More actions
序節 Open eyes/
Summary | |
---|---|
ラーベと二人で戦闘訓練を行う仮想フィール
ドに侵入者が現れる。一人はラケル、もう一 人は、マイ=ハヅキと名乗る少女だった。 |
|
暴走する訓練用ゴーレムを、マイは難なく退
ける。好戦的なマイの次の動向に警戒するが ……直後、彼女は空腹から倒れてしまった。 |
???
…………。 |
??? |
???
……ここは……? |
??? |
???
ここは……どこだ? いや……それより、僕は? |
??? |
???
……なんだ、頭がぼうっとする。 ここはどこで、僕は誰で……どうしてこんなところにいるんだ? |
??? |
???
うろたえるな、男らしくない。 しっかりしろ、マイ。 |
??? |
マイ?
……マイ。そうだ、僕の名前だ。マイ=ハヅキ。 十二宗家ハヅキ家が当主、ホウイチロウ=ハヅキの息子。 |
Mai? |
マイ?
息子? いや……女……だな。 |
Mai? |
アナザーダーク=マイ
ああ、そうだ。なんで忘れてたんだ。 家の書庫にあった魔道書……あれに触れたせいで、僕の体は……。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
女に変わったことで、跡取りとしての資格も失った。 それで……学校に通うことになって……。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
…………。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
……それで? お友達と仲良く学生ごっこして、めでたしめでたし? |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
冗談じゃない。 そんなのは違う……『僕』の選ぶ道じゃない。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
僕は……。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
…………。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
……だめだ。頭の中がぼやけて、考えがまとまらない。 考えようとすればするほど、なにも考えられなくなりそうだ……。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
……ん? |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
…………あっち、か? |
Another Dark Mai |
ラーベ
……チェック。……チェック、チェック。チェック。 オールクリア。場の状態はおおむね良好。 |
Raabe |
ラーベ
システム異常なし。 通信状況……は微妙だが、想定の範囲内か。 |
Raabe |
ラーベ
まあまあ、だな。テストのときよりはずっとマシだ。 中々の観測具合だぞ、レイ。 |
Raabe |
1: 仮想ファントムフィールド、でしたっけ? |
1: |
ラーベ
ああ、そうだ。 |
Raabe |
ラーベ
タカマガハラシステムとレイの観測力を使って 疑似的に生み出した小規模な場になる。 |
Raabe |
ラーベ
まあ、ファントムフィールド自体、疑似的な場ではあるから、 名称としてしっくりきてるかっていうと微妙なんだけど……。 |
Raabe |
ラーベ
暫定ね。かっこいい名前、募集中。 |
Raabe |
ラーベ
ああ、そうだ。 |
Raabe |
ラーベ
といっても、お前ひとりで場を保持してるわけじゃないから 安心しろ。タカマガハラシステムがサポートしてる。 |
Raabe |
ラーベ
レイとシステム、両方の観測力を使って疑似的に 小規模なファントムフィールドを構築しているわけだ。 |
Raabe |
ラーベ
……安定して使えるようなら、 なにか正式な名称を考えるとしよう。 |
Raabe |
1: 疑似ファントムフィールド、でしたっけ? |
1: |
ラーベ
ああ、そうだ。 |
Raabe |
ラーベ
タカマガハラシステムとレイの観測力を使って 疑似的に生み出した小規模な場になる。 |
Raabe |
ラーベ
まあ、ファントムフィールド自体、疑似的な場ではあるから、 名称としてしっくりきてるかっていうと微妙なんだけど……。 |
Raabe |
ラーベ
暫定ね。かっこいい名前、募集中。 |
Raabe |
ラーベ
ああ、そうだ。 |
Raabe |
ラーベ
といっても、お前ひとりで場を保持してるわけじゃないから 安心しろ。タカマガハラシステムがサポートしてる。 |
Raabe |
ラーベ
レイとシステム、両方の観測力を使って疑似的に 小規模なファントムフィールドを構築しているわけだ。 |
Raabe |
ラーベ
……安定して使えるようなら、 なにか正式な名称を考えるとしよう。 |
Raabe |
ラーベ
さてさて。早速だが、今回の目的をおさらいだ。 |
Raabe |
ラーベ
今からレイにやってもらうのは、 仮想戦闘訓練だ。 |
Raabe |
ラーベ
現状、レイはシエルの 『蒼の魔道書・写本』を媒介にして『ユニット』を具現化し、 ブレイブルー |
Raabe |
ラーベ
戦闘を行っている。 |
Raabe |
ラーベ
もちろんそれが一番、安定していて安全性も高い 方法なんだが……。 |
Raabe |
ラーベ
それしかできないでいると、 もしも『シエル』が使えなくなったとき、 |
Raabe |
ラーベ
レイの身を守る手段がなくなってしまう。 |
Raabe |
ラーベ
それはちょっとリスクがある。 |
Raabe |
ラーベ
そこでだ。シエルなし、レイの観測力だけで ユニットを具現化し、戦闘を行う練習をする。 |
Raabe |
ラーベ
当然、そう簡単にはいかないから、 当面はタカマガハラシステムがフォローする。 |
Raabe |
ラーベ
『蒼の魔道書・写本』の代役もシステムが行う。 ブレイブルー |
Raabe |
ラーベ
最終的には、レイの力だけで具現化して、 ユニットも問題なく動かせるのが理想だ。 |
Raabe |
ラーベ
……とまあ、以上が今回の訓練のあらましだ。 なにか質問は? |
Raabe |
1: 理論上は可能なんですよね? |
1: |
ラーベ
可能だ。 ……理論上は。 |
Raabe |
ラーベ
さあ〜、どうかな〜。 たぶんできると思うんだけどな〜……。 |
Raabe |
ラーベ
いや、そんな不審そうな顔をするんじゃない! |
Raabe |
ラーベ
レイほどの観測力を持った人間なんて、 そう滅多にいるもんじゃないんだ。予測なんかたてられるか! |
Raabe |
ラーベ
というかレイにできないなら他の誰にもできない。 できる可能性があるだけで、ものすごいことなんだ。 |
Raabe |
ラーベ
それに、安心しろ。 この場が疑似的なものなら、戦闘も疑似的なものだ。 |
Raabe |
ラーベ
タカマガハラシステムが管理してるんだから、 ヤバくなったら中断すればいい。 |
Raabe |
ラーベ
……ちょっと、怪我くらいはするかもしれないけど。 フガクではメディカルルームが万全の態勢で待ち構えている! |
Raabe |
ラーベ
どーんと、思い切り、訓練してくれ! 大丈夫、死なせない! |
Raabe |
ラーベ
そんな目で見るなって。 大丈夫、大丈夫。本当に大丈夫。 |
Raabe |
ラーベ
とんでもないイレギュラーが起こらない限り、 安心安全設計だ。 |
Raabe |
ラーベ
さあほら、まごついてても時間の無駄だ。 早速やってみるぞ。 |
Raabe |
ラーベ
自分の力を信じて、思い切りぶつかってこい! |
Raabe |
ラーベ
事象へのシステム干渉を確認。エネミー確認。 よし、レイ、行け! |
Raabe |
…………。 …………………………………………。 |
|
1: ひい、ひい、なんだこれ、きつい |
1: |
ラーベ
どうしたどうした、息があがってるぞー。 まだ3体目じゃないか。実戦はこんなもんじゃないぞー。 |
Raabe |
ラーベ
弱音を吐いてる場合じゃないぞー。 どんどん観測して、どんどん具現化しろ。まだまだ終わらんぞ。 |
Raabe |
ラーベ
今度は数を増やしてみた。はいもうひと頑張り。 これを倒したらちょっと休憩入れてやる。 |
Raabe |
1: スパルタだ…… |
1: |
ラーベ
ぼさっとするなー! がんばれー! |
Raabe |
ラーベ
その意気だ、いけいけー! がんばれー! |
Raabe |
ラーベ
よーし、一旦休憩。 |
Raabe |
ラーベ
いやー、システムの補佐があったとはいえ まさか本当に一発で具現化できるとは思わなかったぞ。 |
Raabe |
ラーベ
……なんだ、その目は。 半信半疑だったのも仕方ないだろう。 |
Raabe |
ラーベ
本来は大掛かりな装置と特殊な魔道書がなければ 一体すら具現化できないくらいの高度な技なんだぞ。 |
Raabe |
ラーベ
とはいえ……やはり |
Raabe |
ラーベ
出力と動きはお前の力でなんとかなるが、 安定性ばかりはなぁ。一朝一夕に制御できるもんでもないし。 |
Raabe |
ラーベ
繰り返し練習して、レイに慣れてもらうしか ないんだけど……いけそうか? |
Raabe |
ラーベ
……今ちょっとそれどころじゃないか。 いいぞ、座ってて。ほら、水だ。 |
Raabe |
ラケル
だらしないのね。 |
Raquel |
ラーベ
なにを言ってる。レイ以外の観測者ならとっくに 自我を失ってもおかしくないエネルギー消費なんだぞ。 |
Raabe |
1: ' |
1: |
ラケル
あら、本当。今にも死にそうな顔をしているわ。 |
Raquel |
ラケル
力を使いすぎて、体が透明になってきているけれど、 本当に大丈夫なの? |
Raquel |
ラケル
……ふふ。冗談よ。 |
Raquel |
ラーベ
バイタル的にはまだまだいける。 だいじょーぶ。 |
Raabe |
ラーベ
……ところでおいおい。 なんでお前がここにいるんだ、ラケル=アルカード。 |
Raabe |
ラケル
なんだか変わった遊びをしているようだから、 覗きに来たのよ。 |
Raquel |
ラケル
システムで小さな世界を作るだなんて、面白いもの。 神をも恐れぬ行為とはこのことね。さすが人間のすることだわ。 |
Raquel |
ラケル
でも……この子については、少しばかり 荷を課しすぎなのではなくて? |
Raquel |
ラーベ
これはレイの身を守るために必要な訓練だ。 そちらに不都合はないだろう。 |
Raabe |
ラーベ
というか、面白いからって勝手に |
Raabe |
ラーベ
魂が境界に繋がってるんだったな。 |
Raabe |
ラーベ
だからある程度なら、自主的に |
Raabe |
ラーベ
最強の吸血鬼、クラヴィス=アルカードの娘。 |
Raabe |
ラーベ
特異な存在はどこまでも特異だ。こっちの都合や理論なんて お構いなしなんだから、まったく……。 |
Raabe |
ラケル
なにか不都合があって? |
Raquel |
ラーベ
こっちの方はありまくりだ。 勝手に介入されるってことは、そこに穴ができるってことだ。 |
Raabe |
ラーベ
なにかシステムに異常があったら、お前のせいだぞ……。 |
Raabe |
ラーベ
……って、ん? さっそく異常事態だな。 なんだこの反応は? |
Raabe |
ラーベ
おい、レイ、立て。 イレギュラー発生だ。未確認反応がこちらに接近中……。 |
Raabe |
???
