を同じくする者同士で集まり、 素晴らしい主の下で誇りを持って暮らしていたでござるよ。 |
Bang |
セリカ
そっか……バングさんは、その故郷に帰りたいんだね。 違う世界には、ないもんね。 |
Celica |
セリカ
私にしてみたら、イシャナがない世界に来ちゃったって 感じだろうから……それは、寂しいなぁ。 |
Celica |
バング
……はっはっは、そうでござるな。帰りたいでござるよ! |
Bang |
バング
そのためにも、 ラーベ殿たちには必ず目的を果たしてもらわねばならん! |
Bang |
シエル
はい。私たちも、窯を見つけて破壊しなければなりません。 ご協力、よろしくお願いします。 |
Ciel |
アハト
窯の破壊……。それがあなたたちの目的であり、 私たちが元の世界に戻るための条件なのね。 |
Acht |
アハト
それはそれは……大層なことだわ。 |
Acht |
1: ってことは、僕(私)の目的でもあるんだ |
1: |
ラーベ
窯に辿り着ければ、お前の記憶は戻るはずだ。 とりあえずそのためでいいから、窯へ行くんだと思っててくれ。 |
Raabe |
セリカ
私、なんでもお手伝いするから、 できることがあったらいつでも言ってね! |
Celica |
シエル
はい。……助かります。 |
Ciel |
ルナ
んで? オバサンがいた『世界』って、どんなとこなんだ? |
Luna |
アハト
ナチュラルにオバサンって呼ぶのやめなさいよクソガキ。 |
Acht |
アハト
って、付き合うのも馬鹿馬鹿しいわね。 |
Acht |
アハト
私の元いた世界のことだったかしら。 |
Acht |
アハト
そうね……なにもかもが違う、とまでは言わないけれど、 ここまで荒廃した雰囲気はなかったかしらね。 |
Acht |
アハト
途上地域でない限り道は基本的に舗装されていたし、 こんな風に徒歩で旅をする人なんていなかったわ。 |
Acht |
アハト
車でもバスでも飛行機でも、交通手段はいくらでも選べた。 |
Acht |
アハト
……まぁ、この世界もそういったものがなかったわけじゃ ないんでしょうけど。 |
Acht |
セリカ
そうだね……。 |
Celica |
セリカ
『災厄』が現れる前は、船も飛行機もたくさん行き交ってたし。 旅行だって、魔素や魔物を気にしなくても行けたもん。 |
Celica |
セリカ
いいな。アハトさんのいた世界、なんだか平和で、楽しそう。 |
Celica |
アハト
表向きはね。 |
Acht |
アハト
技術は日々向上していたし、 世界はルールと理性に守られていた。 |
Acht |
アハト
いつの時代もどこの世界にも、 取り残されるものやはじき出されるものは存在するわ。 |
Acht |
アハト
秩序のある街並みと暮らしをしているからといって、 その世界そのものが秩序あるものかは別の話よ。 |
Acht |
ルナ
はぁ??? ま〜た難しいこと言ってら。 |
Luna |
バング
どんな世界にも、困ったことはあるということでござろう。 |
Bang |
バング
富む者があれば、奪おうとする者が現れる。 上に立つ者があれば、下へ引きずり降ろそうとする者が現れる。 |
Bang |
バング
人間だの社会だのとは、ままならぬものでござるなぁ。 とはいえ、平和が一番。それは間違いないと思うでござるよ。 |
Bang |
アハト
……ところで、不思議なんだけど。 さっきあなた『イシャナ』って言ったわよね。 |
Acht |
セリカ
え? はい! 私の育った島の名前です。 |
Celica |
アハト
私もイシャナにいたことがあったの。 |
Acht |
セリカ
え、そうなの!? そっか、アハトさん魔術師だし。 だったら私の先輩……あれ、でも……。 |
Celica |
セリカ
違う世界から来たんです、よね? それなのに、どっちにもイシャナがあって……あ、あれ? |
Celica |
アハト
どういうことなのか、今の私にはわからないわ。 |
Acht |
アハト
イシャナは特殊な場所だから、たとえ世界が違っていても、 どこにでも存在する島なのかもしれないし……。 |
Acht |
アハト
もしかしたら、私のいた世界とあなたのいるこの世界は、 どこかでつながっているのかもしれないわね。 |
Acht |
セリカ
どこかでつながってる、かぁ。 |
Celica |
セリカ
だったらちょっと、わくわくしちゃう。 それがいいことなのか、悪いことなのかはわからないけど……。 |
Celica |
セリカ
アハトさんだけじゃなくて、バングさんや、 ルナちゃん、セナちゃん。シエルちゃんやラーベさん。 |
Celica |
セリカ
レイと、 目に見えないところでみんな、つながってるのかも。 |
Celica |
セナ
それって……なにが嬉しいんですかぁ? |
Sena |
セリカ
だったらなんとなく、楽しいなって。 |
Celica |
アハト
楽しいかどうかは別にして。つながってはいるんでしょうね。 だから……私たちはここへ来たし、戻れるんでしょうから。 |
Acht |
ラーベ
……そういう考え方でも、いいんじゃないか。 |
Raabe |
アハト
はっきり言わないのね。 なにか大きな秘密を隠しているみたいに見えるわよ。 |
Acht |
ラーベ
そうか? |
Raabe |
シエル
アハトさんは、バングさんが故郷に戻りたいように、 イシャナに戻りたいと思っていらっしゃるのですか? |
Ciel |
アハト
いいえ。イシャナは私の過去にすぎないわ。 |
Acht |
アハト
元の世界に戻ろうとすることに、理由が必要なら…… 私の場合は約束かしらね。 |
Acht |
シエル
約束……ですか。 |
Ciel |
アハト
ええ、そう。大切な人との大切な約束よ。 それを果たさなければならない。だから戻りたいの。 |
Acht |
セリカ
どんな約束なの? |
Celica |
アハト
言ったでしょ。大切な約束なの。 だから言えないわ。 |
Acht |
セリカ
ふふっ、そっか。聞いちゃってごめんなさい。 ならその約束、果たせるといいね。 |
Celica |
セリカ
あ、でも……必ずしも、早いほうがいいってことはないか。 果たされるまでが楽しいってこともあるし。 |
Celica |
アハト
……そうね。そうかもしれないわ。 |
Acht |
バング
おっと、この先はまた少々道が険しくなりそうでござる。 |
Bang |
バング
先に行って、様子と安全そうな順路を探してくるゆえ、 皆は後から参られよ! |
Bang |
ルナ
ほーい。 |
Luna |
セリカ
ありがとう、バングさん! |
Celica |
シエル
では、私も……。 |
Ciel |
バング
いやいや、シエル殿は先の戦いもあって疲労があろう。 それに護衛がレイ殿の側を離れるものではない。 |
Bang |
バング
拙者ならば心配ご無用! では御免! |
Bang |
シエル
あ……。 |
Ciel |
アハト
適材適所。彼はこういった、斥候や調査に長けているようだし。 任せましょう。 |
Acht |
シエル
そう……ですね。了解です。 |
Ciel |
シエル
…………。 |
Ciel |
第6節 理由と意味④/ 6. Reasons and Meaning - 4
Summary | |
---|---|
野営の夜更けに、シエルと言葉を交わす。自
身の不調と抱えた感情に戸惑いを覚える彼女 は、バングの言葉でその理由を考え始める。 |
ルナ
うーん……むにゃむにゃむにゃ…… んふふふふ……ふわふわ、ふかふかぁ……。 |
Luna |
ラーベ
なんだ、ルナたちはもう寝たのか。 |
Raabe |
バング
疲れが出てきたのでござろう。 強気なことを言ってはいるが、体力となるとまだ未熟。 |
Bang |
バング
拙者のように鍛えている者とは、 明らかに差が出てしまうものよ。 |
Bang |
セリカ
ふふふ。気持ちよさそう。なんの夢見てるんだろう。 |
Celica |
セリカ
ふぁ……あふ。 ご飯食べたら、私も眠くなってきちゃった……。 |
Celica |
アハト
なら、さっさと寝なさい。 余計な無理をして体調でも崩されたら迷惑よ。 |
Acht |
セリカ
はぁい。アハトさん、時々言い方がお姉ちゃんみたい。 |
Celica |
セリカ
じゃあ、お言葉に甘えてお先におやすみなさい。 あ、火の番、交替するとき声かけてね。私もするから。 |
Celica |
バング
気にすることはないでござるよ。 |
Bang |
バング
見張りはいつものように、拙者とアハト殿、 ラーベ殿とシエル殿、ミネルヴァ殿で担当するでござる。 |
Bang |
セリカ
でも……いつもお任せしっぱなしだし。 |
Celica |
アハト
軟弱な人に任せる方が心配よ。 いいからさっさと寝て。見張りの順番に話が進まないじゃない。 |
Acht |
セリカ
わかった。大人しくしてます。 おやすみなさ〜い。 |
Celica |
シエル
レイさんも、どうぞ休んでください。 今日もたくさん歩きましたから。 |
Ciel |
シエル
あ。誤解しないでください。 レイさんが軟弱だという意味ではありません。 |
Ciel |
1: それくらいはわかるよ、大丈夫 |
1: |
シエル
……そう、ですか。 わかっていただけて……よかったです。 |
Ciel |
シエル
……疲労を感じるのは、当然の運動量だったと思います。 お疲れ様でした。 |
Ciel |
シエル
ゆっくりお休みください……。 |
Ciel |
…………。 ……………………。 |
|
……………………。 |
|
…………。 |
|
1: ……あれ。まだ夜か |
1: |
シエル
…………。 |
Ciel |
シエル
あ……レイさん……。 |
Ciel |
シエル
まだ夜です。お目覚めには早い時間ですが……。 起こしてしまいましたか? |
Ciel |
シエル
……あまり良好な睡眠環境ではありませんから、 寝付けないでしょうか。 |
Ciel |
シエル
…………。 |
Ciel |
1: 少し話したいんだけど…… |
1: |
シエル
はい。……問題ありません。 |
Ciel |
シエル
……バイタルは正常のようですが、 体に不調などはありませんか? |
Ciel |
シエル
屋外での睡眠は、 不慣れな人にとっては負担になることもあります。 |
Ciel |
シエル
不具合があるようでしたら、教えてください。 対処方法を検討します。 |
Ciel |
シエル
…………。 |
Ciel |
シエル
それで……その。 お話というのは……なんでしょうか。 |
Ciel |
1: シエルさんが元気なさそうだったから |
1: |
シエル
……私が、ですか。 |
Ciel |
シエル
…………。 |
Ciel |
シエル
健康状態に問題はありません。 |
Ciel |
シエル
……私が、ですか。 |
Ciel |
シエル
…………。 |
Ciel |
シエル
悩んでいるわけではありません。 |
Ciel |
シエル
ただ……身体機能が想定通りに働かないため、 フラストレーションを感じています。 |
Ciel |
シエル
今の私は、とても弱いです。索敵能力は下がり、 集中していても魔物の接近を直前まで察知できません。 |
Ciel |
シエル
これだけの魔物の襲撃に対して、 あなたを守り続けられているのは、他の皆さんがいるからです。 |
Ciel |
シエル
バングさん、ルナさんセナさん、アハトさん。 ……セリカさんと、ミネルヴァさん。 |
Ciel |
シエル
皆さんとても強くて……頼りになる方々です。 |
Ciel |
シエル
私はただ、皆さんについていっているだけです。 夕方の戦闘でも……私は足を引っ張るばかりでした。 |
Ciel |
シエル
私は皆さんに索敵でも、戦闘でも、そのほかのことでも、 貢献できていません。 |
Ciel |
シエル
なによりレイさんの護衛として、 任務をまっとうできていません。 |
Ciel |
シエル
私は、お荷物です。 |
Ciel |
1: そんなことないよ |
1: |
シエル
いいえ。 ……いいえ。そうは思いません。私はそうは考えられません。 |
Ciel |
シエル
私はあなたの『護衛』です。 あなたを守れなければ意味がありません。 |
Ciel |
1: どうして僕(私)を守ってくれるの? |
1: |
シエル
守る、理由……ですか? |
Ciel |
シエル
…………。 |
Ciel |
カガミ
シエル。お前は彼を守れ。 これは最優先事項だ。 |
Kagami |
カガミ
シエル。お前は彼女を守れ。 これは最優先事項だ。 |
Kagami |
カガミ
我々が『■■■■』へと至るために。 |
Kagami |
シエル
それが私に与えられた『任務』だからです。 |
Ciel |
シエル
あなたを守るようにと『命令』を受けました。 ですから、お守りしています。 |
Ciel |
シエル
…………。 ……あの。 |
Ciel |
シエル
私の返答は、不完全でしたか? 精神波長に……下降の動きがあります。 |
Ciel |
シエル
……どうして、悲しそうなのですか? |
Ciel |
1: ううん、なんでもない |
1: |
シエル
そう……ですか……。 |
Ciel |
シエル
…………。 |
Ciel |
シエル
……レイさん。 |
Ciel |
シエル
私が、今よりあなたの役に立つためには、 なにをするべきでしょうか。 |
Ciel |
1: できれば、あまり無理をしないで |
1: |
シエル
それは、私が弱いからですか? 能力の不足から、行動不能に陥る可能性が高いからでしょうか。 |
Ciel |
シエル
……すみません。 そのようなことは、おっしゃっていませんでした。 |
Ciel |
シエル
お気遣いいただいているのだと、理解できます。 ……ありがとうございます。 |
Ciel |
シエル
ですが私は……護衛のためにレイさんの お側にいるので……相応のリスクは背負うのが当然です。 |
Ciel |
シエル
背負えなければ、護衛にはなりません。 |
Ciel |
シエル
護衛でなければ…… 私はあなたの側にいる意味がなくなってしまいます。 |
Ciel |
シエル
レイさん。 どうか、早く記憶を取り戻してください。 |
Ciel |
シエル
私のことを思い出してください。 |
Ciel |
シエル
でないと……任務が完遂できません。 |
Ciel |
シエル
私、は……。 |
Ciel |
シエル
……すみません。 |
Ciel |
シエル
まだ、朝まで時間があります。 どうぞもう一眠りしてください。 |
Ciel |
シエル
今大丈夫に思えても、 後々寝不足が体調に影響することもあります。 |
Ciel |
シエル
あなたの健康状態を保つのも……私の任務……です。 |
Ciel |
1: シエルさんのためにも頑張るから |
1: |
シエル
…………。 |
Ciel |
シエル
……おやすみなさい。レイさん。 |
Ciel |
シエル
(精神波長が、乱れている。 レイさんのものではなく、私の波長が……) |
Ciel |
シエル
(重くて、苦しい。 これは……なんという感情……?) |
Ciel |
シエル
レイさんが、 あのような表情を浮かべることは、想定外でした……。 |
Ciel |
シエル
……そうしたいと思っていたわけではないのです。 |
Ciel |
シエル
私は、あなたを悲しませるようなことを 言ってしまったのでしょうか……。 |
Ciel |
シエル
! |
Ciel |
バング
おっと。……すまぬ。 盗み聞きをするつもりではなかったのだが……。 |
Bang |
バング
ちょいと用を足している間に、 出るに出られんようになってしまったのでな。 |
Bang |
シエル
……いえ。大丈夫です。 機密情報について話していたわけではありませんので。 |
Ciel |
バング
はっはっは、そうかそうか。 |
Bang |
バング
……のう、シエル殿。盗み聞きついでに、 少々おせっかいをしたいと思っているのでござるが。 |
Bang |
バング
少し拙者の話を聞いてもらえぬか。 |
Bang |
シエル
はい。構いません。 |
Ciel |
バング
先程、拙者の故郷の話をしたでござるな。 そこに帰りたいと。 |
Bang |
バング
拙者の故郷は、実はもうないのでござる。戦争があってな。 大切な人と一緒に、失われてしまった。 |
Bang |
シエル
それは……。 |
Ciel |
バング
大切な人というのは……拙者がお仕えしていた人のことでな。 つまるところ、拙者はその方をお守りしきれなかった。 |
Bang |
バング
ひどく悔やんだものでござる。己の弱さを恨みもした。 なぜ自分が生き残ってしまったのかと絶望したこともあった。 |
Bang |
バング
自分の意味などなくなったかのように思えたものよ。 |
Bang |
シエル
…………。 ……はい。 |
Ciel |
バング
だが! 拙者は今、そのお方の『守りたかったもの』を 守るために、戦い、生きているでござる。 |
Bang |
シエル
守りたかったもの……? |
Ciel |
バング
うむ。無力ながら、御身をお守りすることはできなかった。 だからこそ、残された御心だけでも拙者は守らねばならん。 |
Bang |
バング
だがこれは、任務ではない。依頼されたわけでもござらん。 守りたいから、守るのでござる。拙者が、拙者のために。 |
Bang |
シエル
……守りたいから……守る。 それは、任務を遂行しようとすることと、違うのですか? |
Ciel |
バング
似ているが、違うのでござる。 |
Bang |
バング
シエル殿。 お主はなんのためにレイ殿を守る? |
Bang |
シエル
……任務遂行のためです。 |
Ciel |
シエル
私たちには、レイさんの力が必要です。 ですから、私に護衛が任されました。 |
Ciel |
シエル
御剣機関のモノとして、与えられた役目を果たすのは、 当然のことです。 |
Ciel |
バング
ふむ……。 |
Bang |
バング
シエル殿の中にある気持ちは、それだけなのでござるか? |
Bang |
シエル
どういう……意味でしょうか? なにを尋ねられているのか、わかりません。 |
Ciel |
バング
仕える者である以上、任務に忠実でなければならん。 だが任務に忠実であろうとするのにも、理由はある。 |
Bang |
バング
力を尽くして任務を行おうとするのは、なぜでござる? |
Bang |
シエル
私が……御剣機関のスレイプニールだからです。 |
Ciel |
バング
すれいぷにーる? それは……シエル殿の役職のようなものでござるか? |
Bang |
シエル
……いえ。厳密には違いますが、所属と解釈していただいて 問題ありません。 |
Ciel |
バング
ふむ。シエル殿。例えばでござるが…… その『すれいぷにーる』なるものに与えられた命令ならば……。 |
Bang |
バング
レイ殿を害することもいとわぬか? |
Bang |
シエル
え……? |
Ciel |
シエル
それは……そのような、命令は……。 |
Ciel |
バング
考えたこともなかった、といった顔でござるなぁ。 |
Bang |
バング
では逆に。命令でなければ、 シエル殿がすれいぷにーるでなかったならば、 |
Bang |
バング
レイ殿が危機に陥っていようと、 シエル殿は守ろうとはしないでござろうか。 |
Bang |
シエル
……………………。 |
Ciel |
バング
拙者には、シエル殿が任務や命令のためだけに戦い、 護衛をしているようには見えなかったでござる。 |
Bang |
バング
なぜ守りたいのか、なぜ戦うのか。 そこにはしっかりと、気持ちがあるはず。 |
Bang |
バング
ただそれに、シエル殿ご自身が気付いていないのであろう。 |
Bang |
シエル
私の、気持ち……。 |
Ciel |
バング
左様。気持ち、でござる! |
Bang |
バング
たとえ力量の及ばぬことであろうとも! 気持ちによって灯された心の炎が己を動かすのでござる! |
Bang |
バング
ゆえに、シエル殿。ご自分の思いに気付かれよ。 |
Bang |
バング
自分がどういう思いでなにを成したいのか、 それがわかったとき、シエル殿はとても強くなる。 |
Bang |
シエル
……強く。 |
Ciel |
シエル
……そうなれば……レイさんを、 お守りすることができるでしょうか。 |
Ciel |
バング
無論!! |
Bang |
バング
それが『気持ち』の力ゆえ。 |
Bang |
シエル
…………。 |
Ciel |
シエル
私には……わかりません。 私は人間ではありません。素体という、造られた存在です。 |
Ciel |
シエル
人間と同じようには、機能していません。 |
