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Chapter 2: Sleeping Beauty (眠り姫 Nemurihime)
第1節 遭遇①/ 1. Encounter - 1
Summary | |
---|---|
カガミが新たなファントムフィールドを見つ
け、ダイブするシエルたち。その先で、未確 認生物の襲撃を受ける。 |
Kagami has discovered another Phantom Field, which Ciel and company Dive into. Shortly after, they are attacked by an unidentified creature. |
シエル
レイさん。 まだお休み中かと思っていました。 |
Ciel |
シエル
こちらにいらっしゃるということは、 食堂へ向かわれるところでしょうか。 |
Ciel |
シエル
必要であれば、お部屋まで食事を届けますが。 |
Ciel |
1: いや、ちょっと散歩を |
1: |
シエル
そうでしたか。……そういえば、 |
Ciel |
シエル
フガク内部の案内は必要ですか? |
Ciel |
シエル
例えば、この廊下沿いにはスタッフも日頃から利用する、 日常的な行動に関する施設が多くあります。 |
Ciel |
シエル
レイさんも 利用する機会が多いのではないでしょうか。 |
Ciel |
1: いいの? |
1: |
シエル
了解しました。では、ついてきてください。 |
Ciel |
シエル
こちらがキッチンと、食堂になります。 |
Ciel |
シエル
基本的には担当のスタッフが調理を行いますが、 お望みでしたらキッチンの使用も可能です。 |
Ciel |
シエル
こちらはランドリーと……あちらがメディカルルームです。 |
Ciel |
シエル
こちらは多目的ルームになります。 |
Ciel |
シエル
ブリーフィングなどの他、戦闘訓練を行っても耐えうる 頑強な造りになっていますので、様々な用途に対応できます。 |
Ciel |
シエル
そしてこちらが、指令室です。 |
Ciel |
カガミ
お。どうした、ふたり揃って? |
Kagami |
シエル
レイさんに、フガク内部の共用スペースを 案内していました。 |
Ciel |
カガミ
ああ、そういえばしていなかったな。 |
Kagami |
カガミ
基本的な生活に必要な設備は、あらかた揃ってる。 ある程度は自由に使ってくれて構わないよ。 |
Kagami |
カガミ
それより、ちょうどいいところに来たな、お前たち。 |
Kagami |
シエル
それは、どういう意味でしょうか? |
Ciel |
TA
タカマガハラシステムの観測の元、 新たなファントムフィールドを感知、認識した。 |
TA
The Takamagahara System has become aware of and confirmed a new Phantom Field through Observation. |
シエル
新たなファントムフィールド…… つまり、次の任務ということですか? |
Ciel
A new Phantom Field... in other words, our next mission? |
カガミ
その通りだ。次を見つけるまで、 もう少し時間がかかると思っていたんだけど……。 |
Kagami
That's correct. I thought it would take a bit longer before we found the next one, but... |
カガミ
イシャナや階層都市のファントムフィールドで 観測者を解放したことで、 |
Kagami
It seems that releasing the Observers of the Phantom Fields in Ishana and the Hierarchical City... |
カガミ
タカマガハラシステムにも影響があったみたいだな。 |
Kagami
...Affected the Takamagahara System. |
カガミ
これからも観測者を解放するたびに、システムの 観測力を安定させることができるだろう。 |
Kagami
If we continue to release Observers, the Takamagahara System's power of Observation should become more stable. |
TB
そうすれば、僕たちももっと楽に ファントムフィールドを発見できるだろうね。 |
TB
That's right. With that, we'll be able to more easily discover Phantom Fields. |
TC
イエス。我々の観測能力の安定性は、 新規ファントムフィールド発見確率と比例します。 |
TC
YES. The stabilization of our power of Observation will proportionally affect the chance of detecting new Phantom Fields. |
TB
そうだね、もっと『深い』所のファントムフィールドがね。 |
TB
Indeed, of Phantom Fields that are even "deeper." |
カガミ
…………。 |
Kagami
... |
シエル
それで、今回発見されたのはどういう世界なのですか? |
Ciel
So what kind of Phantom Field was discovered this time? |
カガミ
あぁ、先日の階層都市に比べると、規模は小さい。 でも生命の反応密度はかなり高いみたいだな。 |
Kagami |
TA
人類の生息する地域であることは間違いない。 だが詳細は不明だ。 |
TA |
TB
その辺りを調査するのも、君たちの役目だね。 |
TB |
カガミ
そういうわけだ。もちろん、今回も頼れる我が分身、 ラーベちゃんを同行させるから、安心していいぞ。 |
Kagami |
カガミ
サポート体制は万全だ。 まあ、前回のように危険はついて回るだろうが……。 |
Kagami |
シエル
レイさんの身の安全は、確保します。 それが私の任務ですので。 |
Ciel |
カガミ
だ、そうだ。 |
Kagami |
カガミ
最悪でもお前だけは回収する。 とはいえ、無茶は禁物だぞ。 |
Kagami |
カガミ
何度も言うようだが、お前が死んだらなにもかも台無しだ。 そこは覚えておくように。 |
Kagami |
カガミ
さて……どうだ? |
Kagami |
オペレーター
準備完了。いつでもいけます。 |
Operator |
カガミ
よし。 お前たちの準備がいいなら、すぐにでも向かおう。 |
Kagami |
カガミ
|
Kagami |
1: いつでも行けます |
1: |
カガミ
では、始めよう! |
Kagami |
オペレーター
了解。……ファントムフィールド、接続完了。 |
Operator |
カガミ
|
Kagami |
―――― |
|
――を……なさい……。 |
Please...them. |
そして……私を……。 |
...and...me.... |
シエル
……レイさん、どうかしましたか? ぼうっとしていたようですが。 |
Ciel
...Rei-san, what's wrong? You're spacing out. |
1: 今、誰かの声が…… |
1: ...I heard a voice just now. |
シエル
いえ、不審な物音は特に聞こえませんでした。 |
Ciel |
シエル
向こうのほうから、車両らしき音は聞こえますが、 それとは違うものですか? |
Ciel |
ラーベ
……うん、よしよし。機能に異常はなさそうだな。 |
Raabe |
ラーベ
で? どうした、レイ。 来て早々に幻聴か? |
Raabe |
シエル
ラーベさん。もしかしたら、観測者に関わる なにかの情報を察知したのかもしれません。 |
Ciel |
ラーベ
だったらいいんだが。どうなんだ? |
Raabe |
1: うーん…… |
1: |
シエル
そうですか。残念です。 |
Ciel |
ラーベ
とはいえ、レイが感知した情報だ。 ファントムフィールドに全く無関係ということもないだろう。 |
Raabe |
ラーベ
もしまた気になったときは、教えてくれよ。 |
Raabe |
1: はい、わかりました |
1: |
ラーベ
さて。まずは現状確認からいこう。 シエル、状態に問題はなさそうか? |
Raabe |
シエル
はい。意識もはっきりしています。 |
Ciel |
ラーベ
よしよし。レイも…… うん、特に問題はなさそうだな。 |
Raabe |
ラーベ
タカマガハラシステムの観測も正常に行われている。 |
Raabe |
シエル
周囲の状況ですが、ここは両脇をコンクリート製の壁に 挟まれた屋外の通路のようです。路地です。 |
Ciel |
ラーベ
おう、そうだな……。見ればわかるわ! |
Raabe |
ラーベ
とはいえ、前回のように森の中とかそういうわけでは ないんだな。街中スタートか。 |
Raabe |
ラーベ
それも、私がよく知っている年代に近い雰囲気だ。 |
Raabe |
ラーベ
となると、どこかに看板かなにかないかな。 地名がわかるものだと、おあつらえ向きなんだが……。 |
Raabe |
シエル
この柱の様なものに『新川浜』と書いてあります。 これがファントムフィールドの地名でしょうか。 |
Ciel |
ラーベ
『新川浜』は確か日本の地名だ。 なるほど、ここは日本か。こいつは色々やりやすい。 |
Raabe |
ラーベ
前回と違って、世の中の組織形態や常識は 私たちの認識とそう変わらないんじゃないか。 |
Raabe |
シエル
人も多く生活している区域のようです。路地を抜けた先には 明かりも多いようですし、車両の音もたくさん聞こえます。 |
Ciel |
ラーベ
うんうん、繁華街近くの裏路地って感じだな。 |
Raabe |
ラーベ
多少、時間軸が圧縮されているみたいだが…… 近しい時代という認識は、間違ってなさそうだ。 |
Raabe
The timeline may be more or less compressed, but we can confirm the general era, at least. |
ラーベ
だとしたら、治安状況は悪くないだろう。少なくとも、 武装した兵士や魔物にいきなり取り囲まれる危険性は少な……。 |
Raabe
Meaning, this should be a time of peace. Bare minimum, we don't have to worry about armed soldiers or random monsters coming out of nowhe-- |
シエル
!? |
Ciel |
ラーベ
なんだ、こいつらは!? |
Raabe |
1: なんか出た!? |
1: |
シエル
体長、1メートル強。 視覚器官複数確認、聴覚器官複数確認。節足構造を確認。 |
Ciel |
シエル
推定体重、推定機動からして、この路地に生息するには 不適合な身体構造です。 |
Ciel |
シエル
奥の建物の隙間から集まってきています。 敵対反応を感知。 |
Ciel |
1: とりあえず迎撃! |
1: |
シエル
了解。戦闘行動に移行します。 |
Ciel |
シエル
問題ありません。戦闘行動に移行します。 |
Ciel |
第1節 遭遇②/ 1. Encounter - 2
Summary | |
---|---|
戦闘の音を聞きつけ、シエル達の前に現れる
少年。素性を確認しようとするが、突如少女 サヤが現れ、シエル達に斬りかかる。 |
Following the sound of battle, a boy appears before them. He tries to check who they are, but a girl named Saya cuts in suddenly and attacks Ciel and Rei. |
少年が戦闘の仲裁に入る。シエルは戦闘解除
し、サヤも刀を収める。 |
The boy interferes to stop the fight. Ciel exits combat mode, and Saya sheathes her blade. |
シエル
対象の停止を確認しました。 これは……データ上の新川浜には、生息しない生物です。 |
Ciel |
ラーベ
というか、どう見てもまっとうな生物じゃないだろ。 |
Raabe |
ラーベ
ふーむ。これがこの街にとっての正常な状況なのか、 ファントムフィールド化したことにより発生した現象なのか。 |
Raabe |
ラーベ
そのあたりも調査で明らかにしたいところだな。 |
Raabe |
シエル
観測者の特定の手がかりになりますか? |
Ciel |
ラーベ
ファントムフィールド内で起こっていることは、 観測者の願望に起因する。 |
Raabe |
ラーベ
この奇妙な生物も、ファントムフィールド内特有の現象 であるのなら、もちろん手がかりになる。 |
Raabe |
シエル
……私達の知らない生態系が確立していると いうことですか? |
Ciel |
ラーベ
あまり考えたくはないが……可能性がないわけではないしな。 まぁそれがファントムフィールドというものだ。 |
Raabe |
シエル
ではこれからの行動としては、 前回同様、状況についての情報を集めることですね。 |
Ciel |
ラーベ
その通りだ。そして観測者の可能性があるドライブ能力者を 見つけ、その中から観測者を特定する。 |
Raabe |
ラーベ
観測者が特定できたら、窯を出現させ、破壊する。 やることはヤマツミと一緒だ。できるな? |
Raabe |
1: はい! |
1: |
ラーベ
うむ。返事だけはいいな。 さてでは、どこから手をつけるとするか……ん? |
Raabe |
少年?
おい、あんたら! そこでなにしてるんだ? |
Young Man?
Hey, you! What are you guys doing over there? |
ラーベ
ん、民間人か? ……とりあえず、 人間は存在しているようだが、それにしては……。 |
Raabe |
シエル
周囲の状況の確認をしていました。 |
Ciel |
少年?
確認? ……何の? |
Young Man? |
シエル
はい。現地調査を始めるにあたって、 まずは自分たちの状況を確認することが重要だと……。 |
Ciel |
ラーベ
待て待て待て待て、 お前は勝手に話を進めるんじゃない、シエル。 |
Raabe |
少年?
な、なんだこの丸っこいの! しゃべるのか!? |
Young Man?
This round...thing...talks!? |
ラーベ
ふふん、しゃべるとも。 しゃべるついでに、少年、同じ質問をお前にも返そう。 |
Raabe
That's right, it talks. It even wants to ask you the same question. |
ラーベ
お前こそ、ここになにをしに来た? |
Raabe
Who are you, and what did you come here for? |
少年?
……は? |
Young Man? |
ラーベ
私たちに声をかけたとき、お前はずいぶんとこちらを 警戒していたみたいじゃないか。 |
Raabe
...When you first called out to us, you seemed to be on guard. |
ラーベ
その理由はなんだ? 私たちがここにいるのはなにか不自然か? ならばその不自然な場所に……『なぜ』お前がいる? |
Raabe
Why was that? Is it because this is an unusual place to be in? And if so...then why are you here? |
少年?
なん、だよ。最初に聞いたのは俺だぞ。 まずはそっちから答えろよ。 |
Young Man? |
ラーベ
順番なんて関係ないだろう。 それとも、私の質問に答えられない事情でもあるのか? |
Raabe |
少年?
んだよ、探るみたいな言い方しやがって。 ねぇよ、んなもん。 |
Young Man? |
少年?
俺はただ……それ。あんたらの足元で崩れてる、 その異様な生き物。そいつを追ってきたんだ。 |
Young Man? |
少年?
そしたら路地の奥の方から物騒な物音が聞こえるから、 なんかあったのかと思ってすっ飛んできたんだよ。 |
Young Man? |
少年?
最初は襲われてるんだと思って助けようとしたんだけど…… あんたらは、あっさり倒しちまいやがった。 |
Young Man? |
少年?
妙な技を使ってたし、いやに冷静だし。 この路地が危険だってわかっただろうに、立ち去りもしない。 |
Young Man? |
少年?
それどころかなにか相談してるっぽかった。蟲についてな。 怪しむなっていうほうが、無理があるだろ。 |
Young Man? |
シエル
『蟲』? この、データにはない生物のことですか? |
Ciel |
少年?
そうだよ。つか、蟲のこと知らないのか? だったらなんの調査してたんだよ。蟲のことじゃねぇのか? |
Young Man? |
少年?
なんか明らかにするとか、特定するとか、 そんなこと話してたじゃねぇか。 |
Young Man? |
少年?
……なあ、少しはそっちのことも教えてくれよ。 俺がここに来た理由は話しただろ。 |
Young Man? |
ラーベ
いや、まだ聞いていないぞ。お前はこの蟲とやらを 追ってきたと言っていたが、理由は? |
Raabe |
少年?
話したら、あんたらが誰なのか教えてくれるんだろうな? |
Young Man? |
ラーベ
そのときはお前が誰なのかも聞かせてもらいたいものだがな。 |
Raabe |
少年?
はぁ。わかったよ。とにかくこっちのことを 教えればいいんだろ。俺は……。 |
Young Man? |
少年?
っ! |
Young Man? |
ラーベ
ぐへぇっ! |
Raabe |
シエル
ラーベさんっ! |
Ciel |
少年?
くっ……! |
Young Man? |
少女?
……仕留めそこないましたか。 |
Young Woman? |
ラーベ
ふぅ……死ぬかと思った |
Raabe |
シエル
ラーベさん、死ぬんですか? |
Ciel |
ラーベ
それは内緒だ。 |
Raabe |
ラーベ
ところでなんだ、次の登場人物は日本刀を携えた少女か。 |
Raabe |
シエル
対象の敵対反応を感知しました。 下がってください、レイさん、ラーベさん。 |
Ciel |
少年?
っぶねぇな! おい、サヤ! お前、いきなり斬りかかってくるやつがあるか! |
Young Man? |
サヤ
奇襲をしかけるのに、いきなりでない者がおりますか。 |
Saya |
少年?
なんで奇襲してんだって聞いてんだよ! |
Young Man? |
サヤ
それはもちろん、兄様がなにやら不審な者どもと 対峙しているようでしたので、助太刀にと。 |
Saya |
サヤ
さあ、覚悟なさいませ、不埒者。 我が兄様に仇なす者とあらば容赦はいたしませぬ。 |
Saya |
シエル
対象の戦闘レベルの上昇を確認。 |
Ciel |
少年?
は? ちょっ、おい、やめろ、サヤ! |
Young Man? |
サヤ
成敗! |
Saya |
サヤ
はぁぁぁっ! |
Saya |
シエル
迎撃態勢。 |
Ciel |
少年?
この……やめろって言ってんだろ! |
Young Man? |
サヤ
兄様。なぜ邪魔するのです。 |
Saya |
少年?
するわボケ! いいから刀を納めろ! そっちも。妹の無礼は詫びるが、一旦武器を引っ込めてくれ。 |
Young Man? |
シエル
……どうしますか? |
Ciel |
1: シエル、戦闘解除 |
1: |
シエル
了解しました。 |
Ciel |
少年?
悪いな。ありがとう。 |
Young Man? |
サヤ
兄様。無警戒が過ぎます。彼奴等が蟲の関係者であったなら、 どうするおつもりですか。 |
Saya
Dear brother...this is only natural if they're related to the bugs. |
少年?
その場合でも、問答無用で斬り殺されたら困るんだよ。 つーか、いつまで俺の首に刀突き付けてんだ、殺す気か。 |
Young Man?
Even if they were, it doesn't mean you should kill them on sight. And are you gonna stop holding your sword to my neck anytime soon? You trying to kill me or something? |
サヤ
お許しいただけるのでしたら、今すぐにでも。 |
Saya
If you wish, I can do so right now. |
少年?
誰が許すか! |
Young Man?
Who the hell would wish for that! |
サヤ
大きな声を出さなくても、聞こえております。 粗暴な振る舞いはいけませんよ、兄様。 |
Saya |
サヤ
頭に血が上っているのなら、少し掻き出しましょうか? |
Saya |
少年?
この状況でお前に粗暴さ咎められたくねぇんだけど? いいからその刀を近づけるな! しまえ! |
Young Man? |
サヤ
……わかりました。手のかかる兄様ですね。 しまえばよろしいのでしょう。 |
Saya |
第1節 遭遇③/ 1. Encounter - 3
Summary | |
---|---|
素性を明かすナオトとサヤ。ナオトたちは、
蟲を退治しながら、事態解決の方法を探って いた。 |
Saya and Naoto explain themselves: they're trying to exterminate the bugs in the area and are looking for a way to fix their situation. |
少年?
これでやっと話ができる……。ったく、事情もわかんない うちから刃物振り回すのやめろよ。というか殺すな。 |
Young Man? |
サヤ
なにを申します。全ては兄様をお助けしたいと思えばこそ。 |
Saya |
シエル
あのふたりは、兄妹のようですね。 |
Ciel |
ラーベ
そのようだな。それに先程の戦闘……ふたりとも、 ドライブ能力者だ。 |
Raabe |
少年?
ドライブのことも知ってるとなると、いよいよ一般人って 感じじゃねぇな。本当に何者なんだ、あんたら。 |
Young Man?
If you guys know about Drives, then you're definitely not normal people. Who the hell are you guys? |
少年?
……まあいいや。とりあえず先に仕掛けたのはこっちだ。 お詫びに、まずはあんたらの質問に答えるよ。 |
Young Man? |
少年?
俺から聞きたいことがあるんなら、言ってくれ。 嘘は言わねぇ。まぁ勿論知ってる範囲で、だけどな。 |
Young Man? |
ラーベ
そうか。ならまず素性を教えてもらおうか。 お前たちは、何者だ? |
Raabe |
ナオト
俺は黒鉄ナオト。で、こっちは妹の……。 |
Naoto |
サヤ
輝弥サヤと申します。 共に新川浜市内の高校へ通う、普通の高校生でございます。 |
Saya |
シエル
二人はご兄妹なのですね? |
Ciel |
サヤ
はい、この黒鉄ナオトは私の実の兄でございます。 |
Saya |
ナオト
お……素直に話すじゃねぇか。 『実の』って言葉が気になるけどよ……。 |
Naoto |
サヤ
無論です。素性を偽る必要などありますまい。 |
Saya |
サヤ
それに、彼らが敵であったとき、 名も知らぬ者に殺されるのは不憫ですから。 |
Saya |
1: 色々と物騒な発言があったような…… |
1: |
シエル
同感です。 |
Ciel |
ラーベ
……輝弥……と、黒鉄? |
Raabe |
サヤ
はい。姓が違うのは、兄の自主的な行為によるものです。 兄は輝弥の名を嫌い、母方の姓を名乗っておりますので。 |
Saya |
ナオト
……輝弥の名前なんて、名乗りたくねぇからな。 |
Naoto |
サヤ
またそのようなことを。 古くから伝わる私達の大切な『銘』ですよ。 |
Saya |
ナオト
お前にとってはそうだろうけど、俺には……。 いや、いいや、家の話は関係ねぇだろ。 |
Naoto |
ナオト
他の話にしてくれ。 |
Naoto |
シエル
では、先ほどの蟲と呼ばれる生物と、どのような関りが あるのか教えてください。 |
Ciel |
シエル
ナオトさんは、蟲を追いかけていたと言っていました。 追う目的はなんですか? |
Ciel |
ナオト
倒すため。駆除って言ったほうが早いか。 そのために夜の街をあちこち歩き回ってるんだよ。 |
Naoto |
サヤ
この生物は人を襲います。 |
Saya |
サヤ
襲われた者は意識を失い、そのうちの幾人かは体を蟲に 乗っ取られて傀儡のようにうろつく有様。 |
Saya |
サヤ
幸い、私と兄様には荒事の心得がありましたので。 |
Saya |
サヤ
危険な生物が跋扈していると知りながら、 なにもせずにいるのは、いささか道理に反しましょう。 |
Saya |
シエル
道理によって、蟲を退治しているのですか? |
Ciel |
サヤ
はい。 |
Saya |
ナオト
まあ……それだけってわけじゃねぇんだけどさ。 |
Naoto |
シエル
他にはどんな理由があるのですか? |
Ciel |
サヤ
調べています。この蟲が発生した原因や、根絶するための方法を。 このまま野放しにしていれば、被害は増えるばかりですから。 |
Saya |
サヤ
被害を受けた人の治療法や、解決法も…… あるのならば知りたいと思っております。 |
Saya |
ナオト
ただ、正直何匹倒しても、それらしい情報なんて なんも見つけられてないんだ。 |
Naoto |
ナオト
だからお前たちが蟲について何か情報を持ってるんなら、 それを教えてもらいたいと思ってる。 |
Naoto |
ナオト
……こんな感じだ。こっちのことはほとんど話した。 そっちの名前くらいは教えてくれよ。 |
Naoto |
ラーベ
……そうだな。まず、こいつはシエル=サルファー。 こっちがレイだ。 |
Raabe |
シエル
よろしくお願いします。 |
Ciel |
ラーベ
そしてこの愛らしい丸いフォルムが魅力的な私は、 ラーベ、もしくはラーベちゃんと呼べ。 |
Raabe |
サヤ
ラーベさん、ですか。口をきくだけでも奇妙と 思っておりましたが、名前もあるのですね。 |
Saya |
ナオト
その前にどうやって浮いてるのかすげー気になるぞ。 |
Naoto |
ラーベ
ふむ。お前たちの興味について答えてやりたいところだが、 ちょっと待ってろ。 |
Raabe |
ラーベ
……おい、レイ、シエル。 カガミとしての名前は、ここでは絶対に口にするなよ。 |
Raabe |
1: なんでですか? |
1: |
ラーベ
なんでもだ。ややこしくしたくなければ黙ってろ。 |
Raabe |
ラーベ
それを言うなと言ってるんだ……! |
Raabe |
シエル
口外しない件、了解しました。 |
Ciel |
ラーベ
よし、シエルはいい子だ。 |
Raabe |
ナオト
おい、なにこそこそしてんだ? |
Naoto |
ラーベ
いや、なんでもない、こっちの話だ。気にするな。 |
Raabe |
ラーベ
それより、蟲の手がかりを求めているという話だが…… 生憎だが、力になれるような情報を私たちは持っていない。 |
Raabe |
シエル
はい。私達がこの街に到着したのはつい先ほどです。 蟲の存在も、先ほど初めて知りました。 |
Ciel |
ナオト
じゃあなにか? なんにも知らないで、こんなところに 迷い込んで、偶然蟲に襲われたってことか? |
Naoto |
シエル
その通りです。 |
Ciel |
ナオト
マジかよ。迂闊っつーか、間抜けっつーか……。 |
Naoto |
シエル
そんなにここは特徴的な場所なのですか? |
Ciel |
サヤ
この通りは繁華街からも離れており、 住宅街へも通じておりません。 |
Saya |
サヤ
治安の悪さも届かない、暗く陰気な ドブ臭い闇の吹き溜まり。ですので……。 |
Saya |
サヤ
連中が集まりやすいのです。 ……このように。 |
Saya |
シエル
! また現れました。 先程と同じく、蟲と呼ばれる敵性生物のようです。 |
Ciel |
サヤ
下がってください。私が……。 |
Saya |
ナオト
いや、俺がやるよ。サヤはもう休んでろ。 |
Naoto |
サヤ
なにをおっしゃいます。兄様こそ、ご無理をなさらず。 右手の調子がおかしいままなのでしょう。 |
Saya |
ナオト
だからって、お前に任せてのうのうとしてられるかよ。 |
Naoto |
ラーベ
よし、ならお前たち兄妹に任せた。 |
Raabe |
ナオト
お前らも手伝えよ! |
Naoto |
シエル
レイさん、どうしますか? |
Ciel |
1: もちろん |
1: |
シエル
了解しました。加勢します。 |
Ciel |
サヤ
獲物の取り合いですね。 勝負ですよ兄様。 |
Saya |
ナオト
勝負とかじゃねぇだろ……。 |
Naoto |
シエル
戦闘行動を開始します。 レイさん、物陰などに注意してください。 |
Ciel |
第1節 遭遇④/ 1. Encounter - 4
Summary | |
---|---|
ナオトは御剣機関と良好な関係ではないよう
だが、ある事情を解決するため、シエルたち を信用する選択をする。 |
Naoto doesn't seem to have a very good relationship with the Mitsurugi Agency, but Ciel, Rei, and Raabe decide to trust them so they can obtain information. |
サヤ
お見事です。 |
Saya |
シエル
サヤさんとナオトさんこそ、お疲れ様です。 |
Ciel |
ナオト
……なんか今回は、調子よかったな。 いつもより体が軽かった気がしたぞ。 |
Naoto |
サヤ
まあ。ふしだらな。 |
Saya |
サヤ
{{ruby|若い女人|おのこがいるからといって、そのように浮かれるなど。 兄様も、男の子ですのね。 |
Saya |
ナオト
妙な言い方やめてもらっていいですかね、サヤさん。 |
Naoto |
サヤ
誤魔化す必要などありませんよ。仕方のないこと。 でも……そういうものは、胸の内に秘めてこそですよ。 |
Saya |
ナオト
だからそういうんじゃねぇって言ってんだよ! |
Naoto |
サヤ
さて、いつまでもここにいては、 また奴等がどこからか這い出してくるやもしれませぬ。 |
Saya |
ラーベ
そうだな。雑魚をいくら倒してもこれ以上の情報を望めないなら、 話の続きは場所を変えようか。 |
Raabe |
ナオト
無視しないで!? |
Naoto |
ナオト
人気もないし、ここでいいか。ベンチもあるし。 |
Naoto |
サヤ
まぁ兄様…… |
Saya |
ナオト
それはもういいから。 |
Naoto |
ナオト
とにかく、もうちょっとだけあんたらのこと聞かせてくれ。 さっき、新川浜にはきたばっかりって言ってたけど…… |
Naoto |
ナオト
新川浜に来た目的ってのが、 あんたらが言ってた『調査』ってやつなのか? |
Naoto |
シエル
はい、そうです。 |
Ciel |
ラーベ
……この土地に、奇妙な現象が起きていると聞いてな。 その調査に訪れたところだ。 |
Raabe |
サヤ
奇妙な現象……、ですか。 |
Saya |
ラーベ
例えば、あの蟲だ。あれは以前からこの辺りに 生息していたものではないんだろう? |
Raabe |
ナオト
あんなのがウロウロしててたまるかよ。 1週間くらい前からだよ……突然現れ出したのは。 |
Naoto |
ナオト
……え? あれ、そういうことも知らずに調査に来たのか? |
Naoto |
ラーベ
そういう情報を収集するための、調査だ。 なにごとにも最初の段階というものはあるだろう。 |
Raabe |
ナオト
ああ、それもそうか。でもなんでそんな調査してんだ? 誰かから頼まれたとかか? |
Naoto |
ラーベ
それが、我々の仕事だからだ。 |
Raabe |
ナオト
蟲の調査が? |
Naoto |
ラーベ
異常な現象の調査が、だ。そういう機関の所属でね。 ……『御剣機関』というんだが、聞いたことはないか? |
Raabe |
ナオト
『御剣機関』だと!? |
Naoto |
ラーベ
おや。どうやら知ってるみたいだな。 |
Raabe |
サヤ
…………。 |
Saya |
ラーベ
そしてどうやら、良好な関係ではないらしい。 |
Raabe |
サヤ
御剣機関。化け物退治を謳う連中ですよね。珍妙な傭兵などを 雇って、この辺りをうろつかせている不穏な輩……。 |
Saya
The Mitsurugi Agency. Extolling monster extermination, hiring strange mercenaries and slinking around the region, harbingers of bad luck... |
サヤ
ええ、良好でない関係がございます。主に、兄様との間で。 |
Saya |
サヤ
ですので事と次第によっては、私は再び刀を抜く 必要があります……。 |
Saya |
ラーベ
待て待て。落ち着け。 |
Raabe |
ラーベ
確かに化け物退治も業務のひとつだ。必要なら駆除もする。 今回の蟲に関してもそういう部門に属する内容だろう。 |
Raabe |
ラーベ
だが御剣機関と一言に言っても、その内容は多岐にわたるし、 部署も山ほどある。 |
Raabe |
ラーベ
お前たちと関わりのある御剣機関と我々とは、 別物だと考えてもらいたい。 |
Raabe |
サヤ
それを鵜呑みにするのは、いささか難しゅうございます。 |
Saya |
ラーベ
なにしろ訳ありの組織だからな。機密事項が多く、 余程の事じゃない限り、部署間での情報共有は無きに等しい。 |
Raabe |
ラーベ
現に私たちは、お前たちのことを知らなかった。 |
Raabe |
サヤ
……『あれ』を余程では無いと? |
Saya |
ラーベ
『あれ』? |
Raabe |
ナオト
サヤ、もういいよ。 確かにこいつらは俺の知ってる『御剣機関』とはだいぶ違う。 |
Naoto |
ナオト
とりあえずは信用しとこうぜ。 |
Naoto |
ナオト
だからよ、あんた等が本当に御剣機関の人間だっていうんなら、 知恵を貸してもらいたいことがある。 |
Naoto |
サヤ
兄様、まさかあのことを……? |
Saya |
ナオト
……ああ。このまま俺たちが闇雲に蟲退治してたって、 事態が進展するとは思えないだろ。 |
Naoto |
ナオト
こいつらは、少なくとも俺たちよりは知識があるはずだ。 なにか……取っ掛かりくらいは、わかるかもしれねぇ。 |
Naoto |
1: なにか力になれる? |
1: |
ナオト
……どうせ話すなら、直接見てもらったほうが早いかもな。 案内するから、ついてこいよ。そこで詳しいことも話す。 |
Naoto |
第2節 異変①/ 2. Abnormality - 1
Summary | |
---|---|
ナオトに導かれた先には、ラケルという昏睡
状態の少女がいた。彼女を目覚めさせるため、 ナオトはシエルたちに協力を申し出る。 |
Naoto brings them before Raquel, a girl stuck in a deep slumber. He asks them to help him wake her up. |
ナオト
こいつの名前はラケル。 |
Naoto |
ナオト
突然目を覚まさなくなってから、1週間たった。 呼んでも揺すっても反応なし。身動きひとつしない。 |
Naoto |
シエル
1週間、飲まず食わずということですか? とてもそうは見えませんが……。 |
Ciel
1 week without eating or sleeping? That's hard to believe when she doesn't look like it at all. |
ナオト
ああ、まあ、そこんところはちょっとこいつ自身に 原因があると思うんだけど……。 |
Naoto
Oh, well, that's more something due to Raquel herself... |
ナオト
とにかく、なんの前触れもなく突然、 こいつは眠ったままになった。 |
Naoto |
サヤ
そして、それと時を同じくして、 新川浜にはあの蟲が発生するようになりました。 |
Saya |
シエル
彼女が昏睡状態になったことと、 蟲の発生はなにか関連があるのですか? |
Ciel |
ナオト
わかんねぇ。 |
Naoto |
ナオト
でも、あんまりにもタイミングが近かったからな。 俺たちは、なにか関係があるんじゃないかって考えてる。 |
Naoto |
ナオト
だからとりあえず蟲のことを調べようと思って、 夜な夜なああいう場所を回ったりしてるんだけど……。 |
Naoto |
ラーベ
直接関係があるかどうかもわからないで、 蟲の調査なんかしてるのか? |
Raabe |
ナオト
そうだよ。他になんにも取っ掛かりがなかったんだ。 そんくらい意味不明な昏睡なんだよ。 |
Naoto |
シエル
医療機関での診察は受けたのですか? |
Ciel |
ナオト
あ、いや……ちょっと事情があってな。病院には行ってない。 |
Naoto |
シエル
なぜですか? |
Ciel |
ナオト
それは……。 |
Naoto |
ラーベ
人間用の病院に連れて行っても、意味はないだろうからな。 |
Raabe |
ナオト
なっ……。 |
Naoto |
ラーベ
だろう? でもお前は、彼女がどういう状態なのか、 知りたいとも思っている。 |
Raabe |
ラーベ
私ならわかるかもしれないぞ? なんなら詳しく調べてやろうか。 |
Raabe |
ナオト
……調べるって、なにするんだよ? |
Naoto |
ラーベ
なに、軽くスキャンするだけだ。レントゲンみたいなもんだな。 痛みもないし、ほんの数十秒で結果もわかる。 |
Raabe |
ナオト
…………。 |
Naoto |
サヤ
兄様、ここまでお話したのです。お願いしてみてはいかがですか。 なにか……手がかりがあるかもしれません。 |
Saya |
ナオト
……ラケルに危害を加えるようなことだけは、絶対にするなよ。 |
Naoto |
ラーベ
加えてどうする。 安心しろ、いやらしいこともしないと誓うぞ? |
Raabe |
ナオト
あ……あ、当たり前だろ! なに言ってんだあんた! |
Naoto |
ナオト
……ったく。はぁ。わかったよ、頼む。 ラケルの状況が知りたいのは、間違いねぇんだし。 |
Naoto |
ラーベ
すぐにすむ。そう身構えるな。 |
Raabe |
ラーベ
その間……そうだな、この子達に茶でも用意してくれ。 もっとも私は飲めないが。 |
Raabe |
ナオト
はいはい。紅茶でいいな? |
Naoto |
シエル
お気遣いいただき、ありがとうございます。 |
Ciel |
サヤ
兄様。私は緑茶をお願いします。紅茶は好みませんので。 |
Saya |
ナオト
わかってるよ。……ったく、美味しいのに。 |
Naoto |
ナオト
お待たせ。紅茶、ここ置くぞ。 |
Naoto |
シエル
ありがとうございます。いただきます。 |
Ciel |
サヤ
熱いですから、舌など焼けただれませんよう 気を付けてくださいね。 |
Saya |
ナオト
普通に火傷って言えよ……。 |
Naoto |
シエル
っ! こ、これは……。 |
Ciel |
ナオト
な、なんだ? 熱かったか? 大丈夫か? |
Naoto |
1: 美味しい! |
1: |
ナオト
なんだよ、驚かせやがって。 ……美味いか、そりゃよかった。 |
Naoto |
ナオト
おっ。わかるか? |
Naoto |
ナオト
セイロンのディンブラっていう紅茶だ。ブレンドティーによく 使われてるんだけど、それだけでも悪くないだろ。 |
Naoto |
ナオト
ストレートでもミルクでも、どんな飲み方でも合うんだ。 淹れ方は……。 |
Naoto |
サヤ
兄様。 |
Saya |
ナオト
あ? ……ああ、はは、悪ぃ、悪ぃ。 |
Naoto |
ナオト
紅茶のことになるとつい、な。 気にすんな、好きに飲んで。 |
Naoto |
シエル
はい。 |
Ciel |
シエル
……これが、紅茶……。 フガクで飲んだものとは、まるで違います。 |
Ciel |
シエル
とても豊かな香りと味がします。これが本物の紅茶であるならば、 私が飲んでいたあの紅茶はまるで茶色い水です。 |
Ciel |
ナオト
茶色い水って……そんなにまずい紅茶なのか? |
Naoto |
シエル
まずいという言葉の基準がわかりかねますが、 これが正解の紅茶であるのならば、フガクのものは不正解です。 |
Ciel |
ラーベ
おいこらシエル。ばっさり言うんじゃない。 アレでもそれなりの茶ではあるんだぞ。 |
Raabe |
ラーベ
しかし、シエルがそうまで言うほど美味いのか……。 くそっ、私も飲みたい。飲食機能の搭載を要望するべきか……。 |
Raabe |
サヤ
かようなことよりも、いかがでしたか? 計測……とやらは終わったのでしょうか? |
Saya |
ラーベ
おっと、そうだった。 ああ、終わったとも。ある意味ばっちりだ。 |
Raabe |
ナオト
ある意味? ……なんかわかったのか? |
Naoto |
ラーベ
ふふん、まあな。まず現状についてだが、 結論から言うと、彼女は現在『生きて』いない。 |
Raabe |
ナオト
…………は? |
Naoto |
シエル
生きていない、ということは…… 死んでいるということですか? |
Ciel |
ナオト
んな馬鹿な! そんなはずはねぇ! こいつが『死んで』んなら、俺も『死んでる』はずだ! |
Naoto |
ラーベ
なるほど。ライフリンクについては知っているみたいだな。 |
Raabe
I see now. So you know about Life Links. |
サヤ
ライフ……リンク? |
Saya
Life... Link? |
ラーベ
簡単に言うと、命が繋がっている状態のことだ。 命の共有、とも言えるな。 |
Raabe
Put simply, it's a state where two lives are connected. You could also say it's a sharing of life. |
ラーベ
ふたり合わせて、ひとつの命だ。 |
Raabe
Putting two together to form one life. |
ラーベ
片方が生きてさえいれば、もう片方は決して死なない。 ふたり同時に死なない限り、な。 |
Raabe
As long as one of the two is still living, the other will absolutely not die. As long as they don't die at the same time, at least. |
ラーベ
黒鉄ナオトとこのラケルという少女は、 そういう特殊な繋がりを持っている。 |
Raabe |
ナオト
ちょっと調べただけで、そんなことまでわかっちまうのか。 すごいな……。 |
Naoto |
ラーベ
少しはこちらの能力を信用したか? |
Raabe |
ラーベ
当人が把握しているのなら、話は早い。 ならば改めて断言しよう。彼女は『生きて』いない。 |
Raabe
If you've grasped this, then this'll go quicker. Let's start over again: she's not "alive" right now. |
ラーベ
だが『死んで』もいない。 |
Raabe
But she's not "dead" either. |
サヤ
……どういうことでしょうか? |
Saya
Which means? |
ラーベ
簡単な言い方をすると『魂』と『肉体』の接続が 切れている状態だ。 |
Raabe
She's in a state where her "soul" has been split from her "body." |
ラーベ
『魂』と繋がっていない肉体、つまり『器』は 物も同然だ。だから『生きて』いるとは言えない。 |
Raabe
It goes without saying that a body without a "soul" connected to it, in other words, the "vessel," is just an object. So you can't say it's "alive." |
ラーベ
だが『魂』そのものが消滅したわけではない。 どこかに必ず存在はしている。なぜなら……。 |
Raabe
But that's not to say the "soul" has been erased. It must be hidden somewhere, because... |
ナオト
ライフリンクで繋がってる俺が生きているから……か。 |
Naoto
Because I'm connected to it via a Life Link, and I'm still alive... right? |
ラーベ
そうだ。 |
Raabe
That's right. |
サヤ
それで、生きてはいないけれど、死んでもいない…… なるほど。 |
Saya |
ラーベ
ただ、魂と器が切り離された状態で居続けるというのは、 かなり特殊な状態だ。通常の人間では、まずありえない。 |
Raabe
However, to be in a condition where a soul is split from the body for an extended amount of time is very peculiar. Among normal humans it'd be nonexistent. |
ラーベ
そこでひとつ確認したいんだが。 彼女は……何者だ? |
Raabe
So there's something I'd like to confirm regarding that. This girl...what is she, exactly? |
ナオト
……それも今のスキャンってやつで、わかったのか? |
Naoto
...You couldn't tell based on your scan? |
ラーベ
一目見たときから概ねな。だがスキャンしても…… 確信は得ていない。だからこそ教えろ、彼女は何者だ? |
Raabe
I only looked over her briefly. And the scan itself...well, it didn't turn up anything concrete. So please tell us, what is she? |
ナオト
……ラケルは……吸血鬼だ。 |
Naoto
...Raquel is...a vampire. |
ラーベ
吸血鬼か!! やっぱり! |
Raabe
A vampire!! I knew it!! |
ラーベ
いやぁ〜そうかそうかぁ……吸血鬼かぁ……。 |
Raabe
Ahh, I see. I see, so a vampire, huh... |
シエル
吸血鬼……? 空想上の存在だと思っていましたが…… 実在するのですね。やはり、血液を吸引するのですか? |
Ciel
A vampire...? I thought they were just figments of imagination, but do they really exist? Do they really drink blood? |
ラーベ
うむ……人の生き血をすすらねば生きていけなかったり、 日光にあたると灰になって消滅したり…… |
Raabe
Indeed...creatures that must drink human blood to live, and will crumble to ashes if exposed to sunlight... |
ラーベ
……ということはあまりないな。 |
Raabe
Do not exist. |
シエル
ないのですか? |
Ciel
So they don't? |
ラーベ
その手の伝承は虚実入り混じっているからなぁ。 血も吸わないわけではないし……。 |
Raabe
Those stories are all mixtures of fact and fiction. It's not as though they don't drink blood... |
ラーベ
だが、本などに書かれている吸血鬼とはちょっと違うぞ。 『実際』の吸血鬼は人が生み出した、最強にして最恐の生物だ。 |
Raabe
But they're different from the vampires written about in books. "Actual" vampires were born from humans, and they're fearsome and strong creatures. |
ラーベ
しかし……なるほどなるほど、吸血鬼か。 それならこの特殊な状況を保ち続けているのにも、納得できる。 |
Raabe
But then... I see, I see. So she's a vampire. That's how she was able to maintain this abnormal state for so long. |
ラーベ
だけど、そうか……吸血鬼か……。 |
Raabe
But, well... a vampire, huh. |
ナオト
なんだよなんだよ。なにか問題あるのか? |
Naoto
You got something you wanna ask? |
ラーベ
いや。ない。全く。むしろ逆。 本物の吸血鬼のデータを取れる機会などそうそうないから!! |
Raabe
No. Nope. Not at all. In fact, it's the opposite. It's very rare one gets the opportunity to extract data from a real vampire!! |
ナオト
お前、なにちょっとテンション上がってんだよ……。 |
Naoto
So you were just leading me on... |
ラーベ
そうそう、念のため確認しておきたい。 彼女の名前は……ラケルといったな。 |
Raabe
Oh, right, I wanted to confirm something else too. Her name is... Raquel, right? |
ラーベ
ラケル、その続きは? ファミリーネームのようなものを聞いていないか? |
Raabe
Raquel. And then, what comes after that? Have you ever heard something like a family name? |
ナオト
『アルカード』? ラケル=アルカードって、 最初に名乗ってたけど……。 |
Naoto
"Alucard?" Raquel Alucard, or at least that's what she introduced herself to me as. |
ラーベ
アルカード! まさか! いや、やはりか! |
Raabe
Alucard! No way! No, so she really is! |
1: やはりって? |
1: "So she really is?" |
ラーベ
アルカードといえば、吸血鬼の中でも 最強の一族の名だ。その存在はもはや伝説。 |
Raabe
The Alucard clan is, even among vampires, recognized as the strongest. Their existence is almost a legend itself. |
ラーベ
むしろその他の全ての吸血鬼が、 アルカードから始まったと言っても過言ではない! |
Raabe
It wouldn't be an exaggeration to say all of the other vampires in existence first began with the Alucards! |
ラーベ
その伝説が今、私の目の前に…… これは……研究材料としては垂涎ものだな……。 |
Raabe
And that legend is now right before my very eyes... This is...a research opportunity that can't be missed... |
ナオト
あのな。ラケルのことを調べてくれるなら助かるけど、 それ以上、あんま勝手なことはしてくれるなよ。 |
Naoto
Hey, so. It might help if you look into Raquel, but don't just do whatever you want. |
ナオト
相手は意識もないんだからな。 |
Naoto
She's not exactly conscious. |
ラーベ
わ……わかっているとも。失礼だな、君。 本人の許可もなく、勝手に器を弄り回すなどするものか。 |
Raabe
O...Of course I'm aware of that. That's pretty rude of you. What kind of person would mess with someone's vessel without the person's consent? |
ラーベ
だが…… そうか、これがアルカードの吸血鬼の『器』か……。 |
Raabe
But still.... So this is the "vessel" of a vampire of the Alucards.... |
ナオト
お、おい。本当に信用していいんだろうな。 |
Naoto
Uh, hey. Can we really trust you? |
ラーベ
当然だ。 |
Raabe
Of course. |
ラーベ
だが万が一、お前にもしものことがあればだ…… そのときは、この器をもらってもいいか? いいだろう? |
Raabe
But in the one-in-a-million chance something happens to you....it'll be fine if we take this vessel with us, right? Right? |
ナオト
いいわけあるか! 俺のもんじゃねぇよ! やっぱりお前、信用できねぇ……。 |
Naoto
As if! This isn't just about me! I really can't trust you! |
シエル
ラーベさん、本来の目的を忘れています。 |
Ciel
Raabe, you've forgotten our original goal. |
ラーベ
おっと、そうだった。 |
Raabe
Oh, you're right. |
ナオト
はぁ。調べたいことがあるなら、ラケルの目が覚めたときに 本人に聞けよ。 |
Naoto
Sigh. If there's anything you want to look into, ask Raquel after she wakes up. |
ナオト
ラケルがOK出すなら、俺は文句ねぇし。 血圧でもなんでも計ればいいだろ。 |
Naoto
If Raquel gives the OK, I won't complain. Blood pressure and stuff just gotta be measured, right? |
ラーベ
そうか! うんうん、そうだな。本人に聞けばいい。 よし、俄然やる気が出てきた。 |
Raabe
That's right! Yes, yes, that's very true. We just need to ask her ourselves. Alright, now I'm motivated. |
シエル
そういうのを職権乱用と言うのではないでしょうか? |
Ciel |
ラーベ
馬鹿者。公私混同だ。 |
Raabe |
サヤ
どちらもあまり、 褒められたものではありませんね……。 |
Saya |
ラーベ
さて。差し当たっての問題は、 器と魂の遮断がなぜ起こったのか、だ。 |
Raabe |
ナオト
スルーかよ。 |
Naoto |
ラーベ
彼女が昏睡に至った原因は不明。 ただし同時期に蟲の発生が始まった。これは確かか? |
Raabe |
ナオト
全く同じ瞬間に起きたとまでは、断言できねぇよ。 でも……偶然とは思えないほど、同じタイミングだったと思う。 |
Naoto |
サヤ
少なくとも私たちがふたつの現象を把握したのは、 とても近しい時でした。 |
Saya |
ラーベ
ふーむ。ラケル嬢が昏睡したから蟲が発生したのか、 蟲が発生したからラケル嬢が昏睡したのか……。 |
Raabe |
ラーベ
あるいはどちらも観測者の望みから発生した事象なのか…… それぞれの因果関係が気になるところだな。 |
Raabe |
ナオト
……ちょっと待て、 今なんかすげえ重要なこと言わなかったか? |
Naoto |
ラーベ
うん? |
Raabe |
ナオト
誰かの望みから発生……とか言ったよな? |
Naoto |
ナオト
ラケルが眠ったままなのは、誰かが仕組んだからなのか? |
Naoto |
ラーベ
意図して行ったかどうかはさておき、 まあ、そういう因果関係がある可能性は大きい。 |
Raabe |
ナオト
なんだよそれ! どうやって……。 いや、そもそも誰がそんなこと! |
Naoto |
ラーベ
誰なのかはわかっていない。 その『誰か』を私たちは探しているんだ。 |
Raabe |
サヤ
先ほど、新川浜に異常な現象が発生している……と おっしゃっていましたね。それを調べるのがお仕事だと。 |
Saya |
サヤ
その人探しも、お仕事の一環なのですか? |
Saya |
ラーベ
ああ。その人物に行き当たれば、 新川浜に起きている異常現象は解決するだろう。 |
Raabe |
ナオト
じゃあ、ラケルのことも!? |
Naoto |
シエル
目を覚ますのではないでしょうか。 |
Ciel |
ナオト
そっか……。 |
Naoto |
ナオト
あんたらが話してること、たぶん俺、 半分もわかってないと思うんだけどさ。 |
Naoto |
ナオト
それでも、あんたらがやろうとしてることで、ラケルが 目を覚ますかもしれないんなら……。 |
Naoto |
ナオト
その仕事ってやつ、俺にも手伝わせてくれないか。 |
Naoto |
サヤ
兄様……。 |
Saya |
ナオト
正直言って、ラケルのためになにをしたらいいのか、 全然わかんねぇんだ。 |
Naoto |
ナオト
蟲について調べようとしてたのだって、 それしかやりようがなかったからだ。 |
Naoto |
ナオト
でも、いつか起きるかもって待ってるわけにもいかねぇ。 できることがあるんなら、そうしたいんだ。頼む。 |
Naoto |
サヤ
……私からも、お願いいたします。 |
Saya |
サヤ
あなた方のお話は、突飛で荒唐無稽、 そのうえあやふやで信じるに値しません。 |
Saya |
サヤ
ですがそれでも、私や兄様が困惑しているこの状況に対し、 あなた方は私たちよりずっと詳しいご様子。 |
Saya |
サヤ
どうかその人探し、お手伝いさせてくださいませ。 |
Saya |
シエル
……どうしますか? |
Ciel |
ラーベ
現地での協力者が得られるのは、こちらとしても好都合だ。 だが安全の保障はないぞ。わかってるのか? |
Raabe |
ナオト
わかってるよ。はなから保障してもらおうなんて思ってねぇ。 それに、安全の保障がないのは今も同じだしな。 |
Naoto |
サヤ
己の身くらいは己で守りますゆえ、ご心配なく。 |
Saya |
ラーベ
……しかし、それほど熱心に協力を申し出てくるとは、 ずいぶんこの吸血鬼少女に思い入れがあるんだな。 |
Raabe |
ナオト
ああ。 |
Naoto |
サヤ
それは、もちろん。 |
Saya |
シエル
おふたりとラケルさんは、どのような関係なのですか? |
Ciel |
ナオト
関係か……。まあ、簡単に言うと命の恩人だな。 |
Naoto |
ナオト
こいつと出会ったのは、わりと最近のことなんだよ。 |
Naoto |
ナオト
こいつが変な男に絡まれててさ。それを助けようと思って 割って入ったら……返り討ちにあっちまって。 |
Naoto |
サヤ
兄様が危うく命を落としかけたところを、 ラケルさんに助けていただいたのだそうです。 |
Saya |
サヤ
……私がお側にいれば、そのような不届き者、 一太刀のもとに首を落としてみせたものを……。 |
Saya
Had I been by your side, such rabble would have had their heads cut off with one swing of this sword... |
ナオト
首落としたら殺人だろうが……。 |
Naoto
Beheading them means you'd be a murderer.... |
サヤ
兄様のためとあらば。 |
Saya
All for my brother. |
ナオト
頼んでねぇから! そういうことすんなよ! マジで! |
Naoto
Nobody's asking you to! Don't do it! Seriously! |
ナオト
……とにかく、こっちのことは気にしなくていいから。 手伝わせてくれるってことで、いいんだよな? |
Naoto |
1: もちろん、よろしく |
1: |
ナオト
よし、決まりだな。 それじゃ……とりあえず、今夜、泊まってくか? |
Naoto |
シエル
よろしいのですか? |
Ciel |
サヤ
そうですね。それがいいでしょう。 今から駅に戻って宿を探すのも。お手間でしょうし。 |
Saya |
ナオト
レイはリビング使ってもらって…… シエルは悪いけど、ラケルの隣でもいいか? |
Naoto |
サヤ
まあ。破廉恥な。 |
Saya |
ナオト
ばっ……馬鹿か、違ぇよ! そういう変な意味じゃなくてだな! 今から駅戻って宿探すのも大変だろうが! |
Naoto |
ナオト
もちろん、部屋は分けるから。あー、つっても…… この部屋しかないんだ。ラケルと一緒でもいいか? |
Naoto |
ラーベ
もちろんだとも!!! |
Raabe |
ナオト
お前は駄目だ!!! |
Naoto |
ラーベ
何故だ!!!??? |
Raabe |
シエル
……私は問題ありません。 拠点となる場所もまだ探していなかったので。 |
Ciel
...I have no problem with it. We have yet to scout the region, after all. |
ナオト
あてもなしだったのかよ。無計画だな、あんたらの仕事って。 |
Naoto
So you guys had no plans at all? Your work sure is unstructured. |
ラーベ
柔軟な対応が求められるんでな。 |
Raabe |
シエル
ありがとうございます。 ナオトさんはとてもいい人なのですね。 |
Ciel |
サヤ
おわかりいただけますか。 |
Saya |
ナオト
やめてくれよ、恥ずかしいから。 えーと、寝具はふたりぶんでいいか? |
Naoto |
シエル
はい、問題ありません。 |
Ciel |
サヤ
では私は一度、失礼いたします。 |
Saya |
ナオト
ああ。帰り、気を付けろよ。 |
Naoto |
シエル
え? サヤさんはどちらへ? |
Ciel
Hm? Saya, where are you going? |
サヤ
家です。私は別の家で寝起きしておりますので。 ここは元は、兄様が単身でお住まいの部屋です。 |
Saya
Home, of course. I sleep at a separate house. This was originally my dear brother's single apartment. |
ナオト
今は、ラケルが居候中だけどな。 |
Naoto
Although it's Raquel's now. |
シエル
兄妹なのに、一緒に住んでいるわけではないのですね。 |
Ciel
So even though you're siblings, you don't live in the same house. |
サヤ
はい。だって同じ屋根の下で寝起きなどしていたら、 うっかり殺してしまうかもしれないではないですか。 |
Saya
No, we don't. If I were to live under the same roof as my brother, I might accidentally kill him. |
ナオト
さらっと言うことじゃねーよ、一緒に住んでなくても殺すなよ。 |
Naoto
Don't say that so casually. And don't kill me even if we don't live together, okay? |
サヤ
難しいことをおっしゃらないでください。 |
Saya |
ナオト
どのへんが難しいかなぁ!? |
Naoto |
1: もう遅いのにひとりで平気? |
1: |
サヤ
ご心配なく。表の通りに車を待たせておりますので。 |
Saya |
サヤ
では……ごゆるりと、お過ごしください。 おやすみなさいませ。 |
Saya |
シエル
……丁寧な方です。 |
Ciel |
ナオト
そうか? ……まあ、お育ちがいいからな。物腰は丁寧だよな。 |
Naoto |
ナオト
それより、布団運ぶの手伝ってもらっていいか? |
Naoto |
シエル
はい。了解しました。 |
Ciel |
ナオト
おう。 にしても、マジで今日はなんだか体が軽いな。 |
Naoto |
シエル
そうなんですか? |
Ciel |
ナオト
ああ。なんでかわかんねぇけど、なんとなく。 |
Naoto |
ナオト
あながち、お前らがいるからってのも 間違ってないかもな。はは。 |
Naoto |
第2節 異変②/ 2. Abnormality - 2
Summary | |
---|---|
メイドのEsと共に現われた冥は、シエルた
ちのことは言葉だけでは信用できず、実力を 見せろと迫り、手合わせをすることに。 |
Mei arrives with her maid, Es, but can't trust Ciel and co just from talking to them, so she asks them to fight her. |
1: うわ!? |
1: |
ラーベ
なんだなんだ、一体? |
Raabe |
シエル
一秒間に十八回……すごい勢いです。 ナオトさんを呼んできたほうがいいでしょうか。 |
Ciel |
ナオト
あ〜〜〜〜〜! うるせぇうるせぇ! 起きてます! 起きました! 起きたから!! |
Naoto |
???
