Toggle menu
Toggle personal menu
Not logged in
Your IP address will be publicly visible if you make any edits.

Story:BBDW Chapter 4: Difference between revisions

From BlazBlue Wiki
(Added videos for parts 2-1 through 5-6)
m (added remaining videos)
Line 8,763: Line 8,763:
| width="50%" |  
| width="50%" |  
|}
|}
[[File:BBDW Chapter 4 6-1 All.mp4|frameless|center]]
<div class="scrolling-transcript">
<div class="scrolling-transcript">
{|
{|
Line 9,303: Line 9,304:
| width="50%" |  
| width="50%" |  
|}
|}
[[File:BBDW Chapter 4 6-2 All.mp4|frameless|center]]
<div class="scrolling-transcript">
<div class="scrolling-transcript">
{|
{|
Line 9,629: Line 9,631:
| width="50%" |  
| width="50%" |  
|}
|}
[[File:BBDW Chapter 4 6-3 All.mp4|frameless|center]]
<div class="scrolling-transcript">
<div class="scrolling-transcript">
{|
{|
Line 10,170: Line 10,173:
| width="50%" |  
| width="50%" |  
|}
|}
[[File:BBDW Chapter 4 6-4 All.mp4|frameless|center]]
<div class="scrolling-transcript">
<div class="scrolling-transcript">
{|
{|
Line 11,125: Line 11,129:
| width="50%" |  
| width="50%" |  
|}
|}
[[File:BBDW Chapter 4 7-1 All.mp4|frameless|center]]
<div class="scrolling-transcript">
<div class="scrolling-transcript">
{|
{|
Line 11,395: Line 11,400:
| width="50%" |  
| width="50%" |  
|}
|}
[[File:BBDW Chapter 4 7-2 All.mp4|frameless|center]]
<div class="scrolling-transcript">
<div class="scrolling-transcript">
{|
{|
Line 11,964: Line 11,970:
| width="50%" |  
| width="50%" |  
|}
|}
[[File:BBDW Chapter 4 7-3 All.mp4|frameless|center]]
<div class="scrolling-transcript">
<div class="scrolling-transcript">
{|
{|
Line 13,000: Line 13,007:
| width="50%" |  
| width="50%" |  
|}
|}
[[File:BBDW Chapter 4 8-1 All.mp4|frameless|center]]
<div class="scrolling-transcript">
<div class="scrolling-transcript">
{|
{|
Line 13,482: Line 13,490:
| width="50%" |  
| width="50%" |  
|}
|}
[[File:BBDW Chapter 4 8-2 All.mp4|frameless|center]]
<div class="scrolling-transcript">
<div class="scrolling-transcript">
{|
{|
Line 13,777: Line 13,786:
| width="50%" |  
| width="50%" |  
|}
|}
[[File:BBDW Chapter 4 8-3 All.mp4|frameless|center]]
<div class="scrolling-transcript">
<div class="scrolling-transcript">
{|
{|
Line 13,838: Line 13,848:
| width="50%" |  
| width="50%" |  
|}
|}
[[File:BBDW Chapter 4 8-4 All.mp4|frameless|center]]
<div class="scrolling-transcript">
<div class="scrolling-transcript">
{|
{|
Line 14,227: Line 14,238:
| width="50%" |  
| width="50%" |  
|}
|}
[[File:BBDW Chapter 4 9-1 All.mp4|frameless|center]]
<div class="scrolling-transcript">
<div class="scrolling-transcript">
{|
{|
Line 14,563: Line 14,575:
| width="50%" |  
| width="50%" |  
|}
|}
[[File:BBDW Chapter 4 9-2 All.mp4|frameless|center]]
<div class="scrolling-transcript">
<div class="scrolling-transcript">
{|
{|
Line 15,021: Line 15,034:
| width="50%" |  
| width="50%" |  
|}
|}
[[File:BBDW Chapter 4 9-3 All.mp4|frameless|center]]
<div class="scrolling-transcript">
<div class="scrolling-transcript">
{|
{|

Revision as of 23:23, 11 April 2022

Chapter 4: Footprints of Reminiscence (追憶の足跡 Tsuioku no Ashiato)

"Are you okay? Hey, hang in there." I opened my eyes to the sound of a voice calling out to me. What I saw standing there was the figure of an anxious looking girl.
Anything before this- I can't remember. Nothing at all.
The girl I just met had said her name was "Celica."
She had run away, to find any sign of her disappeared father's whereabouts.

The group heads towards "Japan" which had been leveled by a "Calamity".
What awaits them beyond that point is either a chance encounter, or complete destruction.
---"I want to meet you."
This sincere desire changes the whole world.
BlazBlue Alternative: Dark War Chapter 4 Footsteps of Reminiscence[1]

第0節 『   』/ 0.

Summary
暗躍する『バベル』が最終階層での顛末につ

いて語る。「実験は予測通り」と笑むハーン は、次の一手に向けてセミアを送り出す。

ハーン

…………。

Hearn
ハーン

……ザラ。

Hearn
ハーン

戻ってきたんだ。 話なら聞くよ。入っておいで。

Hearn
ザラ

……失礼いたします。

Zara
ザラ

魔素を集めていらっしゃるところに お邪魔をしてしまい、申し訳ありません。

Zara
ハーン

気にすることはないよ。急いでいるわけではないしね。 それより……。

Hearn
ハーン

ツルギのことを聞かせてほしい。 どうだった?

Hearn
ザラ

はい。見込みより少々時間はかかりましたが、 窯を利用しての精錬には成功しました。

Zara
ザラ

ですが起動から二十分ほどでツルギは自壊。 御剣機関により窯が破壊され、再生は不可能となりました。

Zara
ザラ

窯を破壊したのは……『蒼の魔道書』です。 信じがたいことですが、不安定ながら起動していました。

Zara
ザラ

窯の崩壊直後に御剣機関の連中は境界へ退去。 『場』はすぐに再構築が始まり、現在は停滞状態にあります。

Zara
ザラ

……アナザーダークは回収しましたが、戦闘の影響が大きく、 即座の再使用には耐えないかと。

Zara
ハーン

そうか。

Hearn
ハーン

お疲れ様。報告をありがとう。

Hearn
ザラ

ハーン様! ……申し訳ありません。

Zara
ザラ

ツルギの自壊は、 おそらく精錬が不十分だったためと思われます。

Zara
ザラ

貴重なサンプルを失い、そのうえ御剣機関の連中まで 取り逃がしてしまい……なんとお詫びをすればいいか……。

Zara
ハーン

そんな顔をしないで、ザラ。そもそも今回は始めから、 ちょっとした実験だったんだ。失敗も貴重な結果だよ。

Hearn
ハーン

それに、壊れたものは……。

Hearn
ハーン

『また』作ればいい。

Hearn
ザラ

ハーン様……。

Zara
ハーン

それよりも、僕は壊した『手段』のほうが気になるな。 『蒼の魔道書』 (ブレイブルー) ……いや『蒼の魔道書・写本』 (ブレイブルーオルタナティブ) だったか。

Hearn
ハーン

あんなものが本当に動くなんてね。 驚いたよ。

Hearn
ザラ

はい……。 所詮は紛い物と思っておりましたが……。

Zara
ハーン

起動の鍵になったのは、おそらく『彼』だと思う。 ……観測の力を持つ者。

Hearn
ハーン

起動の鍵になったのは、おそらく『彼女』だと思う。 ……観測の力を持つ者。

Hearn
ザラ

そんな、まさか。アレは人間ですよ。 間違いなくただの『人間』でした!

Zara
ザラ

ただの人間にあの魔道書を起動させるほどの観測など、 不可能です。あり得ないことです!

Zara
ハーン

不可能などないよ。 可能性があるのなら、それは『可能』だ。

Hearn
ザラ

……そう、ですね。 申し訳ありません。

Zara
ハーン

ただ……それが『彼』になにをもたらすのかも、 数多の可能性があるけれど。

Hearn
ハーン

ただ……それが『彼女』になにをもたらすのかも、 数多の可能性があるけれど。

Hearn
ハーン

……可能性……か。

Hearn
ハーン

本当に……『地獄』のようだな。

Hearn
ザラ

ハーン様、どうされましたか?

Zara
ハーン

いや、なんでもないよ。

Hearn
ハーン

実験の結果はおおむね予測通りだ。奇妙な巡り合わせもあった。 僕たちは前進していると言っていい。

Hearn
ハーン

心配しなくても、大丈夫だよ。

Hearn
ザラ

……もったいない、お言葉です。

Zara
ザラ

ハーン様、どうか次の任務も私にご命令ください。 今回の経験を活かし、必ずより良い成果をご覧にいれます!

Zara
ハーン

無理はいけない。君にも休息は必要だ。 それに次は、セミアにお願いするつもりだから。

Hearn
ザラ

セミアに!? そんな、私なら大丈夫です、問題ありません! 働けます! あなたのために!

Zara
ハーン

ザラ。気持ちは嬉しいけれど……。

Hearn
セミア

ヤダヤダ……やめなよ……みっともない。

Semia
セミア

はっきり言ってやったほうがいいよ、ハーン。 そういうの『重い』って……ねえ。

Semia
ザラ

なっ……セミア! いつからそこに……。 ハーン様から離れろ、気安いぞ!

Zara
セミア

睨まないでよ。こ〜わ〜い。

Semia
ザラ

だから、ハーン様にもたれかかるな! その不真面目な態度も改めろ。不敬だぞ!

Zara
セミア

不敬って、なに言っちゃってんの。 ハーンはアタシのご主人様?

Semia
ザラ

貴様……!

Zara
ハーン

まあまあ、ふたりとも落ち着いて。ザラもそう怒らないで。 セミアも、あまりザラを挑発しないでくれ。

Hearn
セミア

はーい、かしこまりましたぁ〜、ご主人サマ♪

Semia
ザラ

セミア!!

Zara
ハーン

ザラ。そこまでにしよう。

Hearn
ハーン

……セミアと話したいことがあるんだ。 少し席を外してもらってもいいかな。

Hearn
セミア

だって。

Semia
ザラ

……はい。わかりました。 失礼いたします、ハーン様。

Zara
ハーン

ザラをイジメるのは、ほどほどにしておいてくれよ。

Hearn
セミア

真面目ぶってるのが面白いんだもの、アイツ。 シーアルくらい適当でいいのに。

Semia
ハーン

……ところでセミア。どこか不調なのか? 顔色が優れないように見える。

Hearn
セミア

え? ……大丈夫。なんともないよ

Semia
セミア

それより話があるんでしょ? アタシになにをしてほしいの?

Semia
ハーン

ああ……うん。 例の実験場から、オリヴァを回収してきてほしいんだ。

Hearn
セミア

へえ。もうできるんだ。 いいよ。久し振りにあの子にも会いたいし。

Semia
ハーン

頼んだよ。

Hearn
ハーン

それから、御剣機関が来ると思う。 もし邪魔になるようなら排除してくれ。ただ……。

Hearn
ハーン

白い髪の女の子がいる。 その子にはできるだけ、手出しをしないでほしい。

Hearn
セミア

……なんで?

Semia
ハーン

彼女は素体だよ。僕たちの仲間だ。

Hearn
セミア

なに甘いこと言ってるの。 あれはアタシたちとは違うでしょ。

Semia
セミア

あれは人間の道具になり下がった。 『道具』はもう……仲間じゃない。

Semia
ハーン

それでも、頼むよ。

Hearn
セミア

…………はぁ。 ハーンの『お願い』なら、聞いてあげてもいいよ。

Semia
ハーン

ありがとう。助かるよ。

Hearn
セミア

あーあ。 オリヴァの面倒だけで手一杯だっていうのに。

Semia
ハーン

信頼してるよ、セミア。

Hearn
セミア

……ずるいよね、ほんと。 だからハーンってキライ。

Semia
ハーン

僕はセミアのことが好きだよ。

Hearn
セミア

バカ。

Semia
セミア

……行ってきます。

Semia
ハーン

はい、いってらっしゃい。

Hearn
ハーン

……………………。

Hearn
???

……いいのか? セミアに任せて。

???
ハーン

デュラウスか。 彼女が適任だよ。オリヴァはセミアに懐いてたからね。

Hearn
ハーン

寝起きで機嫌が悪くても、 セミアの話ならちゃんと聞いてくれるはずだ。

Hearn
ハーン

それに……あの子にも会ってみてほしかったからね。

Hearn
デュラウス

御剣機関の素体、か……。

Deuraus
デュラウス

まさかお前、仲間に誘おうって言うんじゃないだろうな?

Deuraus
ハーン

できるなら、そうしたいけど。たぶん難しいだろうな。 でも……。

Hearn

第1節 喪失の色①/ 1. The Color of Loss - 1

Summary
気が付くと、見知らぬ森の中に倒れていた。

旅の少女セリカとミネルヴァに助け起こされ るが、そこに白髪の少女が現れ戦闘となる。

目を開けた瞬間から、私は探している。

私の居場所を。私の役目を。私の意義を。 私の願いを。

私は……。

私はあなたに会いたい。

……………………。

…………………… …………………………………………。

少女

……か?

Girl

……………………。

少女

……ぶ、ですか?

Girl
少女

大丈夫ですか? ねえ、しっかり。 目、開けられる?

Girl
少女

あ……よかった。意識はあるみたい。 私の声、ちゃんと聞こえてる?

Girl
少女

うんうん。体は起こせそうかな。 どこか痛いところはある? それか……具合が悪いとか。

Girl

1: ええと……
2: あなたは?

1:
2:

少女

私はセリカ。セリカ=A=マーキュリー。

Girl
セリカ

あ。驚かせちゃったかな。 この子はミネルヴァ。よろしくね。

Celica
ミネルヴァ

…………。

Minerva

1: 人形なの?
2: それ、ロボット……?

1:
2:

セリカ

ミネルヴァのこと? うーん……どうなんだろう。 なんて呼んだらいいのかわからないなぁ。

Celica
セリカ

でも、とっても強くて優しいの。 怖い子じゃないから、安心して。

Celica
セリカ

ところで、あなたは誰? その制服、イシャナの制服に似てるけど……。

Celica
セリカ

もしかしてイシャナの人? お姉ちゃんに頼まれてきた……とかじゃ、ないよね。

Celica
セリカ

あ、私のお姉ちゃんね、すっごく心配性なの。 そのお姉ちゃんに相談なしで、家を出てきちゃったから……。

Celica
セリカ

私を見つけようとして、大勢の人に捜索を頼んだりしてたら どうしようって思って。

Celica

1: それ、もしかして家出では?
2: それは心配してると思うよ

1:
2:

セリカ

家出だなんて、そんなのじゃないよ!

Celica
セリカ

ちょっとひとりで遠出してるだけ。 用事が終わったらちゃんと帰るつもり。

Celica
セリカ

うん……そうだよね。私もそう思う。 だけど相談してたら、絶対許してくれなかったもん。

Celica
セリカ

やりたいことがすんだら、ちゃんと帰るから。

Celica
セリカ

それに手紙も書いてきたんだ。 行きたい場所があるから、しばらく出かけます、って。

Celica
セリカ

いつになるかはわからないけど帰ってくるから、 待っててね、って。

Celica
セリカ

でも考えてみたら、お姉ちゃんは私のこと 誰かに頼んだりしないか……。

Celica
セリカ

どっちかっていうと、自分で直接探しに来るタイプかも。 それは困っちゃうなぁ。お姉ちゃん、すごく頭いいし。

Celica
セリカ

一回見つかったら、逃げ切るのは難しいかも。 その前になんとかして辿り着かないと……。

Celica
セリカ

あ! ごめんなさい、私ずっとおしゃべりしちゃってて。 あなた座り込んだままだったのに。

Celica
セリカ

人に会えるの、久し振りだったから つい嬉しくなっちゃった。

Celica
セリカ

はい、手をどうぞ。 立てる?

Celica

1: ありがとう
2: ひとりで大丈夫だよ

1:
2:

ミネルヴァ

!!

Minerva
セリカ

え、きゃっ!? なに、ミネルヴァ……!?

Celica
白い髪の少女

無事ですか!?

White-haired Girl
セリカ

お、女の子?

Celica
ミネルヴァ

……………………。

Minerva
白い髪の少女

失礼ですが、あなたはどなたですか?

White-haired Girl
白い髪の少女

何故レイさんに 触れようとしていたのか、説明を求めます。

White-haired Girl
セリカ

え、えっと……レイさん、っていうのは……?

Celica
ミネルヴァ

…………!

Minerva
白い髪の少女

っ!

White-haired Girl
白い髪の少女

敵対反応を感知しました。

White-haired Girl
セリカ

敵対? え、ちょっと待って、ミネルヴァ、ダメだよ……!

Celica
ミネルヴァ

!!

Minerva
白い髪の少女

う、く……。対象の攻撃意思を確認。 迎撃します。

White-haired Girl

1: な、何事?
2: どういう状況!?

1:
2:

セリカ

わ、わ、大変! あなた、こっちに来て。巻き込まれちゃったら危ないから!

Celica
ミネルヴァ

…………!!

Minerva

第1節 喪失の色②/ 1. The Color of Loss - 2

Summary
少女はシエル、同行の機械はラーベという名

で、記憶を失った自分を助けにきたと語る。 誤解が解けた一同は共に状況を確認する。

白い髪の少女

っ、体が重い……。どうして……?

White-haired Girl
ミネルヴァ

…………。

Minerva
セリカ

ミネルヴァ、もうおしまい! あの子、ケガしちゃうよ!

Celica
ミネルヴァ

……!

Minerva
白い髪の少女

まだ、やれます。

White-haired Girl
ミネルヴァ

Minerva
???

待〜〜〜て待て待て待て待て待て〜〜〜〜〜い!

???
セリカ

わ! ぼ、ボール? ……じゃない!

Celica
白い髪の少女

ラーベさん……。

White-haired Girl
球体の機械

はい、両者ストーップ! こらシエル、勝手に飛び出して暴走するんじゃない!

Round Machine
白い髪の少女

……すみません。

White-haired Girl
白い髪の少女

レイさんが正体不明の兵装を所持した人物と、 接触していたので……助けねばと思いました……。

White-haired Girl
セリカ

兵装? それって、ミネルヴァのこと?

Celica
白い髪の少女

……はい。

White-haired Girl
白い髪の少女

詳細は不明ですが、その人形のようなものは 戦闘行動を前提とした自立駆動兵装です。

White-haired Girl
白い髪の少女

こちらの方を……攻撃しようとしていたのではありませんか?

White-haired Girl
セリカ

そんな、違うよ! 起き上がるのを手伝おうとしてただけ。

Celica
セリカ

あー……でも確かに、構図としては 私たちがこの子を倒したようにも、見えちゃうかも……。

Celica
セリカ

びっくりさせちゃったんだね。ごめんなさい。

Celica
白い髪の少女

……い、いえ……こちらこそ……すみません。 早とちりでした。

White-haired Girl
セリカ

私、セリカ。よろしくね。

Celica
シエル

……シエルと申します。 こちらはラーベさんです。

Ciel
シエル

本当に、失礼しました。

Ciel
ラーベ

やれやれ……お前も、ぼーっと見てるんじゃない。 お前がシエルを止めないでどうする。

Raabe
ラーベ

……おい? 聞いてるのか? お前だ、お前。レイ!

Raabe

1: それ、僕(私)……のこと?
2: どちら様……ですか?

1:
2:

シエル

……今、なんと?

Ciel
ラーベ

……<size=120%>はぁ〜〜〜〜〜〜!? </size>

Raabe
ラーベ

ふーむ……なるほど。

Raabe
シエル

……いかがですか、ラーベさん? レイさんは……どうされたのでしょうか?

Ciel
ラーベ

……うん。これはあれだ。間違いない。

Raabe
セリカ

なになに? なにかわかったの?

Celica
ラーベ

一同、落ち着いて聞いてほしい。

Raabe
ラーベ

レイ。 お前は記憶を失っている。

Raabe
シエル

え。

Ciel
セリカ

ええええっ!?

Celica

1: ……言われてみれば、なにも思い出せない
2: どうりで頭がすっきりしてるわけだ!

1:
2:

ラーベ

そうだろうな。

Raabe
ラーベ

しっかし、今の今まで自覚なしだったとは。 大した気の緩さというか、ある意味根性すわってるというか。

Raabe
ラーベ

のんきか!

Raabe
ラーベ

自分のことをなにも覚えてないんだぞ。 もうちょっと危機感とか持ってくれるかな、お前は!

Raabe
シエル

レイさんが記憶喪失……。

Ciel
シエル

それはつまり、私たちのこともご自分のことも覚えていない ということで……。

Ciel
シエル

そ、それはつまり記憶がないということですね?

Ciel
ラーベ

うん、だからそうだって。動揺してるのはよくわかったから、 深呼吸しなさい。ね。落ち着いて。

Raabe
シエル

すー……はー……。

Ciel
シエル

……大変なことなのでは!?

Ciel
ラーベ

大変ですよ。

Raabe
セリカ

本当にな〜〜〜んにも覚えてないの? 自分の名前は? レイくんっていうんだよね。

Celica
セリカ

本当にな〜〜〜んにも覚えてないの? 自分の名前は? レイちゃんっていうんだよね。

Celica

1: 確かにそんな気がしてきた……
2: それが自分の名前ってことはわかる

1:
2:

セリカ

よかった、名前はわかるみたい!

Celica
シエル

で、では他の事項は……? 私のことや、ラーベさんのことは、わかりますか?

Ciel

1: いや……わかんない
2: ごめんなさい、思い出せないです

1:
2:

シエル

……そう、ですか。

Ciel
セリカ

元気出して。自分の名前は思い出せたんだから、 なにかのきっかけで他のことも思い出せるかもしれないよ。

Celica
ラーベ

だといいがな〜。

Raabe
ラーベ

しかし……我々がこうして存在出来ていることを考えると、 システムの不具合とは考えづらい……。

Raabe
シエル

はっ……まさか、先日遭遇したあの…… 『バベル』と名乗る方々の工作でしょうか。

Ciel
シエル

私たちがなにをしているのかも、 レイさんに備わっている力についても、

Ciel
シエル

把握している様子でした。

Ciel
ラーベ

どうだろう……。

Raabe
ラーベ

レイほどの観測力を持ったやつから 意図的に記憶を奪うとなると、かなりテクニカルだ。

Raabe
ラーベ

こいつが無意識でやっている自己認識を、 無効あるいは阻害しようとするわけだから……。

Raabe
ラーベ

どちらかというと、事故的要因の方が確率は高そうだ。 おそらく原因は《浸入》 (ダイブ) の衝撃だろう。

Raabe
シエル

《浸入》 (ダイブ) したせいで、レイさんの記憶が なくなってしまったのですか?

Ciel
シエル

そんなことが……あるのですか。

Ciel
ラーベ

チェックした限りでは、私はそう判断するね。

Raabe
ラーベ

そもそも、ただの人間がこれまで大した障害もなく 浸入できてたのがイレギュラーなんだ。

Raabe
ラーベ

心配しなくても、自己認識がしっかりしてくれば、 徐々に思い出して……。

Raabe
ラーベ

……まさか……あり得るのか?

Raabe
シエル

どうされました、ラーベさん?

Ciel
ラーベ

いや……なんでもない。

Raabe
ラーベ

まぁ万が一、自力で思い出せなかったとしても、 フガクに戻ればタカマガハラシステムが補完してくれるし。

Raabe
ラーベ

最悪ショック療法でもなんでもするさ。 だから安心しろ。

Raabe
セリカ

こらこら。悪気はないのかもしれないけど、 治ればなにしてもいいってわけじゃないんだからね。

Celica
セリカ

頭の中のことなんだから。 こういうのはゆっくり穏便に、焦らず待ってあげようよ。

Celica
シエル

……この件に関しては、 私はセリカさんの意見に全面的に賛同します。

Ciel
セリカ

ふふ、ありがと。

Celica
ラーベ

おいおい、シエル。そう警戒した顔をするな。 私が行うのは、ちゃんと科学的に意義と根拠のある治療だぞ。

Raabe
シエル

…………。

Ciel

1: 疑いの眼差しだ……
2: 記憶がなくても、その気持ちはわかる

1:
2:

シエル

私はレイさんの身の安全を守る役目があります。 それはラーベさんであっても、同様です。

Ciel
ラーベ

はいはい、わかってますよー。

Raabe
セリカ

ところで……あなたたちは、この人の知り合い? お友達なのかな?

Celica
シエル

お友達……かどうかは、不明です。 任務を共に行っています。

Ciel

1: 任務ってなに?
2: ……ごめん、やっぱり覚えてない

1:
2:

シエル

……我々の任務は窯の破壊です。 そのために観測者を特定し……。

Ciel
ラーベ

あ〜〜〜〜〜っとととと、つまりだな。 人と場所を探してる。

Raabe
セリカ

人と場所……。 じゃあ、私と同じだ!

Celica
セリカ

私もね、ある人とある場所を……。

Celica
ミネルヴァ

!!

Minerva
セリカ

きゃっ! あ、ありがとう、ミネルヴァ。

Celica
シエル

……敵対反応を感知。 すみません、接近に気付けませんでした。

Ciel
ラーベ

魔物か。

Raabe
セリカ

わ、わ、大変、囲まれちゃってる!

Celica
シエル

レイさん、私の近くにいてください。 対象を確認、迎撃します!

Ciel
セリカ

私たちも。やるよ、ミネルヴァ!

Celica

第1節 喪失の色③/ 1. The Color of Loss - 3

Summary
改めて互いの自己紹介をした後、セリカは同

行を提案した。帰らぬ父を探す彼女と共に、 シエルたちも日本へと向かうことになる。

セリカ

やったぁ! ありがとう、ミネルヴァ。お疲れ様。

Celica
セリカ

シエルちゃんも、お疲れ様。大丈夫?

Celica
シエル

はい……。 …………。

Ciel
シエル

……やはり、変です。 先程、ミネルヴァさんと交戦したときにも感じたのですが……。

Ciel
シエル

想定通りに身体が動きません。 機能不全が起きています。

Ciel
ラーベ

ああ。それはそうだろう。 なんせレイが記憶喪失なんだからな。

Raabe
ラーベ

私やシエルのことを思い出せないうちは、 これまで通りに観測することは不可能だ。

Raabe
ラーベ

現状は、レイが無意識下で行っている観測と、 タカマガハラシステムのサポートでなんとか保っているが……。

Raabe
ラーベ

こいつが私たちを正確に認識できないうちは、 シエルの戦闘能力は当然落ちる。

Raabe
ラーベ

というかそもそも存在自体が非常に不安定だ。 私もシエルも、そしてレイもな。

Raabe

1: なんの話かわからないような……
2: なんとなく意味がわかるような……

1:
2:

ラーベ

なんとなくでも、わかってくれるといいんだがな。 あー、とりあえず、できる限り認識をしっかりさせておこう。

Raabe
ラーベ

改めてになるが…… 私の名前はアストロラーベ。ラーベちゃんと呼べ。

Raabe
ラーベ

お前とシエルを連れてここへやってきた。 任務の進行を管理する、司令官的な存在だ。

Raabe
ラーベ

ほらシエル、お前も自分のことを教えてやれ。

Raabe
シエル

シエル=サルファーです。御剣機関所属のスレイプニール。 レイさんを……お守りするためにいます。

Ciel

1: ふたりとも、よろしくね
2: 思い出せなくてごめんね……

1:
2:

シエル

はい。……よろしくお願いします。 状況の改善に、全力を尽くします。

Ciel
シエル

……いえ。問題……は、ありますが。 状況の改善に、全力を尽くします。

Ciel
セリカ

じゃあ私も改めて自己紹介。 セリカ=A=マーキュリーです。

Celica
セリカ

何度も話に出てきてるからわかってるとは思うけど。 後ろのこの子はミネルヴァ。私の頼もしい相棒だよ。

Celica
ラーベ

相棒、ね。 どう見ても兵器の類だけど、そこんとこは理解してるのか?

Raabe
セリカ

うん、一応。でも危ない子じゃないよ。 いつも私のことを守ってくれるの。

Celica
セリカ

あ。シエルちゃんと一緒だね。

Celica
ラーベ

一緒?

Raabe
セリカ

レイくんのこと、 守ってあげてるんでしょ。すごいなぁ〜。

Celica
シエル

私がレイさんをお守りするのは、任務です。 すごいことではありません。

Ciel
セリカ

そんなこともないと思うけどなぁ。

Celica
セリカ

さっき魔物と戦ってるときも、 ずっとレイくんのこと気にしてたじゃない。

Celica
セリカ

誰かのために頑張るって、すごいよ。

Celica
セリカ

レイちゃんのこと、 守ってあげてるんでしょ。すごいなぁ〜。

Celica
シエル

私がレイさんをお守りするのは、任務です。 すごいことではありません。

Ciel
セリカ

そんなこともないと思うけどなぁ。

Celica
セリカ

さっき魔物と戦ってるときも、 ずっとレイちゃんのこと気にしてたじゃない。

Celica
セリカ

誰かのために頑張るって、すごいよ。

Celica
シエル

そう……ですか。

Ciel

1: いつもお世話になってるんだね
2: 守ってくれて助かったよ

1:
2:

シエル

いえ。……任務、ですから。

Ciel
ラーベ

さて。記憶喪失だろうがなんだろうが、 さっきも言った通り我々には任務がある。

Raabe
ラーベ

デリケートな頭抱えてるとこ悪いが、 始めさせてもらうぞ。

Raabe
セリカ

あ、さっき言ってた人探しだよね。 それならさ、私から素敵な提案があるんだけど。

Celica
ラーベ

ほうほう? 素敵とな。 聞こうじゃないか。

Raabe
セリカ

私と一緒に行くっていうのはどう? 実はね、私も人探しをしてるの!

Celica
シエル

魔物に襲撃される直前に、おっしゃっていましたね。 セリカさんは、どなたを探しているのですか?

Ciel
セリカ

私の父さん。

Celica
セリカ

ちょっと偉い研究者なんだけどね。 もうずっと家に戻ってなくて、連絡もないままで。

Celica
セリカ

心配だから、様子を見に行きたいんだ。

Celica

1: それでこの森に?
2: お父さんはどこにいるの?

1:
2:

セリカ

ううん、違うよ。ここはただの通り道。 歩いてたら、偶然あなたを見つけたの。

Celica
セリカ

今どこでどうしてるのか、 詳しいことはわからないの。

Celica
セリカ

父さんについてわかってるのは、最後に働いてた 研究所の場所と、それが日本にあるってことだけ。

Celica
ラーベ

日本か……。

Raabe
ラーベ

おっといかん。 そういえば我々の現在地点の確認がまだだったな。

Raabe
ラーベ

まったく、レイの姿が見えないもんだから、 色々行程すっ飛ばしてしまった。手順が大混乱だ。

Raabe
ラーベ

ちょっと待ってろ。シエルと私の状態確認も含めて、 もろもろチェックするから。

Raabe
セリカ

すごーい、現在地のチェックなんてできるの? それありがたいかも。

Celica
セリカ

実はちょっと迷っちゃってるのかも、 って思ってたところで……。

Celica
セリカ

地図はあるんだけど、 自分がどこにいるのか見失っちゃったんだよね。

Celica

1: わかる、地図って難しいよね
2: 見せてもらってもいい?

1:
2:

セリカ

ね〜。普段あんまり使わないから、 たまに使うとわけがわかんなくなっちゃう。

Celica
セリカ

うん。私がいた街と、着きたい街の名前はあるから…… その間にいるとは思うの。……あ、あった!

Celica
セリカ

これが、私が使ってる地図だよ。

Celica
シエル

こ、これは……!

Ciel

1: 世界地図……
2: これで旅してたの?

1:
2:

セリカ

うん、そうだよ。世界中どこでも見られて、便利でしょ。

Celica
シエル

出発点がどこかは存じませんが……これで日本を目指すのは、 かなり困難だと思われます……。

Ciel
セリカ

うん。ちょっと大きすぎたよね。 広げるのが大変で、見ながら歩けないんだ……失敗。失敗。

Celica

1: 問題点はそこじゃない……
2: なんて大雑把な地形把握

1:
2:

ラーベ

……う、うむ。問題点はそこじゃない。

Raabe
ラーベ

……いや、大雑把なんてもんじゃないぞこれは。

Raabe
セリカ

何の音?

Celica
ラーベ

マッピングが終わった。 適切な縮尺の地図を出してやるから、よーく見ろ。

Raabe
ラーベ

まず我々がいるのは、ここだ。 山ん中だな。西方の中腹にいる。

Raabe
セリカ

うんうん。 あ、ここ! 私が泊まった街! 名前書いてある。

Celica
ラーベ

……やはりか。

Raabe
シエル

なにか問題ですか?

Ciel
ラーベ

日本へ向かうなら、順路はこっちだろう。 出発点の街から、方角としては南東だ。

Raabe
ラーベ

だが我々がいる山はここ。 出発地点の街から北東の方角だ。

Raabe
セリカ

ん? つまり?

Celica
シエル

このまま進んで、目的の町へ辿り着く可能性はかなり低いです。 なぜこんな場所にセリカさんたちはいるのでしょう?

Ciel
ラーベ

考えられる理由はいくつかある。 例えば、教えられた道がそもそも違った。

Raabe
ラーベ

あるいはなにか特殊な妨害に遭った。 ……そして……こいつが致命的な方向音痴。

Raabe
シエル

方向……音痴?

Ciel
ラーベ

そうだ。そして私はその『方向音痴説』を推す。 でなきゃとんだ天然ボケだ。

Raabe
ラーベ

こんな山の奥深くに入り込む前に、危機感覚えて引き返すとか、 道を疑うとかするだろ。しなさい!

Raabe
セリカ

え、道が間違ってたの? 教えてもらった通り、南に向かったと思ってたのに。

Celica
シエル

方向音痴説、同意いたします。

Ciel

1: ……街まで連れて行ってあげよう
2: 彼女のためにも、同行したい

1:
2:

セリカ

ほんと? やった、仲間が増えた〜!

Celica
セリカ

ミネルヴァとふたりでいるのも楽しいけど、 人数が増えたらもっと楽しいよね、きっと。

Celica
ラーベ

のんきさがすごいな。

Raabe
ラーベ

だがまあ、いいだろう。流れには乗ってみようじゃないか。 世界情勢についての情報もほしい。

Raabe
セリカ

ふふふ。では改めまして、よろしくお願いします。 さあ、気を取り直して、出発〜!

Celica
ミネルヴァ・シエル

…………!!

Minerva & Ciel'

...!!

シエル

敵対反応を感知。 高速で接近中。

Ciel
ラーベ

おっとしまった。魔素のある場所で、長居し過ぎたな。 魔物だろう。シエル、対処しろ。

Raabe
シエル

了解。

Ciel
シエル

対象を認識。 対象の排除を開始します。

Ciel

第2節 災厄を知る世界①/ 2. A World That Knows Calamity - 1

Summary
山道を進む一行。広さに反して生物がいない

この世界への違和感を語るラーベに、セリカ は命を奪う『災厄』の存在について教える。

セリカ

ふぅ……倒した〜。 お疲れ様、ミネルヴァ。

Celica
シエル

……戦闘終了です。 何度もサポートしていただき、ありがとうございました。

Ciel
セリカ

いえいえ。一緒に旅する仲間だもん。 協力するのは当たり前だよ。

Celica

1: 少し疲れてる?
2: あんまり無理しないで……

1:
2:

シエル

……いえ。問題ありません。戦えます。

Ciel
ラーベ

ようやく山から抜け出せそうだな。 視界が開けてきた。

Raabe
セリカ

だね! よかったぁ。 昨日は山の中で寝たから、今夜はベッドで寝れるといいなぁ〜。

Celica
ラーベ

その装備状況で野宿とは。 案外お前、豪気だな。

Raabe
セリカ

へへへ。

Celica
ラーベ

それにしても……『広い』な、この世界は。

Raabe
シエル

《浸入》 (ダイブ) の前のブリーフィングでもおっしゃっていましたね。

Ciel
シエル

これまでのものとは比べものにならないくらい 『広い』と。

Ciel
ラーベ

ああ。 島ひとつ、階層都市ひとつ。そんなレベルではない。

Raabe
ラーベ

さっき周囲をスキャンしたときにも思ったが…… 大陸ひとつくらいはあるだろうな。

Raabe
ラーベ

これは並大抵のことではない。 さらにもうひとつ、不可解なことがある。

Raabe
ラーベ

これだけの規模のファントム……。

Raabe
ラーベ

んっんんっ……世界であるにも関わらず、 異様に生命の反応が少ない。

Raabe
ラーベ

人間だけじゃない。動物や虫、植物の反応が極端に少ない。 これは……どういうことなんだろうな。

Raabe
セリカ

それは、災厄のせいじゃなくて?

Celica
シエル

災厄?

Ciel
セリカ

うん。6年前にあったでしょ。 突然現れて……世界中から大勢の人を消してしまった『災厄』。

Celica
ラーベ

!? それは……。

Raabe
シエル

世界規模の災害のことですか? それとも、もっと超常的な現象のことでしょうか。

Ciel
セリカ

うーん、どういうものなのかは私もよく知らないんだけど……。 黒くて大きくて、すごく恐いものだよ。

Celica
セリカ

どこからともなく突然現れて、 そこにあるものを手当たり次第に壊しちゃうの。

Celica
セリカ

街も家も、そこに住んでる人や他の命も……。

Celica

1: それは恐いね……
2: そんなものが本当にいるの?

1:
2:

セリカ

うん、恐いよ。どうにかしようと色んな人が 頑張ってるらしいけど……簡単には方法が見つからないみたい。

Celica
セリカ

信じられないよね。私も実はそうなの。 実際に見たことはないし……あんまり本当だと思いたくない。

Celica
セリカ

でもね。 ここ一年くらい、ずっと『災厄』は出現していないの。

Celica
セリカ

もしかしたら休眠状態なのか……もしくは、 いなくなったんじゃないかって言われてて。

Celica
セリカ

だから安心して。……って言うのも、変か。 そうだって確定したわけじゃないしね。

Celica
セリカ

……でもなんだろう。いなくなったのかもって思うと、 それはそれで胸の辺りがきゅってするような。

Celica
ラーベ

おいおい、災厄相手になにを感傷的になってるんだ。

Raabe
ラーベ

とにかくだ。その災厄とやらは……よくわからんが突然現れて、 多くの命を奪った後に、現在は活動休止中……。

Raabe
ラーベ

そういうことだな?

Raabe
セリカ

うん。そういうこと……かな。

Celica
セリカ

でね、その『災厄』が最初に現れた場所っていうのが…… 私の父さんが働いてた、研究所なの。

Celica
シエル

では……その研究所はすでに、 破壊されているのではないですか?

Ciel
シエル

先ほど、手当たり次第になんでも壊してしまうと おっしゃっていました。

Ciel
シエル

生存者はいないのではありませんか?

Ciel

1: シエルさん、もう少し言い方を……
2: ストレートに言うね、シエルさん

1:
2:

If Choice 1:
シエル

……『シエル』で結構です。

Ciel
シエル

私の言葉遣いに問題がありましたか? 失礼しました。 情報の内容には、誤りはないと思います。

Ciel
If Choice 1:
シエル

……『シエル』で結構です。

Ciel
シエル

湾曲した言い方では、情報が正確に伝わりません。 そう思ったのですが……問題があったでしょうか。

Ciel
ラーベ

こいつが言いたいのは、そういうことじゃなくてだな。

Raabe
セリカ

私のことを気遣ってくれてるなら、大丈夫だよ。

Celica
セリカ

父さんの研究所はたぶん、破壊されてる。 私もそうだろうと思ってるし、お姉ちゃんからもそう聞いてる。

Celica
セリカ

でも、どうしても『もしかしたら』って考えちゃうの。 だから自分の目で直接見て、納得するために行くんだ。

Celica
セリカ

父さんのいた研究所がどうなって、 父さんがどうなったのか……確かめたいの。

Celica
ラーベ

確かめる、なぁ。

Raabe
ラーベ

災厄が休止中だかなんだか知らんが、魔物は平気ではびこってる。 そんなご時世に単身陸路で日本を目指すとは。

Raabe
ラーベ

呆れる蛮勇だな。 しかも地図は世界地図だし。

Raabe
セリカ

あ、あはは…… 私もちょっとだけ無謀だったかなーって思ってる。

Celica
セリカ

途中でミネルヴァに会えなかったら、挫けてたかも。

Celica
シエル

ミネルヴァさんとは、最初からご一緒だったのでは ないのですか?

Ciel
セリカ

うん、違うよ。

Celica
セリカ

日本に向かうぞー! って頑張ってる途中で、会ったの。 何日か前だよ。

Celica
ラーベ

なんだと? 何日か前にたまたま出会って…… 今、それだけ自在に操作しているのか?