…………。 |
??? |
ラーベ
な……。 |
Raabe |
1: お前は……! |
1: |
???
…………。 |
??? |
???
…………? |
??? |
ラーベ
な、な、なんでここにいる……!? |
Raabe |
ラケル
この子が……あなたたちが前にファントムフィールドで 遭遇したという子なの? |
Raquel |
ラケル
だけどそれにしては、ずいぶん存在が不安定ね。 |
Raquel |
ラーベ
あ、ああ……そうだな。どうにも様子が変だ。 |
Raabe |
ラーベ
前は遭遇したとたんに攻撃してくるような、 敵意バリバリ戦闘意欲モリモリって感じだったんだが……。 |
Raabe |
???
…………君たち…… 僕の、知り合い? |
??? |
ラケル
そのようよ。 あなたは……どなた? |
Raquel |
アナザーダーク=マイ
僕は……マイ=ハヅキ。 ハヅキ家当主、ホウイチロウ=ハヅキの子……。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
の、はずだ……。 よく、思い出せないんだけど。 |
Another Dark Mai |
ラーベ
なんだ……どういうことだ? |
Raabe |
ラーベ
以前は |
Raabe |
ラーベ
これでは、ファントムフィールドに紛れ込んだ 異物のようじゃないか……。 |
Raabe |
ラケル
あなたがそう思うのなら、そうなのではないの?
今の彼女は |
Raquel |
ラケル
どうして異物として紛れ込んだのかは、わからないけれど。 |
Raquel |
ラーベ
……どこかの誰かが、 場に穴を開けたせいじゃないといいんだけどな。 |
Raabe |
ラーベ
お、おい、タカマガハラ! |
Raabe |
ラーベ
エネミーデータの要求はしていないぞ! こっちは今取り込み中だ、引っ込めろ! |
Raabe |
ラーベ
……マジか。こいつはまずい。 |
Raabe |
ラケル
ラーベ。敵が増えたわ。 |
Raquel |
ラーベ
わかっとるわ! |
Raabe |
ラーベ
レイ、戦えるか? タカマガハラシステムとの連絡がとれなくなった! |
Raabe |
ラーベ
エネミーデータを消去できない、なんとか対処してくれ! |
Raabe |
ラケル
それは無理なのではないかしら。 満足に動ける状態とはとても思えないわ。 |
Raquel |
アナザーダーク=マイ
……なんだ。あれは敵なの。 倒せばいいのかな? |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
いいよ。邪魔だし……僕がやる。 |
Another Dark Mai |
ラーベ
なんだって? |
Raabe |
アナザーダーク=マイ
こんな雑魚、僕の敵じゃない。 まあ、見てなよ。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
終わったよ。 |
Another Dark Mai |
ラーベ
あっさり、だな。強さは相変わらず……いや、 前に見たときよりは、いくらか力が弱いか。 |
Raabe |
ラーベ
だがそれは観測状態の違いによるものだろうな。 これが万全の状態であったなら、どれだけ脅威になるか知れない。 |
Raabe |
アナザーダーク=マイ
もう敵はいないのか。なんだ。 |
Another Dark Mai |
ラケル
すごいわ。強いのね、あなた。 |
Raquel |
アナザーダーク=マイ
なに? 君……吸血鬼か? |
Another Dark Mai |
ラケル
そうよ。 |
Raquel |
アナザーダーク=マイ
……ふん。でも弱い吸血鬼だ。 どうでもいいか。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
それより、君。名前は? ……へえ、レイか。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
面白いね、君。 特にその……眼。 |
Another Dark Mai |
1: そんなに見つめられると照れる…… |
1: |
1: そんなに見つめられると照れる…… |
1: |
アナザーダーク=マイ
君って……。 |
Another Dark Mai |
ラーベ
<size=130%>まずい! 離れろ!!</size> |
Raabe |
ラーベ
油断も隙もないな。 今、レイになにをしようとしていた!? |
Raabe |
ラーベ
……ん? |
Raabe |
アナザーダーク=マイ
…………。 |
Another Dark Mai |
ラーベ
へ!? |
Raabe |
ラケル
……倒れたわ。 |
Raquel |
……ぐ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。 |
|
ラケル
今、すごい音がしたわ。 この子のお腹から。なんの音? |
Raquel |
ラーベ
……腹の音、だな。 なに、もしかして……腹減りで行き倒れた……の? |
Raabe |
1節 いつかの学び舎/
Summary | |
---|---|
食事を済ませ、体力を取り戻したマイは協力
の要請をあっさりと承諾。現状の調査を始め る一行の前にマコトが現れ、戦闘となる。 |
アナザーダーク=マイ
はぐはぐはぐはぐっ…… あむあむあむあむっ……。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
がつがつがつがつっ…… んがっ……あぐ、あぐっ……ごくん……! |
Another Dark Mai |
ラケル
呆れた。 まるで底なし沼ね。 |
Raquel |
ラケル
そんなにお腹が空くまで、どうして 放っておいたのかしら? |
Raquel |
アナザーダーク=マイ
ふーっ、美味しかった。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
実は僕にも全然わからないんだ。 なんでこんなにお腹が空いているのか。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
でも、レイのおかげで助かったよ。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
君って本当に面白いね。 なんでも具現化できちゃうんだ? |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
〆にもう一品おねがいできるかな。 そうだな……栄養たっぷりのメラス・ゾーモスとか。 |
Another Dark Mai |
1: メラ……なに? |
1: |
ラケル
メラス・ゾーモス。 古代に食べられたという、戦士のためのスープね。 |
Raquel |
ラケル
動物の肉と血液、それに塩、コショウ、酢などを混ぜ合わせて 作られた、別名ブラックスープと呼ばれる食べ物よ。 |
Raquel |
ラケル
作ってあげたらいいわ。 あなたの、具現化のいい練習になるわよ。 |
Raquel |
アナザーダーク=マイ
頼むよ。君の出す料理がおいしすぎて、食欲が止まらないんだ。 まるで生まれて初めて味のあるものを食べたような感覚だよ。 |
Another Dark Mai |
ラーベ
クソッ! |
Raabe |
ラーベ
……やっぱり駄目か。 |
Raabe |
ラーベ
おいレイ、そのへんにしておきなさい。 あんまりむやみに力を提供するんじゃない。 |
Raabe |
ラーベ
……でもそれ、いいな。 今度フガクでも色々と作らせてみるか。 |
Raabe |
1: なにかわかったの? |
1: |
ラーベ
ああ。事態は思っていたより悪そうだ。 |
Raabe |
ラーベ
気のせいだ。 ……それよりも、悪い報せがある。 |
Raabe |
ラーベ
フガクとの連絡が、完全に断たれている。 |
Raabe |
ラーベ
レイの認識とシステムの認識の間に 余計なものが挟まって、正常に連携できなくなっている状態だ。 |
Raabe |
ラーベ
現状では、システムからこちらへの介入はできない。 サルベージも緊急脱出も不可能だ。 |
Raabe |
ラーベ
つまり連携が回復できない限り、 ファントムフィールドからは抜け出せない。 |
Raabe |
ラケル
それじゃあ、帰れないわね。 大変だわ。 |
Raquel |
ラーベ
そう、大変なんだよ、見ての通り! |
Raabe |
1: 僕が連携を保てなかったから? |
1: |
ラーベ
連携を保てなかったのは事実だが、それを補佐するのが 私とシステムの役目だった。レイのせいじゃない。 |
Raabe |
ラーベ
ファントムフィールドを構築したうえで具現化までやったんだ。 レイは十分うまくやれてる、心配するな。 |
Raabe |
1: 私が連携を保てなかったから? |
1: |
ラーベ
連携を保てなかったのは事実だが、それを補佐するのが 私とシステムの役目だった。レイのせいじゃない。 |
Raabe |
ラーベ
ファントムフィールドを構築したうえで具現化までやったんだ。 レイは十分うまくやれてる、心配するな。 |
Raabe |
ラーベ
今回のことは、イレギュラーを想定しきれなかった私の責任だ。 |
Raabe |
ラーベ
タカマガハラの制御下だし、そうそうおかしなことは 発生しないと思ってたんだが……甘かった。 |
Raabe |
ラケル
潔く非を認めるなんて、案外素直なのね。 |
Raquel |
ラーベ
事実を述べているまでだ。 それよりラケル。お前、他人事みたいな顔してるけどな。 |
Raabe |
ラーベ
そもそも誰かさんが勝手にここに来たせいで、 異物が混入する隙間が生じた可能性が高いんだからな。 |
Raabe |
ラーベ
その誰かさんこそ反省すべきなんだけど、 わかってる? |
Raabe |
ラケル
言いがかりだわ。そんなの可能性の話でしょう。 憶測で私に責任を問おうだなんて、無礼よ。 |
Raquel |
ラケル
上に立つ者としても、恥ずべき行為だわ。 反省して。 |
Raquel |
ラーベ
なにおう……!? そりゃ確かに憶測だけれども! それしか考えられないだろうが! |
Raabe |
ラケル
証拠でもあるの? 私のせいだっていう。 |
Raquel |
ラーベ
ぐっ、ぬぬ……物的証拠をあげろと、 目茶苦茶物的証拠から縁遠そうな吸血鬼に言われるとは……。 |
Raabe |
ラーベ
というか、なんか自分でもわかってる風じゃないか? |
Raabe |
ラケル
なんのことかしら。 ちっともさっぱりわからないわ。 |
Raquel |
ラーベ
誤魔化すの下手か。 |
Raabe |
ラケル
私はただ、あなたたちが面白そうなことをしているから 様子を見に来ただけよ。 |
Raquel |
ラケル
つまりあなたたちがおかしなことを始めなければ 私はここに来ていなかったとも言えるわ。 |
Raquel |
ラーベ
このうえ責任転嫁まで始める気か! |
Raabe |
アナザーダーク=マイ
ああ、美味しい! 血の生臭さなんかまったく感じないよ! レイ、このスープもう一杯!! |
Another Dark Mai |
ラーベ
そこ! ナチュラルにおかわりを頼むんじゃない! というかいつの間にその戦士のスープを具現化したんだ。 |
Raabe |
ラーベ
レイ、 あんま力を無駄遣いするんじゃないよ! |
Raabe |
ラーベ
まったく、皆のんきにしてるけど。 事態はけっこう深刻なんだぞ……。 |
Raabe |
ラーベ
……そもそもマイ、そちらの目的はなんなんだ? |
Raabe |
ラーベ
食事が落ち着いたのなら、そろそろ私の質問にも 答えてもらわないと困る。 |
Raabe |
アナザーダーク=マイ
駄目だよ、機械君。 初対面の人にそんな態度を取るのは。 |
Another Dark Mai |
ラーベ
いやいや、初対面じゃないんだって。 前に……! |
Raabe |
ラーベ
いや、認識の混濁している異物に そんなこと言っても意味ないか……。 |
Raabe |
ラーベ
ならばお前が記憶を失っているという前提で話をしよう。 |
Raabe |
ラーベ
私はアストロラーベ。ラーベでいい。 そこにいるレイのお目付け役といったところだ。 |
Raabe |
ラーベ
我々は現在、ちょっと困っている。 事態を把握する必要がある。そこで、質問に答えてくれ。 |
Raabe |
ラーベ
マイは、ここに来た理由を覚えているか? |
Raabe |
アナザーダーク=マイ
いや、全然わからない。覚えてないんだ。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
気が付いたら君たちのすぐ近くにいた。 |
Another Dark Mai |
ラーベ
そうか……ふーむ……。 この『わからない』が真実だと仮定してだ。 |
Raabe |
ラーベ
なぜマイが、このファントムフィールドに現れたのか…… きっかけと原因と経緯が気になるところだな。 |
Raabe |
ラーベ
その考察をするためにも、 今はとにかくフガクとのリンクを回復させないといけない。 |