あ、本当に起きてる〜。偉い偉い。 |
??? |
ナオト
ひなた……お前、いい加減にしろよ、今日くらい……。 学校も休みなんだしよ……。 |
Naoto |
ひなた
そういうわけにはいかないよ。ナオトちゃんが寝坊して、 お客さんがお腹すかせてたら、かわいそうでしょ。 |
Hinata |
ひなた
あ、ほら。お客さん、もう起きてたみたいだよ。 |
Hinata |
ナオト
お前が起こしたんだろ……。 ふぁっ……あ〜ぁ。 |
Naoto |
ひなた
ナオトちゃんったら、大きなあくび。 |
Hinata |
ひなた
おはようございます。 はじめまして、私、姫鶴ひなたといいます。 |
Hinata |
ひなた
ナオトちゃんとは同じマンションに住んでて、 幼馴染なんです。 |
Hinata |
シエル
シエルです。 こちらはレイさん。 |
Ciel |
1: よろしくお願いします |
1: |
ひなた
こちらこそ、よろしくお願いします。 |
Hinata |
ひなた
いえいえ、こちらこそ、 ナオトちゃんがお世話になってます。 |
Hinata |
ラーベ
姫鶴ひなた、か。 で? さっきのチャイム連打はなんなんだ? |
Raabe |
ひなた
え? わあ、しゃべるロボット? すごーい! それに、かわいい。 |
Hinata |
ラーベ
ふふ……そうだろう、そうだろう。 中々見る目があるな、君。 |
Raabe |
ラーベ
って、そうではなくてだ。 あの騒音はなんの儀式だと聞いてるんだよ。私は。 |
Raabe |
ひなた
あ。うるさくしてごめんなさい。 ナオトちゃん朝が弱いから、毎日ああやって起こしてるの。 |
Hinata |
ひなた
普通の目覚ましだと、 いくつセットしても止めて二度寝しちゃうから。 |
Hinata |
ナオト
……時々、自力で起きれてるだろ。 |
Naoto |
ひなた
時々ね〜。 |
Hinata |
シエル
おふたりは仲がいいんですね。 |
Ciel |
ひなた
ふふ、長い付き合いだから。 |
Hinata |
ひなた
あ、まだだったら、顔洗ってきちゃって。 すぐ朝ごはんの用意するから。 |
Hinata |
シエル
食事まで、お世話になっていいんですか? |
Ciel |
ひなた
もちろん。ナオトちゃんから聞いたよ。 ラケルちゃんのこと、一緒に調べてくれるんでしょ。 |
Hinata |
ひなた
ナオトちゃん、そのことでずっと不安だったみたいだから。 手伝ってくれる人が増えて嬉しいんだ。 |
Hinata |
ひなた
私にできるのはごはんの支度くらいだけど。 朝ごはんしっかり食べて、パワーつけてね。 |
Hinata |
シエル
ありがとうございます。 お言葉に甘えて、お世話になります。 |
Ciel |
1: おなかいっぱい…… |
1: |
シエル
ごちそうさまでした。栄養バランスの整った、 素晴らしい朝食でした。食後に紅茶まで……。 |
Ciel |
ひなた
はぁ〜、やっぱりナオトちゃんの淹れてくれた 紅茶は最高だね。 |
Hinata |
ナオト
いつも作ってくれるお前の食事に比べたら、 大したもんじゃねぇけどな。 |
Naoto |
ひなた
えへへ、ありがとう。ナオトちゃん。 |
Hinata |
ナオト
…………。 |
Naoto |
ひなた
どうかした? ナオトちゃん。 |
Hinata |
ナオト
……いや、なんでもない。 |
Naoto |
ひなた
お客さんかな? はーい。 |
Hinata |
和装の少女
黒鉄! 貴様、また勝手に蟲の駆除に行ったな!? |
Girl in a Kimono |
ナオト
おお、びっくりした。どうしたんだよ急に。 |
Naoto |
和装の少女
意外そうな顔をするな! 私が来ることは目に見えていただろうが! |
Girl in a Kimono |
和装の少女
何度も何度も何度も言ったが、 蟲の件にしゃしゃり出てくるんじゃない! |
Girl in a Kimono |
和装の少女
あれは私が受けた依頼だ! お前が蟲を駆除してしまったら、 私の報酬はどうしてくれるんだ! |
Girl in a Kimono |
サヤ
ちょうど下で会いまして。 せっかくですから、お連れしました。 |
Saya |
???
お邪魔します。 |
??? |
ナオト
エスも一緒か。いらっしゃい。紅茶淹れるよ。 |
Naoto |
Es
はい。いただきます。 |
Es |
和装の少女
紅茶なんぞ飲んでる場合か! 話を聞け! |
Girl in a Kimono |
ナオト
なんだよ、いらないのか? うまいやつだぞ。 |
Naoto |
和装の少女
……もらおう。 |
Girl in a Kimono |
サヤ
私は緑茶でお願いします。 |
Saya |
ナオト
はいはい、わかってるって。座ってろ。 |
Naoto |
ひなた
あ、私、お手伝いするよ。 |
Hinata |
ナオト
ほい。 |
Naoto |
ひなた
リンゴも剝いてきたから、よかったらどうぞ。 |
Hinata |
和装の少女
ああ。いただこう。 |
Girl in a Kimono |
シエル
ナオトさん。こちらの方々はどなたですか? |
Ciel |
ナオト
そうだった、紹介するな。こっちが天ノ矛坂冥。 で、こっちがエス。どっちも……俺の知り合いだ。 |
Naoto |
Es
初めまして。Esと申します。 冥の家でメイドとして置いていただいています。 |
Es |
ラーベ
エス? それに天ノ矛坂ぁ? ……あ。いや。 うん、変わった名前だな。 |
Raabe |
冥
なっ……い、今喋ったの、そのちっこいのか? なんだそれ? |
Mei |
ラーベ
ちっこいのではない。ラーベと呼べ。 |
Raabe |
冥
名前があるのか。そうか……。 ふう〜ん。……どうなってるんだ、これ? |
Mei |
ラーベ
おい、こら、やめるんだ! 勝手にあちこちいじくるな! |
Raabe |
Es
……シエルさんと、レイさん、 ですね。来る途中で、サヤさんからうかがいました。 |
Es |
Es
蟲の調査を手伝ってくださるとか。それから……ラケルさんの 昏睡の解明にも、力を貸してくださると。 |
Es |
シエル
はい。……正確には、我々の蟲の調査に ナオトさんたちがご協力いただくという話でしたが。 |
Ciel |
ナオト
蟲の発生も、ラケルの昏睡も、 それを引き起こす原因になってる奴がいるらしいんだ。 |
Naoto |
ナオト
そいつを見つければ、蟲のこともラケルのことも、 解決するかもしれないんだって。 |
Naoto |
冥
ほう? ずいぶんと突拍子もない話だな。 蟲を放った犯人がいると? |
Mei |
ラーベ
あー……犯人というか、原因となった存在ってところだが。 まあ、呼び名はなんでもいいか。 |
Raabe |
冥
そんな話を信じろと言うのか? 黒鉄や輝弥のような 短絡思考はまるめこめても、私はそうはいかないぞ。 |
Mei |
シエル
ですが、事実です。 |
Ciel |
シエル
私たちはその人物を探しています。そしてその人物の特定が、 新川浜における異常現象の解決に繋がると判断しています。 |
Ciel |
シエル
ナオトさんとサヤさんもまた、この街で発生している異常現象の 解決を目的としています。 |
Ciel |
シエル
目的が一致したため、私達は協力関係を結びました。 ……状況をご理解いただけるでしょうか。 |
Ciel |
冥
利害の一致、ね……。 |
Mei |
冥
…………。 |
Mei |
冥
……蟲の件の解決につながるというのなら、 やぶさかではない。 その犯人探し、こちらで行おう。 |
Mei |
冥
だからお前たちはもう蟲には関わるな。 手を出そうとするんじゃない。 |
Mei |
ラーベ
何故だ? 私たちに関与されて、困ることでもあるのか? |
Raabe |
Es
冥は、あなた方を心配しています。 蟲は危険ですから。 |
Es |
冥
馬鹿者。誰が心配なんぞするものか。 ただ素人にウロチョロされるのが迷惑なだけだ。 |
Mei |
冥
蟲の駆除は、天ノ矛坂が行う。余計な手出しは邪魔だ。 報酬の山分けにも応じんぞ。 |
Mei |
シエル
確かに、蟲の駆除に関しての経験値は低いかもしれませんが、 戦闘に関しては冥さんより高いと保証できます。 |
Ciel
It's true that we may have less experience with the bugs, but I can guarantee our combat ability is higher than yours, Miss Mei. |
冥
はっ、言うじゃないか。とてもそうは見えんが…… そうだというのなら、証拠を見せてもらおうか。 |
Mei
Hah, way to talk big. I really doubt it looking at you, but...you've said it, so let me see what you can do. |
ラーベ
なるほど。『天ノ矛坂』らしい言い分だ。 |
Raabe
I see. Words that fit an "Amanohokosaka." |
冥
お前、天ノ矛坂を知っているのか? |
Mei
You know of the Amanohokosakas? |
冥
……まあいい。外に出ろ。 |
Mei
...Whatever. Outside, now. |
シエル
なぜですか? |
Ciel |
冥
わからんか? 私より上と言うのなら、お前たちの力を 直接見せて、私を納得させてみろということだ。 |
Mei |
冥
……よし。簡易的なものだが、結界を張った。 短時間なら暴れても周囲に被害は出ない。 |
Mei |
冥
心置きなくやるといい。 こちらもそのつもりで相手になる。 |
Mei |
ナオト
お、おい、冥! |
Naoto |
サヤ
兄様。レイさんたちなら、大丈夫でしょう。 |
Saya |
ひなた
ほ、本当に大丈夫なの? 怪我しないようにね……? |
Hinata |
Es
安心してください。準備運動のようなものです。 |
Es |
冥
さあ、行くぞ素人ども。 |
Mei |
シエル
応戦します、レイさん。 |
Ciel |
第2節 異変③/ 2. Abnormality - 3
Summary | |
---|---|
御剣機関から蟲の調査と駆除を依頼されてい
る陰陽師の冥。自身の監督のもと、シエルや ナオトたちの関与を認めると言う。 |
Mei was requested by the Mitsurugi Agency to research and defeat the bugs. They discuss Ciel's group's relationship with Naoto. |
ひなた
すごい……みんな強いんだねぇ。 見ててドキドキしちゃった。 |
Hinata |
Es
冥。もういいでしょう。 |
Es |
冥
ああ。もう十分だ。 それにしても、驚きだな。 |
Mei |
冥
冴えない地味な男と、天然キャラオーラだだ漏れの 萌えっ子にしか見えんが、予想以上の戦闘能力だ。 |
Mei |
冥
冴えない地味な女と、天然キャラオーラだだ漏れの 萌えっ子にしか見えんが、予想以上の戦闘能力だ。 |
Mei |
ラーベ
やはり陰陽術の使い手か……。 |
Raabe |
冥
ん? 何か言ったか丸いの? |
Mei |
ラーベ
丸いの言うな! |
Raabe |
シエル
冥さんの戦闘力、正直驚きました。 申し訳ありません、訂正させてください。 |
Ciel |
シエル
あれは確か『陰陽術』と言う東洋の魔術ですよね? |
Ciel |
冥
ふん。たまたま家が、そういう家系でな。 |
Mei |
ラーベ
あとそっちのエス、えっと確かメイドだっけ? それと合わせて、ふたりともドライブ使いということか……。 |
Raabe |
ラーベ
まぁいい。それで、 我々が素人でないということは証明できたのか? |
Raabe |
冥
その点に関しては、納得してやろう。 |
Mei |
冥
単純な戦闘技能に関しては、 確かに私より上かもしれん……のだからな。 |
Mei |
冥
おい黒鉄、この者たちはいったい何者だ? |
Mei |
サヤ
そのあたりのことは、どうぞ部屋に戻ってから。 そのほうがよろしいですよね、兄様。 |
Saya |
ナオト
ああ。是非そうしてくれ。 |
Naoto |
ナオト
いくら結界があるからって、近所で知り合いが派手に やりあってるなんて、ひやひやする。 |
Naoto |
ひなた
ご近所さんから苦情が来たら、困っちゃうしね。 |
Hinata |
冥
わかった。戻ろう。 黒鉄、新しい紅茶を淹れてくれ。 |
Mei |
ナオト
へーへー。人使いが荒いぜ、まったく。 |
Naoto |
冥
御剣機関!? お前たち、御剣機関の人間か! |
Mei |
ひなた
なあに? そのミツルギ……キカン? って? |
Hinata |
冥
人の存続がどうとかこうとか言っている、怪しい組織だ。 何度か仕事を手伝ったことがある。 |
Mei |
冥
間違っても付き合いなんか持つんじゃないぞ、姫鶴。 |
Mei |
ナオト
仕事? 天ノ矛坂のか? |
Naoto |
冥
天ノ矛坂家というより、私、個人の陰陽師としての仕事だ。 |
Mei |
冥
低級の妖を捜索したり、怪奇現象の情報を集めたり、 そういうものの退治も手伝ってやったりな。 |
Mei |
冥
これがなかなか、いい金になるんだ。 |
Mei |
ナオト
金かよ……。 |
Naoto |
冥
当然だ。 知らないのか? 人の世を守るには金がかかるんだぞ。 |
Mei |
冥
ヒーローが無償で守ってくれるのは、特撮の世界だけだ。 |
Mei |
ナオト
へいへい。そうですか。 |
Naoto |
冥
……しかし御剣機関め、私に蟲の調査と駆除を依頼して おきながら、新手を送り込んでくるとはどういうことだ……。 |
Mei |
冥
そもそも、一言うちに断りがあってもいいだろう。 まったく、軽く見られたものだな……。 |
Mei |
シエル
冥さんは、御剣機関から蟲の駆除を依頼されて いるのですか? |
Ciel |
冥
ああ。……知らないのか? 同じ組織のことだろう? |
Mei |
ラーベ
ハァ……またこの話か。 黒鉄と輝弥にはもう説明したんだが……。 |
Raabe |
冥
つまり……私の依頼相手とは別口で調査に来ている……と? |
Mei |
ラーベ
そういうことだ。 |
Raabe |
Es
……冥。 この方達の言っていることに『嘘』は無いと思われます。 |
Es |
冥
……ふん。お前たちが本当に御剣機関の者だとしたら、 蟲の件についてとやかく言うのは無駄だろうな。 |
Mei |
冥
余計な口を出さず、お前たちの調査を許容する―― |
Mei |
冥
――とは、言えんぞ。 |
Mei |
シエル
なぜでしょうか? |
Ciel |
冥
黒鉄と輝弥だ。 |
Mei |
ナオト
俺たち? |
Naoto |
冥
お前たちがどんな任務にあたっていようと、私には関係ない。 好きにすればいい。 |
Mei |
冥
だがお前たちはそのご大層な任務に、黒鉄や輝弥を 巻き込もうとしている。 |
Mei |
冥
多少戦いの心得があるといっても、こいつらはただの高校生だ。 それを危険に巻き込むのを、黙って見ないふりなどできん。 |
Mei |
ナオト
ちょっと待てよ! 冥、言っておくが、こいつらが 手を引いたって俺はやめねぇぞ! |
Naoto |
サヤ
……兄様がやめぬのなら、 私もやめるわけにはいきませんね。 |
Saya |
冥
ええい、落ち着け。お前ら兄妹が言っても聞かないことは、 ここ数日でよーーーーーくわかっている。 |
Mei |
冥
だから、勝手に動くな。 |
Mei |
冥
蟲と戦うにせよ、その犯人を探すにせよ、 私が監督役として同行する。いいな。 |
Mei |
ナオト
は? カントクヤク? |
Naoto |
シエル
それは……我々やナオトさんたちに、協力してくださるという 意味と解釈できるのですが。 |
Ciel |
冥
協力じゃない、あくまで監督だ。 黒鉄たちが無茶苦茶しないようにな。 |
Mei |
1: 助かります |
1: |
冥
だから勘違いするな。むしろお前たちが私に協力すると思え。 |
Mei |
冥
さっきも言ったが私は御剣機関から蟲の調査と駆除を 依頼されている。そのための情報は、常に共有してもらうぞ。 |
Mei |
ラーベ
結果が同じなら、私は構わないよ。 |
Raabe |
シエル
了解しました。 |
Ciel |
冥
……はぁ。そもそも黒鉄と輝弥に、蟲に関わるなと忠告しに 来たはずだったのに。結果があべこべになってしまった。 |
Mei |
ナオト
いいじゃねぇか、もう。どうせ俺たちはなに言われたって やめたりしないんだしさ。 |
Naoto |
ナオト
とにかくここにいる全員、蟲の発生の原因を突き止めたい、 ってことで。な、目的一致。 |
Naoto |
冥
なにが目的一致だ。調子のいいこと言いおって。 |
Mei |
ひなた
でも、一緒にやってくれるんでしょう? えへへ、冥ちゃん、面倒見いいんだ。 |
Hinata |
冥
渋々だ! 別に面倒見たくて見てるわけじゃないからな! |
Mei |
Es
ところで、冥。蟲の発生の原因についてですが……。 |
Es |
Es
この方達も人為的であると推測しているようですから、 |
Es |
Es
『影』のことは、お話しておいたほうが いいのではないでしょうか。 |
Es |
シエル
影……? 何者ですか? |
Ciel |
Es
先日、蟲を使役しているらしき人影が目撃されたのです。 |
Es |
Es
といっても、具体的な容姿は判然としていません。 『大きな影のようだった』という証言があるのみです。 |
Es |
ラーベ
なるほどな。だから通称『影』か。 |
Raabe |
ナオト
そいつが蟲の親玉なら、そいつを見つければラケルが目を 覚ますかもしれないってことだよな? どこにいるんだよ!? |
Naoto |
冥
そう簡単に見つかれば、我々がとうに始末している。 素性も居場所も、なにもかも今のところ不明だ。 |
Mei |
ひなた
そっかぁ……困ったね。なにか探す方法はないのかな。 |
Hinata |
冥
……新川浜のあちこちに、 探知の陣を張り巡らせてはある。 |
Mei |
冥
消極的手段とわかってはいるが……蟲どもを蹴散らしながら、 親玉が網にかかるのを待つしかない。 |
Mei |
冥
影がどういう場所に出没し、どういう条件下で行動するのか、 現状では情報らしい情報などないんだからな。 |
Mei |
サヤ
となれば……我等がとるべき策はひとつ、ですね。 |
Saya |
ナオト
ああ。蟲を見つけて、片っ端からぶっ潰す。 |
Naoto |
ナオト
噂の『影』が蟲の親玉だったら、 手下を倒されていい気はしねぇだろ。 |
Naoto |
ラーベ
誰かが使役しているのなら、蟲を放っている理由もあるはずだ。 蟲の行動から、その辺りを探ることもできるかもしれないな。 |
Raabe |
シエル
では、私とレイさんは 蟲討伐のお手伝いですね。 |
Ciel |
サヤ
出現場所は、冥さんの陣で感知できます。 とても正確ですよ。 |
Saya |
冥
やっぱり貴様たちか! 私の陣を使っていたのは。 |
Mei |
サヤ
あれも日没後、人目につかない暗い夜に出没します。 |
Saya |
サヤ
場所もまた、人目を避けるような薄暗い場所ばかり。 身を潜め、狙いを定めて、襲いかかるのです。 |
Saya |
ラーベ
なるほど……となると、夜を待つ必要があるか。 |
Raabe |
ナオト
なら、駅の周りを軽く案内するよ。 蟲とやり合うなら、多少土地勘があったほうがいいだろ。 |
Naoto |
シエル
助かります。 地理が把握できたほうが、こちらも動きやすいですから。 |
Ciel |
サヤ
では、決まりですね。 |
Saya |
冥
我々は一度家に戻る。 |
Mei |
冥
お前たちに文句を言うためだけに出てきたからな。 ほとんど着の身着のままなんだ。 |
Mei |
ナオト
文句? |
Naoto |
冥
勝手に自分たちだけで動こうとするなと言っただろがっ! もう忘れたか!? |
Mei |
ナオト
ああ、あー……そうだった、悪い悪い。 |
Naoto |
Es
財布すら持ち合わせておりませんので。一旦、失礼します。 |
Es |
冥
ったく。姫鶴。このバカが自分から火中に飛び込むような真似を しないよう、きつく言っておけ。 |
Mei |
ひなた
ふふふ。はーい。 冥ちゃんもエスちゃんも、帰り、気を付けてね。 |
Hinata |
Es
はい。では……また夜に。 |
Es |
第3節 蠢々①/ 3. Bugs, Bugs - 1
Summary | |
---|---|
ドライブ能力者たちの様子を見るため、蟲退
治に協力するシエルたち。その日はナオトと サヤと組み、蟲憑きの対応に当たる。 |
To see how the Drive wielders are doing, Ciel and company team up with them to exterminate bugs. This time, they join Naoto and Saya and come across a person possessed by a bug. |
蟲憑きを倒し、蟲に寄生された人の安否を確
かめるナオト。彼はドライブ能力に加え、命 の数値がわかる『狩人の眼』を有していた。 |
They defeat the possessed person, and Naoto confirms the person is still alive. In addition to his Drive, he also possesses the "Eye of the Hunter," which lets him see the amount of life a person has in them. |
ラーベ
レイ、シエル。 そろそろ出かける時間だが……あいつはどうした? |
Raabe |
シエル
ナオトさんなら、先ほどひなたさんに呼ばれて彼女の家へ。 すぐに戻ると言っていました。 |
Ciel |
ラーベ
そうか。……なら、今の内に念を押しておくぞ。 |
Raabe |
ラーベ
今夜の蟲退治だが。十分、気を付けておけ。 |
Raabe |
1: 蟲にですか? |
1: |
ラーベ
もちろんそれもだが。 なにより同行するドライブ能力者に、だ。 |
Raabe |
ラーベ
そうだ。わかってきたじゃないか。 |
Raabe |
ラーベ
黒鉄ナオト、輝弥サヤ。それに天ノ矛坂冥と、エス。 今日、蟲退治に同行する者はみんな、ドライブ能力者だ。 |
Raabe |
ラーベ
わかっていると思うが、ドライブ能力者である以上、 彼らは同時にこの世界の観測者候補でもある。 |
Raabe |
ラーベ
いいな、忘れるな。私たちは蟲退治をしに来たんじゃない。 ラケルという少女を助けるために来たのでもない。 |
Raabe |
ラーベ
観測者を特定し、ファントムフィールドを 解放するために来たんだ。 |
Raabe |
シエル
了解です、ラーベさん。 |
Ciel |
ラーベ
よろしい。 |
Raabe |
ラーベ
……しかし、ラケル……か。 あの少女も気になるところだな。 |
Raabe |
シエル
学術的興味のお話ですか? |
Ciel |
ラーベ
それももちろんあるが。アルカード家の吸血鬼となれば、 彼女もおそらくドライブ能力を有しているはず……。 |
Raabe |
シエル
……ラケル=アルカードさんも、観測者である可能性が あるということですか。 |
Ciel |
ラーベ
一応……な。だが……。 |
Raabe |
ナオト
悪い、待たせた! ひなたがあれも持ってけこれも持ってけ ってうるさくてよ……。 |
Naoto |
ナオト
すぐ出るわ。ごめんな。 あー、また冥になんか言われるぞー……。 |
Naoto |
シエル
こちらの準備はできています。行きましょう。 |
Ciel |
冥
遅い! なにやってたんだ、黒鉄! |
Mei |
ナオト
悪い、ちょっと手間取って……。 さすがに全員いるな。 |
Naoto |
サヤ
はい。ちょうど陽も沈みました。 蟲たちも動き出すころでしょう。 |
Saya |
Es
まだ冥の陣に蟲の反応はありません。ですが、今の内に 蟲の好みそうな場所へ移動しておこうと思っています。 |
Es |
ナオト
そうだな。陣と人力の二段構えでいこう。 んで、見つけたら片っ端からぶっ潰して回る。 |
Naoto |
ラーベ
スマートなやり口とは言えないが、今は情報集めの段階だからな。 蟲について分析するためにも、地道な作業から始めよう。 |
Raabe |
シエル
了解。地道に蟲を倒します。 |
Ciel |
Es
蟲の出現率の高い場所をいくつかピックアップしました。 蟲が現れるまでは、その辺りを順に見回ります。 |
Es |
冥
我々がいつもやってる手だ。もう少し法則性なり、目的なりが わかれば、もっと効率よく動けるかもしれないが……。 |
Mei |
冥
黒鉄、輝弥。レイたちも連れていけ。 悪いが、ご丁寧に道案内している暇はないのでな。 |
Mei |
シエル
近辺のマッピングは完了していますので、 私達だけで近隣を探索するには、問題ないと思います。 |
Ciel |
冥
……黒鉄たちだけにしておくのも、気がかりでな。 |
Mei |
冥
短絡思考と無鉄砲の兄妹だ。 どんな無茶をやらかすかわからん。 |
Mei |
ナオト
んだよ、心配しなくても適当にやるって。 |
Naoto |
冥
その適当さが信用ならんと言っているのだ!! |
Mei |
Es
サヤさんは剣の達人ですが、体力面に少々不安があります。 |
Es |
サヤ
…………。 |
Saya |
Es
一方ナオトさんは格闘を得意とされていますが、 このところ右腕に違和感を覚えているそうです。 |
Es |
Es
不測の事態が予想されますので、 互いに戦力を補い合える状況が望ましいでしょう。 |
Es |
ナオト
う……エスにそう言われると…… さすがに突っぱねにくいな……。 |
Naoto |
冥
最初から素直に言うことを聞け、お前は。 エスが相手だと素直だから、また腹が立つ。 |
Mei |
冥
……それに、私はまだお前たちを信用している訳ではない。 |
Mei |
ラーベ
まぁ当然だね。とりあえず同行しようじゃないか。 人数がいれば、状況に応じて戦力を分散させることもできる。 |
Raabe |
冥
じゃあ、私とエスは駅の反対側に行ってくる。 一旦ここでお別れだ。 |
Mei |
1: 気を付けてね |
1: |
Es
はい。 レイさんも。 |
Es |
ナオト
さて、俺たちはこっちだ。 |
Naoto |
シエル
了解です。 |
Ciel |
シエル
質問があります。どうしてナオトさんとサヤさんは、 兄妹であるのに別の家に住んでいるのですか? |
Ciel |
ナオト
あ? あー……まあ、家庭の事情ってやつ。 色々あって、俺が実家に居づらくなっちまってさ。 |
Naoto |
ナオト
そんとき……ひなたが住むところ用意してくれて。 正確には、ひなたの姉ちゃんが、なんだけど。 |
Naoto |
ナオト
それがあのマンションの部屋ってわけ。 |
Naoto |
1: マンションの部屋を!? |
1: |
ナオト
いやいや、もらったんじゃねぇぞ、借りてるだけだよ! つっても……家賃はひなたの姉ちゃん……。 |
Naoto |
ナオト
ユキさんって言うんだけど、出世払いでいいからって 受け取ってくれなくてさ。 |
Naoto |
ナオト
飯もひなたが用意してくれるから…… もう、世話になりっぱなしなんだよな。 |
Naoto |
サヤ
本当に、ひなたさんやお姉様には、頭があがりません。 |
Saya |
ラーベ
ふうむ、マンションのオーナー姉妹ね……。 お前とあのひなたという少女は、幼馴染みと言っていたが。 |
Raabe |
ラーベ
どれくらい昔からの付き合いなんだ? 話の様子では、ずいぶんと親密な仲のようだが? |
Raabe |
ナオト
親密、ってわけじゃねぇよ。 ただまあ、かなり小さいころからの付き合いではあるな。 |
Naoto |
ナオト
ひなたの姉ちゃんと、俺の母親が……知り合いでさ。 だから記憶がないくらい子供のときから、お互いに知ってんだよ。 |
Naoto |
シエル
では、サヤさんも小さなころから? |
Ciel |
サヤ
……そうですね。ですが私は少し前まで、体を悪くしていて 家にこもりきりでしたから、兄ほど深いお付き合いはありません。 |
Saya |
サヤ
でも、そんな私にも良くしてくださる、優しい方です。 |
Saya |
シエル
私も、ひなたさんは優しい人だと思います。 私達にもとてもよくしてくださいます。 |
Ciel |
サヤ
そうでしょう。不思議なくらい。 兄様など、すっかり骨抜きです。 |
Saya |
ナオト
骨抜きとか言うなよ。つか、ひなたも姉ちゃんも、 なんか有無を言わせないって感じのオーラがあるんだよなぁ……。 |
Naoto |
ナオト
だから、遠慮とかさせてくれねぇんだよ。 |
Naoto |
サヤ
ふふ。それは否定はいたしません。 |
Saya |
サヤ
さあ、目的のエリアはこの先です。 暗い道に入りますから、気を付けて……。 |
Saya |
サヤ
……いえ、その前に対処せねばならないものが あるようですね。 |
Saya |
ラーベ
なんだ? 人か? |
Raabe |
ナオト
人は人なんだけど、蟲に憑かれているな……。 |
Naoto |
シエル
蟲に襲われた人の中には、蟲に乗っ取られる者がいると 言っていました。あれがそうですか? |
Ciel |
ナオト
あぁ。どういう原理でそうなってんのかは、知らねぇけど。 |
Naoto |
サヤ
さながらゾンビ映画の一幕のようです。 ……見たことはありませぬが。 |
Saya |
サヤ
私の刀と、絵面としては相性がいいのではないでしょうか? |
Saya |
ナオト
絵面って……なんの話だよ、ったく。 |
Naoto |
蟲憑き
……う……あ……。あああああああああ!! |
Bugs |
ナオト
おっと、こっちに気付きやがった! 来るぞ、気をつけろ! |
Naoto |
サヤ
これは……少々、盛り上がりますね。 |
Saya |
ナオト
いくら蟲に憑りつかれてるからって、元々は人間なんだ。 手加減はしろよ! |
Naoto |
サヤ
…………ハイ。 |
Saya |
ラーベ
いささか信用に欠ける返答だったな。 |
Raabe |
蟲憑き
……ぐ……が……。 |
Bugs |
シエル
対象の戦闘レベル、消失。 全部倒しました。 |
Ciel |
ナオト
よし。いい調子だぜ。 やっぱお前たちと一緒だと、妙に体が軽くていい。 |
Naoto |
1: みんな怪我はない? |
1: |
シエル
はい、私は大丈夫です。 ナオトさんとサヤさんにも、大きな外傷はないようです。 |
Ciel |
シエル
調べてみます。触っても、問題ないでしょうか? |
Ciel |
サヤ
兄様、いかがですか? 蟲憑きたちは? |
Saya |
ナオト
どれどれ……。ああ、まだ生きてる。 少なくとも、すぐに死んじまうような状態じゃなさそうだ。 |
Naoto |
シエル
ナオトさん、見ただけでわかるのですか? |
Ciel |
ナオト
わかるっていうか……見えるんだよ。 そいつがどんくらい『生きてる』か、がな。 |
Naoto |
シエル
生きてるかが……わかる? |
Ciel |
ナオト
『狩人の眼』っていってな。人の……命の数、って言えば いいのかな。そういうのが俺には見えるんだよ。 |
Naoto |
サヤ
兄様。すぐそのようなことを。 |
Saya |
サヤ
その眼は輝弥の家の秘密にして、当主の証。 みだりに人様に話すことではありませんよ。 |
Saya |
ナオト
そうなの? 知らなかったわ。 |
Naoto |
サヤ
白々しい……まったく、困った人です。 |
Saya |
ナオト
だいたい、話したからってどうにかなるもんでもねぇだろ。 それに、俺は輝弥に義理立てするつもりはねぇし。 |
Naoto |
シエル
命の数……。どのように見えるのですか? |
Ciel |
ナオト
頭の上らへんにな、数値みたいなのが見えるんだ。 |
Naoto |
ナオト
数字がでかけりゃ、それだけ元気。 逆にゼロなら、死んでるってこと。 |
Naoto |
シエル
そのような不思議な力があるのですか。 それは、ナオトさんのドライブの能力なのでしょうか。 |
Ciel |
ナオト
いや、これは俺のドライブとは違う。俺のドライブはそもそも、 ラケルを助けたときにくっついて来たようなもんだしな。 |
Naoto |
ナオト
ただ『狩人の眼』は確かに俺が持ってるけど、輝弥家の当主は 俺じゃない。サヤだ。俺はもう、輝弥の家とは関係ない。 |
Naoto |
サヤ
……そのお話は、またいずれ。 今は止めておきましょう、兄様。 |
Saya |
ナオト
……そうだな。 とりあえずこいつら……どうするか。 |
Naoto |
サヤ
天ノ矛坂の家に連絡をしましょう。 冥さんがうまくとりなしてくださるはずです。 |
Saya |
ナオト
まぁ、いつもどおりか。 |
Naoto |
ラーベ
私の見立てでは、蟲は排除されている。 ナオトが言っていた通り、命に別状はないだろう。 |
Raabe |
サヤ
それはなにより。では、手配いたします。 |
Saya |
ナオト
それが終わったら、さっさと移動しよう。 感謝はしてるが、正直、天ノ矛坂と関わりたくねぇ。 |
Naoto |
サヤ
……はぁ。相変わらずですね、兄様は。 |
Saya |
第3節 蠢々②/ 3. Bugs, Bugs - 2
Summary | |
---|---|
無人団地の近くにやって来ると、何匹もの蟲
が一度に現れる。その動きは、まるでシエル たちを狙って現れたかのようだった。 |
Upon arriving near an abandoned apartment complex, several bugs appear all at once. It's almost as if they are targeting the group. |
ナオトは蟲に噛まれ、負傷する。しかしその
傷は、ラケルとのライフリンクで得た『再生 能力』により、一瞬で治癒する。 |
Naoto is bitten by a bug and takes a heavy wound. But due to the "Regeneration" granted him by his Life Link with Raquel, he heals in a flash. |
シエル
かなり荒廃した建物があります。街中からそう離れて いないのに、こういった場所があるのですね。 |
Ciel |
ナオト
ああ、無人団地の近くだからな。 嫌な雰囲気だろ。 |
Naoto |
ラーベ
無人団地? |
Raabe |
ナオト
数年前に事故があってさ。 そのまま閉鎖地区になった団地があるんだよ。 |
Naoto |
ナオト
気味が悪いからって、 近所の人もほとんど引っ越しちまったらしい。 |
Naoto |
シエル
それで、このような廃墟が 撤去されずに残ったのですね。 |
Ciel |
サヤ
はい。 余程のことがなければ、人は近づかぬ負の領域。 |
Saya |
サヤ
でも時々……この薄闇に呼ばれたかのように、 ふらりと人がやってくるのです。 |
Saya |
サヤ
そういう人間を、蟲は襲っているのでしょう。 |
Saya |
1: そういえば、どうして蟲なの? |
1: |
シエル
確かに、一般的な虫類の形状とは違います。 |
Ciel |
サヤ
……そう言われてみれば……そうですね。 |
Saya |
ラーベ
そもそも誰が『蟲』と呼称し始めたんだ? |
Raabe |
ナオト
さあ? いつの間にか定着してたような……。 |
Naoto |
サヤ
私も、最初に使用された場所は知りません。 いつの間にか……そう呼んでおりました。 |
Saya |
サヤ
こそこそと、暗がりを這い回る様などは、 似ていると言えなくもないですが……。 |
Saya |
サヤ
……! 噂をすれば、です。兄様、冥さんの陣に反応が。 |
Saya |
ナオト
お、どこだ!? |
Naoto |
サヤ
すぐ……ええ、すぐ近くです。 向こうの暗がりから……こちらへ向かって。 |
Saya |
シエル
っ! ラーベさん。敵性反応を感知しました。 |
Ciel |
ラーベ
シエルの索敵範囲にも入ったか。ということは……。 |
Raabe |
ラーベ
ほう、陣に引っかかってから姿を見せるまでが、すぐだな。 まるでこっちを目指してきたかのようじゃないか。 |
Raabe |
ナオト
へっ、なんだよ、俺達が獲物だってか? 上等だ! |
Naoto |
サヤ
気を付けてください。 いつものように、1匹や2匹ではありません。 |
Saya |
シエル
路地の反対側からも来ています! |
Ciel |
ナオト
今夜はずいぶん賑やかじゃねぇか。 ほら、かかってこい!! |
Naoto |
蟲
キ、キチキチキチキチキチ! |
Bugs |
1: こっちに来た……! |
1: |
シエル
レイさん! |
Ciel |
ナオト
危ねぇ! |
Naoto |
ナオト
ぐぅっ……! |
Naoto |
シエル
はっ! |
Ciel |
蟲
ギ……! |
Bugs |
シエル
対象の停止を確認。 ……大丈夫ですか、レイさん、ナオトさん。 |
Ciel |
ナオト
っつ……あ、ああ。悪いな、手間かけさせて。 |
Naoto |
ラーベ
噛まれたのか? どれどれ……む、結構深手だな。 ……というかヤバくないかこの傷。 |
Raabe |
ナオト
あぁ、でも気にするな、すぐに……ほら。 |
Naoto |
シエル
あ……ナオトさんの傷が……。 |
Ciel |
1: 傷が治っていく……? |
1: |
ナオト
すごいだろ? ちょっとくらいの傷なら、すぐ治るんだ。 つっても、元々こういう特殊体質だったわけじゃねぇぞ。 |
Naoto |
ナオト
ラケルに命を助けてもらった、って言っただろ。 |
Naoto |
ナオト
あれは『殺されそうになった』ところを 助けられたんじゃなくて…… |
Naoto |
ナオト
『殺された』ところを、助けてもらったんだ。 だから今の俺は、吸血鬼の力で『死なずに』すんでる。 |
Naoto |
シエル
吸血鬼……ということは、血を吸われて、ですか? ではナオトさんも吸血鬼なのでしょうか? |
Ciel |
シエル
吸血鬼に血を吸われた人は、同じく吸血鬼となって 永遠の命を得る、と聞いたことがあります。 |
Ciel |
ナオト
いや、血は吸われたんだろうけど、俺は吸血鬼じゃないよ。 |
Naoto |
ナオト
どうも半端みたいで……ラケルみたいな、吸血鬼としての力は 使えない。 |
Naoto |
ナオト
でもこのドライブと、 滅多なことじゃ死なない体があるってわけだ。 |
Naoto |
ナオト
まあ、ラケルと命を共有してるってことで、 俺は今でもあいつに助けられ続けてるんだけどな……。 |
Naoto |
サヤ
とはいえ、痛みはあるのでしょう? 先ほどのような無茶はなさらないでください、兄様……。 |
Saya |
ナオト
いやぁ、つい咄嗟にな。そう心配すんなって、サヤ。 もう大丈夫だから。ほら。 |
Naoto |
ラーベ
おお、 |
Raabe |
ラーベ
本当にすっかり治っている。……体内でどんな 変化が生じているのか、じっくり調査したいもんだ……。 |
Raabe |
ナオト
おいおい、あんまり物騒なこと言うなよ。 |
Naoto |
ラーベ
わかってるって。機会があればの話だ。 |
Raabe |
ナオト
……機会があっても、できれば遠慮したいから。 |
Naoto |
ラーベ
まあまあ、それはそのとき改めて交渉させてもらうとしてだ。 シエル、周囲の反応はどうだ? |
Raabe |
シエル
はい。敵性反応、索敵範囲にはありません。 |
Ciel |
サヤ
今のところ、冥さんの陣に引っかかっている蟲も いないようです。 |
Saya |
サヤ
……かなりの数でした。 一度にあれだけの蟲を見るのは、初めてです。 |
Saya |
ナオト
ああ。レイたちに ついてきてもらったのは、正解だったな。 |
Naoto |
ナオト
けど話にあった『影』はいない、か。 今夜はハズレだな。 |
Naoto |
ナオト
一旦切り上げるか。 これ以上は、体力的にちょっとキツイ。 |
Naoto |
サヤ
……そうですね。そういたしましょう。 |
Saya |
第3節 蠢々③/ 3. Bugs, Bugs - 3
Summary | |
---|---|
行く先々で現れる蟲に困惑するナオトたち。
ラーベの提案で巡回メンバーを変えても、や はり蟲は狙ったように押し寄せる。 |
The bugs keep coming, and the group continues to fight them off. Even after splitting their members up differently, it becomes obvious that Rei is being targeted. |
蟲には確実に狙いがあるようだった。それを
逆手に取り、シエルたちは囮を立て、蟲の親 玉である『影』をおびき出すことにする。 |
The bugs are clearly targeting Rei. Turning the tables, Ciel's group decide to use Rei as a decoy to go after the bugs' leader. |
ひなた
それじゃあ、みんな気を付けてね。 |
Hinata |
ナオト
おう。お前も、遅くに出歩くなよ。 |
Naoto |
シエル
行ってきます、ひなたさん。 |
Ciel |
サヤ
失礼します。 |
Saya |
1: 行ってきます |
1: |
ひなた
うん。怪我しないようにね〜。 |
Hinata |
冥
やっと来たか。待たせるんじゃない、まったく。 |
Mei |
Es
冥。約束の時間通りです。 私たちが早く着きすぎたのです。 |
Es |
冥
わ……わかっとるわ! |
Mei |
ナオト
それよりほら、行こうぜ。今夜の蟲退治によ。 |
Naoto |
ラーベ
念のために言っておくが、目的は『影』の発見だぞ。 慈善事業で蟲退治をしてるわけじゃない。忘れてくれるなよ? |
Raabe |
ナオト
それは理解してるけど、蟲はできる限り退治する。 誰かが襲われるかもしれないのに、見過ごすのはできねぇ。 |
Naoto |
ラーベ
はぁ……まぁいいか、ウチにも似たような奴がいるし……。 |
Raabe |
1: ?? |
1: |
シエル
結局昨夜は『影』は現れませんでした。 戦闘も、あの大量の蟲との一戦のみでしたし……。 |
Ciel |
サヤ
とはいえ、奇妙な一戦でした。 |
Saya |
冥
ああ。一度に何匹もの蟲が、しかも昨夜と同じような場所に 現れたんだったな。 |
Mei |
冥
これまでには見られなかった行動パターンだ。 ……今までの分析が間違っていたのかと思うと、忌々しい。 |
Mei |
Es
ですが、貴重な新情報です。 今日もなにか、有益な手がかりが得られるといいですね。 |
Es |
サヤ
ええ。少しでも早く『影』にたどり着いて…… ラケルさんの目覚めにも、近付きたいものです。 |
Saya |
ナオト
……そうだな。 |
Naoto |
冥
一度にあれこれ多くを望むなよ。 今は蟲と『影』に集中しろ。 |
Mei |
冥
今夜の捜索場所だが、お前たちは駅の反対側をあたれ。 私とエスは郊外を回ってみる。 |
Mei |
ナオト
りょーかい。 |
Naoto |
サヤ
ふぅ……。これで全部、仕留めたでしょうか? |
Saya |
シエル
そのようです。敵性反応、消失しました。 |
Ciel |
ラーベ
ふむ……。確認するが、蟲の発見は件の陣が必要なほど、 難しいものなのか? |
Raabe |
ナオト
そうだよ。少なくとも……これまではな。 |
Naoto |
シエル
ですが今夜も、行った先ですぐに遭遇できました。 |
Ciel |
ナオト
しかもまた、うじゃうじゃいやがる。なんなんだ……? |
Naoto |
サヤ
考えても始まりません。次の場所へと、向かいましょう。 |
Saya |
翌夜。 |
|
冥
一体なにがどうなっている!? なんだってお前たちの 行く先行く先に、蟲が大量に出現したんだ!? |
Mei |
ナオト
知るかよ、むしろ俺が教えてほしいわ! |
Naoto |
Es
昨夜ナオトさんたちが接触した蟲は、 明らかにこれまでとは違う行動パターンでした。 |
Es |
シエル
新しい習性なのでしょうか? それとも何か別の……。 |
Ciel |
ラーベ
いや、ちょっと試してみたいことがあるんだが。 |
Raabe |
冥
なんだ? |
Mei |
ラーベ
今夜は巡回メンバーを変えてみないか? ちょうど、輝弥サヤも不在だしな。 |
Raabe |
冥
そういえば、輝弥は今日、どうしたんだ? |
Mei |
ナオト
体調不良でやめとくってさ。あいつが自分から言い出す くらいだから、結構しんどいんだろ。 |
Naoto |
ナオト
昨日の夜、めちゃくちゃたくさん戦ったからな。 最近はずっと調子よかったんだけど……大丈夫かな……。 |
Naoto |
冥
大事ないといいが……。 |
Mei |
ラーベ
ずいぶん不安げだな。彼女は持病でもあるのか? |
Raabe |
ナオト
持病っていうか、昔からとにかくやたらと体が弱いんだよ。 つっても、今はそうでもないんだけど。 |
Naoto |
ナオト
小さいころはよく死にかけたりもしてたし。 あいつすぐ無理するから、正直気が気じゃねぇんだわ。 |
Naoto |
シエル
そうなのですか。戦っているときの鋭い剣技からは、 とても想像がつきません。 |
Ciel |
ナオト
そうなんだよ、俺も正直信じられなくてさ。 それでも、強さは折り紙付きなんだよねぇ…… |
Naoto |
冥
それでも、無理を押すことなく、療養を選んでくれたのは いい判断だ。倒れられても、手が回らん。 |
Mei |
冥
よし……ではラーベの言うように、メンバーを変えて みるとしよう。黒鉄はエスと組め。 |
Mei |
冥
レイたちは、私とだ。いいな。 |
Mei |
1: わかった |
1: |
冥
ふん、足を引っ張るんじゃないぞ。 |
Mei |
Es
冥をよろしくお願いします。 |
Es |
冥
おい待て。私がよろしくしてやるんだ。 |
Mei |
シエル
はい。よろしくお願いします。 |
Ciel |
ナオト
ふっ……ははっ。 エスとシエルに挟まれると、決まんねぇなぁ。 |
Naoto |
冥
ええい、天然どもめ……。行くぞ! |
Mei |
冥
これは……。 本当に、行く先に即座に現れたな……。 |
Mei |
冥
偶然……なわけがない。それにどちらかというと、 たまたま出くわしたのではなく……。 |
Mei |
蟲
キキキキキ! |
Bugs |
シエル
囲まれています。戦闘態勢へ移行。対象を殲滅します。 |
Ciel |
冥
ふん、いくら数を集めても、所詮は雑魚だ。 さっさと蹴散らすぞ。 |
Mei |
ラーベ
……ふむ。やはり思っていた通りだな。 |
Raabe |
冥
なるほど。それが確認したかったのか、お前は。 |
Mei |
ラーベ
ほう、さすが天ノ矛坂。気がついたか。 |
Raabe |
冥
たわけ。家名など関係あるか。これだけあからさまに 見せつけられれば、誰だってわかる。 |
Mei |
シエル
わかる……とは、なにが判明したんですか? |
Ciel |
冥
蟲はたまたま現れたわけでも、 習性が変わったわけでもない。 |
Mei |
冥
お前を狙ってるんだ。 |
Mei |
1: え……? |
1: |
1: え……? |
1: |
冥
原因はわからんが、蟲はお前に引き寄せられている。 |
Mei |
ラーベ
つまり……これは使える状況ということだ。 |
Raabe |
冥
あぁ……多少の危険は伴うが、止むを得まい。 |
Mei |
ラーベ
うむ。これも任務のためだ。諦めてもらおう。 |
Raabe |
シエル
なにをしようとしているんですか? |
Ciel |
冥
なに、シンプルなことだ。 |
Mei |
ラーベ
レイ。 お前を『影』をおびき出す囮に使う。 |
Raabe |
シエル
…………。 |
Ciel |
……………………。 …………………………………………。 |
|
1: ええーーーーー!? |
1: |
シエル
ちょっと待ってください。 レイさんを囮にするということは、 |
Ciel |
シエル
レイさんが大量の蟲に狙われる状況を 作るということになります。 |
Ciel |
シエル
それは状況として、 あまりに危険なのではないでしょうか? |
Ciel |
シエル
レイさんの生命維持の可能性が 著しく低下します。 |
Ciel |
ラーベ
そこはほら、お前が守ればいいことだろ? |
Raabe |
シエル
……なるほど、了解しました。 |
Ciel |
1: 納得しちゃった!! |
1: |
冥
つべこべ言うな。なに、それなりに根拠があっての考えだ。 とりあえず、黒鉄たちと合流するぞ。 |
Mei |
冥
奴らにも作戦について聞いてもらわないといけないからな。 |
Mei |
ナオト
はぁ!?レイを囮に!? 本気で言ってんのか!? |
Naoto |
ラーベ
なんだ? 私はいつも本気だぞ。 |
Raabe |
ナオト
いくらなんでも無茶がすぎるだろ。 |
Naoto |
ナオト
だいたい、何度か蟲がこいつめがけて集まってきた からって、親玉までホイホイ出てくるか? |
Naoto |
ラーベ
噂の『影』とやらが自立行動を取れるのなら、 高い確率で出てくるはずだ。 |
Raabe |
Es
それはなぜですか? |
Es |
ラーベ
ちとね、あの蟲を調べてみたんだが、 |
Raabe |
ラーベ
蟲が人を襲撃するのは、捕食するためじゃない。 生体に宿るエネルギーを集める為だと思われる。 |
Raabe |
ラーベ
仮に『生命エネルギー』とでも呼んでおこうか。 それを集め、蓄える機能が全ての蟲に備わっていたんだよ。 |
Raabe |
ラーベ
そういう機能を備えているということは、 おそらく『影』は蟲を使って、生命エネルギーを集めている。 |
Raabe |
ラーベ
何故、生命エネルギーを集めているのかは…… 色々と推測は出来るけど、今は置いておこう。 |
Raabe |
ラーベ
とりあえず、ここ数日、蟲どもはレイを 狙うばかりで、ろくに生命エネルギーを集められていない。 |
Raabe |
冥
『影』の目的が生命エネルギーを集めることならば 必ず、なにかしらのアクションを起こすはずだ。 |
Mei |
ナオト
……理屈はわからなくもないけどよ。こいつひとりに 危ないことさせるみたいで、あんまいい気分じゃねぇな。 |
Naoto |
シエル
レイさんのことは、私が守ります。 |
Ciel |
ナオト
いや、そういうことじゃなくて……。 |
Naoto |
Es
……ナオト、気持ちはわかりますが、 ほかに有効な手立てが私には思いつきません。 |
Es |
ナオト
……レイ。お前はそれで良いのか? |
Naoto |
1: とりあえず、やってみようと思う |
1: |
ナオト
そうか。…なら頼む。 危なくなったら、必ず助けるからな。 |
Naoto |
シエル
…………。 |
Ciel |
冥
では、決まりだな。 |
Mei |
Es
『影』が狙い通りに現れたとして、その先はどうしますか? |
Es |
ナオト
どうって、ぶっ倒すに決まってんじゃねぇのか? |
Naoto |
シエル
いえ、ぶっ倒す前に、私達の捜索対象であるかどうか 確認する必要があります。 |
Ciel |
シエル
もし『影』が対象であるのなら、まずそのことを対象自身に 理解してもらわなければなりませんので。 |
Ciel |
ナオト
理解? なんだそれ。 |
Naoto |
ナオト
『影』ってやつに、お前が異変の元凶か、つって聞いたって はいそうですって教えてくれるわけないだろ? |
Naoto |
ラーベ
まあ、何事も荒事で解決するなと言っているんだよ。 自分が元凶なんだと知らずに……なんてこともあり得るだろ? |
Raabe |
ラーベ
もし、そいつが元凶であることを望んでいなかった場合は、 こちらのアクションに応じてくれるかもしれない。 |
Raabe |
冥
うまくいけば説得できる可能性があるということか……。 もっとも、できない場合もあるんだろうが。 |
Mei |
ラーベ
まずは『影』とやらが何者なのか判明しないと、 なんともいえないところだな。 |
Raabe |
ナオト
結局、まずは『影』をおびき出せてから、ってことか。 |
Naoto |
ラーベ
そういうことだ。何事も平和的解決が一番だぞ。 |
Raabe |
Es
対話が不可能な場合は、どうしますか? |
Es |
ラーベ
そのときは、武力解決って事になるな。 ぶっちゃけ話し合いとかメンドイし。 |
Raabe |
ナオト
平和的解決はどこ行った!? |
Naoto |
冥
質疑応答はこの辺でいいか? では、今夜はこれで解散としよう。 |
Mei |
冥
レイ囮作戦は明日の夜だ。 それまでに、準備したいことがあるのでな。 |
Mei |
冥
今夜はしっかり休んで、体力を回復しておけよ。 レイ。 |
Mei |
第4節 囮餌①/ 4. Decoy - 1
Summary | |
---|---|
生命エネルギーの痕跡を辿るため、冥の符を
街の各所に残すシエルたち。予測通り、おび き寄せられた蟲が次々と現れる。 |
To leave traces of life energy, Ciel's group places Mei's talismans along the city's roads. As predicted, the bugs are drawn in and begin appearing one after another. |
シエル
全行程、完了しました。 |
Ciel |
冥
よしよし。 ちゃんと指定した場所に符を貼ってきただろうな? |
Mei |
1: もちろん、バッチリ! |
1: |
冥
さっき渡した符は、簡単に言うとお前の痕跡を たどらせるためのものだ。 |
Mei |
冥
街のあちこちを回ったはずだが、その要所要所にお前が こっちに向かった、こっちにいるぞという印を残してきたわけだ。 |
Mei |
ナオト
地面に矢印描いておくみたいなことか。 |
Naoto |
冥
そうだ。ただし残っているのは誰の目にも止まるものではなく、 生命エネルギーの痕跡だ。 |
Mei |
冥
蟲たちはレイの匂いに誘われてまず符を見つけ、 そこから痕跡をたどって……。 |
Mei |
サヤ
ここまでくる、と。 |
Saya |
Es
新川浜に存在する蟲の大多数が、その痕跡をたどって ここに集まることが予想されます。 |
Es |
Es
……どうかお気をつけてください。 |
Es |
ラーベ
うまくいけば親玉が出てくるだろう。 |
Raabe |
シエル
はい。了解しました。 |
Ciel |
冥
街のあちこちに張った符は、『影』にとってもいい目印に なるはずだ。蟲と同じように、きっとここまでやってくる。 |
Mei |
ラーベ
まあ、なんとかなる。私や冥を信じろ。 |
Raabe |
1: 行ってきます! |
1: |
ラーベ
よーし、頼もしい返事だ! |
Raabe |
ラーベ
わかってる、わかってる。 |
Raabe |
…………。 ……………………。 |
|
シエル
……静かですね。 |
Ciel |
1: みんなは近くにいる? |
1: |
シエル
大丈夫です。北側約500メートルの地点で、 身を潜めています。 |
Ciel |
シエル
しばらく、このまま公園の周りを歩き回ってみましょう。 |
Ciel |
サヤ
……どうでしょう。 なるべく暗い道を歩いていただいておりますが。 |
Saya |
冥
さすがに、すぐに状況が動くとは……。 |
Mei |
ラーベ
いや……周囲に複数の反応。蟲だ。 |
Raabe |
ナオト
マジか! レイ……! |
Naoto |
ラーベ
待て待て。まだいい。 |
Raabe |
ナオト
いや、でも! |
Naoto |
ラーベ
反応はまだ少ない。 あれくらいなら、レイたちで対処できる。 |
Raabe |
ラーベ
『影』を警戒させたくない。 |
Raabe |
ナオト
馬鹿言うな、あいつらが食われたら意味ねぇだろ! 『影』がこっちの思い通りに動くとも限らねぇんだぞ! |
Naoto |
ラーベ
そんなことは言われなくてもわかっている。 だがまだ食われたわけじゃない。 |
Raabe |
ラーベ
このまま『影』が現れないなら、そのときは蟲を蹴散らして 次の機会を狙うとも。 |
Raabe |
サヤ
っ! 蟲、動きます。 |
Saya |
ラーベ
どれどれ。まずは相手の出方を見よう。 |
Raabe |
ナオト
…………。 |
Naoto |
1: 来た! |
1: |
シエル
対象の戦闘レベルの上昇を確認。 これより排除します。 |
Ciel |
第4節 囮餌②/ 4. Decoy - 2
Summary | |
---|---|
押し寄せる蟲は、特殊なドライブ能力に惹か
れているようだった。ラーベからの指示を待 ちつつ、シエルは戦闘を継続する。 |
The bugs seem to be attracted to Rei's special Drive. Awaiting orders from Raabe, Ciel and Rei continue to fight. |
シエル
敵性反応、消失しました。 |
Ciel |
シエル
……あ、いいえ、反応出現。新たに現れた蟲です。 |
Ciel |
蟲
キチキチキチキチキチキチキチキチ。 |
Bugs |
シエル
やはり、狙いはレイさんのようですね。 特殊なドライブに惹かれているのでしょうか。 |
Ciel |
シエル
……ラーベさんからは、戦闘を中断するようにとの 指示はありません。どうしますか? |
Ciel |
1: とにかく戦うしかないか…… |
1: |
シエル
わかりました。戦闘態勢に移行します。 対象を確認。戦闘パターンを照合……行きます。 |
Ciel |
第4節 囮餌③/ 4. Decoy - 3
Summary | |
---|---|
とうとう現われた『影』。影は奇怪な言語を口
にしながら蟲を生成し、シエルたちに襲いかか る。 |
The "shadow" finally makes an appearance. It speaks strangely while producing bugs and attacks Ciel's group. |
冥
中々やるじゃないか。 数が増えたときはヒヤリとしたが。 |
Mei | ||
ラーベ
当然だ、ウチのエースだからな。 |
Raabe | ||
ナオト
古い言い方だな……もう少しマシな褒め方しろよ。 |
Naoto | ||
サヤ
兄様、お静かに。 |
Saya | ||
ナオト
お前までなに冷静に……。 |
Naoto | ||
冥
待て、黙ってろ、黒鉄。集中を乱させるな。 なにか……ナニカがいるぞ。 |
Mei | ||
ナオト
え……? |
Naoto | ||
シエル
対象の消滅を確認しました。まだ潜んでいる蟲が 残っているかもしれません。周囲の索敵を開始します。 |
Ciel | ||
シエル
え―― |
Ciel | ||
1: シエル! |
1: | ||
シエル
っ、く……! |
Ciel | ||
シエル
大丈夫です、軽傷です。問題ありません。 ですが……。 |
Ciel | ||
影
……けタ……みつ……けた……。 我が……魂の……欲する……。 |
Shadow | ||
影
オ……オ……オ、オオ、オ…… 魂……魂、魂、魂、生命、命、力……! |
Shadow | ||
影
長く永く尽きぬ渇望……! 溢れる生命の奔流に 溺れ沈む沈む……その彼方に蒼はあるか……。 |
Shadow | ||
シエル
これは……。 |
Ciel
That's... | ||
1: 蟲じゃ、ない…… |
1: ...Not a bug.... | ||
影
匂う……かすかに臭う、蒼か、蒼だ、蒼の残滓…… 蒼の染み。どこだ、どこだどこだ……。 |
Shadow
I smell it...slightly...the Azure, Azure, Azure, Azure's traces...a blotch of Azure. Where is it, where, where, where is it... | ||
影
どこに隠した!!! |
Shadow
WHERE IS IT HIDDEN?? | ||
サヤ
……首を、落とし損ないました。 |
Saya | ||
シエル
サヤさん! |
Ciel | ||
ラーベ
無事か、レイ!? |
Raabe | ||
ナオト
はぁ、はぁ、悪い、遅くなった。 けど……なんだ、こいつ!? |
Naoto
Pant...pant...Sorry, we were running a little late. Anyway...whoa, what the hell is that!? | ||
Es
人……ならざる者……に見えます。 |
Es
It...doesn't seem human. | ||
冥
外見から判断するに、こいつが『影』だろう。 他にどう呼べと言うんだ。 |
Mei | ||
ナオト
こいつが? こいつが、蟲の親玉だってか? なんか、想像してたのと違うな……。 |
Naoto | ||
ラーベ
ちなみに、どんなやつを想像してたんだ? |
Raabe | ||
ナオト
もっとこう、薄気味悪い魔法使いみたいなやつ。 性根の曲がった変態野郎だろうと思ってたのによ。 |
Naoto | ||
サヤ
薄気味悪い、という点では、 こちらの影もそれなりの醜悪さですが。 |
Saya | ||
シエル
難解ではありますが、言語を口にしていますので 交渉を試みます。 |
Ciel
This may be difficult, but it seems it can speak, so I will attempt to converse with it. | ||
シエル
失礼ですが、黒い方。アナタが観測者ですか? |
Ciel
Excuse me, dark one. Are you an Observer? | ||
ラーベ
お前の交渉技術のなさは、ものすごいな!? |
Raabe
Your conversational skills sure are amazing! | ||
影
グ、ギギギギ……カンソクシャ……。 |
Shadow
Gigigigi...Observer... | ||
影
カンソクシャ……カンソクシャ観測シャ観ソク者……! |
Shadow
Observer...Observerobserverobserver...! | ||
影
オマエ、観測者! |
Shadow
YOU'RE AN OBSERVER! | ||
シエル
え……? |
Ciel
Huh...? | ||
ナオト
レイ! |
Naoto
REI! | ||
影
キサマキサマキサマキサマキサマ 喰らう食らうくらウくらクらう! |
Shadow
Eat eat eateateateat you you youyouyou! | ||
サヤ
っ! 下がりなさい!! |
Saya | Stand back | |
---|---|---|---|
影
ギュキィ! |
Shadow
GYUGII | ||
1: ありがとう、サヤさん |
1: Thank you, Saya | ||
サヤ
ご無事でなにより。 |
Saya | ||
Es
『影』から明確な殺意を感じます。 |
Es | ||
冥
チッ、説得交渉は失敗か……。 |
Mei | ||
ラーベ
いや、どう見てもまともに会話ができるとは思えないだろ。 |
Raabe | ||
ナオト
んで!? どうするんだよ!? 向こうはやる気満々みたいだし、ぶっとばしていいのか!? |
Naoto | ||
シエル
対象の戦闘能力は未知数です。 無闇に仕掛けるのは危険と判断します。 |
Ciel | ||
ナオト
ならどうする!? |
Naoto | ||
ラーベ
とりあえずこの場はしのごう。その間に出来る限りの情報を 集めて、しかるのちに撤退だ。 |
Raabe | ||
影
居る……蠢く生命が溢れる芳香の坩堝…… 全部……全部喰らう……齧る啜る……ギギギギギ! |
Shadow | ||
シエル
対象の戦闘レベルの上昇を確認。気を付けてください。 蟲とは比べものにならない戦闘能力です。 |
Ciel | ||
冥
お手柔らかに願いたいところだが、 そうはいかんだろうな。 |
Mei | ||
サヤ
構いません。動かなくなるまで、刻むだけです。 |
Saya | ||
影
オオオオオオオオオオオオ!! |
Shadow | ||
ラーベ
なるほど、蟲の発生源はこいつ自身か。 |
Raabe | ||
ラーベ
しかしまぁ、すごい数だな……。 一体どうやって生成をしているのやら……。 |
Raabe | ||
ラーベ
まぁいい、その調子でどんどん手の内をさらしてくれ。 |
Raabe | ||
Es
蟲、多数。および『影』、来ます! |
Es | ||
シエル
レイさん、私のそばにいてください。 特に『影』には注意を。 |
Ciel |
第5節 機関①/ 5. The Agency - 1
Summary | |
---|---|
アラクネとの戦闘の最中、突如現われた黒服
たち。戦いに介入し、アラクネを守る立ち回 りをする。 |
In the middle of their fight with Arakune, a group of black suits suddenly arrive. They interfere with the fight and stand about, protecting ARakune. |
影
ギャギャギャギャ……! |
Shadow |
冥
なんだ!? いけそうだぞ! ならば観念してもらうか、蟲の親玉! |
Mei |
Es
このまま押し切ります! |
Es |
シエル
待ってください、『影』が我々の捜索対象であった場合、 仕留められては私達の任務に支障が出ます! |
Ciel |
ナオト
って言われても! 手加減できる相手じゃ無いぜ!! |
Naoto |
サヤ
ならば、死なない程度に削ぎ落とします……! |
Saya |
サヤ
!? |
Saya |
冥
何者だ……貴様ら? |
Mei |
黒服
標的を確認。……情報の通りです。 |