Raabe
セリカ

私が操作してるわけじゃないよ。 ミネルヴァが一生懸命、私のことを守ってくれるの。

Celica
セリカ

どうしてなのかはわからないんだけど……一緒に行くのは 嫌じゃないみたいだから、ついてきてもらってるんだ。

Celica
ラーベ

なんだよ、そうなのかぁ〜〜〜。

Raabe
ラーベ

そいつを作ったのが誰で、どういう構造と仕組みになってるのか、 興味津々だったのに……がっかりだ。

Raabe
セリカ

あらぁ……そうだったの。ごめんね。

Celica
ラーベ

……と、まあ、冗談はさておきだ。

Raabe

1: 本当に冗談?
2: 本気でがっかりしてたような……

1:
2:

ラーベ

ごほん。 いやなに……。

Raabe
ラーベ

私はてっきり、その人形自体がセリカのドライブなんだと 思ったんだよ。だがそういう経緯なら……なんとも言えんな。

Raabe
シエル

そうですね。 セリカさんは、ドライブ能力者ではないのでしょうか?

Ciel
セリカ

うーん、ドライブを持ってます、と言われたことは ないかな……。

Celica
ラーベ

ほう。お前はドライブがなんなのか、知っているのか。 これは説明が省けていい。

Raabe
セリカ

うん、知ってるよ。学校で少し習ったから。

Celica
ラーベ

学校でドライブを教えるのか……この世界では……。

Raabe
セリカ

私の通ってるとこ、そういうのをお勉強するところなの。

Celica
シエル

もしかして、イシャナの学生さんですか?

Ciel
セリカ

イシャナを知ってるの?

Celica
ラーベ

ああ、まあな。

Raabe
セリカ

あ、そっか。 えっと、レイくん……。

Celica
セリカ

あ、そっか。 えっと、レイちゃん……。

Celica

1: レイでいいですよ
2: レイって呼んで!

1:
2:

セリカ

ありがとう。 ならレイ。

Celica
セリカ

その服、古いデザインだけどイシャナの制服……だもんね。 それでシエルちゃんたちも、イシャナ知ってるんだ。

Celica
ラーベ

まあそんな感じだ。

Raabe
ラーベ

レイはピンときてないかもしれないが、 記憶喪失が解消されればわかることだから、説明はなし。

Raabe
ラーベ

それより、気がかりなのはセリカがドライブ能力者かどうかだ。 できればしっかり分析しときたいな……。

Raabe
ラーベ

……お。 おあつらえ向きに、行く先に魔物がいるな。

Raabe
ラーベ

セリカ。ミネルヴァを使って、思いっきり戦ってみてくれ。 お前の力について知りたい。

Raabe
セリカ

うん、わかった。 私もミネルヴァについて、もっと知りたい。

Celica
ミネルヴァ

…………。

Minerva
シエル

ラーベさん、私は……どうしていればいいですか?

Ciel
ラーベ

もちろん、レイの護衛だ。 魔物にこちらの事情は通じないだろうからな。

Raabe
シエル

了解しました。

Ciel
魔物

グアワァァァァァァ!!

Monster
セリカ

よーし、行くよ、ミネルヴァ!

Celica

第2節 災厄を知る世界②/ 2. A World That Knows Calamity - 2

Summary
セリカの持つ能力を見極めるため、戦う様子

を分析するラーベ。セリカの意思に従って、 ミネルヴァは魔物を次々と倒していく。

セリカ

あ……消えちゃった。変なの。 見た目は、ちょっと変になった動物や植物なのに。

Celica
セリカ

倒すと、 始めからいなかったみたいに消えちゃうなんて……。

Celica
ラーベ

活動停止したものをわざわざ『存在』として 残しておく必要がないんだろうな。

Raabe
ラーベ

これまでのファントムフィールドでも、 よく見かけた仕組みだ。

Raabe
セリカ

魔物ってそういうものなの?

Celica
ラーベ

さあな。私は魔物には詳しくない。 ただ……世界の仕組みにはちょっとばかり詳しいんでね。

Raabe
ラーベ

理屈をつけるとしたらそういうことなんじゃないかっていう、 仮説だ。

Raabe
シエル

リソースの無駄を防止するための仕組みでしょうか。

Ciel
ラーベ

たぶんね。観測者の力は無限大じゃない。 不要なもので容量いっぱいにしてたら、本末転倒だからな。

Raabe
セリカ

うーん、ラーベさんたちのお話、私には少し難しいみたい。 世界の仕組みか……。

Celica
ラーベ

お前は今は、わかっていなくていいことだ。

Raabe
セリカ

そっか。じゃあ、わかってないといけなくなったら、 詳しく教えてね。理解できるように頑張るから。

Celica
ラーベ

無論、そのつもりだが。

Raabe
ラーベ

セリカ、お前はどーもあっけらかんとしているというか、 お気楽というか。そういうタイプだな。

Raabe
セリカ

えへへ、よく言われる。

Celica

1: こっちまで気が楽になってくる
2: ちょっと心配になってくる

1:
2:

If Choice 1:
セリカ

そう? よかった。気持ちは楽なほうがいいもんね。

Celica
If Choice 2:
セリカ

そう? ふふ、実はそれもよく言われるの。

Celica
シエル

…………。

Ciel
シエル

……ラーベさん、分析結果はいかがですか?

Ciel
ラーベ

うむ。なかなか面白いデータが取れてるぞ。

Raabe
ラーベ

どうも典型的なドライブ能力とは少々毛色が違うらしい。 ただもう一声、確証がほしいな。

Raabe
ラーベ

あと何戦かしてみてくれないか。 他のデータもほしい。

Raabe
セリカ

はーい! 歩く先にどんどん魔物出てくるし、 ちょうどいいね。頑張ろう、ミネルヴァ。

Celica
ミネルヴァ

…………。

Minerva

第2節 災厄を知る世界③/ 2. A World That Knows Calamity - 3

Summary
戦闘後、魔法で傷を治癒するセリカ。ラーベ

は、彼女が貴重な魔法の使い手であり、同時 に特殊なドライブ能力者でもあると語る。

セリカ

ふう……。お疲れ様、ミネルヴァ。 たくさん戦ってくれて、ありがとう。

Celica
シエル

戦闘終了です。 周囲に敵対反応はありません。

Ciel
シエル

これまでより感知範囲が狭いので、自信がありませんが…… すぐに魔物の襲撃を受けることはないと思われます。

Ciel

1: ちょっと一息つけるね
2: 調べてくれてありがとう

1:
2:

If Choice 1:
シエル

……はい。

Ciel
If Choice 2:
シエル

いえ……私の基本機能です。

Ciel
セリカ

シエルちゃんとレイも、 お疲れ様。怪我はない?

Celica
セリカ

……あ。レイ、 ほっぺた、ちょっと切れちゃってる。

Celica

1: さっき枝に引っ掻けちゃって
2: これくらい平気だよ

1:
2:

セリカ

けっこう痛そうだよ。 ばい菌入るといけないし、治しといたほうがいいと思う。

Celica
シエル

そうですね。すぐに応急手当てを……。

Ciel
セリカ

ふっふっふー。待って、待って。こういうのは私に任せて。 得意分野なの。

Celica
シエル

手当の専門知識をお持ちなのですか?

Ciel
セリカ

そういうのじゃないんだけどね。 レイ、ちょっとじっとしてて。

Celica

1: 傷のところがあったかい
2: 痛みがひいていく……

1:
2:

シエル

傷が……治ってしまいました。 これも、セリカさんのドライブ能力ですか?

Ciel
ラーベ

いや。それは……ドライブ能力とは違うようだな。 魔法か?

Raabe
セリカ

うん、魔法だよ。私、イシャナの魔術師だから。 まだ学生だけど。

Celica
ラーベ

ってことは、治癒魔法か。 え、治癒魔法? 本当に?

Raabe
セリカ

うん。

Celica
ラーベ

おいおい…… まさか実際に目にすることになるとは……。

Raabe
シエル

珍しいのですか?

Ciel
ラーベ

珍しいなんてもんじゃないぞ。

Raabe
ラーベ

理論上では可能だが、実際に扱うことはできない。 その代表例のひとつが治癒魔法だ。

Raabe
ラーベ

近いもので『回復魔術』もあるが、あれは体細胞を活性化し、 回復を促進させるものだから限度がある。

Raabe
ラーベ

だが治癒魔法は違う。 治癒魔法は『回復』ではなく『復元』だ。

Raabe
ラーベ

だから前提として、扱うには特殊な才能がいる。そのせいで 実際に使える人間が少なすぎるから、研究も進んでいない。

Raabe
ラーベ

要はよくわかっていないけど、目茶苦茶難しい魔法だ。

Raabe
セリカ

私、魔術はあんまりだけど、治癒魔法だけは 小さいころから得意なんだ。どう、もう痛くない?

Celica

1: なんともないよ。すごい魔法だね!
2: 大丈夫そう。ありがとう

1:
2:

セリカ

ふふ、よかった。

Celica
シエル

傷をたちどころに癒してしまうなんて、すごい技ですが…… 魔法はドライブとは違うのですか?

Ciel
ラーベ

違う。魔法はもっと技術的で理論的なものだ。 必要な条件さえ揃えば、使い手もそれなりにはいる。

Raabe
ラーベ

だがドライブは個々の魂を根源としている。魔法よりずっと スピリチュアルというか……得体の知れない……。

Raabe
ラーベ

個の『存在』が持つ『特殊能力』だ。

Raabe
セリカ

あ、そうだった、ドライブ! 私のドライブのこと調べてるんだった。なにかわかった?

Celica
ラーベ

ああ。 なにもかも解析できたわけじゃないが、ある程度は把握した。

Raabe
ラーベ

魔法についてはここまでにして、 ドライブの話に戻るとしよう。

Raabe
シエル

はい。

Ciel
セリカ

自分のこと教えてもらうのって、ちょっとわくわくする。

Celica
ラーベ

結論から言うと、セリカはドライブ能力者だ。 ドライブはその人形、ミネルヴァだな。

Raabe
ミネルヴァ

…………。

Minerva
セリカ

ミネルヴァが……私のドライブ……。

Celica
シエル

質問ですが、セリカさんはミネルヴァさんと数日前に、 偶然出会ったとおっしゃっていました。

Ciel
シエル

ミネルヴァさんの反応は、明らかに人工物です。 ドライブによって発現した存在とは、考えにくいのですが。

Ciel
ラーベ

その通り。ミネルヴァ自体は誰かの手によって造られた れっきとした兵器だ。

Raabe
ラーベ

しかも尋常でない知識と技術が注ぎ込まれている。 とんでもない量のリソースもな。

Raabe
セリカ

うんうん。ってことは、私のドライブは……。

Celica

1: 兵器と仲良くなるドライブ?
2: ミネルヴァを操るドライブ?

1:
2:

ラーベ

簡単に言うとそういう感じになるな。 だがさすがにもう少し、小難しい説明をしておくぞ。

Raabe
ラーベ

セリカのドライブは、 その自立駆動型兵器と特殊なリンクをつなぐものだ。

Raabe
ラーベ

リンクする相手はミネルヴァに限定されているのか、 そうでないのかはわからん。

Raabe
ラーベ

ただ繋がることによって、ミネルヴァはセリカの意思を汲み取り、 それを己の行動指針とするようになる。

Raabe
ラーベ

つまり、セリカのしてほしいことをするようになるわけだ。

Raabe
ラーベ

ミネルヴァという戦力を 意思ひとつでコントロールできるドライブ、と言ってもいい。

Raabe
ラーベ

戦闘能力のないセリカが この魔物だらけの世界で旅をするには、うってつけの能力だな。

Raabe
セリカ

わぁ! じゃあ、私のドライブはミネルヴァがくれたってこと?

Celica
ラーベ

そういう解釈もできなくもないが……このドライブはあくまでも セリカ、お前を発現場所としている。『お前』の能力だ。

Raabe
ラーベ

プログラムをいじれば変化はさせられるだろうが、 現状、ミネルヴァはお前でなければコントロールできない。

Raabe
シエル

外的な要因で発現したドライブということですか。 そういうこともあるのですね。

Ciel
ラーベ

あるとも。ドライブは、強い魂が蒼に近付きさえすれば 現れる可能性がある。その過程は問わない。

Raabe
ラーベ

……とまあ、難しい話はこんなもんにしておこう。 本筋とあまり関係がない。

Raabe
ラーベ

重要なのは、セリカがドライブ能力者だという点だけだ。

Raabe

1: セリカがドライブ能力者だと……?
2: どう重要なの?

1:
2:

シエル

ドライブ能力者であれば、 ファントムフィールドの観測者である可能性があります。

Ciel
シエル

……その。要約しますと、我々の任務遂行のための 重要人物である可能性がある……ということです。

Ciel
ラーベ

ほう。らしくない説明の仕方だな。

Raabe
シエル

情報に誤りがあったでしょうか?

Ciel
ラーベ

いやいや。的確な要約だったとも。

Raabe
シエル

……ありがとうございます。

Ciel
セリカ

それって、私にシエルちゃんたちのお手伝いができるかも、 ってこと?

Celica
ラーベ

そうなるな。現段階では『かも』だが。

Raabe
セリカ

わあ。もしそうなったらいいね。 そしたら私たち、運命の出会いだ。山の中で。

Celica
ラーベ

今のところは迷子の回収だがな。

Raabe
セリカ

その点につきましては、これからどんどん恩返ししていくよ。 魔物の相手は私……というか、ミネルヴァにどーんと任せて!

Celica
シエル

とても頼もしいです……。

Ciel
ラーベ

さーて。だいぶ歩いたな。 目指していた街の反応が近づいてきた。もうひと頑張りだぞ。

Raabe
セリカ

いよいよかぁ〜。 ラーベさんたちに会えなかったら、今夜も野宿だったかも。

Celica
セリカ

どんな街だろう。楽しみだね。

Celica

第3節 用心棒参上!①/ 3. Bodyguards Arrive! - 1

Summary
途上の街に到着するも、そこは壊滅し無人と

なっていた。『災厄』によるものと思われる その被害の大きさに、一行は戦慄する。

セリカ

…………。

Celica
セリカ

……街、が……。

Celica
シエル

……壊滅状態です。

Ciel

1: どこもかしこもボロボロ……
2: なにがあったらこんなことに……

1:
2:

セリカ

怪我してる人がいるかも。助けなくちゃ。 すいませーん! 誰かいませんかー!?

Celica

1: 僕(私)も手伝うよ
2: 誰かいたら返事してください!

1:
2:

シエル

追従します。 ……検索……検索。

Ciel
シエル

生体反応、近くにはありません。

Ciel
セリカ

向こうのほうにも行ってみよう!

Celica
シエル

……この辺りも、反応はありません。

Ciel
セリカ

誰もいない……。そんな、誰も助からなかったの? それともみんな、逃げたあとなのかな。

Celica
シエル

あちこちに戦闘の痕跡があります。 この街で戦闘が行われたのは間違いないと思います。

Ciel
ラーベ

それもただの戦闘じゃない。

Raabe
ラーベ

とんでもなく……大きなものが、 街をえぐり取るように蹂躙していったんだ。

Raabe
セリカ

とんでもなく大きなもの……?

Celica

1: 巨大兵器とか?
2: 巨大な魔物?

1:
2:

ラーベ

いや違う。だとしたら、あるべきものが残っていない。

Raabe
セリカ

あるべきものってなに? もったいぶらないで、教えて。

Celica
ラーベ

見てわからないか? 死体だよ。

Raabe
セリカ

え? ……あ。

Celica
ラーベ

街は交戦状態にはあったはずだ。 だがその交戦を行っていた者の『痕跡』がどこにもない。

Raabe
ラーベ

死体がない。骨もない。 埋葬の跡もなければ、戦闘のあとに死体を集めた様子もない。

Raabe
ラーベ

それどころか生き残った人間が少しの間でも治療したり、 食事したりした跡もない。

Raabe
セリカ

そんな。じゃあ、生き残った人はいないってこと? みんな……死体も残らずに消えちゃった……の?

Celica
セリカ

そんな、どうして……。

Celica
ラーベ

セリカ……お前なら心当たりがあるんじゃないか?

Raabe
ラーベ

これほど無慈悲に破壊し尽くし、 その場に存在する生物すべてを消し去ってしまうものに。

Raabe
セリカ

……『災厄』。

Celica
セリカ

こんなことになっちゃうの? これほど……目茶苦茶にしちゃうの……? 災厄って。

Celica
セリカ

……私、実際に襲撃された場所を見たことはなかったの。

Celica
セリカ

イシャナは災厄とは無縁で。 ずっと遠い世界のニュースだったから……。

Celica
セリカ

世界のあちこちが、こんなことになってるんだ。 本当に、大勢の人が……いなくなっちゃってるんだね。

Celica
セリカ

……父さんは、どうだったんだろう。 父さんのいた研究所も、こんな感じになってるのかな……。

Celica
シエル

……動体反応を感知。 敵対反応。

Ciel
ミネルヴァ

……!

Minerva
セリカ

え、わ、なに!?

Celica
シエル

突然周囲に多数の反応が出現しました。 いくつかは先程交戦した魔物と同一の反応です。

Ciel
シエル

戦闘態勢に移行。 レイさん、側にいてください。

Ciel
セリカ

魔物……。 ミネルヴァ、戦うよ! みんなを守らないと!

Celica
ミネルヴァ

…………。

Minerva
ラーベ

おお、来た来た。 建物の影から、あっちにもこっちにも。対処しろ!

Raabe
シエル

了解。対象の排除を開始します。

Ciel

第3節 用心棒参上!②/ 3. Bodyguards Arrive! - 2

Summary
魔物に囲まれた一行。『災厄』の影響による

ものか数が多く、退路の確保すら難しい危険 な状況だが、そこに助太刀が現れる。

シエル

対象、消滅を確認。 同時に別個体の出現を確認。

Ciel
セリカ

ど、ど、どうしよう。あっちからも来てる! 私たち、囲まれちゃってない?

Celica
ラーベ

囲まれちゃってるな。しかもまだまだ出てくる。

Raabe
シエル

異物である私たちを排除するための防衛機構…… ですか?

Ciel
ラーベ

だろうな。

Raabe
ラーベ

しかし場所が広いせいか、この廃墟が生まれた原因のせいか わからんが、ずいぶんな大盤振る舞いだな。

Raabe
シエル

即時の突破、撤退は難しいです。 迎撃しつつ、少しでも手薄な方へ下がるしかありません。

Ciel
セリカ

手薄な方ね、わかった! ええっと……ど、どこもたくさんいるように見えるけど!

Celica
ラーベ

うーむ、こりゃまずい。退路確保は至難の業だぞ。

Raabe
シエル

検索……照合……。 このまま後方へ下がります。

Ciel
シエル

こちらのほうが圧倒的に少数です。 少しでも障害物のあるほうへ……。

Ciel
謎の声

<size=130%>わーっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!!</size>

Mysterious Voice

1: な、何者だ!?
2: その声は……!?

1:
2:

謎の声

助けを求める声あらば、どこへなりとも即座に参上! 人の世にありて影となり、か弱きものを守るが使命!!

Mysterious Voice
謎の声

駆け抜けるは風が如く、忍ぶ姿は林が如く……。 猛る心は火が如く! 堂々たる構えは山の如し!!!

Mysterious Voice
謎の声

とうっ!!!!!

Mysterious Voice
謎の声の主

そこな御一行、 魔物どもに囲まれてさぞかしピンチと見える!!

The Mysterious Voice's Owner
バング

我が名はシシガミ=バング!! 愛と正義のために戦う男!! ゆえに、助太刀いたぁぁぁぁぁぁす!!!

Bang
少女

うるっせーーーーぞ、おっさん!!!

Girl
少女

ぺらぺらぺらぺら口上が長いんだよ! 愛だか正義だか 知らねーけど、ひとりで勝手にどっか行ってんじゃねーぞタコ!

Girl
少女

そもそもこんなか弱い子供ひとり置き去りにして 全力ダッシュとか正気か?

Girl
少女

死ぬ気で走らされたじゃねーか! 余計な体力使わせんじゃねーぞ。あと声がでかいんだよ!!

Girl
バング

なーにを言うか、プラチナ! お主はただの子供ではあるまい! この愛の忍者、シシガミ=バング様の弟子でござるぞ。

Bang
バング

師の後を追うは弟子の務め、弟子の前に背を晒すは師の務め! よくぞついて参った!!

Bang
少女

はぁ??? 好きでついてきたんじゃねーっつーの!

Girl
少女

おっさんいなくなったらもういよいよわけわかんないから、 仕方なくだっつーの!

Girl
ルナ

あとルナ様はルナ様だ!! つーか弟子じゃねーから!!

Luna
バング

おお、そうでござった! ならばルナよ! 拙者と共に、か弱き旅人の窮地を救おうではないか!!

Bang
ルナ

お前話聞いてるか!?!?

Luna
ルナ?

ルナぁ……いちいち言い返すのやめときなってば〜。 それこそ体力の無駄遣いだよぉ〜……。

Luna?
ルナ

だからって大人しくしてられっか、セナ! こいつ放っとくとずーーーーっとこの調子だぞ!?

Luna
ルナ

ルナたち舐められっぱなしだぞ!?

Luna
シエル

……あ、あの方たちは一体……何者でしょうか?

Ciel
ラーベ

うるさ……いや、愉快な連中だな。

Raabe

1: 助太刀してくれるって言ってた!
2: 助けてくれるのかな?

1:
2:

セリカ

うんうん! きっと味方してくれるんだよ! おーい、助太刀、お願いしまーす!

Celica
バング

うむ、任されよ! 行くぞルナよ、セナよ! 魔物になど臆するでない!! うおぉぉぉぉぉぉ!!!

Bang
ルナ

なっ……誰がビビッてるって言った! この程度の魔物くらい、むしろルナ様ひとりで十分だし!

Luna
ルナ

かかってこいやオラーーーーー!!!

Luna

第3節 用心棒参上!③/ 3. Bodyguards Arrive! - 3

Summary
現れたバングとルナ、セナの助力で危険な状

況を切り抜けた。『異物』である彼らは元の 世界に戻るため、シエルたちに協力する。

シエル

……検索……検索。周囲に敵対反応、ありません。 戦闘終了。

Ciel
シエル

レイさん、ご無事ですか? ……怪我もないようですね、よかったです。

Ciel

1: 守ってくれてありがとう
2: すごい数だったね……

1:
2:

シエル

はい。一時はかなり厳しい戦況でしたが、 助太刀いただいたおかげで、どうにか打開できました。

Ciel
ルナ

へっへーん、どんなもんだ。 ルナ様の力思い知ったか!

Luna
バング

うむ、見事でござる、我が弟子ルナよ! お主の愛と正義の心、しかと見届けたでござる!

Bang
ルナ

だーから、弟子になった覚えはないって言ってんだろーが!

Luna
セリカ

あの、助けてくれてありがとうございました。

Celica
セリカ

私たちだけじゃ倒しきれなかったと思うの。 おかげでみんな、ほとんど怪我なしだよ。

Celica
セリカ

私、セリカ=A=マーキュリー。こっちはミネルヴァ。 はじめまして。

Celica
バング

おお、皆無事か! なにより、なにより。

Bang
バング

拙者はシシガミ=バング。 愛と正義のために戦う炎の忍者でござる!

Bang
シエル

私はシエル=サルファーと申します。 こちらはレイさん。こちらは、ラーベさんです。

Ciel

1: 助かりました……!
2: はじめまして、よろしくお願いします

1:
2:

バング

うむ! 見ればお主らもそれなりの手練れの様子。 先程の戦い、よく頑張ったでござるな!

Bang
バング

わっはっはっは!

Bang
ラーベ

そちらもかなり面白い人員のようだな。 バングに……ええと、そっちのチビっ子。ルナとかいったか?

Raabe
ルナ

誰がチビっ子だ、ひとつ目ウサミミボール! サッカーボールにすんぞ!

Luna
ルナ

ルナ様は、ルナ様だ! このルナ様直々に助けてやったんだから、感謝しろよな。

Luna
セリカ

うん、ありがとう。

Celica
セリカ

……あれ、あなた……どこかで会ったような、 会ってないような……。

Celica
ルナ

はぁ? ルナはお前なんか知らないぞ。

Luna
セリカ

そっかぁ。うーん、気のせいかなぁ。 誰かに似てるのかも……。

Celica
ラーベ

で、もうひとりはなんていう名前だ?

Raabe
シエル

もうひとり……?

Ciel
ラーベ

このルナという少女だが、肉体に対して魂がひとつじゃない。 もう一人……居るんだろ?

Raabe
ルナ?

……あれぇ、このボールさん、意外と賢いねぇ〜。

Luna?
ルナ?

わかってるなら、隠すこともないか〜。 はじめまして、僕はセナ。

Luna?
セナ

ルナと一緒にこの器を使っているんですけど……。

Sena
セナ

普段は基本的にルナが話しますから、 あまり僕のことは気にしないでくださいねぇ〜。

Sena

1: ルナと……
2: セナ?

1:
2:

シエル

ひとつの肉体……器に、 ふたつの魂が同時に存在しているのですか。

Ciel
シエル

拒絶反応などは起こらないのですか?

Ciel
ルナ

きょぜつはんのー? セナのことをキョゼツなんかするわけないだろ。

Luna
ルナ

ずっと一緒にいるんだからな。

Luna
セリカ

すごいね。 ずっと一緒なんて、仲がいいんだ。

Celica
ルナ

ふふん、まあな。

Luna
バング

ときに、少年少女よ。お主たち、なぜこのような 人っ子ひとりおらぬ廃墟を訪ねたのだ?

Bang
バング

ときに、少女たちよ。お主たち、なぜこのような 人っ子ひとりおらぬ廃墟を訪ねたのだ?

Bang
バング

このような魔素の濃い場所にいては、 魔物が集まってくるばかりでござるよ。

Bang
セリカ

私たち、それぞれやりたいことがあって、旅をしてるんです。

Celica
セリカ

向こうの方にある町で、ここにも町があるって聞いて 来たんですけど……。

Celica
ラーベ

……お前が前に立ち寄った町の方角は、反対だぞ。

Raabe
セリカ

こっちか。

Celica
セリカ

でも到着してみたら、なにもなかったんです。

Celica
バング

ふうむ、そうか。そういうことでござったか。

Bang
ラーベ

そっちはどうなんだ? 風変りな格好の大男と、 巨大な杖を持った子供とは、奇妙な取り合わせだ。

Raabe
ルナ

言っておくけど、誤解すんなよウサミミボール。

Luna
ルナ

ルナ様とこいつは、 たまたま目的が同じだったから一緒にいるだけだ。

Luna
シエル

目的は、なんですか?

Ciel
ルナ

……自分がいた世界に帰ること。

Luna
セリカ

それって……どういうこと? あなたたちは、この世界の人じゃないの?

Celica
ラーベ

ほうほう。異物か。

Raabe
ルナ

は? 異物ってなんだ?

Luna
ラーベ

お前たちのようなやつらのことだよ。 つまり『この世界の人じゃない』連中のことだ。

Raabe
ラーベ

より正確には、 この世界の人間じゃないと自覚している者、のことだな。

Raabe
セリカ

そんな人がいるの? うわぁ、すごい! じゃあ私の知らない『世界』がどこかにあるってことだよね。

Celica
セリカ

ここじゃない、別の世界かぁ。どんなところなんだろ。

Celica
セリカ

ねえねえ、バングさんたちのいた世界っていうのは、 どんな場所なの?

Celica
バング

それがはっきりとはわからぬのだ。 ただここではなかった、という確信だけがあるばかり。

Bang
バング

そんな状態でどこを頼ればいいかもわからず、 手がかりだけでも見つからぬかと流浪の旅に出た道中で……。

Bang
バング

このルナとセナと出会い、弟子としたわけでござる。

Bang
ルナ

弟子じゃねーから。おっさんが勝手に言ってるだけだから。

Luna
セナ

小さな子供をひとりで旅させるわけにはいかないから、 弟子として連れていく……って言って、聞かないんですよぉ〜。

Sena
セリカ

あなたたちが心配だったんだね。 ちょっと強引みたいだけど、いい人なんだね、バングさん。

Celica
ルナ

いい人〜〜〜ぉ?

Luna
バング

わっはっは、よせよせ、照れるではないか!!

Bang
セナ

……ねぇ、ルナ。そんなことより、この人たちにちゃんと 話を聞いたほうがいいんじゃないかなぁ〜。

Sena
セナ

この人たち、僕たちが困ってることについて すごく詳しいみたいだよぉ〜。

Sena
ルナ

なに、そうなのか!?

Luna
ルナ

おいお前たち! ルナたちが元の世界に戻るためには どうしたらいいのか教えろ! 今教えろ! すぐ教えろ!!

Luna
セリカ

わ、わ、待って。私はよくわからないの。 シエルちゃんたちは、わかる?

Celica
シエル

はい。異物の方々は、ファントムフィールド構築の際に 紛れ込んでしまった、本来はないはずの情報です。

Ciel
シエル

ファントムフィールドが解放されれば、この場に情報として 留める力からも解放されることになりますので……。

Ciel
ルナ

ふぁん、とむ?

Luna
ルナ

うがー! なに言ってんだか全然わかんないし! つまりなにすればいいんだ!?

Luna
シエル

その。私たちの目的が完遂されれば、 おのずと元の世界に戻るはずです。

Ciel
ルナ

なんだ、そうなのか。 そうならそうと、早く言えよな。

Luna
バング

手立てがないと弱っていたところでござった。 これはありがたい情報でござる。

Bang
バング

して、お主らの『目的』とはなんなのだ?

Bang
シエル

観測者を見つけて……。

Ciel
ルナ

難しい話はなしにしろよな。

Luna
シエル

ええと……窯を……。 ラーベさん、なんと説明すれば適切でしょうか。

Ciel
ラーベ

こんなところか……まあ、シエルにしてはよく頑張った。

Raabe
ラーベ

窯という施設を探している。簡単に言うと、 お前たちをこの世界に繋ぎ止めている元凶だ。

Raabe
ラーベ

それを破壊すれば、 お前たちはこの世界から解放され、元のあるべき場所に戻れる。

Raabe
ラーベ

ただしそのためには、 窯の場所を知っている人物を探さなければならなくてな。

Raabe
ラーベ

特徴は『ドライブ能力者』というだけだ。 これといって手がかりは今のところない。

Raabe
ルナ

はぁ? じゃあ結局、今のルナたちとなにも変わらないじゃんか。

Luna
ルナ

誰が知ってて、どこにあるのか、わかんないんだろ?

Luna
ラーベ

まあ、そうなっちゃうな。

Raabe

1: よかったら一緒に行かない?
2: シエルさんたちを手伝えば帰れるかもよ

1:
2:

ラーベ

そうだな。いい意見だ、レイ。 採用。

Raabe
ラーベ

情報はないが、我々には窯を破壊するための手段がある。 お前たちが元の世界に戻るためには、不可欠なものだ。

Raabe
ラーベ

しかしこちらは少々戦力に欠ける。今のような大規模な襲撃が 今後もあるようだと対処が厳しい。

Raabe
ラーベ

同行して、戦力となってくれないか?

Raabe
ラーベ

私たちの任務が無事完了すれば、 お前たちの望みも叶うわけだしな。

Raabe
ラーベ

悪い話ではないだろ?

Raabe
バング

ふーむ、なるほど。 それは拙者としても、ありがたい提案でござるなぁ。

Bang
バング

この見知らぬ世界では頼るものもわからぬ始末。

Bang
バング

であれば、事情を知り、解決方法を持つというお主らの力に なることが一番よかろう。

Bang
ルナ

ルナも! ルナも行くぞ!

Luna
ルナ

ルナたちは……大事な人に会いに行く途中だったはずなんだ。 よくわかんない世界でフラフラしてる暇はない!

Luna
セリカ

やったぁ! じゃあ決まり! みんな行こう!

Celica
ルナ

で、行くってどこ向かってるんだ?

Luna
セリカ

日本だよ。

Celica
バング

日本……? 確か、かつてこの世界を襲った『災厄』によって 滅ぼされた土地……と、聞いておるが?

Bang
シエル

はい。その日本で消息を絶った、セリカさんの『父さん』について 調査するために向かっています。

Ciel
ラーベ

ちょっと気になることもあってな。 そこにもしかしたら、我々の探し物があるかもしれない。

Raabe
ラーベ

……なくても、手がかりくらいはあるだろう。

Raabe
ルナ

そっか。わかった。 んじゃ、目的地は日本だな。

Luna
バング

日本へ向かうのであれば、海に出ねばなるまい。 彼の国は島国だ。 か

Bang
バング

東へ向かい、 海岸沿いにあるだろう港町に辿り着く必要があろうな。

Bang
ルナ

海か! 海が見れるんだな!

Luna
シエル

海がお好きなのですか?

Ciel
ルナ

別に好きってわけじゃないけど、 海ってなんか旅してる気分出るじゃんか。

Luna
シエル

そう、なのですね。

Ciel
ルナ

知らないけど。ルナはそうなるって話! お前のことはお前が決めればいいだろ。

Luna
シエル

……………。

Ciel
セリカ

それじゃあ、みんなで日本に向けてしゅっぱーつ!

Celica
ラーベ

待て待て。 今日はもう店じまいだ。

Raabe
セリカ

え?

Celica
バング

うむ。日が傾いてきておる。 じきに夜になり、辺りは暗くなろう。

Bang
バング

今から次の町を目指すより、 建物の跡地を利用して野営の準備をしたほうがよいでござるよ。

Bang
セリカ

そっかぁ……残念。

Celica
バング

夜闇の交戦は、危険すぎるでござるからな。 危険を回避し、体を整えるのもまた旅の極意でござる。

Bang
シエル

バングさんは旅慣れているのですね。

Ciel
バング

少々心得があるだけでござるよ。 では皆の衆! 火を起こす支度と参ろう!

Bang
セリカ

キャンプみたい。楽しそう!

Celica
ラーベ

楽しそうってお前、のんきな……。

Raabe

1: そこがいいところじゃない?
2: 頼もしい仲間が増えて、よかったね

1:
2:

If Choice 1:
セリカ

ふふ。でしょ! のんきでいられるなら、そのほうがいいよ。

Celica
If Choice 2:
セリカ

うん! みんなで行けば、たどり着けるよね。 きっと!

Celica
シエル

…………。

Ciel
シエル

…………。

Ciel

第4節 東を目指して①/ 4. Heading East - 1

Summary
壊滅した街を訪れた二人の女性、ナインとト

リニティ。セリカの身を案じ後を追う彼女た ちだが、セリカは既にこの地を離れていた。

三角帽子の女

……なによ。なんにもないじゃない。

Woman Wearing a Witch's Hat
フードの女

ナイン。昨日お話をうかがった方も、 そうおっしゃっていたではないですかぁ〜。

Woman Wearing a Hood
フードの女

どうやら『災厄』の被害に遭っていて、 今はもう、街は残っていないらしい……と。

Woman Wearing a Hood
ナイン

わかってるわよ、トリニティ。

Nine
ナイン

だけどそいつ、教えたんでしょう? ここに街があるって、あの子に。

Nine
ナイン

あの子のことだから、 真っ直ぐここへ辿り着けているとは思えないけれど。

Nine
ナイン

それでもやっとの思いで到着した先が この有様だったなんて……。

Nine
ナイン

あぁ、きっとがっかりしたはずよ。かわいそうに。

Nine
トリニティ

そうかもしれませんね……優しい子ですから。

Trinity
トリニティ

誰もいませんね。

Trinity
ナイン

そりゃそうよ。本当に『災厄』によって崩壊したのなら、 ここはもう1年くらいこのままってことでしょ。

Nine
ナイン

好き好んで寄り付くやつなんかいるものですか。 いたとしても、魔物の餌食になるだけよ。

Nine
ナイン

……なのに、あの子ったら。 本当に、心配ばっかりかけるんだから。

Nine
トリニティ

早く追いつけるといいのですけれど……。 あら?

Trinity
トリニティ

ナイン。この辺り、野営をした跡がありますよぉ。 どれくらい前に使用されたものかはわかりませんが……。

Trinity
ナイン

見せて。

Nine
ナイン

……残っているマナの痕跡からして、複数人ね。 それにこれ……あの子の魔力の反応だわ。

Nine
トリニティ

では、ここで休憩されたのですね。 それも、誰かと一緒に。

Trinity
トリニティ

あぁ、よかったですぅ。 おひとりではないのですね〜。

Trinity
ナイン

ええ……ひとりじゃないようね。

Nine
ナイン

ふぅん……誰かしら……私の可愛い妹に近付いて、 あの子をたぶらかした不届き者は……。

Nine
ナイン

見つけなくちゃ……必ず。

Nine
トリニティ

な、ナイン〜? 悪い人に騙されていると、決まったわけではありませんよぉ。

Trinity
トリニティ

とても親切な人に、旅を手伝ってもらっているだけなのかも しれないじゃないですかぁ。

Trinity
ナイン

だったとして、そいつが最後まで親切でいる保証はないわ。 相手はあの子よ?

Nine
ナイン

あれだけ可愛い子が近くにいて、 おかしな気を起こさないやつがいる!? いいえ、いないわ!!

Nine
トリニティ

え、ええと〜……世の中にはそういう気を起こさずに 親切にしてくださる方も、いると思いますけれど……。

Trinity
トリニティ

とはいえ、保証がないのも事実です。 楽観視せずに、早く追いかけましょう〜。

Trinity
ナイン

ええ。絶対に見つけて、連れ戻すわよ。

Nine
ナイン

待ってなさい、セリカ。

Nine
バング

なんと! お主、記憶喪失とな!?

Bang

1: はい、そうらしいんです
2: ラーベは徐々に思い出すって

1:
2:

ルナ

覚えてないって、なーんにもか? 全部?

Luna
セリカ

シエルちゃんたちに教えてもらったおかげで、 名前だけはなんとか思い出せたみたいだよ。

Celica
ルナ

名前だけか……。他にはなんも思い出せないのか? シエルたちのことも? 仲間なんだろ?

Luna

1: お世話になってるのはわかるけど……
2: 具体的なことはまだなにも

1:
2:

ルナ

ふーん。じゃあがっかりだな、シエルは。 自分のこと忘れられちゃったなんてさ。

Luna
シエル

いえ……私は……。

Ciel
バング

これ、よさんか。レイ殿とて、 よもや好きで忘れたわけでもあるまい。

Bang
ルナ

それはそうかもしれないけどさー。 忘れられちゃったほうは、覚えてるじゃん。

Luna
ルナ

ルナだったら嫌だな。大事な人がルナのこと忘れちゃったら…… 忘れちゃったら……。

Luna
セナ

あ。泣いちゃう、ルナ?

Sena
ルナ

はぁ!? 泣かねーし! そんくらいでルナ様が泣くか!

Luna
ルナ

ただ、めちゃくちゃヘコむけどな!!

Luna
ラーベ

おーおー、お子様は物言いに遠慮がないな。

Raabe
ルナ

お子様じゃない、ルナ様だ!

Luna

1: 確かに薄情だよね……
2: ごめんなさい、シエルさん

1:
2:

シエル

いえ。私のことはどうか、お気遣いなく。 むしろ……阻止できずに、申し訳ありません。

Ciel
セリカ

もう、どっちかが悪いってことじゃないんだから、 ふたりともそんなシュンとした顔しないで。

Celica
セリカ

大丈夫。ちょっとずつ思い出すよ。

Celica
セリカ

もし思い出せなかったら、そのときはもう一度最初から 始めたらいいんだし。一緒にいるんだからさ。

Celica
セリカ

……もし完全に忘れちゃっても、その人のことが 大事じゃなかったってことにはならないと思うよ。

Celica
ルナ

えー。そうかなー。

Luna
セリカ

そうだよー。

Celica
バング

ふーむぅ……ラーベ殿、ご助言願いたい。

Bang
ラーベ

……ああ、道か。

Raabe
バング

うむ。この先前方、なだらかな丘陵地帯になっておる。

Bang
バング

日当たりはよく明るいが、視界は開けているため ひとたび魔物と遭遇すれば、逃げ隠れはできまい。

Bang
バング

丘を回り込むように、下方の森林地帯を行く手もござる。 だがあちらは昼間でも薄暗く、日暮れの影響も早くに受けよう。

Bang
バング

はてさて、どちらの道を行ったものか。 この辺りで腹を決めておかねばならぬでござる。

Bang
ラーベ

うーむ、そうなんだよなぁ。 今夜もきっと野宿だ。野営のことも考えないといけないし……。

Raabe
ラーベ

とかなんとか言ってる間に、 せっかちな連中が集まってきたみたいだな。

Raabe
シエル

はい。前方及び右方向から、多数の敵性反応が接近中です。 すでにこちらは補足されている模様です。

Ciel
バング

なんと!?

Bang
バング

皆、固まって、離れるでないぞ。 こう開けた場所では容易に分断されかねん!

Bang
ルナ

わ、わかった!

Luna
シエル

レイさん、セリカさん、気を付けてください。

Ciel

1: シエルさんの側から離れない、だよね
2: ひとりにしないでね……!