Raabe |
ラーベ
このファントムフィールドは、 システムという観測の一端を失った状態にある。 |
Raabe |
ラーベ
非常に不安定だ。 下手をすると、我々もろとも消滅する危険性だってある。 |
Raabe |
ラケル
それは困ったわね。 |
Raquel |
ラーベ
ラケルが言うと全然困った感じに聞こえないんだよなー。 言っておくが、最悪皆まとめて巻き込まれるんだからな。 |
Raabe |
ラーベ
まあ……とにかくそういうわけで。 現状、どれだけの猶予が残されているかもわからない。 |
Raabe |
ラーベ
効率的に安全を確保するためにも、ここにいる全員で 協力して脱出方法を探したいんだが。 |
Raabe |
アナザーダーク=マイ
……ああ。僕に手伝えってこと? うん、いいよ。 |
Another Dark Mai |
ラーベ
軽いな! |
Raabe |
アナザーダーク=マイ
だって、ほかに手はないんだろ? だったら、ほぼ強制だと思うけど。 |
Another Dark Mai |
ラーベ
物分かりがよくて、非常に助かる。 裏がないことを祈ってるよ。 |
Raabe |
ラーベ
ラケルも、それでいいな? |
Raabe |
ラケル
ええ、いいわ。 ここがどんな場所なのか、興味もあるもの。 |
Raquel |
ラーベ
よし。なら、次は行動だ。 まずはフィールドの現状を把握しよう。 |
Raabe |
ラーベ
レイの認識にどれだけ影響が出ているのか 確認したい。 |
Raabe |
ラーベ
なんだ、これは……!! |
Raabe |
ラケル
どうしたの? 早速影響というのが見つかったのかしら。 |
Raquel |
ラーベ
ああ、見つかったとも! どこだここは!? 私はこんな場所、設定してないぞ! |
Raabe |
ラーベ
フィールドへのなんらかの介入を、無意識に具現化したのか? ということは……まさか。 |
Raabe |
アナザーダーク=マイ
この場所……知ってる。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
そうだ、ここは…… 僕が通っていた『士官学校』だ。 |
Another Dark Mai |
ラーベ
学校……? |
Raabe |
ラケル
士官学校って、 あなた軍人なの? |
Raquel |
アナザーダーク=マイ
……わからない。 だけどこの場所は……知ってる。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
そうだ。ここはトリフネ……。 みんなと過ごした学校の、廊下だ。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
僕はここで、仲間や、先輩たちと…… 授業を受けたり、術式訓練を……うっ……。 |
Another Dark Mai |
ラーベ
……やっぱり、そうか。 |
Raabe |
1: 原因はマイ? |
1: |
ラーベ
端的に言えばそうだ。 それとレイも。 |
Raabe |
ラーベ
ああ、このフィールドが『こう』なった理由がな。 |
Raabe |
ラーベ
経緯は不明だが、マイはレイの ファントムフィールドに異物として取り込まれた。 |
Raabe |
ラーベ
そのマイを、観測者であるレイが 強く認識したことで、 |
Raabe |
ラーベ
マイが持っていた願望や欲求、そういったものの情報が 世界を構成する情報に紛れ込んだんだ。 |
Raabe |
ラーベ
結果、ファントムフィールドは想定とは違う形に再構成され、 タカマガハラシステムとのリンクも途切れてしまった。 |
Raabe |
アナザーダーク=マイ
君たちが帰れなくなったのは、 僕のせいだって言うの? |
Another Dark Mai |
ラーベ
原因がそこにあるというだけだ。 責めてるわけじゃない。 |
Raabe |
ラーベ
……だが、そういうことなら仕組み自体はシンプルだ。 |
Raabe |
ラーベ
フィールドを構成する情報が入り乱れているだけで、 観測自体はレイが行えているようだしな。 |
Raabe |
ラーベ
基本構造に大きな変化はなさそうだ。 |
Raabe |
アナザーダーク=マイ
ややこしい話はいいよ。 脱出できそうなの? できないの? |
Another Dark Mai |
ラーベ
方法にあてはある。それは……。 |
Raabe |
???
あれ? もしかして、マイ? |
??? |
ラーベ
……マコト=ナナヤか? 待て待て、おかしな話になってきたぞ。 なんでマコトまでこのフィールドに……。 |
Raabe |
マコト
いや〜、学校に誰もいないから焦っちゃったよ。 でもよかった、マイと会えて。 |
Makoto |
マコト
他に誰か見た? ツバキものえるんも いつの間にかいなくなっちゃっててさ……。 |
Makoto |
ラーベ
ち、ちょっと待ってくれ。 まず状況の整理をさせてくれ……。 |
Raabe |
マコト
うわっ!? |
Makoto |
マコト
ちょっ……マイ、いきなりなにするのさ!? |
Makoto |
アナザーダーク=マイ
うるさいな…… 僕の名を気安く呼ぶなよ、獣人。 |
Another Dark Mai |
マコト
な……マイ、どうしちゃったの!? あたしのこと、忘れちゃったの? |
Makoto |
マコト
もしかして…… そこの人たちに洗脳されたとか!? |
Makoto |
ラーベ
……は? |
Raabe |
ラーベ
いやいや、誤解しているようだが私たちとマイは……。 |
Raabe |
マコト
そうでなきゃ、マイがあたしのことを わからなくなるなんて信じられないよ……。 |
Makoto |
マコト
どこの誰だか知らないけど、あたしの親友によくも! 絶対に許さない! |
Makoto |
マコト
このあたしの拳で、あんたたちをぶっ飛ばして マイも正気に戻してやるんだから! |
Makoto |
ラーベ
うわっ!? こら、知らない人にいきなり殴りかかるんじゃない! |
Raabe |
ラケル
交渉できる雰囲気ではなさそうね。 |
Raquel |
ラケル
それで、どうするの? |
Raquel |
ラーベ
くそ、仕方ない。 レイ、マイと一緒にマコトを抑えてくれ! |
Raabe |
ラーベ
このままじゃ落ち着いて弁解もできない! |
Raabe |
アナザーダーク=マイ
一緒に? ふん。手助けなんて必要ないよ。 君の戦いぶりに興味はあるけどね。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
かかってくる相手は、誰であれ倒す。 僕ひとりの手で。 |
Another Dark Mai |
マコト
マイがそんなこと、言うはずない……。 やっぱりなにか、おかしいんだ。 |
Makoto |
マコト
待っててね、マイ。 今、あたしがいつものマイに戻してあげる! |
Makoto |
2節 まやかしの友/
Summary | |
---|---|
マコトの正体は、マイの意識が反映された訓
練用のエネミーだった。脱出のため窯を探す 一行の前に、今度はツバキが立ちふさがる。 |
アナザーダーク=マイ
あれ? 消えちゃった……。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
あの獣人、なんだったんだ? |
Another Dark Mai |
ラケル
実体ではなく、人為的に生み出された幻影だったようね。 |
Raquel |
ラケル
誰かさんには心当たりがあるんじゃないかしら? |
Raquel |
1: 幻影? なんでそんなものが? |
1: |
ラーベ
まあ、幻影と言えばそうだが。 実体がないというだけで、根本はもっとシステム的なものだ。 |
Raabe |
ラーベ
そうだな。戦闘データを解析した。 憶測ではなく、これははっきり断言できる。 |
Raabe |
ラーベ
簡単に言うとだな……さっきのマコトは タカマガハラシステムの生み出した訓練用エネミーだ。 |
Raabe |
ラーベ
つまりレイ、お前が訓練で戦っていたものと 同一の存在……ということになる。 |
Raabe |
ラーベ
じゃあなぜ今回はマコトの姿をしていたかというとだ……。 原因はやはり、世界に介入したマイの意識にある。 |
Raabe |
ラーベ
本来ならレイ用に作られていた 訓練用フィールドとその仕組みが、 |
Raabe |
ラーベ
介入してきたマイの意識の影響を受けて、 マイ用に作り変えられてしまったわけだ。 |
Raabe |
アナザーダーク=マイ
へぇ……面白いな。 じゃあここは、僕の訓練用に作られた世界でもあるってことか。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
それで? だったら次はどうすればいい? 出てくる敵を全部殺せば、ここから出られるのかな。 |
Another Dark Mai |
ラーベ
全部倒して、はい脱出〜なんてことなら楽だけど。 |
Raabe |
ラーベ
最初にそう設定したわけでもないし、 どれだけ倒しても脱出にはつながらないだろうな。 |
Raabe |
アナザーダーク=マイ
じゃあどうするんだ。 |
Another Dark Mai |
ラーベ
システムで生み出されたといっても、 ここがファントムフィールドであることには変わりない。 |
Raabe |
ラーベ
そしてフィールドである以上、世界を維持するためには窯が要る。 脱出のために我々がこれから目指すのは、そこだ。 |
Raabe |
ラーベ
窯、つまりこの世界の最深部に向かう。 |
Raabe |
アナザーダーク=マイ
窯? そこに行けばなにがあるの? |
Another Dark Mai |
ラーベ
窯は世界の根幹であり、境界と繋がる扉だ。 つまり、窯まで行けばフガクとの通信が可能になる……。 |
Raabe |
ラーベ
……かもしれない。 |
Raabe |
ラケル
機械なのに具体性に欠けるのね。 |
Raquel |
ラーベ
そりゃね。まずこの状況自体がイレギュラーだ。 もはや確率を割り出せる状態にもない。 |
Raabe |
ラーベ
シエルがいない状況では、窯を探すことだって大変なんだ。 それに、この先どれだけエネミーが出てくるかも不明。 |
Raabe |
ラーベ
いつフィールドが消滅するかもわからない。 そんな状態で自信満々に明言できるか。 |
Raabe |
ラーベ
可能性はあるが、割と細い道になると思うぞ。 |
Raabe |
ラケル
そうなの。 でも、窯の位置ならわかるわよ。 |
Raquel |
ラーベ
……へ? |
Raabe |
ラケル
シエル、と言ったかしら。彼女ほどではないけれど おおよその位置なら私にもわかるわ。 |
Raquel |
ラケル
要は境界の気配を辿っていけばいいのでしょう。 望むなら、案内してあげてもいいけれど。 |
Raquel |
ラーベ
驚いたな……いや。さすがと言うべきか。 アルカードの血族は伊達じゃないな。 |
Raabe |
ラーベ
それならば話は別だ。最短距離で窯を目指せるのならば、 脱出の可能性は格段に上がるからな。 |
Raabe |
アナザーダーク=マイ
アルカード……? へぇ、君、アルカードなんだ。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
ククク、まさか最強の吸血鬼一族に会えるなんて光栄だなぁ。 さっきは弱い吸血鬼だなんて言ってごめんね。謝るよ。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
君なら僕を楽しませてくれるかも。 ねぇ……今から僕と殺し合いでもどう? |
Another Dark Mai |
ラーベ
ストップ、ストーップ! |
Raabe |
ラーベ
頼むから、それだけはやめてくれ! いまラケルにいなくなられたらマジでシャレにならん! |
Raabe |
ラーベ
せっかく生まれた脱出の可能性を、 自分から捨てようとするのはやめなさい!! |
Raabe |
ラーベ
このまま脱出できなかったら、 みんなまとめて消えるんだぞ!? |
Raabe |
ラケル
……だ、そうよ。 |
Raquel |
アナザーダーク=マイ
……それもそうか。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
そうだね、今だけはやめておこう。 でも、いつか必ず……ね。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
あのアルカードとやりあえるチャンスなんて、 そう何度もあることじゃないだろうし。 |
Another Dark Mai |
ラーベ
……まったく、戦闘狂の問題児め。 そんなに吸血鬼に興味があるのか。 |
Raabe |
アナザーダーク=マイ
吸血鬼に、じゃない。 強いやつに興味があるんだ。 |
Another Dark Mai |
ラケル
言っておくけど、ラーベ。 あなたもたいして変わらないわよ。 |
Raquel |
ラーベ
失礼な! 私はただ平和的、科学的に解析したいだけだ! |