Black Suit |
Es
銃を持っています。気を付けてください。 |
Es |
ラーベ
『影』を退治しに来た。と、いうわけではなさそうだな。 |
Raabe |
黒服
……了解しました。介入を開始します。 |
Black Suit |
ナオト
チッ、誰だか知らねぇが、こっちは取り込み中なんだ。 邪魔すんじゃねぇ! |
Naoto |
ナオト
クソ! なにしやがる! |
Naoto |
冥
『影』を守っているんだ。 奴に手出しをするなという意味だろう。 |
Mei |
ナオト
なんであいつを守るんだよ!? |
Naoto |
冥
そんなこと私が知るか! |
Mei |
サヤ
来ます。……ことを構えるつもりならば、相手になりましょう。 |
Saya |
1: シエル、援護! |
1: |
シエル
はい。戦闘態勢に移行します。 |
Ciel |
第5節 機関②/ 5. The Agency - 2
Summary | |
---|---|
黒服との戦闘の間に、影は逃亡する。直後現
われた『不死者殺し』と呼ばれる二人は、ナ オトとシエルたちの捕獲を目的としていた。 |
While Ciel's group is fighting the black suits, Arakune makes its escape. Immediately afterwards, two people arrive calling themselves "Immortal Breakers" with the intent of capturing Naoto and Ciel's group. |
黒服
ぐあっ……。 |
Black Suit |
ナオト
はぁ、はぁ……手間取らせやがって。 あっ、『影』は!? |
Naoto |
ラーベ
……周囲に反応はないな。今の戦闘の間に、逃亡したんだろう。 |
Raabe |
ナオト
んだよ、くそっ! 冥、追えるか? |
Naoto |
冥
無理だ……札も使い切ってしまったし、奴は既に陣の外だ……。 |
Mei |
ナオト
クソがっ! なんなんだよこいつら。 |
Naoto |
ラーベ
何者かは不明だが、 目的ははっきりしている。『影』の保護だ。 |
Raabe |
Es
そうですね。私たちの攻撃を、 明らかに阻止しようとしていました。 |
Es |
シエル
ということは、彼らは『影』の味方ということですか? |
Ciel |
冥
もしくは連中が『影』を操っているのか…… この状態では、あらゆる可能を捨てきれんぞ……。 |
Mei |
ラーベ
……ふーむ。 |
Raabe |
ナオト
なあ、ちょっと聞きたいんだけどさ。 『観測者』ってなんだ? |
Naoto |
冥
そういえば、さっきシエルと『影』が そんなことを言っていたな。 |
Mei |
シエル
観測者というのは……。 |
Ciel |
ラーベ
……そういう特殊な力を持った存在のことだ。 『影』がなぜ突然それを叫んだのかはわからんがな。 |
Raabe |
サヤ
……レイさんへ、 言っていたように見えましたが……。 |
Saya |
1: 僕に? |
1: |
1: 私に? |
1: |
冥
――っ!? なんだ、風……? |
Mei |
ナオト
えっ――? |
Naoto |
ナオト
が……ぐっ。 |
Naoto |
サヤ
兄様……!? |
Saya |
1: お、お腹に穴が…… |
1: |
ナオト
な、ん、なにが……。 |
Naoto |
ナオト
ぶっ……! |
Naoto |
ナオト
…………。 |
Naoto |
冥
黒鉄! おい、しっかりしろ! |
Mei |
シエル
っ!? 生命反応微弱……。 |
Ciel |
サヤ
兄様……。おのれ……おのれ不届者! |
Saya |
ヴァルケンハイン
ほう、俺を捉えるか……。 小娘と侮ったが、それなりにできるようだな。 |
'Valkenhayn |
サヤ
うるさい、死ね。 |
Saya |
サヤ
くぅっ…… |
Saya |
冥
サヤ! |
Mei |
Es
はぁぁっ! |
Es |
Es
あう! ……くっ……重い……。 |
Es |
サヤ
キサマ…………。 |
Saya |
サヤ
兄様を……私の兄様を、『私以外』が殺すなど…… 許さぬ、決して許さぬぞ下郎! |
Saya |
サヤ
はぁぁっ! |
Saya |
ヴァルケンハイン
面白い……どこまでやれるのか見てやろう、小娘。 |
'Valkenhayn |
サヤ
うるさい、死ね死ね死ね死ね………。 |
Saya |
シエル
レイさん、サヤさんの状況はかなり劣勢です。 加勢しますか? |
Ciel |
ナオト
やめろ、サヤ! |
Naoto |
シエル
え……? |
Ciel |
ナオト
そこまでにしとけ……無茶すんな! |
Naoto |
サヤ
……兄様。 |
Saya |
1: ナオト、大丈夫なの? |
1: |
シエル
すごいです……。 あれほどの傷まで修復してしまうなんて……。 |
Ciel |
ラーベ
さすがの |
Raabe |
ラーベ
……ここまで来ると、 どれくらいまで再生できるのか興味が湧いてくる。 |
Raabe |
ナオト
くそが……人の腹、気軽にぶち抜きやがって……。 |
Naoto |
ナオト
またてめぇか、ヴァルケンハイン! |
Naoto |
ヴァルケンハイン
黒鉄ナオト。……やはり死なんか。 |
'Valkenhayn |
ナオト
やはり、ってなんだよ! んなこと確認するために いちいち人のこと殺すな! |
Naoto |
ヴァルケンハイン
確認だと? ふざけるな! 貴様の息の根を止めるために決まっているだろうが! |
'Valkenhayn |
ナオト
決まってねぇよ! なお性質悪いわ! |
Naoto |
シエル
お知り合いですか? |
Ciel |
ナオト
こいつの名前はヴァルケンハイン。ついこの前も、 今みたいに突然ぶっ殺されかけたんだよ! |
Naoto |
サヤ
では……彼奴が兄様に狼藉を働いた、御剣機関の? おのれ、ならばなおのこと生かしてはおけませぬ……。 |
Saya |
ナオト
えっと、気持ちは嬉しいが……ここは抑えろサヤ。 それより気を付けろ、こいつの他にもうひとり……。 |
Naoto |
レリウス
その少年は、数日ぶりに見るな。 |
Relius |
冥
なっ……いつの間に!? |
Mei |
Es
気配はまるで感じませんでした……。 |
Es |
ナオト
レリウス……クローバー…… |
Naoto |
レリウス
うん? 貴様は……ふむ……。 |
Relius |
Es
……何故でしょうか。 あの人に見られると、とても嫌な気持ちになります。 |
Es |
シエル
はい。私も、なぜかそんな気が……。 |
Ciel |
レリウス
……ほう。 それは『エンブリオストレージ』か。 |
Relius |
Es
!? |
Es |
レリウス
だがなぜ、そちら側にいる? |
Relius |
Es
…………。 |
Es |
冥
おい、貴様。うちのメイドに余計なちょっかいを かけるのは、やめてもらおうか。 |
Mei |
レリウス
……メイド? あぁ、なるほど……。 |
Relius |
1: 一体何者なんですか |
1: |
レリウス
ほう……それもまた、面白い形をしているな。 |
Relius |
ナオト
ラケルから聞いた。こいつら、不死者専門の処分屋で、
|
Naoto |
シエル
不死者専門……ですか。 |
Ciel |
サヤ
傭兵まがいの、ならず者ですよ。 |
Saya |
ラーベ
まぁ、人類の脅威にも色々あるが、中でも厄介なのが不死者だ。 なんせその言葉の通り、死なないんだからな。 |
Raabe
Well, there are many different kinds of threats against humanity, and among them, the immortals are some of the most annoying. Because they don't die, you see. |
ラーベ
だがそれを殺してみせるのが |
Raabe
But the "Immortal Breakers" go around making a show of killing them. |
ラーベ
『噂には』聞いたことがあったけど、こいつらがそうか。 |
Raabe
If it's rumors then I've heard about them...and it seems like this is them. |
レリウス
今は不死者を殺すために姿を現したわけではない。 |
Relius |
レリウス
そこの大男はどうやらとうに忘れたようだが ……別の依頼だ。 |
Relius |
ラーベ
依頼? |
Raabe |
レリウス
黒鉄ナオトの捕獲だ。 |
Relius |
冥
黒鉄を? ……理由を聞かせてもらおうか。 |
Mei |
レリウス
何故だ? |
Relius |
冥
何故って、当然……友人だからだ。 |
Mei |
レリウス
……ふむ。『友人』か。 |
Relius |
冥
…………。 |
Mei |
サヤ
冥さん。奴の言葉に惑わされてはいけません。 嫌な……底の知れぬ嫌な臭いがします。 |
Saya |
Es
同感です。冥、気を付けて。 |
Es |
冥
あ、ああ。そうだな……。 |
Mei |
ヴァルケンハイン
おい、レリウス、なにを無駄話している。 奴等になにも話す必要はあるまい、邪魔なら処分すればいいだろ。 |
'Valkenhayn |
レリウス
待て……興味が湧いた。 |
Relius |
ヴァルケンハイン
なに? |
'Valkenhayn |
ヴァルケンハイン
……またお前の悪い病気か……。 この程度の不死者なぞ、いくらでもいただろう? |
'Valkenhayn |
レリウス
不死者ではない。……アレの方だ。 |
Relius |
1: ……もしかして、僕ですか? /……もしかして、私ですか? |
1: |
シエル
レイさん……後ろへ……。 |
Ciel |
レリウス
ふむ。素体……か? ほう……これは中々に面白い。 |
Relius
Hm...a prime field? Oh? ...This is intriguing. |
レリウス
コレは『壊すな』よヴァルケンハイン。 持ち帰って観察したい。 |
Relius
Don't "break" this one, Valkenhayn. I want to bring it home and obverse it. |
ラーベ
待て待て、シエルもレイも数少ない私の大事な 部下なんだ。持ち帰られては困る。 |
Raabe
Wait, wait, wait. Ciel and Rei are some of my precious few subordinates. I can't have you "bringing them home." |
レリウス
困る? ……そうかそれは困ったな。 |
Relius
No? ...That's a bother. |
ヴァルケンハイン
勝手な真似をするなレリウス。 依頼金がパーになるぞ? |
'Valkenhayn
Don't get distracted, Relius. Our bounty's gonna evaporate. |
レリウス
それも困るな。……まあいい。 死んだなら死んだで、得られるものもあるだろう。 |
Relius
That would also be a bother. ...Fine, then. If it dies, it dies. There'll still be something to be gained. |
ナオト
あいつらがなに言ってんのかさっぱりだけど、 とりあえずムカツクってことだけは理解したぜ。 |
Naoto
I have absolutely no idea what they're going on about, but it sure ticks me off. |
サヤ
あの男らは兄様を捕えたがっており、殺したがっている。 そのうえ我等が客人までも拉致しようとのこと……。 |
Saya |
サヤ
すなわち、倒すべき敵ということです。 |
Saya |
ナオト
それだけわかれば十分だ! お前らぶっ飛ばす!!! |
Naoto |
シエル
何があろうと、レイさんを害することは 容認できません。 |
Ciel |
ヴァルケンハイン
威勢がいいな。ならば少しは楽しませろよ? |
'Valkenhayn |
レリウス
ヴァルケンハイン……念のためもう一度言うが、 なるべく壊すな。 |
Relius
Valkenhayn...I'll say it again, just in case, but please try not to break them. |
ヴァルケンハイン
ハハッ! 知るか!! があぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! |
'Valkenhayn
Haha! Like I care!! Eat this!! |
第5節 機関③/ 5. The Agency - 3
Summary | |
---|---|
不死者殺しの強さから絶体絶命に。そこへ御
剣機関の人間を名乗るキイロが現われ、アラ クネと呼ばれる影に手を出すなと忠告する。 |
The situation is one of despair before the strength of Immortal Breakers. A woman from the Mitsurugi Agency appears, named Kiiro, and warns them to not touch Arakune. |
レリウス
ほう……観測のドライブ……か? ……クククッ、面白い。 |
Relius |
ヴァルケンハイン
ブツブツ言っている場合かレリウス! 真面目に戦え! |
'Valkenhayn |
レリウス
楽しんでいるのは貴様のように見えるが……。 もう……時間切れのようだ。 |
Relius |
サヤ
くぅ……っ! |
Saya |
サヤ
はぁ、はぁっ……。 |
Saya |
ヴァルケンハイン
……確かにな。初撃は脅威的だったスピードも、 今や見る影もない。 |
'Valkenhayn |
サヤ
くっ……体が重い……なぜ……。 |
Saya |
ナオト
まずい、退け、サヤ! |
Naoto |
サヤ
嫌です! 奴は兄様を殺そうとした……いえ、殺したのです。 私よりも先に! あの首を落とさねば気が済みませぬ! |
Saya |
冥
くそ、こっちはこれだけ人数がいるというのに……。 人間なのか、あやつは!? |
Mei |
ナオト
んなわけねぇだろ。あの目隠し野郎は人間っぽいが、 ヴァルケンハインのほうはどう見ても人間の数字じゃねぇ! |
Naoto |
シエル
数字、ということは『狩人の眼』ですか? |
Ciel |
ナオト
ああ。 人間の、百倍以上の数字だ……。 |
Naoto |
ナオト
不死者は殺すとか言ってるけど、 あいつも十分そのカウントだろ |
Naoto |
ラーベ
これはちょっとまずいかな。向こうの戦力が想像以上…… いや、未知数だ。いずれ押し切られるぞ。 |
Raabe |
ラーベ
シエル、一時退却。 レイを最優先に離脱させてくれ。 |
Raabe |
シエル
了解しました。 |
Ciel |
Es
ですが……退路を確保しなければ。 サヤさんも、これ以上は難しそうです。 |
Es |
ラーベ
あ〜それは任せろ、もしものときは……。 |
Raabe |
ヴァルケンハイン
侮るな! みすみす逃がすか! |
'Valkenhayn |
ナオト
くっ……ん? |
Naoto |
???
はいは〜〜〜い、そこまで〜〜〜! |
??? |
シエル
あれは……? |
Ciel |
ヴァルケンハイン
ぬう……。 |
'Valkenhayn |
レリウス
…………時間切れか。 |
Relius |
キイロ
んもう、話が違うじゃない。私はナオトくんを連れてきて、 ってお願いしたのに。 |
Kiiro |
ナオト
あれ? あいつ……どこかで……。 |
Naoto |
ヴァルケンハイン
キイロ……なにをしに来た。 まだ時間ではないはずだぞ。 |
'Valkenhayn |
キイロ
だって、一刻も早くナオトくんに会いたかったんだもの。 |
Kiiro |
キイロ
なのに部下も雇った人たちも、なんか手間取ってるし……。 ほんと、使えない人たちね。 |
Kiiro |
キイロ
しかも殺そうとしてるなんて! 勝手なことされると困るのよね。お金払わないわよ。 |
Kiiro |
ヴァルケンハイン
御剣機関にとって、不死者は排除するべき対象だろう。 それを始末してなにがおかしい! |
'Valkenhayn |
レリウス
……ヴァルケンハイン。 この件に関して、貴様の味方は諦めてくれ。 |
Relius |
1: な、なんなんだ? |
1: |
ナオト
ど、どうなんだろうな……。 なんか事態についていけねぇんだが。 |
Naoto |
キイロ
……ナオトくん。あなたが黒鉄ナオト……くんよね。 そうでしょ? |
Kiiro |
ナオト
お、おお……そうだけど。 |
Naoto |
キイロ
あ〜ん、やっぱり!! 私たちは運命的の糸で結ばれてるのね! |
Kiiro |
キイロ
ごめんねぇ、ナオトくん。 怪我なんかさせて、痛かったでしょぉ? |
Kiiro |
キイロ
傷はどこ? よく見せて。早く手当てしなくちゃ。 ……私が舐めて、消毒してあげるから。 |
Kiiro |
ナオト
……ごめん、状況に追いつけてない。 |
Naoto |
サヤ
馴れ馴れしい……。 女、今すぐ兄様から手を放しなさい。 |
Saya |
キイロ
あらやだ、輝弥の死に損ないじゃない。 まだ生きてたの? 案外しぶといのね。 |
Kiiro |
ナオト
いい加減放せよ! |
Naoto |
キイロ
あん。乱暴。 |
Kiiro |
冥
なにが乱暴、だ。 そちらの対応の方がよほど乱暴ではないか。 |
Mei |
シエル
こちらは命にかかわるほどの攻撃を受けています。 |
Ciel |
1: 理由を教えて欲しい |
1: |
キイロ
え……? |
Kiiro |
キイロ
あなた……誰? なにこの……ざらつく感覚……。 |
Kiiro |
シエル
……ラーベさん、この方は……。 |
Ciel |
キイロ
だ、駄目よ! 私はもう、ナオトくんのものなんだから。 |
Kiiro |
ナオト
いやいやいや、受け取った覚えはねぇし、 特に欲しくもねぇから。つかお前、誰だよ!? |
Naoto |
キイロ
照れちゃって。 そういうクールなところも、素敵よ。 |
Kiiro |
キイロ
でも嬉しいわ、やっと私に興味を持ってくれたのね。 |
Kiiro |
キイロ
私は、緋鏡キイロ。御剣機関の人間よ。 |
Kiiro
I'm Hikagami Kiiro, from the Mitsurugi Agency. |
ナオト
緋鏡? それに、今…… |
Naoto
Hikagami? And... |
1: 御剣機関って言った? |
1: You said...the Misurugi Agency? |
キイロ
あとはなにが知りたい? えっと、スリーサイズなら……直接触って、測ってみる? |
Kiiro |
ナオト
ば、馬鹿かお前……! |
Naoto |
冥
なんなんだ、この女は……。 ノリが奇妙すぎて、扱いに困るんだが……。 |
Mei |
サヤ
……いますぐきりすてましょう。 |
Saya |
冥
ちょっ、お前も落ち着け! |
Mei |
Es
…………。 |
Es |
キイロ
あら、あなた達まだいたの? もう帰っていいわよ。 |
Kiiro |
ナオト
帰っちゃ駄目だから! |
Naoto |
シエル
帰りませんし、まず質問があります。 |
Ciel |
シエル
なぜ私達を攻撃したのですか? なぜ『影』への攻撃を妨害したのでしょうか? |
Ciel |
キイロ
あら。あなたは……。 |
Kiiro |
シエル
シエル=サルファーといいます。 |
Ciel |
キイロ
シエル……サルファー? |
Kiiro |
シエル
はい、私はみつる―― |
Ciel |
シエル
きゃうぅ……。 |
Ciel |
ラーベ
おっとすまん、頭が滑った。 |
Raabe |
キイロ
あら、凄い音。 |
Kiiro |
キイロ
でも驚いた、こんなところで、あなたみたいのに会うなんて。 |
Kiiro
Well, color me surprised, I didn't think I'd meet something like you here. |
キイロ
自立思考型デバイス……プロジェクトは凍結されたって 聞いていたけど。……『誰』の所属かしら? |
Kiiro
The Independent Thought Device...Project was shelved, last I heard? ..."Who" are you under? |
ラーベ
ほう、『私』を知っているのか? |
Raabe
Oh? You know "me?" |
ラーベ
ならばなおのこと、教えるわけにはいかないよ。
私とお前では立っている |
Raabe
Then all the more reason to not tell you anything. Our |
キイロ
なるほどね……まぁ好きにすれば。あなた達には興味無いし。 ただ、私の邪魔をするなら潰すわよ……。 |
Kiiro
Fine then, suit yourself. I'm not interested in your group anyway. But if you get in my way, I will get rid of you. |
ラーベ
怖いな、まぁその時は手加減してくれ。 |
Raabe
Frightening. Well, hold back on us when we get there, alright? |
ナオト
おいおい、邪魔ってなんだよ? あの『影』の事か? |
Naoto
Hey, wait, what do you mean by getting in your way? Are you talking about that "shadow" thing? |
キイロ
『それも』あるわよ。だって、今ナオトくんにアラクネを 倒されたら、困るのもの〜。 |
Kiiro
Well, there's that too. Why, if you defeated it, Naoto, I just wouldn't know what to do~. |
シエル
アラクネ? |
Ciel
Arakune? |
キイロ
あれの名前よ。 |
Kiiro
That's it's name. |
キイロ
由来は知らないけど、私たちの間では、そう識別されているわ。 あなたたちは『影』とかって呼んでいるのよね。 |
Kiiro |
冥
ちょっと待て、どういうことだ!? |
Mei |
冥
名前が定着しているのなら、 当然、そのアラクネとか言うモノが、 |
Mei |
冥
新川浜に蟲を放っていたことも、 把握していたのではないのか!? |
Mei |
キイロ
当たり前でしょ。 |
Kiiro |
ラーベ
……御剣機関の理念は『人の在るべき世界の悠久の安寧』だ。 |
Raabe |
ラーベ
アラクネとやらの存在は、その理念に反していると思うが? |
Raabe |
キイロ
ふ〜ん……。 あなた……本当に御剣の人みたいね……。 |
Kiiro |
キイロ
そうよ、確かに私たち御剣機関にとって、 アラクネは明らかな殲滅対象よ。 |
Kiiro
Of course, you're right, Arakune does qualify as a target for elimination within the Mitsurugi Agency. |
キイロ
でもね……今はまだ、ダメなの。 |
Kiiro
However...it's not time yet. |
サヤ
その理由を問うています。 |
Saya
And why not? |
キイロ
だってまだ、使い道があるんですもの。 |
Kiiro
Because it still has its uses. |
Es
使い道……? |
Es
Like what...? |
冥
馬鹿な!! つまり、あの化け物を野放しにしておけというのか!? |
Mei
Ridiculous!! So you're just going to let it run free!? |
キイロ
そうよ。だから手を出さないでちょうだい。 |
Kiiro
That's right. So don't you touch it just yet. |
キイロ
アラクネは、 御剣機関が利用し、管理し……『解体』するから。 |
Kiiro
Arakune is something that the Mitsurugi Agency will use, govern...and "dissect." |
冥
なっ……。 |
Mei
Wha-- |
キイロ
覚えておいて。どんな化け物でも管理できるのなら、 『脅威』ではないのよ。 |
Kiiro
Remember this. No matter the monster, if it can be controlled, it isn't a "threat." |
キイロ
アラクネだけじゃない。他にも……そう。 例えば、『吸血鬼』とかも……ね。 |
Kiiro
That's not just for Arakune. Even...right. Even "vampires" and the like...perhaps. |
ナオト
なんだと!? |
Naoto
Excuse me!? |
キイロ
あ〜らぁ。どうしたの、ナ・オ・ト・くん。 ……なにか心当たりでもあるのかしら? |
Kiiro |
ナオト
っ! |
Naoto |
キイロ
んふっ、そんな激しい目で見られたら、 ゾクゾクしちゃう。 |
Kiiro |
サヤ
兄様への無礼の数々、腹に据えかねました……。 |
Saya |
キイロ
ちょっと煩いわね、あなた……。解体するわよ? |
Kiiro |
サヤ
……やってみるがいい、下女め。 |
Saya |
ヴァルケンハイン
……おい、キイロ。 始末も捕獲も必要ないのなら、俺は帰るぞ。 |
'Valkenhayn |
キイロ
もう、我慢の利かないワンちゃんね。待ても出来ないの? |
Kiiro |
ヴァルケンハイン
なんだと、貴様!! |
'Valkenhayn |
レリウス
落ち着け、ヴァルケンハイン。 |
Relius |
ヴァルケンハイン
貴様もいい加減にしろ、レリウス! 俺はこんな話、今すぐ蹴ったって構わんのだぞ! |
'Valkenhayn |
レリウス
それは私が困る。 |
Relius |
キイロ
はいはい、わかったわよ。もう、せっかくの 運命の出会いだっていうのに、ムードが台無し。 |
Kiiro |
ナオト
ムードもクソもあるか! てめぇら……さっきから聞いてりゃ、 好き勝手言いやがって。 |
Naoto |
ナオト
邪魔だろうが何だろうが知ったこっちゃねぇ! 俺は引き下がらないからな!! |
Naoto |
キイロ
あん……素敵。 そのギラついた目……体の奥が熱くなってきちゃう。 |
Kiiro |
キイロ
でもね、ナオトくん。これはお願いじゃないの。 |
Kiiro |
キイロ
忠告よ。 |
Kiiro |
ナオト
……脅してんのか? |
Naoto |
キイロ
ナオトくんのことを、心配してるのよ。 だって、御剣機関を敵に回す意味をわかってないみたいだから。 |
Kiiro |
ナオト
んだよ、舐めやがって。 |
Naoto |
キイロ
舐めてなんかないわ。私は真剣よ。 |
Kiiro |
キイロ
……ナオトくんとの舐め合いなら、 もっと真剣になれるんだけど。 |
Kiiro |
サヤ
今すぐその舌を斬り落とす!! |
Saya |
サヤ
なっ!? |
Saya |
キイロ
あらぁ、怖〜い。相手してあげてもいいけど…… 残念、一応お仕事中なの。 |
Kiiro |
キイロ
今夜のところは、これで引き上げるわ。 |
Kiiro |
キイロ
またね……ナオトくん……私の運命の人。 |
Kiiro |
シエル
……ラーベさん、あの緋鏡キイロさんという方……。 |
Ciel
...Raabe-san, that person called Hikagami Kiiro... |
ラーベ
あぁ……お前と同じモノだ。 |
Raabe
Yeah... She's the same as you. |
第5節 機関④/ 5. The Agency - 4
Summary | |
---|---|
キイロは、アラクネを利用してドライブ能力
者の誰かを探していた。だが突如目の前が白 黒となっていき、謎の人影が忍び寄る。 |
Kiiro is using Arakune to search for a certain Drive-wielding person. However, suddenly the area goes all black and white, and a mysterious person shows up. |
少女の姿をした謎の人影は、何も語ることは
なく、まるで夢であったかのように姿を消す。 |
The mysterious figure is a young girl, but she disappears like a dream, without saying anything. |
ヴァルケンハイン
いい加減に説明してもらおうか! このままでは納得できん! |
'Valkenhayn |
キイロ
もう〜、またそれ? うるさいわねぇ。 |
Kiiro |
ヴァルケンハイン
黙れ! あのアラクネに続いて、 黒鉄ナオトまであえて逃がすとは……。 |
'Valkenhayn |
ヴァルケンハイン
貴様、我々の領分をも侵害しているとわかっているのか!? |
'Valkenhayn |
キイロ
貴方達の領分なんて知ったことじゃないわ。いい? ワンちゃんは忘れちゃったみたいだから、教えてあげる。 |
Kiiro |
キイロ
貴方は |
Kiiro
You may be Immortal Breaker, but other than accepting our request you also need to follow our orders. |
キイロ
この世界での |
Kiiro
You know the |
ヴァルケンハイン
だから、その指示の意味を聞かせろと言っている! 俺たちを都合よく動かせる駒だと思うな! |
'Valkenhayn
That's why I'm telling you to explain yourself! Don't think we're just pawns for you to move at your convenience! |
キイロ
あらぁ、違ったの? |
Kiiro |
ヴァルケンハイン
貴様……! |
'Valkenhayn |
レリウス
よせ、ヴァルケンハイン。 キイロもだ。彼を挑発して遊んでも、新しい発見はないぞ。 |
Relius |
キイロ
私は別に、彼で遊びたくなんかないわよ。 貴方と違ってね。 |
Kiiro |
キイロ
でもあとを引き受けてくれるなら、その野蛮人の相手は お任せするわ。私、もう戻ってシャワー浴びたいから。 |
Kiiro |
レリウス
承った。 |
Relius |
ヴァルケンハイン
おい、レリウス! 勝手に話を片付けるな! 待て、キイロ! 説明を……! |
'Valkenhayn |
ヴァルケンハイン
気に入らん!! |
'Valkenhayn |
レリウス
お前が気に入ることなど、ほとんどないだろうに。 |
Relius |
ヴァルケンハイン
うるさい、貴様こそなんとも思わないのか! この状況に! |
'Valkenhayn |
レリウス
……思う? なにをだ? |
Relius |
ヴァルケンハイン
……くそっ。どいつもこいつも、一体なんなのだ!! |
'Valkenhayn |
レリウス
まぁ聞け、ヴァルケンハイン。 |
Relius |
レリウス
……アラクネの蟲は餌となる人間を無差別に襲撃し、 寄生することによって、その生命力を吸い上げ…… |
Relius |
レリウス
本体であるアラクネにその生命力を運搬している……。 |
Relius |
ヴァルケンハイン
なんだ、今更。それくらいは知っている。 前にお前が、この街は蟻の巣のようだとか言っていたな。 |
'Valkenhayn |
レリウス
うむ、だから『女王蟻』は……滅多なことでは動かない。 |
Relius |
レリウス
だが……稀に、アラクネが直接、人間を襲うことがある……。
その |
Relius |
ヴァルケンハイン
共通点? なんだそれは。 |
'Valkenhayn |
レリウス
ドライブ能力者だ。 |
Relius |
ヴァルケンハイン
……なんだと? 初耳だぞ。 |
'Valkenhayn |
レリウス
アラクネの動きはキイロたちが監視しているからな。 私たちには下りて来ない……。 |
Relius |
レリウス
だが……状況を見れば概ね推測は出来る。 |
Relius |
ヴァルケンハイン
ふん。推測だろうと、お前が言うのなら間違いないのだろう。 |
'Valkenhayn |
ヴァルケンハイン
それで……アラクネがドライブ能力者を狙うから、 どうだというのだ? |
'Valkenhayn |
レリウス
御剣機関はドライブ能力を持つ『誰か』を探している。 |
Relius
The Mitsurugi Agency is searching for someone who has a Drive. |
ヴァルケンハイン
そのためにアラクネを利用していると言うのか? それと、黒鉄ナオトを捕縛することに何の関係がある? |
'Valkenhayn
And you're saying that's what they're using Arakune for? Does that have anything to do with the request to capture Kurogane Naoto? |
レリウス
ふむ……ドライブ能力者が何人襲われようと、 我々の知ったことではないが……。 |
Relius
Hm...we don't know how many people with Drives it has tried to attack, but... |
ヴァルケンハイン
おいおい、まさか俺たちは、遠回しに黒鉄ナオトの護衛を やらされているわけではあるまいな? |
'Valkenhayn
Hey, hey, don't tell me we've been indirectly asked to guard Kurogane Naoto. |
レリウス
あのキイロだ……その可能性は大いにあり得るだろう。 しかし『何故』……。 |
Relius
It came from that Kiiro...so the possibility of it is large enough. But "why"...? |
ヴァルケンハイン
……つくづく、不愉快な案件だ。俺は戻るぞ。 |
'Valkenhayn
...Either way, it's an upsetting request. I'm leaving. |
レリウス
……やれやれ。 |
Relius
...He never changes. |
サヤ
不愉快です。 なんなのですか、あの女は……! |
Saya |
ナオト
おい、落ち着けって、サヤ。 なんでお前が一番キレてんだよ。 |
Naoto |
シエル
周囲の敵性反応、完全に消えました。 追跡者もいないようです。 |
Ciel |
シエル
……どうやら、見逃してもらえたようですね。 ひとまず身の安全は確保されました。 |
Ciel |
ナオト
見逃す? どういう意味だよ。 |
Naoto |
シエル
あのキイロさんという女性ですが、 最初のふたりよりも戦闘力は遥かに上です。 |
Ciel |
シエル
ここにいる『全員』が本気を出したとしても…… おそらく、倒すことは難しいでしょう。 |
Ciel |
ナオト
なっ……マジかよ。 |
Naoto |
冥
とても戦闘員には見えなかったが、 見かけで判断するなということか……。 |
Mei |
サヤ
しかし不可解です。気持ちが悪いです。 あのアラクネとやらを放置しようなどと……。 |
Saya |
サヤ
よからぬ目論見があるはずです。 あの者たちはなにを企んでいるのでしょう。 |
Saya |
シエル
どうでしょうか……。ラーベさん、何か考えはありますか? |
Ciel |
ラーベ
……………。 |
Raabe |
シエル
あの……ラーベさん? |
Ciel |
ラーベ
……まずいな。 |
Raabe
...This is bad. |
1: また壊れちゃいましたか!? |
1: Are you broken again!? |
ラーベ
馬鹿者、違うわ。そうじゃない。 |
Raabe
No, you fool, not that. |
ラーベ
冥からこの世界にも御剣機関があると聞いたときに 考慮しておくべきだった……。 |
Raabe
When I heard from Mei that the Mitsurugi Agency also existed in this world, I should have been more careful. |
ラーベ
緋鏡キイロとか言ったか、あの小娘……。 奴は我々の存在に気がついて……いや、 |
Raabe
Hikagami Kiiro said as much. That she...was aware of our existence. No. |
ラーベ
我々の存在を『知っている』。 |
Raabe
That she "knows" of our existence. |
冥
なんだ? 同じ御剣機関なのだろ、 知っていて当然では無いのか? |
Mei
So what? You're from the same agency, so knowing of each other should be a matter of fact, right? |
Es
待ってください。……今、この世界『にも』と言いましたか? |
Es |
ラーベ
私も迂闊だな……シエルのことは言えんか。 |
Raabe |
ラーベ
まぁいい、頃合いだ。御剣機関が出てきたからには
コイツ等にも話しておいた方がいいだろう。
|
Raabe |
ナオト
おい、なんの話だよ……? |
Naoto |
ラーベ
お前達、悪いが少し私の話を聞いてほしい。 |
Raabe |
サヤ
申し訳ありませんが、おっしゃっている意味がわかりません。 |
Saya |
ラーベ
話した通りだ。シエルやレイ、そして私は、 この世界の存在ではない。 |
Raabe |
ナオト
は……? |
Naoto |
ナオト
あー……えっと……悪いけどマジで疲れてるんだ。 なるべく簡単に、わかりやすく説明してもらえるか? |
Naoto |
ラーベ
我々は別の事象世界の御剣機関で、 この世界を救いに来たと言ったんだ。 |
Raabe |
シエル
(救うのですね?) |
Ciel |
ラーベ
(大きな意味では間違ってはいないぞ。) |
Raabe |
ナオト
ごめん、やっぱ全然わかんねぇ……。 つまり、御剣機関なんだけど御剣機関じゃねぇんだよな? |
Naoto |
冥
あぁもう、黒鉄は黙っていろ。 それより『救う』とは一体何からだ? |
Mei |
冥
まさかあのアラクネとかいうやつが世界でも滅ぼすのか? |
Mei |
ラーベ
わからん、だがその『可能性』がないとも言えないな。 |
Raabe |
サヤ
曖昧ですね……。 |
Saya |
ラーベ
曖昧か……それでいい。まだ可能性があるのだから。 |
Raabe |
Es
どういう意味ですか? |
Es |
ラーベ
……もう一度言うぞ。 とにかくこの世界とは別の場所に存在する我々…… |
Raabe
I'll say it again. We who exist in this world in a different place... |
ラーベ
『御剣機関』が、あらゆる事象世界に、 とある異常現象が発生しているのを確認した。 |
Raabe
The Mitsurugi Agency has detected in different Phenomenon's worlds, certain abnormal phenomena. |
ラーベ
この異常はひどくなると、最終的にその世界が内包している 全ての可能性が消滅し……、 |
Raabe
If this abnormality grows bad enough, all possibilities contained in the world will be erased... |
ラーベ
やがて世界そのものも……。 |
Raabe
And the world itself will also... |
サヤ
……消滅する、とでも? |
Saya
Meet its end, you mean? |
ラーベ
そうだ。 |
Raabe
That's right. |
サヤ
何故そう言い切れるのです? |
Saya
How are you so certain of it? |
ラーベ
私たちの世界はそれが原因で消滅したからだ。 |
Raabe
Because our world was erased because of it. |
冥
なっ! |
Mei
Wha--! |
ラーベ
前に途中まで話した観測者という存在も、 その異常に大きく関わっている。 |
Raabe
It's also related to the "Observers" we spoke of earlier. |
ラーベ
だがな、この世界。いや、他にも世界はあるんだが、 その世界の異常を正せば、我々の世界も救うことができる。 |
Raabe
But you know, this world--no, there's other worlds out there too, but...if those worlds' abnormalities are corrected, then our world can also be saved. |
ラーベ
そのために、私たちはこの世界に浸入したわけだ。 |
Raabe
That's why we Dove into this world. |
ラーベ
…………。 |
Raabe
... |
冥
…………。 |
Mei
... |
サヤ
……正直に申しまして、信じがたいお話です。 |
Saya |
サヤ
あなたがたが、あのキイロとかいう不愉快な女と 手を組んでいて、私たちを陥れようとしている……。 |
Saya |
サヤ
という話のほうが、よほど真実味を感じますね。 |
Saya |
シエル
違います。私達に、サヤさんたちを陥れるつもりは ありません。 |
Ciel |
サヤ
違いなどありません、どちらにせよ不審であることは明白。 ……斬ります。 |
Saya |
ナオト
ちょっ、待てサヤ、落ち着け。 俺は……こいつらが嘘を言っているとは思えねぇんだ。 |
Naoto |
サヤ
……兄様? |
Saya |
ナオト
なんだっけ? じしょうせかい、だっけか? |
Naoto |
ナオト
その世界がどうとか、そういうややこしそうな話は 置いとくとして。 |
Naoto |
ナオト
もしキイロと組んでるんなら、昨日の夜のうちにでも 俺を閉じ込めるなり攫うなりできたはずだ。 |
Naoto |
ナオト
アラクネのことだって、マジで知らなかったみたいだし。 |
Naoto |
ナオト
それに、レイたちもキイロたちも、 めちゃくちゃ強いんだったら、 |
Naoto |
ナオト
いちいち小細工使って俺たちをだます必要なんかないだろ。 |
Naoto |
サヤ
ですが! |
Saya |
Es
私も……この方達が嘘を言っているようには感じませんでした。 |
Es |
ナオト
ほら。エスもそう言ってる。 |
Naoto |
冥
お前ら……なんとなくだとか、そう感じるだとか、 あやふやな感覚でことを片付けていないか? |
Mei |
冥
いうに事欠いて、別次元、異世界だぞ? それを信じるつもりなのか? |
Mei |
ナオト
ぶっちゃけ、ドライブだ、吸血鬼だ、なんてモノを 目の当たりにしたあとだ。 |
Naoto |
ナオト
今更、異世界人が出てきたって、マジかよとは思うけど、 そういうのもアリなんだって感じだよ。 |
Naoto |
1: ナオトさん…… |
1: |
シエル
ありがとうございます、ナオトさん。 |
Ciel |
ラーベ
ふむ、単純な人間は助かる。 |
Raabe |
ナオト
お前なぁ! せっかく信用してやるっつってんのに! |
Naoto |
サヤ
……はぁ。兄様がそうおっしゃるのであれば、 私の疑念は置いといて、今は……刃は収めるといたしましょう。 |
Saya |
サヤ
ですが、もし兄様の信用を裏切るような事があれば……。 |
Saya |
ナオト
おいサヤ、そう恐い顔すんなって。 |
Naoto |
サヤ
兄様はいつも楽観的なのです! ですから、私が心配ばかりせねばならないのです! |
Saya |
ナオト
う、ぐ。そ、それはお互い様だろ! お前だって、 いつも無茶ばっかして心配かけるじゃねぇか。 |
Naoto |
サヤ
私は無茶などしておりません。 |
Saya |
冥
あーはいはい。お前たちの仲が良いのはわかったから、 話を引っ掻き回すな。 |
Mei |
Es
冥は……どう思うのですか? |
Es |
冥
……結論から言えば、今は信用できん。 なので暫くの間は、様子を見させてもらう。 |
Mei |
シエル
了解です。現状の関係が続くのであれば、 信用を置いていただけなくても、問題はありません。 |
Ciel |
冥
…………。 |
Mei |
冥
まぁいい、他にも聞きたいこともあったが、 今夜はここまでだ。帰るぞ、エス。 |
Mei |
Es
はい。 |
Es |
サヤ
あの不愉快な連中に水を差されたままというのは、 いささか不満ですが……承知しました。 |
Saya |
ナオト
そうだな、正直俺も限界だ。 膝ががくがくしてきた。帰ろうぜ。 |
Naoto |
シエル
了解です。行きましょう、レイさん。 |
Ciel |
1: うん、そうだね |
1: |
ナオト
お前もお疲れさん。帰ったらゆっくり―― |
Naoto |
1: え? |
1: |
冥
私とエスはこっちだ。今夜はここで―― |
Mei |
サヤ
お休みなさい。また―――― |
Saya |
Es
はい―― ―――― |
Es |
―――――――― ―――――――――――――――― |
|
1: あれ? 誰もいない? |
1: |
1: え? ……誰? |
1: |
…………。 ……………………。 |
|
…………。 ……………………。 |
|
1: !? |
1: |
シエル
レイさん! |
Ciel |
1: うわっ! びっくりした! |
1: |
シエル
どうかしたんですか? 何度か呼びかけたんですが、 ぼんやりとしたままでしたよ? |
Ciel |
ラーベ
……なにかあったのか? |
Raabe |
1: 夢……? |
1: |
シエル
夢を見ていたのですか……? |
Ciel |
ラーベ
女の子って、冥とエスならもう帰ったぞ。 |
Raabe |
シエル
女の子の夢……ですか? |
Ciel |
ラーベ
おい、こんなところで寝るなよ? せめてナオトの家までは耐えろ。 |
Raabe |
ラーベ
(…………夢だと?) |
Raabe |
ナオト
…………。 |
Naoto |
サヤ
兄様? 兄様! |
Saya |
ナオト
あっ……え? |
Naoto |
サヤ
やっと気付いてくださいましたね。 お疲れでしょうが、もう少しの辛抱……。 |
Saya |
ナオト
い、今、女の子がいなかったか? 背の、低い……。 |
Naoto |
ナオト
よくわかんねぇ……。 はっきり顔が見えたわけじゃねぇけど……。 |
Naoto |
ナオト
ただ急に、周りに誰もいなくなって。 で、振り返ったら……その辺りに立ってたんだ。 |
Naoto |
シエル
ナオトさんも女の子を見たのですか? |
Ciel |
ナオト
ああ……たぶん。つか、もって? |
Naoto |
シエル
レイさんも女の子の夢を見たと言っていました。 |
Ciel |
サヤ
お二人共……? まさか心霊現象の類ですか? 兄様達がなにを見たのか、わかりかねますが……。 |
Saya |
サヤ
少なくとも私たちは、ずっとここにおりましたし、 そのようなものは見ておりません。 |
Saya |
サヤ
まさか……『狩人の眼』が霊体までも見れるように なったのでは……? |
Saya |
ナオト
やめてよ怖い!! 幽霊とか勘弁して!! |
Naoto |
サヤ
まぁ……異世界人をも受け入れる兄様が、 幽霊を怖いなどと……お可愛いことですね。 |
Saya |
ナオト
う、うるせぇ……。 |
Naoto |
サヤ
ふふふ、冗談です。きっとお二人共お疲れなのでしょう。 まずはしっかりと、体を休めてくださいませ。 |
Saya |
シエル
そうですね、帰投しましょう。 |
Ciel |
ラーベ
……どうした? なにかもの言いたげだな。 |
Raabe
What's up? You look like you have something to say. |
1: さっきの話…… |
1: Earlier, you said... |
ラーベ
聞いた通りだ。私が……いや、フガクにいる破城カガミが 存在していた世界は、すでに消滅している。 |
Raabe
It's just as you heard. My world--no, the world of the Hajou Kagami in Fugaku--has already been destroyed. |
ラーベ
詳しく知りたければ、本人に聞け。 今はこの世界での任務に集中しろ。 |
Raabe
If you want to know more, you should ask her yourself. For now, focus on the mission. |
1: ………… |
1: ... |
ラーベ
それじゃ、部屋に戻るぞ。今は休息が必要だ。 体を壊されたりしたら、任務に支障が出る。 |
Raabe |
第6節 少女①/ 6. Girl - 1
Summary | |
---|---|
病弱なサヤが不在の中、シエルたちはレリウ
スやキイロの介入を考慮しつつも、引き続き アラクネの捜索を続ける。 |
With Saya absent due to her illness, Ciel's group continues their hunt for Arakune while keeping an eye out for Kiiro, Relius, and Valkenhayn's interference. |
…………。 |
.... |
……を……探して。 そして、私を……。 |
...Find.... And...me.... |
私を……けて……。 |
...ve...me... |
ナオト
う〜〜〜……くそ……はいはい、起きてますよ〜。 起きる気持ちはあったんですよ〜、ひなたさ〜ん……。 |
Naoto |
ひなた
朝ごはん、もう少しかかるから、待っててね。 |
Hinata |
シエル
いつもありがとうございます。ひなたさん。 |
Ciel |
ひなた
いえいえ。気にしないで、ナオトちゃんの分を作るのも、 みんなの分を作るもの一緒だから。 |
Hinata |
1: お腹が空いてきた |
1: |
ひなた
今日はナオトちゃんと学校行かないといけないから、 簡単なメニューでごめんね。 |
Hinata |
ひなた
でもその分、週末はごちそう頑張るから。 |
Hinata |
ナオト
んな張りきらなくてもいいって。 作ってもらえるだけでありがたいんだから。 |
Naoto |
ナオト
それに、お前が作ればなんだってご馳走だよ。 いつも目茶苦茶うまいじゃん。 |
Naoto |
ひなた
そ、そうかな? そんなことないよ、普通だよ。 でも……ありがと、ナオトちゃん。 |
Hinata |
ナオト
…………。 |
Naoto |
ひなた
ん? なに? どうしたの? |
Hinata |
ナオト
いや、なんでもない。まだちょっと寝ぼけてるみたいだ。 |
Naoto |
ひなた
まだ顔洗ってないんでしょう。 ご飯の用意しておくから、支度しておいでよ。 |
Hinata |
ナオト
そうだな。そうするか。 |
Naoto |
シエル
おふたりは仲がいいのですね。 まるで夫婦のやりとりのようです。 |
Ciel |
ひなた
えぇっ!? そ、そんなこと……。 私たち、ただの幼馴染みだよ。ね、ナオトちゃん? |
Hinata |
ナオト
……そうだよ、変なこと言うなって。 ガキの頃から一緒だから家族みたいなもんだ。 |
Naoto |
シエル
そうでしたか。すみません、家族というものをあまり詳しく 知らないものですから。 |
Ciel
So that was the case. I'm sorry. I'm not very familiar with family matters. |
シエル
おふたりは夫婦のようなのではなく、家族のようなのですね。 |
Ciel
So you two are close like family, not close like a couple. |
ナオト
そんな感じだ。 |
Naoto |
ラーベ
なんだつまらん。幼馴染の女の子など良いフラグではないか? |
Raabe |
ナオト
やめろって、そういうんじゃねぇよ。……マジでさ。 つか、何だよフラグって。 |
Naoto |
シエル
……フラグ? |
Ciel |
ひなた
あはは……。 |
Hinata |
冥
遅いぞ。……と言いたいところだが、時間通りか。 チッ、几帳面どもめ。 |
Mei |
ナオト
褒めろとは言わねえが、なんだその悪態は。 |
Naoto |
冥
通常営業だ。 |
Mei |
Es
サヤさんは、一緒ではないのですか? |
Es |
シエル
体調不良だそうです。 おそらく、昨日の戦闘が原因でしょう。 |
Ciel |
ナオト
本人は大丈夫だとか言ってたけど、電話口の声がすでに 駄目そうだったからな。無理やり休ませた。 |
Naoto |
冥
それがいい。……最近、あまり調子がよくなさそうだな。 |
Mei |
ナオト
ああ。スタミナもなんとなくなくなってる気がするし。 体壊してるんじゃないといいんだけどな。 |
Naoto |
Es
サヤさんの分も、私たちが頑張りましょう。 |
Es |
シエル
了解です。 |
Ciel |
ラーベ
とりあえず、昨夜の仕切り直しだ。 蟲を叩き、アラクネを引きずり出す。 |
Raabe |
ラーベ
蟲の発生源は、間違いなく、あのアラクネだからな。 蟲の分布さえ分かれば、捜索場所も絞れる。 |
Raabe |
ナオト
アラクネの件はいいとして、またあの御剣…… いや、キイロに邪魔されたらどうすんだ? |
Naoto |
ラーベ
大丈夫だ、奴はしばらく出て来ない。なので遠慮なくやれ。 なんなら、アラクネを倒してしまってもいいぞ。 |
Raabe |
1: えっ!? |
1: |
ラーベ
構わん。もしアラクネが、私たちが探している 存在なのだとしたら、奴が倒される前に事態が動くはずだ。 |
Raabe |
ラーベ
それでアラクネの正体がはっきりするだろう。 |
Raabe |
Es
不確実かつ、極めて危険な方法です。 |
Es |
Es
万が一アラクネがターゲットであり、それを実際に 倒してしまったら、取り返しはつくのですか? |
Es |
ラーベ
つかんな。まぁ『もう一度やり直し』が出来るのなら 話は別だが。 |
Raabe |
冥
やり直すってなんだ。ループもののストーリーでもあるまいし、 そんな簡単に言うな! |
Mei |
ラーベ
万が一の話だ。 それに……私の予測が正しければ、そうはならない。 |
Raabe |
ナオト
……信用していいんだろうな? |
Naoto |
ラーベ
信用? ……あの緋鏡キイロも言っていただろう? |
Raabe |
ラーベ
御剣機関を舐めるな……と。 |
Raabe |
ラーベ
我々も『御剣機関』だ。 |
Raabe |
冥
…………。 |
Mei |
ラーベ
緋鏡キイロの動向に関しても、今は警戒しなくていい。 |
Raabe |
ラーベ
奴らが本気なら、私たちはここに集まることすら 出来なかったはずだ。 |
Raabe |
ナオト
……向こうがその気なら、 みんなが集まる前に襲撃されてるってことか。 |
Naoto |
シエル
私達の戦力を考慮すると、各個撃破が最も有効な戦術です。 |
Ciel |
ラーベ
そういうことだ。 特にナオト、お前はあのキイロから狙われているんだぞ。 |
Raabe |
ラーベ
ひとりであのヴァルケンハインとレリウスの相手をできるか? |
Raabe |
ナオト
くそっ……できねぇよ。 |
Naoto |
冥
……悔しいが、ラーベの言っていることはもっともだな。 |
Mei |
冥
そして我々は、蟲の被害をこれ以上広げないためにも、 アラクネをどうにかする必要がある。まごついている暇はない。 |
Mei |
Es
そうですね。とりあえず可能な限り蟲を排除し、 アラクネを誘い出すことを優先しましょう。 |
Es |
Es
今夜の組み分けはどうしますか? |
Es |
冥
襲撃の可能性がなくなったわけではない。 黒鉄をひとりにはできん、エス、ついていけ。 |
Mei |
Es
わかりました。 |
Es |
冥
私はレイたちと一緒に行こう。 |
Mei |
ラーベ
いいだろう。 ……ああ、そうだ。 |
Raabe |
ラーベ
もし御剣機関の連中と遭遇したら、すぐに連絡してこい。 お前たちふたりでも対処できる相手じゃないからな。 |
Raabe |
ナオト
こねぇんじゃねぇのかよ!? |
Naoto |
ラーベ
もしもだ、もしも。 |
Raabe |
ラーベ
特にヴァルケンハインは、挨拶代わりにお前を殺すような奴だぞ。 行動が読めん。 |
Raabe |
ナオト
うっ……全く否定できねぇ……。 |
Naoto |
シエル
ナオトさん、エスさん、気を付けてください。 |
Ciel |
Es
ありがとうございます。 レイさんたちも、十分気を付けてください。 |
Es |
1: 了解! |
1: |
蟲憑き
う……あ……。 |
Bugs |
冥
蟲憑きか……面倒だな。 |
Mei |
シエル
ですが放っておけば、一般市民への被害が想定されます。 対処するべきかと思いますが……どうしますか? |
Ciel |
1: これも任務の一環 |
1: |
シエル
わかりました。……対象を捕捉、認識。 戦闘行動に移行します。 |
Ciel |
第6節 少女②/ 6. Girl - 2
Summary | |
---|---|
アラクネは観測者ではないと考えているラー
ベ。今後の手がかりについてラーベと冥が話 す間、再び謎の少女がアプローチする。 |
Raabe thinks that Arakune might not be the Observer. Raabe and Mei go over the circumstance with each other when the mysterious girl approaches them again. |
正体を明かし、語りかけてくる少女。レイチ
ェル=アルカードと名乗った少女は、自身を 吸血鬼であると言う。 |
Revealing herself, the girl begins a conversation with Rei. She calls herself Rachel Alucard, and she is a vampire. |
冥
この辺りの蟲は概ね片付けたかな? |
Mei |
シエル
……そうですね。反応は感知できません。 |
Ciel |
ラーベ
なら、ちょっと一息入れるか。 こちらはレイがいるし。 |
Raabe |
ラーベ
のんびりしていても、そのうち向こうからうじゃうじゃと 集まってくれるだろう。 |
Raabe |
1: うじゃうじゃ……想像したら…… |
1: |
冥
確かに、あまり嬉しくない光景だな……。 |
Mei |
冥
ずいぶん余裕じゃないか。 |
Mei |
冥
まぁいい。ところで……ラーベ。聞きたいことがある。 |
Mei |
ラーベ
なんだ、やっとか……。待ちくたびれたぞ。 |
Raabe |
冥
ふん……前に言っていた世界の異常…… 観測者だかなんだか知らんが……。 |
Mei |
冥
お前、アラクネはハズレだと思ってるんじゃないか? |
Mei |
ラーベ
どうしてそう思う? |
Raabe |
冥
先程の話だ。お前はまるで、アラクネの先にこそ対象がいる…… とでも言いたげだったぞ。 |
Mei |
冥
キイロとやらが我々を泳がしているのも、 それが理由なんだろ? |
Mei |
ラーベ
さすがは陰陽師……いや、天ノ矛坂か。 |
Raabe |
ラーベ
そうだ、アラクネは多分『駒』だ。この事態の元凶ではない。 |
Raabe |
冥
駒か……やはりキイロのか? |
Mei |
ラーベ
いや、まだそうだと断定しているわけではない。 |
Raabe |
ラーベ
なにせアラクネがどういう存在なのか、 まるで情報がないんだからな。 |
Raabe |
ラーベ
アラクネと相見えたのは一度だけだ。 私たちはまず、奴が何者なのかを詳しく知る必要がある。 |
Raabe |
冥
……確かに。 |
Mei |
ラーベ
だがまぁ、ぶっちゃけ、アラクネを追う以外に 取っ掛かりがないと言うのが本音だ。 |
Raabe |
ラーベ
あの緋鏡キイロにちょっかい出すのは危険すぎるしな。 |
Raabe |
シエル
冥さんは、以前に御剣機関とお仕事されたことがあると 言っていました。なにか情報などはありせんか? |
Ciel |
冥
あぁ……いや……その、そのことなんだが……。 |
Mei |
シエル
どうされました冥さん。 |
Ciel |
冥
う、うむ……実はな……。 |
Mei |
ラーベ
なんだ、歯切れが悪いな。はっきり言ってくれ。 |
Raabe |
冥
私は……今回の件、 御剣機関の依頼で動いているわけではないのだ。 |
Mei
I...didn't actually take this request from the Mitsurugi Agency. |
1: え? |
1: What? |
冥
ま、まぁ、ある意味、御剣機関とも言えるんだぞ! |
Mei
W-well, in a sense, you could say it came from the Mitsurugi Agency! |
冥
えっとだな……5年ほど前だ……。 御剣機関の『ウノマル』という者からメールが来て…… |
Mei
Let's see...it was five years ago...I received an email from someone called "Unomaru" from the Mitsurugi Agency. |
冥
ただ一言『この街を護って欲しい』と書いてあった。 |
Mei
It had only one sentence in it: "I want you to protect this city." |
冥
私も天ノ矛坂の人間だからな。 御剣機関の名くらいは知っている。 |
Mei
I am from the Amanohokosaka clan, so I'd at least heard of the Mitsurugi Agency before. |
冥
始めは悪戯かと思った。だが、それ以来、少なくない額が 天ノ矛坂に入金され続けている。 |
Mei
At first, I thought it was a prank. But after that, a non-negligible sum of money kept being deposited to the Amanohokosaka Clan's account. |
冥
……我が天ノ矛坂家は財政難だったのでな。 正直言って、助かった。 |
Mei
...Our clan was having some financial difficulties. So it really saved us. |
冥
だから私は依頼通り、この街を護ると決めたのだ……。 |
Mei
That's why I've decided to protect this city as I was requested.... |
冥
入金されている間はな! |
Mei
AS LONG AS WE'RE PAID! |
1: 律儀だ! |
1: How honest! |
ラーベ
かわいい所があるじゃないか、冥ちゃん。 |
Raabe |
冥
うっさいわい! それと貴様が冥ちゃんと呼ぶな!! |
Mei |
シエル
それより何者ですか? そのウノマルさんという方は? |
Ciel
So, do you know who that Unomaru is? |
冥
色々と調べたが全くわからん……。 |
Mei
I tried looking into it, but I have no idea.... |
冥
とにかくだ、以上の理由で、 私は御剣機関との連絡手段を持ち合わせていない! |
Mei
Anyway, due to those circumstances I just described, I point of contact with the Mitsurugi Agency at all! |
ラーベ
……胸を張って言うことでもないだろう。 |
Raabe
...I don't think that's something to be proud of. |
冥
ふん。 |
Mei
Ahem. |
シエル
どうかしましたか? 渋いお顔ですが……。 |
Ciel |
冥
お前なぁ。……いや、なんでもない。 それともう一つ、聞きたいことがある。 |
Mei |
シエル
何でしょうか? |
Ciel |
冥
昨日、お前たちが話していた世界を救う理由だが…… っておい、レイ? |
Mei |
シエル
――――、―― |
Ciel
――――,―― |
冥
……、…………、―――― |
Mei
……,…………,―――― |
ラーベ
――、……、―― |
Raabe
――,……,―― |
…………。 ……………………。 |
... ... ... |
1: まただ…… |
1: ...This again. |