Ciel |
バング
そうでござるか? 拙者にシエル殿は人間にしか見えぬでござるよ。 |
Bang |
バング
その強情さなど特にな。 |
Bang |
シエル
…………。 |
Ciel |
バング
造られたとかどうとかは、拙者にはいささか難しい。 だが造られた者であっても、誰かのために戦うことはあろう。 |
Bang |
バング
実際にシエル殿は、痛みや焦りを感じておるではないか。 |
Bang |
バング
……とはいえ、すぐに飲み込めるものでもござらぬか。 |
Bang |
バング
こういう、静かな夜などちょうどいい。 少し考えてみてくだされ。己の心が欲するものを。 |
Bang |
バング
きっと、シエル殿の糧になるでござろう。 |
Bang |
シエル
……はい。 考慮は……してみます。 |
Ciel |
バング
うむ。 |
Bang |
バング
ああいや、少しばかりのつもりが、 すっかり話しこんでしまったでござるな。 |
Bang |
バング
せっかくでござる。見張りを交替しようぞ。 |
Bang |
シエル
いえ、まだ私の担当時間です。 それにバングさんは、先程まで見張りをされていました。 |
Ciel |
シエル
休んでいてください。私たちの行程には…… バングさんの能力が十分に発揮されることが、必要不可欠です。 |
Ciel |
バング
そうであったな。 では、後は任せて、拙者は少し休ませていただく。 |
Bang |
バング
……なにかあれば、いつでも声をかけられよ。 では、御免。 |
Bang |
シエル
…………。 |
Ciel |
シエル
……なぜ守りたいのか……なぜ戦うのか。 |
Ciel |
シエル
私が任務に従う理由は……。 |
Ciel |
シエル
私がレイさんを守る理由は……。 |
Ciel |
シエル
…………。 |
Ciel |
セナ
このままここにいたら……人探しもできないし、 僕たちの大好きな人にも会いに行けないし。 |
Sena |
ルナ
だからな! さっさと元の世界に戻りたいんだ! 戻らなくちゃいけないんだ!! |
Luna |
バング
……はっはっは、そうでござるな。帰りたいでござるよ! |
Bang |
バング
そのためにも、 ラーベ殿たちには必ず目的を果たしてもらわねばならん! |
Bang |
アハト
ええ、そう。大切な人との大切な約束よ。 それを果たさなければならない。だから戻りたいの。 |
Acht |
シエル
……皆さんにも理由がある。 『なぜ』がある。その『気持ち』のために、戦っている……。 |
Ciel |
シエル
私にも……理由があるのでしょうか……。 |
Ciel |
シエル
……いいえ。 |
Ciel |
シエル
私は御剣機関所属のスレイプニール。 戦うための道具です。 |
Ciel |
シエル
正常に機能するためのプログラムに乗っ取り、 行動は決定されます。 |
Ciel |
シエル
それは……理由とは違うものだと、判断します。 |
Ciel |
シエル
……引き続き、警戒にあたります。 |
Ciel |
ラーベ
……はぁ。 |
Raabe |
ラーベ
道具ね。 これは……もう少し、時間が必要そうだな。 |
Raabe |
第7節 海辺の町①/ 7. Seaside Village - 1
Summary | |
---|---|
道程は全体の折り返しを過ぎ、ようやく海が
見えてきた。日本へ渡る船を探すため、一行 は港町へと向かう。 |
セリカ
<size=120%>あ〜〜〜!</size> |
Celica |
セリカ
見て見て、みんな! 見えてきたよ!! |
Celica |
アハト
そうね。そんなに大はしゃぎしなくても、見えてるわよ。 |
Acht |
ルナ
ルナ見えてないぞ! どこどこ、どこだ! |
Luna |
バング
真っ直ぐ前方、道の先でござるよ。 どれ、担ぎ上げるでござるか? |
Bang |
ルナ
おう! 肩車しろ! |
Luna |
ルナ
あ! 変な気は起こすなよ、オッサン。 ロリコンには鉄拳制裁と思え。 |
Luna |
バング
わっはっはっは、チンチクリンめがなにを言いおる。 |
Bang |
ルナ
むきー! チンチクリンじゃない! いいから早く、肩車! |
Luna |
バング
おお、これこれ、暴れるでない。 |
Bang |
バング
……どうだ、見えるでござるか? |
Bang |
ルナ
おー、見える! 町だ! あと海だ!! 港町だ!!! |
Luna |
ラーベ
ようやく中間地点ってところだな。ここから海を渡って初めて、 目的地がある『日本』に足を踏み入れられるわけだ。 |
Raabe |
ルナ
おいレイ、シエル、見えてるか? オッサンに肩車してもらうか? |
Luna |
1: 大丈夫、見えてるよ |
1: |
バング
拙者は構わぬでござるよ! どーんと任されよ! |
Bang |
ルナ
あ、でもそれじゃルナがまた見えなくなっちゃうじゃん。 やっぱなし。 |
Luna |
シエル
お気遣いいただきありがとうございます、ルナさん。 徐々に近づいてもいますし、十分視認できています。 |
Ciel |
セリカ
すこーし、海の匂いもするね。 潮の匂いっていうのかな。 |
Celica |
ルナ
くんくんくん……このなんか、変な匂いのことか。 |
Luna |
セナ
磯臭いっていう人もいますよね〜。 |
Sena |
セリカ
ふふ、そうだね。私は小さな島育ちだから、いつもこんな 匂いの中で暮らしてたよ〜。 |
Celica |
セリカ
早くイシャナに帰りたいな。 父さんと一緒に帰れたら、一番いいんだけど。 |
Celica |
ルナ
確か『災厄』が最初にぶっ壊したところにいたんだろ? 生きてんのか? |
Luna |
バング
これ、ルナ。無神経でござるよ。 |
Bang |
セリカ
いいのいいの。ルナちゃんが言うことはもっともだし、 私も思ってるからね、同じこと。 |
Celica |
セリカ
でもどんなに望みがなくても、もしかしたらって 考えてたいタイプなの、私。 |
Celica |
アハト
思ってるだけならいいんじゃない。 |
Acht |
アハト
望みが絶たれたときに、絶望して自暴自棄、 なんて面倒なことにさえならないでくれるなら。 |
Acht |
セリカ
大丈夫! ……だと思う。 |
Celica |
シエル
このまま順調に進めば、 日が落ちる前には市街地に入れそうですね。 |
Ciel |
ラーベ
だな。着いたらすぐに港へ行って、 船が出ているかどうかチェックしておいたほうがいいだろう。 |
Raabe |
ラーベ
定期便なんて便利なものが運航しているとは思えないが…… 今日中に都合がつくようなら、それにこしたことはない。 |
Raabe |
アハト
荒んだご時世のようだしね。この前の村みたいに、 宿が確保できるかどうかも定かではないもの。 |
Acht |
ルナ
うえ〜……今度こそふかふかベッドで寝たいんだけど。 |
Luna |
セリカ
あはは、そうだね……。 私もさすがにちょっと、体痛くなってきちゃったもんなぁ〜。 |
Celica |
1: 僕(私)もベッドが恋しい |
1: |
セリカ
だよねぇ。焚き火を囲んでみんなで野宿っていうのも 楽しいけど、やっぱりふかふかお布団は誘惑だよね〜。 |
Celica |
セリカ
おお、たくましい……! 私も見習わなきゃ。 といっても……やっぱりふかふかお布団は恋しい〜! |
Celica |
ラーベ
どうなるにせよ、キリキリ足を動かせ。 到着しなけりゃ野宿一択だ。 |
Raabe |
セリカ
はーい! |
Celica |
バング
ん? やれやれでござる。 町まであと一歩だが、その前にまた魔物でござるよ。 |
Bang |
ルナ
いーぜぇ、やってやんよ。 今夜のお布団と美味しい晩飯のためだ! |
Luna |
ラーベ
いやだから。最善は船に乗っちゃいたいんだけどな。 ラーベちゃんとしては。 |
Raabe |
アハト
言わせときなさいよ。 やる気になるんなら、なんでもいいわ。 |
Acht |
シエル
あ……敵対反応……魔物です。 |
Ciel |
ラーベ
おお、わかってる。 ぼーとしてるな。シャキッとしてくれ。 |
Raabe |
1: シエルさん、無理しないでね |
1: |
シエル
…………。 |
Ciel |
シエル
失礼しました。戦闘態勢に移行します。 対象を補足。迎撃開始。 |
Ciel |
第7節 海辺の町②/ 7. Seaside Village - 2
Summary | |
---|---|
港の人々に話を聞くも、日本へ渡る船はな
い。手詰まりかと思われたが、動き出した ミネルヴァを追った先に廃船を見つける。 |
ルナ
<size=120%>海だーーーーーーーーーー!!!</size> |
Luna |
セリカ
<size=120%>海だーーーーーーーーーー!!!</size> |
Celica |
アハト
元気ねぇ。 |
Acht |
バング
元気なのはいいことでござるよ! |
Bang |
ラーベ
ちょっとテンション上げすぎな気もするけどな。 |
Raabe |
シエル
……海は、いいものなのですか? |
Ciel |
ルナ
前にも言ったろ。特別感だよ、特別感。 |
Luna |
セリカ
私は好きだよ。 だから私にとっては、いいものかな。 |
Celica |
1: 僕(私)も好きだよ、海 2: 僕(私)はまあまあかな…… 実は好きってわけじゃない |
1: |
シエル
好き……そうですか。 海はレイさんの好きなものなのですね。 |
Ciel |
シエル
好きでも嫌いでもない、という意味でしょうか。 『まあまあ』……解釈が難しい言葉です。 |
Ciel |
シエル
そうなのですか。 誰もが海に対して好印象を抱いているわけではないのですね。 |
Ciel |
シエル
……海。 |
Ciel |
シエル
見たことはあるのですが。 『見たい』と思ったのは、初めてです。 |
Ciel |
セリカ
それって、なんか素敵だね。 |
Celica |
シエル
そう……ですか? すみません、おっしゃっている意味がよくわかりません。 |
Ciel |
セリカ
私もよくわかんないけど。 素敵だなって思ったの。 |
Celica |
シエル
なるほど……。 |
Ciel |
アハト
それで。まず船だったかしら。 |
Acht |
ラーベ
ああ。この先の交通手段を調査しておかないことには、 予定も立てられんしな。 |
Raabe |
バング
となれば、向かうは港であるか。 |
Bang |
アハト
海沿いを行けば、立地がわからなくても 港へはたどり着けるんじゃない。 |
Acht |
ラーベ
だな。 おーい、そこのはしゃいでる奴ら、行くぞー。 |
Raabe |
セリカ
わ! はーい、行きまーす! |
Celica |
ルナ
よーし、ついてこい手下ども! |
Luna |
セナ
船かぁ。そう簡単に見つかるのかなぁ。 |
Sena |
ルナ
なんだよ、セナ。そーゆー後ろ向きなの、よくないぞ。 |
Luna |
セナ
今回に限っては、後ろ向きってわけじゃないよ〜。 だってほら……町の感じ。見てよ……。 |
Sena |
アハト
……あまり私たちのような外から来た人間を 歓迎してくれる雰囲気じゃないわね。 |
Acht |
シエル
確かにそうですね。 先日の村ほど緊迫した貧しさは感じませんが……。 |
Ciel |
ラーベ
こちらに見向きもしない、興味もない。 そんな印象を受けるな。 |
Raabe |
バング
『災厄』の影響であろうな。 |
Bang |
バング
直接の被害はまぬがれたようだが、 それでも多くのものを失ったのでござろう。 |
Bang |
バング
自分の力ではどうにもならぬ脅威は、財産や人命のみならず、 残された人の意欲や活気をも奪うもの。 |
Bang |
1: それだけ災厄は大きかったんだね |
1: |
アハト
陳腐な言葉だけど『計り知れないもの』だったんでしょうね。 ただ蹂躙されるしかないような。 |
Acht |
セリカ
……うん……。 |
Celica |
ラーベ
町の規模に対して、目につく人の数も少なすぎる。 港として機能しているか怪しいもんだな。 |
Raabe |
アハト
とりあえず、船を探しましょう。 一隻もないなんてことはないでしょうし。 |
Acht |
バング
うむ。港で話を聞いてみようではないか。 どこであろうと調査にはまず情報収集が重要でござる! |
Bang |
ルナ
お。おーい、レイ、シエル、セリカー! こっちこっち! |
Luna |
バング
戻られたか。これで全員集合でござるな。 |
Bang |
セリカ
バングさんたちも、お疲れ様。 ここの港広いんだね。迷子になりそうだった。 |
Celica |
アハト
なりそう、というか。 あなたは実際なるでしょ。 |
Acht |
ラーベ
レイたちと 一緒に行かせたのは大正解だったな。 |
Raabe |
ルナ
そこの軍団だけシエル、セリカ、ミネルヴァ、ラーベに レイで超大人数じゃん。 |
Luna |
ルナ
ルナより手がかかるなんて、世話が焼けるぜ。 |
Luna |
セナ
本当だよねぇ〜。 ルナよりだもんねぇ〜。 |
Sena |
ルナ
むっ。今のなんか、なんかムカつくな! |
Luna |
セナ
あはは、気のせい気のせい。 |
Sena |
セナ
それより……どうでしたぁ? |
Sena |
1: 全然……日本に向かう船はないみたい |
1: |
バング
むうん、やはりそうであったか……。 拙者のほうも、同じような結果でござる。 |
Bang |
バング
日本はおろか、どこに向けても船は出ていないらしい。 せいぜい、近海で魚介類を採るためにしか動かしていないとか。 |
Bang |
ルナ
なんだそっちもか! ルナたちもだ! おそろいだな! |
Luna |
ルナ
船を持ってるって人はいたけど、ちょこっとその辺で魚採る用 にしか使ってないんだって。日本に船なんか出てないってよ。 |
Luna |
アハト
私が調べた範囲でも、同じ感じね。 どこか別の港へ向けて運航している船はなし。 |
Acht |
アハト
それどころか行き先が日本だって聞いたら、 正気を疑われたわ。 |
Acht |
バング
左様。日本という名前には、誰も彼もいい顔を しないでござるな。 |
Bang |
バング
それだけ、拙者たちが向かおうとしている場所は 過酷なところなのだろう。 |
Bang |
セリカ
それは……そうだよね。 |
Celica |
セリカ
『災厄』が現れて……『災厄』に最初に滅ぼされた国だしね。 |
Celica |
アハト
この時勢だと、不吉の代名詞なんでしょうね。 行ける、行けない以前に、誰も近づきたくないのよ。 |
Acht |
シエル
ですが、困りましたね。 船が出ていないとなると、日本へ向かうのは難しいです。 |
Ciel |
シエル
なにかしらの手段で海を渡る必要がありますから……。 |
Ciel |
1: 泳ぐわけにはいかないし…… |
1: |
バング
わっはっは、豪気な発想、拙者好みであるぞ! |
Bang |
バング
だが拙者くらいの者であれば不可能ではないかもしれぬが、 ここにいる全員がとなると、難しいでござろうなぁ。 |
Bang |
アハト
航空機は難しいでしょうね。 施設がどこにあるのかから調べなくちゃならないし。 |
Acht |
アハト
なにより、今まで一度も航空機を見ていないわ。 もしあっても、簡単には飛ばせないわよ。 |
Acht |
セリカ
うーん、うーん……やっぱり船だよね。 どうにかして船。なんでもいいから、船ないかな……。 |
Celica |
ルナ
んなこと言ってもなぁ……。 |
Luna |
ミネルヴァ
…………。 |
Minerva |
ミネルヴァ
…………。 |
Minerva |
セリカ
ん? ミネルヴァ、どうしたの? |
Celica |
ミネルヴァ
…………。 |
Minerva |
セリカ
わ、わ、待ってミネルヴァ、どこ行くの!? |
Celica |
ルナ
あ、おい! |
Luna |
アハト
こら、勝手に行かないの! |
Acht |
ラーベ
まずい、セリカをひとりにするな! どこに姿を消すかわからんぞ! |
Raabe |
シエル
はい! レイさん、追いかけましょう! |
Ciel |
シエル
いました! セリカさんとミネルヴァさん、あそこです。 |
Ciel |
セリカ
あ、おーい! みんな、来て来て! ミネルヴァお手柄だよ! |
Celica |
セリカ
船、あったの! |
Celica |
バング
なんと! それは朗報!! |
Bang |
ルナ
行ってみようぜ〜! |
Luna |
シエル
これは……。 |
Ciel |
ラーベ
船は船だが……。 |
Raabe |
ルナ
とんでもねーボロ船じゃんか……。 |
Luna |
アハト
規模としては、少し大きめの漁船ってところで 悪くないけれど。 |
Acht |
アハト
外も中も、あちこちサビだらけだし。 ちょっと、こっちなんか穴開いてるわよ。これ大丈夫なの? |
Acht |
ラーベ
いやダメだろう。 このまま海に出ようもんなら、数時間のうちに沈むぞ。 |
Raabe |
ラーベ
いやそれ以前に、まともに動くのか? |
Raabe |
セリカ
えー、ダメ? 動かない? 乗れないの? |
Celica |
バング
まあまあ。 外は確かにひどいが、意外と中はまともかもしれぬでござるよ。 |
Bang |
バング
どれどれ……船内はどうなって……。 |
Bang |
バング
<size=120%> どわわわわわわっ!?</size> |
Bang |
セリカ
ど、どうしたの、大丈夫!? |
Celica |
シエル
て、敵性体、魔物を確認! 船の中に潜んでいたようです! |
Ciel |
アハト
なんですってぇ!? |
Acht |
1: わわわ、まだまだ出てきた! |
1: |
ラーベ
長く使われていない船のようだからな。 人知れず魔物が住み着いていたってことか。 |
Raabe |
ルナ
残念だったな、魔物ども! たった今からここは、ルナ様たちの船になるんだ! |
Luna |
ルナ
とっとと立ち退きしてもらうぜ! |
Luna |
セナ
なんだか悪役のセリフみたいだなぁ〜……。 |
Sena |
ルナ
うっせ! ルナ様の言うことが常に正義だ! |
Luna |
バング
常に正義の炎を胸に灯しているということでござるな! 素晴らしい。拙者も負けてはおれぬな。 |
Bang |
バング
こい、魔物ども! このシシガミ=バングがお相手いたぁぁぁす! |
Bang |
ラーベ
お前たちの正義、都合が良いな!! |
Raabe |
第7節 海辺の町③/ 7. Seaside Village - 3
Summary | |
---|---|
船を修理するため、一行は一晩の宿を取る。
その夜にシエルとラーベ、そしてセリカと言 葉を交わし、それぞれの思いを受け止めた。 |
シエル
……検索……完了。 |
Ciel |
シエル
船上、船内に敵性体の反応、ありません。 |
Ciel |
ルナ
よぉし、制圧完了だ! |
Luna |
セリカ
ごめんね、魔物さん。 ありがとう、船、大事に使います。 |
Celica |
シエル
ですが……魔物を倒したとしても、船はこのままでは使えません。 どうにかして修理が必要です。それも、かなり大規模な。 |
Ciel |
アハト
動力部分が使えるのかどうかのチェックも必要よ。 そういうの、誰かに頼まないといけないわよね……。 |
Acht |
ルナ
ふっふっふ……。 |
Luna |
バング
うん? どうしたでござる、ルナ。 なにやら不気味な笑い声をあげておるが。 |
Bang |
ルナ
不気味じゃない、不敵な笑いだ! |
Luna |
ルナ
とにかく、その辺りのことはこのルナ様に まるっとまーかせなさーい!! |
Luna |
セリカ
任せるって……船の修理を? |
Celica |
1: もしかして、修理できるとか? |
1: |
ルナ
そう思うか? |
Luna |
ルナ
その通り、直せるぞ! |
Luna |
ルナ
詳しくはない! |
Luna |
ルナ
でも直せるぞ。 |
Luna |
アハト
直すっていっても、どうするつもり? ここには資材も工具もないのよ? |
Acht |
ルナ
そういう事こそ、ルナ様の専門だ。 じゃーん、これを見よ! |
Luna |
ルナ
ルナの持つラブリーでキュートなこの杖こそ 『雷轟・無兆鈴』! |
Luna |
ルナ
具現化の力を持つスペシャルな杖だ!! |
Luna |
セリカ
具現化? ってことは、なにか作り出すことができるってこと? |
Celica |
ルナ
『なにか』じゃない。『なんでも』だ。 ルナ様がほしいなーって思ったものはなんでも具現化できる! |
Luna |
シエル
言われてみれば、ルナさんやセナさんの戦闘スタイルは 杖を振るうことで様々な物を出現させるというものでした。 |