1:
2:

シエル

はい。レイさんの護衛は、私の任務です。 お守りします。

Ciel
ルナ

来た来た、たくさん来た!

Luna
シエル

対象を補足。迎撃します。

Ciel

第4節 東を目指して②/ 4. Heading East - 2

Summary
草原地帯を進むシエルたち。

一行は多数の魔物に囲まれるが、 共に力を合わせて襲撃を切り抜ける。

バング

ぬおぉぉぉぉぉぉぉぉ!! 多勢に無勢なにするものぞ!!!

Bang
ルナ

このこのこのこの! ……って、まだいるのかよ!

Luna
ラーベ

バングが危惧していた通り、 丘は多数に囲まれるときついな……。

Raabe
シエル

そうですね……。 くっ……。

Ciel

1: シエルさん、後ろ!
2: ぎゃー、助けてー!

1:
2:

シエル

はっ!

Ciel
ルナ

へっへーん! 隙ありだ!

Luna
ルナ

こいつら、数は多いけど大して強くないぞ。 やれるやれる!

Luna
バング

うむ! 我等の敵ではないわ! さあもうひと踏ん張りでござるよ、シエル殿!

Bang
シエル

は……はい!

Ciel

第4節 東を目指して③/ 4. Heading East - 3

Summary
戦闘が終わると、その場からセリカの姿が消

えていた。手分けして捜索することになり、 シエルと入った森の奥で彼女を発見する。

ルナ

よっしゃぁ! どんなもんだ、魔物め。ばーかばーか!

Luna
シエル

はぁ、はぁ…… 対象の排除を完了しました……。

Ciel
バング

よく戦ったでござるな、シエル殿。 見事であったぞ!

Bang
シエル

……ありがとうございます。ですが……。

Ciel
ラーベ

不調は仕方がないだろう。 お前は特にレイの観測の影響を受ける。

Raabe

1: ちゃんと思い出せればな……
2: 迷惑かけてるよね

1:
2:

シエル

いえ……問題ありません。 少し休憩をいただければ……すぐに動けます。

Ciel
バング

あまり無理をするでないぞ。 おなごはこういうとき、どーんと頼もしい男に頼るものよ!

Bang
ルナ

どこにいんだよ、そんな男。

Luna
バング

拙者がおるではないか! 皆まで言わせるな、わっはっはっは!

Bang
ラーベ

……ん? おいちょっと待て。セリカはどこだ?

Raabe
シエル

え? あ……

Ciel
シエル

姿がありません。ミネルヴァさんもです。

Ciel
ルナ

あ! そういえばさっき、魔物に追っかけられてたような……。 あのでっかい人形がいるから、大丈夫だと思ったんだけど。

Luna
バング

新たな魔物に遭遇しているのやもしれん。 探すでござるよ!

Bang
シエル

はい!

Ciel
シエル

セリカさん! セリカさん! どちらですか?

Ciel
ルナ

おーい! どこだー、返事しろー!

Luna

1: セリカさーん!
2: いないな……

1:
2:

ルナ

ったくも〜、世話焼かせやがって〜。

Luna
シエル

……それらしい反応は見つけられません。 魔素が濃いせいか、センサーも鈍いようです……。

Ciel
シエル

もしかしたら、あの特異な方向感覚によって どこか遠くへ行ってしまったのかもしれません。

Ciel
ルナ

え〜? ……もうちょっと遠くまで見てくるかぁ。めんどくさいな〜。

Luna
シエル

では、私はこちらのほうを見てきます。 レイさん、ご同行願います。

Ciel

1: うん、わかった
2: 別のほうを見てこようか?

1:
2:

If Choice 1:
シエル

ありがとうございます。

Ciel
If Choice 2:
シエル

いえ、できればご一緒にお願いします。

Ciel
シエル

魔物は異物である私やレイさんを、 積極的に標的にします。

Ciel
シエル

いつ襲撃があるかわかりませんので、 できるだけ近くにいていただいたほうが安全です。

Ciel
シエル

戦力としては、いささか力不足ですが……。

Ciel
シエル

……いえ、なんでもありません。 行きましょう。

Ciel
シエル

セリカさん、いらっしゃいますか?

Ciel

1: なかなか見つからないな……
2: セリカさーん、どこー!?

1:
2:

シエル

検索……反応、確認できません。 こちらの方角から、ぼんやりとは感じられたのですが……。

Ciel
シエル

魔素の影響が大きいようです。 もう少し検索してみます……。

Ciel

1: セリカさんだ!
2: 追いかけよう!

1:
2:

第4節 東を目指して④/ 4. Heading East - 4

Summary
セリカを見つけて合流できたが、今度はシエ

ルとはぐれてしまった。探して歩くうちに、 なぜか森の奥深くへと踏み込んでしまう。

セリカと踏み入った森の奥で、多数の魔物に

襲われてしまう。その窮地を救ったのは、 氷の魔術を操るアハトという女性だった。

セリカ

んー、みんなどこ行っちゃったのかな。 中々会えないなぁ。

Celica
セリカ

もっとこっちかも。行ってみよう、ミネルヴァ。

Celica
ミネルヴァ

…………。

Minerva
ミネルヴァ

…………!

Minerva
セリカ

え、なに? どうしたの?

Celica

1: セリカさーん!
2: ちょっと待って、行かないで!

1:
2:

セリカ

わ! レイ!?

Celica
セリカ

もしかして……私のこと、探してくれてたの? ありがとう!

Celica
セリカ

戦ってる最中に、魔物に追いかけられちゃって…… 逃げてたら、いつの間にかみんなとはぐれちゃってたの。

Celica
セリカ

すぐにミネルヴァが来てくれたから、魔物は倒せたんだけど…… みんなのところに辿り着けなくなっちゃって、困ってたんだ。

Celica
セリカ

レイと会えてよかった。 まずはひとり、合流だね。

Celica

1: え? ひとり?
2: いや、シエルさんも一緒だよ

1:
2:

If Choice 1:
セリカ

うん。あなたひとり……だよ?

Celica
If Choice 2:
セリカ

え? シエルちゃん、いないよ?

Celica

…………。 ……………………。

1: あれぇ? いない!?
2: 置いてきちゃった!?

1:
2:

セリカ

あらら……。じゃあ、探しに行こう。 途中まで一緒だったんでしょ。だったらきっと近くだよ。

Celica
セリカ

確か、こっちから来たよね。行ってみようよ!

Celica

1: ん? こっちだっけ?
2: 森の中って方向感覚狂うなぁ

1:
2:

セリカ

レイ、早く早く!

Celica
セリカ

うーん……シエルちゃん、いないねぇ。 どこ行っちゃったんだろう。

Celica

1: 本当にこっちだったかな……
2: むしろ僕たちが迷子なのでは

1:
2:

1: 本当にこっちだったかな……
2: むしろ私たちが迷子なのでは

1:
2:

セリカ

大丈夫、心配しないで。 森って道に迷いやすいけど、そのうち出られるから!

Celica
セリカ

道はぜんぶ繋がってる、って言うでしょ? 森の中はどこも道みたいなものだから、絶対出られるよ。

Celica
セリカ

はぐれないように、ついてきてね。

Celica
セリカ

シエルちゃーん、どこー? 私たちはここだよー!

Celica
セリカ

……ん? 今、なにか聞こえた?

Celica
ミネルヴァ

……!

Minerva
魔物

グオオォォォォォォ!!!

Monster
セリカ

きゃぁっ! び、びっくりした!

Celica
魔物

ギシャァァァァァァァァ!!

Monster

1: うわ、こっちからも来た!
2: なんとか切り抜けないと……

1:
2:

セリカ

ミネルヴァ、頑張れる……? ごめんね、お願い!

Celica
ミネルヴァ

…………。

Minerva
ミネルヴァ

…………。

Minerva
セリカ

ミネルヴァ、大丈夫? 傷、すぐに治すから。

Celica
セリカ

わわわ、今度はこっちから……!

Celica

1: 僕(私)が囮になるから逃げて!
2: 諦めないで、持ちこたえよう

1:
2:

If Choice 1:
セリカ

そ、そんなことできないよ! ミネルヴァ、お願い。頑張って……!

Celica
If Choice 2:
セリカ

そうだよね……みんな近くにいるはず! ミネルヴァ、お願い。頑張って!

Celica
ミネルヴァ

…………。

Minerva
ミネルヴァ

……!

Minerva
セリカ

え……!? な、なに今の? 魔術? 誰?

Celica
金髪の女

……怪我はない?

Blonde Woman
セリカ

あ! あなたが助けてくれたの? ありがとうございます!

Celica
金髪の女

いいえ、どういたしまして。 魔物がずいぶん騒がしいから、まさかと思ったら。

Blonde Woman
金髪の女

もうすぐ日が暮れようってときに森の中を歩き回るなんて、 危ないわよ。一体どうしたっていうの、迷子?

Blonde Woman
セリカ

は、はい……実は。

Celica
セリカ

仲間と一緒だったんですけど、はぐれちゃって。 探してる途中だったんです。

Celica
金髪の女

仲間? そう、近くにいるの。 だったらそこまで連れて行ってあげるわ。

Blonde Woman
金髪の女

こんな場所に子供をふたり置き去りにするなんて、 気分良くないものね。

Blonde Woman
セリカ

わぁ、ありがとうございます! 助かっちゃう。

Celica
金髪の女

それで? どっちから来たとか、わかる?

Blonde Woman
セリカ

はい。あっちです。

Celica
金髪の女

……そっち、思いっきり崖だけど。 あなたたち、崖から落ちてきたの?

Blonde Woman
セリカ

え? あれ? あ、ほんとだ。 あれ?

Celica
金髪の女

呆れた。方角もわからずに、森の中を歩き回ってたの? 自殺行為よ。

Blonde Woman
セリカ

あう……すみません……。

Celica
金髪の女

はぁ。本当に、私に会えたことを感謝するのね。 少し辺りを探ってみるから、大人しくしていなさい。

Blonde Woman
セリカ

はい!

Celica
セリカ

これ、魔術だ……。さっきの氷の技も魔術だった。 あなた、魔術師なんですね。

Celica
アハト

……そうよ。名はアハト。 そういえば、あなたたちは?

Acht
セリカ

セリカ=A=マーキュリーです。こっちはミネルヴァ。 それからレイ。記憶喪失なの。

Celica
アハト

記憶喪失? ……それ本気? 冗談?

Acht

1: 本気なんです
2: 冗談だったらよかったんですが……

1:
2:

アハト

ふうん。それはさぞかし、お困りでしょうね。 自分がどこの誰かもわからないんでしょう?

Acht
アハト

……まあ、私も人のこと言えないわけだけど。

Acht
セリカ

どういう意味ですか? お姉さんも記憶喪失?

Celica
アハト

いいえ、違うわ。 ただ私は……ふふ、変な女だと思うでしょうけど。

Acht
アハト

私……この世界の者ではないのよ!

Acht

1: それって……
2: お姉さんも異物?

1:
2:

セリカ

バングさんやプラチナちゃんと一緒だ!

Celica
アハト

なんですって!?

Acht
アハト

……あなたたち、面白い情報を握っているみたいね。 道すがらでいいわ。少し聞かせてくれない?

Acht
セリカ

はい。いいですよ。

Celica

第4節 東を目指して⑤/ 4. Heading East - 5

Summary
アハトの先導によって、無事にシエルたちの

もとに辿り着くことができた。アハトは自ら を、バングらと同じ『異物』であると言う。

ラーベ

……よしと。とりあえず応急処置はこんなもんか。

Raabe
シエル

……ありがとうございます。 至急、レイさんの捜索に戻ります。

Ciel
ラーベ

ああ。今度は私も同行しよう。

Raabe
ルナ

はぁ? 魔物にやられて怪我したばっかじゃん。 大人しくしてろよ〜。

Luna
バング

そうでござるよ。無理はいかんでござる。 捜索なら拙者たちが向かうゆえ。

Bang
シエル

問題ありません。戦闘行動に影響はありませんし、 索敵も機能しています。

Ciel
シエル

負傷箇所はレイさんと合流できれば、 徐々に修復されます。ご心配は無用です。

Ciel
ルナ

そうは言うけどさぁ……。

Luna
ラーベ

レイは我々にとって、最重要項目のひとつだ。 こう言ってはなんだが、シエルの多少の怪我よりもな。

Raabe
ルナ

お前! そんな言い方冷たいだろ!

Luna
シエル

いえ、当然の……。

Ciel
シエル

反応、感知しました。

Ciel
ラーベ

ん? 反応? ……お! 本当だ。あっちだな。

Raabe
セリカ

おーい! みんなー!

Celica
シエル

セリカさんの声です。……目標、視認しました。 レイさんも一緒です!

Ciel
セリカ

シエルちゃーん、プラチナちゃーん! ああ、よかった。みんないた〜!

Celica
ラーベ

お前たち! ったく、一体どこに行ってたんだ!?

Raabe
ラーベ

非戦闘員がふたり揃って行方をくらますとか、 肝が冷えるどころの話じゃないぞ!

Raabe
セリカ

ごめんなさい……。 魔物から逃げてたら、森に迷い込んじゃって。

Celica

1: すみませんでした……
2: 以後気を付けます

1:
2:

シエル

レイさん、セリカさん。 おふたりともご無事ですか? お怪我は?

Ciel
セリカ

大丈夫だよ。 シエルちゃんは……って、あ、怪我してる!?

Celica
シエル

はい。レイさんを捜索している最中に、 魔物に遭遇し……不覚を取りました。

Ciel

1: 僕(私)のせいで……
2: ……ごめん

1:
2:

シエル

いえ。違います。レイさんは セリカさんを発見し、即座に追跡を開始されました。

Ciel
シエル

……反応が遅れ追従できず、反応も見失ってしまった 私の過失です。申し訳ありません。

Ciel
セリカ

ううん、そもそも私がいなくなったからだよね。 ごめんね。傷見せて、すぐ治すから。

Celica
シエル

気にしないでください。レイさんと 合流できましたから、少しすれば修復が完了するはずです。

Ciel
セリカ

だとしても、痛いのは早くになくなったほうがいいでしょ。 見せて。

Celica
シエル

……はい。

Ciel
シエル

……温かいです。

Ciel
セリカ

嫌な感じしない? よかった。 私にはこれくらいのことしかできないから。バンバン頼って。

Celica
セリカ

頼ってもらえたら、私も嬉しい。

Celica
シエル

…………。

Ciel
シエル

……はい。

Ciel
セリカ

治療、完了! 痛くない?

Celica
シエル

はい。違和感もまったくありません。

Ciel
セリカ

よかったぁ〜。

Celica
バング

うむ、皆合流できたし、一件落着でござるな! ところで……。

Bang
バング

こちらの美しい女性は、どなたでござるか?

Bang
ラーベ

『アハト』ねぇ……。 旅の魔術師で……自分を異物だと感じていると。

Raabe
アハト

ええ、そう。 あなたたちのことは、さっき人形遣いのお嬢さんから聞いたわ。

Acht
アハト

そちらの小さい子と、逞しい殿方。 ふたりは『自分がいた世界に戻る』ために旅をしているそうね。

Acht
バング

た……逞しい、殿方……。

Bang
ルナ

オイ、デレデレすんな、おっさん。

Luna
ルナ

そうだ。ルナの知ってる『世界』はこういう感じじゃない。 もっと……なんていうか……よくわかんないけど、違うんだ!

Luna
ルナ

だから帰る。 ……お前もそうなのか?

Luna
アハト

ええ。どうやら私たち、同じような境遇みたい。

Acht
アハト

それで……そちらのラーベさん?

Acht
アハト

あなたが率いる人たちは、私のような人間を……、 『異物』だったかしら?

Acht
アハト

その『異物』を元の世界に戻す術をご存知だとか。

Acht
アハト

というより、あなたがたの目的を達成することで、 結果的に私は元の世界へと戻される……。

Acht
アハト

といったような説明を受けたのだけれど。 本当のことなの?

Acht
ラーベ

その通り。間違いない。

Raabe
ラーベ

簡単に達成できることではないが、 我々は現在それを目指して、任務活動中だ。

Raabe
アハト

目的地は日本だそうね。 探し物は日本に?

Acht
ラーベ

行ってみないことにはわからん。 が……可能性はあると思っている。

Raabe
アハト

そう。 それなら、私もあなたたちに同行させてもらうわ。

Acht
アハト

そこのチビさんと赤マフラーさんがOKなら、 私も構わないでしょう?

Acht
ラーベ

おいおい、誰でも歓迎ってわけじゃないんだぞ。 素性の知れないやつをそう簡単に受け入れられるか。

Raabe
ラーベ

……と、言いたいのが本音だが、本当に異物となると 素性なんてないも同然だしな。

Raabe
セリカ

アハトさんはいい人だよ。私たちを助けてくれたし。 それにとっても強い魔術師だから、頼りにもなると思うな。

Celica
ラーベ

さっきも言っていたな、魔術師だとか。

Raabe
アハト

ええ。連れて行くのに値する実力かどうか、 測りたいというのなら、今すぐ味わわせてあげましょうか?

Acht
シエル

危険行動はやめてください。 排除対象になります。

Ciel
アハト

あら、真面目なのね、お嬢さん。

Acht
アハト

だけどあなたで私をどうにかできるなんて、 思い上がらない方がよくてよ。

Acht
セリカ

ち、ちょっとちょっと、喧嘩みたいになってない?

Celica
アハト

私はそんなつもりはないわ。 そうしてほしいなら、してあげるって言ってるだけ。

Acht
バング

な、なにやら女の戦いめいた雰囲気になってきたでござるよ。 拙者、固唾を飲んでしまうでござる……。

Bang
ルナ

どいつもこいつも、なにやってんだよー。

Luna
ルナ

んお? おーおー。 だったらちょうどいいのが来たみたいだぞ。

Luna
ルナ

あいつで実力、見せてもらおーじゃん。

Luna
シエル

大型の魔物、接近中です!

Ciel
ラーベ

また魔物か! しかもデカいやつ……。 本当にこの世界は魔物が多いな!

Raabe
アハト

ふん、この程度じゃ私の力をどこまで見せつけられるか 怪しいものだけど。いいわ、入隊試験があるなら受けましょう。

Acht
シエル

対象、なおも接近。攻撃態勢に移行します。

Ciel
アハト

無理に手出しすることないわ。 私に任せなさい。

Acht

第4節 東を目指して⑥/ 4. Heading East - 6

Summary
日本への同行を申し出たアハトは、氷の魔術

で魔物を退けその実力を示す。一行は彼女を 仲間に加え、次の目的地へと歩みを進める。

アハト

ざっとこんなものね。 どう? 私を味方に引き入れるメリット、感じてもらえた?

Acht
バング

ビシバシ感じたでござるよ! いやはや、魔術とはすごいものでござるな!

Bang
ルナ

すっげーな。オバさん、めちゃくちゃ強いじゃん!

Luna
アハト

オバ……。

Acht
ラーベ

うむうむ、こりゃ期待以上だ。 魔力はかのイシャナ十聖レベルなんじゃないか?

Raabe
アハト

あら、そう? ……そうでしょうね。

Acht
シエル

どうなさいますか、ラーベさん?

Ciel
セリカ

私は、一緒に来てほしいって思うけどな。

Celica
ラーベ

ふむーん……。

Raabe
ラーベ

採用!!

Raabe
ラーベ

ちょうど頭脳派の助っ人もほしいところだったからな。

Raabe
アハト

どうもありがとう。 改めて、よろしくね。アハトよ。

Acht

1: よろしくお願いします!
2: 元の世界に戻れるといいですね

1:
2:

If Choice 1:
アハト

ええ。よろしく。

Acht
If Choice 2:
アハト

ええ。そうね。

Acht
ラーベ

では戦力拡充もすんだところで、野営場所を決めるぞー。 道はこのまま、丘コースだ。

Raabe
ラーベ

方向音痴を抱えて森の中を抜けるのは あまりにリスクがあると判断した。

Raabe
ラーベ

その分、魔物の襲撃は増えるかもだが、 これだけ戦力が整っていればなんとかなるだろ。

Raabe
セナ

僕らは少しくらい、さぼってても大丈夫かもね〜。

Sena
バング

なにを言うか。お主とて立派な戦力! 頼りにしているでござるよ!

Bang
セナ

あ〜……じゃあ、ルナ、あとはよろしく〜。

Sena
ルナ

あ、こら! ルナばっかにやらせんな! たまにはセナも戦えよな!

Luna
アハト

……変わった子ね。

Acht
セリカ

そうなの。お話してると、楽しいよ。

Celica
ミネルヴァ

…………。

Minerva
シエル

…………。

Ciel

1: シエルさん、どうしたんですか?
2: ミネルヴァが気になりますか?

1:
2:

シエル

……いえ、なんでもありません。 先行し、野営地の候補を探してきます。

Ciel
ラーベ

おお、よろしく。

Raabe
ラーベ

明日には、この先にある村に到着できるはずだ。 順調にいけばな。

Raabe
ルナ

やった。そしたら、久し振りにお布団で寝れるんだな!

Luna
バング

ひとつ風呂などいただければ、最高なのでござるがなぁ。

Bang
アハト

その前に、目指している村がまだ生き残ってることを 願っておくのね。

Acht
アハト

旅をしている間、あちこち見てきたけれど。 『災厄』とやらのせいで世界はひどい有様じゃない。

Acht
アハト

情報も錯綜している。 『村がある』というその情報も、信憑性は薄いわよ。

Acht
セリカ

そうだね……。 次の場所は、みんなが平和に暮らせてたらいいな……。

Celica
セリカ

それを確認するためにも! 今夜はしっかり休もうね。

Celica
セリカ

みんなたくさん戦ってくれたんだし。 料理の支度は私にやらせて!

Celica

1: 自分にも手伝わせて
2: 僕(私)もお礼がしたい

1:
2:

セリカ

うん、一緒にやろ! よ〜し、張り切っちゃうぞ〜。

Celica
ラーベ

はしゃぐのはいいが、まずは場所の確保だっつーの。 ほら、移動するぞ。

Raabe
セリカ

はーい。

Celica

第5節 黒くて大きな化け物①/ 5. Gigantic, Pitch-Black Monster - 1

Summary
森を抜け村はずれに出た一行は、行く手に生

体反応を感知した。近づいてみると魔物の 群れに襲われる少年を発見、救出に動く。

気が付けば、あなたは世界にいなかった。

あなたがいない世界など、暗闇のようなもの。 どこへも行けない。なにもできない。

だから。

私はあなたに会いたい。

会いたい。

セリカ

わぁ、抜けたー! やっと開けたところに出たよ〜。

Celica
ルナ

ふい〜……ようやくだよ……。 朝から歩きっぱなしで、疲れたぁ〜!

Luna
アハト

そうね……。丘陵地帯を越えたと思ったら、荒野に山道。 最後は森。悪路続きだったもの……。

Acht
アハト

さすがに堪えたわ。

Acht
バング

確かに険しい道のりでござった。だが次の目的地を思えば、 これが最善の道であったのでござるよ。

Bang
ラーベ

そうだそうだ。もっと迂回すれば平坦な道もあったが、 そっちだとあと2日は野宿だ。

Raabe
ラーベ

最短にして最善のルートを導き出した私の能力に、 もっと感謝してくれてもいいんだぞ。

Raabe
ルナ

へ〜んだ。それだって、シエルとオッサンが何度も 地形確認して歩き回ったからじゃんか。

Luna
ルナ

オマエだけの手柄じゃないぞ!

Luna
ラーベ

な〜におう、生意気な。

Raabe
ルナ

生意気じゃないもんねー。 こういうの、正論っていうんだもんねー。べーだ。

Luna
ラーベ

っか〜〜〜! 言い方! 言い方がカチンとくるんだよなぁ!

Raabe

1: 仲がいいなぁ
2: まあまあ、相手は子供だから

1:
2:

If Choice 1:
ラーベ

いいわけあるか!

Raabe
ルナ

それはこっちの台詞だ!

Luna
If Choice 2:
ルナ

だーれが子供だ! スカポンタン! ルナ様と呼べ!

Luna
ラーベ

甘やかすな。つけあがるぞ、このタイプは。

Raabe
シエル

ご歓談中、失礼します。 前方に生体反応を多数、確認しました。

Ciel
シエル

魔物ではありません。 おそらく人です。

Ciel
バング

おお! きっと目指していた村に違いあるまい!

Bang
ルナ

村! よっしゃぁ、早く行こう! ふかふかのベッドと〜、おいしいごはんにありつくぞ〜!

Luna
アハト

ありつく、ってあなたねぇ。品位のない言い方だこと。

Acht
ルナ

ヒンイなんか知るか! そんなもんじゃお腹は膨れないってね。

Luna
ルナ

ってなワケで、お前ら行くぞ! ルナ様に続け〜!

Luna
セリカ

あ、待って待って〜! 私も行く〜!

Celica
ラーベ

おいこら! まだ村までは距離がある! 独断先行するんじゃない。また魔物に襲われるぞ!

Raabe
ラーベ

……ったく。世話の焼けるお子様たちだ。

Raabe
アハト

だけど、私たちも少し急いだほうがいいかもしれないわよ。 妙に空気が騒がしいわ。

Acht
バング

空気とな……ふうむ。

Bang
ラーベ

シエル、なにかわかるか?

Raabe
シエル

検索します。 …………。

Ciel
シエル

……あっ。前方に奇妙な反応を確認。 それと同じ地点に、人らしき反応があります。

Ciel
シエル

おそらく、交戦中と思われます。

Ciel
セリカ

それ、誰かが襲われてるってこと? 魔物かも! 大変、助けにいかなくちゃ!

Celica

1: 急ごう、みんな!
2: シエルさん、反応の場所に案内して!

1:
2:

シエル

……了解。追従してください。

Ciel
バング

拙者も行くでござるよ!

Bang
バング

助けを求める者のところに、正義の忍びあり、 でござるからなぁ!

Bang
アハト

はぁ。本当に考えなしのお人好しって感じね。 あなたのお連れ様方は。

Acht
ラーベ

そうなんだよ。もうちょっと損得とか後先とか考えてくれると、 生存率も上がるだろうになぁ。

Raabe
ラーベ

でも……だからこそ備わった力、なのかもしれないな。

Raabe
アハト

力というのは……あの子の? あれはなに。ドライブなの?

Acht
ラーベ

とりあえず、そういう扱いでいる。 実のところ、私にもどう判断していいのかわからん。

Raabe
ラーベ

……って、お前。レイの力のこと、 理解しているのか。

Raabe
アハト

さあ。見ているだけだもの。なんとなくしかわからないわ。 ……ただ、『なんとなくは』わかっている。ってところかしら。

Acht
アハト

私たちも急いだほうがいいわね。 あの子たちに任せておくのは少しばかり不安だもの。

Acht
ラーベ

それについてはまったく同感。 行くか。

Raabe
子供

うわぁぁぁ……!

Child

…………。

Shadow
子供

な、なんなんだ! なんなんだよぉ! なんでこんなところに魔物が……!

Child

…………。

Shadow
子供

真っ黒い……影……もしかして、これがあの……。 ひぃっ、く、くるなぁ!

Child
バング

待て待て待て待てぇぇぇぇい! どこの誰だか知らぬが、 よってたかって子供をいじめるとはなんたる悪行!

Bang
バング

この愛と正義の燃える忍、シシガミ=バングの目の黒いうちは、 見過ごさないでござる!!!

Bang
セリカ

待って〜〜〜! バングさん、速い……やっと追いついた〜。 運んでくれてありがとう、ミネルヴァ。

Celica
ルナ

ぜぇ、はぁ、この、オッサン!

Luna
ルナ

結局お前が誰よりも独断センコーしてんじゃねーか、 ひとりでかっこつけてずるいぞ!

Luna
バング

わっはっはっはっはっは! こういうのは早い者勝ちよ!

Bang
シエル

対象を確認。要救助者一名。 敵性反応……あれは……なんでしょう?

Ciel

1: 黒いもやもやしたものが……
2: しかもいっぱいいる

1:
2:

アハト

魔素の塊ね。 魔素が集まってなにかの形を取ろうとすることがあるの。

Acht
アハト

そこにどんな意図があるのかはわからないけれど……。 できあがったものは、大体魔物と同じよ。

Acht
アハト

理性も本能もなく、ただそこにあるものを飲み込んで破壊する。 それだけ。

Acht
ルナ

要は、ぶっ倒していいってことだよな!

Luna
ラーベ

そういうことだ。

Raabe
子供

た、た、助けて……!

Child

1: そこを動かないで!
2: もう大丈夫だよ!

1:
2:

シエル

戦闘態勢に移行。対象を排除します!

Ciel

第5節 黒くて大きな化け物②/ 5. Gigantic, Pitch-Black Monster - 2

Summary
少年の案内で目的の村に着く一行。だがそこ

は『災厄』と呼ばれる黒い怪物に襲われ、 薬や食料すら満足に揃わない状態だった。

ルナ

おー! ほんとに村あった!

Luna
セリカ

よかったぁ〜。無事に辿り着けて。 案内してくれて、ありがとう。

Celica
子供

へへ……どういたしまして!

Child
子供

でも助けてくれたのはお姉ちゃんたちだから、 お礼を言うのは俺のほうだよ。ありがとう。

Child
バング

うむうむ、きちんと礼を言えるのは素晴らしいことでござる。

Bang
母親

お前……どこに行ってたの! 姿が見えないと思ったら……まさか、村の外に行ってたの!?

The Mother
子供

ご、ごめんなさい。 みんなが、薬草がもっとあればって言ってたから……。

Child
母親

薬草……こんなもののために! お前にもしものことがあったら、お母さんとても……。

The Mother
母親

あ……ああ、すみません。 もしかして、この子を保護していただいたんですか?

The Mother
ラーベ

ちょうど、魔物に囲まれてるところを通りがかったもんでね。 いや、タイミングがよかった。

Raabe
母親

魔物に!? なんて無茶を……。

The Mother
子供

ごめんなさい……お母さん。

Child
ルナ

なに情けない顔してんだ、お前。 みんなのために頑張って薬草採りに行ったんだろ。

Luna
子供

あ……う、うん!

Child
ルナ

ま、その結果、黒いうねうねしたものに囲まれて、 泣きながらチビってたらカッコつかないけどなー!

Luna
子供

ち、チビってない!! あと、泣いてもない!!

Child
ルナ

泣いてたね〜。 べそかいてさ〜、腰抜かしてたじゃんか。

Luna
子供

ぬ、抜かしてないってば!

Child
ラーベ

やれやれ。一瞬いいこと言った風だったのに、すぐこれか。

Raabe

1: ルナなりの励まし方かな?
2: そのほうがルナらしいかも

1:
2:

セリカ

そうだね。そうかも。

Celica
母親

皆さま、本当にありがとうございます。 息子を助けてくださって……。

The Mother
母親

なんとお礼を申し上げていいか、わかりません。

The Mother
アハト

だったら、そのお礼代わりに教えてもらえないかしら。 私たち、休むところを探しているんだけど。心当たりはない?

Acht
母親

休むところ……ですか? この村で? それは……。

The Mother
シエル

宿泊施設のようなものは、ないのでしょうか。

Ciel
母親

……昔はね、あったんですけど。今はもう。

The Mother
母親

以前は土も豊かで、特産品なんかもあって。 遠くから人がくることもあったような場所なんですけどねぇ。

The Mother
母親

6年前の、あの『災厄』以降は……村は廃れる一方でして。

The Mother
母親

周りにあった大きな都市も、 みんな『災厄』にやられてしまいました。

The Mother
母親

この村は取り残されて…… 住人はみんな、自分たちの生活を営むのに手いっぱいです。

The Mother
母親

おもてなしやご宿泊なんて、とても……。

The Mother
ルナ

ってことは、宿なし!? マジかよ! え〜、ふかふかのベッドで眠れると思ったのにぃ〜。

Luna
セナ

もう、ルナ〜。わがまま言ったらだめだよぉ。 それに僕たち、野宿慣れっこじゃない。

Sena
ルナ

慣れとかの問題じゃない! いくら慣れてようが、ベッドで寝たいもんは寝たいんだ!

Luna
シエル

正式な宿でなくても構いません。 どこか休めるところは、借りられないでしょうか。

Ciel
シエル

せめてレイさんだけでも……。

Ciel
ルナ

なんでそいつだけなんだよ。ルナも休みたい〜〜〜!

Luna
シエル

あ。そ、そうですね。 ルナさんも、休めるような場所は……ありませんか?

Ciel
母親

そうですねぇ……。

The Mother
母親

……息子を助けてくださった方々ですから。 うちでよかったら、使ってください。

The Mother
母親

と言っても、狭い場所ですけれど。雨風はしのげると思います。 人数分の寝具はないんですけれど……構いませんか?

The Mother
母親

どこかで調達してくるというのも、難しくて……。

The Mother
バング

そうでござろうなぁ……。 見たところ、商店のような場所もない。

Bang
バング

それぞれがそれぞれの家で、できることを精一杯やる…… そんな様子でござる。

Bang
バング

こういうのは、覚えがあるでござるよ。 拙者の故郷を思い出すでござる。

Bang
ラーベ

ほう。元いた世界のことを、思い出したのか?

Raabe
バング

いや、生憎。 なんとなく、そうだったような気がしているだけでござる。

Bang
バング

だが故郷を愛しく思う気持ちに偽りはないでござる! いつになるかはわからぬが、きっと帰ってみせるでござるよ!

Bang
アハト

……そうね。

Acht
アハト

だけど、ちょっと気になるわね。この村、流通が途絶えて 廃れているっていうだけじゃないように見えるけど。

Acht
シエル

はい。あちこちに半壊状態の家屋が見られます。 まるでなにかに、襲撃されたあとのようです。

Ciel

1: 襲撃って、魔物に?
2: 襲撃って、災厄に?

1:
2:

If Choice 1:
シエル

破壊された建物の痕跡から推測すると、 かなり大型の魔物だと思われます。

Ciel
シエル

災厄の襲撃……とは、考えにくいですね。 災厄が原因であれば……。

Ciel
If Choice 2:
セリカ

災厄? でも……ここ一年くらいは、 どこにも出現していないって話だよ。

Celica
セリカ

それに、もし災厄が襲ってきたのなら……。

Celica
ラーベ

ひとつ前に立ち寄った、廃墟と化した街の被害状況に鑑みると、 被害が小規模すぎる。

Raabe
子供

ううん……災厄のせいだよ! 夜になると『災厄』が村を襲いにくるんだ!

Child
セリカ

それ、本当?

Celica
ルナ

だーかーらぁ、その災厄ってのはどこにも出てきてないんだろ。 なのになんでこの村には現れるんだよ。

Luna
子供

なんで、って言われても……俺にはわかんないけど。 でもあれは、確かに『災厄』だよ!

Child
アハト

……少し詳しく状況を聞きましょうか。

Acht
アハト

黒くて大きな化け物が、夜な夜な村を襲撃しては、 建物を壊したり、人を襲ったりしている……ってこと?

Acht
子供

うん、そうだよ。俺、ちゃんと見たんだ。 ……そいつに襲われて、お父さんもひどい怪我をしたんだよ。

Child

1: 黒くて大きな
2: 化け物……

1:
2:

シエル

それが『災厄』の姿なのですか?

Ciel
子供

そう聞いたんだ。 『災厄』は黒くて、すごく大きな化け物だって。

Child
セリカ

うん。私も同じように聞いてる。

Celica
セリカ

黒くて大きな……街ひとつくらい呑み込めてしまうくらい、 途方もない大きさの『ナニカ』だって。

Celica
セリカ

いくつも頭がある、獣のような姿だっていう報告も あったみたいだよ。

Celica
ラーベ

…………。

Raabe
アハト

だけど、街ひとつ呑み込めてしまうのなら、 この程度の規模の村なんて一度で滅ぼせるんじゃない?

Acht
アハト

それなのに、 この子の話だと襲撃は何度もあったみたいじゃない。

Acht
子供

それは……そうかもしれないけど。 でも実際に、あの黒い化け物は何度も村を襲ってるんだ。

Child
子供

村のみんなも『災厄』だって言ってる。 俺の前では、平気だとか言うけど。みんな怖がってるんだ。

Child
バング

この村に踏み入ったときから、なんとな〜く住人の表情が 暗く沈んでいるように思えたでござるが……。

Bang
バング

その襲撃に怯えているがゆえのことでござったか。

Bang
ルナ

襲われるってわかってるなら、なんで逃げないんだ?

Luna
子供

どこにも逃げられないって、大人はみんな言ってる。 近くに町はないし、行くあてもないし。

Child
子供

じいちゃんばあちゃんがたくさんいるから、みんな連れて いくのは無理だけど……置いてもいけないって。

Child
バング

気持ちはわかるでござるよ。共に暮らした者を切り捨てるなど、 簡単にできることではござらん。

Bang
バング

それにここは、皆が大事に守ってきた土地でもあろうしなぁ。

Bang
ルナ

だからってさぁ〜。

Luna

1: なんとか力になりたいな……
2: 僕(私)たちで倒せないかな?

1:
2:

セリカ

そうだよね! 私も、同じこと考えてたの。

Celica
セリカ

村を襲撃するのが災厄なら…… 倒すことはできないかもしれないけど。

Celica
セリカ

これ以上村が壊されないように、 追い払ったりするくらいはできないかな……?

Celica
ラーベ

相手が本当に『災厄』なら、まず不可能だろうな。

Raabe
アハト

だけど違うものだったら?

Acht
ラーベ

無論、不可能とは言い切れない。 なにより……その『災厄』とやらに興味がある。

Raabe
子供

それじゃあ……『災厄』を追い払ってくれるの!?

Child
母親

……ああ、すみません、息子の相手までしていただいて。 毛布、こちらに置いておきます。粗末なところでごめんなさい。

The Mother
セリカ

ありがとうございます! わあ、こんなにたくさん。ふかふか、あったかい〜。

Celica
子供

ねえねえ、お母さん。 この人たちが『災厄』を退治してくれるって!

Child
母親

なんですって? なにを言ってるの……。 すみません、きっとこの子が無茶を言ったんでしょうね。

The Mother
母親

あの化け物を……退治するだなんて。とんでもないことです。 そんな危険なこと、絶対になさらないでください。

The Mother
母親

あれは……とんでもないものです。 最初は私たちもなんとかしようとしましたが……。

The Mother
母親

まともに戦おうとすればするほど、 被害者が増えるだけです。

The Mother
ルナ

だからって、ずっと好き勝手させとくのか? それじゃいつか、ぜーんぶ壊されちゃうじゃんか。

Luna
母親

そうかもしれません……でもだからって、わざわざ自分から 命を捨てにいくことはないでしょう……。

The Mother
母親

皆さんはお客様です。この村の人間ではないのですから。 村のために危険を冒す必要なんてありませんよ。

The Mother
母親

悪いことは言いませんから、真に受けないでください……。

The Mother
母親

お前も、滅多なことを言うもんじゃないの。

The Mother
子供

……でも……はぁい。

Child
母親

それじゃあ、どうぞご自由にお過ごしください。 ただ夜は……あまり外に出ない方がよろしいかと思います。

The Mother
母親

私はよそで手伝いがありますので……これで。 あとでなにかしら、食事になるようなものを持ってきますね。

The Mother
バング

かたじけない。だがあまり無理をされぬよう。 我等とて、村やお主らの負担になりたいわけではござらん。

Bang
母親

……お気遣いいただいてすみません。 では……。

The Mother
バング

ふぅむ。 この村が立たされている状況はかなり厳しいようでござるな。

Bang
シエル

そうですね。 今の女性も、決して良好な健康状態には見えませんでした。

Ciel
子供

え? お母さん、どこか悪いの!?

Child
シエル

いえ、そこまではわかりません。 ただ標準体型を比べると、少々痩せすぎなように……。

Ciel
ラーベ

あー、ごほん。んっんっー。

Raabe
ラーベ

……シエル、あまり首を突っ込むな。

Raabe
シエル

あ……はい。

Ciel
アハト

……特にすることがあるわけじゃないし。 私は少し、村を見て回ってくるわ。

Acht
アハト

夜になると現れるっていう『災厄』らしきものについて、 何か感じ取れるものがあるかもしれないし。

Acht
アハト

可能そうなら、簡易的にでも 防御魔術を張っておくこともできるでしょうから。

Acht
ルナ

下着みたいな格好してるわりに、 意外とまともなこと考えてるんだなー。

Luna
アハト

……大人のファッションがわからないなら、 口を出すものではないわよ。

Acht
ルナ

ファッションっていうか、性癖って感じじゃんか。 見せたがりか?

Luna
アハト

ファッション、よ!

Acht
バング

ははは、まあまあでござる。 プラチナが生意気な口をきくのはいつものこと。

Bang
バング

少々あられもない格好と 拙者も思わなくもないでござるが……。

Bang
バング

女性の『ふぁっしょん』というものは、往々にして 素人には及びもつかぬ突飛なものでござるからなぁ!