…………。 ……………………。 |
... ... ... |
1: 君は誰? /あなたは誰? |
1: Who are you? |
少女
……。……の? |
Girl
... ...me? |
少女
あなた……私の姿が、見えるの? |
Girl
Can you... see me? |
少女
……いいえ。まだはっきりとは、見えていないようね。 でも、声はようやく……た、かしら……。 |
Girl
....No. It seems it's not clear, yet. But my voice...finally...suppose. |
少女
……嫌ね。こんな形で……しかないなんて……。 |
Girl
...Terrible. To have to...like this... |
少女
…………よ。 ……とりあえず……悪く思わないで。 |
Girl
...Well. ...In any case... don't think poorly of me. |
少女
……意識ははっきりしているかしら? |
Girl |
少女
そう。私の声はどう? 途切れることなく……聞こえていて? |
Girl |
少女
……そう。それと……一応、合格点をあげるわ。 でもね、これは必要なことなの。 |
Girl |
1: 合格? 必要? なんのこと? |
1: |
少女
心配しなくても大丈夫よ。一緒にいた子たちは、 さっきと同じ場所で、同じ姿でいるわ。 |
Girl
There's no need to worry. The children you were with are still where you left them, in the same place, in the same form. |
少女
あなたもそう。私が呼びかけた一瞬、 あの瞬間で時間は止まったまま……。 |
Girl
And you're the same. The moment I called out to you, time stopped... |
少女
……『事象干渉』の真似事よ。 |
Girl
...in an imitation of "Phenomenon Intervention." |
少女
事象そのものではなく時間軸に干渉しているだけ。 |
Girl
It only interferes with the time axis, rather than with the Phenomenon itself. |
少女
……ああ……また。 長くはこうしていられないわね……。 |
Girl
...Ah, there it is again. We can't stay like this for very long... |
少女
ここは……とても脆い世界。脆弱な場。だから少し力加減を 間違えれば、なにもかもを壊してしまうかもしれない。 |
Girl
This place is...a very brittle world. A fragile place. If one doesn't hold back just enough, everything could come crumbling down. |
少女
……不思議そうな顔をしているわね。 |
Girl
...You have a most strange expression on your face. |
少女
ええ……知っているわ。この世界がどんな場所なのか。 だからこそ……私にはあなたが必要なの。 |
Girl
Yes...I know. I'm aware of what kind of place this world is. That's why... I need you. |
少女
だから私の顔を、よく覚えておきなさい、未熟な観測者さん。 そして、忘れないで。 |
Girl
So be sure to remember my face, novice Observer. And don't forget. |
レイチェル
私の名はレイチェル=アルカード。 吸血鬼よ。 |
Rachel
My name is Rachel Alucard. I'm a vampire. |
第6節 少女③/ 6. Girl - 3
Summary | |
---|---|
レイチェルと話したことをラーベにも共有す
る。そして新たなる情報を求めるべく、御剣 機関の黒服を見つけ、捕獲を試みる。 |
Rei tells Raabe about the conversation with Rachel. Looking for new information, they find some black suits from the Mitsurugi Agency and try to catch them. |
尋問するはずが、捕獲の際にシエルは黒服を
気絶させてしまう。そこへレイチェルが初め てラーベ達の前に姿を現す。 |
Although they tried to capture the black suits for questioning, Ciel accidentally knocks them out. Rachel appears for the first time before Raabe and Ciel. |
ラーベ
『レイチェル=アルカード』…… 確かに、そう名乗ったんだな? |
Raabe |
1: はい |
1: |
シエル
アルカードは、最強の吸血鬼の一族だと、 前にラーベさんが言っていました。 |
Ciel |
ラーベ
そうだ。 レイが会ったという自称吸血鬼も……。 |
Raabe |
ラーベ
まぁ、吸血鬼という一族はプライドが高い。 まず嘘はついていないだろう。おそらく同じ一族だ。 |
Raabe |
シエル
そんなに、すごい一族の名前なのですか? |
Ciel |
ラーベ
そりゃあもう。『すごい』なんて言葉では到底足りないが、 『すごい』以外に言いようもない。 |
Raabe |
ラーベ
もし本当のアルカードなら、少なくともなんらかの 関わりがある存在なんだろう。それに……。 |
Raabe |
ラーベ
ラケルと顔がよく似ていたんだろう? |
Raabe |
1: 歳はラケルのほうが上に見えた |
1: |
ラーベ
……ふむ、それにしても『レイチェル』か…… ラケルを語源とする名前なのだが……。 |
Raabe |
ラーベ
しかしまぁ、こう短期間に アルカードの名を持つ者がふたりも現れるとはな。 |
Raabe |
ラーベ
この土地はよほど吸血鬼に縁があるらしい。 ……というより、アルカード家に縁があるのか? |
Raabe |
シエル
もしかしたら、観測者が アルカードの一族に縁深いのかもしれませんね。 |
Ciel |
ラーベ
その可能性もあるな。 |
Raabe |
ラーベ
気になるのは、レイと レイチェル=アルカードの接触を |
Raabe |
ラーベ
こちらでまったく感知できていない点だ。 |
Raabe |
シエル
はい。1秒に満たない時間と思われます。 |
Ciel |
ラーベ
話からして、おそらく事象干渉ではあるんだろうが…… |
Raabe |
ラーベ
ファントムフィールド内の事象に干渉するなんて、 並大抵のことじゃないんだぞ。 |
Raabe |
シエル
そうなのですか? |
Ciel |
ラーベ
ああ。ファントムフィールドは例外なく、 観測者という絶対的な存在によって形作られている。 |
Raabe |
ラーベ
だから、そこへ割って入って事象に干渉するなんて、 本来は不可能なことだ。 |
Raabe |
シエル
ですがレイさんは、それを可能にしました。 |
Ciel |
ラーベ
だから特別なんだよレイのドライブは……ん? |
Raabe |
ラーベ
……もしかしたらレイチェル=アルカードは、 この世界にではなく |
Raabe |
ラーベ
レイに干渉した可能性があるな……。 |
Raabe |
1: 僕に?/私に? |
1: |
シエル
しかし困りました……その様な形で接触されると レイさんを、守ることが出来ません……。 |
Ciel |
ラーベ
ふむ……レイ。 |
Raabe |
ラーベ
レイチェル=アルカードは、再びお前にコンタクトを 取ってくるだろう。 |
Raabe |
ラーベ
まぁ今のところ敵意はないみたいだが、十分に警戒するように。 そしてできることなら、彼女の目的を探ってほしい。 |
Raabe |
ひなた
お待たせ〜。 |
Hinata |
シエル
ひなたさん。お財布は見つかりましたか? |
Ciel |
ナオト
ああ。結局うちの玄関にあったよ。 |
Naoto |
ひなた
もう、なんで出るときに気付かなかったんだろう。 ずいぶん待たせちゃったよね、ごめんね。 |
Hinata |
シエル
いえ、問題ありません。 |
Ciel |
ナオト
ほら、行こうぜ。俺はいいけど、生徒会役員が忘れ物して 遅刻ってのは、カッコつかないからな。 |
Naoto |
ひなた
あはは。私だけじゃなくて、ナオトちゃんも遅刻は駄目だよ。 でも私が生徒会役員なんて、なんだか変な感じだなぁ。 |
Hinata |
ナオト
そうかもな。にしても……学校かぁ。 今、勉強とかって気分じゃねぇんだよなぁ……。 |
Naoto |
ひなた
ラケルちゃんのことが気がかりなのはわかるけど、 自分のことはちゃんとしてないと。 |
Hinata |
ひなた
目が覚めたときに、ナオトちゃんの生活が目茶苦茶に なってたら、ラケルちゃんも嬉しくないと思うよ。 |
Hinata |
ナオト
そうかなぁ。あいつ、その辺わりと適当っつーか……。 |
Naoto |
ナオト
こっちの生活なんて知ったこっちゃないって感じだろ。 |
Naoto |
ひなた
そんなことないと思うよ。ナオトちゃんのことも、その周りの ことも、ラケルちゃんなりに大事に思ってくれてるよ。 |
Hinata |
ナオト
どうだかな。 |
Naoto |
シエル
ラケルさんは、優しい人なんですね。 |
Ciel |
ナオト
どっちかっていうと、素直じゃないお人良しって感じかな。 |
Naoto |
ナオト
それじゃ、学校行ってくるわ。 |
Naoto |
シエル
いってらっしゃいませ。 ご武運を祈っています。 |
Ciel |
ナオト
ありがとよ。 |
Naoto |
ひなた
みんなは、これからどうするの? 放課後また一緒に帰るって言ってたけど? |
Hinata |
ラーベ
この辺りを適当にブラついてみるつもりだ。 |
Raabe |
ラーベ
地図はインストールしたが、実際に歩いてみるとまた違った 発見があるものだからな。 |
Raabe |
ひなた
そっか。あ、それならこの先の交差点にコンビニがあって、 右に曲がると美味しい喫茶店もあるよ。 |
Hinata |
シエル
了解しました。情報、ありがとうございます。 |
Ciel |
ひなた
それじゃあ、またあとで。 |
Hinata |
シエル
見てください、レイさん。 あれがきっと体育館です。資料で見たことがあります。 |
Ciel |
シエル
……これが本物の『学校』なんですね。 思っていたより、小さいです。 |
Ciel |
ラーベ
そうか、シエルは学校を見るのが初めてか? |
Raabe |
シエル
以前イシャナでも見ましたが、イシャナの魔法学校は どちらかというと研究施設のような印象がありました。 |
Ciel |
シエル
ここは、資料で見た『学校』というものに 非常に近い造りをしています。 |
Ciel |
ラーベ
そうかもな。 さて……そろそろ行きたいんだが、気はすんだか? |
Raabe |
シエル
はい。気がすみました。 ……本当は内部も見てみたかったですが。 |
Ciel |
ラーベ
不可能じゃないだろうが、ちょっと手間がかかるな。 今回は諦めろ。 |
Raabe |
シエル
わかりました。諦めます……。 |
Ciel |
シエル
ですが、どこへ向かいますか? 蟲は夜でないと、活動しません。 |
Ciel |
1: コンビニで情報誌でも買ってみる? 喫茶店でメニューでも調査してみる? |
1: |
ラーベ
興味がないわけじゃないが、実はちょっと確認したいことが あってな。とりあえず、指示通りに移動してみてくれ。 |
Raabe |
シエル
了解しました。 |
Ciel |
シエル
反応……検索……照合。 |
Ciel |
シエル
申し訳ありません。反応が多すぎて何を特定すればいいのか わかりません……。 |
Ciel |
ラーベ
まぁ住宅街だしな。私たちの移動パターンと類似するモノ だけに絞れ。 |
Raabe |
シエル
……いくつか該当する反応がありました。 |
Ciel |
ラーベ
まあ、それでいいか。 よし、その反応の横合いへ出るように先導しろ。 |
Raabe |
黒服
なっ……! 馬鹿な、貴様らどこから……! |
Black Suit |
シエル
彼らは……確か御剣機関の。 |
Ciel |
ラーベ
緋鏡キイロの部下だな。 我々と黒鉄ナオトらを監視し、尾行していたんだろう。 |
Raabe |
シエル
申し訳ありません、レイさん。 尾行を感知できませんでした。 |
Ciel |
ラーベ
気にするな。連中は蟲などと違って普通の人間だ。 敵意を隠し、人波に紛れられたら、見分けるのは難しい。 |
Raabe |
黒服
ちっ……。 |
Black Suit |
シエル
逃亡しようとしています、どうしますか? |
Ciel |
ラーベ
捕獲しろ。 |
Raabe |
ラーベ
せっかく近くまで来てくれたんだ。じっくり、色々と 話を聞かせてもらおうじゃないか……フフフッ。 |
Raabe |
1: 了解! |
1: |
シエル
了解。対象を捕獲します。 |
Ciel |
ラーベ
つべこべ言ってないで、さっさと捕まえろ。 |
Raabe |
黒服
ぐはぁっ……。 |
Black Suit |
シエル
対象、捕獲しました。 |
Ciel |
ラーベ
よしよし。……って、気を失ってるじゃないか! これじゃあ、この世界の御剣機関の情報が聞き出せんぞ。 |
Raabe |
シエル
も、申し訳ありません。 |
Ciel |
ラーベ
仕方ない。直接こいつらの脳から情報を引き出すか……。 なに、少し頭に穴を空けるだけだ、死にはしないだろ。 |
Raabe |
1: ち、ちょっと待って! |
1: |
レイチェル
お取込み中、失礼。 |
Rachel |
シエル
わ……! |
Ciel |
レイチェル
ごきげんよう。『異物』の皆さん。 |
Rachel |
第6節 少女④/ 6. Girl - 4
Summary | |
---|---|
レイチェルはある目的のため現れたが、途中
不穏な気配を感じ、姿を消す。彼女と入れ違 いに、レリウスが現われる。 |
Rachel appeared for a reason, but she notices someone unsettling and disappears again. In her place, Relius arrives. |
シエルたちの観察が終わり、立ち去るレリウ
ス。その彼の前に現われた青年ハザマは、何 かの知らせを携えているようだった。 |
After Relius finishes monitoring Ciel's group, he leaves. A young man, Hazama appears before him with news. |
1: 君は……! |
1: | |
1: あなたは……! |
1: | |
レイチェル
ごきげんよう。『異物』の皆さん。 不思議の国の探検はいかがかしら? |
Rachel | |
レイチェル
レイは言いつけどおり、名前は覚えたみたいね。 でも、不合格。レイチェル様とお呼びなさい。 |
Rachel | |
ラーベ
……今のは、空間転移? しかもこの反応、まさか転移魔法か? |
Raabe
Just now…was that spatial transportation? And moreover, this reading...don't tell me it's teleportation? | |
レイチェル
あら。そう珍しいものでもないでしょう? 御剣機関のお嬢さん。 |
Rachel
Oh my, is it really that rare? Little lady from Mitsurugi. | |
ラーベ
レイチェル……。お前がレイチェル=アルカードか。 |
Raabe
Rachel...You're Rachel Alucard, right? | |
レイチェル
破城カガミ。
それとも |
Rachel
Hajou Kagami. Or do you prefer | |
ラーベ
好きにしろ。しかしその口振りだと、 認識している、ということか。 |
Raabe
Call me whatever you want. But I can say your speech sure is recognizable. | |
ラーベ
このファントムフィールドを。 |
Raabe
In this Phantom Field. | |
レイチェル
……正確には違うわ。認識しているのは私ではなく『あの人』。 私は教え聞かされただけ。 |
Rachel
...That's technically incorrect. The one you recognize isn't me but "that person." I only learned it from them. | |
シエル
あの人、とは誰のことですか? |
Ciel
Who is "that person?" | |
レイチェル
私は、貴女とお話に来たのではないの。 |
Rachel
I didn't come here to speak with you. | |
レイチェル
それに、聞けばなんでも答えてもらえると 思わないほうが良いわよ。 |
Rachel
And don't think I'll answer just because you ask. | |
シエル
以降注意します。 では、アナタの目的はなんなのですか? |
Ciel
Thank you for the warning. So why did you come here, then? | |
レイチェル
…………。 |
Rachel
.... | |
レイチェル
……まぁいいわ。会いに来たのよ、レイに。 |
Rachel
...Fine. I came to see you, Rei. | |
1: 僕に? /私に? |
1: Me? | |
レイチェル
ひとつは、確認するため。 私の姿を問題なくあなたが認識できているかどうか。 |
Rachel
Before that, there's something I'd like to verify. Can you perceive me properly? | |
レイチェル
……これは問題なさそうね。あなたどころか、 あなたのお友達にも私の姿が見えているみたいだし。 |
Rachel
...Looks like that's not a problem. And it's not just you, but your friends who can see me too. | |
レイチェル
……信じがたいことだけれど、本当だったのね。 |
Rachel
...As hard as that is to believe. | |
シエル
何がですか? |
Ciel
What do you mean? | |
レイチェル
こちらの話よ。気にする必要はないわ。 |
Rachel
Oh, it's nothing for you to worry about. | |
レイチェル
それから、もうひとつの目的は……知るためよ。 |
Rachel | |
レイチェル
あなたたちが……いいえ『あなた』が、 なんの目的でこの世界にやってきたのかを、ね。 |
Rachel | |
1: 僕の……目的?/私の……目的? |
1: | |
ラーベ
答えるなレイ、呑まれるぞ。 |
Raabe | |
レイチェル
驚いたわ、見かけによらず過保護なのね。 |
Rachel | |
シエル
ラーベさん、一体何が……? |
Ciel | |
ラーベ
|
Raabe
Slave Red...Something vampires have. It's like a type of coercion. | |
ラーベ
吸血鬼。 私の部下にあまりふざけた真似をするなよ……。 |
Raabe | |
レイチェル
あら……怖い。 せっかく、あなた達の手間を省いてあげようかと思ったのに。 |
Rachel | |
シエル
手間? レイさんに何をさせるつもりですか!? |
Ciel | |
レイチェル
あなた達と同じ……この世界の『解放』よ……。 それが本当にレイの目的ならのお話だけど。 |
Rachel | |
ラーベ
……何だと? |
Raabe | |
レイチェル
いかがかしらレイ。 |
Rachel | |
レイチェル
私の下僕になれば、この子達よりも上手くこの異変を解決して、 この世界を解放してあげられるわ。 |
Rachel | |
1: お断りします |
1: | |
レイチェル
あら、即答。フフッ……少しさみしいわね。 |
Rachel | |
シエル
レイさん……。 あの、その……懸命なご判断だと思います。 |
Ciel | |
ラーベ
こちらからも質問だ、レイチェル=アルカード。 |
Raabe | |
レイチェル
……まぁいいわ。袖にされたから、もう帰ろうと 思ったのだけれど……聞いてはあげる。 |
Rachel | |
レイチェル
ただし、答えるかどうかは、約束しないわよ。 |
Rachel | |
ラーベ
お前……この世界の観測者が誰か知っているのか? |
Raabe | |
レイチェル
知らないわよ。当たり前でしょ。 |
Rachel | |
ラーベ
ちっ……やはりそういうことか……。 |
Raabe | |
シエル
あの、ラーベさん。どういうことなのですか? |
Ciel | |
ラーベ
この吸血鬼は、レイを この世界の上位観測者にするつもりだ。 |
Raabe
This vampire's thinking of making Rei become a superior Observer of this world. | |
1: 上位観測者? |
1: Superior Observer? | |
レイチェル
流石は |
Rachel
That's the | |
レイチェル
そうよ、レイが上位観測者になれば、 この世界の窯はすぐにでも破壊可能だわ。 |
Rachel
That's right, if Rei becomes a superior Observer, it'll even be possible to destroy the Cauldron immediately. | |
レイチェル
私の下僕になれば……の、お話だけど。 |
Rachel
However, that's only if Rei becomes my servant. | |
シエル
そうなのですか? |
Ciel
Really? | |
ラーベ
……可能だろう。本当にコイツがアルカードの吸血鬼ならな。 |
Raabe
...It's possible. If she really is a vampire of the Alucards. | |
ラーベ
だがその場合、この世界で、レイが主体の 再構成が始まる。どんな不具合が出るかわかったもんじゃない。 |
Raabe
...But if that happens, the world will begin reconstructing itself with Rei as the core. We don't know what might go wrong during that. | |
レイチェル
あら、あなた達の『システム』は そのために在るのではなくて? |
Rachel
My, I thought that was what your System was for? | |
ラーベ
くそっ、そこまで把握しているのか……なら解るだろ? |
Raabe
Shit, if you know that much then...you should already know. | |
ラーベ
イシャナのときとは話が違う、情報の密度も段違いだ。 |
Raabe
This is a completely different situation from Ishana, the density of information here is on another level. | |
ラーベ
そんな世界を、主体の不安定な状態で観測するのが どれ程危険なことか! |
Raabe
The danger we'd be in if a world like this was put into a situation where the Observer becomes uncertain! | |
ラーベ
最悪、『世界』が崩壊するぞ!! |
Raabe
In the worst case, the "world" will crumble! | |
レイチェル
あら……まるで『見てきたような』言い方ね、破城カガミ。 |
Rachel
Goodness...it's as if you've "seen it happen," Hajou Kagami. | |
ラーベ
!!?? このクソ吸血鬼がぁ……。 |
Raabe | !?? You shitty vampire…. |
---|---|---|
ラーベ
御剣機関が貴様らを殲滅対象に掲げているのを忘れるなよ……。 |
Raabe
Don't forget, the Mitsurugi Agency has a bounty for extermination on your head. | |
シエル
……ラーベさんの敵意上昇を確認。 レイチェルさん……アナタは私たちの敵ですか? |
Ciel
Raabe's hostility levels are rising. Miss Rachel...are you our enemy? | |
ラーベ
……やめろシエル。 |
Raabe
...Stop, Ciel. | |
シエル
ラーベさん。……了解しました。 |
Ciel
Ms. Raabe. ...Understood. | |
レイチェル
フフフッ……怒らせてしまったようね。 でも安心なさい、私はあなたたちの敵ではなくてよ。 |
Rachel
Hee hee...it seems I've angered you. But please relax, I'm not your enemy. | |
1: ととと、とりあえずみんなおちつこう |
1: A-a-a-anyway, let's all calm down. | |
ラーベ
お前が落ち着けレイ。私はもう冷静だ。 |
Raabe
You should calm down, Rei. I've already calmed down. | |
ラーベ
それと吸血鬼、よく聞け。 |
Raabe
And, vampire. Listen well. | |
ラーベ
我々はこの世界も、他の世界も、そして私たちの世界も救う。 な、レイ。 |
Raabe
We'll save this world, the other worlds, and our own world. Right, Rei? | |
1: はい! がんばります!! |
1: Yes! I'll do my best!! | |
シエル
微力ながら、私もお供させていただきます。 |
Ciel | |
レイチェル
そう……。なら、もうひとつの目的は果たせたみたいね。 ご褒美に、幾つか質問に答えてあげても良くてよ。 |
Rachel | |
ラーベ
お? ならラケル=アルカードとは、どういう関係にある? 同じアルカードなのは、偶然じゃないはずだ。 |
Raabe | |
レイチェル
残念だけれど、答えられないわ。 |
Rachel | |
ラーベ
お前性格悪すぎだろぉぉ!? |
Raabe | |
レイチェル
まったく……単純な話よ。『ラケル』と自分の関係について、 ここにいる私が知らない。だから答えようがないわ。 |
Rachel | |
レイチェル
だから『ラケル』のことは、あの人にお聞きなさい。 |
Rachel
So, you should ask that person about Raquel. | |
ラーベ
あの人? さっきも言っていたが、何者なんだ? |
Raabe
That person? Is that the same person you mentioned before? | |
レイチェル
会えばわかるわよ。多分、遠くない未来のことだから。 |
Rachel
When you meet them you'll understand. It'll probably be in the near future. | |
ラーベ
曖昧だな……。 |
Raabe
Well, that's vague... | |
シエル
あの、私からも……。多分レイさんも 同じ質問をされたいのだと思いますが……。 |
Ciel | |
1: 貴女は……何者なの? |
1: Just what...are you? | |
レイチェル
私もこの世界から解放されたい、ただの『異物』よ……。 この世界に私の『探しもの』はないみたいだから……。 |
Rachel
I'm just another Contaminant like you, seeking to release this world…. Since it looks like what I'm looking for isn't here…. | |
1: 探しもの? |
1: You're looking for something? | |
レイチェル
……質問の時間はここまでね。 不快な気配を感じるから、私はこれで失礼するわ。 |
Rachel
...Time's up for questions. I'm sensing a rather ominous presence, so I will now take my leave. | |
シエル
不快な気配? |
Ciel
What presence? | |
レイチェル
貴女ならすぐにわかるわよ。 |
Rachel
You'll find out soon enough. | |
レイチェル
それから、お別れの挨拶にひとつ忠告をしてあげる。 |
Rachel
Before I leave, let me give you all a piece of advice. | |
レイチェル
この世界は誰かの意思で、誰かの願望で、 あるいは欲望、本能、そういったもので描き出されたもの。 |
Rachel
This world was illustrated by someone's will, someone's wish, or their desires, instincts, or something similar. | |
レイチェル
ただ、意思を持つ者には誰しも、思い描ける世界に 限界というものがあるわ。 |
Rachel
Although anyone could be the bearer of that will, the world that was painted has a limit to it. | |
レイチェル
ここが誰かの想いを反映しているのなら、 この世界はその誰かの限界ということよ。 |
Rachel
If this world reflects someone's will, then it also represents their limits. | |
レイチェル
じゃあね、未熟な観測者さん。諦めずに頑張りなさい。 |
Rachel
Farewell, amateur Observer. Keep at it, and don't give up. | |
シエル
反応、消失しました。 |
Ciel
Reading, lost. | |
ラーベ
……世界の……限界? |
Raabe
A world's...limit...? | |
ラーベ
チッ、考えるのは後だ。今は、奴の言い残した 『気配』とやらが気になる。シエル、索敵だ。 |
Raabe | |
シエル
索敵モードは既に展開中です。……周囲には――あ! |
Ciel | |
シエル
捕獲した人たちが解放されています! |
Ciel | |
シエル
ですが、おかしいです! 接近に気付けませんでした! |
Ciel | |
レリウス
……当然だ。気付かれないようにしたのだから。 |
Relius | |
ラーベ
レリウス=クローバー!? 何故貴様が! |
Raabe | |
レリウス
全く……お前が捕虜など取ったせいで、 待機中に駆り出されたのだ……。面倒この上ない。 |
Relius | |
シエル
不快の理由……よくわかりました。 |
Ciel | |
レリウス
しかし……この面倒の追加報酬としては……十分とも言えるな。 |
Relius | |
ラーベ
なに? |
Raabe | |
レリウス
クククッ……実に面白い。興味深い素材となったなソレは。 ……色々と、調べがいがある。 |
Relius | |
ラーベ
不味い! 気を付けろ、レイ! |
Raabe | |
レリウス
細部までよく、観せてもらおう。 |
Relius |
レリウス
……ふむ……なるほど。 だが、今の眼では観きれないか……。 |
Relius |
レリウス
複雑な構成……。それだけに、ふむ、興味深い。 しばらくは……ふむ、観察と検証が必要か……。 |
Relius |
シエル
倒れていない……。 手応えがあったのは、人形……? |
Ciel |
ラーベ
ふむふむうっさい奴だが、気を抜くなシエル。 どうにも底が知れん。 |
Raabe |
シエル
はいっ! |
Ciel |
レリウス
結構。現段階でのデータとしては十分だ……。 |
Relius |
レリウス
分析の時間が惜しい。……失礼するぞ。 |
Relius |
1: なっ! |
1: |
シエル
反応……消失。すみません、見失いました。 |
Ciel |
ラーベ
追う必要はない、むしろ追うな。 |
Raabe |
シエル
検証……分析、と言っていました。 彼は一体、なんなのでしょう? |
Ciel |
1: ちょっと不気味 |
1: |
ラーベ
レリウス=クローバー……。評判は耳にしたことがあるが、 奴を理解しようとするほうが無駄だ。 |
Raabe |
シエル
わかりました。ですが……もし彼が観測者であった場合、 対処は非常に困難になりそうです。 |
Ciel |
ラーベ
いや……その可能性は極めて低いと思うぞ。 むしろ無いと断言してもいいくらいだ。 |
Raabe |
ラーベ
さっき、レイチェルが言っていただろう。 この世界の有様が、そのまま観測者の限界でもあると。 |
Raabe |
ラーベ
もしこの世界がレリウス=クローバーの生み出したもの であるのなら、ここは……あまりに普通すぎる。 |
Raabe |
シエル
……確かに、そうかもしれません。 |
Ciel |
ラーベ
まあだが、可能性がまったくないわけでもない。 万が一ということもあるからな。あったらほんと怖いけど。 |
Raabe |
シエル
はい。油断は禁物ですね、ラーベさん。 |
Ciel |
ラーベ
そういうことだ。 |
Raabe |
ラーベ
……さて、御剣機関下っ端の捕獲には失敗したことだし、 もう少し辺りを見て回ったら学校へ戻るか。 |
Raabe |
シエル
はい。 |
Ciel |
男
ああ、こちらにいらしたんですか。 探しましたよ、レリウス=クローバーさん。 |
Man |
レリウス
……お前か。 |
Relius |
男
まったくもう、ひどいじゃないですか。 こっちは任せっきりで、勝手なことばっかりなさって。 |
Man |
男
あとでキイロさんに嫌味を言われる身にも なっていただきたいものです。 |
Man |
レリウス
……愚痴のために来たのか? |
Relius |
男
ああ、いえいえ、そんなわけないじゃないですか。 |
Man |
男
お知らせしたいことがあったのに、 連絡はつかないし一向に戻られる様子もない。 |
Man |
男
困り果てていたところに、先ほどウチの職員が、 貴方に助けられた〜という報告が入ったものですから、 |
Man |
男
慌てて駆け付けたというわけです。 |
Man |
男
いやぁ、走りましたよ。 勘弁してくださいよ、私、運動は専門外なんですから。 |
Man |
レリウス
……知らせ? |
Relius |
男
はいはい。アレの準備がそろそろ整うようです。 |
Man
Right, right. Preparations are underway. |
レリウス
そうか。 |
Relius
I see. |
男
完成次第、キイロさんはすぐにでも 始めるつもりだそうですよ。 |
Man
Kiiro's ready to start as soon as it's completed. |
男
あれだけ大きくなると、 こちらで管理するのも一苦労ですからね。 |
Man |
男
早めに処理してしまいませんと、 コストがかかるばかりです。 |
Man
The cost is only going rise if it's not taken care of quickly. |
レリウス
わかった。こちらはやるべきことをやろう。 |
Relius
I understand. I'll do what I must. |
男
ええ、よろしくお願いしますよ。 |
Man
Yes, please do. |
男
……それにしても、面白くなってきたじゃありませんか。 おかしな舞台に、おかしな脚本、おかしな役者。 |
Man |
男
これは……裏方仕事としても、 より楽しい舞台になるような演出をほどこさねばなりませんね。 |
Man |
第7節 告白①/ 7. Confession - 1
Summary | |
---|---|
学校を終えたナオトたちと帰宅するシエルた
ち。ひなたを手伝い、夕飯の準備に当たる。 気合十分にシエルたちは蟲を退治する。 |
When school ends, Naoto and Hinata return home with Ciel's group. They help Hinata with dinner. Later, Ciel defeats bugs with renewed vigor. |
蟲退治に奔走するも、アラクネは現われない。
ナオトは不意に、白昼夢のように出会った女 の子について話す。 |
Despite the number of bugs that they're defeating, Arakune doesn't appear. Naoto unexpectedly brings up a girl he met once. |
ひなた
みんな、お待たせ〜。 |
Hinata |
シエル
ひなたさん、ナオトさん。お疲れ様です。 |
Ciel |
ナオト
悪いな、ずっと待たせてて。 |
Naoto |
シエル
いいえ。我々が待っていると言ったのですから、 気にしないでください。 |
Ciel |
サヤ
こんにちは。本当にいらしていたとは、驚きました。 |
Saya |
シエル
サヤさん。もう体は大丈夫なのですか? |
Ciel |
サヤ
はい。心配をおかけしました。一日しっかり療養したおかげか、 今日はむしろ調子がいいくらいです。 |
Saya |
ナオト
だからって無理すんなよ。落ち着いてるだけで、 治ったわけじゃねぇんだから。 |
Naoto |
サヤ
わかっております。 ……本当に、わずらわしい体です。 |
Saya |
シエル
お体が弱いと以前に聞きましたが、 それは治しようのないことなのですか? |
Ciel |
サヤ
え? ……ええ。 医者には、命を繋いでいるだけでも信じがたいと。 |
Saya |
サヤ
これも、幼いころの鍛練の賜物ですね。 |
Saya |
サヤ
それに、一時ではありますが、あのヴァルケンハインとも 互角以上に渡り合えると自負しております。 |
Saya |
シエル
確かにあの剣戟には眼を見張るモノがありました。 しかし、持久戦に持ち込まれた場合……。 |
Ciel |
サヤ
ふふふ。なので、皆様の事が羨ましく思うときもあります。 |
Saya |
サヤ
ですが、シエルさんは本当に、変わった方ですね。 |
Saya |
サヤ
そのようなことを真正面から本人に尋ねる人など、 あまりお目にかかりません。 |
Saya |
シエル
あ。失礼な質問だったでしょうか。すみません。 |
Ciel |
サヤ
いえ、お気になさらず。 気安く励まされるよりずっといいです。 |
Saya |
サヤ
それに、共に戦う仲間の戦力分析は必要ですからね。 |
Saya |
ラーベ
物騒な話は置いといてだ、 サヤも、ナオトたちと同じ学校に通っているのか。 |
Raabe |
サヤ
はい。 ですから、兄とひなたさんは、学校では先輩です。 |
Saya |
シエル
先輩……。 |
Ciel |
サヤ
はい。 |
Saya |
ナオト
なにが先輩だよ、学校でそんな風に呼んだこと、 一度もねぇだろうが。 |
Naoto |
サヤ
それはそうです、兄様を兄様以外でお呼びするのは、 なにやらこそばゆいですから。 |
Saya |
ひなた
ナオトちゃんだって、サヤちゃんに先輩って呼ばれたら、 恥ずかしがるでしょ? |
Hinata |
ナオト
うーん……まあ、確かに。 |
Naoto |
サヤ
まあ。それでしたら、あえて口にしたいものですね。 黒鉄先輩。 |
Saya |
ナオト
うっ……やめろよ。 |
Naoto |
サヤ
言い出したのは先輩ではありませんか。 |
Saya |
ナオト
だからぁやめろって、なんか、気持ち悪いぞ。 |
Naoto |
サヤ
!? サヤのこと気持ち悪いだなんて…… お兄ちゃんひどい……。 |
Saya |
ナオト
ごめんなさい、おねがいします、かんべんしてください。 |
Naoto |
サヤ
ふふ。これは良いことを覚えました。 もしものときは、活用いたしましょう。 |
Saya |
ナオト
なんだよ、もしもって。 |
Naoto |
サヤ
さて。なにに使いましょうか。 |
Saya |
ナオト
ぜってーロクなこと考えてねぇな、こいつ……。 |
Naoto |
シエル
どうして、先輩やお兄ちゃんと呼ばれるのが 恥ずかしいのですか? |
Ciel |
ナオト
だ、だってほら、普段と違う呼び方されるとさ、 なんだか落ち着かないじゃん! |
Naoto |
ナオト
それが妹相手なら、なおさらじゃん!! |
Naoto |
ラーベ
……ナオト。なんかすごく焦っているように見えるぞ。 |
Raabe |
ナオト
そそそそんな事ありませーん。 |
Naoto |
シエル
つまり、ナオトさんにとって妹というのは、 それほど特別な存在なのですね。 |
Ciel |
ナオト
特別って……まあ……そうだな。一応、家族だし。 |
Naoto |
シエル
家族……。ひなたさんも、家族のようなものだと 言っていました。 |
Ciel |
ひなた
私は……サヤちゃんとはまたちょっと違う感じだよ。 親戚だけど、兄妹ではないし。 |
Hinata |
ナオト
でも、似たようなもんだろ。 |
Naoto |
ひなた
そう? えへへ、じゃあそうかな。 |
Hinata |
シエル
家族にも色々な種類があるんですね。 |
Ciel |
ひなた
うん、そうだね。 |
Hinata |
ひなた
あ、家族で思い出した。スーパー寄って行ってもいい? 夕飯の材料買わないといけないの。 |
Hinata |
ナオト
なんで家族をキーワードに思い出した……? 別にいいけど、なに買うんだ? |
Naoto |
ひなた
ひき肉とニラと、餃子の皮。今夜は餃子にしようと思って。 |
Hinata |
シエル
ギョウザ……ですか。知らない食べ物です。 |
Ciel |
ひなた
餃子、知らない? あ、なら一緒に作ろうよ。 |
Hinata |
シエル
私でお役に立てるのでしたら。 |
Ciel |
ひなた
やった。餃子ってひとりで包むの大変だから、助かっちゃう。 そうだ、サヤちゃんも一緒に食べていったら? |
Hinata |
サヤ
お誘いはありがたいのですが、私は一度家に戻ります。 |
Saya |
サヤ
夜に冥さんたちと合流する前に、 明日提出の課題を終わらせてしまいたいので。 |
Saya |
ひなた
偉〜い! ナオトちゃん、聞いた? |
Hinata |
ナオト
聞いてませーん。 |
Naoto |
ひなた
もう。少しはサヤちゃんを見習いなさい。 |
Hinata |
ラーベ
……ところでナオト。『お兄ちゃん』と言う 呼称についてなのだが……。 |
Raabe |
ナオト
しつけーよ!!! |
Naoto |
ひなた
タネをこれくらい載せて、皮のフチに水をつけてね。 こうやって……くっつけるの。 |
Hinata |
シエル
……これが餃子、ですか。 |
Ciel |
シエル
データでは知ってましたが、本物は初めて見ました。 思っていたよりも……湿り気のある物質なのですね。 |
Ciel |
ひなた
ここにあるタネを全部こうやって包んだら、フライパンで 焼いて完成だよ。はい、シエルちゃんもやってみて。 |
Hinata |
シエル
はい。やってみます。 |
Ciel |
ひなた
はい、レイくんも。 |
Hinata |
ひなた
はい、レイちゃんも。 |
Hinata |
1: こういうのは得意! |
1: |
ひなた
本当? よかった。 たくさんあるから、よろしくね。 |
Hinata |
ひなた
少しずつ慣れたら大丈夫だよ。 たくさんあるから、よろしくね。 |
Hinata |
ひなた
ナオトちゃんも、手伝って〜。 |
Hinata |
ナオト
へーい。 |
Naoto |
シエル
こうして……こう、して……。 |
Ciel |
シエル
中々、難易度が高いです。ひなたさんが作ったものと、 同じようになりません……。 |
Ciel |
ひなた
そんなことないよ、すごく上手だよ。それに、皮がくっついて いれば大丈夫だから、気にしないでどんどん作ろう。 |
Hinata |
シエル
はい。 |
Ciel |
シエル
……あの。こういう技術も、学校で学習するのですか? |
Ciel |
ひなた
そうだなぁ。家庭科で包丁の使い方とかも教わったりするけど、 料理は家で覚える人が多いんじゃないかなぁ。 |
Hinata |
ひなた
私も、本やテレビで見たり、色々家でやってみて だんだん覚えた感じだよ。 |
Hinata |
ラーベ
そういえば、ひなたの家族とはまだ顔を合わせていないな。 姉がいるんだったか。いつも家にいるのか? |
Raabe |
ひなた
……ほとんどお仕事で家にいないんだ。 最近は特に忙しいみたいで。 |
Hinata |
ひなた
……あれ? 前に帰ってきたのいつだっけ……。 |
Hinata |
ラーベ
ふーむ、そうか。 確か、ひなたとその姉はナオトの親戚なんだったな? |
Raabe |
ナオト
ああ、そうだよ。 |
Naoto |
ラーベ
ひとつ聞きたいんだが、 ひなたの姉はドライブ能力者ではないのか? |
Raabe |
ひなた
どら……いぶ? なに、それ? |
Hinata |
シエル
ナオトさんやサヤさんが、戦うときに使っている力のことです。 冥さんやエスさんも、持っています。 |
Ciel |
ひなた
ああ、あのすごいやつね! うーん、お姉ちゃんには そういう力はないと思うよ。私も戦ったりできないし……。 |
Hinata |
ひなた
ナオトちゃんたちみたいなことができたら、私もラケルちゃんの 目を覚ますお手伝いができるんだけどなぁ……。 |
Hinata |
ナオト
これ以上の手伝いはいらねぇよ。ひなたまでサヤみたいなこと し始めたら、こっちの身がもたねぇ。 |
Naoto |
ひなた
え、どうして? お手伝いが増えたほうがいいと思うけど……。 |
Hinata |
ナオト
お前に怪我でもされたら、ユキさんに合わせる顔がねぇだろ。 なんて言えばいいんだよ。 |
Naoto |
ひなた
そんなに心配しなくても、大丈夫だよ〜。 |
Hinata |
ナオト
大丈夫だと思えねぇから、心配してんだろうが。 |
Naoto |
ラーベ
……なら、ラケル=アルカードはどうだ? ドライブ能力を持ってるのか? |
Raabe |
ナオト
ああ。俺がドライブ能力を手に入れたときに、教えてくれたよ。 風を操るドライブだって言ってた。 |
Naoto |
ナオト
それがどうかしたのか? |
Naoto |
ラーベ
いや、念の為に少し確認しておきたかっただけだ。 |
Raabe |
ナオト
ふうん? |
Naoto |
ひなた
ナオトちゃん、手が止まってるよー。 |
Hinata |
ナオト
ああ、はいはい。 |
Naoto |
ひなた
ふふ、なんだか大勢で楽しいね。ラケルちゃんが起きたら、 今度はラケルちゃんも一緒に餃子作りしたいな。 |
Hinata |
ナオト
そうだな。まあ、あいつがこういうことやるとは、 思えねぇけど。 |
Naoto |
ナオト
……にしても、量多いな! |
Naoto |
ひなた
たくさん食べて、夜に備えてもらわないとだからね。 |
Hinata |
シエル
作戦行動に、補給は重要です。頑張ります。 |
Ciel |
ひなた
うん。わぁ、シエルちゃん、それすごく上手! |
Hinata |
シエル
あ……ありがとうございます。次、作ります! |
Ciel |
シエル
次、倒します! |
Ciel |
ラーベ
よし、追いついた。 ちょこまか逃げられる前に、さっさと片付けるぞ。 |
Raabe |
シエル
はい。 行きます、レイさん! |
Ciel |
蟲
ギッ……。 |
Bugs |
シエル
これで最後ですね。 |
Ciel |
1: はー、疲れた |
1: |
シエル
はい。ですがこれで、感知した分は全てです。 お疲れ様でした。 |
Ciel |
ナオト
おーい、そっち終わったか? |
Naoto |
ラーベ
おお、片付いてるぞー。そっちも無事に終わったみたいだな。 |
Raabe |
Es
任務完了です。こちらが追っていた群体は、片付きました。 あとは冥とサヤさんが……。 |
Es |
冥
どうやら、ちょうどいいタイミングだったようだな。 |
Mei |
シエル
冥さん、サヤさん。 おふたりも戻られたのですね。 |
Ciel |
サヤ
ええ。冥さんの陣にかかった蟲は全て、始末してまいりました。 |
Saya |
冥
しかし、さすがに堪えるな。 連日、これだけの数を駆除するとなると。 |
Mei |
ナオト
ああ……。そのうち全滅させそうな勢いで潰して回ってるって のに、それでもまだ出てくるんだからな……。 |
Naoto |
ナオト
蟲憑きも結構な数見かけた。やっぱアラクネの被害が 広がってるってことだよな。 |
Naoto |
サヤ
先日、レイさんを喰らい損ねたので 焦っているのか、それとも何か別の企みがあるのか……。 |
Saya |
冥
……アレが謀の出来そうな生物には見えんが……。 どちらにしろ、早々になんとかしなければな……。 |
Mei |
冥
天ノ矛坂家の者としても、被害がこれ以上、 広がり続ける現状は看過できん。 |
Mei |
ラーベ
気持ちはわかるが、焦るな。御剣機関が関わっていると わかった以上、事は簡単にはいかないぞ。 |
Raabe |
ナオト
…………。 |
Naoto |
シエル
ナオトさん? どうかしましたか? |
Ciel |
ナオト
あ、ああ、いや。 そういえば、こんな感じのときだったなーと思って。 |
Naoto |
Es
なにが、ですか? |
Es |
ナオト
ほら。サヤには話しただろ。 前に……ここに女の子がいたって話。 |
Naoto |
サヤ
ああ……兄様が体験された、心霊現象のことですか。 |
Saya |
冥
心霊現象だと? |
Mei |
ナオト
いや、そういうんじゃねぇから……。 |
Naoto |
ナオト
この前、冥たちが帰った後、ほんの一瞬、 白昼夢みたいな感じで……女の子に会ったんだよ。 |
Naoto |
ナオト
顔もはっきり見えなかったし、話をしたわけじゃ ないんだけど。なんだったんだろうな、あの子……。 |
Naoto |
1: それって…… |
1: |
ラーベ
レイ。 |
Raabe |
ナオト
ん? なんだ、どうした? |
Naoto |
ラーベ
いや、なんでもない。 それより、そろそろ撤収の時間じゃないか? |
Raabe |
ナオト
うわ、ほんとだ、もうこんな遅いのかよ……。 くそ……今夜もアラクネは現れなかったってことか。 |
Naoto |
サヤ
……居所さえわかれば、奇襲でもなんでも仕掛けるのですが。 歯がゆいですね。 |
Saya |
冥
私とエスはもう少し辺りを調査してから戻る。 奴が出てこないのなら、少しでも多く蟲を潰しておきたい。 |
Mei |
ナオト
あんま無理すんなよ。なんかあればすぐに呼べ。 |
Naoto |
冥
ふん、見くびるな、小僧。 さあ、行くぞ、エス。 |
Mei |
Es
はい。失礼します。 |
Es |
サヤ
私も帰宅いたします。……おやすみなさいませ。 |
Saya |
ナオト
ああ。明日こそ、アラクネの尻尾を掴もう。 |
Naoto |
ナオト
よし。じゃあ俺達も戻るか。 あんまり遅くなりすぎると、ひなたが心配する。 |
Naoto |
シエル
はい。 |
Ciel |
第7節 告白②/ 7. Confession - 2
Summary | |
---|---|
特に収穫はなく、数日が過ぎる。ラーベは事
象を乱し続けることが、事態の緩やかな進行 に繋がると言う。 |
Several days pass without many results. Raaabe says their idyllic days may be tied to continued disturbances in the Phenomenon. |
Esを伴わずに現われた冥。この世界になんと
も言えない違和感を覚える冥は、この世界の 住人ではないように思うと告白する。 |
Mei appears without Es. Mei remembers how unsettling the world feels to her, and confesses that she thinks she doesn't hail from this world. |
冥
私とエス、ナオトとサヤ。 それからレイとシエル。 |
Mei |
冥
今夜はこの組み分けでいくぞ。 |
Mei |
シエル
はい。頑張ります。 |
Ciel |
ラーベ
む、私は? |
Raabe |
冥
……お前は戦力外だからな、好きな奴についていけばいいだろ。 |
Mei |
ラーベ
日に日に扱いが雑になってきてないか!? |
Raabe |
ナオト
あんたの扱いは置いといてだ。今夜こそなにか……って 思ってるけど、 |
Naoto |
ナオト
ここ数日、収穫は無いしな……。 |
Naoto |
冥
最初にアラクネにたどり着けたのが、むしろ幸運だったんだ。 そう簡単に収穫があるものでもない。 |
Mei |
冥
それより、蟲が活発なのに反して、 御剣機関の連中がいやにおとなしいのが気になる。 |
Mei |
冥
ヴァルケンハインやレリウスなんて規格外を連日相手にするなど、 考えたくもないが……。 |
Mei |
冥
ぱったり姿を見せないのも、それはそれで不気味だ。 |
Mei |
ラーベ
……緋鏡キイロは、ナオトに強い関心を抱いていた。 |
Raabe |
ラーベ
蟲の駆除程度であっても、我々が動いていることを 示し続けることは、御剣機関へのアプローチにもなる。 |
Raabe |
ラーベ
そういう小さな『ちょっかい』が、 物事をやがて動かすはずだ。 |
Raabe |
サヤ
できれば、あまり焦らさず早々に動いてほしいものです。 |
Saya |
Es
……行きましょう。蟲が動き出します。 |
Es |
冥
……そうだな。 |
Mei |
シエル
ラーベさん。私達もこのまま、毎晩の蟲の駆除を しているだけでいいのでしょうか? |
Ciel |
ラーベ
いいわけがあるか。 |
Raabe |
シエル
えっ! |
Ciel |
ラーベ
というか、蟲などどうだっていい。 我々が探しているのは観測者だ。 |
Raabe |
シエル
はい。ですが現在、状況は膠着しています……。 |
Ciel |
ラーベ
いや、そうでもない。 |
Raabe |
シエル
そうなの、ですか? |
Ciel |
ラーベ
観測者の願望から生まれたこの世界にとって、 私たちだけは『あり得ない』存在だ。 |
Raabe
In a world created from an Observer's wishes, we're "impossible." |
ラーベ
それがアラクネや御剣機関といった、 この世界の中心に深く関わっているだろうものに接触した。 |
Raabe
And we've come into contact with Arakune and the Mitsurugi Agency, things that are probably deeply connected to this world. |
ラーベ
これは『あり得ない』出来事だ。 |
Raabe
Which is itself "impossible." |
ラーベ
あり得ない存在が、あり得ないことを引き起こす。 それによって観測者が観測するはずだった事象が乱れる。 |
Raabe
Impossible existences causing impossible things to occur. Then the Phenomenon that the Observer is supposed to be Observing will be messed up. |
ラーベ
重要なのは『乱し続ける』ことだ。 小さな波紋でも、それはやがて大きな波になる。 |
Raabe
The important thing is to "continue disturbing" things. The ripples it causes may be small now, but they'll grow to have larger effects later. |
ラーベ
たとえば、こういう奴等だ。 |
Raabe |
ラーベ
私たちが……いや、レイが事態に 関わり続けていれば、それは膠着じゃない。緩やかな進行だ。 |
Raabe |
ラーベ
なので、心してかかれよ。 |
Raabe |
シエル
なるほど……わかりました。全力で対象を殲滅します。 レイさん、よろしくお願いします。 |
Ciel |
シエル
この周辺も蟲は殲滅しました。 |
Ciel |
ラーベ
アラクネらしい反応も付近にはなさそうだな。 少し休憩するとしよう。 |
Raabe |
シエル
そうですね。あそこにベンチがあります。 レイさん、どうぞ。 |
Ciel |
ラーベ
夜の公園のベンチか。青春の風情があるなぁ。 |
Raabe |
シエル
青春……思春期のことですね。 ですが、どうして公園のベンチが青春なんですか? |
Ciel |
ラーベ
ん? そうだな……なんと説明したものか……。 |
Raabe |
ラーベ
思春期の人間は、意中の人物となにかと秘密裏に会いたがるんだ。 周囲になるべく気づかれずにな。特に夜だ。 |
Raabe |
ラーベ
そういうときの恰好のあいびき場所が、 夜の公園のベンチというわけだ。 |
Raabe |
シエル
なるほど。ではこれも、あいびきですか? |
Ciel |
ラーベ
……断っておくが、この場合のあいびきというのは、 好意を寄せる者同士が行うことだからな。 |
Raabe |
シエル
好意……好ましいと思う感情、反応。 |
Ciel |
シエル
好ましいというのは、推奨されるべき状態、 障害がなく順調である様などに用いる表現です。 |
Ciel |
シエル
レイさんは、私を好ましいとお思いですか? |
Ciel |
1: えっ!? いや、そんな急に言われても…… |
1: |
シエル
すみません、困らせてしまいましたか。 物事の状況を判断するのは、難しいものです。失礼しました。 |
Ciel |
シエル
では、これはあいびきですね。貴重な体験です。 |
Ciel |
ラーベ
う、うん……まあ、いいか。詳しくつっこまなくても。 |
Raabe |
冥
ここにいたか。 |
Mei |
シエル
冥さん。どうしたんですか? エスさんはご一緒ではないのですか? |
Ciel |
冥
担当していた辺りが、あらかた片付いたのでな。 様子を見に来た。エスは、向こうで休憩中だ。 |
Mei |
冥
……いや。エスは向こうで、待たせてある。 実は……お前たちに話したいことがあって来たんだ。 |
Mei |
冥
黒鉄や輝弥にはあまり聞かせたくない話だ。 だから……今、聞いてほしい。 |
Mei |
ラーベ
なにやら込み入った話のようだな。ぜひ聞こう。 |
Raabe |
シエル
よろしければ、どうぞ。座ってください。 |
Ciel |
冥
いや、いい。そっちは座ったままでいいから、 そのまま……聞いてくれ。 |
Mei |
シエル
わかりました。 |
Ciel |
冥
前に、言っていただろう。 お前たちは、この世界の『外側』から来たと。 |
Mei |
シエル
はい。 |
Ciel |
シエル
私達のいたところは、不定形の空間で…… その中を潜行する船の中から、ここへ来ました。 |
Ciel |
冥
船? それは想像もしていなかったな。 |
Mei |
冥
てっきり、こことは違う景色の世界から 紛れ込んだのかと思った。 |
Mei |
冥
……私のようにな。 |
Mei |
1: どういうこと? |
1: |
冥
私自身、どういうことなのか、よくわかっていないんだが……。 ここは私がいるべき世界ではない。そう強く感じている。 |
Mei |
冥
……あ! 違うぞ、思春期の若者にありがちな、 そういうアレではない。断じて違う! |
Mei |
シエル
そういうアレとは、なんですか? |
Ciel |
冥
う、あ、いや……ゴホン。 なんでもない。今のは、なしだ。 |
Mei |
冥
だが、お前たちにならわかるだろう? 私の言っている意味が。 |
Mei |
ラーベ
もう少し詳しく聞かせてくれないか。 |
Raabe |
冥
……私は確かに、日本に住んでいた。 日本の、天ノ矛坂家にだ。 |
Mei |
冥
ここと似た風景の町だったと思う。 だから……最初は些細な違和感でしかなかった。 |
Mei |
冥
いつからそうだったのかは、思い出せない。 |
Mei |
冥
だが気付いたときには私は、 新川浜にある天ノ矛坂家で暮らし、エスというメイドを抱え…… |
Mei |
冥
黒鉄ナオトの学友だった。 |
Mei |
冥
だが徐々に、それは違うと……感じるようになった。 |
Mei |
冥
私には確かに、親しい男の友人がいた……と、思う。 そんな気がする。 |
Mei |
冥
彼と共になにかと戦った気がする。 もう忘れてしまった、微かな夢のような記憶だが……。 |
Mei |
冥
それは、黒鉄ナオトではなかったはずだ。 |
Mei |
シエル
…………。 それは……。 |
Ciel |
冥
悲しいわけではないぞ。 ただ……どちらかというと悔しい。 |
Mei |
冥
はっきりしない違和感がずっと引っかかっていて、 気持ちが悪かった。 |
Mei |
冥
だからな、お前たちが『世界の外側』と言ったとき、 ほっとした。私の違和感は、きっと間違っていない。 |
Mei |
冥
世界は確かに歪んでいる。 そして私は『此処』の住人ではない。 |
Mei |
冥
ならば私は、本当の場所に戻りたい。 |
Mei |
冥
このまま『此処』の人間になるつもりはない。 そのことを……伝えておきたかった。 |
Mei |
シエル
それは……。 |
Ciel |
冥
……これは定かじゃないが、おそらくエスもそうだろう。 |
Mei |
冥
私と同じように、『此処』ではないどこか別の場所を 見ているように感じる。 |
Mei |
冥
どこかというより、誰かを、だな。 そしてそいつはたぶん、この世界にはいないんだ。 |
Mei |
ラーベ
…………。 |
Raabe |
冥
勘違いしないでくれ。だからどうしてくれとか、 そういうことが言いたいわけじゃないんだ。 |
Mei |
冥
ただお前たちなら、こんな妙な話にも 真面目に耳を傾けてくれるだろうと思ってな。 |
Mei |
冥
……話はそれだけだ。誰かに聞いてほしかったんだ。 |
Mei |
冥
集合時間には、まだ少しある。 私はエスと合流して、もうひと仕事してこよう。 |
Mei |
シエル
……あの、冥さん。 |
Ciel |
冥
なんだ? |
Mei |
シエル
冥さんは……冥さんの言う『本来の世界』に 戻りたいのですか? |
Ciel |
冥
当たり前だ。 戻れるなら、戻りたいに決まっているだろうが。 |
Mei |
冥
いや、戻りたいんじゃないな。帰りたいんだ。 私の大切なものがあるはずの場所にな。 |
Mei |
シエル
…………。 |
Ciel |
シエル
……ラーベさん。冥さんのお話をどう思われますか? 冥さんは、『異物』なのでしょうか? |
Ciel |
ラーベ
ふーむ。……わからん。 |
Raabe |
ラーベ
本来の『異物』なら、自分がそうであると自覚しているものだ。 冥の今の告白は、自覚しているがゆえのものだとも受け取れる。 |
Raabe |
ラーベ
だが……。 |
Raabe |
シエル
……冥さんは『帰りたい』と言っていました。 |
Ciel |
シエル
『世界』とはどのようなものなのでしょう。 帰りたくなるような場所なのでしょうか……? |
Ciel |
1: 自分の故郷みたいな感じじゃないかな 自分の証明みたいな感じじゃないかな |
1: |
シエル
そうなんですね。私にはよくわかりませんが…… 大事なものなんでしょうね、きっと。 |
Ciel |
シエル
冥さんが本来の世界に戻れたらいいと思いました。 |
Ciel |
ラーベ
やれやれ。情操教育の時間ではないんだぞ。 体力に問題がないのなら、こちらも動くぞ。 |
Raabe |
シエル
はい。 行きましょう、レイさん。 |
Ciel |
第8節 蟲王①/ 8. Insect King - 1
Summary | |
---|---|
放課後、ナオト・サヤと合流したシエル達。
下校途中に蟲憑きが明るい時間に放浪してい る事が目に入り、駆除することを決める。 |