Ciel |
シエル
戦闘行為のような瞬間的なものではなく、 船の修理のような持続的なものとしても使えるのですね。 |
Ciel |
ルナ
そーだ。 |
Luna |
ルナ
……ちょっとなに言ってるのか難しくて よくわかんなかったけど、そうだ! |
Luna |
セリカ
すごい! 船が直せるなんて、すごいよルナちゃん! |
Celica |
ルナ
そうだろ、そうだろ。 ふふーん、もっとすごがっていいぞ。すごいんだ、ルナ様は。 |
Luna |
バング
だがなんでも具現化できるのならば、修理などせずとも 船そのものを具現化してしまえばよいのではないか? |
Bang |
ルナ
バカ言え。船なんてでっかいもん、ぽーんと作れるか。 もっと小さいものじゃないと無理に決まってんだろ。 |
Luna |
ラーベ
ということは……資材や工具をひとつひとつ作って、 それを使って修理をするということか? |
Raabe |
ルナ
ま、そうなるな。安心しろ、船の構造とかはなんとなーくわかる。 これも『無兆鈴』のおかげだ! |
Luna |
シエル
本当にすごい杖なのですね……。 |
Ciel |
セナ
そうなんですよ〜。 だから、船の修理については僕たちに任せてください〜。 |
Sena |
セナ
といっても、僕たちはパーツを作れるだけですから。 実際に修理をする、労働者が必要ですけどねぇ〜。 |
Sena |
セリカ
はいはい! 私やる! |
Celica |
ラーベ
なにか特別な知識や経験でもあるのか? |
Raabe |
セリカ
ないけど、楽しそう! |
Celica |
セリカ
それに私が日本に行きたいっていうのを 叶えてくれるための船だし。 |
Celica |
セナ
あ〜、お気持ちは嬉しいんですけど、経験のない素人さんに 手を出されると、大変心許ないので〜……。 |
Sena |
セナ
バングさん、手伝ってください〜。 |
Sena |
バング
おお、拙者でござるか。 |
Bang |
バング
無論、助太刀が必要とあらば、喜んで手伝うでござるよ! こう見えても大工仕事には慣れているでござる。 |
Bang |
バング
一時は毎日毎日、行く先を失った同胞たちの住まいを 建てて回っていたでござるからなぁ! |
Bang |
アハト
ふうん、それならお任せできそうね。 |
Acht |
ルナ
ただなー、機械はどうなるかちょっとわかんないな。 そっくりに作ることはできるけど、動かし方わかんないし。 |
Luna |
ラーベ
そっくりに作れるなら十分だ。 動く状態にセッティングする役目は、私がやろう。 |
Raabe |
アハト
役割分担は決まりね。 |
Acht |
アハト
私はこういうことには戦力にならないから、 少しの間自由にさせてもらおうかしら。 |
Acht |
セリカ
ねえ、ルナちゃんセナちゃん。 修理って、どれくらいかかりそう? |
Celica |
ルナ
んー、オッサンの働き次第だけど、一晩はかかるんじゃないか。 ルナだって休みなしに具現化し続けられるわけじゃないし。 |
Luna |
シエル
では、宿の手配をしておいたほうがいいですね。 |
Ciel |
ルナ
だな! ルナ様のふかふかお布団とおいしい晩ご飯を用意しておけよな! |
Luna |
シエル
ご期待に添えるかどうかはわかりませんが、 捜索してみます。 |
Ciel |
1: じゃあ、僕(私)たちは宿探しだね |
1: |
シエル
はい。 皆さんがしっかり休める場所を確保しておきます。 |
Ciel |
バング
任されよ! |
Bang |
ルナ
まっかされよー。 |
Luna |
シエル
無事に宿が確保できてよかったです。 これでルナさんたちにも、ゆっくり休んでいただけます。 |
Ciel |
ラーベ
そうだな。レイの体力回復にもなる。 |
Raabe |
ラーベ
今回はこれまでと比べて、かなり長期の |
Raabe |
ラーベ
なにか異常があれば、知らせるんだぞ。 お前は私たちにとって特別な……。 |
Raabe |
ラーベ
……仲間なのだからな。 |
Raabe |
シエル
…………。 |
Ciel |
シエル
……あの。 記憶は……いかがですか? まだ、戻りませんか? |
Ciel |
1: 少しずつ、違和感はなくなってきたけど…… |
1: |
ラーベ
そうか。だったら、混乱させるだけかもしれないが…… 現状について、ちょっと整理しておくぞ。 |
Raabe |
ラーベ
今後の方針にも繋がるから、一応聞いておけ。 |
Raabe |
ラーベ
……我々は今、日本へ向かっている。 |
Raabe |
ラーベ
理由は、セリカの父親が勤務していたという研究所を訪れ、 彼女の父親の消息を知るためだ。 |
Raabe |
ラーベ
だが私たち……つまり私とシエル、そしてお前の目的は違う。 そこにあるだろう『窯』を確認しに行く。 |
Raabe |
ラーベ
『窯』の破壊こそが、私たちの最終目的だ。 そうすることでファントムフィールドを解放する。 |
Raabe |
ラーベ
同時に『窯』に到達することで境界にアクセスし、 お前の記憶も取り戻す。 |
Raabe |
シエル
……『窯』は、観測者が特定できていないと認識できません。 なので、先に観測者を特定しなければならないはずです。 |
Ciel |
ラーベ
そうだな。だが今現在、観測者に繋がる情報は極めて少ない。 ……というか、候補者があまりにも少ない。 |
Raabe |
ラーベ
異物連中の証言をうのみにするなら、この世界の人間であると 自覚のあるドライブ能力者はセリカのみだ。 |
Raabe |
シエル
では、セリカさんが今回のファントムフィールドの 観測者なのでしょうか。 |
Ciel |
ラーベ
さすがにまだ、そうと断定はできないな。 |
Raabe |
ラーベ
これまでにも、異物であると思い込んでいながら、 実際には異物でなかったという前例があった。 |
Raabe |
ラーベ
着々と日本へ向けて進行していることから セリカの願望が叶えられようとしているように思えるが……。 |
Raabe |
ラーベ
目的地である研究所に到達することで、あるいはその先で、 別の誰かの目的が叶う仕組みになっている場合もあるだろう。 |
Raabe |
ラーベ
だが少なくとも、日本に行くことを誰かが妨害している節はない。 つまり『観測者』は日本へ『行きたい』んだ。 |
Raabe |
ラーベ
一方で、観測者は『窯』に近付かれることを拒む傾向がある。 ということは……? |
Raabe |
シエル
『窯』へ近づいたときに、 なにかしらの拒絶反応が起こるはず……ですか? |
Ciel |
ラーベ
そう、その通り。今までもそうだったな。 仮にまだ、私たちが観測者に接触していなくても、 |
Raabe |
ラーベ
私たちが『窯』へアクセスしようとしたとき、 必ず観測者、あるいは世界は反応を見せる。 |
Raabe |
ラーベ
幸い、異物連中を含めて、 コンタクトできたドライブ能力者は全員同行者だ。 |
Raabe |
ラーベ
そのときどんな事象が起こるかで、 観測者を特定できるだろう。 |
Raabe |
ラーベ
……とまあ、状況の整理はこんなもんにしておこう。 結局あれだ、なるようになる。 |
Raabe |
ラーベ
ところで、他の連中はまだ戻ってこないか。 |
Raabe |
シエル
ルナさんとセナさん、バングさんは船の修理。 アハトさんは町を散策すると言っていました。 |
Ciel |
ラーベ
セリカは船の修理を見学しているんだっけか。 資材運びならミネルヴァも手伝えるからと。 |
Raabe |
ラーベ
食事の確保もしてあるし…… となれば、しばらく自由行動だな。 |
Raabe |
ラーベ
レイ、どうする? 部屋で休んでいても構わないけど。 |
Raabe |
1: せっかくだから散歩してこようかな |
1: |
ラーベ
迷子になるなよ。 |
Raabe |
シエル
…………。 |
Ciel |
ラーベ
……なんだ。ついていかないのか? |
Raabe |
シエル
……周囲に、敵性反応はありません。 |
Ciel |
シエル
それに……私がついていっても、 レイさんのお役には立ちません。 |
Ciel |
ラーベ
なにを拗ねてるんだ、お前。 |
Raabe |
シエル
拗ねる……という意味に属する行動は とっていません。 |
Ciel |
シエル
現状を把握したうえでの……自己分析の結果です。 |
Ciel |
ラーベ
それを拗ねてるというんだ。 お前の任務は……ああ、いや。 |
Raabe |
ラーベ
まあ、いいか。 |
Raabe |
シエル
…………。 |
Ciel |
ラーベ
ぴったりくっついて同行する必要はない。 ただ、緊急時に即座に対応できるようにはしておけ。 |
Raabe |
シエル
……はい。 私の任務はレイさんの護衛です……。 |
Ciel |
シエル
緊急対応可能な距離で、索敵と警戒を行います。 |
Ciel |
ラーベ
……これはいい傾向、かもね。 |
Raabe |
1: 静かな公園だな…… |
1: |
1: (今まで色んな場所に行った……はず) |
1: |
セリカ
レイ! |
Celica |
セリカ
あはは、びっくりさせちゃった? ごめんね。 姿が見えたから嬉しくなっちゃって、走ってきた。 |
Celica |
セリカ
海、見てたの? 私も一緒にいいかな。 |
Celica |
セリカ
……綺麗だねぇ。海も、月も。 |
Celica |
セリカ
魔素で汚れちゃってるんだって、海。空気も。 でも……ここから見るのは綺麗。 |
Celica |
セリカ
……この海の向こうに、日本はあるんだね。 |
Celica |
セリカ
父さん、会いたいなぁ。 |
Celica |
セリカ
私の家族ね。父と姉だけなの。 母さんは、私が小さいころに病気で死んじゃって。 |
Celica |
セリカ
そのころにはもう父さんは有名な科学者で、 ずっと研究所に泊まり込んで難しい研究をしてた。 |
Celica |
セリカ
だからいつもお姉ちゃんが私の面倒を見てくれて。 そのお姉ちゃんもね、すごいんだよ! |
Celica |
セリカ
私と同じ、魔道協会の学生なんだけど。 なんとイシャナの十聖に選ばれたの! |
Celica |
セリカ
あ、十聖ってわかる? えっと、特に優秀な魔術師しか選ばれない、特別な役職なの。 |
Celica |
セリカ
すごい父さんと、すごいお姉ちゃん。 |
Celica |
セリカ
ふたりの仲はすっごく悪いけど、 私にとってはどっちも自慢で、大事な家族なの。 |
Celica |
セリカ
大好きなお姉ちゃん、きっと今ごろ すごーく心配して、すごーく怒ってると思うんだけど。 |
Celica |
セリカ
同じくらい、父さんのことも大好きだから……。 |
Celica |
1: だから、消息が知りたいんだね |
1: |
セリカ
うん。悲しい結果でもいいの。 なにかを見て、なにかを知ることができたらそれでいい。 |
Celica |
セリカ
お姉ちゃんには、考えなしってよく怒られるんだ。 でも……今より、なにかを見て、なにかを知ってから帰りたい。 |
Celica |
セリカ
なにも確かなことを知らないままで、 ふわふわした想像ばっかりしてると…… |
Celica |
セリカ
父さんの存在まであやふやになっちゃいそうな気がするんだ。 |
Celica |
セリカ
……それとね、もうひとつ。 『災厄』のことを確かめたいの。 |
Celica |
セリカ
父さんが働いてた研究所は『災厄』に最初に襲撃された場所。 つまり……『災厄』が最初に現れた場所でもある。 |
Celica |
セリカ
それじゃあさ、父さんの研究所は……『災厄』を呼び出した 場所ってことになるかもしれないでしょ。 |
Celica |
セリカ
どうしてあの研究所が最初だったのか…… どうして『災厄』が現れたのか、知れたらいいなって。 |
Celica |
セリカ
なんて、そんなことを思って飛び出してきたはいいけどね。 結局みんなに助けられて、なんとかここまで来られたわけで。 |
Celica |
セリカ
あのとき、山の中であなたに出会えてよかった。 あそこから全部……始まってるような気がするんだ。 |
Celica |
1: (始まり……なにか引っかかるような) |
1: |
セリカ
ん? あれって……。 |
Celica |
セリカ
シエルちゃんだ。 どうしたんだろ、あんな離れたところでぽつんと立って。 |
Celica |
セリカ
……よし、行ってみよう! おーい、シエルちゃーーーん! |
Celica |
シエル
あ……。 |
Ciel |
セリカ
シエルちゃん。どうしたの? |
Celica |
セリカ
なんだか、寂しそうだったよ。 |
Celica |
シエル
…………。 |
Ciel |
シエル
寂しい、わけでは、ありません。 私は……任務を……索敵と警戒を……。 |
Ciel |
セリカ
任務? あ、護衛の任務だね。 |
Celica |
セリカ
ちょっと離れたところから、 レイを守ってたんだ。 |
Celica |
シエル
いえ。その。 |
Ciel |
シエル
……あの。 |
Ciel |
セリカ
ん? なぁに? |
Celica |
シエル
私は……。 |
Ciel |
シエル
レイさん。 私が、あなたの側にいる意味はあるのでしょうか? |
Ciel |
セリカ
え……? |
Celica |
シエル
先日も同じようなことを言いました。 あれからずっと疑問に思っています。 |
Ciel |
シエル
今も答えがわかりません。 |
Ciel |
シエル
私は護衛として、満足に機能していません。 |
Ciel |
シエル
私が側にいるよりも、セリカさんやミネルヴァさんが 側にいたほうがずっと安全です。 |
Ciel |
シエル
戦闘技能も、索敵機能も ミネルヴァさんのほうが優れています。 |
Ciel |
シエル
セリカさんには治癒能力がありますし、 精神的なサポートも行うことができる。 |
Ciel |
シエル
でも私には……できません。 |
Ciel |
シエル
私が近くで護衛をする意味は……あるのでしょうか。 |
Ciel |
1: あるよ! |
1: |
If Choice 1: | |
---|---|
シエル
……そう……でしょうか。 |
Ciel |
シエル
でも、ですが、私は……。 |
Ciel |
If Choice 2: | |
---|---|
シエル
……そう……ですよね。 |
Ciel |
シエル
すみません……おかしなことを、聞きました……。 |
Ciel |
セリカ
シエルちゃん。不安なんだね。 |
Celica |
シエル
不安……? |
Ciel |
セリカ
細かいことは、私にはわからないけど。今のシエルちゃんは、 普段の自分とは違う感じがするんでしょう? |
Celica |
シエル
は……はい。違います。機能も精神波長も違いすぎています。 なのに……コントロールできずにいます……。 |
Ciel |
シエル
これも、私が……。 |
Ciel |
セリカ
うん。そういうときってあるよね。 いつもできてることができなくなったり。 |
Celica |
セリカ
私もそういうとき、不安になるの。 なんでできないんだろうって。 |
Celica |
セリカ
落ち込むし、自信なくしちゃうし…… 自分ってなんてダメなんだろうって思ったりもするよ。 |
Celica |
シエル
……セリカさんも、そう考えられるのですか。 |
Ciel |
セリカ
うん。 |
Celica |
セリカ
同じだ、って思ってくれた? シエルちゃんも同じように感じるのかな。 |
Celica |
シエル
感じる……私が……。 |
Ciel |
セリカ
自分はダメだって思うと、気持ちがグラグラするよね。 自分の意味を聞きたくなる気持ちも、わかるよ。 |
Celica |
セリカ
だけど、レイにいくら聞いても、 気持ちのグラグラは治らないと思うんだ。 |
Celica |
セリカ
シエルちゃんがレイの側にいて、 意味があるのかないのか。 |
Celica |
セリカ
それを判断できるのって、 シエルちゃん自身なんじゃないかな。 |
Celica |
シエル
私自身……ですか? |
Ciel |
セリカ
うん。シエルちゃんが知りたいのって、 レイにとっての『意味』じゃなくて、 |
Celica |
セリカ
シエルちゃん自身にとっての『意味』だと思う。 |
Celica |
シエル
…………。 |
Ciel |
1: 自分がどう考えているか……かな |
1: |
セリカ
うん、そう。そんな感じ! レイいいこと言ったと思う! |
Celica |
シエル
私、は……レイさんの護衛任務を 命じられたので……だから……。 |
Ciel |
セリカ
眉間にしわ、寄ってるよ。 |
Celica |
セリカ
難しい問題は、ゆっくり考えたらいいんだよ。 特に自分のことは、簡単にはわからないことなんだから。 |
Celica |
セリカ
美味しいご飯でも、食べながら。ね。 |
Celica |
シエル
…………。 |
Ciel |
セリカ
と、いうわけで、ご飯にしない? 私お腹すいてきちゃった。 |
Celica |
セリカ
港に寄って、ルナちゃんセナちゃん、バングさんに声かけて。 みんなで宿で晩ご飯にしよ! |
Celica |
シエル
…………はい。 |
Ciel |
第8節 時間稼ぎ①/ 8. Buying Time - 1
Summary | |
---|---|
夜明け、ルナの唐突な叫び声に起こされる。
港の人々が忽然と消えており、警戒する一行 の前に『バベル』のセミアが現れた。 |
ルナ
<size=130%>大変大変大変だー!</size> <size=130%>起きろ、全員起きろーーー!</size> |
Luna |
1: ど、ど、どうしたのいきなり!? |
1: |
ルナ
どーしたもこーしたもあるか! とにかくすっごく大変なんだ! |
Luna |
ルナ
なにセナみたいなこと言ってんだ! 寝ぼけてる場合じゃないぞ! |
Luna |
ルナ
さっさと起きて、外に来い! グズノロマ!! |
Luna |
1: これは…… |
1: |
ルナ
そーなんだよ! 誰もいないんだ、町ん中! |
Luna |
アハト
私もこの子に叩き起こされて、少し周りを見てきたんだけど。 建物の中にも人の気配はないわ。 |
Acht |
アハト
まるで一晩のうちに忽然と、 人が消えてしまったかのよう。 |
Acht |
セリカ
そんな……。 |
Celica |
セリカ
昨日までは、すごく大勢じゃなかったけど、 ちゃんと人がいたのに。なんで……? |
Celica |
ミネルヴァ
……………………。 |
Minerva |
ラーベ
おい、シエル。確認しろ。 |
Raabe |
シエル
はい。検索を開始します。 |
Ciel |
シエル
…………。 |
Ciel |
シエル
……索敵可能範囲内に、それらしい反応はありません。 |
Ciel |
シエル
人だけではありません。 もっと小さな生命の反応も確認できませんでした。 |
Ciel |
アハト
ネズミだとか虫だとかもいないってこと? どうなっているの……? |
Acht |
シエル
高速で移動中の反応を感知しました。 こちらに向かってきま……あ。 |
Ciel |
バング
とうっ!! |
Bang |
バング
愛と正義の戦士シシガミ=バング、朝日を浴びつつ華麗に参上! おお、皆揃っておったか。 |
Bang |
シエル
今の反応は、バングさんでしたか。 おはようございます。町の様子を見てこられたのですか? |
Ciel |
バング
うむ! ルナと共に、船の仕上げ作業に向かったときに 異変に気が付いてな。 |
Bang |
バング
主要な箇所を、一通り確認してきたところでござる。 |
Bang |
セリカ
ど、どうだったの……? |
Celica |
バング
……誰もおらぬ。 |
Bang |
バング
奇妙なことに、ついさっきまで人がいたような形跡、 というものもない。 |
Bang |
バング
人など存在していなかったとでも言うかのように、 建物と最低限の家財道具だけが残っているのでござる。 |
Bang |
アハト
まさか、これが『災厄』なの……? |
Acht |
ラーベ
いや、違うだろう。なにも破壊されていない。 ただ人が……生命反応が消えただけだ。 |
Raabe |
シエル
『災厄』という現象が理由ならば、私たちだけが無事なのも 不可解です。 |
Ciel |
セリカ
でも、なにかがあった……。 |
Celica |
ミネルヴァ
……!! |
Minerva |
セリカ
わ、ど、どうしたのミネルヴァ!? |
Celica |
シエル
敵ですか!? でも、まだ反応は……。 |
Ciel |
???