Raabe |
ラーベ
まあ、可能なら解剖もしたいが。 |
Raabe |
1: 絶対ダメですからね |
1: |
ラーベ
え? あ、ははは、冗談に決まっているだろう。 うん、冗談だ。 |
Raabe |
ラーベ
なんだその目は。本当だぞ。 ちょっとだけしか思ってないぞ。 |
Raabe |
ラーベ
そう、その通り。 さすがレイ、よくわかってる。 |
Raabe |
ラーベ
これはあくまで知的好奇心だ。 もちろん、本気でなんて、ちょっとしか思ってないぞ。 |
Raabe |
ラケル
…………。 |
Raquel |
ラーベ
さて、冗談はさておきだ。 |
Raabe |
ラーベ
そろそろ窯へ向かうとしよう。 話している間にタイムリミットなんて笑えない。 |
Raabe |
ラーベ
……ん? |
Raabe |
ツバキ
……マイ。 |
Tsubaki |
ラーベ
ツバキ=ヤヨイ。次のエネミーは彼女の姿か。 そうか、ツバキも士官学校にいたんだな。 |
Raabe |
ラーベ
そしてマイとも面識があった……と。 |
Raabe |
アナザーダーク=マイ
……さあ。 僕にはまったくそんな記憶はないけど。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
だけど、その名前は知っているよ。 同じ十二宗家だからね。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
ツバキ=ヤヨイ……正義感が強く、 誰に対しても平等に接する……とんだ偽善者だ。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
僕のもっとも嫌いなタイプの人間だよ。 |
Another Dark Mai |
ツバキ
……本当に、私たちのことがわからないようね。 |
Tsubaki |
ツバキ
マイ。 どうしてマコトを倒したの? |
Tsubaki |
ツバキ
私たちは苦楽を共にした仲間であり、友人だわ。 あなたにマコトを倒す理由はなかったはずよ。 |
Tsubaki |
ツバキ
返答によっては、たとえあなたでも容赦はしません。 さあ、答えなさい。 |
Tsubaki |
アナザーダーク=マイ
しつこいなぁ……僕は『お前たち』なんか知らないし、 僕に友なんていない。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
僕があのうるさい獣人をどうしようが お前にはなんの関係もないことだ。 |
Another Dark Mai |
ツバキ
……そう。 |
Tsubaki |
ツバキ
変わってしまったのね、マイ。 ならば私は、あなたを断罪しなければならないわ。 |
Tsubaki |
ラーベ
なぁ、なんかこっちの方が悪役みたいじゃないか? 私の気のせいならいいんだけど。 |
Raabe |
ラケル
気のせいではないでしょうね。 |
Raquel |
ラケル
どの角度からどう見ても、100パーセント悪役だわ。 友達を倒されて憤る少女と、それを挑発する悪い人ね。 |
Raquel |
ラーベ
だよなぁ。けどあのツバキが訓練用エネミーである以上、 倒す以外に退ける方法はないんだよな……。 |
Raabe |
ツバキ
マイに力を貸しているのは、あなたたちですね。 |
Tsubaki |
ツバキ
何者かは知りませんが、私の友人に酷いことをしたあなた方を 到底許すことはできません! |
Tsubaki |
1: なんだ、この感覚…… |
1: |
アナザーダーク=マイ
レイ、君は下がっていた方が身のためだよ。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
あの装備は『封印兵装・十六夜』。 君にとっては天敵だから。 |
Another Dark Mai |
ラーベ
十六夜……『観測者殺し』か!? |
Raabe |
ラケル
タカマガハラシステムが構築したエネミーデータといっても、 あの気配はほとんど本物ね。 |
Raquel |
ラケル
この場合は、レイ…… 具現化したあなたを褒めるべきなのかしら? |
Raquel |
ラケル
だけど本当にあれで攻撃されたら、 あなたは消えてしまうかもしれないわよ。気を付けなさい。 |
Raquel |
ラーベ
おいおい、さすがにまずくないかこれ!? |
Raabe |
ツバキ
さあ、これ以上の問答は不要です。 あなたたちのその罪、命をもって償いなさい! |
Tsubaki |
ラーベ
くっ、レイ! なんとか自衛してくれ……! |
Raabe |
アナザーダーク=マイ
……くだらない。 あーだこーだ言っても、所詮まやかしか。 |
Another Dark Mai |
ラケル
まやかし……ね。 |
Raquel |
ラケル
これがただのまやかしなら、リスクに怯える必要はないはず。 レイの観測力には、驚かされるわ。 |
Raquel |
ラケル
人格や兵装どころか、思念まで発生させるほど、 マイ=ハヅキの心象風景を具現化するなんて……。 |
Raquel |
ラケル
ラーベ。あなた、この子を使って何をするつもり? |
Raquel |
ラーベ
…………。 |
Raabe |
ラケル
まあ、別に構わないけれど。 |
Raquel |
ラケル
その答えには、 今も近づいている途中なのでしょうから。 |
Raquel |
1: それ、なんの話? |
1: |
ラーベ
今は考えなくていい。 それより、体力はなるべく温存しておくんだぞ。 |
Raabe |
ラーベ
この先へ進めばそのうちわかる。 それより、体力の方はまだ問題ないな? |
Raabe |
ラーベ
我々にとって最優先は、窯へと向かうことだ。 悪いがもうしばらく協力してくれ。 |
Raabe |
アナザーダーク=マイ
…………。 |
Another Dark Mai |
第3節 その槍が払うもの/
Summary | |
---|---|
窯を目指し、地中深く境界の気配を辿る。そ
の途上、マイを親友と呼ぶカジュンとアカネ が現れるが、マイは容赦なく攻撃する。 |
|
「マイをお願い」という言葉を残し、カジュ
ンたちは消えてしまった。敵を失い興味をな くしたマイと共に、窯の探索へと戻る。 |
ラーベ
今度は開けた場所に出てきたな。 周囲の生体反応は……。 |
Raabe |
ラーベ
うん、問題なし。 今のところ、エネミーもいないようだ。 |
Raabe |
ラーベ
ラケル、窯の気配はどうだ? まだ感じ取れているか? |
Raabe |
ラケル
ええ。……だけどラーベ、どういうことなの? |
Raquel |
ラケル
窯の気配……いえ、私が感じているのは 境界の気配だけれど。 |
Raquel |
ラケル
それはこの大きな都市の下、地下深くにあるのよ。 それなのにどうして都市を上がっていくの? |
Raquel |
ラーベ
ここが、階層都市をモデルにした ファントムフィールドだからだ。 |
Raabe |
ラーベ
介入のおかげでエリアの様子はだいぶ変わってしまっているが、 基本構造はそのままのようだからな。 |
Raabe |
ラーベ
階層都市は、建設の構造上、 中心部地下深くに窯を有している。 |
Raabe |
ラーベ
もちろん100パーセントではないだろうが……。 |
Raabe |
ラーベ
ラケルが感じ取っている気配が地下深くからなら、 どうやら間違いなさそうだ。 |
Raabe |
ラケル
だったら下へ向かうべきではないの? |
Raquel |
ラーベ
最上層から、窯のある地下へ一気に降りられる装置が あるはずなんだ。ここが階層都市ならな。 |
Raabe |
ラーベ
それを確認するほうが、 地下から入り込むより早いし安全だ。 |
Raabe |
ラケル
ふうん、そうなの。 |
Raquel |
ラーベ
……で、マイはさっきからなにを食べてるんだ。 |
Raabe |
アナザーダーク=マイ
サンドイッチ。レイに具現化してもらったんだ。 味は……まあまあいけるよ。 |
Another Dark Mai |
ラーベ
こらこら、ポンポン具現化してやるんじゃない。 いくらレイでも、不慣れな観測は体力を……。 |
Raabe |
ラーベ
いや、待てよ……こういう軽い具現化も、持久力を底上げする トレーニングになるか? よし、前言撤回だ。 |
Raabe |
ラーベ
レイ。思う存分具現化していいぞ。 倒れない程度にな。というか絶対に倒れるなよ。 |
Raabe |
ラケル
それにしても、広い場所ね。 ここもあなたの知っている、学校なの? |
Raquel |
アナザーダーク=マイ
たぶんそうだと思う。この景色にも見覚えがあるよ。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
士官学校はそれ自体が階層都市なんだ。 学園都市とも呼ばれていた。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
だからこれくらいの広大なエリアは、いくつもあったよ。 ……はっきり覚えてるわけじゃないけどね。 |
Another Dark Mai |
ラーベ
信じられん……本当にこの学校に通ってたのか。 どんな学校生活を送っていたのか、気になってしょうがない。 |
Raabe |
ラケル
どうして? |
Raquel |
ラーベ
いやだって、そうだろ。 ちょっと変わった子、じゃすまないぞ。 |
Raabe |
ラーベ
それにしても、学校全体が階層都市か。 |
Raabe |
ラーベ
そういう構造の合致も、今回のファントムフィールドに 影響を与えやすくさせていたのかもしれないな。 |
Raabe |
アナザーダーク=マイ
ねえ、レイ。もっとなにか具現化してよ。 ハンバーガーとか……フライドチキンもいいなぁ。 |
Another Dark Mai |
ラーベ
本当に大丈夫か? さっきから食べてばかりじゃないか。 |
Raabe |
アナザーダーク=マイ
そうだね……どうしてだろう。 すごくお腹が空くんだ。食べても食べても、もっと食べたい。 |
Another Dark Mai |
ラーベ
やれやれ……いいかレイ。 餌付けついでだ、マイから目を離すなよ。 |
Raabe |
ラーベ
あいつが勝手に動き回り出したら面倒だ。 放っておくと、とんでもないことを引き起こす気がする。 |
Raabe |
アナザーダーク=マイ
僕がどうしたって? |
Another Dark Mai |
ラーベ
いや、なんでもない。こっちの話だ。 |
Raabe |
アナザーダーク=マイ
ふーん? ま、いいけど。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
それよりも……ふふっ、十二宗家のひとり、 しかも封印兵装持ちを倒せたし、次は誰が敵になるんだろうな。 |
Another Dark Mai |
ラケル
ずいぶんと楽しそうね。 さっき戦った子たちは、あなたの友達なのではないの? |
Raquel |
アナザーダーク=マイ
違うよ。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
彼女たちは僕の知り合いみたいだけど、友達なんかじゃない。 僕に友達はいない。 |
Another Dark Mai |
ラケル
相手は、そうは思っていなかったように見えたけれど。 |
Raquel |
アナザーダーク=マイ
そんなの僕にはどうでもいいことだよ。関係ない。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
重要なのはそんなことじゃなくて、優れた身体能力の獣人や、 封印兵装を持った相手に勝ったってこと。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
それはつまり……僕がそれだけ強いってことになるからね。 |
Another Dark Mai |
1: 友達は大事だと思うよ |
1: |
アナザーダーク=マイ
大事だって? なにを言ってるんだ、君。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
大事なものであるのなら、なおのこと不必要だよ。 そんなものを持っていればいるほど、弱くなる。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
証明したいわけじゃない。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
僕は強くならなくちゃいけないんだ。それだけのことだよ。 だから、弱みになる友達なんてものはいらない。 |
Another Dark Mai |
ラケル
友達がいると、弱くなるの? |
Raquel |
アナザーダーク=マイ
そうだろう。友達って要は、守らなくちゃいけないものだ。 なにかを守るための戦い方じゃ、なにも倒せないじゃないか。 |
Another Dark Mai |
ラケル
でも最初にあなた、レイを守ったわ。 |
Raquel |
アナザーダーク=マイ