Ciel, Rei, and Raabe meet up with Naoto and Saya after school. Attacked by bugs on their way home in broad daylight, they decide to exterminate them. |
……を……探して。 |
|
そして私……つけて……。 |
|
見つけて……。 |
|
シエル
学校、お疲れ様です。ナオトさん。 |
Ciel |
ナオト
おう、待たせたな。 |
Naoto |
サヤ
こんにちは。 |
Saya |
シエル
はい、こんにちは、サヤさん。 |
Ciel |
ナオト
あ〜〜〜……疲れたぁ。午後に自習でプリントと読書とか、 寝るなってほうが無理だろ。 |
Naoto |
サヤ
まあ、兄様。兄様が不真面目ですと、 ひなたさんの評判にも障ります。用心してくださいませ。 |
Saya |
ナオト
んだよ、早速小言を言うなって。 一応、頑張って耐えてたんだから。 |
Naoto |
サヤ
ひなたさんに起こされながら、ですか? |
Saya |
ナオト
……なんでわかるんだよ。 |
Naoto |
サヤ
わかりますとも。兄様のことですから。 まったく、手のかかる兄です。 |
Saya |
ナオト
悪うございましたね。 |
Naoto |
シエル
あの。そのひなたさんは、一緒ではないのですか? |
Ciel |
ナオト
ああ、そうだった。ひなた、急に生徒会の会議が あるらしくてさ。先に帰ってろってよ。 |
Naoto |
シエル
そうですか。 ……生徒会、とはなんですか? |
Ciel |
ナオト
んー、学生の役員会みたいなもんかな。 |
Naoto |
ナオト
自分たちの色々なことを、代表者の生徒会役員たちが 話し合って決めたりするんだよ。よく知らねぇけど。 |
Naoto |
シエル
では、ひなたさんは学校の重役なのですか。 |
Ciel |
ナオト
重役っていうか……まあ……そんな感じか。 |
Naoto |
シエル
お料理もお掃除もできて、そのうえ役員とは。 すごい方なのですね。 |
Ciel |
サヤ
ええ。本当に。 |
Saya |
ナオト
そしたら、帰るか。どこか寄るところとかあるか? |
Naoto |
シエル
いいえ、私達は特にはありません。 |
Ciel |
ナオト
サヤは? どのみち夜また来るんだし、このままうちにくるか? |
Naoto |
サヤ
そうですね……ですが鞄を持ったまま刀を振るうのも 煩わしいですし、一度家に戻りたくもあります。 |
Saya |
ナオト
鞄くらい、うちに置いておけばいいじゃねぇか。 |
Naoto |
サヤ
よろしいのですか? |
Saya |
ナオト
当たり前だろ。兄妹で変な遠慮すんなよ。 |
Naoto |
サヤ
まあ。嬉しい。 |
Saya |
ナオト
なんだよ。俺、そんなに普段冷たいか? |
Naoto |
サヤ
いえ、とんでもない。そんなことはありません。 ですがなにやら、嬉しかったのです。 |
Saya |
ナオト
そーですか。じゃあ、帰るぞ。 |
Naoto |
シエル
はい。 |
Ciel |
シエル
ところで、ナオトさん。質問があるのですが。 学校とは、どんなことをする場所なのですか? |
Ciel |
シエル
様々な科目について学んでいるということは知っているの ですが、具体的にはどのようなことをしているのだろうと。 |
Ciel |
サヤ
……興味がおありですか? |
Saya |
シエル
はい。資料でしか知らないので、気になっています。 |
Ciel |
ナオト
まあ……大体は、今言ったみたいに 授業で勉強してるんだけど……。 |
Naoto |
ナオト
昼休みに弁当食ったりとか。おすすめのゲームの貸し借りとか。 まあ、大体友達と下らねぇ話してるかな。 |
Naoto |
サヤ
兄様はゲームがお好きなのだそうですね。 先日も、ご友人からいくつか借りられたとか。 |
Saya |
ナオト
げ。なんで知ってんだよ。 ……まさかひなたか? |
Naoto |
サヤ
はい。なんでも……『らぶらぶ学園パラダイス』、 『お姉ちゃんといっしょ☆』、そんな題名でしたね。 |
Saya |
ラーベ
ほっほーう。少年、そういう趣味なのか。 |
Raabe |
ナオト
ちげーよ! 俺の趣味じゃねぇから! 友達の趣味だから! |
Naoto |
シエル
なるほど。 お友達が、そのようなご趣味を持っているのですね。 |
Ciel |
ナオト
えっ……ああ、まあ、うん、そうだな、うん。 |
Naoto |
ラーベ
しかし、ふむ、友達か。 その友達は、なんという人物なんだ? |
Raabe |
ナオト
ああ、同じクラスで……。 |
Naoto |
蟲憑き
う……う……。 |
Bugs |
サヤ
皆様。あれを。 |
Saya |
ナオト
蟲憑きが、なんでこんな明るい場所うろついてんだ……!? |
Naoto |
サヤ
さて。このところ蟲の活動が活発であったことと、 なにか関わりがあるのでしょうか。 |
Saya |
ラーベ
あのまま進むと、大通りへ出るな。 |
Raabe |
ナオト
チッ、こんな学校の近くで誰かが巻き込まれるなんて、 とんでもねぇ。今の内に片付けとこうぜ! |
Naoto |
サヤ
あの程度、造作もありません。 すぐに屍に変えてご覧に入れます。 |
Saya |
ナオト
屍に変える必要はねぇよ! |
Naoto |
シエル
対象を補足。対象を攻撃します。 |
Ciel |
第8節 蟲王②/ 8. Insect King - 2
Summary | |
---|---|
駆除後の夜、帰りの遅いひなたを心配するナ
オト。突如冥に呼び出され、向かった先には、 多くの生命力を喰ったアラクネの姿があった。 |
After exterminating more bugs, Naoto's group worries about Hinata, who's late to return home. Mei suddenly calls them out, and they find her in front of Arakune, who has gorged on a large number of lives. |
ナオト
蟲憑きだけじゃなくて、蟲まで、 こんなとこに出てきやがるなんてな……。 |
Naoto |
サヤ
行動法則が変わったのでしょうか。 いえ……むしろ……。 |
Saya |
ラーベ
活動範囲が広がった、という感じだな。 |
Raabe |
サヤ
そうですね、その通り。 アラクネの力が強まった、と考えるのが自然でしょうか。 |
Saya |
ナオト
くそっ。だったらいっそ アラクネ本人が出てきてくれりゃあいいのによ。 |
Naoto |
ナオト
そしたらとっととぶっ倒してやるってのに……。 |
Naoto |
サヤ
ええ……。 |
Saya |
サヤ
……ですが、アラクネと再び相まみえたとしても、 前回と同じことになってしまっては意味がありません。 |
Saya |
サヤ
アラクネが観測者であったのなら、奴を仕留めてはならない とのこと。であれば私たちはどうするべきなのでしょう……。 |
Saya |
サヤ
どうすれば、ラケルさんの目を覚ますことが できるのでしょうか……。 |
Saya |
ラーベ
今は難しく考える必要はない。 お前たちは自分の意志に従い行動すればいい。 |
Raabe |
ラーベ
なんにせよ、アラクネがいないことには始まらない。 そのためにも蟲を倒して、奴をおびき出してもらわなければ。 |
Raabe |
ラーベ
観測者やアラクネについては、状況を見て私が答えを出す。 |
Raabe |
ナオト
頼りにしてるぜ。 難しいこと考えるのは……正直、苦手なんでな。 |
Naoto |
サヤ
私も、決して利口ではありませんから。 できることはおよそ、敵を斬り捨てることくらい。 |
Saya |
サヤ
お言葉に甘え、斬るべきと思ったものを斬りますゆえ、 どうぞお力を貸してくださいませ。 |
Saya |
ラーベ
お前、時々辻斬りみたいなことを言うな……。 |
Raabe |
シエル
もちろんです。 この町の異変の解決が、私達の任務ですから。 |
Ciel |
サヤ
そうでしたね。心強いことです。 |
Saya |
ナオト
……連絡なし、か。 |
Naoto |
シエル
遅いですね、ひなたさん。 |
Ciel |
ナオト
イベントの前ってわけでもねぇのに、 何やってんだ、生徒会。 |
Naoto |
サヤ
私には……見当もつきませんが。連絡がないようでしたら、 探しに行ってみますか? |
Saya |
ナオト
そうだな。蟲にでも襲われでもしたら、シャレになんねぇ。 |
Naoto |
…………。 ……………………。 |
|
サヤ
ラケルさんもひなたさんもいないと、 この家はとても……静かです。 |
Saya |
ナオト
……だな。 |
Naoto |
ナオト
うわっ! びっくりした! |
Naoto |
シエル
ひなたさんからの通信ですか? |
Ciel |
ナオト
通信って……いや、冥だな。 |
Naoto |
ナオト
もしもし? ちょうどよかった。 実は、今夜なんだけど……。 |
Naoto |
冥
すぐに来い、黒鉄! |
Mei |
ナオト
は? なに? |
Naoto |
冥
無人団地だ! 今すぐ来い! |
Mei |
ナオト
な、なんだよ、なんかあったのか? |
Naoto |
冥
悠長に話している暇はない。いいからさっさと……。 |
Mei |
ナオト
待てって、こっちにも都合が……。 |
Naoto |
冥
アラクネだ! いいからすぐに来い! |
Mei |
ナオト
なっ……! |
Naoto |
ナオト
くっそ、こんなときに! |
Naoto |
サヤ
ですが、行かぬわけにはまいりません。 この機を逃せば、次はいつやってくるか。 |
Saya |
ナオト
わかってるよ! 行くぞ! |
Naoto |
シエル
はい! |
Ciel |
シエル
いました、あそこです! |
Ciel |
ナオト
冥、エス! |
Naoto |
Es
こんばんは。 |
Es |
冥
来たか。遅いぞ。 |
Mei |
ナオト
無茶言うな、これでも全速力だよ。それで……。 |
Naoto |
サヤ
奴は……。 |
Saya |
アラクネ
オオオオオオオオオオオオオ!! |
Arakune |
ラーベ
あそこか。 |
Raabe |
シエル
気のせいでしょうか、 以前よりもずっと大きいような……。 |
Ciel |
ラーベ
奴は魔素という特殊な粒子によって、体を構築している。 その粒子が増大し、周囲で渦巻いているせいだろう。 |
Raabe |
ナオト
ってことは、それだけ強くなってるって感じか。 |
Naoto |
ラーベ
私の計測の結果では、そうだな。 |
Raabe |
サヤ
それだけ、多くの生命力を喰ったということ……。 |
Saya |
ナオト
これ以上、好きにはさせねぇ。ここで仕留めるぞ。 |
Naoto |
冥
ああ。そのためにも、この無人団地周辺に結界を張る。 |
Mei |
シエル
ここにアラクネさんを閉じ込めるのですね。 |
Ciel |
冥
そうだ。といってもアラクネに限定した結界だ。 |
Mei |
冥
空間を閉ざすほどのものは、 さすがにすぐには用意できんからな。 |
Mei |
冥
もちろん、その間私は結界の維持にかかりきりになる。 戦いには参加できない。 |
Mei |
ナオト
冥の戦力が欠けるのはいてぇが……。 その分はこっちでなんとかする。頼むぜ。 |
Naoto |
サヤ
さらに戦力を削ぐ提案ですが、 エスさんには冥さんの護衛をお願いします。 |
Saya |
サヤ
万が一、蟲の攻撃に遭い結界が維持できなくなっては、 困ります。逃がしさえしなければ、勝機はありましょう。 |
Saya |
Es
わかりました。冥の護衛に努めます。 |
Es |
シエル
私とレイさんは、 ナオトさんたちと一緒にアラクネさんの対処に向かいます。 |
Ciel |
ナオト
今夜は絶対に逃がさねぇからな。 あいつ、ぶっ倒していいんだよな!? |
Naoto |
ラーベ
ああ。本気でかかれ。だが異変があればすぐに止める。 頭は冷静でいろ。すべては事態を解決するためだ。 |
Raabe |
ナオト
難しい注文だな。やるだけやってみる! |
Naoto |
1: もしものときは、僕が止めるよ |
1: |
ナオト
頼むぜ、レイ。 |
Naoto |
冥
任せるぞ、レイ。 |
Mei |
1: もしものときは、私が止めるよ |
1: |
ナオト
頼むぜ、レイ。 |
Naoto |
冥
任せるぞ、レイ。 |
Mei |
冥
……………………。 |
Mei |
冥
……よし。結界は完了だ。 行け! |
Mei |
Es
ここはお任せください。ご武運を。 |
Es |
ナオト
おう!! |
Naoto |
アラクネ
オオオオオオオオオオオオオ! |
Arakune |
サヤ
一番手、取った! |
Saya |
アラクネ
ギャギャギャギャギャ! ああア黒が飛来する。 その奥底が秘める汚濁を呑み干す者……! |
Arakune |
サヤ
手応えあり。だが浅い……。 |
Saya |
アラクネ
うぐぐぐぐ、解せぬ、不可解、不愉快! 喰らえ喰らえ喰らえ! |
Arakune |
ラーベ
気を付けろ、アラクネの内部で反応多数……! |
Raabe |
サヤ
なっ……あうっ! |
Saya |
ナオト
くそ、蹴散らすぞ! じゃねぇと親玉にたどり着けねえ! |
Naoto |
シエル
了解しました! |
Ciel |
ナオト
おらぁぁっ! |
Naoto |
サヤ
ふんっ……せやぁっ! |
Saya |
ラーベ
まだだ! 次が来る! 本格的に集まってきたぞ! |
Raabe |
ナオト
ふざけんな、どんだけ出てくるんだよ! これじゃキリがねぇ! |
Naoto |
シエル
ですが、アラクネさんのところへ到達するには、 出てきただけ倒すしかありません。 |
Ciel |
サヤ
ならば、一匹残らず仕留めるまで。この輝弥サヤ、 体力こそ劣りますが、執念深さならば負けませぬ。 |
Saya |
ナオト
はっ、そいつは頼もしいな。 だったら俺も、情けねぇことは言ってらんねぇぜ! |
Naoto |
シエル
レイさんには、決して近づけさせません! |
Ciel |
1: もうひと踏ん張り! |
1: |
シエル
はい! 戦闘行動に移行します。 レイさん、私の側にいてください。 |
Ciel |
第8節 蟲王③/ 8. Insect King - 3
Summary | |
---|---|
ナオトとサヤが蟲を引きつける中、シエルた
ちは以前より強力となったアラクネ本体への 接近を試みる。 |
Naoto and Saya draw the bugs away, while Ciel aims for Arakune's main body. |
ナオト
おらぁっ! |
Naoto |
サヤ
行ってください、レイさん、シエルさん。 雑魚はこちらで引き受けます! |
Saya |
ナオト
このままじゃ、マジでキリがねぇ! あいつ、まだまだ蟲を出してくるぞ。 |
Naoto |
シエル
ラーベさん、ナオトさんとサヤさんが危険です! |
Ciel |
ラーベ
いや、あいつらの言う通りここは任せよう。 |
Raabe |
ラーベ
アラクネの体は高濃度の魔素……小さな窯に近い。 一時的に境界に接続しているようなものだ。 |
Raabe
Arakune's body is made of extremely dense seithr...and is close to a miniature Cauldron. Something that can temporarily make contact with the Boundary. |
ラーベ
実際、奴の蟲にキリなどない。 いちいち相手にしていても、時間の無駄だ。 |
Raabe
So there's no end to the number of bugs he can put out. Facing each one individually would be a waste of time. |
アラクネ
オオ……お……震える、震える。 昏々と湧き出る力を内なる黒が煮えたぎる……。 |
Arakune |
サヤ
迷っている暇はありませぬ。 今ならば少々手薄、近づくだけならばできましょう! |
Saya |
1: わかった、行こう! |
1: |
ナオト
あらかた片付けたら、すぐそっちに合流する! |
Naoto |
シエル
わかりました。お気を付けて。 |
Ciel |
シエル
対象を捕捉。 |
Ciel |
アラクネ
力……力、力、匂う、ニオウ、ソレが欲しい……。 もっと……もっと、アアア飲み込むゥ! |
Arakune |
アラクネ
イヒヒヒヒひヒヒヒヒヒヒヒひひヒヒヒ。 |
Arakune |
ラーベ
以前戦った時よりも、強くなっているはずだ。 気を付けろ。それと、周囲に気をつけろ。 |
Raabe |
シエル
対象の戦闘レベルの上昇を確認。行きます! |
Ciel |
第8節 蟲王4/ 8. Insect King - 4
Summary | |
---|---|
御剣機関が動かないことを気にするラーベ。
その間も、アラクネは戦闘レベルを上昇させ ながら襲いかかってくる。 |
Raabe is curious about the lack of activity from the Mitsurugi Agency. All the while, Arakune grows in strength as it attacks. |
徐々にアラクネの力を削るが、まだアラクネ
は倒れない。だが、飛び込んできたサヤの刀 がアラクネを捉える。 |
They continue to wear down Arakune, but it doesn't fall. Saya jumps in and manages to land a hit on Arakune with her sword. |
アラクネ
ググ……小さい小さい小さい! |
Arakune |
アラクネ
飛び回る羽音に焦燥が粟立つ! 影が! 捕え、喰らう! |
Arakune |
シエル
くっ……! 対象の戦闘レベル、なおも上昇しています。 |
Ciel |
ラーベ
……しかし、気になるな。 |
Raabe |
ラーベ
静かすぎる。戦闘が始まってそれなりの時間がたっている。 というのに、御剣機関が現れる様子もない。 |
Raabe |
シエル
確かにそうですね。 どこかで戦況を観察しているだけかもしれません。 |
Ciel |
シエル
またアラクネさんが追い詰められれば、すぐに介入してくる 可能性は十分にあると思います。 |
Ciel |
ラーベ
ああ。もしくはアラクネに我々が食われるのを 待っているのかもしれない。だが……。 |
Raabe |
ラーベ
これだけ成長しているところを見ると…… あえて介入せずにいるというほうが、連中らしい。 |
Raabe |
アラクネ
ひひひ、ヒヒ、噛み砕きすり潰しこなごなのばらばら。 全部全部吸い尽くす、残らず我のものとする……。 |
Arakune |
シエル
っ、させません! |
Ciel |
シエル
まだ、これほどの力を……! |
Ciel |
アラクネ
アハハそこか、そこにいたか蒼! 甘美なる香り、深淵への道標……! |
Arakune |
ラーベ
余計なことを考えているうちに、取って食われそうな 勢いだな。まずは仕留めるぞ! |
Raabe |
シエル
はい! |
Ciel |
シエル
対象の戦闘レベルの低下を確認。 ですが……対象の活動続行を認識。 |
Ciel |
アラクネ
ウググググググ……オノレオノレ! 英知への探求も生命への渇望も悉くを飲み込むか……! |
Arakune |
アラクネ
許さぬ、許さぬ、許さぬゆるさぬユルサヌ 喰らうくらうクラウ! 喰らうのは我! 我が喰らう! |
Arakune |
アラクネ
赤も蒼も虹も、我が胎内にて無限へと帰せよ! |
Arakune |
シエル
くうぅっ……! |
Ciel |
アラクネ
ガアァァァァァァァァァ!! |
Arakune |
ラーベ
まだこれほどの力があるとはな。 溜め込んだ生命力は、よほどのものらしい! |
Raabe |
シエル
危険です……レイさん、離れて……。 |
Ciel |
シエル
え? |
Ciel |
アラクネ
アグァ……! |
Arakune |
シエル
サヤさん! |
Ciel |
サヤ
……取った。 |
Saya |
第9節 交換①/ 9. Exchange - 1
Summary | |
---|---|
アラクネを捉え、刀を突き刺したサヤだが、
突如ソウルイーターが暴走し、ナオトは駆け 寄ろうとするが、瞬間ハザマが立ち塞がる。 |
Saya stabs Arakune with her sword but gets stuck. Suddenly, Soul Eater goes out of control. Naoto tries to run to her but is blocked by Hazama. |
ハザマを退けるも、ソウルイーターはアラク
ネの生命力を吸い尽くし、サヤは意識を失っ てしまう。 |
Hazama concedes, but Soul Eater has already absorbed all of Arakune and Saya collapses. |
アラクネ
クェアアアアアアア!! |
Arakune |
サヤ
え……なっ!? |
Saya |
ナオト
はぁ、はぁ……おい、サヤ! どうした!? |
Naoto |
サヤ
わ……わかりません、刀が……抜けないのです! |
Saya |
サヤ
まるでこのアラクネに飲み込まれていくみたいに……。 |
Saya |
ラーベ
離れろ! そのままだと喰われるぞ! |
Raabe |
サヤ
そ……そうしたいのですが、う……動けません。 動けないのです! ……あぁ……あああぁ。 |
Saya |
サヤ
あ、あ、ああ……うああぁぁぁっ! |
Saya |
ナオト
あれは!? まずい! サヤ、おいサヤ!! |
Naoto |
シエル
あれは、サヤさんのドライブですか……? |
Ciel |
ナオト
くそっ『ソウルイーター』だ! |
Naoto |
ラーベ
あれが、『ソウルイーター』……。 他者の命を吸い上げる、最悪のドライブか。 |
Raabe
So that's "Soul Eater".... The most evil Drive, one that sucks up others' lives. |
ナオト
くそ、なにしてやがる! サヤ、さっさとそいつを収めろ! |
Naoto |
サヤ
あ……あ……。 …………。 |
Saya |
シエル
サヤさんの様子がおかしいです。 ナオトさんの声に反応していません。 |
Ciel |
ラーベ
どうなっているんだ……。 外部から精神干渉を受けているのか? |
Raabe
What's going on…. Is it mental interference from elsewhere? |
ナオト
なんだよ、精神干渉って!? |
Naoto |
ラーベ
厳密には違うが、わかりやすく言うと操られている状態だ。 |
Raabe
It's not exactly like this, but you could say she's being controlled, if it makes it easier to understand. |
ナオト
なっ……誰がそんなふざけた真似しやがったんだ!? |
Naoto |
ナオト
いや、んなことどうでもいい、 サヤをアラクネから引き剥がさねぇと……! |
Naoto |
???
おやおや、これはおかしなことをおっしゃる。 あなた方、あの黒い怪物を倒したかったはずでは? |
??? |
シエル
っ! 誰ですか? |
Ciel |
ハザマ
あ、どうもはじめまして。私、御剣機関の……ええと、 ハザマ、でいいですかね。と、申します。 |
Hazama |
ハザマ
どうぞ、お見知りおきを。 |
Hazama |
ナオト
御剣機関……。サヤになにしやがった!? |
Naoto |
ハザマ
いいえ、別になにも。 |
Hazama |
ナオト
そんなはずあるか! あの状態、どう見ても普通じゃねぇだろ! |
Naoto |
ハザマ
そんなこと、私に言われても困りますよ〜。 |
Hazama |
ハザマ
大方、噴き出した膨大な生命力に当てられて、 力が誘発されたのではありませんかね。 |
Hazama |
ハザマ
いずれにしても、よかったではありませんか。 |
Hazama |
ハザマ
このまま彼女が力を全て吸い出してしまえば、 あのおぞましい怪物もこの街から消えることでしょう。 |
Hazama |
ナオト
だからって、妹をあのままにしておけるか! どれだけの負担がかかるかもわからねぇってのに! |
Naoto |
ハザマ
おっと、邪魔をしないでもらえませんかね。 せっかくの怪物退治の場面なんですから。 |
Hazama |
ナオト
うるせえ! そこをどけよ! どかねぇなら、力づくで通るぞ! |
Naoto |
ハザマ
おお、恐い。私、暴力行為は苦手なんですよ。 戦闘は専門外ですから。 |
Hazama |
ハザマ
でも……悲しいかな、これも仕事ですからねぇ。 |
Hazama |
ナオト
てめぇ……! |
Naoto |
サヤ
…………、……。 ……………………。 |
Saya |
ハザマ
この街の平和のためにも、アラクネは輝弥サヤさんに 仕留めていただきますよ。 |
Hazama |
ハザマ
あいたたたた……。いやはや、お強い。 これは参りました、降参降参、降参です。 |
Hazama |
ナオト
なにが降参だ、てめぇ! |
Naoto |
ハザマ
いや本当に、もう戦うつもりはありませんよ。 それに……目的は、もう果たせたようですしね。 |
Hazama |
ナオト
な……まさか、サヤ! |
Naoto |
シエル
レイさん、ナオトさん、 アラクネさんの様子がおかしいです。 |
Ciel |
アラクネ
ァ……ア……あお……。 我が内なる虚空が……遠のく……。 |
Arakune |
サヤ
……………………。 |
Saya |
ナオト
サヤ! |
Naoto |
ハザマ
おっとっと、乱暴ですねぇ、もう。 |
Hazama |
ナオト
サヤ!! しっかりしろ! |
Naoto |
ラーベ
……ハザマといったな。狙いはなんだ? |
Raabe |
ハザマ
おや。いちいち説明してさしあげる必要があるとは、 思えませんね。 |
Hazama |
ハザマ
ところで、その輝弥サヤさんですが、 こちらに渡していただくわけにはいきませんか? |
Hazama |
ハザマ
できれば、彼女を回収して帰りたいのですよ。 ええ、上司命令でして。 |
Hazama |
ナオト
ふざけんのも大概にしろよ……。渡すはずがねぇだろうが! 死にたくなきゃ、さっさと消えろ! |
Naoto |
ハザマ
あらら、いいんですか、本当に。 |
Hazama |
ハザマ
正体不明の怪物の力を吸いこんで、どういう状態かも わからない倒れた妹を抱えて、どうにかできるとでも? |
Hazama |
ハザマ
素直にこちらに引き渡したほうが、 色々とよろしいかと思うのですがねぇ。 |
Hazama |
ナオト
何度も言わせんな! 消えろ! |
Naoto |
ハザマ
やれやれ、短気な方は話が通じなくていけません。 |
Hazama |
ハザマ
ですがこれ以上のことは、私も指示されておりません のでね、これで失礼させていただくといたしましょう。 |
Hazama |
ハザマ
輝弥サヤを渡したほうがいい、と。 私、確かに言いましたからね。それでは。 |
Hazama |
ナオト
くそが……っ。 |
Naoto |
シエル
ナオトさん、サヤさんのバイタルを チェックさせてください。 |
Ciel |
ナオト
あ……ああ。 |
Naoto |
シエル
……息はあります。身体的な外傷も、目立ったものは 見当たりません。 |
Ciel |
ラーベ
ああ。命に別状はない。過剰に力を吸ったせいで、 意識を保てなくなっただけだろう。 |
Raabe |
ナオト
無事なのか? 目を覚ますんだろうな!? |
Naoto |
ラーベ
ラケル=アルカードのときのようなことにはならん。 ただの気絶だ。 |
Raabe |
ナオト
そうか……よかった……。ありがとう……。 |
Naoto |
ナオト
っ、そうだ! アラクネは!? |
Naoto |
シエル
アラクネさんの反応はありません。 サヤさんの傍らに、黒ずんだ砂のようなものが確認出来ます。 |
Ciel |
シエル
おそらく、これがアラクネさんだったものなのでは ないでしょうか? |
Ciel |
ラーベ
一応分析はしてみるが、 今重要なのはこっちじゃない。 |
Raabe |
1: 一旦、冥たちと合流しよう |
1: |
ナオト
ああ……そうだな。 悪い、レイ。運ぶの、手伝ってくれ。 |
Naoto |
サヤ
…………。 |
Saya |
第9節 交換②/ 9. Exchange - 2
Summary | |
---|---|
気を失ったサヤをナオトのマンションへ運ぶ
ナオトたち。そこへキイロから電話がかかり、 サヤと引き換えにひなたを誘拐したと告げる。 |
They carry the unconscious Saya to Naoto's apartment. There, they receive a call from Kiiro, who asks them to trade Saya for Hinata, who she's taken hostage. |
ナオト
じゃあ、エス。冥のこと頼んだぞ。 |
Naoto |
Es
はい。冥には十分に休息を取らせます。 |
Es |
冥
過保護にするな……。私なら大丈夫だ。 それより、輝弥のほうが……。 |
Mei |
ナオト
気を失ってるだけだって話だから、大丈夫だろ。 こっちのことは、俺に任せとけって。なにかあれば連絡するから。 |
Naoto |
冥
必ずだぞ。勝手に動くなよ。 ……ではな。 |
Mei |
Es
失礼します。 |
Es |
シエル
おかえりなさい、ナオトさん。 |
Ciel |
ナオト
ああ。留守番させて悪かったな。エスと冥は帰ったよ。 |
Naoto |
ナオト
それで……サヤはどうだ? |
Naoto |
シエル
まだ目を覚ます様子はありません。 |
Ciel |
ラーベ
改めて調べたが、やはり命に別状はない。 普通に眠っている状態だから、安心していいぞ。 |
Raabe |
ナオト
そうみたいだな。むしろ、狩人の眼で見える数字は、 普段より健康そうなくらいだ。 |
Naoto |
ナオト
…………。 |
Naoto |
ナオト
紅茶でも淹れてくるよ。 |
Naoto |
サヤ
…………。 |
Saya |
ラケル
…………。 |
Raquel |
ナオト
ったく。無茶ばっかしやがって。 |
Naoto |
ナオト
結局、ラケルは目を覚まさねぇし。 アラクネも倒したってのによ。 |
Naoto |
ナオト
……なあ。結局アラクネは、お前たちが探してたやつじゃ なかったってことなのか? |
Naoto |
ラーベ
ああ、そうなるな。 |
Raabe |
ナオト
なんだよ、あっさりしてんな。 もしかしてお前、アラクネは違うってわかってたか? |
Naoto |
シエル
そうなのですか、ラーベさん? |
Ciel |
ラーベ
そりゃそうだろ。 |
Raabe |
ラーベ
あれだけ支離滅裂な精神状態の奴が、蟲の発生はともかく、 それ以外の事象に影響を与えていたなら、 |
Raabe |
ラーベ
この街はもっと混沌としているはずだからな。 |
Raabe |
ナオト
でも、実際にアラクネを倒したら蟲はいなくなった。 やっぱりあいつが元凶だったんじゃねぇの? |
Naoto |
ラーベ
私たちが探しているのは、蟲を発生させた奴ではない。 この街をおかしくしている元凶だ。 |
Raabe |
ラーベ
アラクネもその『おかしく』なった部分の、 一部だったというだけの話だ。 |
Raabe |
ナオト
……おかしくなった、か。確かにここはおかしいよな……。 |
Naoto |
シエル
なにか気がかりなことがあるのですか? |
Ciel |
ナオト
気がかりっつーか……不安っつーか、疑問っつーか。 なんとなくなんだけどさ。 |
Naoto |
ナオト
ここって本当に、新川浜なのかな。 |
Naoto |
シエル
え? |
Ciel |
ナオト
いや実際、この街の名前は新川浜だ。 俺はそう思ってるし、周りのみんなもそう言ってる。でも……。 |
Naoto |
ナオト
変な話をするけどさ。漠然と、ずっと感じてるんだよな。 俺の生活って、本当にこんな風だったっけ、って。 |
Naoto |
シエル
それは……。 |
Ciel |
1: ナオトは違う世界から来たかも? ここはナオトの知ってる世界じゃない? |
1: |
ナオト
ああ。そんな感じがする。 大袈裟かもしれないし、気のせいかもしれないけど……。 |
Naoto |
ナオト
ここじゃない、こうじゃない、っていう 漠然とした違和感が、ずっと付きまとってる。 |
Naoto |
サヤ
……兄様も、なのですか? |
Saya |
ナオト
え? サヤ! 気がついたのか!? |
Naoto |
サヤ
ええ……今しがた。 |
Saya |
シエル
お体は大丈夫ですか? |
Ciel |
サヤ
はい。ご迷惑をおかけしたようで、申し訳ありません……。 |
Saya |
ラーベ
そんなことより、今の発言について詳しく聞かせてくれ。 ナオト『も』、と言っていたが? |
Raabe |
サヤ
……ええ。私も……兄様と同様に、 漠然とした違和感に戸惑っておりました。 |
Saya |
サヤ
長く、外の生活から隔たれていたせいと思っておりましたが……。 まるで夢の中に迷い込んでしまったような心地がするのです。 |
Saya |
サヤ
まさか、兄様も同じ思いを抱えているとは。 安心したような、かえって不安なような。 |
Saya |
シエル
冥さんも、同様のことを言っていましたね。 この世界は自分がいるべき世界ではないように感じる、と。 |
Ciel |
シエル
ということはナオトさんとサヤさんも、 『異物』ということでしょうか? |
Ciel |
サヤ
『異物』……。 |
Saya |
ナオト
……もしかして、この世界の奴じゃない、って意味か? なら、俺たちは……。 |
Naoto |
ラーベ
まあ、そうだな。そういう感覚があるってことは、 『異物』である可能性は否定できない。 |
Raabe |
ラーベ
だが……うーむ……。 |
Raabe |
シエル
冥さん、エスさんに続いて、 ナオトさんやサヤさんまで『異物』ということですか……。 |
Ciel |
シエル
では、一体誰がこの世界の人なのでしょう……? |
Ciel |
ナオト
ん? 冥がなんだって? |
Naoto |
サヤ
兄様。 |
Saya |
ナオト
ん? どうした。なにそんな驚いた顔してんだ? |
Naoto |
サヤ
……ひなたさんは? |
Saya |
ナオト
え? あ。そういえば……今何時だ!? |
Naoto |
シエル
22時15分です。 |
Ciel |
ナオト
10時過ぎ!? マジかよ、もうそんな時間か? 待て、今携帯にかけてみる。家には戻ってるのかも……。 |
Naoto |
ナオト
出ねぇ! メールの返信もねぇし……。 |
Naoto |
シエル
なにかトラブルがあったのでしょうか。 |
Ciel |
ナオト
だったらメールくらい入れてくるだろ。 少なくとも普段のひなたならそうしてる。 |
Naoto |
ナオト
普段の……あいつなら……。 |
Naoto |
ナオト
ちょっと俺、探してくる。お前ら、ここで待っててくれ。 ひなたが帰ってくるかもしれねぇから……。 |
Naoto |
ナオト
!? |
Naoto |
ナオト
電話だ。ひなたから。驚かせやがって……。 もしもし? ひなた? 今どこにいるんだよ、お前……。 |
Naoto |
ナオト
……あ? 誰だ、てめぇ? |
Naoto |
ナオト
その話し方……まさか、この前の御剣機関の! |
Naoto |
ラーベ
なに? おい、ちょっと貸せ。音声を拡散させる。 ええと……こうして、こうだ! |
Raabe |
キイロ
そうよ。緋鏡キイロ。んもう、忘れたフリなんか しちゃって、シャイなんだからぁ。 |
Kiiro |
ナオト
ちげぇよ。てか、おい! お前! なんでひなたの携帯からかけてきてんだ!? |
Naoto |
ナオト
ひなたはそこにいるのか!? |
Naoto |
キイロ
やぁん、恐い声。でもちょっぴりワイルド。素敵よ。 |
Kiiro |
ナオト
っざっけんな!! |
Naoto |
キイロ
姫鶴ひなたさんは、無事よ。私のすぐ近くにいるわ。 |
Kiiro |
シエル
どうして、御剣機関がひなたさんと一緒にいるのですか? |
Ciel |
キイロ
もちろん、仲良くお茶してるわけじゃないわよ。 無事なのも、今のところのお話。 |
Kiiro |
キイロ
ナオトくんたちの出方によっては、かわいそうだけど、 この子には犠牲になってもらわないといけないかも。 |
Kiiro |
サヤ
どういう意味です……? |
Saya |
ナオト
おい。ひなたになんかしてみろ。絶対に許さねぇぞ。 |
Naoto |
キイロ
んふ。ゾクゾクしちゃう。 許さないなら、どんなことされちゃうのかしら。 |
Kiiro |
ナオト
てめぇ……っ! |
Naoto |
1: こちらへの要求は? |
1: |
キイロ
あら。もう聞いてるんじゃない? 私がこの大事なお友達と交換してほしいもの。 |
Kiiro |
シエル
まさか……。 |
Ciel |
キイロ
ええ、そう。 輝弥サヤを渡して。 |
Kiiro |
ナオト
なっ!? |
Naoto |
キイロ
待ち合わせ場所の地図をメールで送るわ。 だから持ってきて。そこでお友達と交換しましょ。 |
Kiiro |
ナオト
馬鹿かてめぇ! サヤは物じゃねぇ。 気軽に交換だとか、できるか! |
Naoto |
キイロ
あ〜ら、お世話になってる幼馴染みじゃないの? 姫鶴ひなたさんって。 |
Kiiro |
キイロ
意外とドライなのねぇ。 ……ね。『ナオトちゃん』。 |
Kiiro |
ナオト
……っ! |
Naoto |
キイロ
できるだけ早くナオトくんに会いたいから、 今夜中には来てね。 |
Kiiro |
キイロ
あ、でも大丈夫よ、ちょっとくらいゆっくりでも。 私、焦らされるの嫌いじゃないわ。 |
Kiiro |
キイロ
私たちの夜はまだたっぷりあるもの。 待ってるわ、ナオトくん。 |
Kiiro |
……チュ。 |
|
サヤ
……切れましたね、電話。 |
Saya |
シエル
地図をメールで送ると言っていました。 |
Ciel |
ナオト
っ! 来た! ……ええと……線路? その高架下か! |
Naoto |
サヤ
行きましょう。一刻の猶予もありません。 |
Saya |
ナオト
お、おい、ちょっと待て! お前も行くつもりかよ!? |
Naoto |
サヤ
当然です。あの女は私とひなたさんを交換だと 言っていたではありませんか。 |
Saya |
サヤ
理由はわかりませんが、私を渡さねばひなたさんの身が 危険に晒される。とあれば、選択の余地はありますまい。 |
Saya |
ナオト
そりゃそうかもしれねぇけど、だからってお前を簡単に 差し出せるか! |
Naoto |
ナオト
連中がお前になにするつもりかわかんねぇんだぞ! |
Naoto |
サヤ
ではここでまごついていれば、わかるのですか? 危ぶんで機を逃したらば、ひなたさんはどうなります。 |
Saya |
ナオト
それは……っ。 |
Naoto |
サヤ
先ほどから兄様は頭に血が上っておられるようですが、 どうか冷静に考えてくださいませ。 |
Saya |
サヤ
私と、ひなたさんと。 どちらがより危険に対処できましょうか。 |
Saya |
サヤ
ひなたさんは戦闘技術も、経験もない、ドライブもない、 ごくごく一般的な……普通の女の子なんですよ。 |
Saya |
ナオト
サヤ……だけど。 |
Naoto |
サヤ
私のことならば、どうぞご心配なさいますな。 これでも輝弥家次期当主。 |
Saya |
サヤ
御剣機関の女狐の首でも土産に、すぐに戻って参ります。 |
Saya |
ナオト
…………。 |
Naoto |
シエル
どうしますか? ナオトさん? |
Ciel |
ナオト
……わかった。行こう。 ひなたに手出しさせるわけにはいかねぇ。 |
Naoto |
サヤ
よかった。そう言ってくださらなければ…… |
Saya |
サヤ
今すぐ兄様の腕ごと携帯を斬り落として、 勝手に地図を拝見するところでした。 |
Saya |
ナオト
冗談じゃなさそうだから、恐ぇよお前。 |
Naoto |
ラーベ
では、取引場所に向かうんでいいんだな? |
Raabe |
ナオト
ああ。 サヤ……信じてるからな。 |
Naoto |
サヤ
はい。 |
Saya |
第9節 交換③/ 9. Exchange - 3
Summary | |
---|---|
気を取り戻したサヤと冥、Esも合流し、指定
された場所へ向かう。だがそこはすでに複数 のキイロの部下に包囲されていた。 |
Together with Saya, who's regained consciousness, they meet up with Mei and Es and head for the location of the exchange. But when they get there, it's already crawling with Kiiro's subordinates. |
冥
待たせたな、黒鉄。 |
Mei |
ナオト
いや。悪いな、帰ったばっかりだってのに、呼び出して。 |
Naoto |
冥
気にするな。と言うより、こんなこと私に知らせずに、 勝手にどうこうされていたほうが迷惑だ。 |
Mei |
冥
アラクネの件こそひと段落したが、こんな状況で こっちの用件は片付いたと手を引けるほど、私は薄情じゃない。 |
Mei |
Es
お声掛けいただけて、よかったです。 こういう事態に頼っていただけるほうが、嬉しく思います。 |
Es |
Es
緋鏡キイロとの約束の場所は、この先ですね? |
Es |
シエル
はい。あの丁字路の先です。 ……ひなたさんが無事だといいのですが。 |
Ciel |
1: もちろん無事だよ |
1: |
シエル
そうですよね。 まだ人質を傷付ける理由はないはずです。 |
Ciel |
シエル
そうですね……。油断せずにいきましょう。 |
Ciel |
冥
相手はあの御剣機関だ。なにがあるかわからん。 慎重に行動しろよ。 |
Mei |
ナオト
地図だと……この辺りか? もう少し奥か。 |
Naoto |
ラーベ
どれ、見せてみろ。 |
Raabe |
Es
……! 皆さん。気を付けてください。囲まれています。 |
Es |
シエル
複数の敵性反応を感知。戦闘レベルの上昇を確認。 |
Ciel |
黒服
……目標、こちらに気付きました。 |
Black Suit |
サヤ
あれは……御剣機関の手の者のようですね。 |
Saya |
ナオト
おい! てめぇらの仲間はどこだ!? |
Naoto |
黒服
……了解。拘束します。 |
Black Suit |
シエル
どういうことですか。こちらは交渉に来たんです。 戦う必要はないはずです。 |
Ciel |
ラーベ
こっちにはなくても、あっちにはあるんだろう。 拘束してしまえば、暴れられる面倒もないだろうしな。 |
Raabe |
冥
はなからまともに取り引きするつもりはない、 ということか。 |
Mei |
ナオト
ナメやがって……。 なんでもかんでも、てめぇらの好きにさせるかよ! |
Naoto |
第9節 交換④/ 9. Exchange - 4
Summary | |
---|---|
キイロにサヤが連れて行かれてしまう。さら
にラケルにも刺客を差し向けており、新たな 姿で立ち塞がる。 |
Kiiro takes Saya away with her. Intending to assassinate Raquel, she stands before them in a different form. |
キイロの強さに圧倒されるナオトたちにレイ
チェルが現れる。シエルたちはレイチェルの 手助けによりラケルの元へ向かう。 |
While Naoto's group faces Kiiro's overwhelming strength, Rachel appears. With her help, Ciel and the others are able to go back to Raquel. |
キイロ
あ〜ん、ナオトくん。 私に会いに来てくれたのね。嬉しいわぁ〜。 |
Kiiro |
ナオト
なにが、会いに来た、だ。 てめぇが呼んだんだろうが! |
Naoto |
キイロ
んふ。そうね。 でも呼び出したらすぐに来てくれた。 |
Kiiro |
シエル
ひなたさんは無事なのですか? |
Ciel |
キイロ
ええ……無事よ。今はぐっすり眠ってるわ。 約束したじゃない。 |
Kiiro |
キイロ
それで。来てくれたということは、こちらの条件は もちろん受け入れてくれるってことよね? |
Kiiro |
ナオト
……っ。 |
Naoto |
サヤ
はい。その通りです。 私を差し出しますので、ひなたさんを返してください。 |
Saya |
キイロ
ふうん、意外。ナオトくん、それでいいんだ? |
Kiiro |
ナオト
いいわけ……ねぇだろ! |
Naoto |
冥
黒鉄、抑えろ。 |
Mei |
ナオト
わかってるよ……! |
Naoto |
キイロ
やん。激しい目……。 目茶苦茶にされたくなっちゃう。 |
Kiiro |
サヤ
戯言は結構。ひなたさんはどこにいるのです。 ……卑劣者。 |
Saya |
キイロ
んふふ、やぁだ。 言葉責めならナオトくんにお願いしたいわ〜。 |
Kiiro |
キイロ
でもごめんなさいねぇ。 姫鶴ひなたさんは、ここにはいないのよ。 |
Kiiro |
Es
どういうことですか? 話が違います。 |
Es |
キイロ
違わないわよ。ここでひなたさんとあなたの身柄を交換する、 なんて私、言ってないもの。 |
Kiiro |
キイロ
姫鶴ひなたさんは今、 私の部下の車で自宅に向かっているわ。 |
Kiiro |
キイロ
輝弥サヤが大人しく私たちの組織までついてくれば、 彼女は無事、そのまま家に帰れるはずよ。 |
Kiiro |
キイロ
でももしそうならなかったら……そのときは、 彼女になにがあるか、保障はできないわね。 |
Kiiro |
ラーベ
なるほどな。そちらが満足して人質を解放するまで、 こちらは指をくわえて待っているしかないと。 |
Raabe |
冥
そちらが姫鶴ひなたを無事に解放するという 保障はあるのか? |
Mei |
キイロ
条件を出しているのはこちら側よ。 あなたたちはそれに従うしかない。そうでしょう? |
Kiiro |
キイロ
自分たちの立場を勘違いしないで。 |
Kiiro |
ナオト
てめぇ……っ! |
Naoto |
サヤ
わかりました。それで結構です。 |
Saya |
キイロ
賢明な妹さんね。協力的で助かるわぁ。 |
Kiiro |
ナオト
おい。せめて聞かせろよ。なんでサヤを欲しがる!? |
Naoto |
ラーベ
……大方、それが輝弥サヤにアラクネを仕留めさせた 理由だろうな。 |
Raabe |
シエル
では……サヤさんがアラクネさんにとどめを刺したのは、 御剣機関が仕組んだことだということですか? |
Ciel |
ラーベ
そうなんだろう? 緋鏡キイロ。 |
Raabe |
ラーベ
そうでなければ、今このタイミングで 輝弥サヤをほしがる理由がない。 |
Raabe |
キイロ
んふ。そうよ。私たちの悲願を達成するために、 今はその子が必要なの。 |
Kiiro |
冥
悲願だと? |
Mei |
キイロ
ええ。輝弥サヤは、いいえ、正確には『今の』輝弥サヤは、 その決定的な切り札になり得る存在。 |
Kiiro |
キイロ
だから、どうしてもほしいのよ。 |
Kiiro |
キイロ
さあ、大人しくしていてね。少しだけ眠っていて もらわないと。あなたったら、危なっかしいんだもの。 |
Kiiro |
サヤ
え……あっ。 |
Saya |
ナオト
な……おいこら、キイロ! なにしやがった!? |
Naoto |
キイロ
だから、眠ってもらっただけよ。ひなたちゃんに使った のと同じ、即効性の眠り薬みたいなもの。 |
Kiiro |
キイロ
心配しないで。一晩眠ったら、元気に目が覚めるから。 後遺症はなんにもないわ。首筋に小さな針の痕が残るだけ。 |
Kiiro |
キイロ
……連れていって。 |
Kiiro |
黒服
はい。 |
Black Suit |
キイロ
さて、と。まだもう少し時間があるわね。 |
Kiiro |
冥
時間? なんの時間だ? |
Mei |
キイロ
やぁねぇ、なんのためにあなたたちをこんな、 寂れた場所に呼び出したと思ってるの? |
Kiiro |
キイロ
このやり方なら、 ナオトくんの家まで迎えに行くほうが早いでしょ。 |
Kiiro |
シエル
では、なぜ呼び出したのですか? |
Ciel |
キイロ
もちろん、あの家から離れてもらうためよ。 |
Kiiro |
キイロ
仲良しなあなたたちのことだから、サヤちゃんひとりで 来させるわけがないと思ってたけど。 |
Kiiro |
キイロ
まさかみんな揃ってぞろぞろ来てくれるとはね。 仕事がやりやすくて好都合だわ。 |
Kiiro |
ラーベ
そうか……なるほどな。そうきたか。 |
Raabe |
ナオト
なるほどって、なにがだよ!? あいつはなにを……! |
Naoto |
ラーベ
落ち着け。簡単な話だ。我々は全員ここにいる。 ではお前の家に残っているのは、なんだ? |
Raabe |
ナオト
なに、って、家には誰も……まさか!? |
Naoto |
Es
ラケルさんが……! |
Es |
ナオト
ふ……ざけんな!! |
Naoto |
ナオト
うわっ! な、なんだ、剣が飛んできた……? |
Naoto |
キイロ
ふふ。だめよ。ナオトくん。急に動いたら危ないわ。 間違って刺しちゃったら、大変。 |
Kiiro |
冥
今のは、ドライブ!? 緋鏡キイロも、ドライブ能力者か! |
Mei |
キイロ
……ねえ、ナオトくん。 お人形遊びは好き? |
Kiiro |
ナオト
はぁ!? 知るか! んな話、悠長にしてる場合じゃねぇんだよ! |
Naoto |
キイロ
そういうわけにもいかないわ。 だって……もっとあなたと一緒にいたいんだもの。 |
Kiiro |
シエル
対象の戦闘レベルの上昇を確認。明らかな戦意を感じます。 レイさん、私の側に。 |
Ciel |
キイロ
……本当はね、私のこんな姿、 見せたくなかったんだけど。仕方ないわよね。 |
Kiiro |
ラーベ
おっと。なんだ? |
Raabe |
シエル
あれは……大きな、剣? |
Ciel
Is that...a big sword? |
Es
ムラクモユニット……!? ではまさか、あなたは! |
Es
A Murakumo Unit…! Then, you're-- |
キイロ
あん。あんまり見つめないで。 体が火照ってきちゃう。 |
Kiiro |
ナオト
な……なんだ、あれは……。 |
Naoto |
ラーベ
……素体か。 |
Raabe
A Prime Field... |
キイロ
――『EsNo07』。それが私の名前。番号。 |
Kiiro
--Es No.07. That's my name. My serial code. |
キイロ
人に造られた物。自立意思を持つ危険物。 化け物。お人形。 |
Kiiro
A man-made danger, with an independent will. A monster. A doll. |
Es
……私と同じ……『エンブリオストレージ』……。 |
Es
...The same as me...an "Embryo Storage".... |
シエル
同じ……? |
Ciel |
キイロ
ラケル=アルカードは我々御剣機関が預かるわ。 そのためにも……。 |
Kiiro |
キイロ
あなたたちには、 ここでしばらく遊んでいってもらわないと! |
Kiiro |
キイロ
きゃぁぁっ! |
Kiiro |
Es
……これ以上は。ここまでにしましょう。 |
Es |
冥
黒鉄、今のうちに! |
Mei |
ナオト
ああ! |
Naoto |
ナオト
っ! くそ、まだ動けるのか……! |
Naoto |
キイロ
うふふ……ふふふふ。痛い……でも、あなたを失う痛みを 思ったら、なんてことないわ。 |
Kiiro |
キイロ
むしろ気持ちいいくらい。……もっと。 もっとちょうだい……ナオトくん。 |
Kiiro |
冥
くそっ! ここは私が引き受ける。 黒鉄とレイはさっさと戻れ! |
Mei |
キイロ
いいえ、ダメよ。ひとりも逃さないわ! |
Kiiro |
シエル
レイさん、下がってください……! |
Ciel |
1: キイロの剣がこっちに――! |
1: |
キイロ
……弾かれた? |
Kiiro |
レイチェル
…………。 |
Rachel |
ナオト
!? |
Naoto |
シエル
アナタは……。 |
Ciel |
レイチェル
ごきげんよう。ひどい夜ね。 |
Rachel |
ナオト
な……なん、だ、あんた……? ラケル……? |
Naoto |
レイチェル
違うわ。私はレイチェル=アルカード。 ラケル=アルカードとは、別のものよ。 |
Rachel |
ナオト
レイチェル? あ……そうだ、あんた! |
Naoto |
ナオト
前に公園で会った! あの、夢だか幻だか、わかんないような場所で……! |
Naoto |
レイチェル
あれは事象干渉。といっても、厳密には 時の流れにのみ干渉したもので…… |
Rachel |
レイチェル
まあ、今はこんな話、している場合ではないわね。 |
Rachel |
キイロ
レイチェル……アルカード? アルカードの吸血鬼が、まだ他にも……。 |
Kiiro |
レイチェル
緋鏡キイロ。あなたの思い描く通りに、 世界が進むとは思わないことね。 |
Rachel |
キイロ
ふん。あなたになにができるのかしら。 |
Kiiro |
キイロ
私の剣をひとつ弾いてみせたところで、 状況はなにも変わっていないんじゃない? |
Kiiro |
ナオト
そうだ……ラケルが! |
Naoto |
レイチェル
落ち着きなさい。すぐに彼女がどうこうされることはないわ。 心強い助っ人が、向かっているはずだから。 |
Rachel |
冥
助っ人だと? |
Mei |
レイチェル
でも……あの人の力だけでは、 事態を動かすことはできないかもしれない。 |
Rachel |
レイチェル
だから……あなたが必要よ、 レイ。 |
Rachel |
レイチェル
私が今、こうしてここに立っていられるように、ね。 |
Rachel |
キイロ
逃がさないわよ。それに……あなた、アルカードの 吸血鬼にしては、ずいぶんと弱いみたい。 |
Kiiro |
キイロ
あなたくらいなら、私でも簡単に切り刻めそうよ。 |
Kiiro |
レイチェル
そうでしょうね。でも、私がここに来たのは、 あなたを倒すためじゃないわ。 |
Rachel |
レイチェル
レイ。あの人のところへ連れていくわ。 助けになって差し上げて。 |
Rachel |
1: あの人って―― |
1: |
キイロ
逃がさないって言ってるでしょ! |
Kiiro |
冥
くっ……! |
Mei |
Es
させません。 |
Es |
ナオト
冥、エス! |
Naoto |
Es
行ってください。ここは、私たちが。 |
Es |
ナオト
……っ、くそ! |
Naoto |
ナオト
おらぁぁっ! |
Naoto |
キイロ
激しいのね、でも、いかせないわよ! |
Kiiro |
ラーベ
おい、離れるな! 転移できないだろ! |
Raabe |
ナオト
こんな状況で冥とエスだけ残せるかよ! |
Naoto |
レイチェル
相変わらず……馬鹿ね。 |
Rachel |
ナオト
いいから行け、レイ! ラケルを頼む! |
Naoto |
シエル
ナオトさん! |
Ciel |
レイチェル
じっとしていなさい。次元の狭間に放り出されるわ。 ……行くわよ。 |
Rachel |
第10節 魔王①/ 10. Demon King - 1
Summary | |
---|---|
レイチェルの転移魔法で移動したのはマンショ
ン近くの公園。レイチェルに見送られ、ラケ ルの元へ急ぐ。 |
Rachel's teleportation brings them to a park near the apartment. Seeing Rachel off, they hurry to Raquel. |
シエル
ここは……ナオトさんのマンションの近くにある、公園です。 |
Ciel |
ラーベ
無事転移できたようだな。だがさすがに、 マンションの部屋の中とはいかなかったらしい。 |
Raabe
Looks like we were able to successfully teleport. But you weren't able to take us directly into the apartment. |
レイチェル
無理を言わないで、 見ず知らずの場所で自在に転移なんてできないわよ。 |
Rachel
Don't ask the impossible, I can't teleport spontaneously to unknown locations. |
シエル
レイチェルさん。 ナオトさんたちは、まだあの高架下にいるのですか? |
Ciel
Ms. Rachel, are Naoto and the others still below the high rise? |
レイチェル
ええ。 ……転移魔法は、非常に繊細で扱いが難しいの。 |
Rachel
Yes...Teleportation sorcery is very difficult to control in detail. |
レイチェル
あの混乱した状況で、緋鏡キイロだけを省いて 彼らを一緒に転移させることはできなかったし……。 |
Rachel
It wouldn't have been possible for me to take them along while excluding Kiiro's group, in such a chaotic situation. |
レイチェル
なにより、これ以上の人数を運ぶのは難しかったわ。 |
Rachel
More than anything, it'd be difficult to take more than the current number of people along. |
1: 助けてくれてありがとう |
1: |
レイチェル
ええ。さあ、お行きなさい。 |
Rachel |
シエル
レイチェルさんは、行かないのですか? |
Ciel
Miss Rachel, are you not coming with us? |
レイチェル
今の私が行っても、足手まといよ。 しばらくは何もできないわ。 |
Rachel
Even if I went, I would just hold you back. I won't be able to do anything for a while. |
レイチェル
それに、私があの部屋に入るのは、 あまり良くないだろうから。 |
Rachel
It also wouldn't be very good for me to go into that room. |
シエル
どういうことですか? |
Ciel
What do you mean? |
レイチェル
……私とラケル=アルカードは、非常に近い存在なの。 |
Rachel
...Raquel and I are two existences that are unusually close. |
レイチェル
あまりに近いから……物理的に同じ空間に長く留まると、 互いの存在に影響を及ぼすわ。 |
Rachel
Too close, in fact...If the two of us stay in the same place physically for too long, it'll have an effect on us. |
レイチェル
今はあの子、眠っているのでしょう? |
Rachel
That one is sleeping right now, right? |
レイチェル
ただでさえ存在の危うい子に、不用意に近付いたら……。 どうなるかわからないわ。 |
Rachel
If I were to carelessly approach her while her very existence is in danger...I don't know what might happen. |
ラーベ
……最悪、互いに消滅。そこまでいかなくとも、 ラケルの存在を取り込んでしまう可能性は大いにあるな。 |
Raabe
...In the worst case, mutual annihilation. Or if not that extreme, there's a high chance you might absorb Raquel's existence. |
レイチェル
だから、私はここまで。見送るだけよ。 あとはあなたたちと……あの人で、なんとかしてちょうだい。 |
Rachel
Therefore, this is as far as I'm going. I'll see you off. The rest is up to you...please do something about that person. |
シエル
あの、もう一度聞きますが、 あの人とは誰のことですか? |
Ciel |
レイチェル
行けばわかるわ。 ……それじゃあ、私は一足先に失礼するわね。 |
Rachel |
レイチェル
せいぜい、頑張りなさい。 |
Rachel |
ラーベ
……消えたか。こっちも動くとしよう。 |
Raabe |
シエル
はい。ですがその前に、対処するべき問題があるようです。 |
Ciel |
シエル
対象を補足、照合。……御剣機関です。 |
Ciel |
ラーベ
見張りか。どう見ても、私たちをマンションの中に 入れたくなさそうだな。 |
Raabe |
ラーベ
余計な時間を食っている暇はない。 蹴散らして進むぞ。 |
Raabe |
シエル
はい。ラケルさんのところに急ぎましょう。 |
Ciel |
第10節 魔王②/ 10. Demon King - 2
Summary | |
---|---|
ナオトの部屋へ向かうシエルたち。レリウス
を発見したシエル達は、ラケルの回収を阻止 すべく戦闘を開始する。 |
They head for Naoto's room. Meeting Relius, they fight him to prevent him from taking Raquel. |
人形のレリウスを退け、ラケルを抱えた本物
を追おうとする前を何者かに投げ飛ばされた ヴァルケンハインが横切る。 |
The Relius before them is a doll. Passing him, they see the real one carrying Raquel away, but before they can give chase, Valkenhayn is thrown before them. |
シエル
もうすぐナオトさんの部屋ですが……静かですね。 |
Ciel |
ラーベ
ラケル=アルカードを連れ出すだけならば、騒ぎにも ならんだろうが……助っ人とやらは一体どうしたんだ? |
Raabe |
シエル
まさか、もうすでに全て終わった後なのでしょうか。 だとしたらラケルさんは……。 |
Ciel |
シエル
いえ、前方に反応あり。確認……。 反応、レリウス=クローバーです。 |
Ciel |
シエル
いました、あそこです! |
Ciel |
ラーベ
ひとりか? ……もう一匹のでかいのはどうした? |
Raabe |
レリウス
……これは驚いた。貴様らは、キイロと一緒に いるものだと思っていたが……。 |
Relius |
レリウス
あの場所からここまで……そう短時間で行き来できる とは思えん……。なにを使った……? |
Relius |
ラーベ
考察の時間はあとだ。 ラケル=アルカードの回収に来たんだな? |
Raabe |
シエル
そうはさせません。 ここから先へは行かせません。 |
Ciel |
レリウス
ふむ……では、どうする? 説得で心を入れ替えさせるかね? |
Relius |
シエル
手を引いてください。 さもなければ、戦わなければなりません。 |
Ciel |
レリウス
なるほど。短絡的だが、効率的とも言える。 問題は私に勝てると判断した分析力だが……。 |
Relius |
レリウス
せっかくの機会だ。 それを含めて、改めて観察させてもらうとしよう。 |
Relius |
レリウス
これらの能力を、解析しきれたわけではないからな……。 |
Relius |
レリウス
さあ……観せてもらうぞ。 |
Relius |
レリウス
……か、はっ……。 |
Relius | |
シエル
仕留めた……? |
Ciel | |
1: 前より弱いような…… |
1: | |
シエル
……手応えが、妙です。まるで人間ではなく……。 あっ! |
Ciel | |
シエル
これは……人形です。 |
Ciel | |
ラーベ
こちらの解析に合わせて擬態させてきたのか。 なら、本物は……! |
Raabe | |
シエル
いました、反対側です。ラケルさんを抱えています。 追いましょう! |
Ciel | |
ラーベ
待て、止まれ、シエル! |
Raabe | |
シエル
今のは……。解析……なにか大きなものが、 目の前を高速で横切り……壁に激突したようです。 |
Ciel | |
レリウス
……ちっ。 |
Relius | |
ヴァルケンハイン
う……ぐ……くそ……っ。 |
'Valkenhayn | |
ラーベ
あれは、ヴァルケンハインか? なんであいつがレリウスめがけて飛んでいったんだ? |
Raabe | |
シエル
違います。彼は何者かに投げ飛ばされたのです。 ナオトさんのマンションの部屋の中から。 |
Ciel | |
シエル
誰かいます。警戒してください、レイさん。 |
Ciel | |
???