あぁ……いたいた。 建物がゴチャゴチャしてるから探しちゃったよ……。 |
??? |
シエル
っ!? |
Ciel |
???
タイミングよく人間が消えてくれて助かっちゃった。 ご協力どーも。 |
??? |
???
……で、一応確認するけどさ。 御剣機関……だよね? |
??? |
ラーベ
お前は誰だ? |
Raabe |
???
アタシ? ……セミア。 |
??? |
セミア
『バベル』って言ったほうが、わかりやすいか。 |
Semia |
シエル
バベル……。 |
Ciel |
1: っ……覚えてる。あのときの…… |
1: |
セミア
なに? 人間風情が、キモい目で睨まないでくれる? 潰すよ……その『目』。 |
Semia |
セミア
あぁ、でもちょっかい出すのは、ちょっと怖いなぁ。 だって変なドライブもってるんでしょ、アンタ……。 |
Semia |
セミア
その目で『観』られるのも気持ち悪いし。 ザラみたいに馬鹿を披露するのも……。 |
Semia |
セミア
アタシはまだ御免だからさ。 |
Semia |
ルナ
うわわわっ! な、なんだぁ!? |
Luna |
バング
地揺れでござるか!? |
Bang |
アハト
っ、違うわ。なにかがせり上がってくる。 下がって! |
Acht |
ミネルヴァ
……!! |
Minerva |
セリカ
きゃぁっ! |
Celica |
ルナ
うわ、ほんとに地面から出てきた! なんだあれ、でっか!! |
Luna |
アハト
ゴーレム……みたいなものね。 なんにせよ、友好的には見えないわ。 |
Acht |
セミア
悪いけど、まだこっち、ちょっと時間かかるの。 今すぐ日本に来られても迷惑だから。そいつと遊んでてよ。 |
Semia |
セミア
アタシはすぐ戻らないといけないしさ。 |
Semia |
セミア
……起きたときひとりじゃ、あの子かわいそうだし。 ひとりでどっか行っちゃったら困るしね。 |
Semia |
ラーベ
あの子? おい、お前。なんの話をしている? |
Raabe |
セミア
親切に教えるわけないし。馬鹿なの? チラ見せだけして焦らそうって魂胆なんだから、こっちは。 |
Semia |
セミア
ああ、いけない。遊んでる場合じゃないんだった。 行かないと。 |
Semia |
ルナ
おい待てお前! なに勝手に話進めてんだ!? |
Luna |
ルナ
お前……なんか、その格好……誰かに似てるような……。 |
Luna |
セミア
え? なに? てか、異物には興味ないんだけど。 ウザイから、ここで死んでくれない。 |
Semia |
ルナ
はぁ!? 上等だお前、かかってこい! てかお前がこい! |
Luna |
アハト
やめときなさい。 まともに戦ってどうこうなる相手じゃないわよ……。 |
Acht |
アハト
それに……目の前のこのゴーレムだって、 とんでもない魔力量だわ。 |
Acht |
アハト
魔力で動いてるかは、定かじゃないけど。 |
Acht |
バング
ぐぬぬ……。 |
Bang |
セミア
ああ……そうだ。 |
Semia |
セミア
アンタは機能停止しないでよね……御剣の犬。 ハーンに言われてるからさ。 |
Semia |
シエル
ハーン……。 あのときの、フードを被った……。 |
Ciel |
セミア
……まぁ、壊れたら壊れたで、別に知ったこっちゃないんだけど。 残念でした〜ってね。 |
Semia |
セミア
それじゃ。 バイバイ。 |
Semia |
シエル
ま……待ってください! アナタがたは一体なにを……! |
Ciel |
1: シエルさん、危ないよ! |
1: |
シエル
あ……す、すみません。 アナタを、守るはずなのに……。 |
Ciel |
バング
ゴーレムの奴め、 目茶苦茶に暴れてくれるではないか……。 |
Bang |
バング
このままではいささかまずいでござるよ。万が一船に 被害が及べば、海に出られなくなるでござる! |
Bang |
セリカ
ルナちゃんたちが一生懸命直してくれた船…… 壊されるなんて、絶対ダメ。行くよ、ミネルヴァ! |
Celica |
ミネルヴァ
………………………。 |
Minerva |
セリカ
ん? どうしたの、ミネルヴァ。ねえ……! |
Celica |
セリカ
ど、どうしよう、ミネルヴァが反応しなくなっちゃった! |
Celica |
ラーベ
なんだと? おいおい、こんなときに……。 |
Raabe |
ゴーレム
ゴオオオオオオオオオオオオオ!!! |
Golem |
ラーベ
うわ、お、おい、来るぞ! 私はちょっと下がってるからな。 流れ瓦礫にでも当たったら、一発でぺちゃんこだ! |
Raabe |
ルナ
なんだよ、流れ瓦礫って!? |
Luna |
ルナ
こういうとき役に立たないのな、このポンコツボール! |
Luna |
ラーベ
ポンコツではない! 最新鋭の精密機器だ! 丁重に扱え! |
Raabe |
アハト
バカ言ってる場合じゃないでしょ! 来るわよ! |
Acht |
バング
セリカ殿、ミネルヴァ殿と一緒に下がっているでござる! 行くぞ、皆の衆! |
Bang |
シエル
は……はい! 戦闘態勢に移行。対象の排除を開始します。 ……レイさん、安全な距離にいてください。 |
Ciel |
第8節 時間稼ぎ②/ 8. Buying Time - 2
Summary | |
---|---|
セミアが出現させた巨大ゴーレムに苦戦する
一行。この場を引き受けるというアハトの 言葉を信じ、彼女を残して船へと走る。 |
バング
これでどうでござる!? |
Bang |
ルナ
げげげっ! 全然効いてなくないか!? |
Luna |
セリカ
そんな……! |
Celica |
シエル
手応えはあります。ダメージは蓄積しているはずです。 ですが……。 |
Ciel |
ラーベ
頑丈すぎて、大した影響は出てないってのが現状だな。 |
Raabe |
ルナ
そんなのアリかよ、ずるいぞ! ……うわぁっ! |
Luna |
ルナ
あ、あ、あっぶね! あいつ今、屋根投げてきたぞ! |
Luna |
セリカ
もうめちゃくちゃするんだから! |
Celica |
ラーベ
こうなると、人が消えててよかったなぁ。 |
Raabe |
セリカ
よくはないよ! いや、でもケガする人は実際に いないわけだから……よかったのかな……あれ? |
Celica |
アハト
無駄口叩いてると、潰されるわよ! |
Acht |
バング
しかしどうしたものか。こう頑丈だと、ちまちま削っていても らちが明かないでござるな。 |
Bang |
バング
強烈に一発ぶちかますかなにかして、動きだけでも止めねば。 だがそんなことをすれば、港に被害が出るやもしれぬ。 |
Bang |
バング
いっそ一気に駆け抜けて船まで行き、 早々に海に出てしまうほうが得策であろうか……。 |
Bang |
セナ
でも、海に出たところを狙われたらどうするんですかぁ〜…… 船じゃ回避のしようもないですよぉ〜。 |
Sena |
アハト
その問題の船、もう出港できる状態なの? |
Acht |
ルナ
そっちはバッチリだ! 仕上げのルナ様像はまだだけど、 機械のとこも、昨日の夜にラーベがやってくれた! |
Luna |
アハト
そう。じゃあいいわ。 全員、さっさと船に行きなさい。 |
Acht |
セリカ
それ、どういうこと? 私たちが先に行くなら、アハトさんは? |
Celica |
アハト
いちいち全部説明しなくても、 理屈くらいわかってほしいわね。 |
Acht |
アハト
あなたたちが船で行く。私はここで、あの大きなお人形が 船を狙わないよう足止めする。以上よ。 |
Acht |
セリカ
そんな! アハトさんひとり残していくなんて! |
Celica |
ルナ
大体、ひとりであいつと戦えるのかよ! これだけ人数いて、こんだけ苦戦してるってのに! |
Luna |
アハト
もう……逆よ、逆! |
Acht |
アハト
これだけ人数がいるから、本気で戦えないのよ。 いいから行きなさい、近くにいられると邪魔なの。 |
Acht |
バング
策があるでござるか? |
Bang |
アハト
あのねぇ……私、これでも相当できる魔術師なのよ。 私の身の安全を気にしているのなら、心配無用。 |
Acht |
アハト
それより……ここであなたたちが余計な足止めを食って、 私が元の世界に戻る手段が途絶える方が困るわ。 |
Acht |
アハト
目的があるのでしょう。私もよ。 そのために行動しているの。ピクニックに来たんじゃないわ。 |
Acht |
シエル
……っ! |
Ciel |
1: でも…… |
1: |
アハト
迷うのは悪いことじゃないけど、今は必要ないことよ。 |
Acht |
アハト
この私が強がりまでしてあなたたちを逃がすような、 自己犠牲精神に溢れた女に見える? |
Acht |
バング
くっ……! 抜けるでござるよ。 拙者が先導する。着いて参れ! |
Bang |
ルナ
わ、わかった! |
Luna |
アハト
走って、早く! |
Acht |
1: 無理しないでね! |
1: |
セリカ
アハトさん……! |
Celica |
ラーベ
いちいち振り向くな、さっさと船に乗れ! |
Raabe |
セリカ
う、うん……ミネルヴァ、走って。ほら、早く。 |
Celica |
ミネルヴァ
…………。 |
Minerva |
シエル
ミネルヴァさん、どうしたのでしょうか……? |
Ciel |
セリカ
わかんない。なんだか動きがすごくぎこちないの……。 どこか痛いのかな……? |
Celica |
バング
うぬ、止まれ! |
Bang |
シエル
っ! 前方、対象を確認。 魔物です! |
Ciel |
ルナ
あいつら、あの船に住み着いてたやつと同じ魔物だ! |
Luna |
バング
近海に住処があるのやもしれんな。 突破するでござるよ! |
Bang |
ミネルヴァ
…………! |
Minerva |
セリカ
わ! びっくりした、急に動き出した……! 大丈夫なの、ミネルヴァ? |
Celica |
ルナ
なんだ、元に戻ったのか!? だったらガンガン働けー! |
Luna |
シエル
戦闘態勢に移行します。 セリカさんとレイさんは……。 |
Ciel |
1: 大丈夫。一緒に戦うよ! |
1: |
シエル
え、あ。は、はい! |
Ciel |
セリカ
私も、大丈夫! 行くよ、ミネルヴァ! |
Celica |
ミネルヴァ
!! |
Minerva |
第8節 時間稼ぎ③/ 8. Buying Time - 3
Summary | |
---|---|
攻撃を躱し、船に飛び込んだシエルたち。ア
ハトはひとり港に残り船を見送ると、イシャ ナ十聖の意地をかけゴーレムに立ち向かう。 |
ラーベ
全員乗ったな!? 船を出すぞ! |
Raabe |
シエル
はい! |
Ciel |
1: よろしく、ラーベ! |
1: |
ルナ
行け行けー! |
Luna |
アハト
……船が出たわね。 |
Acht |
ゴーレム
ゥゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……! |
Golem |
アハト
だったら、次はこちらの番だわ。 さあ、誰に遠慮することもない。思いっきりやりましょう。 |
Acht |
アハト
我が名はアハト。魔道都市イシャナにおける十聖がひとり。 八席の官位を与えられし者。 |
Acht |
アハト
……今ではもう意味のない名だけれど。 その名が意味するものを味わいなさい! |
Acht |
第8節 時間稼ぎ④/ 8. Buying Time - 4
Summary | |
---|---|
ナインとトリニティが港町に辿り着く。氷漬
けの町に座り込むアハトを見つけて言葉を交 わしたのち、三人は共に海へと漕ぎ出した。 |
トリニティ
そんな……この町まで、破壊されているなんて……。 |
Trinity |
トリニティ
でもおかしいですねぇ。 |
Trinity |
トリニティ
情報では、この町は人こそ減ったけれど 『災厄』の被害には見舞われていないはずでしたが……。 |
Trinity |
ナイン
……ええ。『災厄』の被害には遭ってないわ。 |
Nine |
ナイン
これはあの化け物のしたことじゃない。 原型が残り過ぎている。 |
Nine |
トリニティ
確かに……そうですねぇ。 どちらかというと、大規模な戦闘があった後のような……あら? |
Trinity |
トリニティ
これは……氷? |
Trinity |
トリニティ
ただの氷ではありませんね。 魔力を帯びた……魔術で生み出された氷です。 |
Trinity |
ナイン
…………。 |
Nine |
トリニティ
ここから先……市街地のあちこちに。 同じ魔力を帯びた氷が―― |
Trinity |
ナイン
トリニティ。 誰か知らないけど、セリカは魔術師と一緒だったわね。 |
Nine |
トリニティ
先日立ち寄った村を救った……という方ですね。 |
Trinity |
ナイン
あのときの防護魔術と、同じ魔力だわ。 |
Nine |
トリニティ
では、ここにその方が……。 ということは、セリカさんも。 |
Trinity |
ナイン
氷の発生源を探すわよ! もしかしたらまだいるかもしれな……。 |
Nine |
ナイン
いいえ、捜索は無用そうね。 |
Nine |
トリニティ
え……あ! |
Trinity |
トリニティ
まぁ、大変ですぅ! 瓦礫の脇に、どなたかが座り込んでいらっしゃいます。 |
Trinity |
トリニティ
もしかしたら怪我をさなっているのかもしれません、 行きましょう〜! |
Trinity |
トリニティ
あの、大丈夫ですかぁ〜? しっかりしてください〜。 |
Trinity |
アハト
……あ……あなた、たちは……? |
Acht |
トリニティ
私はトリニティ=グラスフィールと申します。 こちらは、ナイン。 |
Trinity |
ナイン
簡潔に答えて。 セリカはどこ? |
Nine |
アハト
セリカ……? |
Acht |
トリニティ
ナイン、突然そんなことをうかがっても、困ってしまいますよ。 まずはこちらの事情をお伝えしませんと〜。 |
Trinity |
ナイン
事情説明なんて無用よ。 むしろ説明を求めるのはこっちのほう。 |
Nine |
ナイン
この人、あの防護魔術の魔術師よ。 つまりこの町を氷漬けにした本人。セリカの同行者。 |
Nine |
トリニティ
まぁ……。 |
Trinity |
ナイン
さあ、洗いざらい話して。セリカはどこ? 無事なんでしょうね? |
Nine |
アハト
ああ、セリカちゃんね……。ええ、無事……だと思うわ。 私が最後に見たときはね。 |
Acht |
ナイン
どういうこと? |
Nine |
アハト
彼女は先にここを発ったのよ……。 |
Acht |
アハト
大きな、ゴーレムに襲撃されて……。 私が引き受けている間に、先に行ってもらったわ。 |
Acht |
ナイン
先って、どこへ? 行き先は!? |
Nine |
アハト
知らないの……? あの子のことを追いかけて来ているんでしょう? |
Acht |
アハト
あの子が……どうしてこんなところまで来たのか、 知っているんじゃないの? |
Acht |
ナイン
……日本……。 |
Nine |
ナイン
馬鹿な子ね! 本当に日本に行ったの!? 日本がどういう状態なのかも知らないで! |
Nine |
ナイン
どうやって行ったの? 船なんか出てるはずないじゃない。 軍隊にツテでもなけりゃ、行けるはずないわ! |
Nine |
アハト
廃船を、修理したのよ。 そういうことが……得意な子が、いて。 |
Acht |
アハト
っ……。 |
Acht |
トリニティ
あぁ、どうぞご無理なさらないでください。 大丈夫ですか。 |
Trinity |
トリニティ
大きなお怪我はないようですけれど……。 フラついていらっしゃいます。 |
Trinity |
アハト
……大丈夫よ。少し、魔力を使いすぎただけ。 ひと眠りしたから、もうだいぶマシだけど。 |
Acht |
トリニティ
お騒がせしてしまって、すみません。 教えてくださってありがとうございますぅ。 |
Trinity |
トリニティ
……ナイン。どうしますか? |
Trinity |
ナイン
もちろん行くわ。日本へ。 |
Nine |
アハト
どうやって……? 船はあるけど、それを操縦できる人間はいないわよ。 |
Acht |
アハト
町には誰一人残っていないわ。 |
Acht |
ナイン
そんなもの、どうとでもなるわ。 海流を操作して魔術で走らせればいいのよ。 |
Nine |
ナイン
トリニティ、船を高速化できる? |
Nine |
トリニティ
はい。幸い、船はいくつかあるようですから。 |
Trinity |
トリニティ
それを作り変えるのでしたら、 少し時間をいただければ大丈夫です。 |
Trinity |
アハト
……その帽子は伊達じゃないのね。 |
Acht |
ナイン
なに? なにか言った? |
Nine |
アハト
いいえ。なんでもないわ。 ……私も連れて行ってくれないかしら。 |
Acht |
アハト
いつまでもここに座り込んでいるのにも、飽きていたところなの。 あの子たちがどうなったのか……知れるなら、知りたいわ。 |
Acht |
ナイン
魔力の枯渇した足手まといなんて、迷惑だわ。 |
Nine |
トリニティ
ナイン! そんな言い方をするものではありませんよ〜。 |
Trinity |
ナイン
だってそうでしょ。これから行くのは日本よ。 |
Nine |
アハト
邪魔だったら、 どこだろうと置き去りにしてくれて構わないわ。 |
Acht |
アハト
ここまで来たのに、噂の『滅びた日本』を 見ないままなのも味気ないと思っただけだから。 |
Acht |
トリニティ
危険な土地ですけれど……本当によろしいのですか? |
Trinity |
アハト
ええ。 |
Acht |
ナイン
……ふん。好きにしたらいいわ。 行くわよトリニティ。船の用意を始めて。 |
Nine |
トリニティ
はい。 |
Trinity |
トリニティ
……口と態度は悪いですけれど、あれで心配しているんです。 アハトさんを危険な目に遭わせたいわけではありませんからぁ。 |
Trinity |
アハト
あら、そう。ややこしい子なのね。 |
Acht |
トリニティ
ちょっとだけ。 |
Trinity |
ナイン
トリニティ! |
Nine |
トリニティ
はいはい、今行きますよぉ〜。 |
Trinity |
トリニティ
船の改造、すぐに終えてしまいますから。 そう不安そうにしないでください。 |
Trinity |
トリニティ
海を渡ってしまえば……すぐ、日本です。 すぐセリカさんに会えますよ。 |
Trinity |
ナイン
……そうね。ごめんなさい。イラついてて。 |
Nine |
トリニティ
行きましょう。 |
Trinity |
第9節 グラウンド=ゼロ①/ 9. Ground Zero - 1
Summary | |
---|---|
日本に上陸するシエルたち。6年前の『災
厄』と、それを排除するための反応兵器で滅 びた荒野の中を、目的の地へと歩み始める。 |
セリカ
……なんにもない。 建物も、人も、町も……生き物も……。 |
Celica |
セリカ
これが……日本……。 |
Celica |
シエル
『災厄』によって滅ぼされた土地……。 そうバングさんが以前に言っていましたが……これほどとは。 |
Ciel |
バング
拙者も驚いているでござる……。 |
Bang |
バング
ひとつの町や都市という規模ではござらん。 この辺り一帯、すっかり焼き払われたかのようではないか。 |
Bang |