守った、だなんて言われるのは心外だよ。 そんなつもりはないんだから。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
僕はただ、現れた敵を倒しただけ。 結果的にレイが助かっただけだよ。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
運が良かったね。あのとき死んでたら、僕たちはもう この世界と一緒に消えてたかもしれないんでしょ? |
Another Dark Mai |
ラケル
そうね。 |
Raquel |
ラケル
…………。 |
Raquel |
ラーベ
気になるのか。 |
Raabe |
ラケル
ええ。 あの子、変な子ね。 |
Raquel |
ラーベ
確かにな。角や尻尾まであるんだ。 普通じゃない。 |
Raabe |
ラケル
角と、尻尾……? |
Raquel |
アナザーダーク=マイ
……そう。僕は強くなりたい。 ならなくちゃいけない。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
誰にも負けないくらい……誰もが認めるくらい。 圧倒的で、絶対的な強さがほしい。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
だから……。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
君たちみたいなのは、邪魔なんだ。 |
Another Dark Mai |
カジュン
マイ……! |
Kajun |
アナザーダーク=マイ
ほら。そうやって僕の名前を呼ぶ。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
友達面ってやつで、僕の弱みになろうとしてくる。 |
Another Dark Mai |
カジュン
マイ。マコトとツバキのことは聞きましたわ。 どうして2人を傷つけたんですの? |
Kajun |
カジュン
それに……ワタクシたちのことが、邪魔だなんて。 どうしてそんなことを言うんですの? |
Kajun |
アナザーダーク=マイ
どうしてって。聞いてたのに、もう一度言われたいの? 君たちが邪魔だからだよ。そして鬱陶しい。 |
Another Dark Mai |
カジュン
そんな……! ワタクシたちは友達ではないですか。 そんなことを言うなんて、マイらしくありません。 |
Kajun |
カジュン
一体どうしてしまったんです? ワタクシたちのことを忘れてしまったんですの!? |
Kajun |
アナザーダーク=マイ
また『友達』か。本当に、しつこいな……。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
僕に友達はいない。 だから君も、僕の友達じゃない。 |
Another Dark Mai |
カジュン
マイ……!? |
Kajun |
アカネ
今のマイちゃんになにを言っても、無駄かもね……。 |
Akane |
アカネ
いつもの彼女じゃない。君を見る目がまるで違う。 本当に……心から、友達じゃないと思ってるみたいだ。 |
Akane |
カジュン
……ええ。ワタクシにも、そう見えます。 でもなぜ? あの優しいマイが、なんでこんなことを! |
Kajun |
ラーベ
優しい? その評価がマイに当てはまるとは 思えないな……。人違いじゃないだろうな? |
Raabe |
カジュン
ワタクシがマイを見間違えるはずがありません! ワタクシにとっては、唯一無二の大事な人なんですから! |
Kajun |
アカネ
まさかとは思うけど、君たち。 マイちゃんになにかしたんじゃないだろうね? |
Akane |
カジュン
マイは誰よりも友達のことを想い、信頼してくれる人。 そのマイがこんなことを言うなんて、あり得ない……。 |
Kajun |
カジュン
外部からなにかしらの干渉を受けているとしか、 思えないですの! |
Kajun |
ラーベ
なるほど。外部からの干渉か……。 |
Raabe |
ラーベ
中々興味深い事態になってきたな。 |
Raabe |
アカネ
マイちゃん。君になにがあったのかは知らないけど、 僕たちは今からだって、同じ道を行けるはずだ。 |
Akane |
アカネ
君のそんな姿は……タロだって悲しむと思うよ。 |
Akane |
アナザーダーク=マイ
…………。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
その人がどんな人なのか、僕は知らないし、 君たちが言う『マイ』がどんな人間なのかも興味ないけど。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
僕のことを好き勝手言われるのは、面白くないな。 これ以上、不愉快なことを言うようなら……ただじゃすまさないよ。 |
Another Dark Mai |
カジュン
マイ、あなた……? |
Kajun |
カジュン
……いいえ。あなたがどうであれ、 ワタクシにとってあなたはかけがえのない親友ですの。 |
Kajun |
カジュン
大事な親友が道を外れようとしているのなら、 手を差し伸べないわけにはいきませんわ。 |
Kajun |
カジュン
いつものマイに戻ってください! |
Kajun |
アナザーダーク=マイ
これがいつもの『僕』だよ。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
その僕は、君のことが要らない。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
戦うよ、レイ。 これも、僕のための訓練用エネミーなんだから。 |
Another Dark Mai |
カジュン
ワタクシ、負けません! アカネ先輩! |
Kajun |
アカネ
うん。僕も……君を止めてみせる! |
Akane |
カジュン
マイ……。 どんな形になっても、忘れないでくださいな……。 |
Kajun |
カジュン
あなたは、ワタクシの親友。 いつだって、どんなことだって、力になります……。 |
Kajun |
カジュン
だから……。 |
Kajun |
アナザーダーク=マイ
……うざいなぁ。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
これまでで一番目障りだ。今すぐ、消えて。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
っ! なんのつもり……レイ。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
そこをどいてよ。とどめが刺せないじゃないか。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
はん。そいつを庇うの? 僕にそいつを殺されたくない? |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
意味のないことを……。 |
Another Dark Mai |
カジュン
あなた……。 |
Kajun |
カジュン
……マイのことを、お願いします。 強くて優しい子なんですの。 |
Kajun |
カジュン
見ていて、あげてください……。 |
Kajun |
アナザーダーク=マイ
……なんだ、消えちゃった。 じゃあもういいや。 |
Another Dark Mai |
ラケル
飛び出すだなんて、無茶をするわね。 |
Raquel |
ラーベ
まったくだ。こっちは一瞬フリーズしたぞ……。 |
Raabe |
ラーベ
無事でなによりだが、勘弁してくれ。 |
Raabe |
アナザーダーク=マイ
ねえ、行かないの? |
Another Dark Mai |
ラケル
……そうね。ここにはもう用はないわ。 進みましょう。 |
Raquel |
第4節 /
Summary | |
---|---|
上層に辿り着いた一行は、窯へと至る入り口
を探す。「仲間」を拒絶し、孤高の強さを説 くマイの前に、無数のファジーが現れる。 |
|
すべてのファジーを撃破。手ごたえが足りな
い、と不満をもつマイがラケルの力に改めて 興味を示し、ラーベは慌てて止めに入る。 |
ラーベ
ふむ……この辺りの地形は、 データとも大体一致しているな。 |
Raabe |
ラーベ
ラケル、窯の気配はどうだ? |
Raabe |
ラケル
大雑把な方向しかわからないけれど…… ほぼ真下から感じるわ。 |
Raquel |
ラケル
だけどずいぶんと深くよ。 こんなに上の層まで来て、本当に地下まで降りられるの? |
Raquel |
ラケル
たしか、そういう装置があるという話だったけれど。 そんなもの、あるようには見えないわ。 |
Raquel |
ラーベ
定型通りなら、最上層の中心部に、 一気に降りられる装置があるはずなんだ。 |
Raabe |
ラーベ
とはいえ、簡単に目につく場所に入り口はないんだろう。 ちょっと探してみるしかないかな。 |
Raabe |
ラケル
お決まりの形があるのなら、 わざわざ案内なんていらなかったかしら。 |
Raquel |
ラーベ
いや、昇降装置があることも、その先に窯があることも、 所詮は憶測でしかない。 |
Raabe |
ラーベ
地下深くに窯があるらしいという情報のもと、 動けてるのは大きい。助力に感謝してるとも。 |
Raabe |
ラケル
どういたしまして。 |
Raquel |
ラケル
なら、私の助力に結果を出すためにも、 さっさと入り口とやらを見つけましょう。 |
Raquel |
ラーベ
さて、こちらも捜索開始だ。 |
Raabe |
ラーベ
……ところで、マイ。 頼むから、あまり無茶をやらかさないでくれ。 |
Raabe |
ラーベ
こっちは決して万全な体制じゃないんだ。 必要なフォローができないこともある。 |
Raabe |
ラーベ
レイも。 |
Raabe |
ラーベ
さっきみたいに、交戦の最中に飛び込んでいくなんてのは もうなしだ。シエルは今回いないんだからな。 |
Raabe |
アナザーダーク=マイ
フォローなんていらないよ。 ていうか、そもそもそんなこと頼んでないんだけど。 |
Another Dark Mai |
ラーベ
あのなぁ。我々は一応、共に行動している協力者の関係だろうが。 最低限、必要な協力はしてくれないかな。 |
Raabe |
アナザーダーク=マイ
してるだろ。戦力になってる。 それに今だって、よくわからない入り口を探してやってる。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
これ以上、なにしてほしいわけ。 お仲間ごっこならそっちだけでやっててよね。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
……はぁ、鬱陶しいな。やっぱり誰かと一緒に 行動だなんて、するんじゃなかった。 |
Another Dark Mai |
1: ひとりは、寂しくない? |
1: |
アナザーダーク=マイ
寂しいだって? 馬鹿馬鹿しい。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
心強い? 守るものなんか邪魔なだけだ。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
孤高こそ、強さの究極の形だよ。 庇うものがあればあるほど、敵を倒すことに集中できなくなる。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
守りたいと思えば、その感情が弱点になる。 そいつが弱ければ、それだけ軟な急所になる。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
そうだな、人質でもとられたところを想像してみなよ。 そいつは君の大事な人だ。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
そんな状態で、全力で戦える? |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
弱いやつは足手まといでしかない。 そんなものに構っていて、強くなんてなれるものか。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
……ああ、弱いと言えば。 君も『弱者』だよね。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
自分の身を、自分の身ひとつで守れない。 細い腕、軟弱な体。特別な訓練も積んでない。君は弱い。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
……でも……君がその眼で見る世界は……。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
っ! どけ、レイ!! |
Another Dark Mai |
ラケル
誰? |
Raquel |
???