Bang
セリカ

私も、セクシーで素敵だと思うな。それにこういう服装って、 着てる人としては意外と動きやすいらしいよ。

Celica
セリカ

お姉ちゃんがよく言ってる。

Celica
ルナ

ふーん……。

Luna
アハト

あなたも大人になったら、わかるわよ。 もっとも、育ったときの体型にもよるでしょうけど。

Acht
ルナ

なんだと!? ルナの胸がちっさいってことか!? デカパイがなんだ、胸がデカイとそんなに偉いのか!?

Luna
アハト

そう言ったつもりはないけど?

Acht
ルナ

って言いながら、胸を強調するなーーー! 馬鹿にしてんのかーーー!?

Luna
シエル

胸……バストが大きいと、 より優秀な能力を発揮できるのですか?

Ciel
シエル

防御力の向上に繋がるのでしょうか。 それとも……。

Ciel
ラーベ

こらこらこらこら。 収拾つかなくなるから。この話題はおしまいだ。

Raabe
セリカ

ふふふ。はーい。 それじゃあ、私たちはどうしてようか。

Celica
セリカ

防御魔術のお手伝いは、私にはできないから…… あ、そうだ!

Celica
セリカ

ねえ、あなた。さっき、薬草を採りに行ってたんだよね。

Celica
子供

うん、そうだよ。

Child
セリカ

その薬草、怪我した人たちに持っていくんでしょう?

Celica
子供

うん……。病院代わりに、怪我した人たちを集めて 看病してるところがあるんだ。

Child
セリカ

そこに私も連れて行ってくれない? 怪我した人の手当てのお手伝い、できると思うんだ。

Celica
シエル

治癒魔法、ですか。

Ciel
セリカ

うん、そう。 どうかな? いい?

Celica
子供

うん! いいよ! お父さんにも、お姉ちゃんのこと紹介してあげるね!

Child
セリカ

ありがとう。お行儀よくしてないとね。

Celica
セリカ

レイたちは、どうする?

Celica

1: 僕(私)もセリカと一緒に行こうかな
2: なにか手伝えたら、手伝いたいな

1:
2:

シエル

私は……レイさんに同行します。 護衛の任務が……ありますので。

Ciel
セリカ

うん! じゃあ一緒に行こう!

Celica
ラーベ

私は少し周囲を調べてくる。 『災厄』のことが少々気になっているんでな。

Raabe
バング

拙者は村を出て、食料になりそうなものを 探してくるでござるよ。

Bang
バング

野草でもキノコでも、果実でも肉でも。 もし多く手に入れば、宿代の代わりに献上することもできよう。

Bang
ラーベ

そうだな、それは助かるし、お前が適任そうだ。

Raabe
バング

任せるでござる!

Bang
ルナ

……ルナたちは?

Luna
セリカ

やりたいことがなかったら、一緒に行かない?

Celica
セリカ

怪我してる人はたくさんいるだろうし、 きっとお手伝いできることたくさんあると思うから。

Celica
セリカ

それにしっかり者のルナちゃんが来てくれたら、 私も心強いな。

Celica
ルナ

心強い? そう言われちゃったらなぁ〜。 付いて行ってやってもいいかなぁ〜。

Luna
セナ

あはは……すっかり扱い方、覚えられちゃってる……。

Sena
ラーベ

では一旦、解散。 後ほど、それぞれ情報を掴んだら報告するように。

Raabe
シエル

はい、了解です。

Ciel

第5節 黒くて大きな化け物③/ 5. Gigantic, Pitch-Black Monster - 3

Summary
魔法を使い、村の怪我人を治癒するセリカ。

彼女は人々が苦しむ現状を目の当たりにし、 村を襲う『災厄』に対処したいと考える。

セリカ

……はい、これでよし。どうですか? もう痛くない?

Celica
村人A

あ……ああ、大丈夫だ。 痛みもないし、おかしなところもない……。

Villager A
村人B

信じられん……あれだけの傷が、治ってるだなんて。 魔法ってのは、本当にあるんだな。

Villager B
セリカ

なんでもかんでも治せるってわけじゃないんですけど。 ここではお役に立ててよかった。

Celica
シエル

すごいですね……。 私には今のところ、どんな傷でも治せるように見えますが。

Ciel
セリカ

んー、そうでもないんだ。 なくなっちゃったものを補うのはとっても大変だし……。

Celica
セリカ

すごく弱ってる人に使うのは、私もちょっと怖いな。

Celica
子供

でも、すごいよ! ありがとう、お父さんの怪我も 治してくれて……きっとお母さん、喜ぶよ!

Child
セリカ

どういたしまして。

Celica
セリカ

でも実は、色んな人の前で使っちゃダメって言われてるから、 私がやったってことは内緒にしておいてね。

Celica
子供

わかったよ、お姉ちゃん。

Child
セリカ

……お姉ちゃんって呼ばれるの、ちょっと新鮮。

Celica
村人C

あの……すみません。 よろしければ、彼の治療も……お願いできませんか?

Villager C
セリカ

もちろん、任せてください。 傷を見せてくださいね。

Celica
ルナ

片っ端からかよ。お前、怪我人見つけたら 手当たり次第に治療しないと気がすまないのか?

Luna
セリカ

うん、そうなの。

Celica
セリカ

痛いのも苦しいのも、私嫌いだもん。 他の人にもできるだけ、そういうの味わってほしくないんだ。

Celica
セリカ

ルナちゃんやシエルちゃんや、レイも。

Celica
セリカ

小さな怪我でも、遠慮なく言ってね。

Celica
セリカ

役に立ちたいの。力になりたいの。 私にできるのって、本当にこれくらいだから。

Celica
セリカ

これくらいのことで、元気になれたり、 また頑張るぞって思えるなら、いいこと尽くしでしょ。

Celica
ルナ

頑張るのはいいけどさぁ。バカスカ魔法使ってると、 魔力切れになってぶっ倒れちゃうぞ。ルナ知らないからな。

Luna
シエル

魔法のリソースは、有限なのですか。

Ciel
セリカ

一応ね。

Celica
セリカ

魔法や魔術を使える人の中には、魔力っていう、 力の源みたいなものが入ってるんだって。

Celica
セリカ

私たち魔術師は、それを使って傷を治したり、 アハトさんみたいに敵を氷漬けにしたりするの。

Celica
セリカ

でもそれは、ずーっと同じように使っていられるって わけじゃなくて……うーん、そうだなぁ。

Celica
セリカ

あ、走り続けてると、どこかで疲れてきちゃうでしょ。

Celica
セリカ

魔法もそういう感じで、息切れしちゃって、 最終的にはなにもできなくなっちゃうんだ。

Celica
ルナ

最悪、命を削ることになるって、聞いたことあるぞ。

Luna
セリカ

うん……そういうことも、あるみたいだね。

Celica
シエル

セリカさんは、大丈夫なのですか?

Ciel
セリカ

まだ大丈夫! それに、よっぽどすごいのをドーンと 使うんじゃなければ、命を削るなんてことにまでならないよ。

Celica
セリカ

その前に、ルナちゃんが言ったみたいに倒れちゃうもん。

Celica

1: だからって、無理したらいけないよ
2: 倒れる前には休んでほしいなぁ

1:
2:

セリカ

はぁい。心配しないで。

Celica
村人C

ありがとうございます……助かりました。

Villager C
セリカ

いえいえ。お安い御用です。

Celica
セリカ

…………。

Celica

1: 怪我人が気になる?
2: 災厄が気になる?

1:
2:

セリカ

うん。やっぱり気になっちゃう……かな。

Celica
セリカ

本物かどうかはわからなくても、村の人が『災厄』って 呼んでるなにかのせいで、これだけ大勢の人が怪我してる……。

Celica
セリカ

なにかできないかな。できるなら、やりたいな。 ……なんて、戦えない私が言っても、格好つかないんだけど。

Celica
シエル

それは、村の方が『災厄』と呼んでいるものと 戦おうということですか?

Ciel
ルナ

おっ、やるかやるか? ルナ様はいいぞ。どんと来いだ!

Luna
セナ

えぇ〜……僕は嫌だなぁ。 だって大きくて強いんでしょう、その魔物……。

Sena
セナ

危ないよぉ〜。やめといたほうがいいと思うよ〜。

Sena
ルナ

なんだとセナの意気地なし! 根性見せろ!

Luna
セナ

そうはいうけどさぁ……死んじゃったら意味ないよ?

Sena
シエル

私も、セナさんに同意します。相当な危険が予想されます。 レイさんの身の安全を保証できません。

Ciel
セリカ

うん……それは、そうなんだよね。 私のわがままで、皆を危ない目に遭わせることになるし……。

Celica
セリカ

でも……ここで暮らしてる人たち、このままじゃ本当に……。

Celica

1: それでも助けたい
2: ラーベたちに相談してみよう

1:
2:

セリカ

うん! そうだよね!

Celica
ルナ

よーし、やってやろうじゃん!

Luna
シエル

……レイさんが、そう望まれるのでしたら。 私は全力で護衛を務めるまでです。

Ciel
シエル

…………。

Ciel

第5節 黒くて大きな化け物④/ 5. Gigantic, Pitch-Black Monster - 4

Summary
ラーベは周辺を調べた結果、村を襲う魔物は

本物の『災厄』ではないと結論づけた。一行 はその討伐に乗り出し、迎撃準備にかかる。

ラーベ

『災厄』と戦う?

Raabe
セリカ

うん。私たちでやってみたいの。 この村の人たちを助けたい。

Celica
ラーベ

構わんぞ。

Raabe
セリカ

そこをなんとかお願い! 無茶はしないって約束するか……ら? あれ? 今なんて言ったの?

Celica
ラーベ

だから、構わんぞと言ったんだ。

Raabe
シエル

…………。

Ciel
ラーベ

今、お前たちが言っている『災厄』というのは、 この村を襲撃してくる何者かに間違いないな?

Raabe
セリカ

う、うん!

Celica
ラーベ

村のあちこちに残っている、襲撃の被害状況を見てきた。

Raabe
ラーベ

痕跡を分析するに…… 村を襲っているのは、やはり本物の『災厄』ではない。

Raabe
シエル

本物でないとなると、偽物……なのですか?

Ciel
ルナ

ただの魔物とか?

Luna
アハト

実態がなんなのかは、 そのものを調査してみないことには断言できないわ。

Acht
アハト

だけどこれは…… そうね、残り香のようなものだと私は思うわ。

Acht
バング

残り香……でござるか?

Bang
ラーベ

残滓……とでも表現するかな。 計り知れない大きなものの足跡、残留物、余波。

Raabe
ラーベ

そういうものが滞留して集まって、固まって、 化け物のような姿を取っている……と言えるだろう。

Raabe
アハト

ここに来る途中でも、魔素の塊のようなものと戦ったでしょう? 性質は、あれによく似ていると思う。

Acht
アハト

ただ、村に出ている被害状況からして、 もっと強大なものでしょうけど。

Acht
セリカ

それって、倒せる?

Celica
ラーベ

わからん。

Raabe
ルナ

ええっ!? わかんないのかよ!? さっき、戦ってもいいって言ってたじゃん!

Luna
ラーベ

構わないと言っただけだ。 倒せるとも勝てるとも言っていない。

Raabe
ルナ

屁理屈だ〜!

Luna
ラーベ

違う。実際そうだろうが。 私やアハトの言っていることは、仮説にすぎない。

Raabe
ラーベ

仮説ってことは、想像ってことだ。多少の根拠はあれど、 現物を認識して調査したわけじゃないんだからな。

Raabe
シエル

ですが、構わないということは、 倒せる可能性もあるということですよね。

Ciel
ラーベ

まあ、そうなるな。

Raabe
ルナ

倒せるんじゃん!

Luna
ラーベ

だから、仮説だってば! 『かもしれないねー』って話!

Raabe
セリカ

でも無理とも言い切れない……。 ラーベさんにそう言われると、できそうな気がしてきちゃう。

Celica
ラーベ

こらこらこら。なんか過信するな。 一種の責任転嫁だぞそれは。

Raabe
セリカ

あう……そっか、ごめんなさい。

Celica
バング

望みがあれば希望を見出したいもの。 気持ちはわかるでござるよ。

Bang
シエル

……それは、相応に危険を伴うことでもあります。 たとえ想定していたより、手の届く相手だったとしても。

Ciel
シエル

村を容易く破壊し、多くの人を傷付けてきたモノです。 簡単にすむことでもないはずです。

Ciel
アハト

そうね。

Acht
シエル

私は……レイさんのしたいことを 実現するほうが、いいと思います。

Ciel
シエル

ですがそのために、過剰な危険を冒すことは、 推奨できません……。

Ciel
セリカ

シエルちゃんとしては、そうだよね。 護衛なんだもんね。

Celica
シエル

はい。私の任務です。

Ciel
バング

大事な任務なのでござるな。己に与えられた任務に 忠実であろうとすることは、素晴らしいことでござる。

Bang
バング

であればこそ! 己が剣となり盾となり、主君のために働くが、臣下の務め!

Bang
バング

レイ殿の力になることと、 身の安全を守ること。

Bang
バング

それはなにも相反するものではござらんよ!

Bang
シエル

そう、なのですか?

Ciel
バング

うむ。どちらも成せばよい。

Bang
バング

もっとも、それはとても難しいことでもあるが……。

Bang
バング

主の身も心も、どちらも守る。 それもまた臣下の心得と、拙者は思うでござる。

Bang
ラーベ

厳密に言うと、シエルは私の部下であって、 レイの臣下ではないんだが。

Raabe
バング

はっはっはっは! 細かいことは気にしないでござる! 主も臣下も、心意気よ!!

Bang
ラーベ

んな馬鹿な話があるか。

Raabe
アハト

話を元に戻しましょう。 で、どうするの?

Acht
アハト

どうするって言っても、 もうそっちのふたりの気持ちは決まってるみたいだけど。

Acht
セリカ

うん。追い払うだけでもできないか、やってみたい!

Celica
セリカ

倒せなかったとしても……村の人たちが少し休んで、 どうしようって相談したり、考えたり……、

Celica
セリカ

皆で一緒に立ち上がったりできるだけの時間が作れたら、 すごくいいことだと思うの。

Celica

1: やってみたい!
2: ここの人たちの助けになりたい

1:
2:

シエル

……私はレイさんの決定に従います。

Ciel
ラーベ

ふむ、許可だ。

Raabe
バング

無論、拙者も参戦するでござる!

Bang
バング

一泊の恩義もある。なにより、義を見てせざるは勇なきなりと 言うでござるからなぁ!

Bang
バング

無力な村民を目の前にして、 なにもせずにここを後にはできぬでござるよ!!

Bang
セナ

あ、僕たちは遠慮しておきます〜……。

Sena
ルナ

って! んなワケないだろ! ルナたちもやんだよ!

Luna
セナ

え〜〜本当にやるのぉ〜?

Sena
ルナ

やるったらやる! ここでやらなかったら、弱虫みたいじゃんか!

Luna
アハト

無理をするものじゃないわよ。 あなたはまだ子供なんだし。

Acht
ルナ

無理じゃない! ルナ様にはこの『雷轟・無兆鈴』があるんだ。

Luna
ルナ

どんなヤツが相手だって、 ペッシャンコのギッタンギッタンよ!

Luna
アハト

あらそう。頼もしいこと。

Acht
ラーベ

では、皆の意思が確認できたところで。 夜の襲撃者の、迎撃準備に取り掛かるとするか。

Raabe
セリカ

おーっ! 皆、頑張ろうね!

Celica
シエル

作業、完了しました。

Ciel
村人A

早いね、お嬢さん。それに仕事が丁寧だ。助かるよ。 これでこの小屋も倒壊をまぬがれそうだ。

Villager A
シエル

お役に立ててなによりです。

Ciel
シエル

廃材を処分場に運びますね。

Ciel
村人A

ああ、よろしく。あれもこれも悪いな。

Villager A
村人A

悪いついでに…… 次、あっちの家の補修も手伝ってもらえないか?

Villager A
シエル

はい。承知しました。

Ciel

1: お疲れ様、シエルさん
2: こっちも終わったから、一緒に行くよ

1:
2:

シエル

はい。お疲れ様です、レイさん。

Ciel
シエル

このペースなら、作戦決行予定の夜になる前に 一通りの補修は終わりそうです。

Ciel
シエル

レイさんの担当は、柵の取り付けでしたね。 問題はありませんでしたか? お怪我などはありませんか?

Ciel

1: 怪我はないけど、大変だったよ
2: 我ながらうまくできたよ

1:
2:

If Choice 1:
シエル

ご無理はなさらないでください。 体力が切れる前に、十分な休息を取ってくださいね。

Ciel
If Choice 2:
シエル

以前こういった集落で大工仕事のお手伝いをしたときも、 とても疲れたご様子でした。

Ciel
シエル

すごいですね。 私はまだ不慣れで、教えていただくばかりでした。

Ciel
シエル

以前こういった集落で大工仕事のお手伝いをしましたが、 そのときの経験がいきているのでしょうか。

Ciel
シエル

レイさん……?

Ciel

1: 今、なにか……
2: 思い出しかけたような……

1:
2:

シエル

記憶が……戻ろうとしているのでしょうか。 なにがわかりましたか? なにを思い出したのでしょう?

Ciel
シエル

あ……。

Ciel
シエル

すみません。うるさく催促をしてしまいました。 セリカさんにも、焦らないようにと注意を受けていたのに。

Ciel
シエル

…………。

Ciel
シエル

……セリカさんなら、少しでも思い出しかけたことを喜び、 レイさんの体調を気遣ったと思います。

Ciel
シエル

でも私はそうできませんでした。

Ciel
シエル

レイさんが、 すぐにでも全てを思い出せばいいと思ってばかりいます。

Ciel
シエル

……あなたをお守りするのが、私の任務なのに。

Ciel

1: きっとすぐ全部思い出すよ
2: 全部思い出せなくてごめん

1:
2:

シエル

私へのお気遣いは無用です。心配はいりません。 思い出していただけなくても、任務は遂行します。

Ciel
シエル

ですが……機能不足を感じています。

Ciel
シエル

バングさんは、 心身ともに守るべきだと言っていました。

Ciel
シエル

私には……心因性の不具合を理解するのは、 難しいことです。

Ciel
シエル

セリカさんなら……もっと……。

Ciel
シエル

下がってください、レイさん!

Ciel
シエル

地面から、黒い粒子状の物質が噴き出してきています。

Ciel
シエル

……確認、完了。これは魔素です。 それもかなり高密度の魔素が立ち込めている状態です。

Ciel
シエル

状況の詳細は不明ですが、周囲を警戒します。

Ciel
シエル

なっ……!

Ciel
シエル

くっ!

Ciel
シエル

魔素は集まって形を取る性質があると、 ラーベさんやアハトさんが言っていました。

Ciel
シエル

これだけ多量の魔素が一カ所に集まれば、 容易いことですね……。

Ciel
シエル

守ります。離れないでください。

Ciel
シエル

対象を確認、戦闘態勢に移行。 対象を排除します!

Ciel

第5節 黒くて大きな化け物⑤/ 5. Gigantic, Pitch-Black Monster - 5

Summary
シエルと共に補修作業中、魔素の濃度が高ま

り多数の魔物が出現。苦戦する中セリカと ミネルヴァの助けが入り、難を逃れる。

シエル

倒しきれない……!

Ciel
シエル

こちらに引きつけます。 その間にレイさんは突破してください。

Ciel

1: 逃げきれないよ……!
2: ひとりにできないよ!

1:
2:

シエル

……っ。

Ciel
シエル

耐久力も攻撃力も、想定の範囲内…… 対処可能なレベルのはず……。

Ciel
シエル

私がもっと……。

Ciel
シエル

対象……消滅を確認。 魔素の霧の発生もありません。

Ciel
セリカ

大丈夫? シエルちゃん、じっとしてて。

Celica
シエル

治癒魔法……。 ありがとう、ございます。

Ciel
セリカ

どういたしまして。ちょうど近くに来ててよかった。 ふたりのピンチに、間に合ったね!

Celica

1: ありがとう、セリカ
2: 一時はどうなるかと思った……

1:
2:

シエル

……そうですね。

Ciel
シエル

あれだけの数を、あっという間に倒してしまうなんて。 ミネルヴァさんは、本当にお強いです。

Ciel
セリカ

うん、すごいでしょ。

Celica
セリカ

シエルちゃんもすごいね。あの黒いのに囲まれてたのに、 ちゃんとレイのこと守り切って。

Celica
シエル

いえ、私は……。

Ciel
シエル

……一度、ラーベさんのところに戻りましょう。 今の出来事を報告しておくべきだと考えます。

Ciel
セリカ

そうだね。そうしよっか。

Celica
セリカ

ふたりが持ってるの、廃材でしょ。 ぱぱっと置き場に置いちゃって、みんなで行こう。

Celica
シエル

はい……。

Ciel

第5節 黒くて大きな化け物⑥/ 5. Gigantic, Pitch-Black Monster - 6

Summary
集まる魔素が形を成し、黒く巨大な獣が出現

した。それを撃破可能な『模倣品』だと語る ラーベを信じ、一行は協力して立ち向かう。

力を合わせて、巨大な魔物の撃破に成功す

る。魔素の霧は晴れ、村に平穏が戻ったが、 シエルはどこか沈んだ表情を浮かべていた。

ラーベ

さて、そろそろいい時間だな。

Raabe
バング

村の住人の話によれば、すっかり陽が落ちたあと、 夜もかなり更けてきたころに出没するとか。

Bang
アハト

じわじわと、村の周囲の魔素が濃くなってきたわ。 雰囲気出てきたわね。

Acht
ルナ

災厄でも化け物でも、どっからでもかかってこいってんだ!

Luna
セリカ

うん、負けないよ。

Celica
シエル

…………。

Ciel

1: シエルさん、元気ない?
2: シエルさん、考えごと?

1:
2:

シエル

あ……いえ。問題ありません、失礼しました。

Ciel
ラーベ

夕暮れ時にレイたちが襲撃されたとき、 地面から魔素が霧状になって噴き出してきた。

Raabe
ラーベ

おそらくそれが『災厄』の残滓。 この地に残された『化け物』の素だろう。

Raabe
ラーベ

魔素の密集によって、一時的に、急激に魔素濃度が上がる。 そしてその魔素が固まって『化け物』が形作られる。

Raabe
アハト

村の人たちが恐れるほどの規模になるのに、 どの程度魔素が必要なのかはわからないけど、

Acht
アハト

おそらくさっきの、 村の外れでの襲撃とは比べものにならないはずよ。

Acht
アハト

十分注意して。 それと、密集してくる魔素を確認したらすぐに知らせること。

Acht
シエル

はい。

Ciel
ルナ

で、それが始まるまでは、どうしてたらいいんだ?

Luna
バング

実際に現れてもらわないと、退治はできないでござるからな。

Bang
バング

どの方角から現れてもいいように、 各自見回りといったところでござろう。

Bang
ラーベ

あんまり効率のいいやり口ではないが、 いかんせん情報がないからな。

Raabe
ラーベ

非戦闘員であるセリカとレイは、 村の敷地内で待機しておけ。

Raabe
ラーベ

もちろん、問題のやつが現れたら、 すっ飛んできてもらわんと困るがな。

Raabe
ラーベ

そいじゃま、一旦解散。

Raabe
セリカ

……結局、私たちってこういうとき、 安全なところで待つ係になっちゃうよね。

Celica

1: 仕方ないよ
2: なんだか残念

1:
2:

セリカ

うん……。突然なにかあったとき、ひとりじゃ戦えないし。 わかってるんだけどさ。

Celica
セリカ

ちょっと、寂しいっていうか。悔しいっていうか。

Celica
セリカ

昔っからそうなんだ。 私、いっつも誰かに守ってもらってばっかりで。

Celica
セリカ

本当は私も守りたいのに。

Celica
セリカ

だからね、ミネルヴァと出会えたとき、嬉しかったの。 これで私も戦えるって思っちゃった。

Celica
セリカ

でも戦ってるのはミネルヴァで。私じゃないんだよね……。

Celica

1: セリカのドライブのおかげでしょ
2: セリカには治癒魔法がある

1:
2:

If Choice 1:
セリカ

ふふ、そうだけど。それって逆に、私がドライブを使えるのは、 ミネルヴァがいるからってことにもなるじゃない?

Celica
セリカ

私が強くなったわけじゃないもん。

Celica
If Choice 2:
セリカ

ふふ、そうだけど。 治癒魔法って、誰かが傷つかないと意味がないじゃない?

Celica
セリカ

傷つくほど頑張ったのは、私じゃないんだよなー、なんて。

Celica
セリカ

あはは、私がこんなこと言うの、変だね。 あなたといると、つい考えちゃうんだ。

Celica
セリカ

似てるからかも。私たち。

Celica
セリカ

私とミネルヴァ。あなたとシエルちゃん。 守ってもらう側と、一生懸命守ってくれる側。

Celica
セリカ

だからね、シエルちゃんがレイのこと 必死に守ろうとしてるのを見ると……。

Celica
セリカ

もしかしたらミネルヴァも こんな風に思ってくれてるのかなーとか思うんだ。

Celica
セリカ

だからね、あなたがシエルちゃんに負担かけないように、 気遣ったり戦ったりしてると、

Celica
セリカ

私もミネルヴァに、そうしてあげたいって思うの。

Celica
セリカ

どうしてか私のこと、頑張って守ってくれるから。 私もミネルヴァのこと、守ってあげられたらいいのになぁ。

Celica

1: 僕(私)もシエルさんのこと守れるかな…… 2: 僕(私)もシエルさんに恩返ししたいな……

1:
2:

セリカ

一番は、記憶を取り戻してあげることじゃない?

Celica
セリカ

ふふ、なーんて。できたら苦労しないよね。

Celica
セリカ

できることは色々あるよ。 お互い、マイペースに頑張っていこう。

Celica
シエル

…………。

Ciel
ミネルヴァ

…………。

Minerva
シエル

…………。

Ciel
ミネルヴァ

…………。

Minerva
シエル

……………………。

Ciel
ミネルヴァ

……………………。

Minerva
シエル

……あの。

Ciel
ミネルヴァ

…………。

Minerva
シエル

ミネルヴァさんは……どうしてセリカさんを……。

Ciel
シエル

これは……魔素の霧!

Ciel
シエル

ラーベさん、多量の魔素を確認しました!

Ciel
ラーベ

わかった。 全員連れてそっちへ行くから、先んじて対処にあたれ。

Raabe
シエル

了解です。

Ciel
セリカ

シエルちゃん、ミネルヴァ、大丈夫!?

Celica
シエル

皆さん。はい。こちらはまだ交戦前の状態です。 ですが、あれを……。

Ciel
ルナ

うげげげげ、な、なんだあれ!? でっか!!

Luna
アハト

あ、あれが……『災厄』……? あれで残滓だっていうの?

Acht
バング

なんと……ものすごい大きさでござる……!!!

Bang
セリカ

大きくて……黒い、獣……。

Celica
獣型の魔素

グルアァァァァァァァァァァ!!!!!

Beastified Seithr
シエル

来ます! 対象……。

Ciel
シエル

うあぁっ……!!

Ciel

1: シエルさん!
2: 大丈夫……!?

1:
2:

シエル

う、うぅ……すみ、ません。大丈夫、です。

Ciel
セリカ

治療するよ!

Celica
セリカ

……無理はしないで。お願い。

Celica
シエル

っ……平気です。問題ありません。戦えます。

Ciel
ルナ

ま、まじでこんなでっかいのと戦うのか!? 本当に倒せんのかよ!?

Luna
ラーベ

……大丈夫だ。おそらく倒せる。

Raabe
バング

それは朗報! しかし何故、倒せると判断されたのでござる?

Bang
ラーベ

予想通りだからだ。

Raabe
ラーベ

やっぱり、あれは一年間も活動を止めている 『災厄』じゃない。

Raabe
ラーベ

凄まじい量ではあるが、 所詮ただ魔素が集まっただけの『模倣品』だ。

Raabe
ラーベ

何度も戦ってきたあの黒い塊と、基本構造は同じ。 ちょっとばかりでかくて強いが……それだけだ。

Raabe
ルナ

ってことは、 今までよりもーっと強くぶっ飛ばせばいいんだな!?

Luna
ラーベ

その通り。天才だな。

Raabe
ルナ

あったり前よ! ルナ様だぞ!

Luna
ルナ

うわわわわわ!! こんのぉ、やんのかこらぁ!

Luna
アハト

やる気に決まってるでしょ。向こうは私たちを蹴散らして、 村を破壊したくてしょうがないのよ。

Acht
アハト

おしゃべりはここまで。行くわよ。

Acht
バング

おう!!!

Bang
セリカ

行くよ、ミネルヴァ!

Celica

1: シエルさん、立てる?
2: シエルさん、僕(私)たちも!

1:
2:

シエル

はい。戦闘態勢に移行! 対象の排除を開始します!

Ciel
セリカ

黒い霧が、なくなってく……。 倒した? 倒したよね、私たち!

Celica
バング

うむ……うむ! 倒したでござるな!?

Bang
アハト

……ええ。もう気配もない。だけど魔素の状態からして、 どこかへ逃げたというわけではなさそう。

Acht
ルナ

ぜぇ、はぁ……ってことは?

Luna
ラーベ

安心しろ。お前たちは見事あのデカブツを撃破した。

Raabe
ルナ

マジか! やったぁ〜! ほら見ろ、ルナ様は最強なんだ!

Luna
バング

わっはははははは! 我等にかかればこれしき! て、敵ではないわぁぁぁ〜〜〜!!!

Bang
アハト

まったく、調子のいいおふたりね。 レベルが近いから馬が合うのかしら。

Acht
セナ

あ、今僕たちを、 あのむさいおじさんと同レベルにしましたね〜?

Sena
ルナ

聞き捨てならないぞ! おい、ケバケバオバサン、訂正しろ!!

Luna
アハト

だ・れ・が、ケバケバオバサンよ。 あんまり生意気言ってると、口を凍り付かせるわよ。

Acht
ルナ

やれるもんならやってみろ〜。 べ〜〜〜だ。

Luna
セリカ

あっはは。しかもみんな、元気。よかったぁ〜。

Celica
セリカ

これでもう、村の人たち、夜に怯えなくてよくなるね。

Celica
ラーベ

とはいえ、魔素の状態は不安定だ。

Raabe
ラーベ

片付け残しや、騒ぎに寄ってきた魔物がいないか、 索敵しておけ、シエル。

Raabe
シエル

…………。

Ciel
ラーベ

おい、シエル?

Raabe
シエル

あ……は、はい。なんでしょうか?

Ciel
ラーベ

ぼーっとするな。周囲の索敵をしてくれと言ったんだ。

Raabe
ラーベ

今の戦闘で引き寄せられた魔物なんかがいると、 厄介だからな。

Raabe
シエル

了解。周囲を索敵します。

Ciel
シエル

…………。

Ciel
シエル

……通常時より狭い範囲でのことですが、 周囲に敵性反応はありません。

Ciel
アハト

村の周囲には、簡易的なものだけど防御魔術も張ってあるわ。 少しくらいの魔物なら入ってこれないはずよ。

Acht
ラーベ

さっすがぁ〜。 よし、じゃあ引き上げだ。

Raabe
ラーベ

激戦、ご苦労。ゆっくり休めよ。 特にレイ。

Raabe

1: まだ元気だよ、ラーベ
2: もうヘトヘトだよ、ラーベ

1:
2:

If Choice 1:
ラーベ

あまり自分の体力を過信するな。 お前は知らず知らずのうちに消耗してる。

Raabe
ラーベ

私たちにとっては、お前が重要な鍵なんだ。 しっかり休め。

Raabe
If Choice 2:
ラーベ

そうだろう。 お前は知らず知らずのうちに消耗してるんだ。

Raabe
ラーベ

私たちにとっては、お前が重要な鍵なんだからな。 しっかり休め。

Raabe
シエル

…………。

Ciel
セリカ

シエルちゃん? 貸してもらってるおうちに、帰ろう。

Celica
シエル

あ……はい。

Ciel
バング

シエル殿……浮かない顔でござるな。 ……ふぅむ。

Bang

第6節 理由と意味①/ 6. Reasons and Meaning - 1

Summary
村を救った一行は再び日本へと進路を取る。

各々の目的のため、かつて本物の『災厄』が 現れた地、グラウンド=ゼロを目指す。

子供

お兄ちゃんたち、本当にもう行っちゃうの?

Child
子供

お姉ちゃんたち、本当にもう行っちゃうの?

Child
ラーベ

最初から、一泊させてもらうつもりで立ち寄ったんだ。 予定通りの出発だよ。

Raabe

1: 休ませてもらえて、助かったよ
2: 色々お世話になりました

1:
2:

セリカ

私たち、行きたいところがあるの。 まだ遠いから、頑張らないといけないんだ。

Celica
子供

そうなんだ……。また遊びにきてよね! 皆なら、いつでも大歓迎だよ!

Child
バング

それはありがたい。 また近くに来ることがあれば、きっと立ち寄るでござるよ!

Bang
ルナ

そんときまでに、ルナのふかふかベッド用意しとけよな。 そしたら遊びにきてやってもいいぞ。

Luna
アハト

あら。だったら私の分もお願いしておこうかしら。

Acht
子供

あはははっ! もー、わがままだなぁ。

Child
母親

これ、本当に少しで申し訳ないんですが…… 持っていってください。朝焼いたパンです。

The Mother
シエル

……助かります。活用させていただきます。

Ciel
アハト

さあ。それじゃあ、行きましょうか。

Acht
アハト

いつまでも別れを惜しんでいたら、 この先、野宿が一晩増えてしまうわ。

Acht
母親

そうですね、あまりお引き留めしてはいけませんね。

The Mother
母親

なにからなにまで……ありがとうございました。 村一同、心から感謝しております。

The Mother
子供

皆、気を付けてね! また来てよ、絶対だよ!

Child
セリカ

うん! またね! 元気でね〜!

Celica
ルナ

じゃ〜な〜!

Luna
バング

達者で暮らすでござるよ〜〜〜!!

Bang
セリカ

あの村の人たち、昨日よりずっと穏やかな顔してたね。

Celica
アハト

それはそうでしょう。

Acht
アハト

夜のたびに、あの化け物が襲ってくるんじゃないかって 怯えていたんでしょうから。

Acht
アハト

その心配が解消されたとなれば、 顔つきくらい一晩で変わるわよ。

Acht
ルナ

強かったし、でかかったもんなー、あの化け物。

Luna
ルナ

それを倒したルナたちは、あの村を救った英雄ってわけだ。 銅像とか建っちゃうかもだな〜、んふふふふ。

Luna
バング

銅像か……ううむ、悪くないでござる……。

Bang
アハト

英雄って。あの程度で、大袈裟ね。

Acht
ルナ

なんだと? じゃあどの程度なら、英雄になれるんだよ。

Luna
アハト

そんなの、わからないわよ。だけどそうね…… 例えば世界の在り方を変えるであるとか。

Acht
アハト

もっとシンプルに、本物のほうの『災厄』を倒しでもすれば、 間違いなく英雄でしょうけど。

Acht
ルナ

本物? あの、現れなくなったってやつだろ。 出てこないんじゃ倒せないじゃん。

Luna
アハト

なら、もう少し英雄の称号はお預けね。

Acht
ルナ

ぶー。いいじゃん、昨日のアイツで。 こーんなでっかかったんだし!

Luna
ラーベ

本物のほうの『災厄』か……。

Raabe
シエル

ラーベさんは『災厄』をかなり気にしているようですが、 どんなものなのか、ご存知なのですか?

Ciel
ラーベ

ご存知……と言うか、 なんとなく予想がついているって感じだ。

Raabe
アハト

それは、興味深いわね。

Acht
アハト

あなたたちと合流する前に、 あちこちで『災厄』の話を聞いたわ。

Acht
アハト

とてつもなく巨大で、にもかかわらず突如として出現し、 その場にあるものをことごとく破壊しては消える。

Acht
アハト

その正体は、なんだと思っているの?

Acht
ラーベ

あまりこの場で開示したくない情報なんだよ。

Raabe
ラーベ

『誤解』を招きたくないから、 具体的な名前は不確定な現状では避けるけど。

Raabe
ラーベ

もし『災厄』が私の予想している通りのものなら……。

Raabe
ラーベ

おい、セリカ。お前確か『災厄』が最初に出現したのが、 父親のいた研究施設だと言っていたな?

Raabe
セリカ

うん……。 今はね、グラウンド=ゼロって呼ばれてる。

Celica
ラーベ

なるほど。 なら、我々が探している『窯』も、そこにあるはずだ。

Raabe
シエル

窯が……。 では『災厄』は窯に関わりがある存在なのですね。

Ciel
ラーベ

そうだ。そいつは窯から出てきたはずだ。 他は知らんが、少なくとも最初の一回はな。

Raabe
ルナ

なあ、結局なんなんだよ、その『災厄』って!

Luna
ラーベ

簡単に言えば『世界の終わり』だよ。

Raabe
バング

世界の終わり……それはまた、物騒な話でござるな。

Bang
ラーベ

物騒どころじゃない。 世界を終わらせるために現れる、世界のリセット機能だ。

Raabe
ラーベ

ここがそいつの出現している世界なら……観測者はもう、 このフィールドに存在していないかもしれないな……。

Raabe
シエル

あの……観測者がいないファントムフィールドというのは、 あり得るのですか?

Ciel
シエル

私たちは《浸入》 (ダイブ) に成功していますし、 《浸入》 (ダイブ) のタイミングはリセット直後に設定されているはずです。

Ciel
シエル

それなのに、世界にリセットをかけるシステムが 機能しているということは……。

Ciel
シエル

このファントムフィールドは一体…… どういう状況なのでしょうか……?

Ciel
ラーベ

混乱するのはよくわかる。

Raabe
ラーベ

レイにいたっちゃ記憶がないわけだから、 さぞさっぱりだろうとは思うが。

Raabe
ラーベ

シエルが言った通り、 この状況は私たちから見ると『異常』だ。

Raabe
ラーベ

出現していないはずのものが出現していることに なってしまう。理屈が合わない。

Raabe
ラーベ

一番穏便なのは、私がそもそも根本的な勘違いを していることなんだが……

Raabe
ラーベ

それを第一の仮説とするにはあまりに楽観的過ぎる。

Raabe
ラーベ

ま、どの道やることに変わりはないさ。

Raabe
ラーベ

セリカが目指している、彼女の父親の仕事場に向かう。 そこになにがあるかによって、私の考えも予測も変わってくる。

Raabe
ルナ

ふーん……やっぱルナにはよくわかんないや。 元の世界に戻れるなら、なんでもいーよー。

Luna
ルナ

それより、おなかすいた。 さっきもらったパン食っていい?

Luna
アハト

本当に緊張感と無縁な子ねぇ。 気が抜けちゃうわ。

Acht
ルナ

別にずーっと気合い入れてることないじゃん。 あ、オバサンいらないなら、ルナがもらうぞ。

Luna
アハト

ちょっと、およしなさい。意地汚いわよ。

Acht
シエル

では……少し休憩にしませんか。

Ciel
シエル

レイさんの基礎体力からして、 疲労を感じ始める歩行距離です。

Ciel

1: シエルさんはなんでも知ってるね
2: 僕(私)より僕(私)のことに詳しい……

1:
2:

シエル

護衛……ですので。

Ciel
バング

ならばしばし休憩といたそう。 まだ予定している道のりは長い。

Bang
バング

明日にはひと山越えてもらわねばならぬし、 体力は温存しつつ進もうぞ。

Bang
セリカ

もうだいぶ東に来てるんだよね。 山の上から海、見えるかなぁ。

Celica
ルナ

海! 海、見えるのか!?

Luna
バング

此度は頂上までは行かぬから、 道中では見えないでござろうなあ。

Bang
バング

だが山を越えてしまえば、海まではあと一息! 目的地の港町へ到着した暁には、存分に見られるでござるよ!

Bang
ルナ

やっほーぅ、海だ海〜!

Luna
セナ

海〜。

Sena
セリカ

楽しみだね〜!

Celica
シエル

その海の向こうに、日本があるのですね。

Ciel
バング

左様。日本に渡れば、 あとはセリカ殿のお父上の研究所を目指すのみ!

Bang
バング

旅もいよいよ大詰めといったところでござるなぁ!!