バング
『災厄』とは なんと恐ろしい力を持った存在であることよ……。 |
Bang |
セリカ
……ううん。これはね……違うんだ。 |
Celica |
ルナ
違うってなにがだ? |
Luna |
セリカ
『災厄』は確かに、日本に出現して……あちこちの都市を めちゃくちゃにして。たくさんの人を……死なせたんだけど。 |
Celica |
セリカ
日本がこうなったのは、その『災厄』を倒すために すごく大きな爆弾を使ったから……なんだって。 |
Celica |
1: 爆弾で、全部……なくなったの? |
1: |
セリカ
うん、そう。 ここだけじゃなくて、日本のあちこちに落としたんだって。 |
Celica |
セリカ
だけど結局、その爆弾じゃ『災厄』は倒せなかったの。 |
Celica |
セリカ
もちろん避難はしてるはず。……本当にひとり残らず 避難できたのかは、わからないけど……。 |
Celica |
セリカ
結局、その爆弾じゃ『災厄』は倒せなかったんだ。 |
Celica |
セリカ
そして日本が滅んだあと 『災厄』は世界各地に出現するようになった……。 |
Celica |
シエル
爆撃は被害を大きくしただけで、 対策としては失敗だったのですね。 |
Ciel |
バング
なんと……。 |
Bang |
ラーベ
……ふん。爆弾、ね。 よりによって……はぁ。 |
Raabe |
ラーベ
お前たち、ちょっとそこに並べ。 |
Raabe |
セリカ
ん? うん、わかった。 |
Celica |
バング
どうしたでござる? 記念撮影でもするでござ……。 |
Bang |
バング
おっぷぷぷぷ! |
Bang |
ルナ
うぺぺぺ! なんだよ、急にスプレーなんか吹きかけてきて! |
Luna |
ラーベ
すぐすむからじっとしてろ。 虫よけのおまじないみたいなもんだ。 |
Raabe |
ラーベ
……まったく、馬鹿どもが。 |
Raabe |
シエル
ラーベさん、これは……。 では、使用された爆弾というのは……。 |
Ciel |
ラーベ
ああ。反応兵器だ……。 |
Raabe |
ラーベ
まったく……武器を持つ者が愚かな選択をするのは、 どの世界でも一緒か。 |
Raabe |
ラーベ
窯は無事だろうけど、研究所など跡形もないだろうな……。 |
Raabe |
シエル
…………。 |
Ciel |
ラーベ
……よし、これでいい。 お前たち、持ってきた水と食料以外は口にするな。いいな。 |
Raabe |
セナ
はぁい。……そうは言っても、水も食料も 新しく手に入りはしなさそうですけどね〜。 |
Sena |
ラーベ
念のためだ。 |
Raabe |
セリカ
ここ……父さんの研究所の近くなんだよね? |
Celica |
ラーベ
……ああ。極力近い場所に上陸した。 あらかじめアハトが色々と調べておいてくれたんでな。 |
Raabe |
ラーベ
正確な位置と最適なルートは割り出してある。 徒歩で一日とかからない。 |
Raabe |
ルナ
マジか、楽勝じゃん! |
Luna |
ラーベ
できればこんなところ、一日も歩かせたくはない……。 |
Raabe |
ラーベ
ぼやいていても仕方がない。歩くぞ。 シエル、位置情報を転送するから、お前が先導しろ。 |
Raabe |
ラーベ
荒廃の極みみたいな土地だが、索敵は怠るな。 こういう場所だからこそ出現するものもある。 |
Raabe |
シエル
はい。わかりました。 |
Ciel |
ラーベ
その後ろをレイ。 さらにその後ろを、ルナとバングで挟んだセリカが行く。 |
Raabe |
バング
では拙者がしんがりをつとめるのがよかろうな。 |
Bang |
ルナ
ルナたちが迷子ねーちゃんの前だな。 |
Luna |
セリカ
な、なんか私、すごく面倒みられてない? 過保護にされてない? |
Celica |
ルナ
あったりまえだろ。 すーぐひとりでフラフラどっか行っちゃうんだし。 |
Luna |
バング
しかも迷子になって帰ってこれなくなるでござるからなぁ! |
Bang |
セリカ
そんなことないよー! こんななーんにもないところで、迷子になるはずないじゃない。 |
Celica |
バング
うむ、拙者も普通ならそうだろうと思うところでござるが…… いかんせんセリカ殿でござるからなぁ。 |
Bang |
ルナ
前に野宿したとき、真逆の方向に出発しようとしてたこと、 忘れてねーからな。 |
Luna |
バング
水を汲んでキャンプに戻ろうとしたときに、 なぜか全く関係ない方向へ進んでいったこともあったのう。 |
Bang |
セナ
この前の港街では、 宿の中で迷子になってたじゃないですか〜。 |
Sena |
セリカ
そ、それは……たまたま? |
Celica |
ルナ
たまたまですむか! つべこべ言わずに大人しく介護されてろ! |
Luna |
ラーベ
ええいこらこら、無駄口叩いてる場合じゃないんだ。 できるだけ時間をかけたくない。さっさと行くぞ。 |
Raabe |
ラーベ
反応兵器……いや、使われた爆弾の影響だけじゃなく、 魔素の濃度も相当なものだ。こう淀んでいると……。 |
Raabe |
シエル
これは……以前に小さな村で見た現象と同じです。 |
Ciel |
ルナ
うげげ! じゃああのでっかくて黒い化け物が出てくるかもってことか!? |
Luna |
ルナ
冗談じゃねーぞ、 あんなのとポンポン気軽に戦ってられるか! |
Luna |
ラーベ
あの村とは空気の流れが違うから、 あのときほど魔素が滞留することはなさそうだが……。 |
Raabe |
ラーベ
このまま多量に集まってくるようだと、わからんぞ。 |
Raabe |
バング
であれば、小さいうちに散らしてしまおうぞ! |
Bang |
セリカ
うん! 私たちも頑張ろう、ミネルヴァ! |
Celica |
第9節 グラウンド=ゼロ②/ 9. Ground Zero - 2
Summary | |
---|---|
進む荒野の中。局地的に豊かな緑が広がる一
帯に行き当たった一行。不可解な状況だが、 目的の座標はその森の奥を指していた。 |
シエル
……目標を視認。やはり見間違いではありません。 |
Ciel |
シエル
森です……。 |
Ciel |
バング
森、でござるな……。 |
Bang |
1: 草木の匂いがちゃんとする…… |
1: |
ルナ
怪しいことこの上なくないか!? ついさっきまでなんにもない、 だだっ広い土ばっかの場所だったんだぞ? |
Luna |
ルナ
なのになんで突然、ここだけ森なんだよ!? |
Luna |
ラーベ
いや……さっぱりわからん。理解できん。 こんなことは通常、あり得ないぞ……。 |
Raabe |
セリカ
偶然、爆弾の被害に遭わずに残ってた……とかは? |
Celica |
ラーベ
いや、ない。ここも確実に巻き込まれているはずだ。 |
Raabe |
ラーベ
というかそもそも、今まで歩いて来た道のりよりも こっちのほうが爆心地に近いくらいだぞ。 |
Raabe |
ラーベ
それなのに……。 |
Raabe |
シエル
指定座標はこの先……森の中です。 |
Ciel |
ラーベ
……だな。 |
Raabe |
セリカ
それって、父さんの研究所のことだよね? こんな森の中にあったの? |
Celica |
バング
都市を跡形もなく吹き飛ばした爆風でも、消し飛ばずに残った 森か……不穏でござるな。なにやら秘密があるとみた。 |
Bang |
ラーベ
森の少し手前から、魔素の反応も減ってきている。 空気中の含有物質のバランスも違う。 |
Raabe |
ラーベ
気を付けて進めよ。明らかに異常な場所だ。 |
Raabe |
セリカ
父さん……。 |
Celica |
バング
いやはや、進めば進むほど、驚きでござるな。 ……鳥の声でござる。 |
Bang |
シエル
昆虫類の活動も確認できます。 明らかに、上陸地点とは環境レベルが違います。 |
Ciel |
ルナ
なんか気味悪いな……。 これ全部、全員で見てる幻覚とかじゃないだろうな……? |
Luna |
ラーベ
私もそれを疑ったんだが、どうも違うようだ。 この局地的な自然環境は、実際にここに存在してる。 |
Raabe |
シエル
観測者の認識に歪みが生じているのでしょうか? |
Ciel |
ラーベ
なんとも言えん。これが、このファントムフィールドの 観測者によるものだとしたら、 |
Raabe |
ラーベ
意識的にせよ無意識的にせよ 『こう』する意味や必要性があると思うんだが……。 |
Raabe |
シエル
なにかを隠そうとしている、のでしょうか。 |
Ciel |
ラーベ
逆に目立ってる。 |
Raabe |
シエル
確かにそうです。 |
Ciel |
ルナ
わっ、とっとっ! おい、気を付けろ! |
Luna |
セリカ
ご、ごめん〜、ルナちゃん。 |
Celica |
ルナ
ったく、前に前に詰めてくんなっての。 お前だけ急いだって、早くに着いたりしないんだからな。 |
Luna |
セリカ
うん……ごめんね。 近くに父さんがいたんだなって思ったら、気がはやっちゃって。 |
Celica |
ルナ
『父さん』ねぇ。それってなんか、いいものなのか? ルナ、親とかいないからよくわかんない。 |
Luna |
セリカ
そうなんだ……。うん、いいものだよ、私にとっては。 私がここにいるのは、父さんがいてくれたからだし。 |
Celica |
セリカ
そうなると、私が嬉しいのも、幸せなのも、楽しいのも、 父さんがいなかったら成立してなかったってことでしょ。 |
Celica |
セリカ
研究で忙しくて、あんまりたくさんお話したことはないんだけど。 でも間違いなく、私に幸せな暮らしをくれた人だから。 |
Celica |
ルナ
ふーん……。 |
Luna |
バング
だが、家にはあまりいない父親であったのでござろう。 ……寂しくはなかったのでござるか? |
Bang |
セリカ
そりゃ、ちょっとは寂しかったよ。会いたいなーって思ってたし。 でも私には、お姉ちゃんがいたからね。 |
Celica |
セリカ
父さんと離れてても幸せだったのは、 お姉ちゃんやイシャナに守ってもらってたからだと思う。 |
Celica |
セリカ
恵まれてるんだ、私。 色んな人に感謝しなきゃね。 |
Celica |
1: お父さんってどんな人なの? |
1: |
セリカ
うーん、いつも難しい話をしてる人ってイメージだなぁ。 |
Celica |
セリカ
私にはよくわからない、なにかの理論とか、技術とか。 そういう話をいつもしてた。 |
Celica |
セリカ
頭が良くて、一生懸命な人だよ。 世界の外側についての研究をしてて、毎日頑張ってるんだって。 |
Celica |
セリカ
家に帰れないくらい頑張るなんて、簡単なことじゃないよね。 それだけなにかに熱中できるのって、すごいと思う。 |
Celica |
セリカ
詳しいことは知らないの。 お仕事の話は、あんまり外でしちゃダメらしくて。 |
Celica |
セリカ
確か……世界の外側についての研究、だったかな。 そんな風に聞いたことがあるよ。 |
Celica |
セリカ
難しい理論とか技術とかの話をよくしてくれたけど…… 私にはよくわかんなかったんだ。 |
Celica |
セリカ
ああでも、お姉ちゃんはわかってたみたい。 わかったうえで、父さんの研究を好きじゃないって言ってた。 |
Celica |
ラーベ
世界の外側の研究? |
Raabe |
シエル
それは、もしかすると境界のことでしょうか……。 |
Ciel |
セリカ
境界? それが、父さんの研究してたものなの? |
Celica |
ラーベ
ああ、まあ……おそらくな。 |
Raabe |
セリカ
わあ、そうなんだぁ! ……ん? ちょっと待って。 |
Celica |
セリカ
ルナちゃんやセナちゃん、バングさんに……アハトさんは、 別の世界から来たんでしょ。 |
Celica |
セリカ
ってことは、もしかして『世界の外側』から来たってこと? じゃあ、父さんなら皆が元いた世界について、知ってるかも! |
Celica |
ラーベ
どうだろうな。研究結果だけでも残っていれば、 探ることもできるかもしれないな。 |
Raabe |
ルナ
おお! すっげーじゃん、セリカの父さんってやつ! |
Luna |
セリカ
そうなの、すごいんだ! |
Celica |
ラーベ
……これで、 ますますこの先に『窯』がある可能性が高まった。 |
Raabe |
ラーベ
境界の研究をするのに『窯』は必須だろう。 |
Raabe |
ラーベ
(我々は順調に窯へ歩みを進めている。 観測者は……どうしたいんだ……?) |
Raabe |
バング
とはいえ、中々それらしい建物が見えてこんな。 |
Bang |
セリカ
うん……森の中で見通しが悪いせいなのかもしれないけど。 通路とか道順とかもないし。 |
Celica |
シエル
指定座標はかなり近いです。 森とはいえ、視認できてもおかしくない距離ですが……。 |
Ciel |
バング
どれ、ちょっと様子を見てこよう。 人工物ならば多少は木々を切り開いて作るであろう。 |
Bang |
バング
背の高い木の上から、捜索してみるでござるよ。 |
Bang |
セリカ
よろしくお願いします、バングさん! |
Celica |
バング
あいわかった! お主らはこのまま、進んでくれ。 すぐに合流するでござるよ! |
Bang |
セリカ
さすが、身軽だねぇ〜。 |
Celica |
ルナ
猿みたいだな。 |
Luna |
セナ
も〜、ルナったら。失礼だよぉ〜。 ……否定はしないけどぉ〜。 |
Sena |
ラーベ
ほら、我々も進むぞ。地上からも捜索しておこう。 |
Raabe |
シエル
はい。 |
Ciel |
シエル
っ、はっ!? |
Ciel |
セリカ
わっ、びっくりした! 魔物!? |
Celica |
ルナ
ちぇ、やっぱりのんびり平和には 通らせてくれないのか。 |
Luna |
ラーベ
……魔物は本来、魔素が生態系に影響を与えた結果、 生まれた存在のはず。 |
Raabe |
ラーベ
だがこの森に魔素はほとんどない。ということは……。 |
Raabe |
ラーベ
環境によって生まれた魔物ではなく、 異物を排除するための防衛機構が働いているな。 |
Raabe |
シエル
では『窯』は近いということですね。 |
Ciel |
ラーベ
これまでのセオリーが通用してくれるなら、だがな。 |
Raabe |
ミネルヴァ
…………。 |
Minerva |
セリカ
やろう、ミネルヴァ。 ここを抜けて、父さんの研究所に行かなくちゃ! |
Celica |
ミネルヴァ
……! |
Minerva |
シエル
ミネルヴァさん、交戦開始です。 |
Ciel |
ルナ
ルナたちもやるぞ! どけどけ〜〜〜! |
Luna |
第9節 グラウンド=ゼロ③/ 9. Ground Zero - 3
Summary | |
---|---|
遂に辿り着いた、『災厄』の出現地点である
研究所。傷一つなく、綺麗すぎるその様子に 警戒しながら、一行は調査を開始する。 |
バング
むっ! 魔物との戦闘は終わったでござるか。 今一歩間に合わなんだ、加勢できずに申し訳ない。 |
Bang |
ルナ
はん! 馬鹿にすんな、こんくらいルナ様がいれば楽勝よ! |
Luna |
ルナ
それより、偵察どうだったんだよ。 研究所ってのはあったのか? |
Luna |
バング
いや、それらしい建物はなかったでござる。 ただ、妙なものがあったでござるよ。 |
Bang |
セリカ
妙なものって? |
Celica |
バング
この先に洞窟があるのでござるが、どうにもその洞窟、 人工的に作られたもののような気がしてならぬのでござる。 |
Bang |
シエル
洞窟……ですか? 森の周辺に、山などは残っていません。 地中へ続く洞窟なのでしょうか。 |
Ciel |
ラーベ
しかも人工物っぽいと。……それは気になるな。 |
Raabe |
ラーベ
案内してくれ、見てみようじゃないか。 |
Raabe |
バング
承知した。こちらでござる。 |
Bang |
ルナ
うわ、ほんとだ。洞窟あった。 ちょっとへこんでるところにできてんのか……。 |
Luna |
セリカ
人工物っぽいってバングさんは言ってたけど……。 私には見分けつかないなぁ。普通の自然のやつじゃないの? |
Celica |
バング
もともとは、自然窟だったかもしれないでござるな。 ただ内部が……明かりで照らすゆえ、ご覧あれ。 |
Bang |
シエル
……入ってすぐはごつごつとした岩肌という感じですが、 奥の方は天井がアーチ状に整えられていますね。 |
Ciel |
ラーベ
ああ。入り口周辺も物資の運搬のためか 多少地形をいじって広げた跡がうかがえるな。 |
Raabe |
ラーベ
間違いなく、人の手が入っている。 |
Raabe |
ラーベ
シエル、座標を確認してくれ。 こちらでは……一致している。 |
Raabe |
シエル
……はい。私も一致しています。 ここが指定座標です。 |
Ciel |
セリカ
じゃあここが……父さんの研究所……。 グラウンド=ゼロ? |
Celica |
ラーベ
とてもその名をつけるような場所には見えないがな。 |
Raabe |
ラーベ
そもそもこの研究所、 例の『災厄』に破壊し尽くされたんじゃなかったのか? |
Raabe |
セリカ
そのはず、なんだけど。そんな感じしないよね。 どういうことなんだろう? |
Celica |
シエル
この奥に研究所があれば、 そこに『窯』もあるかもしれない……。 |
Ciel |
シエル
『窯』にアクセスできれば…… レイさんも、元通りになる。 |
Ciel |
ラーベ
念のため聞くが、シエル、窯の反応はどうだ? |
Raabe |
シエル
あ……失礼しました、確認します。 |
Ciel |
シエル
……いえ、まだはっきりとはわかりません。 微かに力を感じるような……気もするのですが……。 |
Ciel |
シエル
それは、私の期待が引き起こした 錯覚である可能性もあります。 |
Ciel |
ラーベ
ほうほう。期待か。 |
Raabe |
シエル
はい。 ……なにかおかしいですか? |
Ciel |
ラーベ
いや、なんでもない。 |
Raabe |
ラーベ
おいお前たち、ちょっと入り口を開けろ。 内部をスキャンして、構造を把握してから入ろう。 |
Raabe |
ラーベ
洞窟探検する装備を整えているわけじゃないからな。 危険な地形はなるべく避けて進みたい。 |
Raabe |
ラーベ
……ん。なんだ、一本道に整備されているみたいだな。 |
Raabe |
ラーベ
緩やかに左にカーブしているが、 道なりに進めばすぐ最奥に突き当たる。 |
Raabe |
ラーベ
その奥が部屋のようになっているから、 そこが入り口だろうな。 |
Raabe |
セリカ
研究所の入り口……ついに、入れるんだ。 どうしよう、なんだか緊張してきちゃった。 |
Celica |
ルナ
まだ洞窟にも入ってないってのに、気が早いんだよ。 とにかく行ってみよう! 百聞はナントカって言うだろ! |
Luna |
バング
拙者は、お主らに着いて行くと決めた身。 どうするでござる? |
Bang |
1: セリカのお父さんの消息がわかるかも |
1: |
If Choice 1: | |
---|---|
セリカ
……うん。そうだよね、そのためにここまで…… 日本まで来たんだもん。行こう! |
Celica |
If Choice 2: | |
---|---|
セリカ
……うん。そうだよね。そのためにここまで…… 日本まで、一緒にきてくれたんだもん。行こう! |
Celica |
セリカ