あ〜あ。見つかっちゃった。 |
??? |
???
結構勘がいいんだね。 少しは楽しめそうかな。かなかな〜? |
??? |
ラーベ
お前は……いつの間に!? |
Raabe |
ファジー
あと少しでまとめて串刺しにできたのに。 あ〜ざんねん。 |
Fuzzy |
ファジー
でも、よく気づいたね。 さすがはメイファンが目をつけてる素材なだけあるかな〜? |
Fuzzy |
アナザーダーク=マイ
メイファン……だって? |
Another Dark Mai |
ファジー
でもでも。 どうせみんな死ぬんだから無駄なあがきだけどね。 |
Fuzzy |
ラケル
中途半端な存在が、 ずいぶんと分不相応な物言いをするのね。 |
Raquel |
ファジー
え〜? 親のすねかじりのくせに偉そうだなぁ。 |
Fuzzy |
ファジー
アルカードのお嬢様。世間知らずの箱入り娘。 |
Fuzzy |
ファジー
すごいのは君の父親のクラヴィス=アルカードであって、 君じゃないよ。 |
Fuzzy |
ファジー
勘違いしないほうがいいんじゃない? 分不相応なのはどっちかな? |
Fuzzy |
ラケル
なんですって? |
Raquel |
ファジー
君なんか僕の遊び相手にもならないよ。 フフフ……試してみる? |
Fuzzy |
ラケル
無礼ね。そういう振る舞いは気に入らないわ。 しつけが必要かしら。 |
Raquel |
アナザーダーク=マイ
あれは僕の獲物だ。 邪魔をしないでくれるかな。 |
Another Dark Mai |
ファジー
え〜、でも君はメイファンの素材だから……どうしようかな? まぁ、それはそれで面白いかもしれないけど。 |
Fuzzy |
アナザーダーク=マイ
へぇ……人を『モノ』みたいに言ってくれるね。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
面白いかどうか、やってみようか。 息の根を止めても、そうやって笑っていられるかどうかさ。 |
Another Dark Mai |
ファジー
息の根を止める? アハハハ、僕を殺せるつもりなんだ? |
Fuzzy |
ファジー
じゃあ僕と遊ぶ? 遊んじゃう? |
Fuzzy |
ファジー
それもまたいいかもね〜! ねえ? ほら、僕『たち』と遊ぼうよ!! |
Fuzzy |
ラーベ
増えた!? これは……幻影なんかじゃないぞ。 ひとりひとりに実体が存在している! |
Raabe |
アナザーダーク=マイ
ひとりじゃ勝てないから、数を増やすのか。 短絡的で浅い考えだね。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
群れる羊よりも、一匹の狼のほうが強いんだよ。 その体に、たっぷり教えてあげるよ! |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
また消えた。 そういえば、本物じゃなくて訓練用……なんだっけ? |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
結局はまがい物か。 思ってたより、手ごたえがなくてつまらなかったな。 |
Another Dark Mai |
ラーベ
いやいや、かなりの強敵だったと思うんだけど……。 |
Raabe |
ラーベ
まったく。こいつの戦闘意欲というか、闘志というか。 そういうものには呆れるな……。 |
Raabe |
ラケル
それについては同感だわ。 頭の中に戦うことしかないみたい。 |
Raquel |
アナザーダーク=マイ
ああ、そうだ……。ハーフヴァンパイアは つまらなかったけど、そっちはどうだろう。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
本物の吸血鬼。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
さっき聞いてびっくりしたよ。 クラヴィス=アルカードの娘なんだ? |
Another Dark Mai |
ラケル
自分のこともろくにわかっていないくせに、 お父様のことを知っているの? |
Raquel |
アナザーダーク=マイ
知ってるよ。どこで知ったんだっけな……。 家の本だったと思うけど。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
最強の吸血鬼なんでしょ。 なによりも強い、伝説上の化け物だ。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
君を倒せば、クラヴィス=アルカードとも戦えるかな。 |
Another Dark Mai |
ラケル
本当に呆れるわ。 お父様と戦って、勝てるとでも思っているの? |
Raquel |
アナザーダーク=マイ
勝つんだよ。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
それくらい僕は、強くならなくちゃいけない……。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
世界にふたりといない、唯一無二の存在。幻想生物。 誰もそいつには及ばない。誰もそいつには並べない。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
究極の『ひとり』の形だよね。 存在そのものが孤高なんだから。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
そいつを倒すことができれば……僕は……。 |
Another Dark Mai |
ラケル
あなたは勘違いをしているわ。 |
Raquel |
アナザーダーク=マイ
勘違いだって? |
Another Dark Mai |
ラケル
お父様はあなたがしようとしているように、 誰も寄せ付けず誰も慈しまない。 |
Raquel |
ラケル
だけど孤高だから強いのではないわ。 強すぎるから……そうならざるをえなかっただけよ。 |
Raquel |
アナザーダーク=マイ
……君、父親が怖いんだね。 |
Another Dark Mai |
ラケル
……っ。 |
Raquel |
アナザーダーク=マイ
僕もそうだ。だけどそれは君みたいな、 怯えた仔兎のような気持ちじゃない。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
父親は強くて偉大なものだ。畏れるべきものだ。 君はそれを知らないんだね。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
僕、君になら勝てるだろうな。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
君は弱い。クラヴィスの娘なんて言われてるけど、 その座にふさわしくないほどに。 |
Another Dark Mai |
ラケル
なんですって……? |
Raquel |
ラーベ
はいはいはいはい、ストーーーーーーップ!! |
Raabe |
ラーベ
最強論も父親論も、そこまでだ。 今は議論の時間でも力比べの時間でもない。 |
Raabe |
ラーベ
目的を忘れるな。私たちは今、 このファントムフィールドからの脱出を目指している。 |
Raabe |
ラーベ
順番を考えろ。まったくもう。 |
Raabe |
ラケル
……そうだったわ。私としたことが。 |
Raquel |
アナザーダーク=マイ
なんだよ、邪魔する気? |
Another Dark Mai |
ラーベ
あのな。たとえここでラケル=アルカードを倒したところで、 クラヴィス=アルカードは現れないぞ。 |
Raabe |
ラーベ
この世界を構築しているのはお前の情報と、 レイの観測力だ。 |
Raabe |
ラーベ
そのどっちも、現状で奴を詳細に再現などできない。 ……できる日が来てもびっくりだが。 |
Raabe |
ラーベ
お前が弱いと断じたラケルを倒して、 満足するのか? |
Raabe |
ラーベ
それよりもこの先を目指して、眼前に現れるだろう 強敵を待ったほうがいいんじゃないか? |
Raabe |
アナザーダーク=マイ
…………。 ……それもそうか。 |
Another Dark Mai |
ラケル
口がよく回る機械ね。 |
Raquel |
ラーベ
お褒めにあずかりどーも。 |
Raabe |
ラーベ
ん? どうした、レイ? |
Raabe |
ラーベ
お? おお! さっきの戦闘で壁に裂け目ができたのか。 ここから中に入れそうじゃないか。 |
Raabe |
ラーベ
でかした、レイ! |
Raabe |
ラケル
ここから、窯へ繋がる装置へ行けるかしら。 どんなところなのか、楽しみになってきたわ。 |
Raquel |
ラーベ
探検気分じゃ困るぞ。 とはいえ、探検しないわけにもいかない。 |
Raabe |
ラーベ
行くぞ。マイも。 |
Raabe |
アナザーダーク=マイ
ああ、うん。わかったよ。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
レイ、なに? 変な顔。 |
Another Dark Mai |
1: 変!? お礼を言いたいだけなのに |
1: |
アナザーダーク=マイ
お礼? ……ああ、あのハーフヴァンパイアが現れたときのことか。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
別にいいよ。 そうする必要があったから、そうしただけだから。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
そんなことでお礼だなんて。 やっぱり君、変だね。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
…………。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
あのハーフヴァンパイアが現れたときのことだよね。 別に感謝されるようなことじゃないよ。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
どういたしまして、とも思わない。 だから恩や借りにしなくていいよ。 |
Another Dark Mai |
ラーベ
そうだな。確かにマイのおかげで、助かった。 私からも礼を言わせてくれ。 |
Raabe |
アナザーダーク=マイ
やめてよ……気持ち悪いな。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
……変わってるね、君。 弱いのに……変なところ強気だし。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
まあ、悪い気はしないけど。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
先を急ぐんだろう。なにがあるかわからないし、 僕が先に行ってあげるよ。ついてきたら。 |
Another Dark Mai |
第5節 強者/
Summary | |
---|---|
窯の付近でジンと遭遇し、矜持を掲げ戦うマ
イ。ラーベは今回の接触を通して彼女を分析 し、現在の姿を得た経緯について語る。 |
|
ジンを倒し、激昂するマイを宥め落ち着かせ
る。途端にお腹が空いた、と食べ物の要求を 始める彼女と、再び歩みを進めていく。 |
ラーベ
ほう、ここに出るのか。 |
Raabe |
ラケル
知っている場所なの? |
Raquel |
ラーベ
よく似た場所を前に見てな。そこも階層都市だった。 |
Raabe |
ラーベ
今回のシステムで用意したフィールドではないから、 ここもマイの潜在意識から引き出された場所なんだろう。 |
Raabe |
ラーベ
やはり、階層都市の構造はどこも 同じようになっているみたいだな。だとしたらこの先に……。 |
Raabe |
ラケル
窯があるということね。 |
Raquel |
ラーベ
その通りだ。 ゴールはそう遠くなさそうだな |
Raabe |
アナザーダーク=マイ
あぁ……そういうことか。どうりで。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
今の話で合点がいったよ。 さっきから漂っているこの気配。肌を突き刺すような空気。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