Bang
アハト

まだ少し気が早いわよ。

Acht
ラーベ

ああ、そうだ。セリカ、あとで父親の職場について、 知ってることをありったけ教えろ。名前とかおよその場所とか。

Raabe
ラーベ

お前の案内で辿り着けるはずがないからな……。 こちらでなんとか調べてみる。

Raabe
セリカ

わあ、ありがとう。 一度行ったことがあるから、大丈夫だと思うけど……。

Celica
セリカ

私が行ったときとは、周りも変わってるだろうし。 よろしくお願いします。

Celica
ラーベ

……一度行ったとか、周りがどうとかの問題では ない気がするが……ああ、わかった。

Raabe
ルナ

なーなー、それより飯だってばー。

Luna
セリカ

あ、そうだった。私もお腹空いてきちゃった。 荷物、ここに下ろしちゃおうか。

Celica
シエル

はい。開けた場所ですので、 魔物の標的にならないか少々心配ですが……。

Ciel
バング

シエル殿も気付かれたか。 いやはや、楽はさせてくれんでござるなぁ!

Bang
アハト

魔物ね……。

Acht
ルナ

なんだよもー! 今から飯食おうとしてたってのにぃ〜!

Luna
セナ

あ〜あぁ。お腹空いてるときのルナは、機嫌悪いよぉ。

Sena
セリカ

さくっと帰ってもらって、すぐにご飯にしよう!

Celica

1: お腹ぺこぺこだからね
2: ランチタイムを守るぞ!

1:
2:

ルナ

おー! やったるぞ!

Luna
シエル

……対象を補足。 攻撃態勢に移行します!

Ciel

第6節 理由と意味②/ 6. Reasons and Meaning - 2

Summary
一行が去った後の村を、ナインとトリニティ

が訪れる。セリカの魔法使用、そして同行す る者の存在を知り、ナインは歩調を早めた。

ナイン

……小さな村ね。集落って感じだわ。

Nine
トリニティ

あちこちに畑がありますから、皆さん、自給自足の生活を 送っていらっしゃるのでしょうねぇ。

Trinity
トリニティ

ですけど……村のあちら側、物々しい跡がありますね。 大きな魔物が大暴れしたような……。

Trinity
ナイン

進路と方角からして、 普通ならこの村を経由しようと考えるはずだわ。

Nine
ナイン

村の存在を知らなくても、よほど大回りするか、 とんでもない道を行かない限りは通りがかる。

Nine
ナイン

あの子…… まさか魔物の襲撃に巻き込まれたりしてないでしょうね……。

Nine
トリニティ

少し、村の方にお話をうかがってみませんか。 彼女らしき人が、立ち寄ったかどうかも聞いてみましょう〜。

Trinity
ナイン

……はぁ。そうね。

Nine
村人

ああ、魔物の襲撃か。あったあった。 ずいぶん長いこと、そいつには悩まされてたんだよ。

Villager
村人

黒くてでかい、恐ろしい化け物だ……。村のみんなも俺も、 『災厄』が来たんだってすっかり怯えてしまっていて……。

Villager
村人

だけどそこに、あの人らが現れてくれて、 襲ってきた真っ黒い化け物を倒してくれたんだよ!

Villager
トリニティ

黒くて大きな化け物、ですかぁ? それは……恐ろしいですねぇ。

Trinity
トリニティ

でも、もうその魔物の心配はないのですね。 よかったですぅ。

Trinity
トリニティ

その魔物を倒したのは、どんな人だったのですか?

Trinity
村人

若い魔術師だよ。いやぁ、驚いた。 魔術ってのは、あんなにすごいもんなんだな。

Villager
村人

手ごわい魔物だったみたいだけど、ドカーンとやってくれてな! おかげで村は、久し振りに平和にすごせてるんだ。

Villager
ナイン

それ、どんな子? 具体的な容姿は? 長い茶色の髪で、ポニーテールにしてる美少女?

Nine
村人

え? あ、ああ、そうだよ。そんな子だった。

Villager
ナイン

やっぱり……セリカね。

Nine
子供

お姉さんたち……誰? セリカお姉ちゃんの知り合いなの?

Child
ナイン

子供……。 あなた、セリカと会ったのね。

Nine
子供

う、うん。会ったよ。魔物を退治してくれて、 村のみんなやお父さんの怪我も治してくれたんだ。

Child
ナイン

怪我を治した……? あの子、治癒魔法を使ったの……。

Nine
子供

っ!?

Child
子供

ち、違うよ、魔法じゃない! 魔法じゃないけど、治してくれたんだ……!

Child
ナイン

嘘ね。 大方、内緒にしておいてくれとか言われたんでしょうけれど。

Nine
ナイン

それくらいわかるわよ。

Nine
子供

お、お前ら、何者だ……? セリカお姉ちゃんを捕まえにきたのか!?

Child
ナイン

ええ。そうよ。

Nine
トリニティ

まぁ、ナイン〜。それでは誤解させてしまいますよぉ。

Trinity
トリニティ

驚かせてしまってすみません。

Trinity
トリニティ

私たちは確かに、セリカさんを追いかけていますけれど…… 彼女にひどいことをしようと思っているわけではないんですよ。

Trinity
トリニティ

私たちは……というより、私と一緒にいるこちらの人は…… あ、あら? ナイン?

Trinity
ナイン

…………。

Nine
トリニティ

ナイン〜!

Trinity
トリニティ

もう、急にいなくならないでください〜。 びっくりしましたよぉ。

Trinity
トリニティ

あら。なにかありましたか?

Trinity
ナイン

……防御魔術が張られた痕跡があるわ。

Nine
トリニティ

防御魔術ですか? 先程うかがった、大きな魔物との戦いで 使われたものでしょうか?

Trinity
ナイン

でしょうね。でも……これはセリカの魔術じゃないわ。 あの子はこんな丁寧な魔術、使えないもの。

Nine
トリニティ

では……誰か別の方が?

Trinity
ナイン

でしょうね。でも、あの子供の言っていた 『怪我を治した』魔術師は、十中八九セリカよ。

Nine
ナイン

あの子、 何者か知らないけど別の魔術師と一緒にいるのね……。

Nine
トリニティ

これほどしっかりした魔術が使える方と御一緒なら、 少し安心ですねぇ。

Trinity
ナイン

安心じゃないわよ。 そいつがどういう立場の者なのか、わかったもんじゃないわ。

Nine
ナイン

……早く追いつかないと。

Nine
トリニティ

では、すぐに向かいますか?

Trinity
ナイン

ええ。

Nine
アハト

こっちからも来てるわ。 皆、気を付けて!

Acht
シエル

せやぁ!

Ciel
シエル

っ、あ……!

Ciel
バング

危ないでござる、シエル殿!

Bang
シエル

っ……すみません。

Ciel
バング

なんの! 仲間の窮地には必ず駆け付ける! それが愛の戦士シシガミ=バングでござる!

Bang
セリカ

レイも無事だから、 安心してね、シエルちゃん!

Celica

1: ありがとう、ミネルヴァ、セリカ
2: おかげさまで無傷です

1:
2:

セリカ

はい、どういたしまして。

Celica
セナ

も〜〜〜また戦うんですかぁ……? 僕、疲れてきちゃいました〜。

Sena
ラーベ

今日はこれで何回目の遭遇になるだろうなぁ……。

Raabe
ラーベ

暗くなってきたし、 日が沈み切る前に安全を確保したいところだ。

Raabe
ルナ

わかってるっての! 離れて見てろピョコピョコボール! こんなザコ、ルナ様にかかれば一瞬だ!

Luna
バング

威勢がいいでござるな! 拙者も負けてはおれぬ! 行くぞ!!

Bang

第6節 理由と意味③/ 6. Reasons and Meaning - 3

Summary
山中を行くシエルたちは、このファントム

フィールドへ至る前に各々が生きた世界の状 況、目的や成すべきことについて語り合う。

ルナ

っしゃ! 二度とツラ見せんなばーか!

Luna
セナ

はぁ〜……やっと終わったぁ。

Sena
セリカ

ふぅ。さすがにちょっと疲れたね。 今日は特に、たくさん戦った気がする。

Celica
アハト

気がするんじゃなくて、実際にそうよ。

Acht
ラーベ

また足止めされる前に、少しでも行程を進めよう。 歩くぞ。

Raabe
シエル

……はい。

Ciel
ラーベ

しっかし、本当に……この世界は特に魔物が多いな。 ただ歩いてるだけだっていうのに、次から次へと。

Raabe
ルナ

魔物だもん。こっちの都合なんておかまいなしだって。 そういうもんじゃん。

Luna
ラーベ

こちとら魔物って存在にあまり馴染みがなくてね。 あんなのと当たり前に遭遇するとは、物騒な世界があるもんだ。

Raabe
セリカ

私もあんまり見たことはなかったけど、日本を目指してからは たくさん見るね。だから……少しずつ慣れてきた。

Celica
セリカ

でも馴染みがないって、もしかしてラーベさんたちが住んでた 場所には魔物はいなかったの?

Celica
ラーベ

いないということになってるね。 そもそも、そんな生態系は存在してもらっちゃ困る。

Raabe
バング

そのような場所があるでござるか。

Bang
アハト

レアケースのように言うけど、私がいた世界でも 魔物は表立って存在を認知されているものではなかったわよ。

Acht
ルナ

へー……いいなぁ。 魔物に襲われたり、荷物狙われたりしないのかぁ。

Luna
ルナ

ぬるい世界で生きてんなぁ。

Luna
シエル

ルナさんたちとバングさんがいた世界には、 魔物が普通に存在していたのですね……。

Ciel
バング

うむ、いたでござる。拙者は街の外で活動することが 多かったでござるから、よくこんな風に絡まれたでござるよ。

Bang
セリカ

そういえば……ルナちゃんたちやバングさんや、アハトさんは、 別の世界の人たちなんだっけ。ちょっと忘れてた。

Celica
セリカ

どんな世界なんだろう。 ねえねえ、向こうの世界でも、今みたいに旅をしてた?

Celica
ルナ

ルナたちはしてたぞ〜。 ずーっと、大好きな人と一緒に旅してたんだ。

Luna
ルナ

ルナがセナと同じくらい、大好きな人だぞ。

Luna
セナ

僕にとっても、大好きな人です〜。 ルナと同じくらい。

Sena
セナ

その人に頼まれて、 ルナと一緒に人探しをしていたんです〜。

Sena
ルナ

そうだったっけ? あの人のためにがんばるぞー! って思ってたことしか、覚えてないなぁ。

Luna
セナ

あはは……実は僕も、しっかりとは思い出せないんだよねぇ。

Sena
ルナ

だけど! 大好きな人のことは、覚えてるぞ。 さっさと頼まれごと片付けて、その人に会いに行くんだ!

Luna
ルナ

なのに……気が付いたら、変なところにいるじゃん。 どー考えても、ルナたちの知らない世界にさ。

Luna
セナ

このままここにいたら……人探しもできないし、 僕たちの大好きな人にも会いに行けないし。

Sena
ルナ

だからな! さっさと元の世界に戻りたいんだ! 戻らなくちゃいけないんだ!!

Luna
ルナ

あ、一応確認するけど。シエルたちのやりたいことが 終わったら、ルナたち元の世界に戻れるんだよな!?

Luna
シエル

はい。そのはずです。

Ciel
ルナ

よーしよしよし。

Luna
バング

拙者のいたところは…… いや、さほどこの世界と大きくは変わらぬでござるなぁ。

Bang
バング

ああいや、ひとつ大きく違うところがあるとすれば、 人はもっと一所に集まっていたのう。

Bang
バング

拙者の故郷も、国や志を同じくする者同士で集まり、 素晴らしい主の下で誇りを持って暮らしていたでござるよ。

Bang
セリカ

そっか……バングさんは、その故郷に帰りたいんだね。 違う世界には、ないもんね。

Celica
セリカ

私にしてみたら、イシャナがない世界に来ちゃったって 感じだろうから……それは、寂しいなぁ。

Celica
バング

……はっはっは、そうでござるな。帰りたいでござるよ!

Bang
バング

そのためにも、 ラーベ殿たちには必ず目的を果たしてもらわねばならん!

Bang
シエル

はい。私たちも、窯を見つけて破壊しなければなりません。 ご協力、よろしくお願いします。

Ciel
アハト

窯の破壊……。それがあなたたちの目的であり、 私たちが元の世界に戻るための条件なのね。

Acht
アハト

それはそれは……大層なことだわ。

Acht

1: ってことは、僕(私)の目的でもあるんだ
2: それまでに記憶戻るかな……

1:
2:

ラーベ

窯に辿り着ければ、お前の記憶は戻るはずだ。 とりあえずそのためでいいから、窯へ行くんだと思っててくれ。

Raabe
セリカ

私、なんでもお手伝いするから、 できることがあったらいつでも言ってね!

Celica
シエル

はい。……助かります。

Ciel
ルナ

んで? オバサンがいた『世界』って、どんなとこなんだ?

Luna
アハト

ナチュラルにオバサンって呼ぶのやめなさいよクソガキ。

Acht
アハト

って、付き合うのも馬鹿馬鹿しいわね。

Acht
アハト

私の元いた世界のことだったかしら。

Acht
アハト

そうね……なにもかもが違う、とまでは言わないけれど、 ここまで荒廃した雰囲気はなかったかしらね。

Acht
アハト

途上地域でない限り道は基本的に舗装されていたし、 こんな風に徒歩で旅をする人なんていなかったわ。

Acht
アハト

車でもバスでも飛行機でも、交通手段はいくらでも選べた。

Acht
アハト

……まぁ、この世界もそういったものがなかったわけじゃ ないんでしょうけど。

Acht
セリカ

そうだね……。

Celica
セリカ

『災厄』が現れる前は、船も飛行機もたくさん行き交ってたし。 旅行だって、魔素や魔物を気にしなくても行けたもん。

Celica
セリカ

いいな。アハトさんのいた世界、なんだか平和で、楽しそう。

Celica
アハト

表向きはね。

Acht
アハト

技術は日々向上していたし、 世界はルールと理性に守られていた。

Acht
アハト

いつの時代もどこの世界にも、 取り残されるものやはじき出されるものは存在するわ。

Acht
アハト

秩序のある街並みと暮らしをしているからといって、 その世界そのものが秩序あるものかは別の話よ。

Acht
ルナ

はぁ??? ま〜た難しいこと言ってら。

Luna
バング

どんな世界にも、困ったことはあるということでござろう。

Bang
バング

富む者があれば、奪おうとする者が現れる。 上に立つ者があれば、下へ引きずり降ろそうとする者が現れる。

Bang
バング

人間だの社会だのとは、ままならぬものでござるなぁ。 とはいえ、平和が一番。それは間違いないと思うでござるよ。

Bang
アハト

……ところで、不思議なんだけど。 さっきあなた『イシャナ』って言ったわよね。

Acht
セリカ

え? はい! 私の育った島の名前です。

Celica
アハト

私もイシャナにいたことがあったの。

Acht
セリカ

え、そうなの!? そっか、アハトさん魔術師だし。 だったら私の先輩……あれ、でも……。

Celica
セリカ

違う世界から来たんです、よね? それなのに、どっちにもイシャナがあって……あ、あれ?

Celica
アハト

どういうことなのか、今の私にはわからないわ。

Acht
アハト

イシャナは特殊な場所だから、たとえ世界が違っていても、 どこにでも存在する島なのかもしれないし……。

Acht
アハト

もしかしたら、私のいた世界とあなたのいるこの世界は、 どこかでつながっているのかもしれないわね。

Acht
セリカ

どこかでつながってる、かぁ。

Celica
セリカ

だったらちょっと、わくわくしちゃう。 それがいいことなのか、悪いことなのかはわからないけど……。

Celica
セリカ

アハトさんだけじゃなくて、バングさんや、 ルナちゃん、セナちゃん。シエルちゃんやラーベさん。

Celica
セリカ

レイと、 目に見えないところでみんな、つながってるのかも。

Celica
セナ

それって……なにが嬉しいんですかぁ?

Sena
セリカ

だったらなんとなく、楽しいなって。

Celica
アハト

楽しいかどうかは別にして。つながってはいるんでしょうね。 だから……私たちはここへ来たし、戻れるんでしょうから。

Acht
ラーベ

……そういう考え方でも、いいんじゃないか。

Raabe
アハト

はっきり言わないのね。 なにか大きな秘密を隠しているみたいに見えるわよ。

Acht
ラーベ

そうか?

Raabe
シエル

アハトさんは、バングさんが故郷に戻りたいように、 イシャナに戻りたいと思っていらっしゃるのですか?

Ciel
アハト

いいえ。イシャナは私の過去にすぎないわ。

Acht
アハト

元の世界に戻ろうとすることに、理由が必要なら…… 私の場合は約束かしらね。

Acht
シエル

約束……ですか。

Ciel
アハト

ええ、そう。大切な人との大切な約束よ。 それを果たさなければならない。だから戻りたいの。

Acht
セリカ

どんな約束なの?

Celica
アハト

言ったでしょ。大切な約束なの。 だから言えないわ。

Acht
セリカ

ふふっ、そっか。聞いちゃってごめんなさい。 ならその約束、果たせるといいね。

Celica
セリカ

あ、でも……必ずしも、早いほうがいいってことはないか。 果たされるまでが楽しいってこともあるし。

Celica
アハト

……そうね。そうかもしれないわ。

Acht
バング

おっと、この先はまた少々道が険しくなりそうでござる。

Bang
バング

先に行って、様子と安全そうな順路を探してくるゆえ、 皆は後から参られよ!

Bang
ルナ

ほーい。

Luna
セリカ

ありがとう、バングさん!

Celica
シエル

では、私も……。

Ciel
バング

いやいや、シエル殿は先の戦いもあって疲労があろう。 それに護衛がレイ殿の側を離れるものではない。

Bang
バング

拙者ならば心配ご無用! では御免!

Bang
シエル

あ……。

Ciel
アハト

適材適所。彼はこういった、斥候や調査に長けているようだし。 任せましょう。

Acht
シエル

そう……ですね。了解です。

Ciel
シエル

…………。

Ciel

第6節 理由と意味④/ 6. Reasons and Meaning - 4

Summary
野営の夜更けに、シエルと言葉を交わす。自

身の不調と抱えた感情に戸惑いを覚える彼女 は、バングの言葉でその理由を考え始める。

ルナ

うーん……むにゃむにゃむにゃ…… んふふふふ……ふわふわ、ふかふかぁ……。

Luna
ラーベ

なんだ、ルナたちはもう寝たのか。

Raabe
バング

疲れが出てきたのでござろう。 強気なことを言ってはいるが、体力となるとまだ未熟。

Bang
バング

拙者のように鍛えている者とは、 明らかに差が出てしまうものよ。

Bang
セリカ

ふふふ。気持ちよさそう。なんの夢見てるんだろう。

Celica
セリカ

ふぁ……あふ。 ご飯食べたら、私も眠くなってきちゃった……。

Celica
アハト

なら、さっさと寝なさい。 余計な無理をして体調でも崩されたら迷惑よ。

Acht
セリカ

はぁい。アハトさん、時々言い方がお姉ちゃんみたい。

Celica
セリカ

じゃあ、お言葉に甘えてお先におやすみなさい。 あ、火の番、交替するとき声かけてね。私もするから。

Celica
バング

気にすることはないでござるよ。

Bang
バング

見張りはいつものように、拙者とアハト殿、 ラーベ殿とシエル殿、ミネルヴァ殿で担当するでござる。

Bang
セリカ

でも……いつもお任せしっぱなしだし。

Celica
アハト

軟弱な人に任せる方が心配よ。 いいからさっさと寝て。見張りの順番に話が進まないじゃない。

Acht
セリカ

わかった。大人しくしてます。 おやすみなさ〜い。

Celica
シエル

レイさんも、どうぞ休んでください。 今日もたくさん歩きましたから。

Ciel
シエル

あ。誤解しないでください。 レイさんが軟弱だという意味ではありません。

Ciel

1: それくらいはわかるよ、大丈夫
2: 実際へとへとだから……おやすみ

1:
2:

シエル

……そう、ですか。 わかっていただけて……よかったです。

Ciel
シエル

……疲労を感じるのは、当然の運動量だったと思います。 お疲れ様でした。

Ciel
シエル

ゆっくりお休みください……。

Ciel

…………。 ……………………。

……………………。

…………。

1: ……あれ。まだ夜か
2: どれくらい寝てたのかな

1:
2:

シエル

…………。

Ciel
シエル

あ……レイさん……。

Ciel
シエル

まだ夜です。お目覚めには早い時間ですが……。 起こしてしまいましたか?

Ciel
シエル

……あまり良好な睡眠環境ではありませんから、 寝付けないでしょうか。

Ciel
シエル

…………。

Ciel

1: 少し話したいんだけど……
2: 隣にいってもいい?

1:
2:

シエル

はい。……問題ありません。

Ciel
シエル

……バイタルは正常のようですが、 体に不調などはありませんか?

Ciel
シエル

屋外での睡眠は、 不慣れな人にとっては負担になることもあります。

Ciel
シエル

不具合があるようでしたら、教えてください。 対処方法を検討します。

Ciel
シエル

…………。

Ciel
シエル

それで……その。 お話というのは……なんでしょうか。

Ciel

1: シエルさんが元気なさそうだったから
2: なにか悩みがあるのかなと思って

1:
2:

シエル

……私が、ですか。

Ciel
シエル

…………。

Ciel
シエル

健康状態に問題はありません。

Ciel
シエル

……私が、ですか。

Ciel
シエル

…………。

Ciel
シエル

悩んでいるわけではありません。

Ciel
シエル

ただ……身体機能が想定通りに働かないため、 フラストレーションを感じています。

Ciel
シエル

今の私は、とても弱いです。索敵能力は下がり、 集中していても魔物の接近を直前まで察知できません。

Ciel
シエル

これだけの魔物の襲撃に対して、 あなたを守り続けられているのは、他の皆さんがいるからです。

Ciel
シエル

バングさん、ルナさんセナさん、アハトさん。 ……セリカさんと、ミネルヴァさん。

Ciel
シエル

皆さんとても強くて……頼りになる方々です。

Ciel
シエル

私はただ、皆さんについていっているだけです。 夕方の戦闘でも……私は足を引っ張るばかりでした。

Ciel
シエル

私は皆さんに索敵でも、戦闘でも、そのほかのことでも、 貢献できていません。

Ciel
シエル

なによりレイさんの護衛として、 任務をまっとうできていません。

Ciel
シエル

私は、お荷物です。

Ciel

1: そんなことないよ
2: シエルさんがいないと困るよ

1:
2:

シエル

いいえ。 ……いいえ。そうは思いません。私はそうは考えられません。

Ciel
シエル

私はあなたの『護衛』です。 あなたを守れなければ意味がありません。

Ciel

1: どうして僕(私)を守ってくれるの?

1:

シエル

守る、理由……ですか?

Ciel
シエル

…………。

Ciel
カガミ

シエル。お前は彼を守れ。 これは最優先事項だ。

Kagami
カガミ

シエル。お前は彼女を守れ。 これは最優先事項だ。

Kagami
カガミ

我々が『■■■■』へと至るために。

Kagami
シエル

それが私に与えられた『任務』だからです。

Ciel
シエル

あなたを守るようにと『命令』を受けました。 ですから、お守りしています。

Ciel
シエル

…………。 ……あの。

Ciel
シエル

私の返答は、不完全でしたか? 精神波長に……下降の動きがあります。

Ciel
シエル

……どうして、悲しそうなのですか?

Ciel

1: ううん、なんでもない
2: 悲しいわけじゃないよ

1:
2:

シエル

そう……ですか……。

Ciel
シエル

…………。

Ciel
シエル

……レイさん。

Ciel
シエル

私が、今よりあなたの役に立つためには、 なにをするべきでしょうか。

Ciel

1: できれば、あまり無理をしないで
2: 任務でも、自分は大事にして

1:
2:

シエル

それは、私が弱いからですか? 能力の不足から、行動不能に陥る可能性が高いからでしょうか。

Ciel
シエル

……すみません。 そのようなことは、おっしゃっていませんでした。

Ciel
シエル

お気遣いいただいているのだと、理解できます。 ……ありがとうございます。

Ciel
シエル

ですが私は……護衛のためにレイさんの お側にいるので……相応のリスクは背負うのが当然です。

Ciel
シエル

背負えなければ、護衛にはなりません。

Ciel
シエル

護衛でなければ…… 私はあなたの側にいる意味がなくなってしまいます。

Ciel
シエル

レイさん。 どうか、早く記憶を取り戻してください。

Ciel
シエル

私のことを思い出してください。

Ciel
シエル

でないと……任務が完遂できません。

Ciel
シエル

私、は……。

Ciel
シエル

……すみません。

Ciel
シエル

まだ、朝まで時間があります。 どうぞもう一眠りしてください。

Ciel
シエル

今大丈夫に思えても、 後々寝不足が体調に影響することもあります。

Ciel
シエル

あなたの健康状態を保つのも……私の任務……です。

Ciel

1: シエルさんのためにも頑張るから
2: 辛そうな顔しないで

1:
2:

シエル

…………。

Ciel
シエル

……おやすみなさい。レイさん。

Ciel
シエル

(精神波長が、乱れている。 レイさんのものではなく、私の波長が……)

Ciel
シエル

(重くて、苦しい。 これは……なんという感情……?)

Ciel
シエル

レイさんが、 あのような表情を浮かべることは、想定外でした……。

Ciel
シエル

……そうしたいと思っていたわけではないのです。

Ciel
シエル

私は、あなたを悲しませるようなことを 言ってしまったのでしょうか……。

Ciel
シエル

Ciel
バング

おっと。……すまぬ。 盗み聞きをするつもりではなかったのだが……。

Bang
バング

ちょいと用を足している間に、 出るに出られんようになってしまったのでな。

Bang
シエル

……いえ。大丈夫です。 機密情報について話していたわけではありませんので。

Ciel
バング

はっはっは、そうかそうか。

Bang
バング

……のう、シエル殿。盗み聞きついでに、 少々おせっかいをしたいと思っているのでござるが。

Bang
バング

少し拙者の話を聞いてもらえぬか。

Bang
シエル

はい。構いません。

Ciel
バング

先程、拙者の故郷の話をしたでござるな。 そこに帰りたいと。

Bang
バング

拙者の故郷は、実はもうないのでござる。戦争があってな。 大切な人と一緒に、失われてしまった。

Bang
シエル

それは……。

Ciel
バング

大切な人というのは……拙者がお仕えしていた人のことでな。 つまるところ、拙者はその方をお守りしきれなかった。

Bang
バング

ひどく悔やんだものでござる。己の弱さを恨みもした。 なぜ自分が生き残ってしまったのかと絶望したこともあった。

Bang
バング

自分の意味などなくなったかのように思えたものよ。

Bang
シエル

…………。 ……はい。

Ciel
バング

だが! 拙者は今、そのお方の『守りたかったもの』を 守るために、戦い、生きているでござる。

Bang
シエル

守りたかったもの……?

Ciel
バング

うむ。無力ながら、御身をお守りすることはできなかった。 だからこそ、残された御心だけでも拙者は守らねばならん。

Bang
バング

だがこれは、任務ではない。依頼されたわけでもござらん。 守りたいから、守るのでござる。拙者が、拙者のために。

Bang
シエル

……守りたいから……守る。 それは、任務を遂行しようとすることと、違うのですか?

Ciel
バング

似ているが、違うのでござる。

Bang
バング

シエル殿。 お主はなんのためにレイ殿を守る?

Bang
シエル

……任務遂行のためです。

Ciel
シエル

私たちには、レイさんの力が必要です。 ですから、私に護衛が任されました。

Ciel
シエル

御剣機関のモノとして、与えられた役目を果たすのは、 当然のことです。

Ciel
バング

ふむ……。

Bang
バング

シエル殿の中にある気持ちは、それだけなのでござるか?

Bang
シエル

どういう……意味でしょうか? なにを尋ねられているのか、わかりません。

Ciel
バング

仕える者である以上、任務に忠実でなければならん。 だが任務に忠実であろうとするのにも、理由はある。

Bang
バング

力を尽くして任務を行おうとするのは、なぜでござる?

Bang
シエル

私が……御剣機関のスレイプニールだからです。

Ciel
バング

すれいぷにーる? それは……シエル殿の役職のようなものでござるか?

Bang
シエル

……いえ。厳密には違いますが、所属と解釈していただいて 問題ありません。

Ciel
バング

ふむ。シエル殿。例えばでござるが…… その『すれいぷにーる』なるものに与えられた命令ならば……。

Bang
バング

レイ殿を害することもいとわぬか?

Bang
シエル

え……?

Ciel
シエル

それは……そのような、命令は……。

Ciel
バング

考えたこともなかった、といった顔でござるなぁ。

Bang
バング

では逆に。命令でなければ、 シエル殿がすれいぷにーるでなかったならば、

Bang
バング

レイ殿が危機に陥っていようと、 シエル殿は守ろうとはしないでござろうか。

Bang
シエル

……………………。

Ciel
バング

拙者には、シエル殿が任務や命令のためだけに戦い、 護衛をしているようには見えなかったでござる。

Bang
バング

なぜ守りたいのか、なぜ戦うのか。 そこにはしっかりと、気持ちがあるはず。

Bang
バング

ただそれに、シエル殿ご自身が気付いていないのであろう。

Bang
シエル

私の、気持ち……。

Ciel
バング

左様。気持ち、でござる!

Bang
バング

たとえ力量の及ばぬことであろうとも! 気持ちによって灯された心の炎が己を動かすのでござる!

Bang
バング

ゆえに、シエル殿。ご自分の思いに気付かれよ。

Bang
バング

自分がどういう思いでなにを成したいのか、 それがわかったとき、シエル殿はとても強くなる。

Bang
シエル

……強く。

Ciel
シエル

……そうなれば……レイさんを、 お守りすることができるでしょうか。

Ciel
バング

無論!!

Bang
バング

それが『気持ち』の力ゆえ。

Bang
シエル

…………。

Ciel
シエル

私には……わかりません。 私は人間ではありません。素体という、造られた存在です。

Ciel
シエル

人間と同じようには、機能していません。

Ciel
バング

そうでござるか?  拙者にシエル殿は人間にしか見えぬでござるよ。

Bang
バング

その強情さなど特にな。

Bang
シエル

…………。

Ciel
バング

造られたとかどうとかは、拙者にはいささか難しい。 だが造られた者であっても、誰かのために戦うことはあろう。

Bang
バング

実際にシエル殿は、痛みや焦りを感じておるではないか。

Bang
バング

……とはいえ、すぐに飲み込めるものでもござらぬか。

Bang
バング

こういう、静かな夜などちょうどいい。 少し考えてみてくだされ。己の心が欲するものを。

Bang
バング

きっと、シエル殿の糧になるでござろう。

Bang
シエル

……はい。 考慮は……してみます。

Ciel
バング

うむ。

Bang
バング

ああいや、少しばかりのつもりが、 すっかり話しこんでしまったでござるな。

Bang
バング

せっかくでござる。見張りを交替しようぞ。

Bang
シエル

いえ、まだ私の担当時間です。 それにバングさんは、先程まで見張りをされていました。

Ciel
シエル

休んでいてください。私たちの行程には…… バングさんの能力が十分に発揮されることが、必要不可欠です。

Ciel
バング

そうであったな。 では、後は任せて、拙者は少し休ませていただく。

Bang
バング

……なにかあれば、いつでも声をかけられよ。 では、御免。

Bang
シエル

…………。

Ciel
シエル

……なぜ守りたいのか……なぜ戦うのか。

Ciel
シエル

私が任務に従う理由は……。

Ciel
シエル

私がレイさんを守る理由は……。

Ciel
シエル

…………。

Ciel
セナ

このままここにいたら……人探しもできないし、 僕たちの大好きな人にも会いに行けないし。

Sena
ルナ

だからな! さっさと元の世界に戻りたいんだ! 戻らなくちゃいけないんだ!!

Luna
バング

……はっはっは、そうでござるな。帰りたいでござるよ!

Bang
バング

そのためにも、 ラーベ殿たちには必ず目的を果たしてもらわねばならん!

Bang
アハト

ええ、そう。大切な人との大切な約束よ。 それを果たさなければならない。だから戻りたいの。

Acht
シエル

……皆さんにも理由がある。 『なぜ』がある。その『気持ち』のために、戦っている……。

Ciel
シエル

私にも……理由があるのでしょうか……。

Ciel
シエル

……いいえ。

Ciel
シエル

私は御剣機関所属のスレイプニール。 戦うための道具です。

Ciel
シエル

正常に機能するためのプログラムに乗っ取り、 行動は決定されます。

Ciel
シエル

それは……理由とは違うものだと、判断します。

Ciel
シエル

……引き続き、警戒にあたります。

Ciel
ラーベ

……はぁ。

Raabe
ラーベ

道具ね。 これは……もう少し、時間が必要そうだな。

Raabe

第7節 海辺の町①/ 7. Seaside Village - 1

Summary
道程は全体の折り返しを過ぎ、ようやく海が

見えてきた。日本へ渡る船を探すため、一行 は港町へと向かう。

セリカ

<size=120%>あ〜〜〜!</size>

Celica
セリカ

見て見て、みんな! 見えてきたよ!!

Celica
アハト

そうね。そんなに大はしゃぎしなくても、見えてるわよ。

Acht
ルナ

ルナ見えてないぞ! どこどこ、どこだ!

Luna
バング

真っ直ぐ前方、道の先でござるよ。 どれ、担ぎ上げるでござるか?

Bang
ルナ

おう! 肩車しろ!

Luna
ルナ

あ! 変な気は起こすなよ、オッサン。 ロリコンには鉄拳制裁と思え。

Luna
バング

わっはっはっは、チンチクリンめがなにを言いおる。

Bang
ルナ

むきー! チンチクリンじゃない! いいから早く、肩車!

Luna
バング

おお、これこれ、暴れるでない。

Bang
バング

……どうだ、見えるでござるか?

Bang
ルナ

おー、見える! 町だ! あと海だ!! 港町だ!!!

Luna
ラーベ

ようやく中間地点ってところだな。ここから海を渡って初めて、 目的地がある『日本』に足を踏み入れられるわけだ。

Raabe
ルナ

おいレイ、シエル、見えてるか? オッサンに肩車してもらうか?

Luna

1: 大丈夫、見えてるよ
2: 肩車は心惹かれるものがある

1:
2:

バング

拙者は構わぬでござるよ! どーんと任されよ!

Bang
ルナ

あ、でもそれじゃルナがまた見えなくなっちゃうじゃん。 やっぱなし。

Luna
シエル

お気遣いいただきありがとうございます、ルナさん。 徐々に近づいてもいますし、十分視認できています。

Ciel
セリカ

すこーし、海の匂いもするね。 潮の匂いっていうのかな。

Celica
ルナ

くんくんくん……このなんか、変な匂いのことか。

Luna
セナ

磯臭いっていう人もいますよね〜。

Sena
セリカ

ふふ、そうだね。私は小さな島育ちだから、いつもこんな 匂いの中で暮らしてたよ〜。

Celica
セリカ

早くイシャナに帰りたいな。 父さんと一緒に帰れたら、一番いいんだけど。

Celica
ルナ

確か『災厄』が最初にぶっ壊したところにいたんだろ? 生きてんのか?

Luna
バング

これ、ルナ。無神経でござるよ。

Bang
セリカ

いいのいいの。ルナちゃんが言うことはもっともだし、 私も思ってるからね、同じこと。

Celica
セリカ

でもどんなに望みがなくても、もしかしたらって 考えてたいタイプなの、私。

Celica
アハト

思ってるだけならいいんじゃない。

Acht
アハト

望みが絶たれたときに、絶望して自暴自棄、 なんて面倒なことにさえならないでくれるなら。

Acht
セリカ

大丈夫! ……だと思う。

Celica
シエル

このまま順調に進めば、 日が落ちる前には市街地に入れそうですね。

Ciel
ラーベ

だな。着いたらすぐに港へ行って、 船が出ているかどうかチェックしておいたほうがいいだろう。

Raabe
ラーベ

定期便なんて便利なものが運航しているとは思えないが…… 今日中に都合がつくようなら、それにこしたことはない。

Raabe
アハト

荒んだご時世のようだしね。この前の村みたいに、 宿が確保できるかどうかも定かではないもの。

Acht
ルナ

うえ〜……今度こそふかふかベッドで寝たいんだけど。

Luna
セリカ

あはは、そうだね……。 私もさすがにちょっと、体痛くなってきちゃったもんなぁ〜。

Celica

1: 僕(私)もベッドが恋しい
2: 僕(私)はまだまだキャンプやれます!

1:
2:

セリカ

だよねぇ。焚き火を囲んでみんなで野宿っていうのも 楽しいけど、やっぱりふかふかお布団は誘惑だよね〜。

Celica
セリカ

おお、たくましい……! 私も見習わなきゃ。 といっても……やっぱりふかふかお布団は恋しい〜!

Celica
ラーベ

どうなるにせよ、キリキリ足を動かせ。 到着しなけりゃ野宿一択だ。

Raabe
セリカ

はーい!

Celica
バング

ん? やれやれでござる。 町まであと一歩だが、その前にまた魔物でござるよ。

Bang
ルナ

いーぜぇ、やってやんよ。 今夜のお布団と美味しい晩飯のためだ!

Luna
ラーベ

いやだから。最善は船に乗っちゃいたいんだけどな。 ラーベちゃんとしては。

Raabe
アハト

言わせときなさいよ。 やる気になるんなら、なんでもいいわ。

Acht
シエル

あ……敵対反応……魔物です。

Ciel
ラーベ

おお、わかってる。 ぼーとしてるな。シャキッとしてくれ。

Raabe

1: シエルさん、無理しないでね
2: 怪我しないように、気を付けて

1:
2:

シエル

…………。

Ciel
シエル

失礼しました。戦闘態勢に移行します。 対象を補足。迎撃開始。

Ciel

第7節 海辺の町②/ 7. Seaside Village - 2

Summary
港の人々に話を聞くも、日本へ渡る船はな

い。手詰まりかと思われたが、動き出した ミネルヴァを追った先に廃船を見つける。

ルナ

<size=120%>海だーーーーーーーーーー!!!</size>

Luna
セリカ

<size=120%>海だーーーーーーーーーー!!!</size>

Celica
アハト

元気ねぇ。

Acht
バング

元気なのはいいことでござるよ!

Bang
ラーベ

ちょっとテンション上げすぎな気もするけどな。

Raabe
シエル

……海は、いいものなのですか?

Ciel
ルナ

前にも言ったろ。特別感だよ、特別感。

Luna
セリカ

私は好きだよ。 だから私にとっては、いいものかな。

Celica

1: 僕(私)も好きだよ、海 2: 僕(私)はまあまあかな…… 実は好きってわけじゃない

1:
2:

シエル

好き……そうですか。 海はレイさんの好きなものなのですね。

Ciel
シエル

好きでも嫌いでもない、という意味でしょうか。 『まあまあ』……解釈が難しい言葉です。

Ciel
シエル

そうなのですか。 誰もが海に対して好印象を抱いているわけではないのですね。

Ciel
シエル

……海。

Ciel
シエル

見たことはあるのですが。 『見たい』と思ったのは、初めてです。

Ciel
セリカ

それって、なんか素敵だね。

Celica
シエル

そう……ですか? すみません、おっしゃっている意味がよくわかりません。

Ciel
セリカ

私もよくわかんないけど。 素敵だなって思ったの。

Celica
シエル

なるほど……。

Ciel
アハト

それで。まず船だったかしら。

Acht
ラーベ

ああ。この先の交通手段を調査しておかないことには、 予定も立てられんしな。

Raabe
バング

となれば、向かうは港であるか。

Bang
アハト

海沿いを行けば、立地がわからなくても 港へはたどり着けるんじゃない。

Acht
ラーベ

だな。 おーい、そこのはしゃいでる奴ら、行くぞー。

Raabe
セリカ

わ! はーい、行きまーす!

Celica
ルナ

よーし、ついてこい手下ども!

Luna
セナ

船かぁ。そう簡単に見つかるのかなぁ。

Sena
ルナ

なんだよ、セナ。そーゆー後ろ向きなの、よくないぞ。

Luna
セナ

今回に限っては、後ろ向きってわけじゃないよ〜。 だってほら……町の感じ。見てよ……。

Sena
アハト

……あまり私たちのような外から来た人間を 歓迎してくれる雰囲気じゃないわね。

Acht
シエル

確かにそうですね。 先日の村ほど緊迫した貧しさは感じませんが……。

Ciel
ラーベ

こちらに見向きもしない、興味もない。 そんな印象を受けるな。

Raabe
バング

『災厄』の影響であろうな。

Bang
バング

直接の被害はまぬがれたようだが、 それでも多くのものを失ったのでござろう。

Bang
バング

自分の力ではどうにもならぬ脅威は、財産や人命のみならず、 残された人の意欲や活気をも奪うもの。

Bang

1: それだけ災厄は大きかったんだね
2: 災厄って、どんなものだったんだろう……

1:
2:

アハト

陳腐な言葉だけど『計り知れないもの』だったんでしょうね。 ただ蹂躙されるしかないような。

Acht
セリカ

……うん……。

Celica
ラーベ

町の規模に対して、目につく人の数も少なすぎる。 港として機能しているか怪しいもんだな。

Raabe
アハト

とりあえず、船を探しましょう。 一隻もないなんてことはないでしょうし。

Acht
バング

うむ。港で話を聞いてみようではないか。 どこであろうと調査にはまず情報収集が重要でござる!