わ……。 |
Celica |
ラーベ
足元が昇降装置になっている。 ……動くな、これ。 |
Raabe |
バング
『災厄』に破壊された施設……では、考えられないでござるな。 |
Bang |
ラーベ
異様だな。だが、その異様さを解明するためにも、 入らないわけにはいかない。 |
Raabe |
ラーベ
動かすぞ、全員気を付けろよ。 |
Raabe |
セリカ
はい! |
Celica |
ルナ
う……っわ〜〜〜、すっげぇ……なんだここ? |
Luna |
バング
紛れもなく、研究所という風情でござるな……。 なにやら謎めいた装置があちこちにあるでござるよ。 |
Bang |
バング
あの森の地下深くに、こんなものがあったとは……。 |
Bang |
セリカ
嘘みたい……信じられない。 なんだか別の世界に来ちゃったみたい。 |
Celica |
シエル
……ラーベさん。 この辺りには、破壊された痕跡はありません。 |
Ciel |
ラーベ
ああ。綺麗なもんだ。むしろ建設だけされたものの、 まだ使われてない研究所って感じじゃないか。 |
Raabe |
ラーベ
どうなってる? ここは……。 |
Raabe |
ルナ
なあなあ、こっち、奥に行けるみたいだぞ。 |
Luna |
セリカ
行ってみよう。この部屋には資料みたいなものは置いてないし、 研究室っていうよりエントランスホールって感じだもん。 |
Celica |
セリカ
もし父さんについてわかることがあるなら…… もっと奥だと思う。 |
Celica |
バング
異論ないでござるよ。 |
Bang |
ラーベ
気が済むまで歩き回るといい。 その最中に、こちらの目当ても探しておく。 |
Raabe |
ラーベ
シエル、常に反応に気を付けておけよ。 『窯』にも……起こり得る異常事態にもな。 |
Raabe |
シエル
……はい。 |
Ciel |
セリカ
……静かだね。誰もいない。 |
Celica |
セリカ
地上はあんな状態なんだし、当たり前なんだけど。 |
Celica |
ルナ
それなんだけどさぁ。やっぱ、おかしいよな。 ここ、さすがに綺麗すぎじゃないか? |
Luna |
シエル
はい……そう思います。 『災厄』の痕跡は、どこにもありません。 |
Ciel |
ルナ
その場にあるものなんでも、手当たり次第に壊しちゃうんだろ? お前たちと会った廃墟が、ああなってたみたいに。 |
Luna |
セリカ
地下だったから、免れたとか。 |
Celica |
バング
その可能性はあるだろうが、いかんせんここには、 地上で惨事が起こっている最中らしき混乱の後もござらん。 |
Bang |
バング
というより、なんと申すか……。 |
Bang |
1: 誰も使ってないみたい |
1: |
バング
そう! そうでござる! |
Bang |
バング
これだけ大掛かりな仕掛けの元で隠された研究所。 それだけ大事な研究をするつもりだったのであろう。 |
Bang |
バング
だがこれでは、ただ箱があるだけでござる。 人のいた痕跡がない。 |
Bang |
ラーベ
ここはダミーで、本当の研究所は他にあるのか……? いやしかし、ダミーにしては真剣に隠し過ぎだろう。 |
Raabe |
ラーベ
それにグラウンド=ゼロとして認知されている座標が ここだ。 |
Raabe |
ラーベ
『災厄』の出現位置を偽装するのなら、 むしろここは徹底的に破壊しておくべきだが……。 |
Raabe |
シエル
っ!? なにか、今……。 |
Ciel |
ルナ
な、なんだ、チカチカってした! |
Luna |
ラーベ
視界への干渉? いや空間への……。 なんでもいい、警戒しろ。 |
Raabe |
セリカ
見て、あそこ! |
Celica |
バング
ぬう、面妖な! なにやつ!? |
Bang |
セリカ
ここにいた人……じゃ、ないよね? |
Celica |
ルナ
ど、どどど、どっちかってーと、オバケじゃね? |
Luna |
ラーベ
オバケをどのようなものと定義するかにもよるが、 思念体や残留物の類ではないな。ましてや生命体でもない。 |
Raabe |
ラーベ
いうなれば幻覚に近いが、実体を伴うぞ。 |
Raabe |
シエル
敵対反応を感知。対象、攻撃してきます! 下がって! |
Ciel |
ルナ
ひえぇぇ、な、なんなんだよぉ! こっちくんなぁ! |
Luna |
第10節 世界を見つめる瞳①/ 10. Eyes That Gaze at the World - 1
Summary | |
---|---|
調査の結果、周辺の時間が巻き戻ったこと、
『災厄』が人の手で出現したことを知る。さ らに詳細を語ろうとした刹那、事象が歪む。 |
ルナ
ど、ドア、ドア早く閉めろ! |
Luna |
シエル
は、はい! |
Ciel |
シエル
……追跡者の気配はありません。遭遇した人影は消滅、 あるいはこちらを見失ったものと思われます。 |
Ciel |
シエル
扉を閉鎖したところで、あの不定形な敵に対して どれほど有効かは定かでありませんが……。 |
Ciel |
シエル
ひとまず、交戦状態を脱しました。 |
Ciel |
セリカ
ふはー……びっくりしたぁ。 次から次へと出てくるんだもん。 |
Celica |
セリカ
なんだったんだろう、今の……。 |
Celica |
バング
さっぱりわからぬでござるが、気味の悪い相手であった。 もやもやとしていて、なんというか、手応えのない……。 |
Bang |
ルナ
なのにこっちは攻撃されると痛いとか、ずるいんだよー。 |
Luna |
ルナ
ん? なんだここ。でっかい機械がいっぱいある。 |
Luna |
ラーベ
ふーむ……記録装置と、計器の類だな。 なにかの実験を行おうとしていたのか。 |
Raabe |
セリカ
父さんの仕事場だったのかも! なにか残ってないかな。ねえ、記録って見られたりする? |
Celica |
ラーベ
アクセスを試してみても構わないが…… なにか『残って』いるとは思えないなぁ。どれどれ……。 |
Raabe |
セリカ
私、ちょっとその辺探してみる。 資料とか、名簿とか……なんでもいいから。 |
Celica |
セリカ
父さんがここにいたっていう手がかりになるようなもの…… ないかな。 |
Celica |
1: 僕(私)、こっちを探してみる |
1: |
If Choice 1: | |
---|---|
セリカ
ありがとう、レイ! ……嬉しい。 |
Celica |
If Choice 2: | |
---|---|
セリカ
うん。見つからなくてもいいの。 確かめたってことが、私には大事だから。 |
Celica |
シエル
私もお手伝いします。 こちらには、研究資料らしきファイルもあるようですから。 |
Ciel |
ルナ
しょうがないなぁ。じゃー、ルナ様はこっちな。 つっても、このへんは空っぽか……。 |
Luna |
ルナ
生活感ないなぁ、この部屋! |
Luna |
バング
ぶつくさ言いながらも手は動かしているではないか。 どれ、拙者はこちらを。 |
Bang |
バング
ふうむ。これはなにに使うものでござろうか……。 |
Bang |
セリカ
みんな……ありがとう。 |
Celica |
セリカ
……本当はね。私には無理だと思ってたんだ。 |
Celica |
セリカ
ひとりで日本まで辿り着けるわけがないし。 途中できっと行き詰まるだろうなって。 |
Celica |
セリカ
たぶんお姉ちゃんもすぐに追いかけてきて、 途中で見つかっちゃって、イシャナに連れ戻されて。 |
Celica |
セリカ
すっごく怒られて…… 私のこの冒険は終わるんだろうなって思ってたの。 |
Celica |
セリカ
もしそうならなくても、もう無理だって思ったら、 そこでやめようって思ってた。 |
Celica |
セリカ
でもここまで来られちゃった。無理だなって思うこともなくて、 お姉ちゃんにも追いつかれなくて。 |
Celica |
セリカ
みんなが力を貸してくれたこと、すごく嬉しい。 会えてよかった。本当にありがとう。 |
Celica |
ルナ
よせよ、そういうの。なんかしんみりするだろ。 |
Luna |
バング
ふっふっふ、水臭いでござるよ、セリカ殿。 |
Bang |
バング
旅は道連れ世は情け。一度手を貸したからには、 最後までまっとうするのがシシガミ=バング流でござる。 |
Bang |
セリカ
ふふっ、そっか。 すごく優しい人たちに会えて、ラッキーだったなぁ。 |
Celica |
シエル
…………。 |
Ciel |
シエル
……私は……役に立っていたでしょうか。 |
Ciel |
セリカ
もちろん。シエルちゃんがいてくれるおかげでできたこと、 たくさんあるじゃない。 |
Celica |
シエル
…………。 |
Ciel |
セリカ
レイだって、そう思ってると思うよ。 あなたのおかげでできたこと、いっぱいあるはず。 |
Celica |
セリカ
自信持って。 あなたはあなたしかいないんだから。ね。 |
Celica |
シエル
……私は……できないことや、わからないことばかりです。 |
Ciel |
セリカ
みんなそうだよ。だからお互いに助け合うの。 |
Celica |
セリカ
難しいことでも、できる人が少しずつ、できるところを やっていったら、最終的になんでもできるでしょ。 |
Celica |
シエル
なんでも……。 |
Ciel |
ラーベ
……おい、セリカ。 確認したいんだが……最初の『災厄』はいつ出現した? |
Raabe |
セリカ
えっと、6年前だよ。 |
Celica |
ラーベ
……それは間違いないな? |
Raabe |
セリカ
う……うん、細かい日付とかは、何とも言えないけど、 6年前ってことは間違いないと思うよ。 |
Celica |
ラーベ
馬鹿な……ならこれは何なんだ……。 |
Raabe |
バング
む? 6年前だと、不都合があるでござるか? |
Bang |
ラーベ
大ありだ。ここに残されている記録は、1年分にも満たない。 簡易的なテストや、シミュレーションの記録ばかりだ。 |
Raabe |
セリカ
つまり……どういうこと? |
Celica |
ラーベ
記録上、 この研究所は開設されてまだ数ヶ月しかたっていない。 |
Raabe |
ラーベ
『災厄』から6年後どころか、 それに至る前の時点ですべてが止まっている。 |
Raabe |
1: 災厄が起きる前ってこと? |
1: |
ラーベ
……記録上……という意味で、どれくらい前なのかはわからん。 だが重要なのは、通常、そんなことはあり得ないってことだ。 |
Raabe |
ラーベ
いい質問だレイ。 |
Raabe |
ラーベ
そして答えははっきりしている。 不明だ。わからん。ただ、こんなことはあり得ない。 |
Raabe |
ラーベ
特定の条件下であれば、時間の流れに差が生じることはある。 だがそれはあくまで速度が遅いとか速いとかの問題だ。 |
Raabe |
ラーベ
発生した『事象』は発生した『地点』から順に処理されていく。 ああ、ええとつまり……。 |
Raabe |
ラーベ
たとえ地下のほうが時間の流れが遅くても、 地下で爆発が起きた際、 |
Raabe |
ラーベ
時間の流れの速い地上のほうが先に爆発の被害に遭う、 ということはないんだ。 |
Raabe |
ラーベ
地下で『災厄』が発生したのなら、 そしてその被害が地上に及んでいるのなら、 |
Raabe |
ラーベ
地下は当然『災厄』の被害を受けた後になる。 被害の進行の速度が違うだけだ。 |
Raabe |
ルナ
なんか変だってことはわかるけど、全然わかんね。 もっと簡単に言ってくれよ! |
Luna |
ルナ
ここが『災厄』が起きる前の状態だったら、 なにがおかしいんだ!? |
Luna |
ラーベ
外の惨状をみれば、『災厄』が起きたことは 間違いないだろう。 |
Raabe |
ラーベ
なのに、ここが災厄以前の状態であるということは、 この『地下』の時間だけが巻き戻っているということだ。 |
Raabe |
ラーベ
時間の流れを遅くすることは理論的に可能だが、 起きた『事象』を巻き戻す事は難しい……。 |
Raabe |
ラーベ
というか普通は不可能だ。 |
Raabe |
シエル
普通は……ですか? |
Ciel |
ラーベ
その普通じゃない状況を、 今、正に目の当たりにしているからな。 |
Raabe |
セリカ
じゃあ……え? ここは……どうなっちゃってるの? あり得ないのに、ずっと昔の状態ってこと? |
Celica |
ラーベ
にわかには信じ難いが、おそらくな。 お前の父親が研究員として配属される前かもしれない。 |
Raabe |
ラーベ
……それと、ここの記録を見てわかったことがもうひとつ。 |
Raabe |
ラーベ
セリカ、 お前の父親は『世界の外側』について研究していたんだよな? |
Raabe |
セリカ
うん……そう聞いたよ。 |
Celica |
ラーベ
なら……故意か事故かはわからないけど、その研究とやらが、 『災厄』を発生……いや、生み出したはずだ。 |
Raabe |
バング
まさか、『災厄』は人為的なものだと言うのでござるか!? |
Bang |
ラーベ
そういう事になるね。 |
Raabe |
ラーベ
とにかく、『災厄』はどこからともなく現れて ここを襲撃したんじゃない。 |
Raabe |
ラーベ
ここから、『この世界』に具現化した。 ゆえにここが最初の被害箇所。 |
Raabe |
ラーベ
グラウンド=ゼロだ。 |
Raabe |
セリカ
待って! 待って、待って……まって……。 |
Celica |
セリカ
……それじゃあ……『災厄』が現れたのは、 父さんのせい……? |
Celica |
ラーベ
セリカの父親が……なのかはわからないよ。 どこまで関わっていたのかは不明だし。 |
Raabe |
ラーベ
存在そのものを創ったわけではないだろうからね。 |
Raabe |
ラーベ
あくまで、記録から読み取った私の推論だ。 |
Raabe |
ラーベ
でも……推論の確度はかなり高いと思ってくれていい。 |
Raabe |
セリカ
…………。 |
Celica |
シエル
……セリカさん、精神波長が乱れています。 大丈夫ですか? |
Ciel |
1: セリカ、しっかり |
1: |
セリカ
うん。……うん、大丈夫。 どんな結果でも受け止めるって決めてきたんだし。 |
Celica |
セリカ
大丈夫……ありがとう。立ってられるよ。 どんな結果でも受け止めるって決めてきたんだし。 |
Celica |
セリカ
ただ……ちょっと、すごく、びっくりしちゃった……。 |
Celica |
バング
衝撃的な話でござる。無理もないこと。 |
Bang |
バング
だが……それが事実であったとして、セリカ殿やセリカ殿の お父上にいかな咎があると決められたわけではござらん。 |
Bang |
バング
気落ちするには、早いでござるよ。 |
Bang |
ルナ
そうだそうだ。 しょうがないことだったのかもしんないしさ……。 |
Luna |
セナ
無関係の研究をしていた可能性だって、ありますし〜。 |
Sena |
セナ
セリカさんが責任を感じることではないと…… 思いますよぉ〜。 |
Sena |
セリカ
うん。……大丈夫。心配しないで。 |
Celica |
セリカ
でも、だったらなおさらちゃんと知りたい。 ラーベちゃん。『災厄』って、なんなの? |
Celica |
セリカ
父さんたちは、なにを生み出して…… 世界をこんなにしてしまったの? |
Celica |
バング
…………。 |
Bang |
ルナ
…………。 |
Luna |
ラーベ
……知らないほうがいいと思うぞ。 |
Raabe |
セリカ
教えて。知ってるんでしょ。 |
Celica |
ラーベ
……知ってはいる。 というか、予想が的中してしまったというか……。 |
Raabe |
セリカ
『災厄』なんて名前で呼んでていいものなの? 私たち、ううん、この世界はなにに壊されようとしてるの? |
Celica |
ラーベ
…………。 |
Raabe |
セリカ
教えて! お願い! |
Celica |
ラーベ
……それは……。 |
Raabe |
ラーベ
……『黒き―― |
Raabe |
第10節 世界を見つめる瞳②/ 10. Eyes That Gaze at the World - 2
Summary | |
---|---|
突如、全ての記憶が蘇る。きっかけとなる事
象干渉を行った観測者は、人ではなくミネル ヴァだった。交戦状態になり無力化を図る。 |
|
暴走するミネルヴァには、セリカの声すらも
届かない。戦闘により崩れ始めた部屋から、 ルナが切り開いた逃げ道を通り脱出する。 |
私を見るその瞳を覚えている。 |
|
私を呼ぶその声を覚えている。 |
|
私に触れるその手を覚えている。 |
|
私を求めるその魂を覚えている。 |
|
会いたい。 |
|
会いたい。会いたい。会いたい。 |
|
ただ、あなたに―― |
|
セリカ
――ただちょっと、すごく、びっくりしちゃったけど。 |
Celica |
バング
衝撃的な話でござる。無理もないこと。 |
Bang |
バング
だが……それが事実であったとして、セリカ殿やセリカ殿の お父上にいかな咎があると決められたわけではござらん。 |
Bang |
バング
気落ちするには、早いでござるよ。 |
Bang |
ルナ
そうだそうだ。 しょうがないことだったのかもしんないしさ……。 |
Luna |
セナ
無関係の研究をしていた可能性だって、ありますし〜。 |
Sena |
セナ
セリカさんが責任を感じることではないと…… 思いますよぉ〜。 |
Sena |
セリカ
うん。……大丈夫。心配しないで。 |
Celica |
シエル
っ!? |
Ciel |
シエル
今のは……。 |
Ciel |
1: 事象干渉…… |
1: |
シエル
え……。 レイさん、今、なんと言われましたか……? |
Ciel |
1: 今までのこと、全部思い出せる!! |
1: |
シエル
あ……ほ、本当、ですか? 本当に……私のことは、わかりますか? |
Ciel |
ラーベ
シエル、後にしろ! それより確認だ! |
Raabe |
シエル
はっ、あ、はい! |
Ciel |
シエル
…………。 |
Ciel |
シエル
……『窯』の出現を確認……いえ、感知しました! |
Ciel |
シエル
また、身体機能の向上……いえ、正常化を確認。 索敵可能範囲も、感覚機能の反応速度及び反応感度も正常です。 |
Ciel |
ラーベ
今のでシエルに対して、 レイによる観測が優先されたか。 |
Raabe |
ラーベ
なんだ、なにが『トリガー』だった? クソッ! |
Raabe |
ラーベ
状況は不明だが、 これは観測者が故意に行った事象干渉だ。 |
Raabe |
ラーベ
であれば確実に、観測者本人には干渉が及んでいないはず。 今の事象で、私たち以外に干渉を受けていないのは……。 |
Raabe |
ラーベ
……おや? |
Raabe |
セリカ
え、なに、なに? どうしたの、みんな鬼気迫った顔して……。 |
Celica |
ルナ
なんの相談だ? |
Luna |
バング
もしやなにか、新事実が判明したでござるか? |
Bang |
シエル
……セリカさんも、ルナさんもバングさんも…… 事象干渉を受けたように見えます。 |
Ciel |
シエル
ですがここにはこれ以上……。 |
Ciel |
ラーベ
いや。 |
Raabe |
ラーベ
いやいやいやいや。 いるにはいるが……嘘だろう? |
Raabe |
シエル
ミネルヴァさん、が……? |
Ciel |
ミネルヴァ