ゴールが近いってことは……相応の敵がやってくるってことだ。 |
Another Dark Mai |
ラーベ
これは……急激に気温が下がっている……。 下がれ、レイ!! |
Raabe |
アナザーダーク=マイ
くっ……! |
Another Dark Mai |
ラーベ
ジン=キサラギ!? 次のエネミーは奴か。これは簡単には突破させてもらえないぞ……。 |
Raabe |
アナザーダーク=マイ
そのほうが都合がいいよ。 強い敵と戦わなくちゃ、意味がない。 |
Another Dark Mai |
ジン
……『マイ=ナツメ』。 |
Jin |
ジン
どういうつもりだ? 何故……ツバキたちに槍を向けた。 |
Jin |
アナザーダーク=マイ
はぁ……またそれか。 もういいよ、そういうのは。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
それに僕は『マイ=ナツメ』じゃない。 僕はハヅキ家嫡男にして次期当主……マイ=ハヅキだ! |
Another Dark Mai |
ジン
次期当主だと? |
Jin |
ジン
笑わせるな。お前は自ら名を捨て、自身の境遇から逃げた。 その意思を翻して、今更『ハヅキ』を名乗るのか? |
Jin |
アナザーダーク=マイ
僕は名を捨ててなどいない!!!! |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
たとえ体が変わって、男から女になろうとも…… 僕はハヅキの跡取りだ。その名を継ぐ者だ! |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
現当主である『武帝』をもしのぎ、 強き者となる定めを担う男だ!! |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
くそっ……槍が、届かない……。 これがキサラギ家次期当主の力か……。 |
Another Dark Mai |
ジン
定めか。ならば問う、『マイ=ハヅキ』。 貴様はなんのために強さを求める? |
Jin |
ジン
名誉か。家のためか。 それとも……それしか縋るものがないのか? |
Jin |
アナザーダーク=マイ
馬鹿に……するな!!! |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
名誉なんかじゃない。家に殉じるつもりもない! 僕が力を求め、強くなりたいのは、僕が僕であるためだ!! |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
僕が僕の求める自分であり続けるために、今よりももっと、 もっともっともっともっともっと、強くなる!!! |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
そのためにも、そうだ、ジン=キサラギ。 『強い』君を僕は倒す!!! |
Another Dark Mai |
ラケル
もはや執念ね。盲信するように強さを求めている。 なんだか憐れに思えてくるわ。 |
Raquel |
ラーベ
……ま、正常な状態ではないだろうからな。 憐れといえば、そうかもしれないね。 |
Raabe |
ラケル
ラーベ、あなたやっぱり……。 |
Raquel |
ラケル
レイを介したこの『場』を利用して、 あの子のデータを集めているわね? |
Raquel |
1: マイのデータを? |
1: |
ラーベ
こんな絶好の機会を逃すわけにはいかないだろ。
なにせ相手は謎だらけの、元 |
Raabe |
ラーベ
情報があるにこしたことはないからな。 |
Raabe |
ラーベ
そう人聞きの悪い言い方をするな。
相手は謎だらけの、元 |
Raabe |
ラーベ
使える物は使うのが、私の信条だ。 |
Raabe |
ラケル
この世界は、あのマイという子の意識が介入したことで、 一部が改変された世界。 |
Raquel |
ラケル
景色や物だけでなく、存在する人物やその思念さえも、 彼女にしか知り得ないものであるはず。 |
Raquel |
ラケル
であれば、 あの子がこの世界でなにをして、なにを思うのか……。 |
Raquel |
ラケル
その全てが、マイという存在を解析するのに とても重要な情報源となるでしょうね。 |
Raquel |
ラーベ
その通り。 |
Raabe |
ラーベ
例えば、マイはマコトやツバキを知らないと言っていたが…… あれは間違いだろう。 |
Raabe |
ラーベ
マイはおそらく、彼女たちを『知っていた』。 なぜならここは、マイの介入で構築された世界だからだ。 |
Raabe |
ラーベ
この世界にあるもの全てが、 あの『マイ』の『可能性の姿』とも言える。 |
Raabe |
ラーベ
……現状はまだ解析中の段階だが……。 |
Raabe |
ラーベ
我々に同行している『マイ』について、 少しはわかってくるかもしれない。 |
Raabe |
アナザーダーク=マイ
はぁッ! |
Another Dark Mai |
ジン
フッ……! |
Jin |
ジン
虚空刃……雪風! |
Jin |
アナザーダーク=マイ
うあぁぁぁぁっ!! |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
くぅっ……強い。 |
Another Dark Mai |
ジン
……くだらないな。 |
Jin |
ジン
お前は未熟で、力不足だ。ハヅキの名になにを 夢見ているのか知らないが、まずは己の弱さを受け入れろ。 |
Jin |
アナザーダーク=マイ
お説教? だけど残念だったね。僕は僕の弱さくらい知ってる。 だから強くあるために……余計なものを捨てることにしたんだ。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
切っ先を鈍らせるものなどなにもかも切り捨てて、 純粋な強さだけを研ぎ澄ませる。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
その先にあるのは、君の心臓かもしれないよ。 |
Another Dark Mai |
ジン
…………。 |
Jin |
ジン
たとえ僕を倒したところで、 お前がなにか偉大なる頂点に立てるわけではない。 |
Jin |
ジン
いや……世界中のすべての強者を倒しても、だ。 |
Jin |
ジン
愚か者の目には映らない……今の貴様の目にも映るまい。 刃を向ける先を失った者の脆弱さは、無様だぞ。 |
Jin |
アナザーダーク=マイ
フン……。 知ったことかぁぁぁぁぁぁッ!!! |
Another Dark Mai |
ジン
ッ……!? |
Jin |
ジン
これは……。 |
Jin |
ラケル
この気配……嫌な感じ。 足元からなにかが流れ込んできているわ。 |
Raquel |
ラケル
これは……窯から? それなら、まさか……。 |
Raquel |
ラーベ
可能性のひとつだと思ってはいたが、 そういうことだったとはな。 |
Raabe |
ラーベ
マイ=ハヅキの中には、黒い因子が潜んでいる。 災厄の遺伝子とでも言おうか……。 |
Raabe |
ラーベ
『それ』があいつの想いを増幅させている。 その想いに駆られ過ぎた形が、あの『マイ』だ。 |
Raabe |
ラケル
まるで風にあおられた炎のようね。 やがて己の身に火の粉が移って、燃え上がってしまいそう。 |
Raquel |
ラケル
……助ける? あの子を。 |
Raquel |
ラケル
そうね。 それがあの子にとって助けになるかはわからないけれど。 |
Raquel |
ラケル
ただじっと、マイが燃え尽きていくのを見守るだけでは、 面白くないもの。 |
Raquel |
ラケル
私が援護してあげる。 あなたに誰の攻撃も届かないように、風で守っていてあげるわ。 |
Raquel |
ラケル
だから、少しだけ…… あの子の思い描く理想を乱してやりましょう。 |
Raquel |
ラケル
さっき、お願いされたものね。 あの子をお願いって。 |
Raquel |
ジン
……貴様も、僕に挑むのか。 |
Jin |
アナザーダーク=マイ
余計な手出しはいらない! こいつは僕が倒す!!!! |
Another Dark Mai |
ジン
いいだろう。 |
Jin |
ジン
……来い!! |
Jin |
アナザーダーク=マイ
くそっ……僕は……勝つ!!!!! |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
はぁ、はぁっ、はぁ……っ。僕の勝ちだ。 僕の勝ちだ、僕の勝ちだ!!!!! |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
<size=130%>僕は君より強い!!!!</size> |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
なんっ……! 今度は君か、吸血鬼!! |
Another Dark Mai |
ラケル
そうしないと、またレイが 飛び出しそうだったのよ。 |
Raquel |
ラケル
もう敵はいないわ。ご覧なさい。 |
Raquel |
1: マイは十分強いよ |
1: |
アナザーダーク=マイ
僕は……。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
…………。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
……うん。 そう、だね。そうだ……。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
僕の……勝ち? |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
…………。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
……ああ、そうか。そうだね。 僕が勝った……。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
僕はちゃんと戦える。力だってある。 だから……取り乱す必要なんかないはずなんだ。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
……君は不思議だね、レイ。 君に見られていると、なんとなく……思考がクリアになってくる。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
自分がどうするべきなのか…… 考えられるようになってくる。 |
Another Dark Mai |
ラーベ
どうやら、落ち着いたようだな。 |
Raabe |
アナザーダーク=マイ
…………。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
うん。騒いだら。ちょっと疲れたよ。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
レイ、なにか美味しいものを出してくれないかな。 お腹が空いた。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
……甘いものがいいな。ドーナツとか。 |
Another Dark Mai |
ラーベ
やれやれ。手の平を返したように、 食いしん坊キャラが戻ってきたな。 |
Raabe |
ラーベ
だがまあ、これで行く手を阻む者はいなくなった。 先へ進むとしよう。窯まではあと少しだ。 |
Raabe |
第6節 Wake up/
Summary | |
---|---|
窯へと辿り着いた一行の前に、宿敵メイファ
ンが出現。ラーベがフガクとの連絡を試みる 間、マイ、ラケルと共に彼女に立ち向かう。 |
|
戦闘後、マイの姿は別人のものへと変わる。
同刻、バベルの下で目を覚ました「マイ」は いい夢を見た、と小さく微笑んでいた。 |
アナザーダーク=マイ
……ここは? |
Another Dark Mai |
ラケル
ここが目的地……窯。 ふうん、こういう感じになっているの。 |
Raquel |
ラケル
窯は正常に稼働しているようね。 |
Raquel |
ラケル