情の薄いことだ、人形師。彼の手助けはしないのかな? |
??? | |
レリウス
……任せろと言ったのはお前だぞ、ヴァルケンハイン。 |
Relius | |
ヴァルケンハイン
ふざ、けるな……まだ、だ……! |
'Valkenhayn | |
???
丈夫だな、人狼(ライカンスロープ)。……それにしても。 |
??? | |
シエル
……っ。 |
Ciel
... | |
ラーベ
! |
Raabe | |
???
……なるほど、君か。……道理で。 |
???
...Oh, so it's you. ...Of course. | |
シエル
さ……下がって、ください。 レイさん……。 |
Ciel
G-get back, please, Rei….. | |
シエル
あれは……アレは……『普通』じゃありません! |
Ciel
That's...that's not "normal!" | |
???
こんばんは、異分子諸君。 レイチェルは問題なく、たどり着けたようだな。 |
???
Good evening, Contaminants. It seems Rachel made it without a problem. | |
クラヴィス
私の名前はクラヴィス=アルカード。 レイチェルと、ラケルの……父親だ。 |
Clavis
My name is Clavis Alucard. Rachel and Raquel's...father. |
第10節 魔王③/ 10. Demon King - 3
Summary | |
---|---|
「不死殺し」二人を顔色ひとつ変えずに捌く
クラヴィス。クラヴィスと協力し、ラケルを 奪還しようとする。 |
Clavis handles Immortal Breaker with ease. Working together with him, Ciel, Raabe, and Rei attempt to take back Raquel. |
未だ戦おうとするヴァルケンハインをレリウ
スが抑えて立ち去る。 |
Supporting Valkenhayn, who still wants to fight, Relius leaves. |
ラーベ
クラヴィス=アルカード……。 |
Raabe
Clavis Alucard…. |
ラーベ
吸血鬼の一族、アルカード家の当主にして、 最強の『幻想生物』……。 |
Raabe
Head of the vampiric Alucard family, and the strongest of the "Imaginary Creatures." |
ラーベ
そのクラヴィス=アルカードが…… ラケルとレイチェルの父親だと? |
Raabe
And that Clavis is...Raquel and Rachel's father? |
クラヴィス
その通り。だが積もる話は後にしよう。 今は……彼らの応対が先だ。 |
Clavis |
ヴァルケンハイン
ぐるあぁぁぁぁぁぁぁ! |
'Valkenhayn |
ヴァルケンハイン
ぐぐ……この、化け物が……! |
'Valkenhayn |
クラヴィス
はは、君が言うかね。 |
Clavis |
レリウス
……っ! |
Relius |
クラヴィス
おっと。 |
Clavis |
レリウス
……触れただけで人形を破壊するか。 |
Relius |
クラヴィス
やっと手を貸す気になったのかな? レリウス=クローバー。 |
Clavis |
シエル
すごい力です……。 あのヴァルケンハインさんを片手で捕えています。 |
Ciel |
シエル
レリウスさんの人形も、一瞬で粉々に……。 とてもそんな腕力があるようには、見えないのに。 |
Ciel |
ヴァルケンハイン
があぁぁぁぁぁぁっ! |
'Valkenhayn |
クラヴィス
元気だな。まだ暴れるか。 |
Clavis |
シエル
凄まじいスピードと力です。なのに、そのふたりを相手にして、 クラヴィスさんはまったく押されていません。 |
Ciel |
シエル
すごい戦いです……。 吸血鬼の一族というのが、これほどとは……。 |
Ciel |
ラーベ
違うよ、吸血鬼……だからじゃない、 クラヴィス=アルカードが特別なんだ……。 |
Raabe |
ラーベ
とりあえずだ、これでは、こちらは手の出しようもないな。 となれば、レイ、今のうちだ。 |
Raabe |
1: ラケルを取り戻そう |
1: |
シエル
はい。 |
Ciel |
シエル
はぁぁぁっ! |
Ciel |
レリウス
くっ……煩わしい……。 |
Relius |
シエル
あうっ! 重い……でも! |
Ciel |
クラヴィス
娘を返してもらうぞ。 |
Clavis |
レリウス
――っ!? |
Relius |
ヴァルケンハイン
レリウス! 吸血鬼を奪われるぞ! |
'Valkenhayn |
レリウス
……わかっている。 |
Relius |
シエル
人形、多数出現。ですがレリウスさんはクラヴィスさんに かかりきりのようです。 |
Ciel |
シエル
これなら、私たちで十分相手にできます。 ……対象を補足。ラケルさんを守ります。 |
Ciel |
ヴァルケンハイン
あ……がっ……。 |
'Valkenhayn |
レリウス
……く……。 |
Relius |
クラヴィス
なにも、君たちの命が欲しいわけではない。 大人しく手ぶらで帰るならば、追いはしない。 |
Clavis |
レリウス
…………。 |
Relius |
ヴァルケンハイン
く、そ、この……! |
'Valkenhayn |
レリウス
……今宵はここまでだな。 我等は撤退するとしよう……不死者の王よ。 |
Relius
...We'll leave it at this tonight, I suppose. We shall retreat...No-Life King. |
クラヴィス
賢明だ。……あぁ、忘れ物だ、ちゃんと持ち帰ってくれよ。 |
Clavis |
ヴァルケンハイン
がっ……! |
'Valkenhayn |
レリウス
……やれやれ。 |
Relius |
ヴァルケンハイン
ぐ……放せ……俺はまだ……。 |
'Valkenhayn |
レリウス
まさに負け犬の遠吠えだな。 標的は取り戻され、こちらの戦力はガタガタ。 |
Relius |
レリウス
この状況で、撤退以外になにをする……? 御剣機関に命を捧げるつもりはない。 |
Relius |
ヴァルケンハイン
ぐ……。 |
'Valkenhayn |
レリウス
……失礼する。 |
Relius |
第10節 魔王④/ 10. Demon King - 4
Summary | |
---|---|
クラヴィスの強烈な威圧感に気圧されるシエ
ル達。ラケルを部屋に寝かせ、ラケルの状態 やこの世界についての話を聞く。 |
Ciel, Rei, and Raabe are intimidated by Clavis' overwhelming presence. Taking Raquel back into the room, they talk about Raquel's situation and the current world. |
シエル
お疲れ様でした、レイさん。 |
Ciel |
シエル
レリウスさんたちは……もう反応がありません。 索敵範囲外に逃亡したものと思われます。 |
Ciel |
ラーベ
あれだけ一方的にやられておきながら、 まだそれだけの余力があるとはな。 |
Raabe |
ラーベ
新川浜にはどれだけ化け物が集まってるんだ……。 |
Raabe |
シエル
あ……。 |
Ciel |
クラヴィス
怪我はないかね? |
Clavis |
シエル
は……はい。 私もレイさんも、大きな損傷はありません。 |
Ciel |
クラヴィス
そうか。それはよかった。 人間は時々、驚くほど脆いからな。 |
Clavis |
シエル
…………。 |
Ciel |
シエル
あ……あの。ありがとうございます。 ラケルさんを……助けていただいて。 |
Ciel |
シエル
我々だけでは、とても……対処できませんでした。 ですので……。 |
Ciel |
クラヴィス
……ふむ。 |
Clavis |
シエル
な、なにか……? |
Ciel |
1: (物凄い威圧感を感じる……) (よくわからないけど目茶苦茶恐い……) |
1: |
クラヴィス
……いや。礼を言うのは、こちらのほうだ。 ラケルのために奮闘してくれたこと、感謝する。 |
Clavis |
クラヴィス
なにより、この場に来てくれて助かった。 私ひとりでは、ラケルを奪われていたかもしれない。 |
Clavis |
ラーベ
あなたは、先ほど『ラケル=アルカード』の父親だと 言っていたが……あれはどういう意味だ? |
Raabe |
クラヴィス
そのままの意味だ。 この子は私が存在を与え、姿を与え、ここまで育てた。 |
Clavis |
シエル
レイチェルさんも……ですか? |
Ciel |
クラヴィス
……そう言っても、間違いではないだろうな。 ただし彼女たちが姉妹かと聞かれると、返答に困る。 |
Clavis |
クラヴィス
……よく眠っている。 |
Clavis |
クラヴィス
場所を変えてもいいだろうか。 この子をこのまま、廊下に寝かせておきたくはない。 |
Clavis |
シエル
あ……はい。 ではナオトさんの部屋に運びましょう。 |
Ciel |
シエル
……布団も、元通りにかけておきますね。 |
Ciel |
ラーベ
さっきはこの部屋でヴァルケンハインと戦っていた ようだが……思いの外、室内に被害はないな。 |
Raabe |
クラヴィス
即席の、結界のようなものを張らせてもらっていた。 ラケルが世話になった家主に、迷惑をかけたくなかったのでな。 |
Clavis |
クラヴィス
さて。腰を落ち着けたところで……。 こちらからも、尋ねていいかね? |
Clavis |
シエル
は、はい……! |
Ciel |
クラヴィス
君たちは、この世界の『外側』から来たようだね。 そしてこの世界を『解放』するつもりなのだとか。 |
Clavis |
シエル
はい……その通りです。 |
Ciel |
クラヴィス
そうか。どうかね。できそうかね? |
Clavis |
シエル
それはまだわかりませんが……。 そうなるために、行動しています。 |
Ciel |
クラヴィス
なるほど。では健闘を祈るとしよう。 |
Clavis |
クラヴィス
でなければ、ラケルはこのまま…… この世界から切り離されてしまうだろうからね。 |
Clavis |
ラーベ
切り離される、とは……。 魂と器が完全に分断されてしまうという意味か? |
Raabe |
クラヴィス
左様。 そうか、君はラケルの仕組みを理解しているのだね。 |
Clavis |
ラーベ
観測した結果の、大まかなことだけだがな。 |
Raabe |
ラーベ
どういう理屈で魂と器が切り離されているのかは、 把握できていない。 |
Raabe |
ラーベ
そうだ、それについて問いたい。 ラケル=アルカードの魂はどこにある? |
Raabe |
クラヴィス
境界に。 |
Clavis |
ラーベ
……やはり、そうか。 |
Raabe |
クラヴィス
ラケルの魂……そう呼ばれているものがなんであるかは、 今は説明を省くとして。それは元々、境界にあったものだ。 |
Clavis |
クラヴィス
その魂とこの器を繋げることで…… 彼女はラケル=アルカードとして存在している。 |
Clavis |
クラヴィス
だがこの小さな仮初の『世界』は、 ラケルの魂の居場所を正確に把握してはいない。 |
Clavis |
クラヴィス
そのせいで、一度分断された魂は再び器と繋がることが 難しくなってしまった。 |
Clavis |
クラヴィス
ラケルの魂は、空へ飛ばされた風船のように、 境界を漂うはずだった。 |
Clavis |
クラヴィス
それを辛うじてつなぎ止めているのが……。 |
Clavis |
ラーベ
ライフリンクで繋がっている黒鉄ナオトの存在か。 |
Raabe |
クラヴィス
彼がいてくれたことは、実に幸運だった。 でなければラケルは、この世界から失われていたかもしれない。 |
Clavis |
クラヴィス
いかに仮初の『世界』とはいえ、 『世界』である以上『現実』でもある。 |
Clavis |
クラヴィス
『此処』こそが『現実』となったとき、 そこにラケルが存在しないのでは……まずいのでね。 |
Clavis |
ラーベ
なぜ、まずい? |
Raabe |
クラヴィス
はは。少々無鉄砲で反抗的なところもあるが、 私とて娘への愛情はある。失いたくはないものだ。 |
Clavis |
クラヴィス
だからこそ、ラケルの存在を繋ぎ止める楔として、 レイチェルを送り込もうとしていたのだが……。 |
Clavis |
クラヴィス
それも、君なしでは叶わなかっただろう。 |
Clavis |
クラヴィス
レイ。 君のその特異な力……。 |
Clavis |
クラヴィス
それをなんと呼称するべきなのか迷うところだが、 その力のおかげで、レイチェルは形を得ることができた。 |
Clavis |
クラヴィス
本当に、感謝しているよ。 |
Clavis |
ラーベ
そうか。レイに観測させることで、 本来はあり得なかった存在を成立させたのか……。 |
Raabe |
ラーベ
だがまさか、レイの力すら把握しているとは。 いや、そもそもあなたは、どこまで知っているんだ? |
Raabe |
クラヴィス
さて。もちろん全てではない。 だがここが、切り取られた『世界』の欠片であり……。 |
Clavis |
クラヴィス
誰かの思惑によって生み出された『場』であることは、 感じ取っているよ。 |
Clavis |
シエル
……あの。質問があるのですが。それだけのことが わかっていて、あれほどの力を持っているのなら、 |
Ciel |
シエル
この『世界』を生み出している存在が誰なのか わかりませんか? |
Ciel |
クラヴィス
いや。残念ながら、私もこの世界の一部として取り込まれ、 形作られた存在だ。 |
Clavis |
クラヴィス
世界のルールそのものに干渉することはできない。 |
Clavis |
クラヴィス
もちろん、世界そのもの……ファントムフィールドと 君たちが呼ぶもの自体を、破壊する術も持たない。 |
Clavis |
クラヴィス
……先ほどの、狼男と人形師の件もそうだ。 |
Clavis |
クラヴィス
君がいなければ、私は『ラケルを奪われる』という 世界のシナリオから、逃れられなかったかもしれない。 |
Clavis |
クラヴィス
もっとも、世界がどんなシナリオを求めているのかは、 私でも窺い知ることはできないが。 |
Clavis |
ラーベ
その理屈でいくと、ラケルを奪われないという展開こそ、 世界のシナリオであった可能性もあるわけだな。 |
Raabe |
クラヴィス
無論。 だから、私をあまり味方であると妄信しないことだ。 |
Clavis |
ラーベ
肝に銘じる必要がありそうだな。 幻想生物とやり合うのは、正直リスクが高すぎる。 |
Raabe |
クラヴィス
君たちがどのような目的で行動するにせよ、 私はラケルへの危害を阻止しようとするだろう。 |
Clavis |
クラヴィス
どうか君たちがそれに反することがないよう、 祈るばかりだ。 |
Clavis |
1: ラケルは助ける |
1: |
クラヴィス
……ありがとう。 心から期待している。 |
Clavis |
シエル
クラヴィスさんに真正面からそう言われると、 なにやら精神的重圧のようなものを感じます。 |
Ciel |
クラヴィス
なに、私もできるかぎりの助力はするつもりだ。 ……だが私にできることは非常に少ない。 |
Clavis |
クラヴィス
世界を変えることができるのは、 いつだろうと人の力と可能性だ。 |
Clavis |
クラヴィス
もう一度言おう。 君たちの可能性に、期待している。 |
Clavis |
第10節 魔王⑤/ 10. Demon King - 5
Summary | |
---|---|
連れ去られたひなたを救出するため、行動を
開始するシエルたち。 |
To take back Hinata, Ciel and the others jump back into action. |
無事にひなたを救出し、キイロの元からナオ
トの部屋へ集まる一行に、クラヴィスを紹介 する。 |
They recover Hinata, and on the way back from Kiiro's location to Naoto's apartment, Ciel's group introduces Clavis. |
ラーベ
……どうだ、シエル? |
Raabe |
シエル
……索敵……感知範囲拡大……確認……確認。 照合。認識。 |
Ciel |
シエル
……発見しました。 近辺を走行する御剣機関の車両です。 |
Ciel |
ラーベ
よし、これだけ探して照合できたのがそれだけなら、 間違いないだろう。 |
Raabe |
シエル
向こうの状況はわかりませんが……。 よろしいですか、レイさん。 |
Ciel |
1: こっちはこっちで、できる手を打とう |
1: |
シエル
了解しました。移動、開始します。 |
Ciel |
シエル
対象を確認、補足。 対象の撃破、および人質の奪還を開始します。 |
Ciel |
黒服
くそっ……! なんなんだ、こいつらは!? |
Black Suit | |
黒服
は、はい、申し訳ありません。 人質を奪われました……え? |
Black Suit | |
黒服
り、了解、撤退します……。 |
Black Suit | |
シエル
人質の確保を完了。 |
Ciel | |
ラーベ
……うん。緋鏡キイロが言ってた通り、 眠らされているだけみたいだな。 |
Raabe | |
ラーベ
外傷はない。精神波長にも、問題はなさそうだ。 |
Raabe | |
シエル
ナオトさんに良い報告ができますね。 |
Ciel | |
ラーベ
早速、連絡してやれ。そうすればあっちも色々と面倒を 切り上げて、戻ってこられるだろう。 |
Raabe | |
ラーベ
客人も、紹介せねばならんしな。 |
Raabe | |
シエル
はい。わかりました。 |
Ciel | |
キイロ
あぐ、う……っ。 |
Kiiro | |
ナオト
おらぁぁっ! |
Naoto | |
キイロ
きゃぁっ! |
Kiiro | |
キイロ
っ、ふふ……すごい……すごいわ、ナオトくん。 このまま受け続けていたら、本当に壊れちゃうかも。 |
Kiiro | |
ナオト
別にてめぇを殺したいわけじゃない。 ひなたとサヤを返せ! そんで、ラケルから手を引け! |
Naoto | |
キイロ
んふ……ナオトくんに強く要求されるの、興奮する。 ぞくぞくしちゃう。 |
Kiiro | |
キイロ
もっともっと、激しく絡み合いたいわ……。 |
Kiiro | |
キイロ
んもう。なによ、盛り上がってるところなのに……。 |
Kiiro | |
キイロ
…………。 |
Kiiro | |
キイロ
はぁ。残念だわ……これ以上のお楽しみは、 また今度にしなくちゃいけないみたい。 |
Kiiro | |
ナオト
え……おい、待て! |
Naoto | |
キイロ
またね、ナオトくん。 お友達とばっかり仲良くしてちゃ、嫌よ。 |
Kiiro | |
ナオト
!? |
Naoto | |
Es
くっ! |
Es | |
ナオト
わ……悪い。助かった。 |
Naoto | |
Es
いいえ、問題ありません。 ですが……緋鏡キイロを、逃がしてしまいました。 |
Es | |
ナオト
それは、まあ、いいよ。あのまま戦ってても、 キイロに勝てたとは思えねぇし……。 |
Naoto | |
ナオト
それより、冥、大丈夫か? |
Naoto | |
冥
っ……大丈夫、と言いたいところだが、 悔しいが見ての通りだ。 |
Mei | |
Es
冥、肩を貸します。掴まってください。 |
Es | |
冥
ああ……。それで、どうする? |
Mei | |
冥
レイたちと合流するか? それともひなたを探しに行くか……? |
Mei | |
ナオト
っ! 着信? 誰だ? レイ! どうした……? |
Naoto | |
ナオト
ああ……そうか、よかった。 ひなたも? マジかよ。わかった、すぐ戻る! |
Naoto | |
Es
向こうでなにか進展がありましたか? |
Es | |
ナオト
ラケルは無事だって。 それから、ひなたも保護できたってよ。 |
Naoto | |
冥
本当か? |
Mei | |
ナオト
ああ。 どっかでタクシーでもなんでも捕まえて、すぐ戻ろうぜ。 |
Naoto | |
ナオト
ラケル!! ひなた!!! |
Naoto | |
冥
おい、黒鉄。 もう深夜だぞ、近所迷惑だろうが! |
Mei | |
ナオト
んなこと言ったって……。 ああ、レイ、無事か! シエルも。 |
Naoto | |
シエル
はい。問題ありません。 |
Ciel | |
Es
ラーベさんも、ご無事なようですね。 |
Es | |
ラーベ
ああ。 |
Raabe | |
ラーベ
ラケルとひなたなら、そこの部屋で並んで寝てる。 どちらも怪我はないから、安心しろ。 |
Raabe | |
ナオト
そうか……ありがとう。よかった……本当に。 |
Naoto | |
冥
うん? レイチェル=アルカードはどうした? 一緒じゃないのか? |
Mei | |
シエル
はい。レイチェルさんは、先に戻られました。 どこへかは……わからないのですが。 |
Ciel | |
クラヴィス
私の城へだよ。そこで休んでいることだろう。 |
Clavis | |
ナオト・冥・Es
っ!? |
Naoto, Mei, & Es | ? |
---|---|---|
クラヴィス
彼女がこちらで活動するには、なにかと余計に 消耗するのでね。休息が必要だ。 |
Clavis | |
冥
な……っ……なん、だ、この男は……? |
Mei | |
Es
……! |
Es | |
ナオト
誰だ、あんた……? いや、前に会ったか? |
Naoto | |
クラヴィス
こちらでは、はじめまして。黒鉄ナオト。 クラヴィス=アルカードだ。いつも娘が世話になっているね。 |
Clavis | |
ナオト
アルカード? 娘? 誰の? |
Naoto | |
ラーベ
落ち着け、ナオト。気持ちはわかるが、とにかく落ち着け。 |
Raabe | |
ナオト
ラケルの父親!? は? なにがどうなって……。 それに……。 |
Naoto | |
ナオト
……なんなんだよ、この人……。 いるだけなのに、身がすくむ……。 |
Naoto | |
シエル
レイチェルさんの言っていた『助っ人』が 彼のようです。 |
Ciel | |
シエル
ラケルさんを、ヴァルケンハインさんとレリウスさんから 守ってくれました。 |
Ciel | |
ナオト
そうなのか……。その、ありがとうございます。 |
Naoto | |
クラヴィス
……いや。礼を言うのはこちらのほうだ。 娘を守ってくれて、ありがとう。 |
Clavis | |
クラヴィス
さて……ラケルの状態についての話は、 もう一度私からしたほうがいいだろうか? |
Clavis | |
ラーベ
いや、こいつらには……。 |
Raabe | |
ナオト
ラケルの話? なんだよ、聞かせてくれ! |
Naoto | |
ラーベ
……聞いても、まともに理解できるとは 思えないんだがな。 |
Raabe | |
ナオト
それでも聞かせろよ。なにか知ってるんだろ。 |
Naoto | |
1: クラヴィスさん、お願いします |
1: | |
クラヴィス
わかった。いいだろう。 |
Clavis | |
クラヴィス
そうかね。では、頼むとしよう。 |
Clavis | |
1: クラヴィスさん、お願いします |
1: | |
クラヴィス
わかった。いいだろう。 |
Clavis | |
クラヴィス
そうかね。では、頼むとしよう。 |
Clavis | |
ナオト
待て。待て待て。 |
Naoto | |
ナオト
つまり……この世界は観測者ってやつが作った世界で、 ラケルの魂がある場所から切り離されてる……。 |
Naoto | |
ナオト
そのせいでラケルは、眠ったまま目を覚まさない。 |
Naoto | |
ナオト
んで、クラヴィスさんはその状態のラケルを 守ろうとしていて……。 |
Naoto | |
ナオト
レイチェルって子もそのために現れた……。 で、いいのか? |
Naoto | |
ナオト
おお、情報多すぎて頭がパンクしそうだ……。 |
Naoto | |
シエル
大丈夫です。おおむね、理解されていると思います。 |
Ciel | |
ナオト
ならいいんだがよ……。 |
Naoto | |
クラヴィス
君は、ラケルを目覚めさせようとしているそうだね。 |
Clavis | |
クラヴィス
……そのように行動してくれる者が、 彼女の側にいるとは。心強いことだ。 |
Clavis | |
ナオト
そりゃ、そうだろ。あいつは俺の……恩人だからな。 できることがあるなら、なんでもするさ。 |
Naoto | |
クラヴィス
……そうか。 |
Clavis | |
ナオト
今の話からすると、ラケルの魂は境界ってところにあるんだろ? |
Naoto | |
ナオト
そこに行って、ラケルの魂を持ってくる ってわけにはいかないのか? |
Naoto | |
ラーベ
無茶苦茶なことを言うな、お前は。 境界で個の魂ひとつ探し出すなど、正気の沙汰じゃないぞ。 |
Raabe | |
ラーベ
大体、そんな簡単に見つかるなら、 クラヴィス=アルカードがもう見つけてるはずだ。 |
Raabe | |
ナオト
う……それもそうか……。 |
Naoto | |
ラーベ
それに、そもそも境界になんか簡単に行けるものか。 |
Raabe | |
ナオト
でも……あるってことは、どっからかは行けるんだろ? |
Naoto | |
クラヴィス
そうやって、人は古来から幾度も境界へと至る門を求めてきた。 ……この街にも、そういう存在はいるのではないかな? |
Clavis | |
ラーベ
……確かに。 そういう使い方ができるのかは定かではないがな。 |
Raabe | |
ナオト
なんの話だ? |
Naoto | |
ラーベ
アラクネだよ。奴は高濃度の魔素でできた体を持っていた。 そういうものは……門となる可能性がある。 |
Raabe | |
ナオト
門? |
Naoto | |
ラーベ
ようは、境界との接点だ。アラクネは絶えず蟲を生み出して いただろう。あれも境界につながっているがゆえのことだ。 |
Raabe | |
ナオト
なっ……じゃあ、あいつの力があれば 境界に行けたかもしれないってことか!? |
Naoto | |
ラーベ
かもしれないだけだ。それにあいつの力と言うが、 あれにどうやって協力させるつもりだ。 |
Raabe | |
ナオト
それは……そうだけどよ。 |
Naoto | |
ラーベ
どのみちアラクネはもういない。取るとしても別の手段だ。 |
Raabe | |
ナオト
……そっか。無理ならしょうがねぇ。 ってことは、マジで観測者をどうにかするしか、 |
Naoto | |
ナオト
ラケルを目覚めさせる方法はないってことか。 |
Naoto | |
ナオト
サヤのこともどうにかしねぇとだし……。 |
Naoto | |
クラヴィス
……ふむ。 |
Clavis | |
クラヴィス
黒鉄ナオト。 |
Clavis | |
ナオト
っ! |
Naoto | |
クラヴィス
そう身構えることはない。とって食いやしない。 |
Clavis | |
ナオト
わ……わかってる、けどさ……。 あんた、なんかおっかないんだよ。 |
Naoto | |
クラヴィス
腕を出しなさい。右腕を。 |
Clavis | |
ナオト
へ? な……なにを……? |
Naoto | |
ナオト
は……? |
Naoto | |
冥
ひぃっ!? |
Mei | |
1: うぁぁぁぁ! |
1: | |
Es
ナオトの、腕が……取れて、います。 |
Es | |
冥
みればわかるっ!!! |
Mei | |
シエル
だ……大丈夫なのですか、ナオトさん? |
Ciel | |
ラーベ
へー面白い構造をしているな……ふむふむ。……ほうほう。 |
Raabe | |
ナオト
おめぇは感心してんじゃねぇよ! |
Naoto | |
クラヴィス
やはりそうか。 この腕は、ラケルの……血で作られたものだね。 |
Clavis | |
シエル
血? 腕がですか? |
Ciel | |
ナオト
……ああ、そうだよ。でも、なんで知ってんだ。 |
Naoto | |
クラヴィス
わかるとも……娘の血は元々、私のものだ……。 |
Clavis | |
ナオト
は? |
Naoto | |
クラヴィス
それより……君は、命の危機に瀕した際、ラケルに吸血鬼化 させられたそうだが。本来の腕はそのときに失ったのかね? |
Clavis | |
ナオト
……はっきりとは覚えてねぇけどな。 その時、ラケルが吸血鬼の力で作ったとかって……。 |
Naoto | |
ナオト
でも、普通に動くし、ドライブ使うと 右腕だけやたら強くなるし、不便はねぇよ。 |
Naoto | |
シエル
驚きです。よくわからないまま、 自分のものではない腕を使い続けているのですか? |
Ciel | |
ナオト
うるせ。今はそんなこと、いいだろ。 |
Naoto | |
ナオト
それより、腕返せよ! いつまで眺めてんだ、見せもんじゃねぇぞ。 |
Naoto | |
クラヴィス
ああ、これは失礼。 |
Clavis | |
クラヴィス
……どうかね? |
Clavis | |
ナオト
……ん。おお。 |
Naoto | |
シエル
ナオトさんの腕が元に戻りました。 ぴったりくっついています……不思議です。 |
Ciel | |
冥
信じられん……。 吸血鬼というのは、不可解な術を使うな……。 |
Mei | |
1: 痛くないの? |
1: | |
ナオト
ああ……全然平気だ。ほら。普通に動くだろ。 |
Naoto | |
ナオト
それに、なんだ? 妙に軽いっつーか……。 びっくりするくらい、違和感がねぇ。 |
Naoto | |
クラヴィス
それがその腕、本来の性能だ。 |
Clavis | |
Es
今までは、制限されていたのですか? |
Es | |
クラヴィス
ああ。ラケルはまだ半人前でね。 君の腕を補完する技術も、未熟だったようだ。 |
Clavis | |
クラヴィス
だが、その腕ならば、今後の戦いの助けになるだろう。 |
Clavis | |
ナオト
……ありがとうございます。 ラケルは必ず、俺が助けますから。 |
Naoto | |
クラヴィス
期待しておこう。 |
Clavis | |
クラヴィス
さて。そろそろ私は失礼するよ。長居をしすぎた。 あまり人の世に深く関わると、良くないのでね。 |
Clavis | |
ラーベ
確かにそうだろうな。事象に対する影響が大きすぎる。 あまりあなたの力は借りないほうがよさそうだ。 |
Raabe | |
クラヴィス
ぜひ、そうあってもらいたい。 では……娘を頼む。 |
Clavis | |
1: き、緊張したぁ…… |
1: | |
冥
情けない声を出すな……と言いたいところだが、 悔しいかな、同感だ。 |
Mei | |
冥
吸血鬼、クラヴィス=アルカード……。 正直言って、息をするのもやっとな威圧感だった。 |
Mei | |
Es
ラケルさんのことを……心配しているようでした。 |
Es | |
ナオト
父親だって言ってたからな。 ……そうだ、ラケルとひなた! |
Naoto | |
ナオト
ひなた……ったく、呑気な顔しやがって。 怪我がなくて本当によかったよ。数値もいつも通りだし。 |
Naoto | |
冥
ひとまず、簡易的な結界を張っておこう。 |
Mei | |
冥
レリウスやヴァルケンハインのような奴に 乗り込まれたら、どこまでもつかはわからんが……。 |
Mei | |
冥
無防備にしておくよりは、いくらかいいだろう。 |
Mei | |
ナオト
ああ、助かる。 ……お前ら、今日どうする? 帰るか? |
Naoto | |
冥
……いや、状況が状況だけに、 暫くは警戒しておいた方が良さそうだ。 |
Mei | |
Es
冥。でしたら、あなたの体力、体調を考慮すると、 少々休まれたほうが良いかと思います。 |
Es | |
冥
む……。 |
Mei | |
ナオト
無理すんなよ。いいから休んどけ。 |
Naoto | |
冥
……はぁ。そうだな。確かにエスの言う通りだ。 虚勢を張っても意味などない。 |
Mei | |
冥
というか黒鉄、お前も少し休め。 |
Mei | |
ナオト
そうだな……。 |
Naoto | |
シエル
では、私も警戒に当たります。 |
Ciel | |
ナオト
あぁ……疲れてるとこ悪いが、頼むわ。 |
Naoto | |
ナオト
……サヤ。無事でいろよ。 |
Naoto |
第11節 襲撃①/ 11. Assault - 1
Summary | |
---|---|
御剣機関にて、サヤに協力を迫るキイロとハ
ザマ。一方ナオトたちはラケルの保護場所を 天ノ矛坂家に移動しようとしていた。 |
In the Mitsurugi Agency, Hazama and Kiiro press Saya to cooperate. Naoto's group decides to move Raquel to the Amanohokosaka family's place for a bit. |
キイロ
ご機嫌はいかが? 輝弥家のお嬢様。 |
Kiiro |
サヤ
…………。 |
Saya |
キイロ
恐い顔。でも今のあなたにできるのは、 睨みつけることくらいだものね。ふふ、可哀想。 |
Kiiro |
ハザマ
体調に問題はなさそうですねぇ。 薬の影響も、当然ありません。 |
Hazama |
サヤ
……緋鏡が私をこのような場所に捕らえて、 なにをしようというのです? |
Saya |
キイロ
ふふ……宗家大黒『天ノ矛坂』、
それに従うは |
Kiiro
Haha...the Amanohokosaka are the clan's central pillar...and together the Hajou, Kagetatsu, Hikagami, and Terumi support them. |
キイロ
封魔の家なら助け合うのは当たり前じゃない? |
Kiiro
Evil-sealing families ought to help each other out, don't you think? |
サヤ
助け合う? 戯言を。 |
Saya |
キイロ
どう思おうがご勝手にどうぞ。貴女の意志なんてどうでもいいわ。 なにを考えようと、私たちの悲願に協力してもらうんだから。 |
Kiiro |
キイロ
幻想生物の……殲滅に。 |
Kiiro |
サヤ
幻想……生物? |
Saya |
キイロ
私たち御剣機関はね、人類の存続を理念としているの。 |
Kiiro |
キイロ
だけど世界には、人類を脅かす厄介な怪物が存在しているわ。 そういうものを『幻想生物』と呼んでいるの。 |
Kiiro |
サヤ
……たとえば、吸血鬼など……ですか? |
Saya |
キイロ
あらぁ〜、察しがいいじゃない。お利口さんね。 |
Kiiro |
キイロ
そうよ。でも貴女の知ってる、ラケル=アルカードの ような、小物じゃないわ……。 |
Kiiro |
キイロ
|
Kiiro |
キイロ
これを、貴女が倒すの。 |
Kiiro |
サヤ
クラヴィス=アルカード……? |
Saya |
サヤ
なぜ、私が? お前たちの手先になるつもりなどありませぬ。 |
Saya |
ハザマ
いえいえ、手先などと。 あなたにとっても、悪い話じゃないと思いますよ? |
Hazama |
サヤ
……貴様は? |
Saya |
ハザマ
始めましてになりますね、ですが貴女が私の名前を覚える 必要はありませんので……お気になさらないでください。 |
Hazama |
サヤ
…………。 |
Saya |
ハザマ
吸血鬼クラヴィス=アルカードはですねぇ、 御剣機関が観測した中でも、かなり特異な存在なんですよ。 |
Hazama |
ハザマ
なにせとにかく強い。純粋な『力』においては測定不可能です。 さらに不死身とも言える肉体に、それを補う再生能力。 |
Hazama |
ハザマ
おまけに魔法まで使えるらしいんですよ。 もう反則ですよねぇ……。まさに、化け物中の化け物です。 |
Hazama |
ハザマ
正直に言って、仕事でなければできる限り関わりたくない 存在なんですよ。 |
Hazama |
サヤ
話がくどいですね。 その化け物と私に、なんの関係があるのです? |
Saya |
ハザマ
関係? 関係がある? あります、ありますよぉ。おおありじゃないですか。 |
Hazama |
ハザマ
だって……貴女の『中』にも居るでしょう? できる限り関わりたくない存在。化け物中の化け物……。 |
Hazama |
ハザマ
ソウルイーターが。 |
Hazama |
サヤ
!? |
Saya |
ハザマ
命を喰らい、魂を喰らい、存在をも喰らう。 それがソウルイーターです。 |
Hazama |
ハザマ
その食欲は留まることを知りません。 |
Hazama |
ハザマ
どんな相手でも……そう、宿主である貴女ですら、 その命を、存在を食われ続けている。 |
Hazama |
ハザマ
そしてそれを止めることは誰にもできない。 ……そうですよね、輝弥サヤさん。 |
Hazama |
サヤ
…………。 |
Saya |
ハザマ
どこかの誰かさんじゃありませんけど、興味がありますねぇ。 |
Hazama |
ハザマ
少しずつ、少しずつその『魂』を削り取られていく気分は、 どんなものなのでしょう? |
Hazama |
ハザマ
良ければ教えていただけませんかね? |
Hazama |
キイロ
話が逸れてるわよ。先に進めて。 |
Kiiro |
ハザマ
おおっと、これは失礼しました。つい脱線してしまいまして。 ですが……貴女にも、話が見えてきたんじゃありません? |
Hazama |
ハザマ
どんなに強大な肉体を持っていても、どんなに強大な力を持ち、 強大な命を持ち……強大な『魂』を持っていたとしても、 |
Hazama |
ハザマ
『存在』ある限り、ソウルイーターにあらがうことは不可能です。 |
Hazama |
ハザマ
それはもちろん、 クラヴィス=アルカードとて例外ではありません。 |
Hazama |
サヤ
……だから、私にクラヴィス=アルカードなる者を 『喰え』というのですか? |
Saya
...And that's why you're telling me to "eat" Clavis Alucard? |
ハザマ
我々が知る限り、 あの吸血鬼を倒す方法はソウルイーター以外にありません。 |
Hazama
As far as we know, there's no other way to defeat him other than with Soul Eater. |
ハザマ
……ですが我々が知る限り、 あの吸血鬼以上に強い『魂』もまた、ありません。 |
Hazama
...And as far as we know, there's no other "soul" that's stronger than that vampire's. |
ハザマ
『魂』……このところの貴女がたが聞きなじみある言葉に 置き換えますと……生命力、ですかね。 |
Hazama |
ハザマ
比類なき生命力。他のどんな存在でも抱えていられないほどの 膨大な命を、あなたが『喰らう』ことができたなら……。 |
Hazama |
ハザマ
あなたは誰にも引けを取ることのない生命力を、 手に入れられるのですよ。 |
Hazama |
サヤ
それがなんだと言うのです。そんなもの、私には必要ありません。 |
Saya
It doesn't matter what you say. I don't need something like that. |
ハザマ
本当に? 本当にそうですか? 貴女……ずっと欲しかったのではありませんか? |
Hazama
Really? Are you really sure about that? Is it not the very thing you've wanted this whole time? |
ハザマ
休むことなく戦い続けられる力。 輝弥の家を支えて余りある力。 |
Hazama
The strength to fight continuously without needing to rest. The strength to support the Terumi family. |
ハザマ
どこへでも……兄と一緒に駆けていける、力。 |
Hazama
The strength to go anywhere...together with your older brother. |
サヤ
……っ! |
Saya |
ハザマ
あらら。図星ですか? 顔色が変わりましたよ? |
Hazama |
サヤ
……ふん。下らない。下品な憶測ですね。 そのような妄言に、惑わされるものですか。 |
Saya |
ハザマ
妄言などではありませんよ。 それに、貴女はもうすでに知っているはずです。 |
Hazama |
サヤ
なにを……。 |
Saya |
ハザマ
『喰った』でしょう? 膨大な生命力を。 アラクネから。 |
Hazama |
サヤ
あれは、貴様たちが……! |
Saya |
ハザマ
ええ、ええ。 我々が貴女の力を暴走させて、喰わせたのでしたね。 |
Hazama |
ハザマ
その節は、失礼いたしました。 それもこれも、貴女に力をつけてもらうため。 |
Hazama |
ハザマ
クラヴィス=アルカードと対峙したときに、 即座に負けてしまっては困りますからね。 |
Hazama |
ハザマ
ですが……いかがです? 体は好調ではありませんか? 力がみなぎっているのではありませんか? |
Hazama |
ハザマ
煮詰められ凝縮された膨大な生命力の味は、いかがですか? |
Hazama |
ハザマ
……もっと欲しくはありませんか? |
Hazama |
ハザマ
手に入りますよ。その力があれば。 いいえ、貴女だけが手に入れられるのです。 |
Hazama |
ハザマ
貴女にしか、手に入れられないのです。 |
Hazama |
サヤ
…………。 |
Saya |
ハザマ
それこそが、貴女のなすべきことだと、思いませんか? |
Hazama |
ハザマ
さあ、一緒に手に入れましょう!! ……貴女が望む世界を。 |
Hazama |
蒼を……探して……。 そして私を……。 |
Search for...the Azure… And...me… |
私を、見つけて……。 |
Find me…. |
ナオト……。 |
|
ナオト
ごちそうさま。昼飯、用意してくれてありがとうな。 |
Naoto |
ひなた
いえいえ、どういたしまして。 |
Hinata |
ひなた
……お昼過ぎまで寝過ごしちゃったんだもん。 |
Hinata |
ひなた
学校まで休んじゃったし、これくらいしてないと 落ち着かないの。 |
Hinata |
ひなた
冥ちゃんやエスちゃんも泊まりに来てたっていうのに、 全然気づかないで寝てたなんて。 |
Hinata |
Es
気にしないでください。急な用事があったので、 遅くにお邪魔することになってしまっただけですから。 |
Es |
ひなた
でも……。 ナオトちゃんも、起こしてくれればよかったのに……。 |
Hinata |
ナオト
いや、はは、よく寝てたからさ。疲れてたんだろ。 |
Naoto |
ひなた
そうかなぁ。あ、お皿、洗っちゃうね〜。 |
Hinata |
Es
手伝います、ひなた。 |
Es |
ひなた
いいよいいよ。お客さんなんだから、座ってて。 |
Hinata |
Es
いえ、手伝わせてください。 |
Es |
シエル
…………。 |
Ciel |
冥
……ひなたは昨夜のことをまったく覚えていないみたいだな。 |
Mei |
シエル
はい。クラヴィスさんが施してくださった 魔法の効果のようです。 |
Ciel |
冥
便利なものだ。今回は助かったが、敵には回したくないな。 |
Mei |
冥
……さて、今のうちに話しておくぞ、黒鉄。あまり姫鶴に 聞かせることでもないだろうからな。手短に言う。 |
Mei |
冥
ラケル=アルカードの保護拠点を、移したほうがいい。 |
Mei |
ナオト
……やっぱ、そう思うか。 |
Naoto |
冥
ああ。ヴァルケンハインとレリウスを送り込んでくる 程度には、御剣機関は彼女を手に入れたがっている。 |
Mei |
冥
となれば、再び襲撃を受けることは容易に想像がつく。 というか、これですっぱり諦める理由がない。 |
Mei |
シエル
もしまた襲撃を受けたとき、 クラヴィスさんが助けにきてくれるとは限りません。 |
Ciel |
シエル
それに……ここでは、ひなたさんを巻き込む可能性が 非常に高いです。 |
Ciel |
ナオト
そうだよな……。昨日だって、怪我こそなかったけど 間違いなくひなたを巻き込んだんだし……。 |
Naoto |
冥
なら、いいな。 |
Mei |
ナオト
ああ。でも、移すったって、どこに移動させるんだ? ……まさか。 |
Naoto |
冥
こうなった以上、他に選択肢はないだろうが。 |
Mei |
ナオト
天ノ矛坂か……。 |
Naoto |
1: 難しい顔してるけど…… |
1: |
ナオト
ああ、うん……。 |
Naoto |
ナオト
天ノ矛坂、つまり冥の家と、うち……輝弥の家は、 ちょっと特殊な繋がりがあるんだよ。 |
Naoto |
ナオト
……俺とサヤの家族は、事故で死んじまってさ。天ノ矛坂は そのあと、俺たちの面倒を見てくれた家でもあるんだけど。 |
Naoto |
ナオト
俺は勝手に家を飛び出したし、輝弥の跡取りとして大事に 育ててもらってたサヤは今、こういう状況だし。 |
Naoto |
ナオト
あんまり気安く戻れるところじゃねぇっつーか……。 |
Naoto |
冥
確かに体裁は悪いな。粋がって出ていっておいて、 女を抱えて転がり戻るわけだからな。 |
Mei |
冥
不甲斐ない事極まりない。 |
Mei |
ナオト
うぐ……。 |
Naoto |
冥
だが、そんなことを言っている場合でもあるまい。 |
Mei |
ナオト
まあな。でも、いいのか? |
Naoto |
ナオト
アラクネは倒した。ってことは、蟲の件は一応片がついてる。 天ノ矛坂としては、蟲の件が終わったんならもう……。 |
Naoto |
冥
馬鹿を言うな。……友人の妹が誘拐されているんだぞ。 こっちの用がすんだからといって、おとなしく手を引けるか。 |
Mei |
冥
それに輝弥は、一度は天ノ矛坂が預かった人間だ。 御剣機関といえど勝手は許さない。 |
Mei |
冥
家のことは気にするな。私が責任を持って手配する。 感謝しろよ、黒鉄。 |
Mei |
ナオト
一生恩に着るよ。 |
Naoto |
冥
ほう、忘れるなよ、その言葉。 |
Mei |
ナオト
はは……。 |
Naoto |
ナオト
あ、勝手に話、進めちまったけど。 レイたちは、それでいいか? |
Naoto |
ラーベ
構わないぞ。状況に合わせて、こちらはこちらで行動する。 |
Raabe |
ラーベ
ラケル=アルカードについては、 当事者であるお前の意見を優先させるといい。 |
Raabe |
ナオト
そうか。わかった。 |
Naoto |
ナオト
じゃあ、支度すっか。ひなたにも言っておかねぇとな。 |
Naoto |
シエル
冥さんが天ノ矛坂の家に連絡して、 車を呼んでくださるそうです。 |
Ciel |
ラーベ
そうか。ナオトのほうは、ひなたに事情を説明しているらしい。 |
Raabe |
ラーベ
……今のうちに言っておくぞ。 レイ、ラケルを決して御剣機関に奪われるな。 |
Raabe |
シエル
それは……そのようにするつもりではありますが、 なにか特別な理由があるのですか? |
Ciel |
ラーベ
ある。観測者の狙いはラケルだ。 |
Raabe |
ラーベ
御剣機関は強引な手を使ってでも、 ラケルの身柄を手に入れたがっている。 |
Raabe |
ラーベ
それはつまり、観測者がラケルの身柄を少なくとも ナオトの手元に置いておきたくないと思っているからだろう。 |
Raabe |
ラーベ
観測者はラケルをナオトから遠ざけたいんだ。 |
Raabe |
ラーベ
だからラケルの魂と肉体の接続を切った。 続いて、身柄を遠ざけようとしている。 |
Raabe |
ラーベ
だからこそ、ラケルを意地でも確保しろ。 観測者が欲しがっているのなら、それを阻止するんだ。 |
Raabe |
シエル
いわゆる『ちょっかい』ですね。観測者の願望通りに 事が運ばないようにする、と。 |
Ciel |
ラーベ
そうなったとき、観測者は無理にでも動く。 自分の願望を押し通そうとするはずだ。 |
Raabe |
ラーベ
それが『誰』なのか、お前が見なくてはならない。 |
Raabe |
1: 観測の力を使って? |
1: |
ラーベ
そう。それができるのは、お前だけだ。 |
Raabe |
ナオト
悪い、待たせた。ラケルは変わりないか? |
Naoto |
シエル
はい。眠ったままです。 |
Ciel |
ナオト
そっか……部屋から運び出しても反応なしかよ。 ったく。 |
Naoto |
Es
お待たせしました。手配が整いました。 |
Es |
冥
数分で車が来るはずだ。 二台来るから、分かれて乗るぞ。 |
Mei |
Es
ナオトは、ラケルさんを連れて、冥と一緒に乗ってください。 |
Es |
Es
レイさんとシエルさん、 ラーベさんは、私と一緒に。 |
Es |
シエル
わかりました。 |
Ciel |
シエル
……! 待ってください。 |
Ciel |
Es
はい。私も感知しました。 後方に数名の反応があります。 |
Es |
ラーベ
御剣機関だろうな。 こちらの同行を見張っているのも、当然か。 |
Raabe |
冥
うちまでついてこられるのは、気分が悪いな。 今のうちに片付けておこう。 |
Mei |
ナオト
ああ。あいつらのいいようにさせてやるかよ。 |
Naoto |
Es
ナオトは、そこにいてください。 ラケルさんを抱えていますから。 |
Es |
シエル
対処は私達が行います。距離……計測。 対象を確認、認識。行きます。 |
Ciel |
第11節 襲撃②/ 11. Assault - 2
Summary | |
---|---|
天ノ矛坂家。屋敷を案内したEsが「蟲の発
生」「御剣機関の存在」以外の『異変』が、 この世界に生じていると言う。 |
At the Amanohokosakas' place, Es leads them to a room and speaks of the "appearance of the bugs," "the Mitsurugi Agency," and other "unusual" occurrences in this world. |
ナオト
……これでよし、かな。 マジでまったく反応しねぇな。 |
Naoto |
ラーベ
魂との接続が切れているんだ、それはそうだろう。 |
Raabe |
冥
部屋と屋敷の周辺に結界を張ってきた。 |
Mei |
冥
御剣機関相手にどれくらい効果があるかはわからないが、 ないよりはマシだろう。 |
Mei |
冥
寝具も用意してやる。泊まりたければ泊まっていけ。 |
Mei |
ナオト
いいのか? |
Naoto |
冥
ラケル=アルカードをひとり残して、 世話を丸投げされても迷惑だからな。 |
Mei |
ナオト
ありがとう、助かるよ。 |
Naoto |
シエル
私達もお世話になってもいいでしょうか。 |
Ciel |
冥
ふん。この大人数で何か月も居座るんじゃないぞ。 そこまで面倒見きれんからな。 |
Mei |
シエル
ありがとうございます。 なんでもお手伝いしますので。 |
Ciel |
冥
ほう。それはそれは。期待しておいてやる。 |
Mei |
冥
とりあえず、軽く家の中を案内しよう。 いちいち教えるのも煩わしいから、一回で覚えろよ。 |
Mei |
冥
エス。 |
Mei |
Es
はい。ご案内します。どうぞ。 |
Es |
Es
こちらが浴室。そしてこの先が裏口になります。 ……これで、邸内を一周しました。 |
Es |
1: 案内してくれてありがとう |
1: |
Es
はい。わからないことがありましたら、 いつでも聞いてください。 |
Es |
シエル
……あの。 |
Ciel |
ラーベ
シエル? |
Raabe |
シエル
エスさんに聞きたいことがあるのですが。 |
Ciel |
Es
はい。なんでしょう? |
Es |
シエル
エスさんは……素体なのですか? |
Ciel |
Es
…………。 |
Es |
シエル
緋鏡キイロさんに言っていました。 自分と同じ、エンブリオストレージだと。 |
Ciel |
シエル
エンブリオストレージとは、素体のことですよね。 では、エスさんは……。 |
Ciel |
Es
はい。素体です。 |
Es |
シエル
! |
Ciel |
Es
私は人の手によって作られた存在です。 キイロさんと同じく御剣機関によって作成されました。 |
Es |
Es
……シエルさんも、そうですね。 |
Es |
シエル
……はい。 |
Ciel |
Es
『驚き』の反応を感知しました。 私が素体であることが、奇妙ですか? |
Es |
シエル
いえ、そうではありません。ただ、このような形で自分以外の 素体と時間をすごしたことがなかったので……。 |
Ciel |
シエル
どのような反応が相応しいのか、わからないです。 |
Ciel |
Es
戸惑われているのですか。 私も、少し奇妙な感覚を覚えています。 |
Es |
シエル
まるでここにいるのが当たり前であるかのように、 エスさんは冥さんたちの日常に溶け込んでいました。 |
Ciel |
シエル
でも、人ではなく素体で……そのうえ、『異物』だと聞きました。 そのことに、とても……驚いて。お話を聞いてみたいと……。 |
Ciel |
Es
異物? |
Es |
シエル
はい。……本来はこの世界に存在しない、この世界が構築される 際に別の世界から紛れ込んでしまった存在のことです。 |
Ciel |
シエル
冥さんが言っていました。自分はこの世界の人間ではない 気がする、と。エスさんもおそらくそうだろうと。 |
Ciel |
シエル
ですから……。 |
Ciel |
Es
それは違います。 |
Es |
シエル
え? |
Ciel |
Es
私はシエルさんたちの言う『異物』ではありません。 それに、冥も。 |
Es |
ラーベ
待て、それはどういうことだ? |
Raabe |
ラーベ
冥が感じていた違和感は勘違いだということか? それとも、『異物』が誰なのかお前にはわかるということか? |
Raabe |
Es
どちらも少しずつ違います。ただ私は、知っているだけです。 天ノ矛坂冥はこの街の住人だということを。 |
Es |
シエル
そうなのですか? ではどうして冥さんは、 ここは自分のいるべき世界ではないと感じたのでしょうか。 |
Ciel |
シエル
蟲のような異変が起こっているからといっても、世界そのもの が違っているように感じるとは、考えにくいのですが。 |
Ciel |
ラーベ
シエルの疑問も、もっともだ。 |
Raabe |
ラーベ
普通、おかしなことが起こっているからといって、 世界に対して違和感を覚えることは稀だろう。 |
Raabe |
ラーベ
ましてや冥は、陰陽師だ。普段から異質なものと 対峙することも多いだろう。それなのに……。 |
Raabe |
ラーベ
……心当たりは? |
Raabe |
Es
あります。 |
Es |
Es
皆さんがおっしゃるように、この新川浜には 『異変』が生じています。 |
Es |
Es
ですがそれは、蟲の発生でも、御剣機関の存在でもありません。 |
Es |
Es
時間が圧縮されていることです。 |
Es |
ラーベ
時間……そうか。なるほどな。そういうことだったのか。 |
Raabe |
1: よくわからない。どういうこと? |
1: |
Es
『過去』と『未来』が『現在』という地点に 集約されているのです。 |
Es |
Es
もう少し噛み砕いて説明しますと……例えば、10年間、 20年間の新川浜が、ここに凝縮されている状態です。 |
Es |
Es
ですから、10年前に新川浜にいた人も、10年後に新川浜に いる人も、ここには存在しうるのです。 |
Es |
シエル