……!!!!! |
Minerva |
シエル
くぅっ……! レイさん、怪我はありませんか? |
Ciel |
1: 大丈夫、ありがとう! |
1: |
セリカ
ミネルヴァ、なんで!? やめて、攻撃しないで! |
Celica |
ミネルヴァ
……! ……! ……! ……!! |
Minerva |
ラーベ
まさか……そうか。セリカのドライブは、 セリカとミネルヴァの両者がいて初めて成り立つ。 |
Raabe |
ラーベ
そういう意味では、ミネルヴァもまたセリカと同様のドライブを 有していると考えられる。 |
Raabe |
ラーベ
観測者になることも……だが、あり得るのか? ミネルヴァが私と同じ自立思考型だとしても……。 |
Raabe |
ラーベ
世界を認識し、ファントムフィールドを構築するほどの 魂を……『願望』を持つ機械なんて……。 |
Raabe |
ラーベ
誰だ……コイツを |
Raabe |
ラーベ
正に |
Raabe |
シエル
っ、く、重い……。 でも……問題ありません。なんとか処理可能です。 |
Ciel |
ルナ
お、おい、おい! あいつどうしちゃったんだ!? |
Luna |
ラーベ
なるほど……これまではレイも、 このファントムフィールドの住人として観測されていたのか。 |
Raabe |
ラーベ
だがたった今、ミネルヴァの観測から外れたことで、 明確に異物として認識されるようになった。 |
Raabe |
ラーベ
それどころか観測の力を持つせいか、 特筆して敵視されているんだろう。 |
Raabe |
ラーベ
……理屈は正しいな。レイがいなければ、 この世界においてミネルヴァの観測を塗り替える者はいなくなる。 |
Raabe |
ルナ
おいおい! 呑気な解説してる場合か! どうすんだよ、反撃するのか!? |
Luna |
ミネルヴァ
!!! |
Minerva |
セリカ
きゃっ! |
Celica |
セリカ
ミネルヴァ……! 駄目だよ、ねえ、止まって! |
Celica |
バング
セリカ殿、手を離すでござる! 今のミネルヴァ殿は暴走状態。 巻き込まれるでござるよ! |
Bang |
セリカ
だけど……! |
Celica |
ミネルヴァ
!!! |
Minerva |
バング
どぅわっ! くっ、容易に近付けん! |
Bang |
1: シエル、こっちで引きつけよう! |
1: |
シエル
了解。戦闘態勢に移行。 対象の……無力化を開始します。 |
Ciel |
バング
囮になると申すか。 承知、こちらは任されよ! |
Bang |
ルナ
逃げ道、造っとく! こんな狭い部屋で暴れられたら、 部屋ごとルナたちぺしゃんこだ! |
Luna |
シエル
レイさんは、側にいてください。 お守りします! |
Ciel |
バング
御免! |
Bang |
セリカ
わ、わっ、バングさん! お、下ろして、ミネルヴァが……! |
Celica |
バング
冷静になるでござる、セリカ殿。 |
Bang |
バング
今のミネルヴァ殿は、訴えかけて聞き入れる状態とは思えぬ! ここは一旦退かねば、全員瓦礫に埋まるでござるよ! |
Bang |
セリカ
っ……。 ミネルヴァ……。 |
Celica |
ルナ
うわ、天井ヒビ入ってる! 早く、部屋から出ろ! こっち、こっち! |
Luna |
ラーベ
無理矢理壁に穴を開けたわけか。 シエル、レイ! 退避! |
Raabe |
シエル
はい! 先に行ってください、レイさん。 追従します。 |
Ciel |
第11節 錬成完了①/ 11. Training Complete - 1
Summary | |
---|---|
再び現れたセミアが衝撃の言葉を口にする。
この世界は『バベル』が必要としたために 作られ、用済みになれば解体されるのだと。 |
ルナ
はぁ、はぁ、ひぃ、マジ、シャレになってないぞ! 目茶苦茶するじゃんか、あいつ! |
Luna |
ルナ
すげえスピードで追いかけてくるし、 その間も壁やら天井やらボッコボコにしてくるし……。 |
Luna |
ルナ
今来た道、絶対潰れてるぞ。 後ろのほうでガラガラいってたもん! |
Luna |
セナ
いやぁ……今までは助かってたけど、 襲われる側に回るとだいぶ怖いよねぇ〜。 |
Sena |
セナ
すごい破壊力……。 |
Sena |
シエル
皆さん、ご無事ですね……。 よかった……。 |
Ciel |
シエル
あ……ここは……。 |
Ciel |
ラーベ
研究所の一番奥まで来てしまったようだな。 |
Raabe |
セリカ
…………。 |
Celica |
セリカ
バングさん、ごめんなさい。わがまま言って。 もう大丈夫、下ろして。 |
Celica |
バング
……うむ。 |
Bang |
セリカ
……どうしよう。聞きたいことたくさん。 なのに頭真っ白。 |
Celica |
ルナ
とりあえず、状況を解説してくれよ。なんかわかってんだろ。 なんだってあいつ、急に凶暴化して襲いかかってきたんだよ。 |
Luna |
バング
これまでミネルヴァ殿は、常にセリカ殿に着き従い、 我々と共に戦ってくれていたでござる。 |
Bang |
バング
心変わりということは考えづらい。 錯乱しているように見受けられたが……。 |
Bang |
ラーベ
お前たちにわかるように、1から10まで説明するのは難しい。 理解しておいてほしい部分だけかいつまんで話すぞ。 |
Raabe |
ラーベ
ミネルヴァは今、バングが言ったように錯乱状態、 暴走状態にある。原因は、こうだ。 |
Raabe |
ラーベ
まず……この世界には、世界を世界として確立させ、 存在させるためのいわば『眼』にあたる者がいる。 |
Raabe |
ラーベ
どんな世界なのか、どういう事件が起こるのか。 そういう事象を、起こったこととして確定させることができる。 |
Raabe |
ラーベ
我々はそれを『観測者』と呼んでいる。 |
Raabe |
ルナ
な、ん、え? |
Luna |
バング
静かに、ルナ。最後まで聞こうではないか。 |
Bang |
ラーベ
話の流れでわかるだろうが。その観測者……今ある世界を、 私たちが見てきた形に確定させていたのが……。 |
Raabe |
セリカ
ミネルヴァ……なの? |
Celica |
ラーベ
そうだ。 ……これはかなりのイレギュラーだ。想定外だった。 |
Raabe |
ラーベ
だがまあ、その辺りの理屈は今はいい。 そのミネルヴァが行っていた観測に、割り込んだ奴がいる。 |
Raabe |
ラーベ
それがレイだ。 |
Raabe |
ラーベ
正確には、ちょっとしたきっかけで記憶を取り戻した レイ、だな。 |
Raabe |
セリカ
記憶、戻ったの!? よかったぁ! |
Celica |
セリカ
でも、割り込むって……? |
Celica |
ラーベ
こいつにはそういう力がある。それだけわかっていればいい。 |
Raabe |
ラーベ
レイが本来の力を取り戻したせいで、 ミネルヴァの観測に歪みが生じたんだろう。 |
Raabe |
ラーベ
そのせいで……暴走した。たぶんな。 |
Raabe |
セリカ
ミネルヴァを、元に戻すことはできるの? |
Celica |
ラーベ
わからん。これが人間なら、自分を取り戻させるとか、 説得するとか、精神論で解決できることもあるだろうが……。 |
Raabe |
ラーベ
今回はそうじゃない。 あの暴走を止めるには、ミネルヴァを倒すしかない。 |
Raabe |
バング
セリカ殿によってミネルヴァ殿を制御することは できぬのでござるか? |
Bang |
ラーベ
現状、難しいだろう。 今さっき、その難しさと直面したはずだ。 |
Raabe |
ラーベ
どうだ、セリカ。 ミネルヴァを説得……制御できると思うか? |
Raabe |
セリカ
……したい、けど。 私の声、全然ミネルヴァに届いてる感じがしなかった。 |
Celica |
セリカ
任せてって、言えない……。 |
Celica |
ラーベ
……理屈の話をするぞ。 |
Raabe |
ラーベ
ミネルヴァが暴走状態にあるということは、 世界の観測が正常に行えなくなっているということだ。 |
Raabe |
ラーベ
このままにすれば、観測されなくなった世界は崩壊する。 |
Raabe |
ルナ
崩壊!? そ、そうなったら、ルナたちはどうなるんだ? 元の世界には……? |
Luna |
ラーベ
具体的な例を見たことがないが、戻れる保証はない。 |
Raabe |
セナ
そんなぁ……。 |
Sena |
ラーベ
だからその前に、ミネルヴァを観測者の役割から解放し、 別の観測者によって世界の形を固定させる必要がある。 |
Raabe |
ラーベ
その観測は、一時的にレイが行い、 後々にこちらで管理しているシステムが行おう。 |
Raabe |
ラーベ
本来なら、 観測者自身が自らを『観測者』であると認識することで、 |
Raabe |
ラーベ
つまり世界との繋がりを自覚することで、 接合点である『窯』が出現し、その破壊が可能になる。 |
Raabe |
シエル
ですが……現在、『窯』の所在ははっきりと感じられるのですが、 まだ完全に出現していない状態です。 |
Ciel |
シエル
窯は……そこにあるはずなのに。 視認できないのです。 |
Ciel |
ルナ
確かになんもない。 本当なら、あそこに出てくるはずなんだな? |
Luna |
シエル
はい……。 |
Ciel |
ラーベ
ミネルヴァは人間の精神とは違う。 自認が及ぼす影響が低すぎるんだろう。 |
Raabe |
ラーベ
だからレイがまず、 上位観測者として権限を手に入れなくてはならない。 |
Raabe |
ラーベ
そのために。 |
Raabe |
バング
無力化が必要であると。 |
Bang |
ラーベ
そうだ。だが……機械であるミネルヴァを 無力化させるというのは、難しい。 |
Raabe |
ラーベ
機械に気絶なんてものはない。 機械の意識とは、稼働状態にあるかないかだ。 |
Raabe |
ラーベ
あの人形がショートするとか、もしくは電源でもついていれば 別だが、そうでないなら……破壊するしかない。 |
Raabe |
シエル
待ってください。観測者を破壊することは、 観測者の死亡と同じではありませんか? |
Ciel |
シエル
観測者が死亡すれば、 世界にはリセットがかかってループが行われます。 |
Ciel |
シエル
|
Ciel |
ラーベ
その通り。避けたい。というか避けなくてはいけない。 だから、わかるか? |
Raabe |
ラーベ
観測者を無力化したい。だが無力化させることは、 非常に避けたい危険な状況を招くということで。 |
Raabe |
ラーベ
それを回避するためにも観測者を無力化しなければならない…… という堂々巡り状態にあるんだ。 |
Raabe |
ルナ
それって、なんの解決方法もないってことじゃんか! |
Luna |
ラーベ
だから今、どうにかできないか考えてるんだろうが。 |
Raabe |
ラーベ
お前たちもなんか妙案を絞り出せ。ミネルヴァを破壊せずに、 無力化するか、暴走状態を解除する方法だ。 |
Raabe |
セリカ
私も、できればミネルヴァを破壊なんてしたくない。 なにか……なにかないかな……。 |
Celica |
1: ミネルヴァを破壊しないですむ方法…… |
1: |
???
なぁんだ、そんなことで悩んでるの? 悩むことないのに。 |
??? |
セミア
なにをしたって、 どうせこの世界はもう少しでなくなるんだから。 |
Semia |
シエル
あなたは……! バベルの……セミアさん。 |
Ciel |
シエル
なぜここにいるのですか? |
Ciel |
セミア
あれ。生きてたんだ、御剣の犬。 なんだ、ざぁ〜んねん。 |
Semia |
セミア
死んでてくれたら、 ハーンの前で悲しい顔くらいはしようと思ってたのに。 |
Semia |
セミア
そしたら、 ハーンに慰めてもらえたかもしれないのになぁ……。 |
Semia |
シエル
ハーン……。 あの男の名前……。 |
Ciel |
セミア
アンタが気安く呼ばないで。 独占欲振りかざすつもりはないけど、アンタは不愉快。 |
Semia |
シエル
……っ。 |
Ciel |
セミア
なぁに、睨んじゃって。怖い怖い。 |
Semia |
ラーベ
バベル。丁度いい、どうやらかなりの情報通みたいだ。 色々とわからないことが多いんでね。教えてくれないか。 |
Raabe |
ラーベ
『どうせ』世界はなくなる、とはどういう意味だ? 観測者の喪失以外にも、世界がなくなる理由があるのか? |
Raabe |
ラーベ
それと、ここは |
Raabe |
セミア
なにそれ? なんでアタシが、アンタたちにそんなこと 教えてあげなくちゃいけないワケ? |
Semia |
1: 情報を与えても不利にはならないはずだ(よ) |
1: |
セミア
なにそれ、言ってる意味わかんないし……。 どっかの馬鹿みたいに、ペラペラと教えるワケないでしょ。 |
Semia |
セミア
まぁでも……『アンタに』邪魔されるのも困るかぁ……。 |
Semia |
セミア
しょうがないなぁ。 そんなに言うんなら、教えてあげるよ。 |
Semia |
セミア
知った後にどんな顔をするかも……興味あるしね。 |
Semia |
セミア
あのね、ここは、 |
Semia |
ラーベ
やりたいこと? |
Raabe |
セミア
前に、それなりにできる魔術師……とかいうのを使って ちっちゃな島で色々と実験してみたんだけど、 |
Semia |
セミア
余計な『認識』が入ったせいで上手くいかなくてさぁ。 ほんと、人間って面倒くさいよね。 |
Semia |
ラーベ
なっ!? まさか……。 |
Raabe |
セミア
だから扱いやすい観測者ならってことで、 今回はあの人形にしたの。 |
Semia |
セミア
だけど変なの使うとやっぱダメだわ……。 簡単な分、思い通りに動かないし。 |
Semia |
バング
私利のために、ミネルヴァ殿を利用したのでござるか。 |
Bang |
セミア
私利? そうだけど、それがなに? なにか変? |
Semia |
セミア
アレは道具じゃない。道具は使うもんなんでしょ。 おっかしい。 |
Semia |
シエル
なぜ、ファントムフィールドを作ったのですか? |
Ciel |
セミア
『窯』が必要だからに決まってるでしょ、馬鹿なの? あんまくだらないこと聞かないでよ、犬。 |
Semia |
セミア
それともご主人様のしつけが悪いのかな。 |
Semia |
シエル
今の発言はどなたを示していますか? どなたであれ……侮蔑的と判断します。 |
Ciel |
ラーベ
シエル、止めろ。 |
Raabe |
シエル
……了解……しました。 |
Ciel |
セミア
そうそう、 犬は上手に『待て』ができないとね、アハハハ。 |
Semia |
セミア
楽しくなってきたから、もっとおしゃべりしてあげる。 |
Semia |
セミア
あの人形、勝手に余計な人間を観測しだしたんだよね。 |
Semia |
セミア
そのうえ、そいつの意識に感化されて 無駄にフィールド広げちゃってさ。 |
Semia |
セミア
そのせいで観測しきれなくなって、あちこちで人間が どんどん消えたりしてたのは笑えた。 |
Semia |
セミア
ただ『あんなもの』まで呼び出されたのは、 ホント迷惑だったけど。 |
Semia |
セミア
おかげで窯がダメになっちゃった。 |
Semia |
セリカ
あんなもの……。 呼び出したって、もしかして『災厄』のこと? |
Celica |
セミア
ふふ、そんな風に呼んでるんだ。 馬鹿みたい。 |
Semia |
セミア
でもま、いいよ。そういう茶番が好きならそれでも。 |
Semia |
セミア
『災厄』? そうそう、そのせい。そのせいで大事な窯が 壊れちゃったから……直さないといけないじゃない。 |
Semia |
セミア
だからね……この辺りの時間だけ、巻き戻してもらったんだ。 |
Semia |
ラーベ
時間の巻き戻し……ドライブか……? そんなドライブ、存在するのか? |
Raabe |
セミア
さあ。存在すると思えば、するんじゃない? 可能性があるものは、可能らしいし。 |
Semia |
セミア
そういえばアンタ、ここが |
Semia |
セミア
ここは……『この部屋』は、 地上の時間より、何十年か前の状態。 |
Semia |
セミア
ここができたて、ピカピカの新築だったころだよ。 綺麗でしょ。 |
Semia |
セミア
あ。あのでっかい人形がボロボロにしちゃったんだっけ。 あーあ、まいっか。どうせなくなる世界だし。 |
Semia |
ルナ
だから、なんでなくなるのかって聞いてんだよ! ミネルヴァが暴走したから……だからなくなっちゃうのか? |
Luna |
セミア
さっき言ったでしょ。ここはアタシたちバベルが用意した ファントムフィールドだって。 |
Semia |
セミア
その目的がもうすぐ果たされるからに決まってるじゃん。 そうなったら、ここは用済みだから解体するの。 |
Semia |
セミア
こんな他に使い道のないフィールド、 とっておいてもしょうがないでしょ。 |
Semia |
セリカ
使い道……用済みって……。 ここは、私の大事な人がいる、ちゃんとした世界なのに……。 |
Celica |
セミア
『ちゃんと』ってなに。 じゃあ逆に『ちゃんと』してない世界ってどんなの? |
Semia |
セミア
憐れだなぁ。自分の存在の規模を自覚できないっていうのは…… もう、憐れとしか言いようがないよね……。 |
Semia |
セミア
……ねえ。 アンタ。結構すごい観測者なんでしょ。 |
Semia |
セミア
だったらさ、今度はアタシに教えてよ。 ここに、なにがあるの? |
Semia |
セミア
アンタたちはなにを探してたの? この部屋の奥に、なにがあるはずだったの? |
Semia |
シエル
窯は……そこにあるはずなのに。 視認できないのです。 |
Ciel |
1: (窯がある) |
1: |
セミア
そう。 |
Semia |
セミア
『窯』がある。
|
Semia |
第11節 錬成完了②/ 11. Training Complete - 2
Summary | |
---|---|
突如現れた『窯』を利用し、目的を達した
セミア。彼女は次に、ミネルヴァの暴走を 止めようとするセリカへとその刃を向けた。 |
シエル
! |
Ciel |
シエル
窯の出現を確認……。 今度ははっきりと、視認できる状態です。 |
Ciel |
ルナ
あ……あれ、なんだよ。 さっきまであんなの、なかったぞ! |
Luna |
ルナ
あれが、今言ってた……『窯』なのか? |
Luna |
セミア
そう。これが『窯』。 ファントムフィールドと境界を繋ぐ場所。 |
Semia |
セミア
そうだよね……レイ。 |
Semia |
セミア
そしたらさ、今からいいもの見せてあげるよ。 |
Semia |
ラーベ
なんだ、なにを……ええい、なんでもだ! レイ、観るな!! |
Raabe |
セミア
ほら、出てくるよ。 窯の中から! |
Semia |
セミア
なにが見える? |
Semia |
???
…………。 |
??? |
1: 小さくて華奢な……人? |
1: |
セミア
そう。そうだよ、もっと観て。さあ……。 どんな子? どんな形をして、どんな色をしてる? |
Semia |
セミア
だめだよ、よく観て。見えてるでしょう。 どんな子? どんな形をして、どんな色をしてる? |
Semia |
セミア
あの子がここにいるって、しっかりその意識で、 その『眼』で……認識して。 |
Semia |
???