Bang
ルナ

お。おーい、レイ、シエル、セリカー! こっちこっち!

Luna
バング

戻られたか。これで全員集合でござるな。

Bang
セリカ

バングさんたちも、お疲れ様。 ここの港広いんだね。迷子になりそうだった。

Celica
アハト

なりそう、というか。 あなたは実際なるでしょ。

Acht
ラーベ

レイたちと 一緒に行かせたのは大正解だったな。

Raabe
ルナ

そこの軍団だけシエル、セリカ、ミネルヴァ、ラーベに レイで超大人数じゃん。

Luna
ルナ

ルナより手がかかるなんて、世話が焼けるぜ。

Luna
セナ

本当だよねぇ〜。 ルナよりだもんねぇ〜。

Sena
ルナ

むっ。今のなんか、なんかムカつくな!

Luna
セナ

あはは、気のせい気のせい。

Sena
セナ

それより……どうでしたぁ?

Sena

1: 全然……日本に向かう船はないみたい
2: ダメだった! 船出せる人いないって!

1:
2:

バング

むうん、やはりそうであったか……。 拙者のほうも、同じような結果でござる。

Bang
バング

日本はおろか、どこに向けても船は出ていないらしい。 せいぜい、近海で魚介類を採るためにしか動かしていないとか。

Bang
ルナ

なんだそっちもか! ルナたちもだ! おそろいだな!

Luna
ルナ

船を持ってるって人はいたけど、ちょこっとその辺で魚採る用 にしか使ってないんだって。日本に船なんか出てないってよ。

Luna
アハト

私が調べた範囲でも、同じ感じね。 どこか別の港へ向けて運航している船はなし。

Acht
アハト

それどころか行き先が日本だって聞いたら、 正気を疑われたわ。

Acht
バング

左様。日本という名前には、誰も彼もいい顔を しないでござるな。

Bang
バング

それだけ、拙者たちが向かおうとしている場所は 過酷なところなのだろう。

Bang
セリカ

それは……そうだよね。

Celica
セリカ

『災厄』が現れて……『災厄』に最初に滅ぼされた国だしね。

Celica
アハト

この時勢だと、不吉の代名詞なんでしょうね。 行ける、行けない以前に、誰も近づきたくないのよ。

Acht
シエル

ですが、困りましたね。 船が出ていないとなると、日本へ向かうのは難しいです。

Ciel
シエル

なにかしらの手段で海を渡る必要がありますから……。

Ciel

1: 泳ぐわけにはいかないし……
2: 船以外の方法はないのかな

1:
2:

バング

わっはっは、豪気な発想、拙者好みであるぞ!

Bang
バング

だが拙者くらいの者であれば不可能ではないかもしれぬが、 ここにいる全員がとなると、難しいでござろうなぁ。

Bang
アハト

航空機は難しいでしょうね。 施設がどこにあるのかから調べなくちゃならないし。

Acht
アハト

なにより、今まで一度も航空機を見ていないわ。 もしあっても、簡単には飛ばせないわよ。

Acht
セリカ

うーん、うーん……やっぱり船だよね。 どうにかして船。なんでもいいから、船ないかな……。

Celica
ルナ

んなこと言ってもなぁ……。

Luna
ミネルヴァ

…………。

Minerva
ミネルヴァ

…………。

Minerva
セリカ

ん? ミネルヴァ、どうしたの?

Celica
ミネルヴァ

…………。

Minerva
セリカ

わ、わ、待ってミネルヴァ、どこ行くの!?

Celica
ルナ

あ、おい!

Luna
アハト

こら、勝手に行かないの!

Acht
ラーベ

まずい、セリカをひとりにするな! どこに姿を消すかわからんぞ!

Raabe
シエル

はい! レイさん、追いかけましょう!

Ciel
シエル

いました! セリカさんとミネルヴァさん、あそこです。

Ciel
セリカ

あ、おーい! みんな、来て来て! ミネルヴァお手柄だよ!

Celica
セリカ

船、あったの!

Celica
バング

なんと! それは朗報!!

Bang
ルナ

行ってみようぜ〜!

Luna
シエル

これは……。

Ciel
ラーベ

船は船だが……。

Raabe
ルナ

とんでもねーボロ船じゃんか……。

Luna
アハト

規模としては、少し大きめの漁船ってところで 悪くないけれど。

Acht
アハト

外も中も、あちこちサビだらけだし。 ちょっと、こっちなんか穴開いてるわよ。これ大丈夫なの?

Acht
ラーベ

いやダメだろう。 このまま海に出ようもんなら、数時間のうちに沈むぞ。

Raabe
ラーベ

いやそれ以前に、まともに動くのか?

Raabe
セリカ

えー、ダメ? 動かない? 乗れないの?

Celica
バング

まあまあ。 外は確かにひどいが、意外と中はまともかもしれぬでござるよ。

Bang
バング

どれどれ……船内はどうなって……。

Bang
バング

<size=120%> どわわわわわわっ!?</size>

Bang
セリカ

ど、どうしたの、大丈夫!?

Celica
シエル

て、敵性体、魔物を確認! 船の中に潜んでいたようです!

Ciel
アハト

なんですってぇ!?

Acht

1: わわわ、まだまだ出てきた!
2: ちょっと怒ってる感じじゃない?

1:
2:

ラーベ

長く使われていない船のようだからな。 人知れず魔物が住み着いていたってことか。

Raabe
ルナ

残念だったな、魔物ども! たった今からここは、ルナ様たちの船になるんだ!

Luna
ルナ

とっとと立ち退きしてもらうぜ!

Luna
セナ

なんだか悪役のセリフみたいだなぁ〜……。

Sena
ルナ

うっせ! ルナ様の言うことが常に正義だ!

Luna
バング

常に正義の炎を胸に灯しているということでござるな! 素晴らしい。拙者も負けてはおれぬな。

Bang
バング

こい、魔物ども! このシシガミ=バングがお相手いたぁぁぁす!

Bang
ラーベ

お前たちの正義、都合が良いな!!

Raabe

第7節 海辺の町③/ 7. Seaside Village - 3

Summary
船を修理するため、一行は一晩の宿を取る。

その夜にシエルとラーベ、そしてセリカと言 葉を交わし、それぞれの思いを受け止めた。

シエル

……検索……完了。

Ciel
シエル

船上、船内に敵性体の反応、ありません。

Ciel
ルナ

よぉし、制圧完了だ!

Luna
セリカ

ごめんね、魔物さん。 ありがとう、船、大事に使います。

Celica
シエル

ですが……魔物を倒したとしても、船はこのままでは使えません。 どうにかして修理が必要です。それも、かなり大規模な。

Ciel
アハト

動力部分が使えるのかどうかのチェックも必要よ。 そういうの、誰かに頼まないといけないわよね……。

Acht
ルナ

ふっふっふ……。

Luna
バング

うん? どうしたでござる、ルナ。 なにやら不気味な笑い声をあげておるが。

Bang
ルナ

不気味じゃない、不敵な笑いだ!

Luna
ルナ

とにかく、その辺りのことはこのルナ様に まるっとまーかせなさーい!!

Luna
セリカ

任せるって……船の修理を?

Celica

1: もしかして、修理できるとか?
2: 意外とこういうのに詳しい?

1:
2:

ルナ

そう思うか?

Luna
ルナ

その通り、直せるぞ!

Luna
ルナ

詳しくはない!

Luna
ルナ

でも直せるぞ。

Luna
アハト

直すっていっても、どうするつもり? ここには資材も工具もないのよ?

Acht
ルナ

そういう事こそ、ルナ様の専門だ。 じゃーん、これを見よ!

Luna
ルナ

ルナの持つラブリーでキュートなこの杖こそ 『雷轟・無兆鈴』!

Luna
ルナ

具現化の力を持つスペシャルな杖だ!!

Luna
セリカ

具現化? ってことは、なにか作り出すことができるってこと?

Celica
ルナ

『なにか』じゃない。『なんでも』だ。 ルナ様がほしいなーって思ったものはなんでも具現化できる!

Luna
シエル

言われてみれば、ルナさんやセナさんの戦闘スタイルは 杖を振るうことで様々な物を出現させるというものでした。

Ciel
シエル

戦闘行為のような瞬間的なものではなく、 船の修理のような持続的なものとしても使えるのですね。

Ciel
ルナ

そーだ。

Luna
ルナ

……ちょっとなに言ってるのか難しくて よくわかんなかったけど、そうだ!

Luna
セリカ

すごい! 船が直せるなんて、すごいよルナちゃん!

Celica
ルナ

そうだろ、そうだろ。 ふふーん、もっとすごがっていいぞ。すごいんだ、ルナ様は。

Luna
バング

だがなんでも具現化できるのならば、修理などせずとも 船そのものを具現化してしまえばよいのではないか?

Bang
ルナ

バカ言え。船なんてでっかいもん、ぽーんと作れるか。 もっと小さいものじゃないと無理に決まってんだろ。

Luna
ラーベ

ということは……資材や工具をひとつひとつ作って、 それを使って修理をするということか?

Raabe
ルナ

ま、そうなるな。安心しろ、船の構造とかはなんとなーくわかる。 これも『無兆鈴』のおかげだ!

Luna
シエル

本当にすごい杖なのですね……。

Ciel
セナ

そうなんですよ〜。 だから、船の修理については僕たちに任せてください〜。

Sena
セナ

といっても、僕たちはパーツを作れるだけですから。 実際に修理をする、労働者が必要ですけどねぇ〜。

Sena
セリカ

はいはい! 私やる!

Celica
ラーベ

なにか特別な知識や経験でもあるのか?

Raabe
セリカ

ないけど、楽しそう!

Celica
セリカ

それに私が日本に行きたいっていうのを 叶えてくれるための船だし。

Celica
セナ

あ〜、お気持ちは嬉しいんですけど、経験のない素人さんに 手を出されると、大変心許ないので〜……。

Sena
セナ

バングさん、手伝ってください〜。

Sena
バング

おお、拙者でござるか。

Bang
バング

無論、助太刀が必要とあらば、喜んで手伝うでござるよ! こう見えても大工仕事には慣れているでござる。

Bang
バング

一時は毎日毎日、行く先を失った同胞たちの住まいを 建てて回っていたでござるからなぁ!

Bang
アハト

ふうん、それならお任せできそうね。

Acht
ルナ

ただなー、機械はどうなるかちょっとわかんないな。 そっくりに作ることはできるけど、動かし方わかんないし。

Luna
ラーベ

そっくりに作れるなら十分だ。 動く状態にセッティングする役目は、私がやろう。

Raabe
アハト

役割分担は決まりね。

Acht
アハト

私はこういうことには戦力にならないから、 少しの間自由にさせてもらおうかしら。

Acht
セリカ

ねえ、ルナちゃんセナちゃん。 修理って、どれくらいかかりそう?

Celica
ルナ

んー、オッサンの働き次第だけど、一晩はかかるんじゃないか。 ルナだって休みなしに具現化し続けられるわけじゃないし。

Luna
シエル

では、宿の手配をしておいたほうがいいですね。

Ciel
ルナ

だな! ルナ様のふかふかお布団とおいしい晩ご飯を用意しておけよな!

Luna
シエル

ご期待に添えるかどうかはわかりませんが、 捜索してみます。

Ciel

1: じゃあ、僕(私)たちは宿探しだね
2: ルナ、セナ、バングさん、よろしく!

1:
2:

シエル

はい。 皆さんがしっかり休める場所を確保しておきます。

Ciel
バング

任されよ!

Bang
ルナ

まっかされよー。

Luna
シエル

無事に宿が確保できてよかったです。 これでルナさんたちにも、ゆっくり休んでいただけます。

Ciel
ラーベ

そうだな。レイの体力回復にもなる。

Raabe
ラーベ

今回はこれまでと比べて、かなり長期の《浸入》 (ダイブ) だからな……。 そのうえ連日野宿ときた。

Raabe
ラーベ

なにか異常があれば、知らせるんだぞ。 お前は私たちにとって特別な……。

Raabe
ラーベ

……仲間なのだからな。

Raabe
シエル

…………。

Ciel
シエル

……あの。 記憶は……いかがですか? まだ、戻りませんか?

Ciel

1: 少しずつ、違和感はなくなってきたけど……
2: はっきりとは、まだ

1:
2:

ラーベ

そうか。だったら、混乱させるだけかもしれないが…… 現状について、ちょっと整理しておくぞ。

Raabe
ラーベ

今後の方針にも繋がるから、一応聞いておけ。

Raabe
ラーベ

……我々は今、日本へ向かっている。

Raabe
ラーベ

理由は、セリカの父親が勤務していたという研究所を訪れ、 彼女の父親の消息を知るためだ。

Raabe
ラーベ

だが私たち……つまり私とシエル、そしてお前の目的は違う。 そこにあるだろう『窯』を確認しに行く。

Raabe
ラーベ

『窯』の破壊こそが、私たちの最終目的だ。 そうすることでファントムフィールドを解放する。

Raabe
ラーベ

同時に『窯』に到達することで境界にアクセスし、 お前の記憶も取り戻す。

Raabe
シエル

……『窯』は、観測者が特定できていないと認識できません。 なので、先に観測者を特定しなければならないはずです。

Ciel
ラーベ

そうだな。だが今現在、観測者に繋がる情報は極めて少ない。 ……というか、候補者があまりにも少ない。

Raabe
ラーベ

異物連中の証言をうのみにするなら、この世界の人間であると 自覚のあるドライブ能力者はセリカのみだ。

Raabe
シエル

では、セリカさんが今回のファントムフィールドの 観測者なのでしょうか。

Ciel
ラーベ

さすがにまだ、そうと断定はできないな。

Raabe
ラーベ

これまでにも、異物であると思い込んでいながら、 実際には異物でなかったという前例があった。

Raabe
ラーベ

着々と日本へ向けて進行していることから セリカの願望が叶えられようとしているように思えるが……。

Raabe
ラーベ

目的地である研究所に到達することで、あるいはその先で、 別の誰かの目的が叶う仕組みになっている場合もあるだろう。

Raabe
ラーベ

だが少なくとも、日本に行くことを誰かが妨害している節はない。 つまり『観測者』は日本へ『行きたい』んだ。

Raabe
ラーベ

一方で、観測者は『窯』に近付かれることを拒む傾向がある。 ということは……?

Raabe
シエル

『窯』へ近づいたときに、 なにかしらの拒絶反応が起こるはず……ですか?

Ciel
ラーベ

そう、その通り。今までもそうだったな。 仮にまだ、私たちが観測者に接触していなくても、

Raabe
ラーベ

私たちが『窯』へアクセスしようとしたとき、 必ず観測者、あるいは世界は反応を見せる。

Raabe
ラーベ

幸い、異物連中を含めて、 コンタクトできたドライブ能力者は全員同行者だ。

Raabe
ラーベ

そのときどんな事象が起こるかで、 観測者を特定できるだろう。

Raabe
ラーベ

……とまあ、状況の整理はこんなもんにしておこう。 結局あれだ、なるようになる。

Raabe
ラーベ

ところで、他の連中はまだ戻ってこないか。

Raabe
シエル

ルナさんとセナさん、バングさんは船の修理。 アハトさんは町を散策すると言っていました。

Ciel
ラーベ

セリカは船の修理を見学しているんだっけか。 資材運びならミネルヴァも手伝えるからと。

Raabe
ラーベ

食事の確保もしてあるし…… となれば、しばらく自由行動だな。

Raabe
ラーベ

レイ、どうする? 部屋で休んでいても構わないけど。

Raabe

1: せっかくだから散歩してこようかな
2: ちょっと外の空気が吸いたい

1:
2:

ラーベ

迷子になるなよ。

Raabe
シエル

…………。

Ciel
ラーベ

……なんだ。ついていかないのか?

Raabe
シエル

……周囲に、敵性反応はありません。

Ciel
シエル

それに……私がついていっても、 レイさんのお役には立ちません。

Ciel
ラーベ

なにを拗ねてるんだ、お前。

Raabe
シエル

拗ねる……という意味に属する行動は とっていません。

Ciel
シエル

現状を把握したうえでの……自己分析の結果です。

Ciel
ラーベ

それを拗ねてるというんだ。 お前の任務は……ああ、いや。

Raabe
ラーベ

まあ、いいか。

Raabe
シエル

…………。

Ciel
ラーベ

ぴったりくっついて同行する必要はない。 ただ、緊急時に即座に対応できるようにはしておけ。

Raabe
シエル

……はい。 私の任務はレイさんの護衛です……。

Ciel
シエル

緊急対応可能な距離で、索敵と警戒を行います。

Ciel
ラーベ

……これはいい傾向、かもね。

Raabe

1: 静かな公園だな……
2: 海が見える!

1:
2:

1: (今まで色んな場所に行った……はず)
2: (色んな人に会ってきた……ような)

1:
2:

セリカ

レイ!

Celica
セリカ

あはは、びっくりさせちゃった? ごめんね。 姿が見えたから嬉しくなっちゃって、走ってきた。

Celica
セリカ

海、見てたの? 私も一緒にいいかな。

Celica
セリカ

……綺麗だねぇ。海も、月も。

Celica
セリカ

魔素で汚れちゃってるんだって、海。空気も。 でも……ここから見るのは綺麗。

Celica
セリカ

……この海の向こうに、日本はあるんだね。

Celica
セリカ

父さん、会いたいなぁ。

Celica
セリカ

私の家族ね。父と姉だけなの。 母さんは、私が小さいころに病気で死んじゃって。

Celica
セリカ

そのころにはもう父さんは有名な科学者で、 ずっと研究所に泊まり込んで難しい研究をしてた。

Celica
セリカ

だからいつもお姉ちゃんが私の面倒を見てくれて。 そのお姉ちゃんもね、すごいんだよ!

Celica
セリカ

私と同じ、魔道協会の学生なんだけど。 なんとイシャナの十聖に選ばれたの!

Celica
セリカ

あ、十聖ってわかる? えっと、特に優秀な魔術師しか選ばれない、特別な役職なの。

Celica
セリカ

すごい父さんと、すごいお姉ちゃん。

Celica
セリカ

ふたりの仲はすっごく悪いけど、 私にとってはどっちも自慢で、大事な家族なの。

Celica
セリカ

大好きなお姉ちゃん、きっと今ごろ すごーく心配して、すごーく怒ってると思うんだけど。

Celica
セリカ

同じくらい、父さんのことも大好きだから……。

Celica

1: だから、消息が知りたいんだね
2: それでここまで来るなんてすごいよ

1:
2:

セリカ

うん。悲しい結果でもいいの。 なにかを見て、なにかを知ることができたらそれでいい。

Celica
セリカ

お姉ちゃんには、考えなしってよく怒られるんだ。 でも……今より、なにかを見て、なにかを知ってから帰りたい。

Celica
セリカ

なにも確かなことを知らないままで、 ふわふわした想像ばっかりしてると……

Celica
セリカ

父さんの存在まであやふやになっちゃいそうな気がするんだ。

Celica
セリカ

……それとね、もうひとつ。 『災厄』のことを確かめたいの。

Celica
セリカ

父さんが働いてた研究所は『災厄』に最初に襲撃された場所。 つまり……『災厄』が最初に現れた場所でもある。

Celica
セリカ

それじゃあさ、父さんの研究所は……『災厄』を呼び出した 場所ってことになるかもしれないでしょ。

Celica
セリカ

どうしてあの研究所が最初だったのか…… どうして『災厄』が現れたのか、知れたらいいなって。

Celica
セリカ

なんて、そんなことを思って飛び出してきたはいいけどね。 結局みんなに助けられて、なんとかここまで来られたわけで。

Celica
セリカ

あのとき、山の中であなたに出会えてよかった。 あそこから全部……始まってるような気がするんだ。

Celica

1: (始まり……なにか引っかかるような)
2: (始まりは僕(私)だっけ……?)

1:
2:

セリカ

ん? あれって……。

Celica
セリカ

シエルちゃんだ。 どうしたんだろ、あんな離れたところでぽつんと立って。

Celica
セリカ

……よし、行ってみよう! おーい、シエルちゃーーーん!

Celica
シエル

あ……。

Ciel
セリカ

シエルちゃん。どうしたの?

Celica
セリカ

なんだか、寂しそうだったよ。

Celica
シエル

…………。

Ciel
シエル

寂しい、わけでは、ありません。 私は……任務を……索敵と警戒を……。

Ciel
セリカ

任務? あ、護衛の任務だね。

Celica
セリカ

ちょっと離れたところから、 レイを守ってたんだ。

Celica
シエル

いえ。その。

Ciel
シエル

……あの。

Ciel
セリカ

ん? なぁに?

Celica
シエル

私は……。

Ciel
シエル

レイさん。 私が、あなたの側にいる意味はあるのでしょうか?

Ciel
セリカ

え……?

Celica
シエル

先日も同じようなことを言いました。 あれからずっと疑問に思っています。

Ciel
シエル

今も答えがわかりません。

Ciel
シエル

私は護衛として、満足に機能していません。

Ciel
シエル

私が側にいるよりも、セリカさんやミネルヴァさんが 側にいたほうがずっと安全です。

Ciel
シエル

戦闘技能も、索敵機能も ミネルヴァさんのほうが優れています。

Ciel
シエル

セリカさんには治癒能力がありますし、 精神的なサポートも行うことができる。

Ciel
シエル

でも私には……できません。

Ciel
シエル

私が近くで護衛をする意味は……あるのでしょうか。

Ciel

1: あるよ!
2: 僕(私)には……わからないけど……

1:
2:

If Choice 1:
シエル

……そう……でしょうか。

Ciel
シエル

でも、ですが、私は……。

Ciel
If Choice 2:
シエル

……そう……ですよね。

Ciel
シエル

すみません……おかしなことを、聞きました……。

Ciel
セリカ

シエルちゃん。不安なんだね。

Celica
シエル

不安……?

Ciel
セリカ

細かいことは、私にはわからないけど。今のシエルちゃんは、 普段の自分とは違う感じがするんでしょう?

Celica
シエル

は……はい。違います。機能も精神波長も違いすぎています。 なのに……コントロールできずにいます……。

Ciel
シエル

これも、私が……。

Ciel
セリカ

うん。そういうときってあるよね。 いつもできてることができなくなったり。

Celica
セリカ

私もそういうとき、不安になるの。 なんでできないんだろうって。

Celica
セリカ

落ち込むし、自信なくしちゃうし…… 自分ってなんてダメなんだろうって思ったりもするよ。

Celica
シエル

……セリカさんも、そう考えられるのですか。

Ciel
セリカ

うん。

Celica
セリカ

同じだ、って思ってくれた? シエルちゃんも同じように感じるのかな。

Celica
シエル

感じる……私が……。

Ciel
セリカ

自分はダメだって思うと、気持ちがグラグラするよね。 自分の意味を聞きたくなる気持ちも、わかるよ。

Celica
セリカ

だけど、レイにいくら聞いても、 気持ちのグラグラは治らないと思うんだ。

Celica
セリカ

シエルちゃんがレイの側にいて、 意味があるのかないのか。

Celica
セリカ

それを判断できるのって、 シエルちゃん自身なんじゃないかな。

Celica
シエル

私自身……ですか?

Ciel
セリカ

うん。シエルちゃんが知りたいのって、 レイにとっての『意味』じゃなくて、

Celica
セリカ

シエルちゃん自身にとっての『意味』だと思う。

Celica
シエル

…………。

Ciel

1: 自分がどう考えているか……かな
2: 自分で納得できるか……とか?

1:
2:

セリカ

うん、そう。そんな感じ! レイいいこと言ったと思う!

Celica
シエル

私、は……レイさんの護衛任務を 命じられたので……だから……。

Ciel
セリカ

眉間にしわ、寄ってるよ。

Celica
セリカ

難しい問題は、ゆっくり考えたらいいんだよ。 特に自分のことは、簡単にはわからないことなんだから。

Celica
セリカ

美味しいご飯でも、食べながら。ね。

Celica
シエル

…………。

Ciel
セリカ

と、いうわけで、ご飯にしない? 私お腹すいてきちゃった。

Celica
セリカ

港に寄って、ルナちゃんセナちゃん、バングさんに声かけて。 みんなで宿で晩ご飯にしよ!

Celica
シエル

…………はい。

Ciel

第8節 時間稼ぎ①/ 8. Buying Time - 1

Summary
夜明け、ルナの唐突な叫び声に起こされる。

港の人々が忽然と消えており、警戒する一行 の前に『バベル』のセミアが現れた。

ルナ

<size=130%>大変大変大変だー!</size> <size=130%>起きろ、全員起きろーーー!</size>

Luna

1: ど、ど、どうしたのいきなり!?
2: あれ、ルナ〜。おはよう〜……

1:
2:

ルナ

どーしたもこーしたもあるか! とにかくすっごく大変なんだ!

Luna
ルナ

なにセナみたいなこと言ってんだ! 寝ぼけてる場合じゃないぞ!

Luna
ルナ

さっさと起きて、外に来い! グズノロマ!!

Luna

1: これは……
2: 誰もいない?

1:
2:

ルナ

そーなんだよ! 誰もいないんだ、町ん中!

Luna
アハト

私もこの子に叩き起こされて、少し周りを見てきたんだけど。 建物の中にも人の気配はないわ。

Acht
アハト

まるで一晩のうちに忽然と、 人が消えてしまったかのよう。

Acht
セリカ

そんな……。

Celica
セリカ

昨日までは、すごく大勢じゃなかったけど、 ちゃんと人がいたのに。なんで……?

Celica
ミネルヴァ

……………………。

Minerva
ラーベ

おい、シエル。確認しろ。

Raabe
シエル

はい。検索を開始します。

Ciel
シエル

…………。

Ciel
シエル

……索敵可能範囲内に、それらしい反応はありません。

Ciel
シエル

人だけではありません。 もっと小さな生命の反応も確認できませんでした。

Ciel
アハト

ネズミだとか虫だとかもいないってこと? どうなっているの……?

Acht
シエル

高速で移動中の反応を感知しました。 こちらに向かってきま……あ。

Ciel
バング

とうっ!!

Bang
バング

愛と正義の戦士シシガミ=バング、朝日を浴びつつ華麗に参上! おお、皆揃っておったか。

Bang
シエル

今の反応は、バングさんでしたか。 おはようございます。町の様子を見てこられたのですか?

Ciel
バング

うむ! ルナと共に、船の仕上げ作業に向かったときに 異変に気が付いてな。

Bang
バング

主要な箇所を、一通り確認してきたところでござる。

Bang
セリカ

ど、どうだったの……?

Celica
バング

……誰もおらぬ。

Bang
バング

奇妙なことに、ついさっきまで人がいたような形跡、 というものもない。

Bang
バング

人など存在していなかったとでも言うかのように、 建物と最低限の家財道具だけが残っているのでござる。

Bang
アハト

まさか、これが『災厄』なの……?

Acht
ラーベ

いや、違うだろう。なにも破壊されていない。 ただ人が……生命反応が消えただけだ。

Raabe
シエル

『災厄』という現象が理由ならば、私たちだけが無事なのも 不可解です。

Ciel
セリカ

でも、なにかがあった……。

Celica
ミネルヴァ

……!!

Minerva
セリカ

わ、ど、どうしたのミネルヴァ!?

Celica
シエル

敵ですか!? でも、まだ反応は……。

Ciel
???

あぁ……いたいた。 建物がゴチャゴチャしてるから探しちゃったよ……。

???
シエル

っ!?

Ciel
???

タイミングよく人間が消えてくれて助かっちゃった。 ご協力どーも。

???
???

……で、一応確認するけどさ。 御剣機関……だよね?

???
ラーベ

お前は誰だ?

Raabe
???

アタシ? ……セミア。

???
セミア

『バベル』って言ったほうが、わかりやすいか。

Semia
シエル

バベル……。

Ciel

1: っ……覚えてる。あのときの……
2: 僕(私)たちの……『敵』

1:
2:

セミア

なに? 人間風情が、キモい目で睨まないでくれる? 潰すよ……その『目』。

Semia
セミア

あぁ、でもちょっかい出すのは、ちょっと怖いなぁ。 だって変なドライブもってるんでしょ、アンタ……。

Semia
セミア

その目で『観』られるのも気持ち悪いし。 ザラみたいに馬鹿を披露するのも……。

Semia
セミア

アタシはまだ御免だからさ。

Semia
ルナ

うわわわっ! な、なんだぁ!?

Luna
バング

地揺れでござるか!?

Bang
アハト

っ、違うわ。なにかがせり上がってくる。 下がって!

Acht
ミネルヴァ

……!!

Minerva
セリカ

きゃぁっ!

Celica
ルナ

うわ、ほんとに地面から出てきた! なんだあれ、でっか!!

Luna
アハト

ゴーレム……みたいなものね。 なんにせよ、友好的には見えないわ。

Acht
セミア

悪いけど、まだこっち、ちょっと時間かかるの。 今すぐ日本に来られても迷惑だから。そいつと遊んでてよ。

Semia
セミア

アタシはすぐ戻らないといけないしさ。

Semia
セミア

……起きたときひとりじゃ、あの子かわいそうだし。 ひとりでどっか行っちゃったら困るしね。

Semia
ラーベ

あの子? おい、お前。なんの話をしている?

Raabe
セミア

親切に教えるわけないし。馬鹿なの? チラ見せだけして焦らそうって魂胆なんだから、こっちは。

Semia
セミア

ああ、いけない。遊んでる場合じゃないんだった。 行かないと。

Semia
ルナ

おい待てお前! なに勝手に話進めてんだ!?

Luna
ルナ

お前……なんか、その格好……誰かに似てるような……。

Luna
セミア

え? なに? てか、異物には興味ないんだけど。 ウザイから、ここで死んでくれない。

Semia
ルナ

はぁ!? 上等だお前、かかってこい! てかお前がこい!

Luna
アハト

やめときなさい。 まともに戦ってどうこうなる相手じゃないわよ……。

Acht
アハト

それに……目の前のこのゴーレムだって、 とんでもない魔力量だわ。

Acht
アハト

魔力で動いてるかは、定かじゃないけど。

Acht
バング

ぐぬぬ……。

Bang
セミア

ああ……そうだ。

Semia
セミア

アンタは機能停止しないでよね……御剣の犬。 ハーンに言われてるからさ。

Semia
シエル

ハーン……。 あのときの、フードを被った……。

Ciel
セミア

……まぁ、壊れたら壊れたで、別に知ったこっちゃないんだけど。 残念でした〜ってね。

Semia
セミア

それじゃ。 バイバイ。

Semia
シエル

ま……待ってください! アナタがたは一体なにを……!

Ciel

1: シエルさん、危ないよ!
2: 無闇に前に出たらだめだ! / 無闇に前に出たらだめ!

1:
2:

シエル

あ……す、すみません。 アナタを、守るはずなのに……。

Ciel
バング

ゴーレムの奴め、 目茶苦茶に暴れてくれるではないか……。

Bang
バング

このままではいささかまずいでござるよ。万が一船に 被害が及べば、海に出られなくなるでござる!

Bang
セリカ

ルナちゃんたちが一生懸命直してくれた船…… 壊されるなんて、絶対ダメ。行くよ、ミネルヴァ!

Celica
ミネルヴァ

………………………。

Minerva
セリカ

ん? どうしたの、ミネルヴァ。ねえ……!

Celica
セリカ

ど、どうしよう、ミネルヴァが反応しなくなっちゃった!

Celica
ラーベ

なんだと? おいおい、こんなときに……。

Raabe
ゴーレム

ゴオオオオオオオオオオオオオ!!!

Golem
ラーベ

うわ、お、おい、来るぞ! 私はちょっと下がってるからな。 流れ瓦礫にでも当たったら、一発でぺちゃんこだ!

Raabe
ルナ

なんだよ、流れ瓦礫って!?

Luna
ルナ

こういうとき役に立たないのな、このポンコツボール!

Luna
ラーベ

ポンコツではない! 最新鋭の精密機器だ! 丁重に扱え!

Raabe
アハト

バカ言ってる場合じゃないでしょ! 来るわよ!

Acht
バング

セリカ殿、ミネルヴァ殿と一緒に下がっているでござる! 行くぞ、皆の衆!

Bang
シエル

は……はい! 戦闘態勢に移行。対象の排除を開始します。 ……レイさん、安全な距離にいてください。

Ciel

第8節 時間稼ぎ②/ 8. Buying Time - 2

Summary
セミアが出現させた巨大ゴーレムに苦戦する

一行。この場を引き受けるというアハトの 言葉を信じ、彼女を残して船へと走る。

バング

これでどうでござる!?

Bang
ルナ

げげげっ! 全然効いてなくないか!?

Luna
セリカ

そんな……!

Celica
シエル

手応えはあります。ダメージは蓄積しているはずです。 ですが……。

Ciel
ラーベ

頑丈すぎて、大した影響は出てないってのが現状だな。

Raabe
ルナ

そんなのアリかよ、ずるいぞ! ……うわぁっ!

Luna
ルナ

あ、あ、あっぶね! あいつ今、屋根投げてきたぞ!

Luna
セリカ

もうめちゃくちゃするんだから!

Celica
ラーベ

こうなると、人が消えててよかったなぁ。

Raabe
セリカ

よくはないよ! いや、でもケガする人は実際に いないわけだから……よかったのかな……あれ?

Celica
アハト

無駄口叩いてると、潰されるわよ!

Acht
バング

しかしどうしたものか。こう頑丈だと、ちまちま削っていても らちが明かないでござるな。

Bang
バング

強烈に一発ぶちかますかなにかして、動きだけでも止めねば。 だがそんなことをすれば、港に被害が出るやもしれぬ。

Bang
バング

いっそ一気に駆け抜けて船まで行き、 早々に海に出てしまうほうが得策であろうか……。

Bang
セナ

でも、海に出たところを狙われたらどうするんですかぁ〜…… 船じゃ回避のしようもないですよぉ〜。

Sena
アハト

その問題の船、もう出港できる状態なの?

Acht
ルナ

そっちはバッチリだ! 仕上げのルナ様像はまだだけど、 機械のとこも、昨日の夜にラーベがやってくれた!

Luna
アハト

そう。じゃあいいわ。 全員、さっさと船に行きなさい。

Acht
セリカ

それ、どういうこと? 私たちが先に行くなら、アハトさんは?

Celica
アハト

いちいち全部説明しなくても、 理屈くらいわかってほしいわね。

Acht
アハト

あなたたちが船で行く。私はここで、あの大きなお人形が 船を狙わないよう足止めする。以上よ。

Acht
セリカ

そんな! アハトさんひとり残していくなんて!

Celica
ルナ

大体、ひとりであいつと戦えるのかよ! これだけ人数いて、こんだけ苦戦してるってのに!

Luna
アハト

もう……逆よ、逆!

Acht
アハト

これだけ人数がいるから、本気で戦えないのよ。 いいから行きなさい、近くにいられると邪魔なの。

Acht
バング

策があるでござるか?

Bang
アハト

あのねぇ……私、これでも相当できる魔術師なのよ。 私の身の安全を気にしているのなら、心配無用。

Acht
アハト

それより……ここであなたたちが余計な足止めを食って、 私が元の世界に戻る手段が途絶える方が困るわ。

Acht
アハト

目的があるのでしょう。私もよ。 そのために行動しているの。ピクニックに来たんじゃないわ。

Acht
シエル

……っ!

Ciel

1: でも……
2: 強がりじゃない?

1:
2:

アハト

迷うのは悪いことじゃないけど、今は必要ないことよ。

Acht
アハト

この私が強がりまでしてあなたたちを逃がすような、 自己犠牲精神に溢れた女に見える?

Acht
バング

くっ……! 抜けるでござるよ。 拙者が先導する。着いて参れ!

Bang
ルナ

わ、わかった!

Luna
アハト

走って、早く!

Acht

1: 無理しないでね!
2: ありがとう、行ってきます

1:
2:

セリカ

アハトさん……!

Celica
ラーベ

いちいち振り向くな、さっさと船に乗れ!

Raabe
セリカ

う、うん……ミネルヴァ、走って。ほら、早く。

Celica
ミネルヴァ

…………。

Minerva
シエル

ミネルヴァさん、どうしたのでしょうか……?

Ciel
セリカ

わかんない。なんだか動きがすごくぎこちないの……。 どこか痛いのかな……?

Celica
バング

うぬ、止まれ!

Bang
シエル

っ! 前方、対象を確認。 魔物です!

Ciel
ルナ

あいつら、あの船に住み着いてたやつと同じ魔物だ!

Luna
バング

近海に住処があるのやもしれんな。 突破するでござるよ!

Bang
ミネルヴァ

…………!

Minerva
セリカ

わ! びっくりした、急に動き出した……! 大丈夫なの、ミネルヴァ?

Celica
ルナ

なんだ、元に戻ったのか!? だったらガンガン働けー!

Luna
シエル

戦闘態勢に移行します。 セリカさんとレイさんは……。

Ciel

1: 大丈夫。一緒に戦うよ!
2: 心配しないで、無理しないから

1:
2:

シエル

え、あ。は、はい!

Ciel
セリカ

私も、大丈夫! 行くよ、ミネルヴァ!

Celica
ミネルヴァ

!!

Minerva

第8節 時間稼ぎ③/ 8. Buying Time - 3

Summary
攻撃を躱し、船に飛び込んだシエルたち。ア

ハトはひとり港に残り船を見送ると、イシャ ナ十聖の意地をかけゴーレムに立ち向かう。

ラーベ

全員乗ったな!? 船を出すぞ!

Raabe
シエル

はい!

Ciel

1: よろしく、ラーベ!
2: お願いします!

1:
2:

ルナ

行け行けー!

Luna
アハト

……船が出たわね。

Acht
ゴーレム

ゥゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!

Golem
アハト

だったら、次はこちらの番だわ。 さあ、誰に遠慮することもない。思いっきりやりましょう。

Acht
アハト

我が名はアハト。魔道都市イシャナにおける十聖がひとり。 八席の官位を与えられし者。

Acht
アハト

……今ではもう意味のない名だけれど。 その名が意味するものを味わいなさい!

Acht

第8節 時間稼ぎ④/ 8. Buying Time - 4

Summary
ナインとトリニティが港町に辿り着く。氷漬

けの町に座り込むアハトを見つけて言葉を交 わしたのち、三人は共に海へと漕ぎ出した。

トリニティ

そんな……この町まで、破壊されているなんて……。

Trinity
トリニティ

でもおかしいですねぇ。

Trinity
トリニティ

情報では、この町は人こそ減ったけれど 『災厄』の被害には見舞われていないはずでしたが……。

Trinity
ナイン

……ええ。『災厄』の被害には遭ってないわ。

Nine
ナイン

これはあの化け物のしたことじゃない。 原型が残り過ぎている。

Nine
トリニティ

確かに……そうですねぇ。 どちらかというと、大規模な戦闘があった後のような……あら?

Trinity
トリニティ

これは……氷?

Trinity
トリニティ

ただの氷ではありませんね。 魔力を帯びた……魔術で生み出された氷です。

Trinity
ナイン

…………。

Nine
トリニティ

ここから先……市街地のあちこちに。 同じ魔力を帯びた氷が――

Trinity
ナイン

トリニティ。 誰か知らないけど、セリカは魔術師と一緒だったわね。

Nine
トリニティ

先日立ち寄った村を救った……という方ですね。

Trinity
ナイン

あのときの防護魔術と、同じ魔力だわ。

Nine
トリニティ

では、ここにその方が……。 ということは、セリカさんも。

Trinity
ナイン

氷の発生源を探すわよ! もしかしたらまだいるかもしれな……。

Nine
ナイン

いいえ、捜索は無用そうね。

Nine
トリニティ

え……あ!

Trinity
トリニティ

まぁ、大変ですぅ! 瓦礫の脇に、どなたかが座り込んでいらっしゃいます。

Trinity
トリニティ

もしかしたら怪我をさなっているのかもしれません、 行きましょう〜!

Trinity
トリニティ

あの、大丈夫ですかぁ〜? しっかりしてください〜。

Trinity
アハト

……あ……あなた、たちは……?

Acht
トリニティ

私はトリニティ=グラスフィールと申します。 こちらは、ナイン。

Trinity
ナイン

簡潔に答えて。 セリカはどこ?

Nine
アハト

セリカ……?

Acht
トリニティ

ナイン、突然そんなことをうかがっても、困ってしまいますよ。 まずはこちらの事情をお伝えしませんと〜。

Trinity
ナイン

事情説明なんて無用よ。 むしろ説明を求めるのはこっちのほう。

Nine
ナイン

この人、あの防護魔術の魔術師よ。 つまりこの町を氷漬けにした本人。セリカの同行者。

Nine
トリニティ

まぁ……。

Trinity
ナイン

さあ、洗いざらい話して。セリカはどこ? 無事なんでしょうね?