でも……それでは、同じ人が何人も存在することに なりませんか? 10年前のその人と、今のその人と。 |
Ciel |
ラーベ
それが、基本的にはならない。なぜなら世界にそいつは ひとりしか存在しない『はず』だからな。 |
Raabe |
ラーベ
まあ、ファントムフィールドのようなイレギュラーだらけの 世界で普通だとか本来だとか語っても不毛ではあるが…… |
Raabe |
ラーベ
通常は、圧縮された時間軸の中の 『どこか』の存在が抽出される。 |
Raabe |
ラーベ
ある個人の情報が、ある時間の一点に集まるような イメージだと……理解できるか? |
Raabe |
1: わかるような…… |
1: |
ラーベ
まあいい。重要なのは、その何十年間に渡る時間軸の中の、 どこかで新川浜に存在したのなら、 |
Raabe |
ラーベ
今この新川浜に存在していても『異物』ではないということだ。 |
Raabe |
ラーベ
天ノ矛坂冥が感じていた世界への違和感は、 世界そのものへの違和感ではなく、 |
Raabe |
ラーベ
自分が存在する時間軸への違和感だったということになる。 |
Raabe |
ラーベ
……いや、断定は危険だな。そういう可能性がある。 |
Raabe |
Es
はい。そして私は、冥が新川浜に存在した人物であることを 知っています。 |
Es |
Es
……それを信用していただくかどうかは、別の問題ですが。 |
Es |
ラーベ
そう、信用だ。我々は冥の発言を信用しすぎていた。 |
Raabe |
ラーベ
私としたことが、世界への違和感を即座に『異物』に繋げるとは 軽率だった。 |
Raabe |
シエル
待ってください、ラーベさん。 |
Ciel |
シエル
冥さんが『異物』でなかったとなると、 なにか問題があるのですか? |
Ciel |
シエル
そのような口ぶりに感じますが……。 |
Ciel |
ラーベ
あるとも。というか、私たちは一度しっかり情報を 整理する必要があるぞ。 |
Raabe |
ラーベ
エス。一旦話を戻すが、お前は先ほど、 自分は『異物』ではないと言ったな? |
Raabe |
ラーベ
それはお前も、新川浜に存在したはずの存在だからか? |
Raabe |
Es
私が新川浜という土地に踏み込む可能性はあります。 |
Es |
ラーベ
曖昧な言い方だな。断定はできないのか? |
Raabe |
Es
はい。ですが……わかります。 |
Es |
Es
私は、素体です。そして……具体的で鮮明な記憶はありませんが、 おそらく……『蒼』に触れたことがあります。 |
Es |
Es
だからわかるのです。非理論的なことだとはわかっています。 ですが……感じることができます。 |
Es |
Es
私や冥や……ナオトやサヤさんが、この場にちゃんと 繋がっている存在だということが。 |
Es |
ラーベ
確かに、説得力には大いに欠ける証言だな……。 って蒼に触れただと!? |
Raabe |
1: 蒼? |
1: |
Es
先程も言ったとおり『曖昧』な感じでしかありませんが……。 |
Es |
ラーベ
ぬぅ……とても興味はあるが、今は現状の対策が先だ……。 |
Raabe |
ラーベ
だから改めて確認するぞ、エス。 |
Raabe |
ラーベ
お前から見て、私たちがこれまで出会ってきた人物の中で、 明確に『異物』だと断定できる者は誰かいるか? |
Raabe |
Es
いません。強いてあげるなら、アラクネがそうです。 でもあれは……とても奇妙な存在ですから……判断が難しいです。 |
Es |
ラーベ
そうか、わかった。ありがとう、非常に参考になった。 |
Raabe |
Es
はい。……お役にたてたなら、幸いです。 |
Es |
ラーベ
私たちは少し、今後について相談しなければならない。 少しこの場を借りるぞ。 |
Raabe |
Es
わかりました。よろしければ、こちらのお部屋をお使いください。 客間になっておりますので。 |
Es |
シエル
ありがとうございます。お借りします。 |
Ciel |
Es
では、私は先に失礼します。皆さんが所用で少しの間 席を外すことを、冥に伝えておきます。 |
Es |
ラーベ
さて。さっきも言ったが、一旦情報を整理するぞ。 事態がちょっとばかり変わってきた。 |
Raabe |
シエル
繰り返しの質問になりますが、エスさんや冥さんが 『異物』でないと、なにが問題なのでしょうか? |
Ciel |
ラーベ
私たちの目的は観測者探しだ。観測者が見つからなければ、 私たちがここにいる意味はない。そうだな? |
Raabe |
シエル
はい。 |
Ciel |
ラーベ
で? 観測者の条件は? |
Raabe |
シエル
ドライブ能力者であることと……ファントムフィールド化した 『時間軸』の世界の住人であることです。 |
Ciel |
シエル
あ……『異物』であれば、観測者の候補から外れますが……。 |
Ciel |
1: 『異物』じゃないってことは…… |
1: |
シエル
はい。『異物』だとお聞きした時点で、私などは冥さんや エスさんを観測者の候補から外していましたが……。 |
Ciel |
シエル
エスさんのお話が事実ならば、その前提が なくなることになります。 |
Ciel |
ラーベ
そうか『異物』か、と馬鹿正直に納得していたが、 これで誰も彼もが観測者候補に逆戻りというわけだ。 |
Raabe |
ラーベ
……むしろ、これを機にもっと疑ってかかるべきだな。 |
Raabe |
ラーベ
自分は『異物』だと申告してきた証言も、意識的か無意識的かは 別にして、偽りである可能性を十分考慮しなければならない。 |
Raabe |
ラーベ
もちろん、エスの証言自体も一応疑っておく必要があるが。 |
Raabe |
シエル
となると……困りましたね。観測者を絞り込む手がかりを 失ったことになります。 |
Ciel |
ラーベ
いや、事は前向きに考えるとしよう。 |
Raabe |
ラーベ
クラヴィス=アルカードが使っていた言葉だが、 観測者のシナリオという表現があったな。 |
Raabe |
ラーベ
エスの今の証言も、観測者の描いたシナリオのうちだったと すると、候補者はむしろ絞り込まれたと言える。 |
Raabe |
シエル
そうなのですか? |
Ciel |
ラーベ
アラクネが倒れ、蟲が消え、 新川浜の街を襲っていた異変は表向き解消された。 |
Raabe |
ラーベ
だが代わりに御剣機関が台頭してきた。 輝弥サヤが捕獲され、ラケル=アルカードが狙われる。 |
Raabe |
ラーベ
ファントムフィールドを形成する観測者の意思を、 ひとつの渦に喩えるとすると…… |
Raabe |
ラーベ
その範囲は確実に狭まり、 かつ深くなってきているだろう? |
Raabe |
シエル
……物事が、新川浜の街全体から、我々が接触している 人物の周囲に限定されてきている、という意味ですか? |
Ciel |
ラーベ
その通り。よくできたな。 |
Raabe |
シエル
ありがとうございます。 |
Ciel |
ラーベ
では聞こう。これにより、どんなことが推測される? |
Raabe |
シエル
…………。 ……わかりません。 |
Ciel |
ラーベ
わからんのかい。 レイ、お前はどうだ? |
Raabe |
ラーベ
今までのファントムフィールドでのことを思い返して 考えてみろ。単純な話だ。 |
Raabe |
1: 観測者とはすでに出会っている……? この事態の関係者が観測者、とか |
1: |
ラーベ
そう、賢いぞ。 事態が……いや、言葉を変えよう。 |
Raabe |
ラーベ
事象が収束している現状において、 観測者が部外者なはずがない。 |
Raabe |
ラーベ
すでに観測者のリストアップは完了しているということだ。 そしてそのリストを、先ほどのエスの証言が補完した。 |
Raabe |
シエル
つまり……すでに出会っている人で、かつドライブ能力者、 さらに『異物』でないとされている人ですから……。 |
Ciel |
シエル
ナオトさん、サヤさん、冥さん、エスさん。 |
Ciel |
シエル
御剣機関の緋鏡キイロさん、ヴァルケンハインさん、 レリウスさん、ハザマさん。 |
Ciel |
ラーベ
クラヴィス=アルカード、レイチェル=アルカード。 そしてラケル=アルカード……。 |
Raabe |
ラーベ
だが、『魂』がこの世界と切断されているラケル=アルカードは 除外して良いだろう。 |
Raabe |
シエル
ファントムフィールドは観測者の願望、つまり『魂』を 映し出した世界だからですね。 |
Ciel |
ラーベ
そうだ、それに彼女は観測者にとって、『邪魔者』の様だしな。 |
Raabe |
ラーベ
まぁ一応あたりはつけてある。 でも今、それを私が口にするのは……やめておこう。 |
Raabe |
シエル
なぜですか? わかっているのなら、教えてください。 |
Ciel |
ラーベ
レイに不要な先入観を与えると、それをもとに この世界に余計な干渉をする可能性が出てくるだろ。 |
Raabe |
ラーベ
もし私が間違った推測をしていて、にも関わらず間違った 推測の元でレイが誤った観測者を認識したら、 |
Raabe |
ラーベ
もうとんでもなくややこしくなるじゃないか。 |
Raabe |
シエル
誤った観測者の認識……。 |
Ciel |
シエル
レイさんの意識によって、本来とは違う誰かを 観測者にしてしまうことがあり得るというのですか? |
Ciel |
ラーベ
その可能性が否定できない以上、 あえて行う必要はないということだ。 |
Raabe |
ラーベ
わざわざ自分の行く先に地雷を埋めるやつがあるか。 |
Raabe |
ラーベ
……誰がなんと言おうと、最終的には誰が観測者なのかは、 レイに見定めてもらわなければならない。 |
Raabe |
ラーベ
レイ。 |
Raabe |
ラーベ
お前はお前の眼で観て、確かめたものを信じろ。 いいな。 |
Raabe |
1: はい、わかりました |
1: |
ラーベ
ま、そう堅苦しくなるな。観測者をおびき出す手はある。 |
Raabe |
シエル
その、手についてお聞きしてもいいですか? |
Ciel |
ラーベ
さっきも話しただろう。ラケル=アルカードだよ。 |
Raabe |
ラーベ
観測者はどうやら彼女の存在がお気に召さないらしい。 昏睡させたうえで、身柄を狙うほどにな。 |
Raabe |
ラーベ
だったら観測者が一番されたくないことはなにか。 |
Raabe |
シエル
……なんでしょう? |
Ciel |
ラーベ
ラケル=アルカードの覚醒だ。 |
Raabe |
ラーベ
だからなレイ、 そのチャンスがあったら、積極的に狙え。 |
Raabe |
ラーベ
お前のドライブなら、それがラケル=アルカードの魂だと 認識することが可能だろう。 |
Raabe |
ラーベ
彼女が目覚めれば、誰かの顔色が大いに変わるはずだ。 |
Raabe |
1: 了解です! |
1: |
ラーベ
よし。いつまでもここで話していると、ナオトたちが 気にするだろうからな。そろそろ戻ろう。 |
Raabe |
シエル
はい。 |
Ciel |
第11節 襲撃③/ 11. Assault - 3
Summary | |
---|---|
深夜。冥の結界を破り、サヤが天ノ矛坂家に
現れる。 |
Midnight. Saya breaks through Mei's barrier and enters the Amanohokosakas' house. |
サヤの攻撃を耐えるナオトたち。そこへ倒し
たはずのアラクネが現れ、ラケルをひと飲み にする。 |
Naoto and the others hold off Saya's attacks. Arakune, who should have been defeated, appears and swallows Raquel whole. |
――夜は冴え冴えと、月は煌々と。 |
|
誘う声に導かれて、弧は檻を破るだろう。 笑う蛇に促されて、銀は肉を斬るだろう。 |
|
いつかの夜もまた、そうであったように。 |
|
冥
黒鉄! レイ! 起きているか! |
Mei |
ナオト
当たり前だろ。なにがあったんだ。 今……明らかに誰かの悲鳴が聞こえたぞ。 |
Naoto |
シエル
この邸内での悲鳴でした。男性のものが、2名分。 |
Ciel |
ナオト
御剣機関か? ったく、深夜に堂々と乗り込んでくるとはな。 |
Naoto |
Es
……反応を感知しました。ですが、これは……。 |
Es |
シエル
……皆さん、警戒してください。 |
Ciel |
サヤ
……ああ……こちらでしたか。皆さま……お揃いで。 |
Saya |
1: サヤさん…… |
1: |
サヤ
……兄様。 |
Saya |
ナオト
サヤ……お前、どうした……? |
Naoto |
冥
様子がおかしい。気を付けろ、ナオト。 |
Mei |
ナオト
見りゃわかるよ。 |
Naoto |
サヤ
兄様……兄様……。 |
Saya |
サヤ
……ラケル=アルカードの命、いただきに参りました。 |
Saya |
サヤ
ふっ……。 |
Saya |
ナオト
マジかよ……普通じゃねぇぞ……。 |
Naoto |
冥
……なにをされたのか知らんが、 少なくとも今までの輝弥ではなさそうだ。 |
Mei |
ナオト
御剣機関か……ふざけやがって! |
Naoto |
サヤ
……シッ! |
Saya |
Es
強い……! |
Es |
シエル
確認……確認。 対象の戦闘レベル、上昇を続けています。 |
Ciel |
シエル
これまでの計測をすでにはるかに上回っています。 |
Ciel |
ラーベ
そういえば、アラクネが貯め込んだ生命力を 根こそぎ取り込んだんだったな。 |
Raabe
Come to think of it, she absorbed all of Arakune's life energy earlier. |
ナオト
つまり……絶好調ってことかよ……? |
Naoto
So...she's in top form…? |
ラーベ
そういうことだな。 |
Raabe
Yup. |
ナオト
くそっ……。おいこら、サヤ! 目ぇ覚ませ! |
Naoto
Shit… Come on, Saya! Wake up already! |
ラーベ
呼びかけても無駄だ。 輝弥サヤの精神波長に、少しの乱れも見られない。 |
Raabe
There's no point in calling out to her. Terumi Saya's brain waves aren't distorted in any way. |
ナオト
それって……嫌な予感しかしねぇぞ!! |
Naoto
So...that doesn't sound good! |
ラーベ
うむ、これが輝弥サヤの本性だ。 |
Raabe
Indeed. This is Terumi Saya's true character. |
サヤ
ふふ……さあ、さあ、さあ! もっと殺し合いましょう、兄様! |
Saya
Haha...Now, now, now! Let's kill each other, brother! |
Es
ナオト、手を抜いて戦って、勝てる状態ではありません。 |
Es
Naoto, if you hold back, you have no chance of winning. |
ナオト
全力だっつーの!! |
Naoto
This is me at full strength!! |
レリウス
……行け。 |
Relius |
冥
なに……!? |
Mei |
アラクネ
見つけた……みつけたみつけた、 アーーーーーーーーーーーン……。 |
Arakune |
ラーベ
まさか、アラクネだと!? |
Raabe |
ナオト
しまった、ラケル!! |
Naoto |
第12節 矛先①/ 12. At Spearpoint - 1
Summary | |
---|---|
ラケルがアラクネに飲まれたことでライフリ
ンクが切れ、腕と足を失うナオト。現れたレ イチェルの助力を受け、アラクネに組み付く。 |
Now that Arakune has swallowed Raquel, Naoto's Life Link with her is cut off and he loses his arm and his leg. Rachel appears, and with her help, they wrestle with Arakune |
アラクネ
……ごくん。 |
Arakune |
ナオト
ラケル!! |
Naoto |
シエル
ラケルさんが……アラクネさんに…… 食べられてしまいました……。 |
Ciel |
アラクネ
ンンンン…… 手に入れた……手に入れた、手に入れタ! |
Arakune
Mmmmm….I have obtained it....I have obtained it, I have obtained it! |
アラクネ
蒼だ! 無限の英知甘美なる深淵、 揺蕩う漆黒の浜辺へと至る門の鍵……! |
Arakune
The Azure! The key to the gate of that swaying, pitch-black shore, the sweet abyss, infinite wisdom…! |
ナオト
ふ……ふざけんな! ラケルを返しやがれ!! |
Naoto |
Es
ナオト! いけません! |
Es |
ナオト
――っ! |
Naoto |
冥
黒鉄……! |
Mei |
ナオト
う、ぐ……あ、あぁぁぁぁ……っ! 足、が……! |
Naoto |
アラクネ
ケケケケケケ! 溢れる……煮える、沸き立つ、 我が臓腑から込み上げる無限の蒼! 無限の力! |
Arakune |
ラーベ
……サヤがアラクネから生命力を吸収したのと、 同じだな。 |
Raabe |
ラーベ
ラケル=アルカードの力を飲み込んで、奴の力が 尋常じゃない速度で増幅……いや、膨張している。 |
Raabe
It eats Raquel's power, and its own power is rapidly amplified...no, it expands. |
シエル
でも、どうしてアラクネさんが……。サヤさんによって、 生命力を全て奪われ、消滅したはずです。 |
Ciel
But, why is Arakune even…. Earlier, Saya stole all of its life force and it should have perished. |
レリウス
……一度『観』た物だ。不思議はないだろ。 |
Relius
...It was Seen once. Nothing strange about it. |
冥
レリウス……まさか貴様がアラクネを……? |
Mei
Relius...Don't tell me Arakune was your doing…? |
レリウス
再生させただけだよ、断片を採取できたのでな。 |
Relius
It's only been revived from some fragments I gathered. |
レリウス
……奴の体を構成しているものは、ほとんどが魔素だ。 構造さえわかれば、組み直すだけでいい。 |
Relius
...Its body is composed almost entirely of seithr. As long as you know how to make it, you only need to recreate its form. |
レリウス
といっても……ふむ……。まだ改善の余地はありそうだな……。 |
Relius
Although...hm...there's still room for improvement…. |
ヴァルケンハイン
……チッ。あんな化け物を使わずとも、さっさと 奴等を『殺しきって』しまえばいいだろうが……。 |
'Valkenhayn |
レリウス
それではただの殺戮だ。 |
Relius |
ヴァルケンハイン
貴様のやっていることは、生命への冒涜だろ! |
'Valkenhayn |
レリウス
……個人的な道徳観を押しつけるものではないな。 |
Relius |
アラクネ
キキ、き、ききききいひひひひひひひ。 |
Arakune |
ナオト
……ぐぅっ……つ、造り直しただと……? ったく……どっちが化け物だよ……! |
Naoto |
アラクネ
オオオ喰らう、全て喰らうぞ……オマエも、 オマエもオマエもオマエもぜーんぶいただきまぁす。 |
Arakune |
ナオト
う、るせぇ……足の一本が、なんだ…… んのくらい、すぐに再生して……、っ!? |
Naoto
Shut...up...just one leg will regenerate in no time…?! |
ナオト
なんで、だよ! なんで治らない!? |
Naoto
Wait, what? Why isn't it healing!? |
レリウス
…… |
Relius
...Inside |
レリウス
貴様とラケル=アルカードの間に結ばれていた繋がりは…… 断たれたのだよ。 |
Relius
The connection that binds you and Raquel Alucard together...has been severed. |
ラーベ
ライフリンクが切れたのか! ……待てよ。なら、今の黒鉄ナオトは……!? |
Raabe
So the Life Link has been cut! ...But wait. Then, what about Naoto…!? |
ナオト
なっ……!? う……腕が……!? |
Naoto
Wh--!? ...M-my arm…!? |
ラーベ
クソッ……ラケル=アルカードとの繋がりが無ければ、 その形を保つことが出来なくなるのは当然か…… |
Raabe
Shit...Of course it wouldn't be able to keep its form if his connection to Raquel is gone. |
シエル
ナオトさんの右腕は、ラケルさんの力で作られたもの……。 ライフリンクが切れたことで、その腕も機能を失ったのですね。 |
Ciel |
レリウス
……ふむ。模造品とはいえ、 機能は問題なく稼働しているようだな。 |
Relius |
ナオト
く……そ……! テメェら、他人事みてぇに 涼しい顔して解説してんじゃねぇよ!!! |
Naoto |
レリウス
……親切心から、忠告してやるが…… あまり暴れないほうが身のためだぞ。 |
Relius |
ヴァルケンハイン
吸血鬼の力を失った貴様なぞ、 ただの死にぞこないだ……つまらん。 |
'Valkenhayn |
レリウス
ふむ……。つまりただの……『餌』だ。 |
Relius |
ナオト
んだと……テメェら……! |
Naoto |
冥
やめろ黒鉄、大人しくしていろ! すぐにこいつらを片付けて、手当てを……! |
Mei |
Es
駄目、逃げてください、ナオト! |
Es |
ナオト
あっ……や、やべぇ……。 |
Naoto |
アラクネ
あーーーーーーーーーーーーーん……。 |
Arakune |
アラクネ
ギャァァ!? |
Arakune |
ナオト
!? 風……? |
Naoto |
レイチェル
無様ね。こんな出来損ないに弄ばれるなんて。 |
Rachel |
ナオト
た……助かったぜ、ありがとよ。 レイ、悪いがそっちは任せる! |
Naoto |
1: どうするつもり? |
1: |
ナオト
う、ぐ、おぉぉ……ぅ、足、なら…… もう一本あんだよ! |
Naoto |
ラーベ
おい、まさかその状態で戦うつもりか? 無茶だ。 |
Raabe |
ナオト
このコールタール野郎がぁ! ラケルを返してもらうぞ!!! |
Naoto |
アラクネ
グゲゲゲ!? |
Arakune |
アラクネ
飛んできた、トンデきた、ケケ、 羽虫が安息の消化器官を求めて猛る焔へ身を投げる……。 |
Arakune |
レリウス
ほう。……自ら喰われるか……面白い。 |
Relius |
ナオト
食えるもんなら食ってみやがれ! その前に、てめぇの腹ん中からラケルを引きずり出す! |
Naoto |
ナオト
おらぁぁぁっ! |
Naoto |
アラクネ
グゲ……ッ!? あががががが放せ離せハナセ!! |
Arakune |
アラクネ
風が……風が阻む、 我の爪、牙、アアア届かないぃぃ! |
Arakune |
レイチェル
馬鹿ね、捨て身の救出だなんて。 でも……そういう馬鹿は、嫌いではなくてよ。 |
Rachel |
レイチェル
だから少しだけ、手伝ってあげるわ。 |
Rachel |
サヤ
レイチェル……アルカード……。 お前も……吸血鬼……邪魔者……。 |
Saya |
サヤ
でも力を……手に入れなければ……余りある、力を……。 |
Saya |
レイチェル
っ! |
Rachel |
シエル
させません。今、レイチェルさんを攻撃されれば、 ナオトさんがアラクネさんに……食べられてしまいます。 |
Ciel |
冥
全員、レイチェル=アルカードへの攻撃を防ぎつつ、 黒鉄を援護しろ! |
Mei |
Es
了解しました、冥。 |
Es |
第12節 矛先②/ 12. At Spearpoint - 2
Summary | |
---|---|
アラクネに組み付くナオトたち。ラーベの一
言に従いアラクネの中へ入ると、そこは…。 |
Naoto and Rei grapple with Arakune. Following Raabe's instructions, they enter Arakune, where… |
ラケルを観測しようとするが上手く観測でき
ない。「ラケル」ではなく「ラケルを知る人」 を観ろというクラヴィスの助言に従う。 |
Rei tries to Observe Raquel but can't seem to do it well. Following Clavis' advice, Rei then Observes "someone who knows Raquel" rather than "Raquel" herself. |
サヤ
あう……! |
Saya | |
レリウス
ふむ……これくらいはやるか。 |
Relius | |
冥
黒鉄、無事か!? |
Mei | |
ナオト
もう……ちょっと……届かねぇ……っ! |
Naoto | |
1: ナオト、加勢するよ! |
1: | |
ナオト
レイ……! |
Naoto | |
Es
ナオト、レイさん。 それ以上は危険です。戻ってください! |
Es | |
ラーベ
……いや。これはチャンスか……。 |
Raabe | |
ラーベ
ナオト、レイ! そのままアラクネの中に飛び込め! |
Raabe
Naoto, Rei! Jump into Arakune, just like that! | |
冥
飛び込む!? 正気か!? |
Mei
Jump in!? Are you crazy!? | |
ラーベ
無論、正気だとも。 お前たちも解るよな、ナオト、レイ。 |
Raabe
Of course, I'm completely sane. You know what I mean, right, Naoto, Rei? | |
1: はい! |
1: Yes! | |
ナオト
そうか……アラクネ……! わかった、行ってくる! |
Naoto
I get it...Arakune...! Alright, let's go! | |
アラクネ
オオオオオオォオオォ! イヤダイヤダイヤダ!! 蒼だアオだ蒼はワレのものだ! |
Arakune
Oooooooooooooooo! No no no no! The Azure the azure the Azure is mine! | |
アラクネ
憤怒憤怒憤怒憤怒憎悪憎悪憎悪憎悪!! |
Arakune
Ragerageragerageragehatehatehatehatehate | |
アラクネ
満ちたりぬ空虚なる胎底に満たす安寧を奪う者に 罪深き痛みをぉぉ! |
Arakune
Suffering to the sinner who would rob the tranquility that will fill the gaping void of the womb! | |
ラーベ
レイチェル、今だ、アラクネの口を閉じさせろ! |
Raabe | |
レイチェル
無茶なことをさせるのね。……いいわ。 放すわよ! |
Rachel | |
シエル
レイさん! |
Ciel | |
…………。 ……………………。 |
... | |
――探して。 |
...Search for…. | |
そして私を。 |
...and...me… | |
見つけて。 |
...Find me…. | |
…………。 ……………………。 |
.... ... .... | |
1: ここは……? |
1: So, where is this...? | |
ナオト
う……あ? な、なんだ、ここ? 綺麗だけど、薄ら寒いような……。 |
Naoto
Uh...huh? W-what's with this place? It's pretty, but weirdly cold…. | |
ナオト
そうだ! アラクネの中に飛び込んだんだ。 ……って、レイ大丈夫か? |
Naoto
Right! We jumped inside Arakune. Rei, you alright? | |
ナオト
お前までついて来る必要無かったのに……。 |
Naoto
You didn't have to come with me, you know…. | |
クラヴィス
いや、必要だよ。 |
Clavis
No, it was necessary. | |
ナオト
!? |
Naoto | ? |
---|---|---|
クラヴィス
黒鉄ナオト、君一人でこの『場』に存在するのは 難しいと言うことだよ。 |
Clavis
Kurogane Naoto, I'm saying it would be difficult for you to "exist" here by yourself. | |
クラヴィス
しかし、よどみなく存在を保っていられるとは、 さすがだねレイ。 |
Clavis
Still, to be able to protect your existences without faltering...I expected no less from you, Rei. | |
1: ど……どうも…… |
1: T-thank you…. | |
ナオト
……クラヴィス=アルカード。 |
Naoto
Clavis Alucard…. | |
ナオト
なんで、あんたが……アラクネの中にいるんだ? |
Naoto
Why are you here...inside Arakune? | |
クラヴィス
少し気になってね……それにここはアラクネの内部ではあるが、 アラクネの体内ではないよ。 |
Clavis
Curiosity got the better of me...Additionally, this place is within Arakune, but not within Arakune's body. | |
クラヴィス
わかっていて、自ら飛び込んだのだろう? |
Clavis
You came here yourselves knowing that, did you not? | |
ナオト
じゃあ……ここが…… 『境界』ってやつか? |
Naoto
So...that makes this the... "Boundary?" | |
クラヴィス
そうだよ。 ……正確には、『境界』に仮に設けられた『場』だがね。 |
Clavis
That's correct. ...To be precise, it's a "place" that is mimicking the Boundary. | |
ナオト
何でもいいよ。それよりラケルだ!! ここに居るんだろ!? |
Naoto
Sure, whatever! Anyways, where's Raquel?!! She's here, right!? | |
クラヴィス
居るよ。……正確にはまだ『居ない』が。 |
Clavis
She's here. Although she still does "not exist" here yet. | |
ナオト
はぁ? どういうことだよ? だってアラクネに飲み込まれて……。 |
Naoto
Huh!? What's that mean? She was swallowed up by Arakune, right? | |
クラヴィス
何かが『存在』するには、それが『存在』していると 認識される必要がある。 |
Clavis
For something to "exist," it must first be recognized to "exist." | |
クラヴィス
だからラケルが、その魂が『此処』に存在していると、 認識してもらわなければならない。……わかるかね? |
Clavis
That's why for Raquel, for her soul to exist "here," it must be recognized to be here. ...Do you understand now? | |
ナオト
わかんねえって! つまりラケルはどこにいるんだよ? |
Naoto
No, I don't! So where is Raquel!? | |
クラヴィス
すぐ近くだ。なにせ、君が『此処』に現れたのだからね。 ……ライフリンクが、彼女の居場所を教えてくれるだろう。 |
Clavis
Right nearby. You have "appeared" here, after all....Your Life Link tells you where she is, does it not? | |
ナオト
教えてくれるって……どうやって!? |
Naoto
It tells me? ...How!? | |
クラヴィス
『想い』だよ、黒鉄ナオト。 君だけがラケルと繋がっているのだから。 |
Clavis
"Remember" her, Kurogane Naoto. You are the only one connected to Raquel Alucard, after all. | |
クラヴィス
まぁその想いが、あの世界を生み出したのかな……。 |
Clavis
Although, those memories did bring about that world…. | |
1: え? |
1: Eh? | |
クラヴィス
……おっと、それより客が来たようだ。 |
Clavis
...Dear me, it looks like we have some guests. | |
ナオト
な、なんだこいつら!? |
Naoto
Wh-what's with these guys!? | |
クラヴィス
ここは境界でもあるが、アラクネの内部でもある。 |
Clavis
This place is at once the Boundary as well as within Arakune. | |
クラヴィス
つまり過剰に魔素が集まっていてね。 そういうものが余計な形を得ることもある。 |
Clavis
In other words, an excessive amount of seithr gathers here. Occasionally, this gives rise to extraneous forms. | |
ナオト
つまり、ラケルを探すには こいつらをぶっ飛ばす必要があるってことだな? |
Naoto
So to find Raquel I just have to beat these guys up? | |
クラヴィス
そうだ。君の思考は明快で気持ちがいい。 |
Clavis
That is correct. It's pleasing to see your thoughts are so clear. | |
ナオト
そりゃどーも。 |
Naoto
Well, thanks. | |
クラヴィス
すまないが、私は手を貸せない。ここで私が力を使えば、 『場』にどんな影響を及ぼすかわからないのでね。 |
Clavis
I apologize, but I will not be able to help. If I were to use my power here, I don't know how it will affect this "place." | |
ナオト
自分の身は自分で守れってことか。 アルカード家はスパルタだな。 |
Naoto | |
ナオト
いいぜ、かかってこいよ真っ黒野郎ども! 相手になってやる! |
Naoto | |
ナオト
行くぜ、レイ! |
Naoto |
ナオト
ふぅ……やつらは倒したぞ。 で、どうやって探せば良いんだよ? |
Naoto
Ha...Great, we've defeated them. So, how do we go about searching? |
クラヴィス
ふむ。ところで何をそんなに焦っているのかね? |
Clavis
Hm. By the way, why are you in such a hurry? |
ナオト
焦るって……当たり前だろ!! |
Naoto
Well...of course I'm in a hurry!! |
ナオト
俺たちがこうしてることを、外にいる冥たちは知らない。 俺たちはアラクネに食われっぱなしになってる。 |
Naoto
The guys outside have no idea what we're doing in here! To them, we've just been eaten by Arakune! |
ナオト
こうしてる間にも、あいつらは、俺たちを助けようと 戦ってるかもしれないじゃねぇか。 |
Naoto
The whole time we're here, they might be fighting to save us. |
クラヴィス
なるほど。では、その心配は必要ない。 |
Clavis
I see. Then, there's no need to worry. |
ナオト
なんでだよ。 俺たちがここにいる間、時間は止まってるってか? |
Naoto
Why the heck would that be? Time's stopped while we're in here? |
クラヴィス
おや。察しがいいね。 |
Clavis
My. Very good intuition. |
ナオト
へ? ……マジかよ。 |
Naoto
Huh? ...Seriously? |
クラヴィス
より正確に言うならば、あちらの時間が止まっているの ではなく、こちらの時間が別方向に進んでいるのだよ。 |
Clavis
To be more precise, it isn't that time outside has stopped, but that the time in here moves in a different direction. |
クラヴィス
まぁ意味を理解する必要はない。今の君たちに必要なのは、 この先に……ここに。ラケルの魂があるという事実だけだ。 |
Clavis
You don't need to understand what that means. What matters to you...is the truth that Raquel's soul will be here. |
クラヴィス
それよりもこの『場』がいつまで保てるかの方が心配だよ。 |
Clavis
I am more concerned with the preservation of this "place." |
クラヴィス
先程の敵だって無尽蔵に湧いてくるし、『場』の構築も かなり無理をしているからね。 |
Clavis
Those creatures from before have been appearing nonstop, and no doubt puts a strain on the construction of this "place." |
1: やっぱり時間は無いって事ですね! |
1: So we don't have time after all! |
ナオト
ったく……。どうして吸血鬼の奴らは こんなにも時間に対して適当なんだよ……。 |
Naoto |
クラヴィス
とにかく黒鉄ナオト、集中したまえ。 そして『想』いなさい、我が娘を、ラケル=アルカードを……。 |
Clavis |
クラヴィス
君だけなんだよ、彼女の魂を描けるのは。 |
Clavis |
ナオト
あ、あぁ……。 |
Naoto |
ナオト
(ラケル………………) |
Naoto |
クラヴィス
どうかなレイ? |
Clavis
How is it, Rei? |
1: え? |
1: Hm? |
クラヴィス
……よかった。君には見えるようだね。 |
Clavis
...Thank goodness. You can see, it seems. |
ナオト
見えるって、なにがだ? レイ。そこになにかあるのか!? |
Naoto
See what? Rei, is something there!? |
1: わ、わからないよ…… |
1: I-I don't know…. |
クラヴィス
そうだねレイ。 君はラケル=アルカードを知らない。 |
Clavis
Of course. Rei, you don't know Raquel Alucard. |
クラヴィス
だから君の力でも彼女の観測は不可能だ……。 |
Clavis
So even with your power, Observing her is impossible. |
クラヴィス
でもね、君はラケル=アルカードを誰よりも知っている 人物は知っている筈だよ。 |
Clavis
Still, you should know someone who knows her better than anyone else. |
クラヴィス
その『彼』を、『想』いを、 |
Clavis
Please try Seeing "him"...and those "memories." |
1: 黒鉄ナオトの……想い |
1: Naoto Kurogane's...memories. |
ナオト
ラ……ラケル! |
Naoto |
ラケル
……ナオト? どうして……いえ、どうやってここに……? |
Raquel |
ナオト
どうしてって……いや、詳しい話をすると、 ややこしいし、長くなるけど…… |
Naoto |
ナオト
やっと見つけたぜ……お前を。 |
Naoto |
ラケル
そう……ね……。 |
Raquel |
ナオト
全く……探してたんだぞ、ずっと、ずっと! 『私を見つけて』って、夢ん中で何度も言いやがって! |
Naoto |
ナオト
だいたい、見つけろって、どうやって見つけろってんだよ! いつもいつも曖昧な話ばっかしやがって!! |
Naoto |
ナオト
ったく……ヒントくらい言いやがれ……。 |
Naoto |
ラケル
でも、見つけてくれたわ。 |
Raquel |
ナオト
……いや、俺じゃねぇよ。レイのおかげだ。 俺一人じゃどうすりゃ良いか、わかんなかったし……。 |
Naoto |
ラケル
それでも、見つけてくれたのは貴方よ、ナオト。 |
Raquel |
1: そうだね |
1: |
ラケル
……あなたが……レイね。 |
Raquel |
1: はい |
1: |
ラケル
そのドライブ……観測の力……なるほど…… |
Raquel |
ラケル
とりあえず礼を言うわ。ありがとう。 |
Raquel |
ナオト
へぇ……。 |
Naoto |
ラケル
……なによ。物言いたげな顔ね。 |
Raquel |
ナオト
いや……お前がそんなに素直に礼を言うなんて 珍しくてな。 |
Naoto |
ナオト
それよりさ、こんな場所だから しょうがねぇのかもしれねぇけど……。 |
Naoto |
ナオト
なんとかならなかったのかよ、その格好? |
Naoto |
ラケル
…………。 ……なにかおかしい? |
Raquel |
ナオト
あぁもう、突っ込むのもめんどくせぇが…… おかしいわ!! |
Naoto |
ナオト
……はぁ。まぁいいや、それよりも……。 |
Naoto |
ラケル
……お父様。 |
Raquel |
クラヴィス
久しいね、ラケル。元気そうで何よりだ……。 |
Clavis |
クラヴィス
それに……良き供も得たようだ……。 |
Clavis |
ラケル
はい……最高の友です。 |
Raquel |
クラヴィス
さて、レイ。 |
Clavis
Now then, Rei. |
クラヴィス
君が我が娘の存在を認識したことで、 ラケルは『あの世界』でも居場所を得られるだろう。 |
Clavis
By recognizing my daughter, she will be able to obtain a place in "that world" as well. |
クラヴィス
君という針がラケルと世界の間に糸を通したのだ。 あとは戻って、世界とラケルとを繋ぐ必要がある。 |
Clavis
You are the needle that draws the thread between Raquel and the world. After you return, Raquel will need to be connected to the world. |
クラヴィス
なに、簡単だよ。ここに居るラケルを、あの世界で 同じ存在だと認識するだけでいい。 |
Clavis
It's a simple affair. You only need to recognize that the Raquel here is the same existence as the one there. |
ナオト
そうすれば……ラケルは目を覚ますんだな!? |
Naoto
If you do that...Raquel will wake up!? |
クラヴィス
……おそらくは。 |
Clavis |
ナオト
おそらくって……。 |
Naoto
"Most likely," huh…. |
クラヴィス
経験はないのでね。いやはや、 これだけ生き長らえていても、初体験はあるものだな。 |
Clavis
I have no experience with this, after all. But to think there would still be a first for someone as long-lived as me. |
ラケル
フフフ……頼んだわよ、ナオト、レイ。 |
Raquel
Hee hee... I'll be counting on you, Naoto, Rei. |
ナオト
笑ってる場合かよアンタら……。 ……でも、そうとわかれば早く戻ろぜ、レイ。 |
Naoto |
ナオト
ラケルを早く目覚めさせて、そんであいつらと さっさと合流してやらねぇとな。 |
Naoto |
ナオト
それから……サヤのことも、なんとかしねぇと。 |
Naoto
And...we've still got to do something about Saya. |
クラヴィス
そうだね。君たちでの解決を願うよ。 私は特に君の妹君には、近づきたくないのでね。 |
Clavis
That's right. I'll be praying for your success. I would rather not approach that younger sister of yours. |
ナオト
サヤに? なんでだ? |
Naoto
Saya? Why? |
クラヴィス
彼女は『ソウルイーター』のドライブ能力者だからだよ。 |
Clavis
She has the Drive "Soul Eater." |
ナオト
あぁ、サヤのドライブか……。 |
Naoto
Oh, her Drive…. |
ナオト
アレには俺もひどい目に遭ったからなぁ…… ガキの頃なんか、マジで死ぬかと思ったし……。 |
Naoto
I had a bad experience with it once, back when I was little. I totally thought I was gonna die. |
ナオト
でもさ、あんた程の奴が警戒するくらいヤベェモノなのか? |
Naoto
But someone like you doesn't need to be worried about it, right? |
クラヴィス
……なるほど。 君は『ソウルイーター』の真の姿を知らないようだな。 |
Clavis
...I see. You are unaware of the true nature of "Soul Eater." |
クラヴィス
発動すれば、周囲の命を根こそぎ吸い尽くす、 最悪にして最凶のドライブ。というのが、私の印象だよ。 |
Clavis
When activated, it absorbs life from its surroundings, and is at once the most evil Drive and the most unfortunate. That is my impression of it. |
クラヴィス
それに、あのドライブと私の相性は最悪なんだ。 ……以前、私も酷い目に……。 |
Clavis
My compatibility with it is the worst....I also had a bad experience... |
クラヴィス
いや、酷い事が起きた……と、言うべきかな。 |
Clavis
No, I should say...it was a horrifying experience. |
ナオト
以前もって……。あんた、ソウルイーターと……。 |
Naoto
So, before...you...and Soul Eater have… |
クラヴィス
あぁ、戦った事があるよ。だから言える事なんだが……。 |
Clavis
Yes, we've fought. So, I'll say this… |
クラヴィス
黒鉄ナオト、君なら見えるよね、私の生命力が。 |
Clavis
Kurogane Naoto, you should be able to see my life force. |
ナオト
あぁ……ヤベェって事が解るくらいだけどな……。 |
Naoto
Yeah, only enough to know it's a crazy amount though. |
1: やばいってどれくらい? |
1: Crazy, as in how crazy? |
ナオト
えぇ?? 俺がか!? え、えぇと………。 |
Naoto
You want me to explain!? Uh, well…. |
ラケル
お父様は、人々の意思……『願望』から産まれた 『幻想生物』と呼ばれる、その中でも最強と云われる存在よ。 |
Raquel
Father was born from people's thoughts...their "wishes," as an Imaginary Creature. Among them, he is the strongest. |
ラケル
つまりね、お父様は不死身ではない。 人が、人間が存在する限り……『不滅』なの。 |
Raquel
In other words, Father is not undying. As long as people, as long as humanity exists, he is "immortal." |
ラケル
だから『命』に対しての定義が 他の生命体と根本的に違うけど……。 |
Raquel
So what composes his "life" is fundamentally different from other living creatures' lives, but…. |
ラケル
お父様の『命』はある意味、無尽蔵と言っていいわ。 |
Raquel
You can say Father's "life" is, in a sense, inexhaustible. |
ラケル
そんな命を、あのソウルイーターが 本気で吸い尽くそうとしたら…… |
Raquel
If Soul Eater were to make a serious attempt at absorbing that life… |
ラケル
街の一つくらいなら軽く消えるわよ……あらゆる生命体がね。 |
Raquel
At least one city would disappear...or, all kinds of life within it. |
ナオト
想像したくねぇ……。 |
Naoto
I don't even want to imagine that…. |
クラヴィス
理解できたのならソウルイーターには気を付けなさい。 あれは……自身すらも喰らい尽くす悪食だ。 |
Clavis
Now that you understand, be careful around Soul Eater. It...is so gluttonous it even devours itself. |
ナオト
自身も……ね。 |
Naoto
Even...itself. |
ナオト
とにかくだ、サヤの目を覚まさせねぇと。 早く俺たちを戻してくれ。 |
Naoto
Anyway, we need to get Saya back to her senses. Let's return quickly. |
クラヴィス
……………。 |
Clavis
.... |
ラケル
……………。 |
Raquel
.... |
1: …………… |
1: .... |
ナオト
……え? って、この場合あんただろ、クラヴィスさん! |
Naoto
...Huh? Well, in this case, it's your turn, Mr. Clavis! |
クラヴィス
私かね? でもどうやって? |
Clavis
Oh, mine? How so? |
ナオト
……は? |
Naoto
...Huh? |
ナオト
え、は!? 戻せねぇの!? |
Naoto
Wh- huh!? You mean we can't get back!? |
クラヴィス
私は、境界に飛び込んだ君を辿ってここまで来ただけだ。 ここへ招いたわけではないよ。 |
Clavis
I simply followed you when you jumped into the Boundary. I was not invited here. |
クラヴィス
君たちは君たちの道順で、ここにたどり着いた。 それを解消する術を私が持っていなくても、不思議はあるまい。 |
Clavis
You reached this place through your own methods. That I would not be able to undo that is not strange in itself. |
ラケル
あら……大変……。 |
Raquel
My...what a predicament. |
ナオト
いや、ちょっと待て、そりゃ言ってることはもっともだけど…… じゃあどうすんだよ!? |
Naoto
Well, I mean, you're right, but... what do we do, then!? |
ナオト
つかラケル、お前他人事すぎ!! |
Naoto
And Raquel! You're way too detached about all this! |
クラヴィス
ふむ、先ほどからどうすべきか思案していたのだけれど…… 良きタイミングで迎えが来たようだ。 |
Clavis
Hm. I have been considering what to do, but it seems they have come to get you, and at a good time. |
クラヴィス
よく見てごらん、レイ。 君が『認識』すれば、それは『存在』できる。 |
Clavis
Take a close look, Rei. If you can "recognize" it, it will "exist." |
???
……て、くださ……。 |
???