…………あ。 セミアだぁ。久し振り〜、元気だった? |
??? |
セミア
久し振り、オリヴァ。 そっちこそ、調子はどう? |
Semia |
オリヴァ
うん、いいよぉ。元気いっぱい。 たくさん寝たからかな。 |
Oliver |
ルナ
なんだ、あいつ……どっから出てきた? |
Luna |
シエル
窯の中からです。 ですが、窯の中は境界です。人間が存在できるはずは……。 |
Ciel |
ラーベ
……ああ、そうだ。だからあれは人間じゃない。 |
Raabe |
ラーベ
精錬された……素体だ。 |
Raabe |
ラーベ
しかも……この数値は何だ……。 |
Raabe |
オリヴァ
ねえ、みんなは? みんなもいるの? どこにいるの? 会いたいなぁ。みんな元気? |
Oliver |
セミア
ええ。みんないつも通り。 |
Semia |
セミア
ハーンがアンタを待ってるよ。 連れて来てってさ。 |
Semia |
オリヴァ
ハーン! わぁ、久し振りだなぁ。早く会いたいなぁ。 |
Oliver |
オリヴァ
どこにいるの? なにするの? 楽しいことかな。 またいっぱい壊す? いいよ、ボク壊すの得意だもん。 |
Oliver |
セミア
アタシはアンタを迎えにきただけだから。 聞きたいことがあるなら、あとでハーンに聞いて。 |
Semia |
オリヴァ
はーい。 ハーン、久し振りだなぁ。早く会いたいなぁ。 |
Oliver |
セミア
それさっきも聞いた。 |
Semia |
オリヴァ
そっかぁ〜。久し振りだねぇ。 |
Oliver |
セミア
はぁ……。 |
Semia |
オリヴァ
あ、ねえねえ。 |
Oliver |
セミア
今度はなに? |
Semia |
オリヴァ
アレは? アレも仲間? 一緒に行くの? |
Oliver |
シエル
え……? |
Ciel |
セミア
……違うよ。仲間じゃない。 アレは道具。 |
Semia |
オリヴァ
なんだ、そっか。 ……あれ。なんだか中途半端なのもいるんだね。 |
Oliver |
ルナ
……っ! な、なんだよ……。 |
Luna |
オリヴァ
ふーん。色んなのがあるね。 |
Oliver |
セミア
そうだね。でももう関係ないから。 行こう、オリヴァ。 |
Semia |
セリカ
待って! 私たちの世界をどうす……。 |
Celica |
セミア
どうするのかって? ほっとくの。放っておけば、勝手に終わる。 |
Semia |
セリカ
なん……。 |
Celica |
ラーベ
こ……れは……まさか! |
Raabe |
ルナ
うわ、わ、なんだ、なんか気持ち悪い……! |
Luna |
セナ
周りの景色が…… すごい速さでブレているように見えるんですけど〜……? |
Sena |
バング
辺りの様子が……高速で変化している。 ごくわずかな変化でござるが、これは……まるで……。 |
Bang |
バング
あやつ、先程時間を巻き戻したなどと言っておったが、 よもや……! |
Bang |
ラーベ
ああ。超高速で時間が経過している。 巻き戻された分が、現在に近付こうとしているんだ! |
Raabe |
ラーベ
戻された時間は数十年だったか。時間は多く戻せばそれだけ、 解除したときに高速で収束しようとする。 |
Raabe |
ラーベ
数十年だろうが、 すぐにこの世界の本来の時間軸に追いつくぞ。 |
Raabe |
セリカ
そ、それ、困ることなの? |
Celica |
ラーベ
当たり前だ! |
Raabe |
ラーベ
この世界の、他でもないここで、この数十年間の間になにが 起こったのか、お前が一番よく知っているはずだろう! |
Raabe |
ラーベ
時間の巻き戻りは、事象干渉とは違う。 |
Raabe |
ラーベ
事象干渉は起こったことを 『起こらなかった』ことにするものだ。 |
Raabe |
ラーベ
対して巻き戻しは時間そのものを戻すだけ。 |
Raabe |
ラーベ
巻き戻れば、起こった出来事は当然、 起こった通りに『起こる』。 |
Raabe |
シエル
では……このまま時間が進めば、窯からは『災厄』が。 |
Ciel |
ラーベ
出てくる! しかも私たちの目の前でだ!! |
Raabe |
ルナ
はぁ!? |
Luna |
ルナ
なんだそれ!? そんなの目茶苦茶だ! 『災厄』と鉢合わせするとか、冗談だろ!? |
Luna |
ラーベ
こんなときに冗談など言うか! おい、バベル! 窯を止めろ! 『あれ』が出てくる前に! |
Raabe |
ラーベ
お前たちとて、直接遭遇すればただではすまないはずだ! |
Raabe |
オリヴァ
セミア。なんか慌ててる。 |
Oliver |
セミア
あらら。ほんとだね。 |
Semia |
セミア
ご心配なく。アタシたちはその前に帰るから。 それより……窯を止めるなんて、言ってよかったの? |
Semia |
セミア
そんなこと言うからさぁ……ほら、来ちゃったじゃない。 |
Semia |
シエル
っ……! レイさん、私の後ろに……! |
Ciel |
シエル
はっ! |
Ciel |
シエル
ぐっ、くぅ……! |
Ciel |
ミネルヴァ
…………。 |
Minerva |
セリカ
ミネルヴァ! |
Celica |
ラーベ
ちっ、観測者としての本能とでも言うべきか…… 厄介だな! |
Raabe |
セリカ
ミネルヴァ、もうやめて! シエルちゃんやレイは敵じゃないよ!! |
Celica |
セリカ
戦わなきゃいけないのは、もっと別にいるの。 お願い、ミネルヴァ! |
Celica |
ミネルヴァ
…………。 |
Minerva |
ミネルヴァ
…………。 |
Minerva |
ルナ
……止まった……? |
Luna |
セリカ
そう、そうだよ。私のことわかる? もうそんな暴れ方しないで。ミネルヴァが壊れちゃうよ……。 |
Celica |
セリカ
今治してあげるから。そこにいて。 |
Celica |
バング
セリカ殿! うかつに近付いては危険でござる! |
Bang |
セリカ
大丈夫。 ミネルヴァがまた暴れても。私が止めなきゃ。 |
Celica |
セリカ
大事なの。ミネルヴァのこと。 |
Celica |
ミネルヴァ
…………。 |
Minerva |
セミア
……こういうダルい展開、嫌いなんだよね。 |
Semia |
セミア
心通わせるとか、そういうこと信じちゃうタイプ? くっだらない。 |
Semia |
セミア
どの道そいつらが窯を壊せば、 アンタの世界は取り上げられちゃうのにね。 |
Semia |
オリヴァ
騙されてるんだ。あのお人形。かわいそう。 |
Oliver |
セミア
そう、かわいそうだよね。 だから……暴れやすくしてあげようか。 |
Semia |
バング
いかん、セリカ殿! |
Bang |
セリカ
ミネルヴァ……。 |
Celica |
第11節 錬成完了③/ 11. Training Complete - 3
Summary | |
---|---|
凶刃に倒れるセリカ、彼女を取り戻そうとも
がくミネルヴァ。災厄、崩落、爆発、無数の 危険が迫る中、皆が生き残る道を模索する。 |
|
八方塞がりの状況に、セリカの影が道を指し
示す。一同はわずかな可能性を求めて『窯』 の向こう側、境界の中へと飛び込んでいく。 |
セリカ
……! |
Celica |
ミネルヴァ
…、…、…。 |
Minerva |
シエル
セリカさん!! |
Ciel |
1: なんてことを……! |
1: |
ルナ
嘘、だろ……。 |
Luna |
バング
セリカ殿……! |
Bang |
セリカ
ミネルヴァ……。 |
Celica |
ミネルヴァ
………。 ………。 |
Minerva |
セリカ
ごめん、ミネルヴァ。 私……。 |
Celica |
あなたに。 |
|
会いたかった。 |
|
ミネルヴァ
――――――――――――――――――――――――――――― ――――――――――――――――――!!!!!!!!!!! |
Minerva |
セミア
あーあ。観測者が完全に、世界を観るのをやめちゃったみたい。 思いの外、早い終わりになったね。 |
Semia |
オリヴァ
ふぁぁ〜……ねえ、セミア。まだここにいるの? ボクはなにすればいい? どれを壊す? |
Oliver |
セミア
まだいいよ、オリヴァ。 ハーンも待ってるし、アタシたちは帰るよ。 |
Semia |
オリヴァ
そっかぁ。わかった。 |
Oliver |
ルナ
おいコラ、お前ら! なに逃げようとしてんだ、ふざけんな! 落とし前つけてけ!! |
Luna |
セミア
そういうの、キャラじゃないから。 バイバイ。 |
Semia |
オリヴァ
バイバ〜イ! |
Oliver |
ルナ
あ、おい、待てよ! 待てって……バカーーーー!!! |
Luna |
バング
ルナ! |
Bang |
ルナ
……っ、ぶね〜〜〜〜〜! ありがとな、オッサン! |
Luna |
バング
なんのなんの。 |
Bang |
バング
それより……今はどこぞへ消えた正体不明の連中よりも、 目の前に迫る危機の対処が優先でござるよ。 |
Bang |
ルナ
うう……そりゃ、そうなんだけど……。 |
Luna |
ラーベ
こいつは相当やばい事態になったな……。 |
Raabe |
ラーベ
聞け。 ミネルヴァのコアにはおそらく人間の魂が使われている。 |
Raabe |
ラーベ
さらにあのとんでもない出力を支えている動力源は、 超小型の反応炉だ。 |
Raabe |
ルナ
反応炉? |
Luna |
ラーベ
思いっきり圧縮された高エネルギーの塊だと思え。 ただし非常にデリケートだ。下手したら爆発する。 |
Raabe |
ラーベ
日本を吹き飛ばした爆弾と同じだ。 |
Raabe |
ルナ
んな! そんなもんが入ってんのか!? |
Luna |
ラーベ
そうだ。そしてコアが人間の魂だと言ったろ。 |
Raabe |
ラーベ
普段は機能に影響を及ぼさないだろうが、 ミネルヴァに魂と呼ばれるものが内蔵されているのは事実だ。 |
Raabe |
ラーベ
あいつに精神的な揺らぎが生じるのならば、 その不安定さは出力や、動力源にも影響を及ぼしかねない。 |
Raabe |
シエル
ミネルヴァさんの精神波長は存在そのものが微弱ですが、 現在は非常に乱れています。 |
Ciel |
シエル
もし反応炉に影響するのなら、普段よりも圧倒的に…… 反応炉の異常、爆発の発生率が上昇していると言えます。 |
Ciel |
バング
ここでそれが爆発したら……考えたくないでござるな。 |
Bang |
ミネルヴァ
…………。 …………!!!! |
Minerva |
ミネルヴァ
!!!!!!!! |
Minerva |
ラーベ
事象干渉……! |
Raabe |
シエル
あれは、セリカさん!? 事象干渉でセリカさんの死をなかったことにして……。 |
Ciel |
シエル
いえ……あれはセリカさんではありません。 もっと不完全なものです。 |
Ciel |
ラーベ
ミネルヴァは完全な自立駆動システムではない。 正常な稼働や戦闘には、セリカが必要なんだろう。 |
Raabe |
ラーベ
いや、これだけ錯乱していて、正常もなにもないか。 すでに観測もまともにできなくなっている。 |
Raabe |
ルナ
そんなのじゃなくて、 ただセリカを取り戻したかったんじゃないのか? |
Luna |
セナ
そうだよ〜……。観測でどうにでもできるなら、 自分ひとりで戦えるようにすればいいんだもの〜……。 |
Sena |
セナ
なのに、セリカさんを作ったってことは……。 |
Sena |
ミネルヴァ
……………………!!! ……!! ……!!! |
Minerva |
セナ
ひえぇ〜! |
Sena |
バング
ルナ、セナ、考えるのは、後にするでござる! |
Bang |
バング
これはまごうことなきピンチゆえ。 考察よりも、生き延びることに己を使うのだ! |
Bang |
ルナ
わ、わかった。わかった……けど。 |
Luna |
ルナ
なんかすごく、嫌だ! だってあいつ……。 |
Luna |
1: 悲しんでるみたい…… |
1: |
シエル
(悲しんで……。 セリカさんを、失ったから?) |
Ciel |
シエル
(失うことは、悲しいことなのですか……ミネルヴァさん。 悲しいのに、なぜ戦うのですか) |
Ciel |
シエル
(辛そう……。 セリカさんを、失ったから?) |
Ciel |
シエル
(失うことは、辛いことなのですか……ミネルヴァさん。 辛いのに、なぜ戦うのですか) |
Ciel |
シエル
(守るべき人はもういないのに…… その幻影を作ってまで。なぜ……) |
Ciel |
ルナ
うわぁっ! |
Luna |
ラーベ
くっ、こんな状況ではなにもできん。 戦闘態勢! ミネルヴァを制圧しろ! |
Raabe |
バング
確認するが、よいのか? ミネルヴァ殿を破壊してはならぬという話ではなかったか? |
Bang |
ラーベ
そんなこと言ってる場合じゃないんだ、もう! |
Raabe |
ラーベ
ミネルヴァを破壊して世界にリセットがかかるのも、 |
Raabe |
ラーベ
このままミネルヴァに地下施設を破壊されて 瓦礫の下敷きになるのも一緒だ! |
Raabe |
ラーベ
だがな! 一番最悪なのは、時間経過で『災厄』と鉢合わせする ことだ。それだけは回避しなければならない! |
Raabe |
ルナ
ぐぬぬぬ…… 壊さなくても、ぶちのめして縛り上げちゃえばいいんだろ! |
Luna |
ルナ
なんでもいいから一回止まってくれないと、 どうにもなんねーっての! |
Luna |
シエル
ミネルヴァさん……セリカさん……。 |
Ciel |
セリカ?
…………! …………! |
Celica?
...! ...! |
シエル
あれは……。 セリカさんが、ミネルヴァさんを押さえようとしています。 |
Ciel |
1: ' |
1: |
シエル
不完全な状態であっても、止めようと……。 どうして、それほどに。 |
Ciel |
シエル
助ける……。あの状態のセリカさんの行動を補助するのは、 助けることになるのですか……? |
Ciel |
ラーベ
シエル! ぼけっとするな! 時間がない!! |
Raabe |
シエル
……はい。 |
Ciel |
シエル
対象を補足。戦闘態勢へ移行。 対象の無力化を開始します。 |
Ciel |
シエル
ミネルヴァさん。止まってください! |
Ciel |
ミネルヴァ
………、………。 ……………………。 |
Minerva |
シエル
はぁ、はぁ……対象、停止。 ……ですが、対象の機能は正常です。 |
Ciel |
シエル
ダメージの蓄積のために行動が制限されているだけで、 すぐにまた稼働するはずです。 |
Ciel |
ルナ
倒せてないってことかよ。くっそ〜……。 |
Luna |
ルナ
大体、世界の形がどうとか言ってたけど、 要は世界を自分の思い通りにできるってことだろ? |
Luna |
ルナ
そんな相手に勝てるわけないじゃんか! |
Luna |
ラーベ
本来なら、勝てるんだ。観測者が『負けた』と思えばな。 だが機械が『負けた』と思うか!? |
Raabe |
バング
八方塞がりでござるなぁ! |
Bang |
ラーベ
とにかく『窯』をどうにかしないとマズイ。 |
Raabe |
ラーベ
このまま時間が正常な地点に追いついたら、 いやそのちょっと手前で、我々は終わりだ。 |
Raabe |
バング
『災厄』が出てくるのでござったな……ミネルヴァ殿との 交戦状態が落ち着いたとはいえ、危機が去ったわけではない。 |
Bang |
ラーベ
その通りだ。むしろ戦闘に時間を持っていかれた分、 猶予はよりなくなってる! |
Raabe |
ラーベ
シエル! すぐに『窯』を破壊しろ! |
Raabe |
ラーベ
レイが認識しているなら、 可能なはずだ! |
Raabe |
シエル
は……はい! |
Ciel |
シエル
……第666拘束機関解放。次元干渉虚数方陣展開……。
|
Ciel |
シエル
……あ、れ。 き、起動! 起動……!! |
Ciel |
シエル
『蒼の魔道書・写本』、起動しません……。 |
Ciel |
1: どうして、今まで通りなのに…… 僕(私) |
1: |
ラーベ
いや。これは……こんなところで影響が出るとは。 |
Raabe |
ラーベ
フガク! タカマガハラシステム、緊急プロトコルだ! 回収しろ、急げ! |
Raabe |
ラーベ
……くそっ! こっちもダメか!! |
Raabe |
ルナ
なあ、なあ! ルナたち、どうなっちゃうの……!? |
Luna |
セナ
ルナ……! |
Sena |
バング
しっかり掴まっておれ、ルナ、セナ。 なにがあっても、拙者が切り抜けてみせるでござる! |
Bang |
ラーベ
そういうレベルの問題じゃ……。 |
Raabe |
セリカ
……………………。 |
Celica |
セリカ
……行って。 |
Celica |
シエル
セリカさん……? 窯を指差しています……。 |
Ciel |
バング
よもや、飛び込めということでござるか? |
Bang |
ラーベ
馬鹿な、窯に飛び込んだから……ああ、そうか。 アリか。 |
Raabe |
シエル
危険です。人間が境界に生身で入れば……! |
Ciel |
ラーベ
わかってる。通常の人間では耐えられない。情報に分解されるか、 存在を失うか、よくて情報に精神を潰されて狂うかだ。 |
Raabe |
ラーベ
だがミネルヴァを破壊すれば反応炉、 破壊しなければ瓦礫の下敷き。じっとしてれば『災厄』だ。 |
Raabe |
ラーベ
他に手はない。それ以外は詰みだ! |
Raabe |
ラーベ
だから……レイ。 |
Raabe |
ラーベ
我々を観測し続けろ。 |
Raabe |
1: 意識してやったことないよ! |
1: |
ラーベ
意識しろ。私たちが『居る』ということを認識し続けるんだ。 どんな人物なのか、細部まで明確に。 |
Raabe |
ラーベ
境界に入りさえすれば、フガクが直接アクセスできる。 ファントムフィールドの事情などおかまいなしだ。 |
Raabe |
ラーベ
数秒でいい。 だがその数秒、寸分の狂いもなく私たちを…… |
Raabe |
ラーベ
『お前』を認識しろ。いいな! |
Raabe |
1: なんとかします!! |
1: |
ミネルヴァ
……………………。 |
Minerva |
シエル
ミネルヴァさん、再起動。動き出します! |
Ciel |
ラーベ
くそ、こっちも窯の内部に超高密度エネルギーの片鱗を感知した。 時間がない、急げ、飛び込め!! |
Raabe |
シエル
了解!! |
Ciel |
シエル
レイさん、手を離さないでください! |
Ciel |
第12節 追憶の色/ 12. The Color of Recollection
Summary | |
---|---|
辿り着いたグラウンド=ゼロでナインはセリ
カと再会する。その眼前には巨大な『暗黒』 が、なにかを拒むようにじっと佇んでいた。 |
目を開けた瞬間から、私は求めていた。 |
|
私の居場所を。私の役目を。私の意義を。 私の願いを。 |
|
それはあなた。 |
|
私はあなたのために生まれた。私はあなたのために戦う。 私はあなたのために在る。 |
|
だから、会いたかった。 会いたかった。 |
|
セリカ。 |
|
あなたの願いが叶いますように。 |
|
アハト
……ここが『グラウンド=ゼロ』? |
Acht |
ナイン
ええ、そうよ。 『災厄』が初めて出現し、破壊し尽くしていった場所。 |
Nine |
ナイン
世界に刻まれた最初の爪痕。 |
Nine |
アハト
なにもないのね。 |
Acht |
トリニティ
そのあとに、たくさんの爆弾が投下されて……。 本当になにもかも、なくなってしまったんです。 |
Trinity |
ナイン
こうなってるってことは、知っていたけど。 改めて見ると無残ね。 |
Nine |
ナイン
草木一本すらないじゃない。 |
Nine |
アハト
それだけ徹底的に攻撃する必要があったのね。 ここに……。 |
Acht |
トリニティ
あれから時間もたちましたし…… 反応兵器の影響はもうほとんどないみたいですねぇ。 |
Trinity |
トリニティ
ここに、セリカさんは来ているはずなんですよね? |
Trinity |
トリニティ
……あら? |
Trinity |
ナイン
どうしたの、トリニティ。誰に話しかけてるのよ。 私はこっちよ。 |
Nine |
トリニティ
え……ええ〜、そうですよねぇ。 私ったら、今誰に……お話しようとしていたんでしょう? |
Trinity |
ナイン
やめてよ。変なもの見るとか。 場所柄、シャレにならないわ。 |
Nine |
トリニティ
いえ、そういうわけではなかったのですけれど……あ……! |
Trinity |
トリニティ
ナイン、あちらを見てください! |
Trinity |
ナイン
あれは……。 |
Nine |
ナイン
セリカ!!! |
Nine |
セリカ
…………。 |
Celica |
ナイン
セリカ! セリカ、セリカ!! |
Nine |
セリカ
うわわわわわ!? え、あれ、お、お姉ちゃん!? |
Celica |
セリカ
あれ? 私……今……。 |
Celica |
ナイン
よかった、無事で……。 |
Nine |
ナイン
馬鹿! なに勝手にひとりで家飛び出してんのよ!! しかもこんなところまで……。 |
Nine |
ナイン
私がどれだけ心配したと思ってるの!? 本当に……本当にもう、あなたって子は!! |
Nine |
セリカ
お、お姉ちゃん。心配かけてごめんなさい。 |
Celica |
セリカ
どうしても……自分の目で見たかったの。 |
Celica |
ナイン
見てどうするつもりだったのよ。 ここには、なにもない……。 |
Nine |
ナイン
時間も光も……完全に事象が静止した……。 |
Nine |
ナイン
あの『暗黒』しかない。 |
Nine |
セリカ
……うん。 |
Celica |
セリカ
でもね、来たかったの。 |
Celica |
ナイン
次やったら、許さないわよ。 |
Nine |
セリカ
うん。 |
Celica |
セリカ
……許してくれるくせに。 |
Celica |
ナイン
次こそ許さないって言ってるのよ! 反省しなさい! |
Nine |
セリカ
ひゃっ! ……はぁい。ごめんなさい。反省してます。 |
Celica |
トリニティ
まあまあ、見つけられてよかったじゃないですかぁ。 とっても心配しましたけど、ご無事そうでなによりです〜。 |
Trinity |
セリカ
トリニティさんも、ごめんなさい。 |
Celica |
トリニティ
いいえ〜、私は気にしていませんよぉ〜。 |
Trinity |
トリニティ
…………。 |
Trinity |
ナイン
トリニティ、どうしたの? |
Nine |
トリニティ
いえ……あの暗黒なのですが……。 私にはなにかを閉じ込めているように思えてしまって……。 |
Trinity |
ナイン
なにかって? |
Nine |
トリニティ
……わかりません。 |
Trinity |
トリニティ
あぁ、ごめんなさい。 さあ、帰りましょう。イシャナに。 |
Trinity |
ナイン
そうね。こんなところに、長居は無用よ。 |
Nine |
ナイン
……セリカ? |
Nine |
セリカ
……なんだろう。 私……ずっと誰かに守ってもらってたような……。 |
Celica |
ナイン
行くわよ。 反省してるなら、ちゃんとついてきなさい。 |
Nine |
セリカ
あ、はーい! お姉ちゃん! |
Celica |