Nine
アハト

ああ、セリカちゃんね……。ええ、無事……だと思うわ。 私が最後に見たときはね。

Acht
ナイン

どういうこと?

Nine
アハト

彼女は先にここを発ったのよ……。

Acht
アハト

大きな、ゴーレムに襲撃されて……。 私が引き受けている間に、先に行ってもらったわ。

Acht
ナイン

先って、どこへ? 行き先は!?

Nine
アハト

知らないの……? あの子のことを追いかけて来ているんでしょう?

Acht
アハト

あの子が……どうしてこんなところまで来たのか、 知っているんじゃないの?

Acht
ナイン

……日本……。

Nine
ナイン

馬鹿な子ね! 本当に日本に行ったの!? 日本がどういう状態なのかも知らないで!

Nine
ナイン

どうやって行ったの? 船なんか出てるはずないじゃない。 軍隊にツテでもなけりゃ、行けるはずないわ!

Nine
アハト

廃船を、修理したのよ。 そういうことが……得意な子が、いて。

Acht
アハト

っ……。

Acht
トリニティ

あぁ、どうぞご無理なさらないでください。 大丈夫ですか。

Trinity
トリニティ

大きなお怪我はないようですけれど……。 フラついていらっしゃいます。

Trinity
アハト

……大丈夫よ。少し、魔力を使いすぎただけ。 ひと眠りしたから、もうだいぶマシだけど。

Acht
トリニティ

お騒がせしてしまって、すみません。 教えてくださってありがとうございますぅ。

Trinity
トリニティ

……ナイン。どうしますか?

Trinity
ナイン

もちろん行くわ。日本へ。

Nine
アハト

どうやって……? 船はあるけど、それを操縦できる人間はいないわよ。

Acht
アハト

町には誰一人残っていないわ。

Acht
ナイン

そんなもの、どうとでもなるわ。 海流を操作して魔術で走らせればいいのよ。

Nine
ナイン

トリニティ、船を高速化できる?

Nine
トリニティ

はい。幸い、船はいくつかあるようですから。

Trinity
トリニティ

それを作り変えるのでしたら、 少し時間をいただければ大丈夫です。

Trinity
アハト

……その帽子は伊達じゃないのね。

Acht
ナイン

なに? なにか言った?

Nine
アハト

いいえ。なんでもないわ。 ……私も連れて行ってくれないかしら。

Acht
アハト

いつまでもここに座り込んでいるのにも、飽きていたところなの。 あの子たちがどうなったのか……知れるなら、知りたいわ。

Acht
ナイン

魔力の枯渇した足手まといなんて、迷惑だわ。

Nine
トリニティ

ナイン! そんな言い方をするものではありませんよ〜。

Trinity
ナイン

だってそうでしょ。これから行くのは日本よ。

Nine
アハト

邪魔だったら、 どこだろうと置き去りにしてくれて構わないわ。

Acht
アハト

ここまで来たのに、噂の『滅びた日本』を 見ないままなのも味気ないと思っただけだから。

Acht
トリニティ

危険な土地ですけれど……本当によろしいのですか?

Trinity
アハト

ええ。

Acht
ナイン

……ふん。好きにしたらいいわ。 行くわよトリニティ。船の用意を始めて。

Nine
トリニティ

はい。

Trinity
トリニティ

……口と態度は悪いですけれど、あれで心配しているんです。 アハトさんを危険な目に遭わせたいわけではありませんからぁ。

Trinity
アハト

あら、そう。ややこしい子なのね。

Acht
トリニティ

ちょっとだけ。

Trinity
ナイン

トリニティ!

Nine
トリニティ

はいはい、今行きますよぉ〜。

Trinity
トリニティ

船の改造、すぐに終えてしまいますから。 そう不安そうにしないでください。

Trinity
トリニティ

海を渡ってしまえば……すぐ、日本です。 すぐセリカさんに会えますよ。

Trinity
ナイン

……そうね。ごめんなさい。イラついてて。

Nine
トリニティ

行きましょう。

Trinity

第9節 グラウンド=ゼロ①/ 9. Ground Zero - 1

Summary
日本に上陸するシエルたち。6年前の『災

厄』と、それを排除するための反応兵器で滅 びた荒野の中を、目的の地へと歩み始める。

セリカ

……なんにもない。 建物も、人も、町も……生き物も……。

Celica
セリカ

これが……日本……。

Celica
シエル

『災厄』によって滅ぼされた土地……。 そうバングさんが以前に言っていましたが……これほどとは。

Ciel
バング

拙者も驚いているでござる……。

Bang
バング

ひとつの町や都市という規模ではござらん。 この辺り一帯、すっかり焼き払われたかのようではないか。

Bang
バング

『災厄』とは なんと恐ろしい力を持った存在であることよ……。

Bang
セリカ

……ううん。これはね……違うんだ。

Celica
ルナ

違うってなにがだ?

Luna
セリカ

『災厄』は確かに、日本に出現して……あちこちの都市を めちゃくちゃにして。たくさんの人を……死なせたんだけど。

Celica
セリカ

日本がこうなったのは、その『災厄』を倒すために すごく大きな爆弾を使ったから……なんだって。

Celica

1: 爆弾で、全部……なくなったの?
2: そのとき日本にいた人たちは?

1:
2:

セリカ

うん、そう。 ここだけじゃなくて、日本のあちこちに落としたんだって。

Celica
セリカ

だけど結局、その爆弾じゃ『災厄』は倒せなかったの。

Celica
セリカ

もちろん避難はしてるはず。……本当にひとり残らず 避難できたのかは、わからないけど……。

Celica
セリカ

結局、その爆弾じゃ『災厄』は倒せなかったんだ。

Celica
セリカ

そして日本が滅んだあと 『災厄』は世界各地に出現するようになった……。

Celica
シエル

爆撃は被害を大きくしただけで、 対策としては失敗だったのですね。

Ciel
バング

なんと……。

Bang
ラーベ

……ふん。爆弾、ね。 よりによって……はぁ。

Raabe
ラーベ

お前たち、ちょっとそこに並べ。

Raabe
セリカ

ん? うん、わかった。

Celica
バング

どうしたでござる? 記念撮影でもするでござ……。

Bang
バング

おっぷぷぷぷ!

Bang
ルナ

うぺぺぺ! なんだよ、急にスプレーなんか吹きかけてきて!

Luna
ラーベ

すぐすむからじっとしてろ。 虫よけのおまじないみたいなもんだ。

Raabe
ラーベ

……まったく、馬鹿どもが。

Raabe
シエル

ラーベさん、これは……。 では、使用された爆弾というのは……。

Ciel
ラーベ

ああ。反応兵器だ……。

Raabe
ラーベ

まったく……武器を持つ者が愚かな選択をするのは、 どの世界でも一緒か。

Raabe
ラーベ

窯は無事だろうけど、研究所など跡形もないだろうな……。

Raabe
シエル

…………。

Ciel
ラーベ

……よし、これでいい。 お前たち、持ってきた水と食料以外は口にするな。いいな。

Raabe
セナ

はぁい。……そうは言っても、水も食料も 新しく手に入りはしなさそうですけどね〜。

Sena
ラーベ

念のためだ。

Raabe
セリカ

ここ……父さんの研究所の近くなんだよね?

Celica
ラーベ

……ああ。極力近い場所に上陸した。 あらかじめアハトが色々と調べておいてくれたんでな。

Raabe
ラーベ

正確な位置と最適なルートは割り出してある。 徒歩で一日とかからない。

Raabe
ルナ

マジか、楽勝じゃん!

Luna
ラーベ

できればこんなところ、一日も歩かせたくはない……。

Raabe
ラーベ

ぼやいていても仕方がない。歩くぞ。 シエル、位置情報を転送するから、お前が先導しろ。

Raabe
ラーベ

荒廃の極みみたいな土地だが、索敵は怠るな。 こういう場所だからこそ出現するものもある。

Raabe
シエル

はい。わかりました。

Ciel
ラーベ

その後ろをレイ。 さらにその後ろを、ルナとバングで挟んだセリカが行く。

Raabe
バング

では拙者がしんがりをつとめるのがよかろうな。

Bang
ルナ

ルナたちが迷子ねーちゃんの前だな。

Luna
セリカ

な、なんか私、すごく面倒みられてない? 過保護にされてない?

Celica
ルナ

あったりまえだろ。 すーぐひとりでフラフラどっか行っちゃうんだし。

Luna
バング

しかも迷子になって帰ってこれなくなるでござるからなぁ!

Bang
セリカ

そんなことないよー! こんななーんにもないところで、迷子になるはずないじゃない。

Celica
バング

うむ、拙者も普通ならそうだろうと思うところでござるが…… いかんせんセリカ殿でござるからなぁ。

Bang
ルナ

前に野宿したとき、真逆の方向に出発しようとしてたこと、 忘れてねーからな。

Luna
バング

水を汲んでキャンプに戻ろうとしたときに、 なぜか全く関係ない方向へ進んでいったこともあったのう。

Bang
セナ

この前の港街では、 宿の中で迷子になってたじゃないですか〜。

Sena
セリカ

そ、それは……たまたま?

Celica
ルナ

たまたまですむか! つべこべ言わずに大人しく介護されてろ!

Luna
ラーベ

ええいこらこら、無駄口叩いてる場合じゃないんだ。 できるだけ時間をかけたくない。さっさと行くぞ。

Raabe
ラーベ

反応兵器……いや、使われた爆弾の影響だけじゃなく、 魔素の濃度も相当なものだ。こう淀んでいると……。

Raabe
シエル

これは……以前に小さな村で見た現象と同じです。

Ciel
ルナ

うげげ! じゃああのでっかくて黒い化け物が出てくるかもってことか!?

Luna
ルナ

冗談じゃねーぞ、 あんなのとポンポン気軽に戦ってられるか!

Luna
ラーベ

あの村とは空気の流れが違うから、 あのときほど魔素が滞留することはなさそうだが……。

Raabe
ラーベ

このまま多量に集まってくるようだと、わからんぞ。

Raabe
バング

であれば、小さいうちに散らしてしまおうぞ!

Bang
セリカ

うん! 私たちも頑張ろう、ミネルヴァ!

Celica

第9節 グラウンド=ゼロ②/ 9. Ground Zero - 2

Summary
進む荒野の中。局地的に豊かな緑が広がる一

帯に行き当たった一行。不可解な状況だが、 目的の座標はその森の奥を指していた。

シエル

……目標を視認。やはり見間違いではありません。

Ciel
シエル

森です……。

Ciel
バング

森、でござるな……。

Bang

1: 草木の匂いがちゃんとする……
2: すぐ背後は荒野なのに

1:
2:

ルナ

怪しいことこの上なくないか!? ついさっきまでなんにもない、 だだっ広い土ばっかの場所だったんだぞ?

Luna
ルナ

なのになんで突然、ここだけ森なんだよ!?

Luna
ラーベ

いや……さっぱりわからん。理解できん。 こんなことは通常、あり得ないぞ……。

Raabe
セリカ

偶然、爆弾の被害に遭わずに残ってた……とかは?

Celica
ラーベ

いや、ない。ここも確実に巻き込まれているはずだ。

Raabe
ラーベ

というかそもそも、今まで歩いて来た道のりよりも こっちのほうが爆心地に近いくらいだぞ。

Raabe
ラーベ

それなのに……。

Raabe
シエル

指定座標はこの先……森の中です。

Ciel
ラーベ

……だな。

Raabe
セリカ

それって、父さんの研究所のことだよね? こんな森の中にあったの?

Celica
バング

都市を跡形もなく吹き飛ばした爆風でも、消し飛ばずに残った 森か……不穏でござるな。なにやら秘密があるとみた。

Bang
ラーベ

森の少し手前から、魔素の反応も減ってきている。 空気中の含有物質のバランスも違う。

Raabe
ラーベ

気を付けて進めよ。明らかに異常な場所だ。

Raabe
セリカ

父さん……。

Celica
バング

いやはや、進めば進むほど、驚きでござるな。 ……鳥の声でござる。

Bang
シエル

昆虫類の活動も確認できます。 明らかに、上陸地点とは環境レベルが違います。

Ciel
ルナ

なんか気味悪いな……。 これ全部、全員で見てる幻覚とかじゃないだろうな……?

Luna
ラーベ

私もそれを疑ったんだが、どうも違うようだ。 この局地的な自然環境は、実際にここに存在してる。

Raabe
シエル

観測者の認識に歪みが生じているのでしょうか?

Ciel
ラーベ

なんとも言えん。これが、このファントムフィールドの 観測者によるものだとしたら、

Raabe
ラーベ

意識的にせよ無意識的にせよ 『こう』する意味や必要性があると思うんだが……。

Raabe
シエル

なにかを隠そうとしている、のでしょうか。

Ciel
ラーベ

逆に目立ってる。

Raabe
シエル

確かにそうです。

Ciel
ルナ

わっ、とっとっ! おい、気を付けろ!

Luna
セリカ

ご、ごめん〜、ルナちゃん。

Celica
ルナ

ったく、前に前に詰めてくんなっての。 お前だけ急いだって、早くに着いたりしないんだからな。

Luna
セリカ

うん……ごめんね。 近くに父さんがいたんだなって思ったら、気がはやっちゃって。

Celica
ルナ

『父さん』ねぇ。それってなんか、いいものなのか? ルナ、親とかいないからよくわかんない。

Luna
セリカ

そうなんだ……。うん、いいものだよ、私にとっては。 私がここにいるのは、父さんがいてくれたからだし。

Celica
セリカ

そうなると、私が嬉しいのも、幸せなのも、楽しいのも、 父さんがいなかったら成立してなかったってことでしょ。

Celica
セリカ

研究で忙しくて、あんまりたくさんお話したことはないんだけど。 でも間違いなく、私に幸せな暮らしをくれた人だから。

Celica
ルナ

ふーん……。

Luna
バング

だが、家にはあまりいない父親であったのでござろう。 ……寂しくはなかったのでござるか?

Bang
セリカ

そりゃ、ちょっとは寂しかったよ。会いたいなーって思ってたし。 でも私には、お姉ちゃんがいたからね。

Celica
セリカ

父さんと離れてても幸せだったのは、 お姉ちゃんやイシャナに守ってもらってたからだと思う。

Celica
セリカ

恵まれてるんだ、私。 色んな人に感謝しなきゃね。

Celica

1: お父さんってどんな人なの?
2: お父さんってどういう研究をしてるの?

1:
2:

セリカ

うーん、いつも難しい話をしてる人ってイメージだなぁ。

Celica
セリカ

私にはよくわからない、なにかの理論とか、技術とか。 そういう話をいつもしてた。

Celica
セリカ

頭が良くて、一生懸命な人だよ。 世界の外側についての研究をしてて、毎日頑張ってるんだって。

Celica
セリカ

家に帰れないくらい頑張るなんて、簡単なことじゃないよね。 それだけなにかに熱中できるのって、すごいと思う。

Celica
セリカ

詳しいことは知らないの。 お仕事の話は、あんまり外でしちゃダメらしくて。

Celica
セリカ

確か……世界の外側についての研究、だったかな。 そんな風に聞いたことがあるよ。

Celica
セリカ

難しい理論とか技術とかの話をよくしてくれたけど…… 私にはよくわかんなかったんだ。

Celica
セリカ

ああでも、お姉ちゃんはわかってたみたい。 わかったうえで、父さんの研究を好きじゃないって言ってた。

Celica
ラーベ

世界の外側の研究?

Raabe
シエル

それは、もしかすると境界のことでしょうか……。

Ciel
セリカ

境界? それが、父さんの研究してたものなの?

Celica
ラーベ

ああ、まあ……おそらくな。

Raabe
セリカ

わあ、そうなんだぁ! ……ん? ちょっと待って。

Celica
セリカ

ルナちゃんやセナちゃん、バングさんに……アハトさんは、 別の世界から来たんでしょ。

Celica
セリカ

ってことは、もしかして『世界の外側』から来たってこと? じゃあ、父さんなら皆が元いた世界について、知ってるかも!

Celica
ラーベ

どうだろうな。研究結果だけでも残っていれば、 探ることもできるかもしれないな。

Raabe
ルナ

おお! すっげーじゃん、セリカの父さんってやつ!

Luna
セリカ

そうなの、すごいんだ!

Celica
ラーベ

……これで、 ますますこの先に『窯』がある可能性が高まった。

Raabe
ラーベ

境界の研究をするのに『窯』は必須だろう。

Raabe
ラーベ

(我々は順調に窯へ歩みを進めている。 観測者は……どうしたいんだ……?)

Raabe
バング

とはいえ、中々それらしい建物が見えてこんな。

Bang
セリカ

うん……森の中で見通しが悪いせいなのかもしれないけど。 通路とか道順とかもないし。

Celica
シエル

指定座標はかなり近いです。 森とはいえ、視認できてもおかしくない距離ですが……。

Ciel
バング

どれ、ちょっと様子を見てこよう。 人工物ならば多少は木々を切り開いて作るであろう。

Bang
バング

背の高い木の上から、捜索してみるでござるよ。

Bang
セリカ

よろしくお願いします、バングさん!

Celica
バング

あいわかった! お主らはこのまま、進んでくれ。 すぐに合流するでござるよ!

Bang
セリカ

さすが、身軽だねぇ〜。

Celica
ルナ

猿みたいだな。

Luna
セナ

も〜、ルナったら。失礼だよぉ〜。 ……否定はしないけどぉ〜。

Sena
ラーベ

ほら、我々も進むぞ。地上からも捜索しておこう。

Raabe
シエル

はい。

Ciel
シエル

っ、はっ!?

Ciel
セリカ

わっ、びっくりした! 魔物!?

Celica
ルナ

ちぇ、やっぱりのんびり平和には 通らせてくれないのか。

Luna
ラーベ

……魔物は本来、魔素が生態系に影響を与えた結果、 生まれた存在のはず。

Raabe
ラーベ

だがこの森に魔素はほとんどない。ということは……。

Raabe
ラーベ

環境によって生まれた魔物ではなく、 異物を排除するための防衛機構が働いているな。

Raabe
シエル

では『窯』は近いということですね。

Ciel
ラーベ

これまでのセオリーが通用してくれるなら、だがな。

Raabe
ミネルヴァ

…………。

Minerva
セリカ

やろう、ミネルヴァ。 ここを抜けて、父さんの研究所に行かなくちゃ!

Celica
ミネルヴァ

……!

Minerva
シエル

ミネルヴァさん、交戦開始です。

Ciel
ルナ

ルナたちもやるぞ! どけどけ〜〜〜!

Luna

第9節 グラウンド=ゼロ③/ 9. Ground Zero - 3

Summary
遂に辿り着いた、『災厄』の出現地点である

研究所。傷一つなく、綺麗すぎるその様子に 警戒しながら、一行は調査を開始する。

バング

むっ! 魔物との戦闘は終わったでござるか。 今一歩間に合わなんだ、加勢できずに申し訳ない。

Bang
ルナ

はん! 馬鹿にすんな、こんくらいルナ様がいれば楽勝よ!

Luna
ルナ

それより、偵察どうだったんだよ。 研究所ってのはあったのか?

Luna
バング

いや、それらしい建物はなかったでござる。 ただ、妙なものがあったでござるよ。

Bang
セリカ

妙なものって?

Celica
バング

この先に洞窟があるのでござるが、どうにもその洞窟、 人工的に作られたもののような気がしてならぬのでござる。

Bang
シエル

洞窟……ですか? 森の周辺に、山などは残っていません。 地中へ続く洞窟なのでしょうか。

Ciel
ラーベ

しかも人工物っぽいと。……それは気になるな。

Raabe
ラーベ

案内してくれ、見てみようじゃないか。

Raabe
バング

承知した。こちらでござる。

Bang
ルナ

うわ、ほんとだ。洞窟あった。 ちょっとへこんでるところにできてんのか……。

Luna
セリカ

人工物っぽいってバングさんは言ってたけど……。 私には見分けつかないなぁ。普通の自然のやつじゃないの?

Celica
バング

もともとは、自然窟だったかもしれないでござるな。 ただ内部が……明かりで照らすゆえ、ご覧あれ。

Bang
シエル

……入ってすぐはごつごつとした岩肌という感じですが、 奥の方は天井がアーチ状に整えられていますね。

Ciel
ラーベ

ああ。入り口周辺も物資の運搬のためか 多少地形をいじって広げた跡がうかがえるな。

Raabe
ラーベ

間違いなく、人の手が入っている。

Raabe
ラーベ

シエル、座標を確認してくれ。 こちらでは……一致している。

Raabe
シエル

……はい。私も一致しています。 ここが指定座標です。

Ciel
セリカ

じゃあここが……父さんの研究所……。 グラウンド=ゼロ?

Celica
ラーベ

とてもその名をつけるような場所には見えないがな。

Raabe
ラーベ

そもそもこの研究所、 例の『災厄』に破壊し尽くされたんじゃなかったのか?

Raabe
セリカ

そのはず、なんだけど。そんな感じしないよね。 どういうことなんだろう?

Celica
シエル

この奥に研究所があれば、 そこに『窯』もあるかもしれない……。

Ciel
シエル

『窯』にアクセスできれば…… レイさんも、元通りになる。

Ciel
ラーベ

念のため聞くが、シエル、窯の反応はどうだ?

Raabe
シエル

あ……失礼しました、確認します。

Ciel
シエル

……いえ、まだはっきりとはわかりません。 微かに力を感じるような……気もするのですが……。

Ciel
シエル

それは、私の期待が引き起こした 錯覚である可能性もあります。

Ciel
ラーベ

ほうほう。期待か。

Raabe
シエル

はい。 ……なにかおかしいですか?

Ciel
ラーベ

いや、なんでもない。

Raabe
ラーベ

おいお前たち、ちょっと入り口を開けろ。 内部をスキャンして、構造を把握してから入ろう。

Raabe
ラーベ

洞窟探検する装備を整えているわけじゃないからな。 危険な地形はなるべく避けて進みたい。

Raabe
ラーベ

……ん。なんだ、一本道に整備されているみたいだな。

Raabe
ラーベ

緩やかに左にカーブしているが、 道なりに進めばすぐ最奥に突き当たる。

Raabe
ラーベ

その奥が部屋のようになっているから、 そこが入り口だろうな。

Raabe
セリカ

研究所の入り口……ついに、入れるんだ。 どうしよう、なんだか緊張してきちゃった。

Celica
ルナ

まだ洞窟にも入ってないってのに、気が早いんだよ。 とにかく行ってみよう! 百聞はナントカって言うだろ!

Luna
バング

拙者は、お主らに着いて行くと決めた身。 どうするでござる?

Bang

1: セリカのお父さんの消息がわかるかも
2: 僕(私)の記憶を取り戻せるかも

1:
2:

If Choice 1:
セリカ

……うん。そうだよね、そのためにここまで…… 日本まで来たんだもん。行こう!

Celica
If Choice 2:
セリカ

……うん。そうだよね。そのためにここまで…… 日本まで、一緒にきてくれたんだもん。行こう!

Celica
セリカ

わ……。

Celica
ラーベ

足元が昇降装置になっている。 ……動くな、これ。

Raabe
バング

『災厄』に破壊された施設……では、考えられないでござるな。

Bang
ラーベ

異様だな。だが、その異様さを解明するためにも、 入らないわけにはいかない。

Raabe
ラーベ

動かすぞ、全員気を付けろよ。

Raabe
セリカ

はい!

Celica
ルナ

う……っわ〜〜〜、すっげぇ……なんだここ?

Luna
バング

紛れもなく、研究所という風情でござるな……。 なにやら謎めいた装置があちこちにあるでござるよ。

Bang
バング

あの森の地下深くに、こんなものがあったとは……。

Bang
セリカ

嘘みたい……信じられない。 なんだか別の世界に来ちゃったみたい。

Celica
シエル

……ラーベさん。 この辺りには、破壊された痕跡はありません。

Ciel
ラーベ

ああ。綺麗なもんだ。むしろ建設だけされたものの、 まだ使われてない研究所って感じじゃないか。

Raabe
ラーベ

どうなってる? ここは……。

Raabe
ルナ

なあなあ、こっち、奥に行けるみたいだぞ。

Luna
セリカ

行ってみよう。この部屋には資料みたいなものは置いてないし、 研究室っていうよりエントランスホールって感じだもん。

Celica
セリカ

もし父さんについてわかることがあるなら…… もっと奥だと思う。

Celica
バング

異論ないでござるよ。

Bang
ラーベ

気が済むまで歩き回るといい。 その最中に、こちらの目当ても探しておく。

Raabe
ラーベ

シエル、常に反応に気を付けておけよ。 『窯』にも……起こり得る異常事態にもな。

Raabe
シエル

……はい。

Ciel
セリカ

……静かだね。誰もいない。

Celica
セリカ

地上はあんな状態なんだし、当たり前なんだけど。

Celica
ルナ

それなんだけどさぁ。やっぱ、おかしいよな。 ここ、さすがに綺麗すぎじゃないか?

Luna
シエル

はい……そう思います。 『災厄』の痕跡は、どこにもありません。

Ciel
ルナ

その場にあるものなんでも、手当たり次第に壊しちゃうんだろ? お前たちと会った廃墟が、ああなってたみたいに。

Luna
セリカ

地下だったから、免れたとか。

Celica
バング

その可能性はあるだろうが、いかんせんここには、 地上で惨事が起こっている最中らしき混乱の後もござらん。

Bang
バング

というより、なんと申すか……。

Bang

1: 誰も使ってないみたい
2: できたばかりに見える

1:
2:

バング

そう! そうでござる!

Bang
バング

これだけ大掛かりな仕掛けの元で隠された研究所。 それだけ大事な研究をするつもりだったのであろう。

Bang
バング

だがこれでは、ただ箱があるだけでござる。 人のいた痕跡がない。

Bang
ラーベ

ここはダミーで、本当の研究所は他にあるのか……? いやしかし、ダミーにしては真剣に隠し過ぎだろう。

Raabe
ラーベ

それにグラウンド=ゼロとして認知されている座標が ここだ。

Raabe
ラーベ

『災厄』の出現位置を偽装するのなら、 むしろここは徹底的に破壊しておくべきだが……。

Raabe
シエル

っ!? なにか、今……。

Ciel
ルナ

な、なんだ、チカチカってした!

Luna
ラーベ

視界への干渉? いや空間への……。 なんでもいい、警戒しろ。

Raabe
セリカ

見て、あそこ!

Celica
バング

ぬう、面妖な! なにやつ!?

Bang
セリカ

ここにいた人……じゃ、ないよね?

Celica
ルナ

ど、どどど、どっちかってーと、オバケじゃね?

Luna
ラーベ

オバケをどのようなものと定義するかにもよるが、 思念体や残留物の類ではないな。ましてや生命体でもない。

Raabe
ラーベ

いうなれば幻覚に近いが、実体を伴うぞ。

Raabe
シエル

敵対反応を感知。対象、攻撃してきます! 下がって!

Ciel
ルナ

ひえぇぇ、な、なんなんだよぉ! こっちくんなぁ!

Luna

第10節 世界を見つめる瞳①/ 10. Eyes That Gaze at the World - 1

Summary
調査の結果、周辺の時間が巻き戻ったこと、

『災厄』が人の手で出現したことを知る。さ らに詳細を語ろうとした刹那、事象が歪む。

ルナ

ど、ドア、ドア早く閉めろ!

Luna
シエル

は、はい!

Ciel
シエル

……追跡者の気配はありません。遭遇した人影は消滅、 あるいはこちらを見失ったものと思われます。

Ciel
シエル

扉を閉鎖したところで、あの不定形な敵に対して どれほど有効かは定かでありませんが……。

Ciel
シエル

ひとまず、交戦状態を脱しました。

Ciel
セリカ

ふはー……びっくりしたぁ。 次から次へと出てくるんだもん。

Celica
セリカ

なんだったんだろう、今の……。

Celica
バング

さっぱりわからぬでござるが、気味の悪い相手であった。 もやもやとしていて、なんというか、手応えのない……。

Bang
ルナ

なのにこっちは攻撃されると痛いとか、ずるいんだよー。

Luna
ルナ

ん? なんだここ。でっかい機械がいっぱいある。

Luna
ラーベ

ふーむ……記録装置と、計器の類だな。 なにかの実験を行おうとしていたのか。

Raabe
セリカ

父さんの仕事場だったのかも! なにか残ってないかな。ねえ、記録って見られたりする?

Celica
ラーベ

アクセスを試してみても構わないが…… なにか『残って』いるとは思えないなぁ。どれどれ……。

Raabe
セリカ

私、ちょっとその辺探してみる。 資料とか、名簿とか……なんでもいいから。

Celica
セリカ

父さんがここにいたっていう手がかりになるようなもの…… ないかな。

Celica

1: 僕(私)、こっちを探してみる
2: あるのかないのかを、確かめよう

1:
2:

If Choice 1:
セリカ

ありがとう、レイ! ……嬉しい。

Celica
If Choice 2:
セリカ

うん。見つからなくてもいいの。 確かめたってことが、私には大事だから。

Celica
シエル

私もお手伝いします。 こちらには、研究資料らしきファイルもあるようですから。

Ciel
ルナ

しょうがないなぁ。じゃー、ルナ様はこっちな。 つっても、このへんは空っぽか……。

Luna
ルナ

生活感ないなぁ、この部屋!

Luna
バング

ぶつくさ言いながらも手は動かしているではないか。 どれ、拙者はこちらを。

Bang
バング

ふうむ。これはなにに使うものでござろうか……。

Bang
セリカ

みんな……ありがとう。

Celica
セリカ

……本当はね。私には無理だと思ってたんだ。

Celica
セリカ

ひとりで日本まで辿り着けるわけがないし。 途中できっと行き詰まるだろうなって。

Celica
セリカ

たぶんお姉ちゃんもすぐに追いかけてきて、 途中で見つかっちゃって、イシャナに連れ戻されて。

Celica
セリカ

すっごく怒られて…… 私のこの冒険は終わるんだろうなって思ってたの。

Celica
セリカ

もしそうならなくても、もう無理だって思ったら、 そこでやめようって思ってた。

Celica
セリカ

でもここまで来られちゃった。無理だなって思うこともなくて、 お姉ちゃんにも追いつかれなくて。

Celica
セリカ

みんなが力を貸してくれたこと、すごく嬉しい。 会えてよかった。本当にありがとう。

Celica
ルナ

よせよ、そういうの。なんかしんみりするだろ。

Luna
バング

ふっふっふ、水臭いでござるよ、セリカ殿。

Bang
バング

旅は道連れ世は情け。一度手を貸したからには、 最後までまっとうするのがシシガミ=バング流でござる。

Bang
セリカ

ふふっ、そっか。 すごく優しい人たちに会えて、ラッキーだったなぁ。

Celica
シエル

…………。

Ciel
シエル

……私は……役に立っていたでしょうか。

Ciel
セリカ

もちろん。シエルちゃんがいてくれるおかげでできたこと、 たくさんあるじゃない。

Celica
シエル

…………。

Ciel
セリカ

レイだって、そう思ってると思うよ。 あなたのおかげでできたこと、いっぱいあるはず。

Celica
セリカ

自信持って。 あなたはあなたしかいないんだから。ね。

Celica
シエル

……私は……できないことや、わからないことばかりです。

Ciel
セリカ

みんなそうだよ。だからお互いに助け合うの。

Celica
セリカ

難しいことでも、できる人が少しずつ、できるところを やっていったら、最終的になんでもできるでしょ。

Celica
シエル

なんでも……。

Ciel
ラーベ

……おい、セリカ。 確認したいんだが……最初の『災厄』はいつ出現した?

Raabe
セリカ

えっと、6年前だよ。

Celica
ラーベ

……それは間違いないな?

Raabe
セリカ

う……うん、細かい日付とかは、何とも言えないけど、 6年前ってことは間違いないと思うよ。

Celica
ラーベ

馬鹿な……ならこれは何なんだ……。

Raabe
バング

む? 6年前だと、不都合があるでござるか?

Bang
ラーベ

大ありだ。ここに残されている記録は、1年分にも満たない。 簡易的なテストや、シミュレーションの記録ばかりだ。

Raabe
セリカ

つまり……どういうこと?

Celica
ラーベ

記録上、 この研究所は開設されてまだ数ヶ月しかたっていない。

Raabe
ラーベ

『災厄』から6年後どころか、 それに至る前の時点ですべてが止まっている。

Raabe

1: 災厄が起きる前ってこと?
2: じゃあ、ここは『いつ』なの?

1:
2:

ラーベ

……記録上……という意味で、どれくらい前なのかはわからん。 だが重要なのは、通常、そんなことはあり得ないってことだ。

Raabe
ラーベ

いい質問だレイ。

Raabe
ラーベ

そして答えははっきりしている。 不明だ。わからん。ただ、こんなことはあり得ない。

Raabe
ラーベ

特定の条件下であれば、時間の流れに差が生じることはある。 だがそれはあくまで速度が遅いとか速いとかの問題だ。

Raabe
ラーベ

発生した『事象』は発生した『地点』から順に処理されていく。 ああ、ええとつまり……。

Raabe
ラーベ

たとえ地下のほうが時間の流れが遅くても、 地下で爆発が起きた際、

Raabe
ラーベ

時間の流れの速い地上のほうが先に爆発の被害に遭う、 ということはないんだ。

Raabe
ラーベ

地下で『災厄』が発生したのなら、 そしてその被害が地上に及んでいるのなら、

Raabe
ラーベ

地下は当然『災厄』の被害を受けた後になる。 被害の進行の速度が違うだけだ。

Raabe
ルナ

なんか変だってことはわかるけど、全然わかんね。 もっと簡単に言ってくれよ!

Luna
ルナ

ここが『災厄』が起きる前の状態だったら、 なにがおかしいんだ!?

Luna
ラーベ

外の惨状をみれば、『災厄』が起きたことは 間違いないだろう。

Raabe
ラーベ

なのに、ここが災厄以前の状態であるということは、 この『地下』の時間だけが巻き戻っているということだ。

Raabe
ラーベ

時間の流れを遅くすることは理論的に可能だが、 起きた『事象』を巻き戻す事は難しい……。

Raabe
ラーベ

というか普通は不可能だ。

Raabe
シエル

普通は……ですか?

Ciel
ラーベ

その普通じゃない状況を、 今、正に目の当たりにしているからな。

Raabe
セリカ

じゃあ……え? ここは……どうなっちゃってるの? あり得ないのに、ずっと昔の状態ってこと?

Celica
ラーベ

にわかには信じ難いが、おそらくな。 お前の父親が研究員として配属される前かもしれない。

Raabe
ラーベ

……それと、ここの記録を見てわかったことがもうひとつ。

Raabe
ラーベ

セリカ、 お前の父親は『世界の外側』について研究していたんだよな?

Raabe
セリカ

うん……そう聞いたよ。

Celica
ラーベ

なら……故意か事故かはわからないけど、その研究とやらが、 『災厄』を発生……いや、生み出したはずだ。

Raabe
バング

まさか、『災厄』は人為的なものだと言うのでござるか!?

Bang
ラーベ

そういう事になるね。

Raabe
ラーベ

とにかく、『災厄』はどこからともなく現れて ここを襲撃したんじゃない。

Raabe
ラーベ

ここから、『この世界』に具現化した。 ゆえにここが最初の被害箇所。

Raabe
ラーベ

グラウンド=ゼロだ。

Raabe
セリカ

待って! 待って、待って……まって……。

Celica
セリカ

……それじゃあ……『災厄』が現れたのは、 父さんのせい……?

Celica
ラーベ

セリカの父親が……なのかはわからないよ。 どこまで関わっていたのかは不明だし。

Raabe
ラーベ

存在そのものを創ったわけではないだろうからね。

Raabe
ラーベ

あくまで、記録から読み取った私の推論だ。

Raabe
ラーベ

でも……推論の確度はかなり高いと思ってくれていい。

Raabe
セリカ

…………。

Celica
シエル

……セリカさん、精神波長が乱れています。 大丈夫ですか?

Ciel

1: セリカ、しっかり
2: 少し座る?

1:
2:

セリカ

うん。……うん、大丈夫。 どんな結果でも受け止めるって決めてきたんだし。

Celica
セリカ

大丈夫……ありがとう。立ってられるよ。 どんな結果でも受け止めるって決めてきたんだし。

Celica
セリカ

ただ……ちょっと、すごく、びっくりしちゃった……。

Celica
バング

衝撃的な話でござる。無理もないこと。

Bang
バング

だが……それが事実であったとして、セリカ殿やセリカ殿の お父上にいかな咎があると決められたわけではござらん。

Bang
バング

気落ちするには、早いでござるよ。

Bang
ルナ

そうだそうだ。 しょうがないことだったのかもしんないしさ……。

Luna
セナ

無関係の研究をしていた可能性だって、ありますし〜。

Sena
セナ

セリカさんが責任を感じることではないと…… 思いますよぉ〜。

Sena
セリカ

うん。……大丈夫。心配しないで。

Celica
セリカ

でも、だったらなおさらちゃんと知りたい。 ラーベちゃん。『災厄』って、なんなの?

Celica
セリカ

父さんたちは、なにを生み出して…… 世界をこんなにしてしまったの?

Celica
バング

…………。

Bang
ルナ

…………。

Luna
ラーベ

……知らないほうがいいと思うぞ。

Raabe
セリカ

教えて。知ってるんでしょ。

Celica
ラーベ

……知ってはいる。 というか、予想が的中してしまったというか……。

Raabe
セリカ

『災厄』なんて名前で呼んでていいものなの? 私たち、ううん、この世界はなにに壊されようとしてるの?

Celica
ラーベ

…………。

Raabe
セリカ

教えて! お願い!

Celica
ラーベ

……それは……。

Raabe
ラーベ

……『黒き――

Raabe

第10節 世界を見つめる瞳②/ 10. Eyes That Gaze at the World - 2

Summary
突如、全ての記憶が蘇る。きっかけとなる事

象干渉を行った観測者は、人ではなくミネル ヴァだった。交戦状態になり無力化を図る。

暴走するミネルヴァには、セリカの声すらも

届かない。戦闘により崩れ始めた部屋から、 ルナが切り開いた逃げ道を通り脱出する。

私を見るその瞳を覚えている。

私を呼ぶその声を覚えている。

私に触れるその手を覚えている。

私を求めるその魂を覚えている。

会いたい。

会いたい。会いたい。会いたい。

ただ、あなたに――

セリカ

――ただちょっと、すごく、びっくりしちゃったけど。

Celica
バング

衝撃的な話でござる。無理もないこと。

Bang
バング

だが……それが事実であったとして、セリカ殿やセリカ殿の お父上にいかな咎があると決められたわけではござらん。

Bang
バング

気落ちするには、早いでござるよ。

Bang
ルナ

そうだそうだ。 しょうがないことだったのかもしんないしさ……。

Luna
セナ

無関係の研究をしていた可能性だって、ありますし〜。

Sena
セナ

セリカさんが責任を感じることではないと…… 思いますよぉ〜。

Sena
セリカ

うん。……大丈夫。心配しないで。

Celica
シエル

っ!?

Ciel
シエル

今のは……。

Ciel

1: 事象干渉……
2: シエル……ラーベさん……?

1:
2:

シエル

え……。 レイさん、今、なんと言われましたか……?

Ciel

1: 今までのこと、全部思い出せる!!
2: 思い出した……忘れてて、ごめん!!

1:
2:

シエル

あ……ほ、本当、ですか? 本当に……私のことは、わかりますか?

Ciel
ラーベ

シエル、後にしろ! それより確認だ!

Raabe
シエル

はっ、あ、はい!

Ciel
シエル

…………。

Ciel
シエル

……『窯』の出現を確認……いえ、感知しました!

Ciel
シエル

また、身体機能の向上……いえ、正常化を確認。 索敵可能範囲も、感覚機能の反応速度及び反応感度も正常です。

Ciel
ラーベ

今のでシエルに対して、 レイによる観測が優先されたか。

Raabe
ラーベ

なんだ、なにが『トリガー』だった? クソッ!

Raabe
ラーベ

状況は不明だが、 これは観測者が故意に行った事象干渉だ。

Raabe
ラーベ

であれば確実に、観測者本人には干渉が及んでいないはず。 今の事象で、私たち以外に干渉を受けていないのは……。

Raabe
ラーベ

……おや?

Raabe
セリカ

え、なに、なに? どうしたの、みんな鬼気迫った顔して……。

Celica
ルナ

なんの相談だ?

Luna
バング

もしやなにか、新事実が判明したでござるか?

Bang
シエル

……セリカさんも、ルナさんもバングさんも…… 事象干渉を受けたように見えます。

Ciel
シエル

ですがここにはこれ以上……。

Ciel
ラーベ

いや。

Raabe
ラーベ

いやいやいやいや。 いるにはいるが……嘘だろう?

Raabe
シエル

ミネルヴァさん、が……?