...hand...please. |
1: あれは…… |
1: That's.... |
Es
手を、伸ばしてください! ナオトさん、レイさん! |
Es
Take my hand, please! Rei, Naoto! |
第12節 矛先③/ 12. At Spearpoint - 3
Summary | |
---|---|
Esによりアラクネの中から救出されるナオ
トたち。去ろうとするレイチェルを、現れた キイロが妨害する。 |
Naoto, Rei, and Raquel are saved from within Arakune by Es. Rachel plans to leave, but is blocked by Kiiro. |
シエル
レイさん! 反応、検索……反応、ありません。 |
Ciel | |
シエル
ラーベさん……ナオトさんとレイさんが、 アラクネさんに飲み込まれてしまいました……! |
Ciel | |
ラーベ
見ればわかる。 |
Raabe | |
シエル
レイさんを救出します! ラーベさん、アラクネさんの体内に侵入する許可を! |
Ciel | |
ラーベ
まぁ待て……と、言いたいが。少し興味はあるな。 |
Raabe | |
冥
ば……馬鹿者! お前たちまで喰われたら、 まるで意味がないだろうが! |
Mei | |
アラクネ
ゥケケケケケケケ、食らう食らう満たされる、 蒼の臨界に溶けて我が肉を得よ際限なく知を注げ! |
Arakune | |
Es
どいてください、冥! |
Es | |
冥
エス? おい待て、なにをするつもりだ! お前まで飲み込まれるぞ! |
Mei | |
Es
では飲み込まれないよう、アラクネを抑えていてください。 |
Es | |
レイチェル
無茶を言うわね……! |
Rachel | |
アラクネ
ギィィィィィィ風ガガガ……! |
Arakune | |
Es
はぁっ! |
Es | |
アラクネ
グァ、ギャアァァァァァァ!? |
Arakune | |
Es
このまま……奥に! 手を……伸ばしてください……。 |
Es | |
ラーベ
アラクネの体は魔素の集合体……その内部は…… やはり予想通りだな。シエル、エスを手伝え。 |
Raabe | |
シエル
了解です! |
Ciel | |
レリウス
……ほう。これは興味深い。 |
Relius | |
Es
くっ……もう少し……。手を伸ばしてください、 ナオトさん、レイさん! |
Es | |
シエル
レイさん! |
Ciel | |
ナオト
うわ、った、うべっ。 |
Naoto | |
冥
黒鉄! しっかりしろ! |
Mei | |
ナオト
う、るせ……生きてる、よ。 |
Naoto | |
冥
ふ。確かに、口だけは元気そうだ。 |
Mei | |
ナオト
それより、こいつを……頼む……。 |
Naoto | |
冥
ラケル=アルカード……! アラクネの中から取り戻したのか!? |
Mei | |
ナオト
へへ……とうぜん……だろ……。 |
Naoto | |
1: 心配かけてごめん、シエル |
1: | |
シエル
いえ。力及ばず、申し訳ありません。 |
Ciel | |
Es
お手伝いができて、よかったです。 |
Es | |
Es
見てください。アラクネが。 |
Es | |
アラクネ
ア……ガ、ガ……蒼……アオ…… オォ…………。 |
Arakune | |
レリウス
……この程度で、存在が保てなくなったか。 ……存外に脆いな。 |
Relius | |
ヴァルケンハイン
所詮は即製のまがい物ということではないのか。 |
'Valkenhayn | |
レリウス
それなりの作だったのだがな……残念だ。 |
Relius | |
ヴァルケンハイン
思ってもいないことを言うな。 |
'Valkenhayn | |
レイチェル
……あの子が戻ったようね。 なら、私の出演はここまでかしら……。 |
Rachel | |
レイチェル
っ!? |
Rachel | |
キイロ
どこへ行くつもりなのかしら? アルカードのお姫様。 |
Kiiro | |
キイロ
この場からは逃がさないわよ……誰一人ね。 |
Kiiro | |
レイチェル
……ムラクモユニット。 |
Rachel | |
ナオト
キイ、ロ……てめぇ、なにしに……来やがった……。 |
Naoto | |
キイロ
あら、ナオトくん、ひどい怪我じゃない! もぉ〜、一体誰にやられたの? 可哀想〜。 |
Kiiro | |
ナオト
ふざけんな! もとはと言えば、てめぇのせいだろがっ!! |
Naoto | |
キイロ
私のせい!? 大変! だったら、責任取らないと。 |
Kiiro | |
キイロ
安心して、ナオトくん。ここが片付いたら、すぐに手当て してあげるから。もちろん、手も足も、新しいモノを用意するわ。 |
Kiiro | |
キイロ
だから……もうちょっと、我慢してね。 |
Kiiro | |
キイロ
ふふっ…… あなたもアルカードのお姫様なんでしょう? |
Kiiro | |
キイロ
なら遠慮しないでいいのよ、 またじっくりと解体してあげるから……。 |
Kiiro | |
レイチェル
くっ……。 |
Rachel | |
シエル
レイチェルさんが集中的に攻撃を受けています。 援護しますか? |
Ciel | |
ラーベ
…………。 |
Raabe | |
シエル
ラーベさん? |
Ciel | |
冥
シエル、あまり戦力を分散させてくれるな! |
Mei | |
冥
こっちには意識不明の吸血鬼と、 立てもしない役立たずがいるんだぞ! |
Mei | |
ナオト
ひでぇ言われようだな!! |
Naoto | |
冥
それに私らだけじゃ、あの二人はキツすぎる、 奴らだって十分化け物だって事を忘れるな!! |
Mei | |
ラーベ
……シエル、お前はラケルの護衛を最優先しろ。 |
Raabe | |
シエル
了解しました。 |
Ciel | |
レイチェル
……わからないわね。あなたが狙っているのは、
|
Rachel
...I fail to understand. Your target is | |
キイロ
気付いてないとでも思っているの? それに私たちが狙っている のは『ラケル』でも『レイチェル』でもないわ。 |
Kiiro
Did you think we wouldn't notice? And our target isn't "Raquel", nor is it "Rachel." | |
キイロ
クラヴィス=アルカードよ。 |
Kiiro
It's Clavis Alucard. | |
レイチェル
お父様? |
Rachel
Father!? | |
キイロ
そう、御剣機関の悲願。 幻想生物クラヴィス=アルカードの討伐。 |
Kiiro
That's right. The Mitsurugi Agency's most ardent desire...is Clavis Alucard's suppression. | |
キイロ
それを成すために、輝弥サヤだろうが、 あなたたちアルカードの吸血鬼だろうが何でも使うわ。 |
Kiiro
To achieve that, we'll use whatever we can get our hands on...be that Saya Terumi, or you vampires of the Alucards. | |
ラーベ
……なるほど、 それが御剣機関……いや『緋鏡キイロ』の目指すところか。 |
Raabe
I see...So that's what the Mitsurugi Agency...what "Hikagami Kiiro" is aiming for. | |
キイロ
あら、自立思考型ユニットじゃない。 そうよ、そしてそれは順調に進行し、もうすぐ達成される。 |
Kiiro
My, if it isn't the Independent Thought Unit. That's right. Plans are moving along smoothly and we're almost done. | |
レイチェル
本気でお父様を殺せるとでも思っているのなら、 おめでたい頭ね。 |
Rachel
If you truly think you can kill Father, you think too highly of yourselves. | |
キイロ
『殺す』? ……フフフッ、乱暴ね。 あなたの方がおめでたいんじゃないの? |
Kiiro
Kill him? ...Hehehe, how violent. Aren't you the one who thinks too highly of yourself? | |
キイロ
でもそうね、確かに……クラヴィス=アルカードは強敵よ。 |
Kiiro
But it's true...Clavis Alucard is formidable. | |
キイロ
ならどうするの? ただただ強い…… そう、冗談としか思えないほどの強さを誇る化け物に…… |
Kiiro
So what do we do? Against a foe who has overwhelming, brute strength...an unimaginably powerful monster.... | |
キイロ
……どうすれば勝てるのかしら? |
Kiiro
...How do we win? | |
キイロ
力で対抗する? 化け物には化け物とか? フフフ……そういうのも嫌いじゃないけど。 |
Kiiro
Oppose with force? Pit monster against monster? Hehehe….I'm not against it. | |
キイロ
所詮はクラヴィス=アルカードもただの化け物よ……。 |
Kiiro
In the end, Clavis Alucard is but a monster…. | |
キイロ
ただ『強いだけ』の化け物……。 |
Kiiro
...A monster with only strength to his name. | |
キイロ
不死身で不滅の……人の『願望』が生み出した、 ただの化け物……。 |
Kiiro
Undying and immortal...born from humanity's wishes...but a monster like any other. | |
キイロ
でも、アレは『神』じゃないわ。 |
Kiiro
And a monster isn't a "god." | |
キイロ
だから人間を舐めるんじゃないわよ、この化け物共!! その存在ごと消滅させてやるわ!!! |
Kiiro
So don't underestimate us humans, you monsters!! We'll erase your very existence!! | |
ラーベ
退け、レイチェル=アルカード!! お前ではこの女に敵わない!! |
Raabe
Dodge, Rachel Alucard! You can't match up to her!! | |
ラーベ
というか、この世界からとっとと退場してくれ! |
Raabe
Actually, just leave this world already! | |
レイチェル
私もそうしたいわ! |
Rachel
I would if I could! | |
キイロ
言ったわよ、誰も逃さないって! |
Kiiro
I told you, didn't I? I won't let anyone get away! | |
サヤ
!! |
Saya | ! |
---|---|---|
レイチェル
くぅ……っ。 |
Rachel
Ack.... | |
キイロ
レリウス、ヴァルケンハイン。 早くラケル=アルカードを回収して。 |
Kiiro | |
レリウス
……人使いの荒い事だ。 |
Relius | |
ヴァルケンハイン
チッ……。 |
'Valkenhayn | |
冥
こっちにも来るぞ! |
Mei | |
Es
……ナオトさん、ラケルさんの側にいてください。 守ります。 |
Es | |
ナオト
悪い……。 |
Naoto | |
ラーベ
シエル、レイを守れ! 最優先だ!! |
Raabe | |
シエル
り、了解です! |
Ciel |
第12節 矛先④/ 12. At Spearpoint - 4
Summary | |
---|---|
アルカードに固執するキイロの目的は『クラ
ヴィスの観測』。サヤの刃がレイチェルを捕 らえた時、クラヴィスが現れた。 |
Persistently hounding the Alucards, it turns out Kiiro's aim is "Clavis' Observation." When Saya stabs Rachel with her sword, Clavis appears. |
シエル
はぁぁっ! |
Ciel | |
レリウス
…………ふむ。なるほど。『このタイミング』か。 |
Relius | |
シエル
っ……く! 反応、解析。対象の戦闘レベル、不定。 こちらを試しているような動きです。 |
Ciel | |
ヴァルケンハイン
何を言っているレリウス! 観察がしたいのなら、叩き潰してからにしろ! |
Valkenhayn | |
レリウス
それではまるで意味がない……。 止まっている状態のものなど、いくらでも再現できる。 |
Relius | |
ヴァルケンハイン
ええい……いつまでもお前に付き合っていられるか! もういい加減、全員叩き潰す! |
Valkenhayn | |
Es
対象の戦闘レベルの上昇を確認…… まだ本気ではなかったということですか!? |
Es | |
冥
これ以上、私はもたんぞ! |
Mei | |
ラーベ
駄目だ! ラケル=アルカードは何があっても護り通せ! 最悪レイチェル=アルカードは見捨てる!! |
Raabe
Not good! No matter what, be sure to protect Raquel Alucard! Worst case, prepare to sacrifice Rachel Alucard! | |
ナオト
なっ!? |
Naoto
Wh--!? | |
レイチェル
……正しい選択よ。 |
Rachel
...That's the correct choice. | |
シエル
ラ、ラーベさん!? ですが……。 |
Ciel
Ms. R-Raabe!? But! | |
ラーベ
だから最悪の場合だ。 それよりシエル、お前はレイから離れるな。 |
Raabe
Only in the worst case. Ciel, don't leave Rei's side. | |
ラーベ
まったく……クソッ、クソッ……。 |
Raabe
Everything's...! Shit, shit. | |
ラーベ
何故だ……どうしてだ……? もしかしたら意図的に『考えない』様、構築されているのか? |
Raabe
Why...how? Was this constructed intentionally from the "unthinkable?" | |
1: あのぉ…… |
1: Um.... | |
ラーベ
……レイ、シエル、二人共黙って聞け。 |
Raabe
...Rei, Ciel, keep quiet, just listen. | |
ラーベ
この状況だから要点だけ話す。 だから質問も反論も無しだ、いいな。 |
Raabe
Because of the situation I'm only going to go over the main points. No questions, no comments, alright? | |
ラーベ
緋鏡キイロは異物でも |
Raabe
Hikagami Kiiro is neither a Contaminant nor a Stranger, but someone from this world. | |
ラーベ
にも関わらず、彼女はこの世界がファントムフィールドで あることを認識している。 |
Raabe
Despite that, she's realized that this world is a Phantom Field. | |
ラーベ
でも、これでキイロのタイミングの良さに合点がいったよ。 |
Raabe
From this, I can understand how Kiiro's timing was so good. | |
ラーベ
恐らく、この世界にも『タカマガハラシステム』が存在している。 サヤを捕らえているのもシステムだろう。 |
Raabe
Most likely, the "Takamagahara System" exists in this world. The one who captured Saya is probably the System, too. | |
ラーベ
そしてキイロの目的はクラヴィス=アルカードの『観測』だ。 |
Raabe
And Kiiro's aim here is Clavis Alucard's "Observation." | |
シエル
!? |
Ciel | ? |
---|---|---|
ラーベ
観測さえできてしまえば、その存在をある程度とはいえ、 どうとでもできる。 |
Raabe
As long as you can Observe it, to an extent, anything is possible. | |
ラーベ
だが、システムは未知の存在を正確には観測出来ない。 |
Raabe
However, the System cannot properly Observe things that it has no knowledge of. | |
ラーベ
レイ、お前だって知らない奴は まともに観測出来ないはずだ。 |
Raabe
Rei, even you shouldn't be able to Observe people you don't know. | |
1: 確かに…… |
1: Yeah, you're right.... | |
ラーベ
しかしクラヴィスに近い存在、レイチェルやラケルから情報を 取り込めばシステムの精度も上がり、観測可能になる。 |
Raabe
However, if the System takes in Rachel and Raquel Alucard, existences close to Clavis Alucard, its accuracy will increase and it will become able to Observe (them?). | |
ラーベ
サヤのソウルイーターなら 『魂』という、最も繋がりの強い情報を引きずり出せるだろう。 |
Raabe
Saya's Drive, Soul Eater, will draw in the "soul," information of the strongest of bonds. | |
ラーベ
キイロが『アルカード』に固執する理由はそれだ。 |
Raabe
That's why Kiiro is so set on the Alucards. | |
ラーベ
そのうえでレイまで、 この世界のタカマガハラシステムに組み込まれたりしたら、 |
Raabe
Above all, if even Rei is incorporated into this world's Takamagahara System... | |
ラーベ
全て終わりだ。 |
Raabe
...Then it's all over. | |
ラーベ
この世界の観測者が不明な状況でこれ以上の危険は冒せん。 |
Raabe
There is no greater danger than having the Observer of this world become uncertain. | |
ラーベ
だから、レイ。私が危険と判断したら、 お前を緊急離脱させる。 |
Raabe
So, Rei. If I decide it's dangerous, you need to perform bail out. | |
ラーベ
その時はシエルも私も諦めるようにと『私』に言っといてくれ。 |
Raabe
Tell "me" that you were told to give up on Ciel and I. | |
1: でも……! |
1: But...! | |
ラーベ
シエル。そうならないように全力でレイを護れ。 いいな? |
Raabe
CIel. To prevent that, you'll need to give your all to protect Rei. | |
シエル
了解しました。 |
Ciel
Yes, ma'am. | |
キイロ
作戦会議は終わった? でもいいわよ、十分、時間稼ぎにはなってもらったから。 |
Kiiro
You done with your little strategy meeting? Well, I don't mind, I'm trying to buy time here too. | |
シエル
時間稼ぎ……はっ! |
Ciel
Buying time...Gasp! | |
レイチェル
あ……。 |
Rachel
Ah... | |
サヤ
…………。 |
Saya
... | |
冥
レイチェル! |
Mei
Rachel! | |
レイチェル
結局……最後に、足を引っ張ったのは……私ね。 ひどい、無様……だこと……。 |
Rachel
So...I'm the one...dragging everyone down...in the end. How...humiliating.... | |
キイロ
さあ、まずはひとり。 |
Kiiro
That's one down. | |
サヤ
……喰らい尽くせ……。 |
Saya
...Devour it.... | |
ナオト
サヤ、やめろ! |
Naoto
Saya, stop! | |
サヤ
……『ソウルイーター』……! |
Saya
...Soul Eater...! | |
レイチェル
あ、う……あぁ……っ。 |
Rachel
Ugh... Augh... | |
ラーベ
不味いな、いくら弱っているからといっても、 アルカードの吸血鬼だ。 |
Raabe | |
ラーベ
取り込まれたら、さらに手が付けられなくなるぞ……。 |
Raabe | |
ナオト
やめろ、サヤ! くそっ、この……っ。 足、早く治れよ! |
Naoto | |
冥
レイチェル=アルカードを、サヤから引き離せ! |
Mei | |
Es
了解! |
Es | |
キイロ
させないわ! |
Kiiro | |
Es
くっ! |
Es | |
ナオト
どけよ! |
Naoto | |
キイロ
ナオトくんのお願いでも、 こればっかりは聞いてあげられないわ。 |
Kiiro | |
キイロ
私の、邪魔はさせない。 |
Kiiro | |
1: レイチェルを放せ! |
1: Let go of Rachel! | |
レイチェル
レイ……。 |
Rachel
Rei... | |
シエル
はい! |
Ciel
Right! | |
サヤ
ぐあっ! |
Saya
Ack! | |
キイロ
っ、なに!? |
Kiiro
W-What!? | |
ヴァルケンハイン
来たか! |
Valkenhayn
He's here! | |
ナオト
サヤ! |
Naoto
Saya! | |
クラヴィス
……レイ。 やはり君の存在は危険かもしれないね。 |
Clavis
....Rei. Your existence really might be a danger. | |
クラヴィス
だが、今は感謝しよう。 |
Clavis
But I will thank you this time. | |
冥
クラヴィス=アルカード! |
Mei
Clavis Alucard! | |
レイチェル
お父様……ごめんなさい……お手を、煩わせて……。 |
Rachel
Father...I'm sorry...to have forced your hand.... | |
クラヴィス
ラケルの側だ。気に病むことはないよ。 |
Clavis | |
ヴァルケンハイン
うおおぉぉぉぉぉぉ! クラヴィス=アルカードぉぉぉぉぉ! |
Valkenhayn | |
レリウス
まったく……血の気が多くていかんな。 |
Relius | |
キイロ
ぼやいてる場合じゃないでしょ。あなたも戦いなさい、 それが契約よ。 |
Kiiro | |
レリウス
……やれやれ。 |
Relius | |
キイロ
……何故? どうしてこのタイミングでクラヴィス=アルカードが……。 |
Kiiro | |
冥
あれが……幻想生物……クラヴィス=アルカードなのか? ……強い。常軌を逸している。 |
Mei | |
Es
冥。今のうちに、ナオトさんとラケルさんを奥へ。 |
Es | |
ラーベ
……シエル。正面の防護を受け持て。 レイ、顔色が悪いが大丈夫か? |
Raabe | |
1: 大丈夫です…… |
1: | |
シエル
レイさん、私の後ろにいてください。 |
Ciel | |
ラーベ
(……やはりレイが喚んだのか……。 あのクラヴィス=アルカードを……。) |
Raabe
(...So Rei summoned him here...that Clavis Alucard....) | |
ラーベ
(……面白いじゃないか。) |
Raabe
(...Isn't that interesting?) | |
ヴァルケンハイン
があぁぁぁぁぁぁ! |
Valkenhayn | |
クラヴィス
……少し、大人しくしていてくれ。 |
Clavis | |
ヴァルケンハイン
なに!? しまっ……ぐはっ! |
Valkenhayn | |
レリウス
……! |
Relius | |
レリウス
……! |
Relius | |
レリウス
やはり……今の私では……手に余るな……。 |
Relius | |
ヴァルケンハイン
馬鹿……な……こんな……ことが……。 |
Valkenhayn | |
サヤ
せやぁぁっ! |
Saya | |
クラヴィス
……っ。 |
Clavis
.... | |
サヤ
クラヴィス=アルカード……お会いしとうございました……。 |
Saya
Clavis Alucard... Well met.... | |
クラヴィス
……君は、倒すことも倒されることも遠慮させてもらおう。 |
Clavis | |
サヤ
ぐう……、う……。 |
Saya | |
クラヴィス
……レイ。 舞台へと招いてくれたことは感謝する。 |
Clavis
...Rei. Thank you for beckoning me to this stage. | |
クラヴィス
おかげで娘をひとり、失わずに済んだよ。 だが、同じ土に立てるのはここまでだ。 |
Clavis
It is thanks to you that matters could be settled without losing my daughter. But I shall not stand with you any longer. | |
レイチェル
…………。 |
Rachel
... | |
シエル
クラヴィスさん……? |
Ciel
Mr. Clavis...? | |
クラヴィス
帰るよ。レイも限界のようだ。 |
Clavis
We're leaving. Rei is almost at their limit. | |
クラヴィス
あの少女はレイチェルの力を取り込んだ。 レイチェルの力は、間接的に私に繋がっている。 |
Clavis | |
クラヴィス
私がここに存在し続ければ、ソウルイーターから私へも 間接的な繋がりが生まれてしまうだろう。 |
Clavis | |
クラヴィス
それはいけない。君たちがことごとく消え去る恐れすらある。 個人的に、それは避けたいのでね。 |
Clavis | |
ラーベ
是非ともそうしてくれ。後はコチラで何とかする。 |
Raabe | |
1: ありがとうございます…… |
1: | |
クラヴィス
構わないよ。 |
Clavis | |
ナオト
待てよ……。 |
Naoto | |
Es
ナオト。無理に起きては、体に障ります。 |
Es | |
ナオト
ラケル……ラケルはどうすんだ? |
Naoto | |
クラヴィス
ははは、君にしては愚問だな。 ナオト、ラケルを頼むよ。 |
Clavis | |
クラヴィス
……可能性の子らよ。その手に未来を。 |
Clavis
...Children of possibility, the future is in your hands. | |
シエル
……消えてしまいました。 |
Ciel
...He's gone. | |
キイロ
あん、もう。 この3人がかりでも、ろくな傷ひとつつけられないなんて。 |
Kiiro | |
キイロ
でもまあ、別にいいわ。どのみち、ラケル=アルカードを 手に入れれば、クラヴィス=アルカードは現れる……。 |
Kiiro | |
キイロ
いえ……引きずり出せるわ。 |
Kiiro | |
キイロ
それに……。 |
Kiiro | |
キイロ
面白い |
Kiiro | |
ラーベ
……やはり気づかれたか。 レイ、ちょっと来い。 |
Raabe | |
1: はい |
1: | |
ラーベ
シエルは何があってもレイに キイロを近づかせるな。 |
Raabe | |
シエル
了解しました。 |
Ciel | |
ナオト
ちっ……こっちの状況はあんま変わってねぇな……。 |
Naoto | |
ラーベ
レリウスとヴァルケンハインを考えなくていいだけましと思え。 |
Raabe | |
冥
だが、私たちであのキイロとサヤを御せるのか……? いや、そうせねば。我が天ノ矛坂の敷地内で、勝手は許さん! |
Mei | |
ナオト
ラケルは……渡さねぇ……。 それに、サヤもだ! |
Naoto | |
Es
…………。 |
Es | |
シエル
緋鏡キイロさん。サヤさんの洗脳を解き、撤退してください。 |
Ciel | |
シエル
……それに個人的にも、アナタと戦うことは 避けたいと考えています。 |
Ciel | |
キイロ
あら、優しいのね。でも無理よ。 |
Kiiro | |
キイロ
輝弥サヤ……ラケル=アルカードの力を根こそぎ奪いなさい。 そうすれば貴女は……。 |
Kiiro | |
キイロ
比類なき力を……手に入れられる。 |
Kiiro | |
サヤ
…………。 ……ふふ。それは素敵……素敵な……ことですね。 |
Saya | |
キイロ
ええ。そしてそれを、邪魔はさせない! |
Kiiro |
第13節 覚醒①/ 13. Awakening - 1
Summary | |
---|---|
ラケルが目覚めたことで、ライフリンクが復
活したナオト。目覚めたラケルに驚くキイロ をサヤが貫く。 |
Raquel wakes up and through their re-established Life Link, Naoto resurrects. Saya stabs Kiiro, who is surprised to see Raquel wake up. |
キイロ
あうっ……。 |
Kiiro | |
キイロ
……ふふ、ふふふ。もう、肌に傷がついちゃった。 |
Kiiro | |
シエル
はぁ、はぁ……対象、戦闘レベルを維持……。 |
Ciel | |
冥
く、そ……もうかなりやり返してやったのに…… こちらに手応えは十分あるはずなのに、なぜ倒れない! |
Mei | |
シエル
ダメージは確実に与えているはずです。ですが……。 |
Ciel | |
Es
まるで……倒れないとあらかじめ 決められているかのようです。 |
Es | |
冥
馬鹿なことを言うな。 そんなこと、あってたまるか。 |
Mei | |
シエル
……観測者の力が関与していると考えられます。 |
Ciel | |
冥
なに? |
Mei | |
シエル
『こう』なることを、観測者が望んでいるのなら…… 私たちは勝つことが出来ません。 |
Ciel | |
シエル
観測者の望みに添って、世界は『観測』されています。 そこから外れることは、できません。 |
Ciel | |
冥
では、我々がいくら戦っても無駄だということか!? |
Mei | |
Es
……いえ、違います。 この場合、重要なのはそこではありません。 |
Es | |
Es
この展開が、観測者の思い描いたものならば、 私達は既に負けているはずです。 |
Es | |
シエル
はい。それはつまり……。 ……っ! |
Ciel | |
キイロ
……あーあ。目の前を飛び回られるのも、 うっとうしいわね。いいわもう。殺しちゃって。 |
Kiiro | |
サヤ
ふっ! |
Saya | |
シエル
対象を補足。対処します。 |
Ciel | |
Es
いえ、私が……。 |
Es | |
キイロ
なっ……。 |
Kiiro | |
ナオト
っ、らぁぁぁっ! |
Naoto | |
サヤ
っ、く……。 |
Saya | |
シエル
ナオトさん。……足が、あります。 |
Ciel | |
ナオト
ついさっき、治ったんでな。言っただろ。 俺はちっとやそっとのことじゃ死なねぇ。 |
Naoto | |
ナオト
さっきまでは勝手が違ったが…… ご主人様が起きれば、こんなもんだ。 |
Naoto | |
シエル
ご主人様? |
Ciel | |
冥
ということは……! |
Mei | |
ラケル
……ずいぶんと、寝心地の悪いところで 寝かされていたものね。 |
Raquel | |
ラケル
それに、とても騒々しいわ。最悪な目覚めよ。 |
Raquel | |
1: すみません…… |
1: | |
ナオト
そう言うなよ。こっちはてめぇの盛大な寝坊のせいで、 散々苦労したんだ。 |
Naoto | |
ラケル
仕方無いでしょ、久しぶりに戻るんだから……調整が必要なの。 |
Raquel | |
ナオト
久しぶりって……まだ二週くらいしかたってないんだけどな。 |
Naoto | |
キイロ
……な……なぜ、どうして……。 |
Kiiro | |
ラケル
あら。私の目が覚めることが、そんなに不自然? |
Raquel | |
ナオト
……凄みながら俺の後ろに隠れるなよ。 |
Naoto | |
キイロ
そんな、あるはずないわ! あなたが目を覚ますはずがない! |
Kiiro
That's impossible! You shouldn't be waking up! | |
ラーベ
ラケル=アルカードの昏睡にシステムが関わっていると わかれば、そんなに難しいことではないぞ。 |
Raabe
Once you realize the System is involved in Raquel's sleep, it's not that strange. | |
ラーベ
こっちにはレイもいるしな……。 |
Raabe
We also have Rei here with us, after all.... | |
キイロ
玩具の分際で……。 |
Kiiro
You're all just damned toys…. | |
ラーベ
優秀だろ? それより、どうやって魂と器を完全に 切り離したかだ。此処のシステムでは不可能だと思うが。 |
Raabe
Rei's good, aren't they? Now then, how did you completely separate the soul from its vessel? I thought it was impossible for the System here. | |
ラケル
それは自主的によ。 |
Raquel
It was voluntary. | |
ナオト
はぁ!? 自分でやったってか? マジかよ! |
Naoto
Huh!? You did it yourself? Seriously!? | |
ラケル
仕方ないでしょ、あんなモノに私が観測されるなんて 耐えがたいもの。 |
Raquel
There was no way around it. I couldn't stand being Observed by something like that. | |
ラーベ
なるほど……これで概ねの状況は把握できたぞ。 キイロがアラクネを放置した理由はそれか。 |
Raabe
I see….Most things are falling into place now. That was the reason why Kiiro needed Arakune. | |
ラーベ
アラクネはドライブ能力者しか襲わない。 観測システムを強化するには丁度いい素材だ |
Raabe
Arakune only attacks Drive users, making it the perfect material to strengthen the Observation system. | |
ラーベ
しかし、それでは説明できない事象もあるんだが……。 |
Raabe
There's still some phenomena left unexplained, though…. | |
キイロ
ごめんねぇ〜。玩具と語り合う言葉は持ち合わせてないの。 |
Kiiro | |
キイロ
それに小娘が起きた程度で、形勢が逆転できたとでも 思ってるの? むしろ好都合だわ。 |
Kiiro | |
キイロ
ラケル=アルカードの意識があったほうが、 力を吸収しやすいもの。 |
Kiiro
Raquel Alucard's power will be easier to absorb if she's conscious. | |
ナオト
もうやめろよ、キイロ! こんなことして…… なにがてめぇの望みだっていうんだよ!? |
Naoto
Stop it already, Kiiro! What do you even want out of all this!? | |
キイロ
何度も言ったでしょ。 クラヴィス=アルカードを倒すことよ。 |
Kiiro
I've told you over and over again, it's to defeat Clavis Alucard. | |
キイロ
私は……私達はそのために創られたのだから。 |
Kiiro
It's why I...why we were created. | |
シエル・Es
………………… |
Ciel & Es
.... | |
キイロ
レイ……とか言ったわよね。 その能力も私達の悲願の為に有効活用してあげるわ……フフフ。 |
Kiiro | |
冥
そこまでの執着心……もはや呪いだな……。 |
Mei | |
冥
しかし自白にも等しいぞ、緋鏡キイロ。 お前がこの世界の観測者とやらなのだろう? |
Mei | |
1: いや…… |
1: | |
シエル・ナオト
!? |
Ciel & Naoto | ? |
---|---|---|
サヤ
そのお話はもう……聞き飽きましたので……。 |
Saya | |
キイロ
え……あ……なに……? |
Kiiro | |
サヤ
喰らえ……ソウルイーター。 |
Saya | |
Es
止めてください、サヤさん!! |
Es | |
Es
くぅっ…… |
Es | |
キイロ
あ、あああ、あ……。 …………、……………………。 |
Kiiro | |
ナオト
キイロ!! |
Naoto | |
サヤ
ああ……やはり。 あなたもまた、大きな力を持っていたのですね。 |
Saya | |
サヤ
胸の内が温められるようです。 |
Saya | |
シエル
サヤ……さん? どうして、キイロさんを……。 |
Ciel | |
サヤ
おや。異なことを。緋鏡キイロは兄様に刃を向ける敵。 であれば、仕留めてなにがおかしいのですか? |
Saya | |
シエル
いえ、そうではなくて。 |
Ciel | |
ナオト
お前……なんでキイロを殺した!? 操られてたんじゃ……なかったのか!? |
Naoto | |
Es
シエルさん。計測を。 |
Es | |
シエル
はい。……感知……計測。照合。認識。 輝弥サヤさんの精神波長、先程から何も変わってはいません……。 |
Ciel | |
冥
では、まだ洗脳されているということか!? |
Mei
So she's still brainwashed!? | |
サヤ
異なことを……私は『操られている』だなんて、申し出た覚えは ありませんよ。 |
Saya
What a strange thing to say...I don't recall saying I was ever "being controlled." | |
サヤ
緋鏡キイロとて、私を『操っている』だなどとは 一言も申しておりませぬ。 |
Saya
Nor do I recall Kiiro ever saying she was "controlling" me. | |
ナオト
な……た、確かにそうだけど……でも、じゃあ、さっき 問答無用で襲いかかってきたのはなんだったんだよ! |
Naoto
W-well, yeah, but….then, what was up with earlier? You weren't even holding back! | |
ナオト
明らかに様子がおかしかっただろうが! いやそもそも、なんだってラケルを殺そうとしたんだ!? |
Naoto
There was clearly something strange about you! To begin with, why were you trying to kill Raquel!? | |
サヤ
質問の多い兄様ですこと。 |
Saya
My brother has so many questions to ask. | |
サヤ
なぜラケルさんを殺そうとしたか、ですか? 質問を質問でお返しして申し訳ありませんが…… |
Saya
Why did I try to kill Raquel? I'm sorry to answer a question with a question, but… | |
サヤ
殺せるのですか? その吸血鬼は。 |
Saya
Did I try to kill her? That vampire? | |
サヤ
その吸血鬼の生命は兄様そのものです。 |
Saya
That vampire's life is my brother himself. | |
サヤ
なのに『何故』私が殺さなければならないのでしょう? |
Saya
So why would I try to kill her? | |
サヤ
何故『そんなやり方』で 兄様を殺さなければならないのでしょうか? |
Saya
Why would I try to kill my brother in "that way?" | |
サヤ
……私は今まで一度もラケル=アルカードさんを 『殺そう』などと思った事はありませんよ。 |
Saya
…I never once thought I was trying to kill Raquel Alucard. | |
ナオト
……サヤ。 |
Naoto
...Saya. | |
サヤ
ただ……その『魂』を頂戴できればと……。 |
Saya
But...if I can just take in that vampire… | |
サヤ
そうすれば兄様と一つの命で繋がれる…… 私が死ねば……兄様も死ぬ……あぁ……なんて素敵な事でしょう。 |
Saya
Then my life and my brother's life will become one.... If I die...my brother will die, too. ...Ah, what a wonderful thing. | |
サヤ
なのに酷いお話です……魂ごと消えてしまわれるなんて。 |
Saya
Yet something horrible happened...the soul disappeared entirely. | |
サヤ
でも……おかげで楽しい思いもできました。 兄様と、夜毎夜毎の化け物退治……。 |
Saya
But thanks to that, I was able to make some good memories. Night after night, exterminating bugs with my brother…. | |
サヤ
とても貴重な経験でございます……このままラケルさんが 目覚めなければと……本気で思うようにもなりました……。 |
Saya
It was an incredibly valuable experience….If only Raquel hadn't woken up...then everything would have gone as I wished…. | |
サヤ
本当に……このまま永遠に……。 |
Saya
For all eternity…. | |
1: 輝弥サヤが…… |
1: Terumi Saya is... | |
シエル
では、私たちは最初から観測者と行動を共にしていたと いうことですか? |
Ciel
So, we've been cooperating with the Observer this whole time? | |
ラーベ
そうなるな。 |
Raabe
I suppose that's how it is. | |
ラーベ
ラケル=アルカードを『殺す』ことなく、生き続ける そのための『アラクネ』だったか……。 |
Raabe
Rather than killing Raquel Alucard, Arakune was here to help you continue to survive…. | |
ラーベ
蟲の集めた生命力を喰っていたのはお前だな……輝弥サヤ。 |
Raabe
You were the one eating the life force collected by the bugs...Terumi Saya. | |
シエル
……窯の出現……いえ、存在を感知しました。 サヤさんが観測者で間違いないと思われます。 |
Ciel
The Cauldron has appeared...no, its existence has been confirmed. I believe there is no mistake Saya is the Observer. | |
ナオト
嘘だろ……。 |
Naoto | |
ナオト
なあ、ちょっと待ってくれ、 観測者はキイロだったんじゃねぇのかよ!? |
Naoto | |
ラーベ
間違いなく……輝弥サヤが観測者だ。 |
Raabe | |
冥
そう、なのか? 輝弥……? |
Mei | |
サヤ
さて。私も今の今まで、忘れておりましたが……。 |
Saya | |
サヤ
ですが、そう指摘されてみると……ええ、ええ。 どうしてでしょう。おっしゃる通りかもしれません。 |
Saya | |
サヤ
観測者……。その言葉が実際にどのようなものを意味するのか、 これまでは曖昧でありましたが。しみるように理解できます。 |
Saya | |
サヤ
ああ……そして、そうなのだと理解すれば、 なにもかもに納得いたします。 |
Saya | |
サヤ
そうでしたか。まあ、まあ。 なんということでしょう。 |
Saya | |
サヤ
この世界は、私の |
Saya | |
ナオト
……嘘をついてるようには……見えねぇな。 いや。お前は嘘をついたりはしねぇ。 |
Naoto | |
ナオト
特に、こういうことではな。 |
Naoto | |
サヤ
でも、兄様は未だ信じがたいお気持ちでいらっしゃる。 でしたら……論より証拠と参りましょう。 |
Saya | |
シエル
どういうことですか? |
Ciel | |
サヤ
ご覧いただくのです。 |
Saya | |
サヤ
この世界の禍々しき物は、どのような姿でしたか? あなた方を脅かす者は、どのような形でしたか? |
Saya | |
サヤ
きっとこのようでありましたでしょう!? |
Saya | |
Es
これは……! |
Es | |
ラーベ
我々にとっての敵対存在を、 自在に呼び出してみせているというわけか……。 |
Raabe | |
ラーベ
おいレイ、 もう一度クラヴィスを喚び出せないか? |
Raabe | |
1: ……どうやって? |
1: | |
ラケル
お父様の手を煩わせるまでもないわ。 私がいるでしょ? |
Raquel
No need to involve Father in this. I am here, am I not? | |
冥
お、おい、大丈夫なのか? |
Mei | |
ラケル
……守ってもらってばかりでは、癪に障るもの。 寝起きの運動には丁度いいわ。 |
Raquel | |
ナオト
そいつは心強いぜ。 よし、俺の体もすっかり元通りだ。行くぞ! |
Naoto |
第13節 覚醒②/ 13. Awakening - 2
Summary | |
---|---|
観測者、サヤの求めた願望は『共に生きる命』
だった。自分を生き長らえさせる世界を守る 為、サヤは事象干渉を使い、時を巻き戻した。 |
Saya's wish as the Observer was for "life to live together." To protect a world where she can extend her lifespan, Saya uses Phenomenon Intervention to turn back time. |
シエル
対象の制圧を完了しました。 |
Ciel |
Es
……あれだけの数の敵を具現化したというのに、 サヤさんの力には少しの衰えもないようですね。 |
Es |
冥
これが観測者の力というわけか……信じられんな。 |
Mei |
サヤ
あら……この程度で驚いて頂けるなんて。 |
Saya |
ラケル
まるで新しいおもちゃを手に入れた子供ね。 |
Raquel |
サヤ
己の思うままに世界を変えられるとあらば、 はしゃぎもいたします。 |
Saya |
サヤ
ですが、少々はしたのうございましたね。 この程度の力では、まだ全てを完璧には彩れませんのに。 |
Saya |
サヤ
やはり……もっと力が必要です。 |
Saya |
サヤ
この世界が私の願いのままに歪むのであれば、もっと、 もっと思うさま歪めてみとうございます。 |
Saya |
サヤ
まだ足りぬのです……ラケル=アルカード。 あなたの『魂』をもって、それを補わせてくださいませ。 |
Saya |
ナオト
冗談じゃねえ、ふざけんな! |
Naoto |
サヤ
兄様……。 |
Saya |
ナオト
アラクネだの蟲だのから、他人の命めいっぱい奪って、 レイチェルからも奪おうとして…… |
Naoto |
ナオト
キイロまで犠牲にして、次はラケルだってか!? |
Naoto |
ナオト
次から次へと人の命奪いつくして、それじゃまるで お前のドライブそのままじゃねぇか! |
Naoto |
ナオト
なんだよ……わかんねぇよ! |
Naoto |
ナオト
そうまでしてなにがしたいんだよ! 人の命かき集めてどんな世界作りたいって言うんだよ!? |
Naoto |
サヤ
未来……と言っても理解しては頂けないのでしょうね……。 |
Saya |
ナオト
未来? なに言ってんだ、お前が観測者だってんなら、 ここで起こってることは全部お前が望んだことなんだろ!? |
Naoto |
ラーベ
違うぞ。観測者は意識的に世界の在り方を望んで、 1からその形を構成するわけではない。 |
Raabe |
ラーベ
無意識のうちにある欲望や願望を元に構築する……。 |
Raabe |
ラーベ
観測者は持ちうる『情報以上の世界』を創る事は出来ない。 |
Raabe |
ナオト
それでも、サヤがこの世界を作ったことに 変わりはねぇんだろ。 |
Naoto |
ナオト
蟲もアラクネも、ラケルが眠ったことも、ラケルが狙われる ことも、全部あいつの中にあった願望からできてたんだろ! |
Naoto |
ナオト
なのに未来……って。……サヤ……お前……まさか。 |
Naoto |
サヤ
生きる……。共に生きる『命』が欲しゅうございました。 |
Saya |
冥
なに……? |
Mei |
サヤ
この脆弱な体を動かし続け、軟弱な呼吸を保ち続け、 貧弱な血液を回し続けるにこと足りる、 |
Saya |
サヤ
有り余るほどの命が欲しい。 |
Saya |
サヤ
|
Saya |
ナオト
…………。 |
Naoto |
ラーベ
……なるほど。これがレイチェル=アルカードが言っていた、 観測者の『限界』か。 |
Raabe
...I see. So this is what Rachel Alucard meant by the Observer's "limit." |
1: ……限界? |
1: Limit? |
ラーベ
言っていただろう。この世界が観測者の願望でできている以上、 限界があると。 |
Raabe
I said this earlier: This world was created by the Observer's wishes, but it has a limit. |
ラーベ
輝弥サヤの場合は、自分の命だ。 |
Raabe
In Terumi Saya's case, it was her own life. |
ラーベ
他者の命で補わなければならないほど、尽きかけている…… という事実を、彼女は観測者でありながら変えられなかった。 |
Raabe
To be worn away to the point of needing to take in others' lives...that truth was something she could not change, even as an Observer. |
Es
ですが……では、 本来の世界でのサヤさんの命は……。 |
Es
Then...then Saya in the old world would have…. |
ラーベ
何時尽きても、不思議ではない状態なのだろうな。 |
Raabe
Exhausted herself at any hour, and it wouldn't have been strange. |
シエル
死ぬ、ということですか? |
Ciel
You mean, death? |
サヤ
まあ、酷い事を言いますね、私は生きておりますよ。 この新川浜で、皆様と共に……今も、今までも……。 |
Saya
What a terrible thing to say. Am I not alive right now? Here, in Shin Kawahama, together with everyone...right now, up until now… |
サヤ
そして……これからも。 |
Saya
And...from now on, as well…. |
ナオト
サヤ……。 |
Naoto
Saya... |
サヤ
同情してくださるのですか、兄様? でしたらどうか、その吸血鬼をサヤにくださいませ。 |
Saya |
ナオト
そんなこと、できるわけねぇだろ!! |
Naoto |
サヤ
ご安心ください、頂戴したいのはその魂だけ……。 お身体の方は永遠に眠り続けて頂いて構いません。 |
Saya |
サヤ
お世話は……このサヤが責任を持って致します。 |
Saya |
ラケル
やっぱり。貴女の狙いは、私とナオトのライフリンクなのね。 |
Raquel |
サヤ
ふっ……あっはっは、そうですとも、その通り! |
Saya |
サヤ
あなたが、この卑しい吸血鬼が、 兄様を人ならざる者に変えてしまった。 |
Saya |
サヤ
我等の身に流れる輝弥の血に、あなたの血が割り込んできた! |
Saya |
サヤ
兄様は私の兄様なのに! なにが命の繋がりですか!! |
Saya |
サヤ
私以外の『何か』が兄様の命を縛るなんて…… 許せませぬ!! |
Saya |
サヤ
断じて否です!! |
Saya |
サヤ
ラケル=アルカード……その魂、私にくださいな……。 |
Saya |
サヤ
そうすれば…… そうすれば兄様は、ずうっと私と一緒にいてくださる。 |
Saya |
サヤ
この世界で、これまでそうだったように。 共に語り、共に鍛え、共に駆け、共に戦ってくださる。 |
Saya |
サヤ
共に生きてくださる。 ただの……『普通の兄妹』のように。 |
Saya |
ナオト
てめぇ……馬鹿か。そんなことしなくたって、俺は……! |
Naoto |
サヤ
私と一緒にいてくださいますか? ……いいえ。そうはならないのです。その吸血鬼がいる限り。 |
Saya |
サヤ
だって、だからこの世界は『こう』なのですから。 |
Saya |
ナオト
サヤ……! |
Naoto |
冥
…………。 |
Mei |
サヤ
冥様まで、そのようなお顔をなさって。憐れんでくださるの ですか? 愚かなサヤを。であれば、どうか。 |
Saya |
サヤ
その吸血鬼をくださいませ。それから……そうですね。 レイさん。あなたも。 |
Saya |
1: 僕? |
1: |
1: 私? |
1: |
サヤ
ええ。あなたの力は、とてもお強い。 飲み干せばきっと、私の世界がより完璧になりましょう……。 |
Saya |
サヤ
……更なる未来へと進める可能性も……。 |
Saya |
シエル
それはできません。 |
Ciel |
シエル
レイさんの命も、ラケルさんの命も、 あなたに差し上げるわけにはいかないのです。 |
Ciel |
ラーベ
わかっているだろ。私たちがなにを目的としているのか。 |
Raabe |
サヤ
……そうでした。 あなた方は私の世界を破壊しに来たのですよね。 |
Saya |
シエル
正確には窯を破壊し、観測者をファントムフィールドから 解放することです。 |
Ciel |
シエル
この世界と観測者の接続を断ち、世界がこれ以上、 『個』の観測によって変えられてしまわないようにします。 |
Ciel |
サヤ
小難しいお話は結構。 私から、この世界を取り上げるということでございましょう? |
Saya |
サヤ
つまり……この私に『死ね』と。 |
Saya |
シエル
……これはあるべき世界ではありません。 サヤさんの個人的な願望により認識された、歪められた世界です。 |
Ciel
...This is not how the world should be. It's a warped world that recognized Saya's personal desires. |
ラーベ
いわば、偽りの世界だ。 |
Raabe
In other words, a fake world. |
ラーベ
このままだと歪みはさらに大きくなり、やがてこの世界が 持つ可能性を全て食い潰して、どこにも行けないまま終わる。 |
Raabe
If the distortion grows even bigger, it will eventually devour all other possibilities, and this world will simply meet its end. |
ラーベ
そして、その歪みはこの世界『だけ』の問題じゃない……。 本当に何もかも食い尽くす怪物が産まれるぞ……。 |
Raabe
And the problem isn't limited to this world "alone." ...A real monster that devours everything will be born…. |
サヤ
それと私に何の関係が? |
Saya |
冥
…………。 |
Mei |
冥
……輝弥。お前の気持ちがわかるとは言えん。 |
Mei |
冥
ラーベの言うことを全てそのまま信じたわけじゃない。 正直、今でも意味がわからんとも思っている。 |
Mei |
冥
だが、私の存在自体がお前の言っていることを否定している。 悪いが、お前の望むものを、叶えてやることはできない。 |
Mei |
Es
どうか退いてください、サヤさん。 あなたに剣を向けたくありません。 |
Es |
Es
きっと誰よりも、ナオトさんがそう思っているはずです……。 |
Es |
サヤ
ならば退くのはそちらのほうです、エスさん。 |
Saya |
サヤ
私は譲りませんよ。この世界を愛おしく思っております……。 |
Saya |
サヤ
皆様と共に過ごし、共に学舎へ通い、寝食を共にする……。 |
Saya |
サヤ
そして、私を生き長らえさせ、兄様と共に過ごさせてくれる 素晴らしい世界です。 |
Saya |
ナオト
……………。 |
Naoto |
サヤ
それを壊そうなどともってのほか。認めるわけにはいきませぬ。 そのようなこと、私は嫌いです。 |
Saya |
サヤ
ええ。大嫌い。 |
Saya |
シエル
っ!? |
Ciel |
レリウス
…………ふむ。なるほど。『このタイミング』か。 |
Relius |
ヴァルケンハイン
何を言っているレリウス! 観察がしたいのなら、叩き潰してからにしろ! |
'Valkenhayn |
レリウス
それではまるで意味がない……。 止まっている状態のものなど、いくらでも再現できる。 |
Relius |
ヴァルケンハイン
ええい……いつまでもお前に付き合っていられるか! もういい加減に、全員叩きのめすぞ! |
'Valkenhayn |
ナオト
ぐぅっ……! なんでこいつら……さっきまで完全に ぶっ倒れてたじゃねぇか! |
Naoto |
ラーベ
事象干渉を使ったか……。 |
Raabe
So she's using Phenomenon Intervention now... |
ラーベ
まずいぞ。このまま事象干渉を自在に操れるようになれば、 サヤを倒すことはほぼ不可能になる。 |
Raabe
This is bad. If Saya becomes able to control Phenomenon Interventions on her own, she'll be practically undefeatable. |
ナオト
なっ……え、じゃあ、どうすんだよ!? |
Naoto |
1: 任せて! |
1: Leave it to me! |
ラーベ
今ならまだレイの力で事象干渉を 抑えることができる。 |
Raabe |
ラーベ
早くなんとかしろ、ということだ。 |
Raabe |
ラーベ
具体的に言うと、輝弥サヤを倒せ。 |
Raabe |
冥
……やはりそうなるな。 |
Mei |
Es
戦うしかないのでしょう……。 |
Es |
冥
……私は引き下がれない。 お前はどうなんだ、黒鉄? |
Mei |
ナオト
聞くなよ。 |
Naoto |
ナオト
サヤは俺の妹なんだぞ。 ……サヤを止めるのは俺だ。 |
Naoto |
冥
よく言った。 ……だが、その前にヴァルケンハインとレリウスか。 |
Mei |
冥
こいつら相手に、我々でやれるのか? |
Mei |
1: でも、やるしかない |
1: |
シエル
援護します。 |
Ciel |
シエル
戦闘態勢に移行します。目標、補足! |
Ciel |
第13節 覚醒③/ 13. Awakening - 3
Summary | |
---|---|
まるでごく普通の日常会話をするナオトとサ
ヤ。だがサヤは決めたことを曲げることはな く、シエル達は戦闘を開始する。 |
Saya and Naoto converse as if it's just another day. But Saya refuses to back down, and Ciel and the others prepare for battle. |
サヤを倒し、窯の破壊を成功させるシエル達。
世界が再び未来へ進むまで少し時間がある。 サヤが救われる可能性もあるかもしれない。 |
They defeat Saya and succeed in destroying the Cauldron. There is still some time before the world once again proceeds towards the future. There is a chance that Saya can be saved. |
シエル
……対象の消滅を確認。 |
Ciel |
サヤ
馬鹿な……消えるだなんて……。 これは……。 |
Saya |
サヤ
おのれ……おのれ、レイ。 その目、その耳、その命。憎らしや。 |
Saya |
サヤ
ならば小細工は捨てましょう。 この腕、この刃でもって、お命頂戴するまで! |
Saya |
ナオト
そういうわけにはいかねぇぞ、サヤ。 |
Naoto |
サヤ
……兄様。あなたまで邪魔をなさいますな。 |
Saya |
ナオト
なあ……もうやめろ。もうやめにしよう。 |
Naoto |
サヤ
嫌です。ここは私の世界。 たとえ兄様であっても、それを壊すのであれば切り捨てます。 |
Saya |
ナオト
めちゃくちゃじゃねぇか。 お前、俺と一緒にいたかったんじゃねぇのかよ。 |
Naoto |
サヤ
ええ、そうです。なので先ずは動けなくし、それからじっくりと 時間をかけて殺しますので、ご安心を……。 |
Saya |
ナオト
安心出来ねぇよ!! |
Naoto |
サヤ
瞬殺がお望みですか? それだとサヤが楽しめません。 |
Saya |
ナオト
どっちもゴメンだ!!! |
Naoto |
サヤ
ふふふっ。 |
Saya |
ナオト
……サヤ、悪い。 |
Naoto |
ラケル
ナオト、なにをやっているの。 あの子が自分で決めたことを、今更覆すとは思えないわ。 |
Raquel |
ナオト
……わかってるよ。 レイ、力を貸してくれ。あいつを止める。 |
Naoto |
ナオト
サヤをこのままにはできねぇ。 |
Naoto |
冥
同感だ。それが……輝弥の願望を砕くことになったとしてもだ。 |
Mei |
Es
この世界に、私が導かれた意味……『蒼』に従いましょう。 |
Es |
1: サヤを止めよう |
1: |
サヤ
ああ……なんということでしょう。レイさん。 あなたのせいで、私の世界は台無し。 |
Saya |
サヤ
大事な人も、穏やかな時間も、愛しい夢も……みんな台無し。 今日も台無し。明日も台無し。明後日も明々後日も台無し。 |
Saya |
サヤ
あなたが私から奪うおつもりならば、 私は守り抜いてみせましょうぞ。 |
Saya |
サヤ
ここは私の世界。私のもの! |
Saya |
サヤ
これ以上、汚らわしい手で 私の世界を蹂躙することは許しません! |
Saya |
シエル
対象の戦闘レベルの上昇を確認。 対象の制圧を開始します。 |
Ciel |
ナオト
サヤ……! |
Naoto |
サヤ
……ああ……なんとあっけない……なんと儚い……。 |
Saya |
サヤ
ここまでだというのですか……私の世界……私の……。 |
Saya |
ナオト
……少し休めよ、サヤ。 |
Naoto |
サヤ
……兄様……。嫌ですよ。それは……死ぬのと同じ。 |
Saya |
サヤ
ねえ、兄様。死ぬのであれば、どうか、どうか。 一緒に死んでくださいませ……。 |
Saya |
冥
輝弥!? お、おい、まさか死んだのか……!? |
Mei |
Es
……いいえ。気を失っているようです。 生命活動に問題はありません。 |
Es |
ナオト
ざけんな……死ぬ気もねーけど、お前を死なせる 気もねーよ。ったく……面倒かけやがる。 |
Naoto |
ナオト
おい、観測者は倒したぞ、これからどうするんだ? |
Naoto |
ラーベ
決まっているだろ。窯を破壊する。 |
Raabe |
シエル
窯の場所はすでに特定出来ています。 |
Ciel |
ナオト
そっか。なら、俺もつれていってくれないか。 |
Naoto |
ナオト
……サヤの |
Naoto |
ラーベ
ついてくる分には、構わないぞ。好きにしろ。 |
Raabe |
ナオト
ありがとな。んじゃ……よっ、と。 |
Naoto |
ラケル
その子もつれていくの? |
Raquel |
ナオト
当たり前だろ。 |
Naoto |
ラケル
……大丈夫なの? |
Raquel
...Is that alright? |
ナオト
え? 何がだ。 |
Naoto
Huh? Is what alright? |
冥
……黒鉄。 輝弥はこの世界の観測者なのだぞ……。 |
Mei
...Kurogane. Saya's this world's Observer, you know… |
ナオト
それはそうだけど……やっぱマズイか、レイ? |
Naoto
That's true, but...So is this bad, Rei? |
1: ど……どうでしょう? |
1: I-Is it? |
ラーベ
安心しろ、輝弥サヤに意識が有ろうが無かろうが、 |
Raabe
It's fine, whether Terumi Saya is conscious or not. |
ラーベ
敗北を認めた時点で、 現状の上位観測者はレイだ。 |
Raabe
The moment she recognizes her own loss, the superior Observer becomes Rei. |
1: え、そうなの!? |
1: O-oh, really!? |
ラーベ
なにもレイがこの世界を 観測しているわけじゃない。 |
Raabe
It doesn't mean that Rei is Observing everything about this world. |
ラーベ
輝弥サヤの観測能力を抑えているだけだ。 |
Raabe
It just suppresses Terumi Saya's Observation. |
シエル
なのでご安心ください、冥さん。ラケル……さん? |
Ciel |
ナオト
……ああ、あんま気にすんな。 それより早く行こうぜ、窯ってやつを壊しにさ。 |
Naoto
...Yeah, don't worry about it too much. Let's hurry and get to destroying that Cauldron thing. |
冥
お、おい、ちょっと待て。先に聞きたい。 窯を破壊したら……私たちは、どうなるんだ? |
Mei
Hey, wait a sec. Before you do that, I have something I want to ask. When the Cauldron is destroyed...what happens to us? |
ラーベ
世界は観測者の |
Raabe
The world is roused from the Observer's |
ラーベ
といっても、即座に急激な変化はない。同じ場所をぐるぐる 回っていた世界が、前へ進むために一旦立ち止まるような状態だ。 |
Raabe
But that's not to say the change will be immediate or sudden. For a world that's been rolling around for a while to move forward, it'll need to stand still for a bit. |
ラーベ
それがどれくらい続くかは不確かだが…… やがてお前たちは、それぞれあるべき場所に戻るだろう。 |
Raabe
It's uncertain how long that'll take, but...eventually, you will all return to where you belong. |
Es
圧縮されていた時間軸も、戻っていくのですね。 |
Es
The compressed timeline will also return to normal, won't it? |
ラーベ
そのはずだ。 |
Raabe
It should. |
ナオト
時間軸? なんだそれ? |
Naoto |
Es
なんでもありません。ナオト。 |
Es |
ラケル
……観測者は、どうなるの? |
Raquel |
ラーベ
どうともならん。観測者ではなくなるだけだ。 そいつはただの『輝弥サヤ』として存在し続ける。 |
Raabe |
ラケル
……ですって。 |
Raquel |
ナオト
そうか……。ちょっとほっとしたよ。 |
Naoto |
ラーベ
さあ、質問は以上か? だったら窯へ移動するぞ。 |
Raabe |
Es
私もご一緒させてください。 |
Es |
冥
ついでだ、私も行こう。少し興味もあるしな。 |
Mei |
ラケル
…………。 |
Raquel |
ラケル
……げ、下僕が行くのだから……わ、私も同行するわ。 は、はや、く、案内し、なさい。 |
Raquel |
シエル
ラケルさん? 先程から気になっていたのですが どうしてナオトさんの後ろに隠れてしまうのですか? |
Ciel |
ナオト
あ。ようやく冷静になったか。 こいつ、シエルくらいの女の子と話すの苦手なんだよ。 |
Naoto |
ナオト
ここには冥もエスもいるしな。ビビッて縮こまってんだ。 |
Naoto |
ナオト
あ。ようやく冷静になったか。 こいつ、シエルくらいの女の子と話すの苦手なんだよ。 |
Naoto |
ナオト
ここには冥もエスもいるしな。ビビッて縮こまってんだ。 |
Naoto |
ナオト
あぁ……でもレイにはちょっと 耐性があるみたいだけどな。 |
Naoto |
ラケル
だ、誰がビビるものですか! いいから早く案内なさい、下僕! |
Raquel |
ナオト
俺が場所なんか知るかよ。 ……なあ、窯ってのはどこにあるんだ? |
Naoto |
ラーベ
おいおい……遠足じゃないんだぞ……まったく。 |
Raabe |
シエル
ではご案内します。 |
Ciel |
ナオト
ここは……新川浜の駅……か? |
Naoto |
冥
その地下に、こんなところがあったとはな……。 手がけたのは大方、御剣機関か。 |
Mei |
ラーベ
線路と駅の真下に作られた空間だな。 |
Raabe |
ラーベ
生命力をかき集めたがるファントムフィールドの窯だ、 人の多い場所…… |
Raabe |
ラーベ
学校か、あのでかいホテルか、駅のどこかだろうとは 思っていたが、これほどしっかり設備が整えてあるとはね。 |
Raabe |
ラーベ
よくできている。 |
Raabe |
ナオト
感心するところかよ。 |
Naoto |
Es
ナオト。サヤさんを背負う役目を、代わりましょうか? ずっと背負っています。 |
Es |
ナオト
いいんだよ。こいつ痩せてっから。軽いし。 |
Naoto |
ラケル
やせ我慢。 |
Raquel |
ナオト
……本当に、軽いんだよ。 |
Naoto |
Es
…………。 |
Es |
ラケル
……そう。 |
Raquel |
シエル
この先です。 |
Ciel |
ナオト
うわっ、なんだこれ……! |
Naoto |
冥
これが……窯……。 |
Mei |
ナオト
……これが、サヤにこんな世界を作らせたのか? |
Naoto |
ラケル
……窯に意思はないわ。 ここにあるのは、膨大なエネルギーだけよ。 |
Raquel |
Es
これを、破壊するのですね。 |
Es |
シエル
はい。 |
Ciel |
ナオト
壊す前にひとつ確認させろ。 ……本当にサヤは大丈夫なんだろうな? |
Naoto |
ラーベ
輝弥サヤはただの人に戻る……そこから先にどうなるか なんて、誰も保証はしてくれない『ただの人間』にな。 |
Raabe |
サヤ
…………。 |
Saya |
ナオト
保証はねぇか……。 なら少なくとも、最後まで側にいてやらねぇとな。 |
Naoto |
ナオト
俺はこいつの兄貴なんだし。 |
Naoto |
1: ナオト…… |
1: |
ナオト
んで、こんなとんでもねぇもの、どうやってぶっ壊すんだよ? |
Naoto |
シエル
窯に物理的な干渉は通用しません。 ですが、私の持つ魔道書ならそれが可能です。 |
Ciel |
ラケル
窯を破壊できるほどの魔道書って……え? まさか……。 |
Raquel |
ラーベ
気にするな、シエル、やれ。 |
Raabe |
シエル
……第666拘束機関解放。次元干渉虚数方陣展開。
|
Ciel |
シエル
……窯の破壊を完了しました。 |
Ciel |
ナオト
す、すげえな、なんだ今のは? |
Naoto |
ラケル
ブ……ブレイ……ブルー。 |
Raquel |
ナオト
ん? どうしたんだラケル? |
Naoto |
ラケル
……なんでもないわ。 少し……いえ、とても驚いただけ。 |
Raquel |
ラーベ
……さて、では私たちは戻るとしようか。 今ここでやるべきことは終わった。 |
Raabe |
ラーベ
……悪いな吸血鬼。ここでの物語は終わりだ。 お前が『干渉』することじゃない。 |
Raabe |
ラーベ
あぁでも、我が船に検体として来ていただけるのなら 大いに歓迎しよう。 |
Raabe |
ラケル
お断りだわ。 |
Raquel |
ラーベ
残念だ……。 レイ、シエル、帰還するぞ。 |
Raabe |
シエル
了解しました。 |
Ciel |
冥
なんだ、もう行くのか。 |
Mei |
シエル
私たちはこの世界に本来存在しない異物です。 |
Ciel
We're Contaminants who didn't originally exist in this world. |
Ciel
And additionally, Rei is currently this world's superior Observer. | |
シエル
世界に影響を及ぼす前に、速やかな退去が推奨されます。 |
Ciel
It is recommended we leave quickly, before part of the world becomes affected. |
ナオト
んじゃ、お別れか。 |
Naoto |
ナオト
難しい理屈はわかんねぇけどさ、 もしまた顔出せる機会があったら、遊びに来いよ。 |
Naoto |
ナオト
そういう簡単なものじゃないんだろうけど。なんつーか。 また会おうぜ。どこでもいいから。どっかで。 |
Naoto |
冥
そうだな。私にも挨拶くらいしに来い。茶菓子を持ってな。 |
Mei |
Es
お待ちしています。きっとまた会えます。蒼の導きがあれば。 |
Es |
ラケル
私はほとんど眠っていたから、 あまり貴方たちと接する時間もなかったけれど……。 |
Raquel |
ラケル
助けてくれて、ありがとう。 |
Raquel |
ラケル
ご褒美をあげる時間は……なさそうね。 またの機会にしておくわ。 |
Raquel |
ラケル
それまでせいぜい、役目に励みなさい。 |
Raquel |
ナオト
お前なあ、世話かけた側のくせに、偉そうに。 |
Naoto |
ラケル
偉そうなのではないわ。私は高等なの。 それに相応しい振る舞いと発言なだけよ。 |
Raquel |
ナオト
はいはい、そーですか。 |
Naoto |
ナオト
……だってよ。こいつ、こういう感じなんだよ。 でも別に悪意があるわけじゃねぇんだ。 |
Naoto |
ナオト
こいつなりに、純粋に感謝してんだよ。 それから、これからも頑張れってよ。 |
Naoto |
ラケル
わ……私は、ほとんど眠っていたから…… あまり貴女たちと接することができなかったけど……。 |
Raquel |
ラケル
その……私を助けたこと、褒めてあげ、ても、いいわ。 |
Raquel |
ラケル
……ご褒美をあげる時間はなさそうだから、 またの機会にしておくけれど……。 |
Raquel |
ラケル
そ、それまでせいぜい、役目に励むことね。 |
Raquel |
ラケル
……………………。 ……と、伝えなさい。ナオト。 |
Raquel |
ナオト
お前なぁ……こんなタイミングで、 思い出したようにコミュ障発揮すんなよ!! |
Naoto |
ラケル
べ、別にそういうのではないわ。 ちょっちょっと意識しただけよ!! |
Raquel |
ラケル
もぉ、いいから、伝えなさい……。 |
Raquel |
シエル
私やレイさんとお話するのは、 やはり苦手なようですね。 |
Ciel |
ナオト
苦手っていうか、緊張しすぎなんだよ。 |
Naoto |
ナオト
あんたらに、感謝してるってさ。 あと、これからも頑張れって。 |
Naoto |
サヤ
…………。 |
Saya |
ナオト
こいつには、俺から全部話しておくよ。 |
Naoto |
1: ……ナオト |
1: |
ナオト
何いってんだ、別にお前を恨んじゃいねぇよ。 |
Naoto |
ナオト
……たぶん、俺たちの居場所をお前が守ってくれたんだ。 |
Naoto |
ナオト
だから、サヤも……必ず、必ず救う方法を見つける。 |
Naoto |
1: ありがとう |
1: |
シエル
ナオトさんなら、できると思います。 |
Ciel |
ナオト
シエルもありがとな、お前も無理……すんなよ。 |
Naoto |
シエル
お気遣いいただきありがとうございます、ナオトさん。 |
Ciel |
ラーベ
さて、時間だ。 |
Raabe |
カガミ
よーしご苦労! 任務無事達成おめでとう! よくやってくれたね。心身に変調はないか? |
Kagami |
シエル
問題ありません。 レイさんはどうですか? |
Ciel |
カガミ
バイタルに問題なし。大丈夫そうだな。 とりあえずあとでメディカルチェックは受けてもらうとして……。 |
Kagami |
カガミ
これでファントムフィールド『新川浜』から 観測者は解放された。 |
Kagami |
カガミ
世界はこれ以上歪むことなく、本来あるべき姿に ゆっくり戻っていくことだろう。 |
Kagami |
カガミ
お前たちの功績だぞ、レイ。 |
Kagami |
シエル
カガミさん。今回のファントムフィールドについて、 質問があるのですが。 |
Ciel
Ms. Kagami. I have a question about the Phantom Field this time. |
カガミ
ああ。時間軸の圧縮のことか。 |
Kagami
Yeah. About the timeline's compression, right? |
シエル
はい。確か、何年分かの時間が圧縮されている……という ようなお話でしたが、結局あれはどういうことだったのですか? |
Ciel
Yes. Something was said about some years' worth of time being compressed...but what was that about, in the end? |
シエル
ナオトさんや冥さんが、ご自分を異物だと感じていたことと 関わりがあるようでしたが。 |
Ciel
It seemed to be related to why Ms. Mei and Mr. Naoto thought that they were Contaminants. |
カガミ
うむ。まあ概要は、エスとの話の通りなんだが…… 改めて説明するとだ。 |
Kagami
Indeed. The framework is basically the same as what was covered with Es, but...how about I explain it again? |
カガミ
あのファントムフィールドは『新川浜』という場所には 明確に『何時』という断定が出来ないんだ。 |
Kagami
Exactly "when" in Shin Kawahama that Phantom Field took place can't be specifically determined. |
カガミ
共通事項として、数年間……いや、おそらく数十年間だな。 それくらいの幅のある時間が、収束していたんだよ。 |
Kagami
What they have in common is a distance of several years...or probably several decades, or some period of time around that, that have been compressed together. |
カガミ
だから数年前に新川浜に住んでいた人間と、数十年後に新川浜に 住む人間が、同じ時期に住んでいたかのように存在していた。 |
Kagami
That's how people living many years in the past in Shin Kawahama and those living many years in the future in Shin Kawahama came to live there together as if from the same time period. |
カガミ
……これは私の想像だが、黒鉄ナオトと天ノ矛坂冥は、 知り合いではあるが、年代が違うんじゃないかな。 |
Kagami
….This is just conjecture, but Kurogane Naoto and Amanohokosaka Mei may have known each other, but were from different eras. |
カガミ
だからどちらも、自分の暮らしていた世界とは違う。 なんて、感じていたんだろう。 |
Kagami
That's why both of them thought the world was different from the one they used to live in. They felt it, in a way. |
シエル
なるほど……。 |
Ciel
I see…. |
カガミ
恐らく、観測者の輝弥サヤ。彼女の存在していた……。 |
Kagami
Likely, Terumi Saya, the Observer, focused on the timeline she existed in…. |
カガミ
いや、『存在出来ていた』時間軸を中心に、前後数十年 が引き寄せられ、圧縮されていたんだろう。 |
Kagami
Or rather, the timeline she "could have existed in," pulled in several decades before and after that point, and compressed them. |
1: やっぱり…… |
1: Ah-ha. |
カガミ
なんだレイ、気付いていたのか? |
Kagami
What, you already figured it out, Rei? |
シエル
では……あのファントムフィールドはやがて、 圧縮された時間も元に戻るのでしょうか? |
Ciel
Then...the Phantom Field's compressed timeline will return to its original form eventually, right? |
カガミ
最終的にはな。ただ、解放されたファントムフィールドは、 世界としては停滞している状態にあるし。 |
Kagami
Eventually, yeah. It's just that Phantom Fields that have been released are, in terms of the world, in a state of stagnation. |
カガミ
今回は特殊だから、元に戻るには少し時間がかかるだろうね。 |
Kagami
This time was an exception, so it'll take some time for it to return to normal. |
1: よかった…… |
1: |
カガミ
……冷たいことを言うようだが、あの輝弥サヤを救うのは 難しいぞ。限りなくゼロに近いと言っていい。 |
Kagami |
カガミ
あのファントムフィールドを構築していた要素は輝弥サヤの 渇望した『生』だ。それが崩れればどうなるか、わかるだろ? |
Kagami |
1: それでも…… |
1: |
シエル
……レイさんはサヤさんを助けたいのですか? |
Ciel |
1: もちろん! |
1: |
カガミ
そういうお前はどうなんだ、シエル? |
Kagami |
シエル
…………わかりません。 |
Ciel |
シエル
ですが、ナオトさんとサヤさんが、笑顔でお話している姿を もう一度見たいとは思います。 |
Ciel |
カガミ
……そうか。 |
Kagami |
カガミ
よし、じゃあ私はこれから、 今回の任務で得られたデータの解析を行う。 |
Kagami |
カガミ
ファントムフィールド内では、時間の圧縮が起こりうる という貴重なデータも取れたことだしな。 |
Kagami |
カガミ
お前たちはまずメディカルチェックだ。 その後、十分に休息を取るように。 |
Kagami |
カガミ
次のファントムフィールドが見つかったら、
また |
Kagami |
カガミ
それまでに、体調を万全に整えておいてくれ。 |
Kagami |
シエル
わかりました。 では、失礼します。 |
Ciel |
シエル
……レイさん。任務、お疲れ様でした。 メディカルルームへご案内します。 |
Ciel |
シエル
……新川浜では、色々なことがありましたね。 時間が圧縮されているという現象は、想定外でした。 |
Ciel |
シエル
それに……素体と呼ばれるものと今回のような形で 接触することも、想定していませんでした。 |
Ciel |
シエル
話したり、戦ったり。なんだか奇妙な感覚でした。 ……そう思うのは、おかしいでしょうか? |
Ciel |
シエル
……おかしいような気がしたので、質問しました。 ですが、この質問もまた、奇妙ですね。 |
Ciel |
シエル
失礼しました。気に留めないでください。 |
Ciel |
シエル
メディカルチェックが終わったら、食事を用意しましょうか? それとも、すぐにお休みになりますか? |
Ciel |
1: 食事がいいな |
1: |
シエル
わかりました。 終わり次第、必要なものをお持ちします。 |
Ciel |
シエル
では、失礼します。 |
Ciel |
シエル
レイさん。 |
Ciel |
シエル
……次の |