確か……観測者が自分を『観測者である』と認識していれば、 窯の存在が確立するのよね? |
Raquel |
ラーベ
そうだ。今回のファントムフィールドの観測者は、 レイとシステムだからな。 |
Raabe |
ラーベ
乱入者が続出するっていうイレギュラーに見舞われたが、 観測は乗っ取られたりしてないようでよかったよ。 |
Raabe |
ラーベ
さて。窯まで来れば、フガクにも連絡が取れるだろう。 周囲に警戒しつつ、待機。私はフガクの反応を探す。 |
Raabe |
アナザーダーク=マイ
…………。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
……ねえ、レイ。 君は……。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
……? |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
なにか来る。 嫌なものが……! |
Another Dark Mai |
ラケル
嫌なもの? 確かに……風が変わったような……。 |
Raquel |
メイファン
ほう。階層都市の心臓部に入り込む害虫がいるようだと 来てみれば……お前だったか。 |
Meifang |
メイファン
マイ=ナツメ。 |
Meifang |
アナザーダーク=マイ
……っ! |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
メイファン=ラピスラズリ……。 |
Another Dark Mai |
ラーベ
なんだ、今のは……事象干渉か? いや、違うな。どっちかっていうと、認識が……ブレた? |
Raabe |
1: マイの姿が、変わったような…… |
1: |
ラケル
なにを言っているの。 さっきからずっと、彼女は彼女だわ。 |
Raquel |
アナザーダーク=マイ
……っ、はぁぁぁぁっ!! |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
う、くっ……。 |
Another Dark Mai |
メイファン
どうした。槍先が怯えているぞ。 私が恐ろしいのか? |
Meifang |
アナザーダーク=マイ
ふざけるな! 誰が恐ろしいものか。 君なんかに、僕は……! |
Another Dark Mai |
ラケル
見ていられないわね。冷静になりなさいな。 無闇に掴みかかって敵う相手ではないわ。 |
Raquel |
アナザーダーク=マイ
なにを……余計な手を出さないでくれって言ってるだろ! こいつは……僕が倒さないと……。 |
Another Dark Mai |
ラケル
ふうん、ご執心ね。因縁のある相手だというの? |
Raquel |
ラケル
そもそも、あの人は誰なの? メイファン、と呼んでいたようだけれど。 |
Raquel |
アナザーダーク=マイ
メイファン=ラピスラズリ。 世界虚空情報統制機構、第零師団。通称『審判の羽根』。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
……要は裏切り者を処分する暗殺部隊だよ。 彼女はその団長。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
だけど僕にとってはただの敵だ。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
あいつは僕の前に立ちはだかった。 圧倒的で、恐ろしい力を僕は確かに味わった。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
だから……今度は。 『僕』があいつを倒す! |
Another Dark Mai |
ラーベ
なるほどな。マイにとっての切り捨てるものというより、 克服したいもの……か。 |
Raabe |
メイファン
フフフ……果たしてできるか? 貴様に。 |
Meifang |
メイファン
いいぞ、気安く攻めてくるがいい。だがその身が私の前で 倒れ伏したならば、私は今度こそお前を手に入れる。 |
Meifang |
メイファン
お前の体を手に入れる。 その身に魔道書を宿したお前を、我が主に献上する! |
Meifang |
ラケル
……なんとなくだけれど、関係性はうかがえたわ。 そして私、あの人をあまり好きになれなさそう。 |
Raquel |
ラケル
一応聞くけれど、どうする、レイ? 彼女に加勢する? |
Raquel |
1: 当然。ここまで一緒にきた仲間だし |
1: |
アナザーダーク=マイ
仲間……? |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
そんなもの、僕には必要ない!! |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
君は僕の仲間なんかじゃない、便利な装置だ。 勘違いしないでくれ。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
ふん、思い上がらないでもらいたいな。 君は僕のなんのつもり? 仲間だとでも思ってるの? |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
そんなもの、僕には必要ない。 足手まといはいらない!!! |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
僕はひとりで戦える。 ひとりでいい。ひとりがいいんだ。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
そのほうが、僕は強くなれる……。 |
Another Dark Mai |
ラケル
あなた、まだそんなことを……。 |
Raquel |
アナザーダーク=マイ
<size=150%>黙れ!!!</size> |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
レイ……君はただ見ていればいい。 僕があいつに、勝つところを。 |
Another Dark Mai |
メイファン
どうした。吠えているだけでは、私は倒れんぞ。 |
Meifang |
メイファン
どいつからでも構わない。 私の前に命を投げ出したいのなら、挑みかかってこい……。 |
Meifang |
アナザーダーク=マイ
忌々しい薄ら笑い……気に入らない。 気に入らないな!! |
Another Dark Mai |
メイファン
ククッ……フフフ、拍子抜けだな。 その程度か! |
Meifang |
アナザーダーク=マイ
この……まだ……まだだぁぁぁぁっ!!! |
Another Dark Mai |
ラケル
あの子、メイファンという人が相手になると 輪をかけて子供のようね。それも、怯えた子供。 |
Raquel |
ラケル
人のこと、言えないじゃない。 ……よっぽど恐い思いをしたのかしら。それとも、悔しい思い? |
Raquel |
ラケル
あのままだとあの子、 勝てたとしても無事ではすまないわ。 |
Raquel |
ラケル
行きましょう、レイ。 |
Raquel |
ラーベ
こっちは引き続き、フガクとの連携回復に努める。 だからこっちに被害が来ないようにしてくれよ! |
Raabe |
ラケル
勝手なことを言うのね。 努力してみるわ。光栄に思いなさい。 |
Raquel |
メイファン
……私を打ち倒すか。 その眼が……私を観るのだな。 |
Meifang |
メイファン
フフフ、いいだろう。私の……負けだ……。 |
Meifang |
ラーベ
よく戦ったな、レイ。 倒したという事象をきっちり観測できたのも見事だ。 |
Raabe |
ラーベ
かなりの強敵のようだったから、だいぶヒヤヒヤしたが…… 不完全な状態でこれだけ戦えるとは、驚いた。 |
Raabe |
ラケル
対照的に、こちらは無茶をしすぎたわね。 力を使いすぎたんでしょう。倒れてしまっているわ。 |
Raquel |
ラケル
ほら、しっかりなさい。 |
Raquel |
マイ
う……うう……な、に……? ここ、どこ……? |
Mai |
ラーベ
……これは、どういうことだ? |
Raabe |
ラーベ
さっきまでのマイは、違う姿をしていたはずだ。 どうして急に……姿が変わった? |
Raabe |
ラケル
違う姿? なにを言っているの。 この子は最初からずっと、この見た目だったわよ。 |
Raquel |
ラーベ
はぁ!? いや、そんなはずはない。 |
Raabe |
ラーベ
頭には角のようなものがあって、目つきはもっと鋭かったし、 服装だって違っただろ! |
Raabe |
ラケル
そんなはずはない、はこちらの台詞よ。 一体なにを見ていたというの、ラーベ。 |
Raquel |
ラケル
レイ……あなたまで。 本当に、違う姿に見えていたの? |
Raquel |
ラケル
だとしたら……その違う姿の『マイ』は、 あなたの認識に割り込んできたことになるわね。 |
Raquel |
ラケル
違う姿……違う存在を、あなたに認識させた。 |
Raquel |
ラーベ
まさか……。いや、あいつならあり得ることかもしれない。 なにせ、なにからなにまで得体が知れない。 |
Raabe |
ラーベ
そのうえ、あの『因子』だ……。 |
Raabe |
ラーベ
レイの観測下に割り込んでくるのも……ん? いや、ちょっと待てよ。 |
Raabe |
ラーベ
そんな異常事態を引き起こした原因は そもそも別にあったよな!? |
Raabe |
ラーベ
未熟な観測者のテスト中フィールドに、 通り道を作った吸血鬼がいたよなぁ!? |
Raabe |
ラケル
あら、それは大変ね。 |
Raquel |
ラケル
私が顔を覗かせたくらいで通り道ができてしまうだなんて、 未熟もいいところよ。 |
Raquel |
ラケル
今後の課題ができたじゃない。 ますます精進しなさい、レイ。 |
Raquel |
ラケル
それと、あなたたちのシステムもね。 |
Raquel |
ラーベ
ぐ、ぬぬぬぬぬぬ……。 それはその通りなんだよなぁ……っ。 |
Raabe |
マイ
……なにがあったのか、よくわからないな……。 |
Mai |
マイ
レイ? どうしたの……なんだか寂しそうな顔をしてるけど。 |
Mai |
1: 違うマイに会ったんだ |
1: |
1: ' |
1: |
マイ
寂しそう……? |
Mai |
マイ
私じゃない私……が? |
Mai |
マイ
君にそう思ってもらえたんなら、 その『私』は幸運だったかもしれないね。 |
Mai |
マイ
少なくとも君は、その子が感じていたかもしれない 寂しさを知ってくれたんだから。 |
Mai |
ラケル
お小言よりも、通信の状態はどうなの? 窯まで来たら連絡が取れて、フガクに戻れるのでしょう? |
Raquel |
ラーベ
おのれ、勝手にさくさく話を進めおって。 |
Raabe |
ラーベ
……フガクとの連携状態は回復した。 |
Raabe |
ラーベ
レイに過剰に負担をかけている状態だからな。 一旦引き上げるぞ。 |
Raabe |
ラーベ
マイも。戻ったら状態を確認させてくれ。 |
Raabe |
マイ
うん……私からもお願いします。 |
Mai |
マイ
それと、その『私じゃない私』のことも。 よかったら聞かせてほしいな。 |
Mai |
ラケル
はぁ。ちょっと暇つぶしのつもりが、 とんだお散歩になったわ。 |
Raquel |
ラケル
レイ。 戻ったら、美味しい紅茶を具現化してみせて。 |
Raquel |
アナザーダーク=マイ
…………戻って……きたのか。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
……ふふ、そうか。 そういうことだったのか。 |
Another Dark Mai |
ザラ
……こんなところにいたか。 |
Zara |
アナザーダーク=マイ
君か。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
僕になにか用? 今ならちょっとくらいの無理、聞いてあげてもいい気分だ。 |
Another Dark Mai |
ザラ
……? なんだ、機嫌が良さそうだな。 |
Zara |
アナザーダーク=マイ
……うん。ちょっとね。 |
Another Dark Mai |
アナザーダーク=マイ
いい夢を見たんだ。 |
Another Dark Mai |