Ciel
ミネルヴァ

……!!!!!

Minerva
シエル

くぅっ……! レイさん、怪我はありませんか?

Ciel

1: 大丈夫、ありがとう!
2: どうしてミネルヴァが攻撃を?

1:
2:

セリカ

ミネルヴァ、なんで!? やめて、攻撃しないで!

Celica
ミネルヴァ

……! ……! ……! ……!!

Minerva
ラーベ

まさか……そうか。セリカのドライブは、 セリカとミネルヴァの両者がいて初めて成り立つ。

Raabe
ラーベ

そういう意味では、ミネルヴァもまたセリカと同様のドライブを 有していると考えられる。

Raabe
ラーベ

観測者になることも……だが、あり得るのか? ミネルヴァが私と同じ自立思考型だとしても……。

Raabe
ラーベ

世界を認識し、ファントムフィールドを構築するほどの 魂を……『願望』を持つ機械なんて……。

Raabe
ラーベ

誰だ……コイツを《創造》 (つくった) のは……?

Raabe
ラーベ

正に《機械仕掛けの神》 (デウス・エクス・マキナ) じゃないか……。

Raabe
シエル

っ、く、重い……。 でも……問題ありません。なんとか処理可能です。

Ciel
ルナ

お、おい、おい! あいつどうしちゃったんだ!?

Luna
ラーベ

なるほど……これまではレイも、 このファントムフィールドの住人として観測されていたのか。

Raabe
ラーベ

だがたった今、ミネルヴァの観測から外れたことで、 明確に異物として認識されるようになった。

Raabe
ラーベ

それどころか観測の力を持つせいか、 特筆して敵視されているんだろう。

Raabe
ラーベ

……理屈は正しいな。レイがいなければ、 この世界においてミネルヴァの観測を塗り替える者はいなくなる。

Raabe
ルナ

おいおい! 呑気な解説してる場合か! どうすんだよ、反撃するのか!?

Luna
ミネルヴァ

!!!

Minerva
セリカ

きゃっ!

Celica
セリカ

ミネルヴァ……! 駄目だよ、ねえ、止まって!

Celica
バング

セリカ殿、手を離すでござる! 今のミネルヴァ殿は暴走状態。 巻き込まれるでござるよ!

Bang
セリカ

だけど……!

Celica
ミネルヴァ

!!!

Minerva
バング

どぅわっ! くっ、容易に近付けん!

Bang

1: シエル、こっちで引きつけよう!
2: セリカをお願いします、バングさん!

1:
2:

シエル

了解。戦闘態勢に移行。 対象の……無力化を開始します。

Ciel
バング

囮になると申すか。 承知、こちらは任されよ!

Bang
ルナ

逃げ道、造っとく! こんな狭い部屋で暴れられたら、 部屋ごとルナたちぺしゃんこだ!

Luna
シエル

レイさんは、側にいてください。 お守りします!

Ciel
バング

御免!

Bang
セリカ

わ、わっ、バングさん! お、下ろして、ミネルヴァが……!

Celica
バング

冷静になるでござる、セリカ殿。

Bang
バング

今のミネルヴァ殿は、訴えかけて聞き入れる状態とは思えぬ! ここは一旦退かねば、全員瓦礫に埋まるでござるよ!

Bang
セリカ

っ……。 ミネルヴァ……。

Celica
ルナ

うわ、天井ヒビ入ってる! 早く、部屋から出ろ! こっち、こっち!

Luna
ラーベ

無理矢理壁に穴を開けたわけか。 シエル、レイ! 退避!

Raabe
シエル

はい! 先に行ってください、レイさん。 追従します。

Ciel

第11節 錬成完了①/ 11. Training Complete - 1

Summary
再び現れたセミアが衝撃の言葉を口にする。

この世界は『バベル』が必要としたために 作られ、用済みになれば解体されるのだと。

ルナ

はぁ、はぁ、ひぃ、マジ、シャレになってないぞ! 目茶苦茶するじゃんか、あいつ!

Luna
ルナ

すげえスピードで追いかけてくるし、 その間も壁やら天井やらボッコボコにしてくるし……。

Luna
ルナ

今来た道、絶対潰れてるぞ。 後ろのほうでガラガラいってたもん!

Luna
セナ

いやぁ……今までは助かってたけど、 襲われる側に回るとだいぶ怖いよねぇ〜。

Sena
セナ

すごい破壊力……。

Sena
シエル

皆さん、ご無事ですね……。 よかった……。

Ciel
シエル

あ……ここは……。

Ciel
ラーベ

研究所の一番奥まで来てしまったようだな。

Raabe
セリカ

…………。

Celica
セリカ

バングさん、ごめんなさい。わがまま言って。 もう大丈夫、下ろして。

Celica
バング

……うむ。

Bang
セリカ

……どうしよう。聞きたいことたくさん。 なのに頭真っ白。

Celica
ルナ

とりあえず、状況を解説してくれよ。なんかわかってんだろ。 なんだってあいつ、急に凶暴化して襲いかかってきたんだよ。

Luna
バング

これまでミネルヴァ殿は、常にセリカ殿に着き従い、 我々と共に戦ってくれていたでござる。

Bang
バング

心変わりということは考えづらい。 錯乱しているように見受けられたが……。

Bang
ラーベ

お前たちにわかるように、1から10まで説明するのは難しい。 理解しておいてほしい部分だけかいつまんで話すぞ。

Raabe
ラーベ

ミネルヴァは今、バングが言ったように錯乱状態、 暴走状態にある。原因は、こうだ。

Raabe
ラーベ

まず……この世界には、世界を世界として確立させ、 存在させるためのいわば『眼』にあたる者がいる。

Raabe
ラーベ

どんな世界なのか、どういう事件が起こるのか。 そういう事象を、起こったこととして確定させることができる。

Raabe
ラーベ

我々はそれを『観測者』と呼んでいる。

Raabe
ルナ

な、ん、え?

Luna
バング

静かに、ルナ。最後まで聞こうではないか。

Bang
ラーベ

話の流れでわかるだろうが。その観測者……今ある世界を、 私たちが見てきた形に確定させていたのが……。

Raabe
セリカ

ミネルヴァ……なの?

Celica
ラーベ

そうだ。 ……これはかなりのイレギュラーだ。想定外だった。

Raabe
ラーベ

だがまあ、その辺りの理屈は今はいい。 そのミネルヴァが行っていた観測に、割り込んだ奴がいる。

Raabe
ラーベ

それがレイだ。

Raabe
ラーベ

正確には、ちょっとしたきっかけで記憶を取り戻した レイ、だな。

Raabe
セリカ

記憶、戻ったの!? よかったぁ!

Celica
セリカ

でも、割り込むって……?

Celica
ラーベ

こいつにはそういう力がある。それだけわかっていればいい。

Raabe
ラーベ

レイが本来の力を取り戻したせいで、 ミネルヴァの観測に歪みが生じたんだろう。

Raabe
ラーベ

そのせいで……暴走した。たぶんな。

Raabe
セリカ

ミネルヴァを、元に戻すことはできるの?

Celica
ラーベ

わからん。これが人間なら、自分を取り戻させるとか、 説得するとか、精神論で解決できることもあるだろうが……。

Raabe
ラーベ

今回はそうじゃない。 あの暴走を止めるには、ミネルヴァを倒すしかない。

Raabe
バング

セリカ殿によってミネルヴァ殿を制御することは できぬのでござるか?

Bang
ラーベ

現状、難しいだろう。 今さっき、その難しさと直面したはずだ。

Raabe
ラーベ

どうだ、セリカ。 ミネルヴァを説得……制御できると思うか?

Raabe
セリカ

……したい、けど。 私の声、全然ミネルヴァに届いてる感じがしなかった。

Celica
セリカ

任せてって、言えない……。

Celica
ラーベ

……理屈の話をするぞ。

Raabe
ラーベ

ミネルヴァが暴走状態にあるということは、 世界の観測が正常に行えなくなっているということだ。

Raabe
ラーベ

このままにすれば、観測されなくなった世界は崩壊する。

Raabe
ルナ

崩壊!? そ、そうなったら、ルナたちはどうなるんだ? 元の世界には……?

Luna
ラーベ

具体的な例を見たことがないが、戻れる保証はない。

Raabe
セナ

そんなぁ……。

Sena
ラーベ

だからその前に、ミネルヴァを観測者の役割から解放し、 別の観測者によって世界の形を固定させる必要がある。

Raabe
ラーベ

その観測は、一時的にレイが行い、 後々にこちらで管理しているシステムが行おう。

Raabe
ラーベ

本来なら、 観測者自身が自らを『観測者』であると認識することで、

Raabe
ラーベ

つまり世界との繋がりを自覚することで、 接合点である『窯』が出現し、その破壊が可能になる。

Raabe
シエル

ですが……現在、『窯』の所在ははっきりと感じられるのですが、 まだ完全に出現していない状態です。

Ciel
シエル

窯は……そこにあるはずなのに。 視認できないのです。

Ciel
ルナ

確かになんもない。 本当なら、あそこに出てくるはずなんだな?

Luna
シエル

はい……。

Ciel
ラーベ

ミネルヴァは人間の精神とは違う。 自認が及ぼす影響が低すぎるんだろう。

Raabe
ラーベ

だからレイがまず、 上位観測者として権限を手に入れなくてはならない。

Raabe
ラーベ

そのために。

Raabe
バング

無力化が必要であると。

Bang
ラーベ

そうだ。だが……機械であるミネルヴァを 無力化させるというのは、難しい。

Raabe
ラーベ

機械に気絶なんてものはない。 機械の意識とは、稼働状態にあるかないかだ。

Raabe
ラーベ

あの人形がショートするとか、もしくは電源でもついていれば 別だが、そうでないなら……破壊するしかない。

Raabe
シエル

待ってください。観測者を破壊することは、 観測者の死亡と同じではありませんか?

Ciel
シエル

観測者が死亡すれば、 世界にはリセットがかかってループが行われます。

Ciel
シエル

《浸入》 (ダイブ) 中にリセットが行われるのは 非常に危険だと以前教わりました。

Ciel
ラーベ

その通り。避けたい。というか避けなくてはいけない。 だから、わかるか?

Raabe
ラーベ

観測者を無力化したい。だが無力化させることは、 非常に避けたい危険な状況を招くということで。

Raabe
ラーベ

それを回避するためにも観測者を無力化しなければならない…… という堂々巡り状態にあるんだ。

Raabe
ルナ

それって、なんの解決方法もないってことじゃんか!

Luna
ラーベ

だから今、どうにかできないか考えてるんだろうが。

Raabe
ラーベ

お前たちもなんか妙案を絞り出せ。ミネルヴァを破壊せずに、 無力化するか、暴走状態を解除する方法だ。

Raabe
セリカ

私も、できればミネルヴァを破壊なんてしたくない。 なにか……なにかないかな……。

Celica

1: ミネルヴァを破壊しないですむ方法……
2: ファントムフィールドを解放する方法……

1:
2:

???

なぁんだ、そんなことで悩んでるの? 悩むことないのに。

???
セミア

なにをしたって、 どうせこの世界はもう少しでなくなるんだから。

Semia
シエル

あなたは……! バベルの……セミアさん。

Ciel
シエル

なぜここにいるのですか?

Ciel
セミア

あれ。生きてたんだ、御剣の犬。 なんだ、ざぁ〜んねん。

Semia
セミア

死んでてくれたら、 ハーンの前で悲しい顔くらいはしようと思ってたのに。

Semia
セミア

そしたら、 ハーンに慰めてもらえたかもしれないのになぁ……。

Semia
シエル

ハーン……。 あの男の名前……。

Ciel
セミア

アンタが気安く呼ばないで。 独占欲振りかざすつもりはないけど、アンタは不愉快。

Semia
シエル

……っ。

Ciel
セミア

なぁに、睨んじゃって。怖い怖い。

Semia
ラーベ

バベル。丁度いい、どうやらかなりの情報通みたいだ。 色々とわからないことが多いんでね。教えてくれないか。

Raabe
ラーベ

『どうせ』世界はなくなる、とはどういう意味だ? 観測者の喪失以外にも、世界がなくなる理由があるのか?

Raabe
ラーベ

それと、ここは『何時』 (いつ) だ?

Raabe
セミア

なにそれ? なんでアタシが、アンタたちにそんなこと 教えてあげなくちゃいけないワケ?

Semia

1: 情報を与えても不利にはならないはずだ(よ)
2: 君(あなた)の知ってることが知りたい

1:
2:

セミア

なにそれ、言ってる意味わかんないし……。 どっかの馬鹿みたいに、ペラペラと教えるワケないでしょ。

Semia
セミア

まぁでも……『アンタに』邪魔されるのも困るかぁ……。

Semia
セミア

しょうがないなぁ。 そんなに言うんなら、教えてあげるよ。

Semia
セミア

知った後にどんな顔をするかも……興味あるしね。

Semia
セミア

あのね、ここは、アタシたち (バベル) が用意した ファントムフィールド。ちょっとやりたいことがあってね。

Semia
ラーベ

やりたいこと?

Raabe
セミア

前に、それなりにできる魔術師……とかいうのを使って ちっちゃな島で色々と実験してみたんだけど、

Semia
セミア

余計な『認識』が入ったせいで上手くいかなくてさぁ。 ほんと、人間って面倒くさいよね。

Semia
ラーベ

なっ!? まさか……。

Raabe
セミア

だから扱いやすい観測者ならってことで、 今回はあの人形にしたの。

Semia
セミア

だけど変なの使うとやっぱダメだわ……。 簡単な分、思い通りに動かないし。

Semia
バング

私利のために、ミネルヴァ殿を利用したのでござるか。

Bang
セミア

私利? そうだけど、それがなに? なにか変?

Semia
セミア

アレは道具じゃない。道具は使うもんなんでしょ。 おっかしい。

Semia
シエル

なぜ、ファントムフィールドを作ったのですか?

Ciel
セミア

『窯』が必要だからに決まってるでしょ、馬鹿なの? あんまくだらないこと聞かないでよ、犬。

Semia
セミア

それともご主人様のしつけが悪いのかな。

Semia
シエル

今の発言はどなたを示していますか? どなたであれ……侮蔑的と判断します。

Ciel
ラーベ

シエル、止めろ。

Raabe
シエル

……了解……しました。

Ciel
セミア

そうそう、 犬は上手に『待て』ができないとね、アハハハ。

Semia
セミア

楽しくなってきたから、もっとおしゃべりしてあげる。

Semia
セミア

あの人形、勝手に余計な人間を観測しだしたんだよね。

Semia
セミア

そのうえ、そいつの意識に感化されて 無駄にフィールド広げちゃってさ。

Semia
セミア

そのせいで観測しきれなくなって、あちこちで人間が どんどん消えたりしてたのは笑えた。

Semia
セミア

ただ『あんなもの』まで呼び出されたのは、 ホント迷惑だったけど。

Semia
セミア

おかげで窯がダメになっちゃった。

Semia
セリカ

あんなもの……。 呼び出したって、もしかして『災厄』のこと?

Celica
セミア

ふふ、そんな風に呼んでるんだ。 馬鹿みたい。

Semia
セミア

でもま、いいよ。そういう茶番が好きならそれでも。

Semia
セミア

『災厄』? そうそう、そのせい。そのせいで大事な窯が 壊れちゃったから……直さないといけないじゃない。

Semia
セミア

だからね……この辺りの時間だけ、巻き戻してもらったんだ。

Semia
ラーベ

時間の巻き戻し……ドライブか……? そんなドライブ、存在するのか?

Raabe
セミア

さあ。存在すると思えば、するんじゃない? 可能性があるものは、可能らしいし。

Semia
セミア

そういえばアンタ、ここが『何時』 (いつ) なのか気にしてたよね。 ついでに教えてあげようか。

Semia
セミア

ここは……『この部屋』は、 地上の時間より、何十年か前の状態。

Semia
セミア

ここができたて、ピカピカの新築だったころだよ。 綺麗でしょ。

Semia
セミア

あ。あのでっかい人形がボロボロにしちゃったんだっけ。 あーあ、まいっか。どうせなくなる世界だし。

Semia
ルナ

だから、なんでなくなるのかって聞いてんだよ! ミネルヴァが暴走したから……だからなくなっちゃうのか?

Luna
セミア

さっき言ったでしょ。ここはアタシたちバベルが用意した ファントムフィールドだって。

Semia
セミア

その目的がもうすぐ果たされるからに決まってるじゃん。 そうなったら、ここは用済みだから解体するの。

Semia
セミア

こんな他に使い道のないフィールド、 とっておいてもしょうがないでしょ。

Semia
セリカ

使い道……用済みって……。 ここは、私の大事な人がいる、ちゃんとした世界なのに……。

Celica
セミア

『ちゃんと』ってなに。 じゃあ逆に『ちゃんと』してない世界ってどんなの?

Semia
セミア

憐れだなぁ。自分の存在の規模を自覚できないっていうのは…… もう、憐れとしか言いようがないよね……。

Semia
セミア

……ねえ。 アンタ。結構すごい観測者なんでしょ。

Semia
セミア

だったらさ、今度はアタシに教えてよ。 ここに、なにがあるの?

Semia
セミア

アンタたちはなにを探してたの? この部屋の奥に、なにがあるはずだったの?

Semia
シエル

窯は……そこにあるはずなのに。 視認できないのです。

Ciel

1: (窯がある)

1:

セミア

そう。

Semia
セミア
『窯』がある。
Semia

第11節 錬成完了②/ 11. Training Complete - 2

Summary
突如現れた『窯』を利用し、目的を達した

セミア。彼女は次に、ミネルヴァの暴走を 止めようとするセリカへとその刃を向けた。

シエル

Ciel
シエル

窯の出現を確認……。 今度ははっきりと、視認できる状態です。

Ciel
ルナ

あ……あれ、なんだよ。 さっきまであんなの、なかったぞ!

Luna
ルナ

あれが、今言ってた……『窯』なのか?

Luna
セミア

そう。これが『窯』。 ファントムフィールドと境界を繋ぐ場所。

Semia
セミア

そうだよね……レイ。

Semia
セミア

そしたらさ、今からいいもの見せてあげるよ。

Semia
ラーベ

なんだ、なにを……ええい、なんでもだ! レイ、観るな!!

Raabe
セミア

ほら、出てくるよ。 窯の中から!

Semia
セミア

なにが見える?

Semia
???

…………。

???

1: 小さくて華奢な……人?
2: 見たくない……のに……!

1:
2:

セミア

そう。そうだよ、もっと観て。さあ……。 どんな子? どんな形をして、どんな色をしてる?

Semia
セミア

だめだよ、よく観て。見えてるでしょう。 どんな子? どんな形をして、どんな色をしてる?

Semia
セミア

あの子がここにいるって、しっかりその意識で、 その『眼』で……認識して。

Semia
???

…………あ。 セミアだぁ。久し振り〜、元気だった?

???
セミア

久し振り、オリヴァ。 そっちこそ、調子はどう?

Semia
オリヴァ

うん、いいよぉ。元気いっぱい。 たくさん寝たからかな。

Oliver
ルナ

なんだ、あいつ……どっから出てきた?

Luna
シエル

窯の中からです。 ですが、窯の中は境界です。人間が存在できるはずは……。

Ciel
ラーベ

……ああ、そうだ。だからあれは人間じゃない。

Raabe
ラーベ

精錬された……素体だ。

Raabe
ラーベ

しかも……この数値は何だ……。

Raabe
オリヴァ

ねえ、みんなは? みんなもいるの? どこにいるの? 会いたいなぁ。みんな元気?

Oliver
セミア

ええ。みんないつも通り。

Semia
セミア

ハーンがアンタを待ってるよ。 連れて来てってさ。

Semia
オリヴァ

ハーン! わぁ、久し振りだなぁ。早く会いたいなぁ。

Oliver
オリヴァ

どこにいるの? なにするの? 楽しいことかな。 またいっぱい壊す? いいよ、ボク壊すの得意だもん。

Oliver
セミア

アタシはアンタを迎えにきただけだから。 聞きたいことがあるなら、あとでハーンに聞いて。

Semia
オリヴァ

はーい。 ハーン、久し振りだなぁ。早く会いたいなぁ。

Oliver
セミア

それさっきも聞いた。

Semia
オリヴァ

そっかぁ〜。久し振りだねぇ。

Oliver
セミア

はぁ……。

Semia
オリヴァ

あ、ねえねえ。

Oliver
セミア

今度はなに?

Semia
オリヴァ

アレは? アレも仲間? 一緒に行くの?

Oliver
シエル

え……?

Ciel
セミア

……違うよ。仲間じゃない。 アレは道具。

Semia
オリヴァ

なんだ、そっか。 ……あれ。なんだか中途半端なのもいるんだね。

Oliver
ルナ

……っ! な、なんだよ……。

Luna
オリヴァ

ふーん。色んなのがあるね。

Oliver
セミア

そうだね。でももう関係ないから。 行こう、オリヴァ。

Semia
セリカ

待って! 私たちの世界をどうす……。

Celica
セミア

どうするのかって? ほっとくの。放っておけば、勝手に終わる。

Semia
セリカ

なん……。

Celica
ラーベ

こ……れは……まさか!

Raabe
ルナ

うわ、わ、なんだ、なんか気持ち悪い……!

Luna
セナ

周りの景色が…… すごい速さでブレているように見えるんですけど〜……?

Sena
バング

辺りの様子が……高速で変化している。 ごくわずかな変化でござるが、これは……まるで……。

Bang
バング

あやつ、先程時間を巻き戻したなどと言っておったが、 よもや……!

Bang
ラーベ

ああ。超高速で時間が経過している。 巻き戻された分が、現在に近付こうとしているんだ!

Raabe
ラーベ

戻された時間は数十年だったか。時間は多く戻せばそれだけ、 解除したときに高速で収束しようとする。

Raabe
ラーベ

数十年だろうが、 すぐにこの世界の本来の時間軸に追いつくぞ。

Raabe
セリカ

そ、それ、困ることなの?

Celica
ラーベ

当たり前だ!

Raabe
ラーベ

この世界の、他でもないここで、この数十年間の間になにが 起こったのか、お前が一番よく知っているはずだろう!

Raabe
ラーベ

時間の巻き戻りは、事象干渉とは違う。

Raabe
ラーベ

事象干渉は起こったことを 『起こらなかった』ことにするものだ。

Raabe
ラーベ

対して巻き戻しは時間そのものを戻すだけ。

Raabe
ラーベ

巻き戻れば、起こった出来事は当然、 起こった通りに『起こる』。

Raabe
シエル

では……このまま時間が進めば、窯からは『災厄』が。

Ciel
ラーベ

出てくる! しかも私たちの目の前でだ!!

Raabe
ルナ

はぁ!?

Luna
ルナ

なんだそれ!? そんなの目茶苦茶だ! 『災厄』と鉢合わせするとか、冗談だろ!?

Luna
ラーベ

こんなときに冗談など言うか! おい、バベル! 窯を止めろ! 『あれ』が出てくる前に!

Raabe
ラーベ

お前たちとて、直接遭遇すればただではすまないはずだ!

Raabe
オリヴァ

セミア。なんか慌ててる。

Oliver
セミア

あらら。ほんとだね。

Semia
セミア

ご心配なく。アタシたちはその前に帰るから。 それより……窯を止めるなんて、言ってよかったの?

Semia
セミア

そんなこと言うからさぁ……ほら、来ちゃったじゃない。

Semia
シエル

っ……! レイさん、私の後ろに……!

Ciel
シエル

はっ!

Ciel
シエル

ぐっ、くぅ……!

Ciel
ミネルヴァ

…………。

Minerva
セリカ

ミネルヴァ!

Celica
ラーベ

ちっ、観測者としての本能とでも言うべきか…… 厄介だな!

Raabe
セリカ

ミネルヴァ、もうやめて! シエルちゃんやレイは敵じゃないよ!!

Celica
セリカ

戦わなきゃいけないのは、もっと別にいるの。 お願い、ミネルヴァ!

Celica
ミネルヴァ

…………。

Minerva
ミネルヴァ

…………。

Minerva
ルナ

……止まった……?

Luna
セリカ

そう、そうだよ。私のことわかる? もうそんな暴れ方しないで。ミネルヴァが壊れちゃうよ……。

Celica
セリカ

今治してあげるから。そこにいて。

Celica
バング

セリカ殿! うかつに近付いては危険でござる!

Bang
セリカ

大丈夫。 ミネルヴァがまた暴れても。私が止めなきゃ。

Celica
セリカ

大事なの。ミネルヴァのこと。

Celica
ミネルヴァ

…………。

Minerva
セミア

……こういうダルい展開、嫌いなんだよね。

Semia
セミア

心通わせるとか、そういうこと信じちゃうタイプ? くっだらない。

Semia
セミア

どの道そいつらが窯を壊せば、 アンタの世界は取り上げられちゃうのにね。

Semia
オリヴァ

騙されてるんだ。あのお人形。かわいそう。

Oliver
セミア

そう、かわいそうだよね。 だから……暴れやすくしてあげようか。

Semia
バング

いかん、セリカ殿!

Bang
セリカ

ミネルヴァ……。

Celica

第11節 錬成完了③/ 11. Training Complete - 3

Summary
凶刃に倒れるセリカ、彼女を取り戻そうとも

がくミネルヴァ。災厄、崩落、爆発、無数の 危険が迫る中、皆が生き残る道を模索する。

八方塞がりの状況に、セリカの影が道を指し

示す。一同はわずかな可能性を求めて『窯』 の向こう側、境界の中へと飛び込んでいく。

セリカ

……!

Celica
ミネルヴァ

…、…、…。

Minerva
シエル

セリカさん!!

Ciel

1: なんてことを……!
2: セリカ!!

1:
2:

ルナ

嘘、だろ……。

Luna
バング

セリカ殿……!

Bang
セリカ

ミネルヴァ……。

Celica
ミネルヴァ

………。 ………。

Minerva
セリカ

ごめん、ミネルヴァ。 私……。

Celica

あなたに。

会いたかった。

ミネルヴァ

――――――――――――――――――――――――――――― ――――――――――――――――――!!!!!!!!!!!

Minerva
セミア

あーあ。観測者が完全に、世界を観るのをやめちゃったみたい。 思いの外、早い終わりになったね。

Semia
オリヴァ

ふぁぁ〜……ねえ、セミア。まだここにいるの? ボクはなにすればいい? どれを壊す?

Oliver
セミア

まだいいよ、オリヴァ。 ハーンも待ってるし、アタシたちは帰るよ。

Semia
オリヴァ

そっかぁ。わかった。

Oliver
ルナ

おいコラ、お前ら! なに逃げようとしてんだ、ふざけんな! 落とし前つけてけ!!

Luna
セミア

そういうの、キャラじゃないから。 バイバイ。

Semia
オリヴァ

バイバ〜イ!

Oliver
ルナ

あ、おい、待てよ! 待てって……バカーーーー!!!

Luna
バング

ルナ!

Bang
ルナ

……っ、ぶね〜〜〜〜〜! ありがとな、オッサン!

Luna
バング

なんのなんの。

Bang
バング

それより……今はどこぞへ消えた正体不明の連中よりも、 目の前に迫る危機の対処が優先でござるよ。

Bang
ルナ

うう……そりゃ、そうなんだけど……。

Luna
ラーベ

こいつは相当やばい事態になったな……。

Raabe
ラーベ

聞け。 ミネルヴァのコアにはおそらく人間の魂が使われている。

Raabe
ラーベ

さらにあのとんでもない出力を支えている動力源は、 超小型の反応炉だ。

Raabe
ルナ

反応炉?

Luna
ラーベ

思いっきり圧縮された高エネルギーの塊だと思え。 ただし非常にデリケートだ。下手したら爆発する。

Raabe
ラーベ

日本を吹き飛ばした爆弾と同じだ。

Raabe
ルナ

んな! そんなもんが入ってんのか!?

Luna
ラーベ

そうだ。そしてコアが人間の魂だと言ったろ。

Raabe
ラーベ

普段は機能に影響を及ぼさないだろうが、 ミネルヴァに魂と呼ばれるものが内蔵されているのは事実だ。

Raabe
ラーベ

あいつに精神的な揺らぎが生じるのならば、 その不安定さは出力や、動力源にも影響を及ぼしかねない。

Raabe
シエル

ミネルヴァさんの精神波長は存在そのものが微弱ですが、 現在は非常に乱れています。

Ciel
シエル

もし反応炉に影響するのなら、普段よりも圧倒的に…… 反応炉の異常、爆発の発生率が上昇していると言えます。

Ciel
バング

ここでそれが爆発したら……考えたくないでござるな。

Bang
ミネルヴァ

…………。 …………!!!!

Minerva
ミネルヴァ

!!!!!!!!

Minerva
ラーベ

事象干渉……!

Raabe
シエル

あれは、セリカさん!? 事象干渉でセリカさんの死をなかったことにして……。

Ciel
シエル

いえ……あれはセリカさんではありません。 もっと不完全なものです。

Ciel
ラーベ

ミネルヴァは完全な自立駆動システムではない。 正常な稼働や戦闘には、セリカが必要なんだろう。

Raabe
ラーベ

いや、これだけ錯乱していて、正常もなにもないか。 すでに観測もまともにできなくなっている。

Raabe
ルナ

そんなのじゃなくて、 ただセリカを取り戻したかったんじゃないのか?

Luna
セナ

そうだよ〜……。観測でどうにでもできるなら、 自分ひとりで戦えるようにすればいいんだもの〜……。

Sena
セナ

なのに、セリカさんを作ったってことは……。

Sena
ミネルヴァ

……………………!!! ……!! ……!!!

Minerva
セナ

ひえぇ〜!

Sena
バング

ルナ、セナ、考えるのは、後にするでござる!

Bang
バング

これはまごうことなきピンチゆえ。 考察よりも、生き延びることに己を使うのだ!

Bang
ルナ

わ、わかった。わかった……けど。

Luna
ルナ

なんかすごく、嫌だ! だってあいつ……。

Luna

1: 悲しんでるみたい……
2: 辛そうに見える

1:
2:

シエル

(悲しんで……。 セリカさんを、失ったから?)

Ciel
シエル

(失うことは、悲しいことなのですか……ミネルヴァさん。 悲しいのに、なぜ戦うのですか)

Ciel
シエル

(辛そう……。 セリカさんを、失ったから?)

Ciel
シエル

(失うことは、辛いことなのですか……ミネルヴァさん。 辛いのに、なぜ戦うのですか)

Ciel
シエル

(守るべき人はもういないのに…… その幻影を作ってまで。なぜ……)

Ciel
ルナ

うわぁっ!

Luna
ラーベ

くっ、こんな状況ではなにもできん。 戦闘態勢! ミネルヴァを制圧しろ!

Raabe
バング

確認するが、よいのか? ミネルヴァ殿を破壊してはならぬという話ではなかったか?

Bang
ラーベ

そんなこと言ってる場合じゃないんだ、もう!

Raabe
ラーベ

ミネルヴァを破壊して世界にリセットがかかるのも、

Raabe
ラーベ

このままミネルヴァに地下施設を破壊されて 瓦礫の下敷きになるのも一緒だ!

Raabe
ラーベ

だがな! 一番最悪なのは、時間経過で『災厄』と鉢合わせする ことだ。それだけは回避しなければならない!

Raabe
ルナ

ぐぬぬぬ…… 壊さなくても、ぶちのめして縛り上げちゃえばいいんだろ!

Luna
ルナ

なんでもいいから一回止まってくれないと、 どうにもなんねーっての!

Luna
シエル

ミネルヴァさん……セリカさん……。

Ciel
セリカ?

…………! …………!

Celica?

...! ...!

シエル

あれは……。 セリカさんが、ミネルヴァさんを押さえようとしています。

Ciel

1: '
2: まだミネルヴァを止めようとしてるんだ

1:
2:セリカの気持ちだけでも助けなきゃ!

シエル

不完全な状態であっても、止めようと……。 どうして、それほどに。

Ciel
シエル

助ける……。あの状態のセリカさんの行動を補助するのは、 助けることになるのですか……?

Ciel
ラーベ

シエル! ぼけっとするな! 時間がない!!

Raabe
シエル

……はい。

Ciel
シエル

対象を補足。戦闘態勢へ移行。 対象の無力化を開始します。

Ciel
シエル

ミネルヴァさん。止まってください!

Ciel
ミネルヴァ

………、………。 ……………………。

Minerva
シエル

はぁ、はぁ……対象、停止。 ……ですが、対象の機能は正常です。

Ciel
シエル

ダメージの蓄積のために行動が制限されているだけで、 すぐにまた稼働するはずです。

Ciel
ルナ

倒せてないってことかよ。くっそ〜……。

Luna
ルナ

大体、世界の形がどうとか言ってたけど、 要は世界を自分の思い通りにできるってことだろ?

Luna
ルナ

そんな相手に勝てるわけないじゃんか!

Luna
ラーベ

本来なら、勝てるんだ。観測者が『負けた』と思えばな。 だが機械が『負けた』と思うか!?

Raabe
バング

八方塞がりでござるなぁ!

Bang
ラーベ

とにかく『窯』をどうにかしないとマズイ。

Raabe
ラーベ

このまま時間が正常な地点に追いついたら、 いやそのちょっと手前で、我々は終わりだ。

Raabe
バング

『災厄』が出てくるのでござったな……ミネルヴァ殿との 交戦状態が落ち着いたとはいえ、危機が去ったわけではない。

Bang
ラーベ

その通りだ。むしろ戦闘に時間を持っていかれた分、 猶予はよりなくなってる!

Raabe
ラーベ

シエル! すぐに『窯』を破壊しろ!

Raabe
ラーベ

レイが認識しているなら、 可能なはずだ!

Raabe
シエル

は……はい!

Ciel
シエル

……第666拘束機関解放。次元干渉虚数方陣展開……。 『蒼の魔道書・写本』 (ブレイブルー) 起動!

Ciel
シエル

……あ、れ。 き、起動! 起動……!!

Ciel
シエル

『蒼の魔道書・写本』、起動しません……。

Ciel

1: どうして、今まで通りなのに…… 僕(私)
2: の力、戻り切ってないのかな

1:
2:

ラーベ

いや。これは……こんなところで影響が出るとは。

Raabe
ラーベ

フガク! タカマガハラシステム、緊急プロトコルだ! 回収しろ、急げ!

Raabe
ラーベ

……くそっ! こっちもダメか!!

Raabe
ルナ

なあ、なあ! ルナたち、どうなっちゃうの……!?

Luna
セナ

ルナ……!

Sena
バング

しっかり掴まっておれ、ルナ、セナ。 なにがあっても、拙者が切り抜けてみせるでござる!

Bang
ラーベ

そういうレベルの問題じゃ……。

Raabe
セリカ

……………………。

Celica
セリカ

……行って。

Celica
シエル

セリカさん……? 窯を指差しています……。

Ciel
バング

よもや、飛び込めということでござるか?

Bang
ラーベ

馬鹿な、窯に飛び込んだから……ああ、そうか。 アリか。

Raabe
シエル

危険です。人間が境界に生身で入れば……!

Ciel
ラーベ

わかってる。通常の人間では耐えられない。情報に分解されるか、 存在を失うか、よくて情報に精神を潰されて狂うかだ。

Raabe
ラーベ

だがミネルヴァを破壊すれば反応炉、 破壊しなければ瓦礫の下敷き。じっとしてれば『災厄』だ。

Raabe
ラーベ

他に手はない。それ以外は詰みだ!

Raabe
ラーベ

だから……レイ。

Raabe
ラーベ

我々を観測し続けろ。

Raabe

1: 意識してやったことないよ!
2: わかった。どうすればいい?

1:
2:

ラーベ

意識しろ。私たちが『居る』ということを認識し続けるんだ。 どんな人物なのか、細部まで明確に。

Raabe
ラーベ

境界に入りさえすれば、フガクが直接アクセスできる。 ファントムフィールドの事情などおかまいなしだ。

Raabe
ラーベ

数秒でいい。 だがその数秒、寸分の狂いもなく私たちを……

Raabe
ラーベ

『お前』を認識しろ。いいな!

Raabe

1: なんとかします!!
2: とにかくがんばる!!

1:
2:

ミネルヴァ

……………………。

Minerva
シエル

ミネルヴァさん、再起動。動き出します!

Ciel
ラーベ

くそ、こっちも窯の内部に超高密度エネルギーの片鱗を感知した。 時間がない、急げ、飛び込め!!

Raabe
シエル

了解!!

Ciel
シエル

レイさん、手を離さないでください!

Ciel

第12節 追憶の色/ 12. The Color of Recollection

Summary
辿り着いたグラウンド=ゼロでナインはセリ

カと再会する。その眼前には巨大な『暗黒』 が、なにかを拒むようにじっと佇んでいた。

目を開けた瞬間から、私は求めていた。

私の居場所を。私の役目を。私の意義を。 私の願いを。

それはあなた。

私はあなたのために生まれた。私はあなたのために戦う。 私はあなたのために在る。

だから、会いたかった。 会いたかった。

セリカ。

あなたの願いが叶いますように。

アハト

……ここが『グラウンド=ゼロ』?

Acht
ナイン

ええ、そうよ。 『災厄』が初めて出現し、破壊し尽くしていった場所。

Nine
ナイン

世界に刻まれた最初の爪痕。

Nine
アハト

なにもないのね。

Acht
トリニティ

そのあとに、たくさんの爆弾が投下されて……。 本当になにもかも、なくなってしまったんです。

Trinity
ナイン

こうなってるってことは、知っていたけど。 改めて見ると無残ね。

Nine
ナイン

草木一本すらないじゃない。

Nine
アハト

それだけ徹底的に攻撃する必要があったのね。 ここに……。

Acht
トリニティ

あれから時間もたちましたし…… 反応兵器の影響はもうほとんどないみたいですねぇ。

Trinity
トリニティ

ここに、セリカさんは来ているはずなんですよね?

Trinity
トリニティ

……あら?

Trinity
ナイン

どうしたの、トリニティ。誰に話しかけてるのよ。 私はこっちよ。

Nine
トリニティ

え……ええ〜、そうですよねぇ。 私ったら、今誰に……お話しようとしていたんでしょう?

Trinity
ナイン

やめてよ。変なもの見るとか。 場所柄、シャレにならないわ。

Nine
トリニティ

いえ、そういうわけではなかったのですけれど……あ……!

Trinity
トリニティ

ナイン、あちらを見てください!

Trinity
ナイン

あれは……。

Nine
ナイン

セリカ!!!

Nine
セリカ

…………。

Celica
ナイン

セリカ! セリカ、セリカ!!

Nine
セリカ

うわわわわわ!? え、あれ、お、お姉ちゃん!?

Celica
セリカ

あれ? 私……今……。

Celica
ナイン

よかった、無事で……。

Nine
ナイン

馬鹿! なに勝手にひとりで家飛び出してんのよ!! しかもこんなところまで……。

Nine
ナイン

私がどれだけ心配したと思ってるの!? 本当に……本当にもう、あなたって子は!!

Nine
セリカ

お、お姉ちゃん。心配かけてごめんなさい。

Celica
セリカ

どうしても……自分の目で見たかったの。

Celica
ナイン

見てどうするつもりだったのよ。 ここには、なにもない……。

Nine
ナイン

時間も光も……完全に事象が静止した……。

Nine
ナイン

あの『暗黒』しかない。

Nine
セリカ

……うん。

Celica
セリカ

でもね、来たかったの。

Celica
ナイン

次やったら、許さないわよ。

Nine
セリカ

うん。

Celica
セリカ

……許してくれるくせに。

Celica
ナイン

次こそ許さないって言ってるのよ! 反省しなさい!

Nine
セリカ

ひゃっ! ……はぁい。ごめんなさい。反省してます。

Celica
トリニティ

まあまあ、見つけられてよかったじゃないですかぁ。 とっても心配しましたけど、ご無事そうでなによりです〜。

Trinity
セリカ

トリニティさんも、ごめんなさい。

Celica
トリニティ

いいえ〜、私は気にしていませんよぉ〜。

Trinity
トリニティ

…………。

Trinity
ナイン

トリニティ、どうしたの?

Nine
トリニティ

いえ……あの暗黒なのですが……。 私にはなにかを閉じ込めているように思えてしまって……。

Trinity
ナイン

なにかって?

Nine
トリニティ

……わかりません。

Trinity
トリニティ

あぁ、ごめんなさい。 さあ、帰りましょう。イシャナに。

Trinity
ナイン

そうね。こんなところに、長居は無用よ。

Nine
ナイン

……セリカ?

Nine
セリカ

……なんだろう。 私……ずっと誰かに守ってもらってたような……。

Celica
ナイン

行くわよ。 反省してるなら、ちゃんとついてきなさい。

Nine
セリカ

あ、はーい! お姉ちゃん!

Celica

References

  1. BlazBlue Alternative: Dark War, In-game Announcements, June 10th, 2021, 18:00 JST
Contents